霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二五章 道歌(だうか)〔一六八一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第65巻 山河草木 辰の巻 篇:第5篇 讃歌応山 よみ(新仮名遣い):さんかおうさん
章:第25章 道歌 よみ(新仮名遣い):どうか 通し章番号:1681
口述日:1923(大正12)年07月18日(旧06月5日) 口述場所:祥雲閣 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年4月14日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]: 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:0000-00-00 00:00:00 文字数:4517 OBC :rm6525
愛善世界社版:284頁 八幡書店版:第11輯 712頁 修補版: 校定版:297頁 普及版:129頁 初版: ページ備考:
001 玉国別(たまくにわけ)はサンカオ山(ざん)の祠(ほこら)を立(たち)出(い)で、002ヨルダン川(がは)の北岸(ほくがん)を下(くだ)り乍(なが)ら、003元気(げんき)恢復(くわいふく)し、004聖地(せいち)の近(ちか)づいたに何(なん)となく心(こころ)勇(いさ)み立(た)ち、005声(こゑ)も涼(すず)しく宣伝歌(せんでんか)を謡(うた)ひ初(はじ)めた。
006玉国別(たまくにわけ)『神(かみ)の教(をしへ)にヨルダンの
007川(かは)の辺(ほとり)に北(きた)の道(みち)
008進(すす)み行(ゆ)くこそ楽(たの)しけれ
009遥(はるか)に見(み)ゆるは橄欖(かんらん)の
010山(やま)の尾(を)の上(へ)か聖場(せいぢやう)か
011ヨルダン川(がは)の水(みづ)清(きよ)く
012流(なが)れの音(おと)は淙々(そうそう)と
013天地(てんち)に響(ひび)く心地(ここち)なり
014霊山(れいざん)会場(ゑぢやう)の蓮華台(れんげだい)
015蓮(はちす)の山(やま)にあれませる
016木花姫(このはなひめ)の御(おん)守(まも)り
017一度(いちど)に開(ひら)く初稚姫(はつわかひめ)の
018珍(うづ)の司(つかさ)に従(したが)ひて
019心(こころ)の空(そら)も真純彦(ますみひこ)
020その懐(ふところ)に輝(かがや)ける
021玉国別(たまくにわけ)の今日(けふ)の旅(たび)
022何(なん)とはなしに勇(いさ)ましく
023天(てん)にも上(のぼ)る心地(ここち)して
024足(あし)も次第(しだい)にかるがると
025流(なが)れに沿(そ)ふて進(すす)むなり
026あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
027吾(わが)行先(ゆくさき)はゲッセマネ
028月(つき)の輝(かがや)く花苑(はなぞの)に
029百花(ひやくくわ)爛漫(らんまん)艶(えん)競(きそ)ひ
030神(かみ)の使(つかひ)の吾々(われわれ)を
031媚(こび)を呈(てい)して待(ま)つならむ
032三千彦(みちひこ)司(つかさ)、伊太彦(いたひこ)や
033鬼春別(おにはるわけ)の治道(ちだう)居士(こじ)
034デビスの姫(ひめ)やブラヷーダ
035その他(た)の厳(いづ)の御使(みつかひ)は
036もはや聖地(せいち)に着(つ)きけるか
037吾(われ)等(ら)は道(みち)を急(いそ)ぎつつ
038只(ただ)一向(ひたむき)に進(すす)み来(き)て
039もしや彼(かれ)等(ら)に遅(おく)れなば
040これ末代(まつだい)の恥辱(ちじよく)なり
041とは云(い)ふものの神界(しんかい)の
042仕組(しぐみ)ばかりは吾々(われわれ)の
043曇(くも)りし身魂(みたま)は分(わか)らない
044ヨルダン川(がは)の川(かは)の面(おも)
045吹(ふ)く夏風(なつかぜ)は吾(わが)胸(むね)を
046涼(すず)しく清(きよ)く撫(な)でて行(ゆ)く
047黄金(こがね)の峰(みね)と聞(きこ)えたる
048橄欖(かんらん)香(にほ)ふ聖山(せいざん)に
049弥(いや)永久(とこしへ)に鎮(しづ)まれる
050野立(のだち)の彦(ひこ)の御(おん)化身(けしん)
051埴安彦(はにやすひこ)の神(かみ)様(さま)は
052吾(われ)等(ら)一行(いつかう)の恙(つつが)なく
053到着(たうちやく)せしと聞(き)きまさば
054嘸(さぞ)や喜(よろこ)び給(たま)ふらむ
055八大(はちだい)竜王(りうわう)の所持(しよぢ)したる
056三(み)つの珠(たま)まで受取(うけと)りて
057いよいよ神業(しんげふ)成就(じやうじゆ)の
058貴(うず)の御玉(みたま)を献(たてまつ)る
059吾(わが)身(み)の上(うへ)こそ楽(たの)しけれ
060案(あん)ずる勿(なか)れ真純彦(ますみひこ)
061もはや聖地(せいち)も見(み)えて来(き)た
062日出別(ひのでのわけ)の神司(かむつかさ)
063数多(あまた)の伴人(ともびと)随(したが)へて
064吾(われ)等(ら)一行(いつかう)の到(いた)るをば
065喜(よろこ)び迎(むか)へ門外(もんぐわい)に
066現(あら)はれ待(ま)たせ給(たま)ふらむ
067思(おも)へば思(おも)へば勇(いさ)ましや
068これも全(まつた)く瑞御魂(みづみたま)
069神(かむ)素盞嗚(すさのを)の大神(おほかみ)の
070珍(うづ)の使(つかひ)とあれませる
071初稚姫(はつわかひめ)の御(お)引(ひき)立(たて)
072慎(つつし)み感謝(かんしや)し奉(たてまつ)る
073勝利(しようり)の都(みやこ)は近(ちか)づきぬ
074進(すす)めよ進(すす)め勇(いさ)み立(た)て
075貴(うず)の聖地(せいち)に参上(まゐのぼ)り
076珍(うづ)の力(ちから)をみてづから
077埴安彦(はにやすひこ)に授(さづ)けられ
078再(ふたた)び陣容(ぢんよう)立直(たてなほ)し
079シオンの山(やま)に忍(しの)びたる
080ナーガラシヤーを言向(ことむ)けて
081奇(くす)しき功績(いさを)を永久(とこしへ)に
082立(た)てねばおかぬ吾(わが)望(のぞ)み
083遂(と)げさせ給(たま)へ惟神(かむながら)
084聖地(せいち)にゐます皇神(すめかみ)の
085御前(みまへ)に願(ねが)ひ奉(たてまつ)る
086朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
087月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
088仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
089誠(まこと)の力(ちから)は世(よ)を救(すく)ふ
090誠(まこと)一(ひと)つの言霊(ことたま)の
091御稜威(みいづ)によりて玉国別(たまくにわけ)は
092漸(やうや)く都(みやこ)に近(ちか)づきぬ
093思(おも)へば思(おも)へば皇神(すめかみ)の
094仁慈(じんじ)無限(むげん)の御(おん)仕組(しぐみ)
095感謝(かんしや)にあまり自(おのづか)ら
096涙(なみだ)は腮辺(しへん)に漂(ただよ)ひぬ
097あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
098感喜(かんき)あまりて言葉(ことば)なし
099これにて沈黙(ちんもく)仕(つかまつ)る』
100と謡(うた)ひ終(をは)り、101後(あと)振(ふり)向(む)いて初稚姫(はつわかひめ)の御(お)顔(かほ)を見(み)れば、102姫(ひめ)の容貌(ようぼう)は崇高(けだかさ)の上(うへ)にも崇高(けだかさ)を増(ま)し、103形容(けいよう)し難(がた)き喜(よろこ)びと威厳(ゐげん)とをたたへてゐる。104玉国別(たまくにわけ)は思(おも)はず知(し)らず、105ハツと頭(かしら)を下(さ)げ道(みち)の傍(かたはら)に身(み)を転(てん)じ、106揉手(もみで)をしながら、
107玉国(たまくに)『いや、108誠(まこと)に失礼(しつれい)な事(こと)を致(いた)しました。109サアどうかお先(さき)へおいで下(くだ)さいませ』
110初稚(はつわか)『神(かみ)様(さま)は順序(じゆんじよ)で厶(ござ)いますからな、111ホヽヽヽ』
112と笑(わら)ひ乍(なが)ら先(さき)に立(た)つて進(すす)み行(ゆ)く。
113 スマートは初稚姫(はつわかひめ)の後(うしろ)より尾(を)を振(ふ)り乍(なが)ら従(つ)いて行(ゆ)く。
114真純(ますみ)『もし先生(せんせい)、115貴方(あなた)、116又(また)失敗(しつぱい)致(いた)しましたね。117今(いま)初稚姫(はつわかひめ)様(さま)が只(ただ)一言(ひとこと)、118神(かみ)様(さま)は順序(じゆんじよ)だと仰有(おつしや)つたでせう。119貴方(あなた)が偉(えら)さうに先(さき)に立(た)つておいでになるものだから、120叱(しか)られたでせう。121サンカオ山(ざん)の麓(ふもと)でも、122「神(かみ)は順序(じゆんじよ)だ。123順序(じゆんじよ)を破(やぶ)れば秩序(ちつじよ)が乱(みだ)れる」と仰有(おつしや)つたのを忘(わす)れたのですか』
124玉国(たまくに)『いや、125そんな考(かんが)へではない。126姫(ひめ)様(さま)を御(ご)案内(あんない)申(まをし)上(あ)げる積(つも)りで先(さき)に立(た)つたのだ。127畢竟(つまり)私(わし)の考(かんが)へは先伴(さきとも)をお仕(つか)へする考(かんが)へだつたよ』
128真純(ますみ)『貴方(あなた)御(ご)案内(あんない)遊(あそ)ばす丈(だ)けの資格(しかく)があるのですか。129エルサレムの勝手(かつて)は分(わか)つてるのですか。130勝手(かつて)分(わか)らずに御(ご)案内(あんない)も出来(でき)ますまい。131彼方(あちら)の方(はう)が大抵(たいてい)エルサレムだらう位(くらゐ)の事(こと)では、132案内者(あんないしや)とは云(い)へませぬからな。133神(かみ)様(さま)のお道(みち)だつて充分(じゆうぶん)究(きは)めて置(お)かねば宣伝使(せんでんし)となれないと同(おな)じに、134道案内(みちあんない)だつてさうではありませぬか』
135玉国(たまくに)『さう云(い)へばさうだが、136肝腎(かんじん)の聖地(せいち)に近付(ちかづ)いたのだから、137慎(つつし)んで苦情(くじやう)がましい事(こと)は云(い)はないで欲(ほ)しいな。138俺(わし)だつて気(き)がもめるのと嬉(うれ)しいのとで、139チツと許(ばか)りは脱線(だつせん)するかも知(し)れないからな』
140真純(ますみ)『聖地(せいち)に近(ちか)づいたから御(ご)注意(ちうい)を申(まを)し上(あ)げるのです。141嬉(うれ)しいから脱線(だつせん)するやうな事(こと)でどうなりますか。142道中(だうちう)は私(わたし)と二人(ふたり)だから何(なに)程(ほど)ヘマやつても恥(はぢ)にもなりませぬが、143エルサレムに着(つ)けば錚々(さうさう)たる神司(かむづかさ)がおありですから、144第一(だいいち)、145神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)様(さま)の御(ご)神徳(しんとく)に関(くわん)しますよ。146ここは厳御魂(いづのみたま)様(さま)の御(ご)鎮座所(ちんざしよ)ですから、147産土山(うぶすなやま)の斎苑(いそ)館(やかた)とは、148余程(よほど)窮屈(きうくつ)ですよ。149厳(いづ)の御魂(みたま)様(さま)から、150「何(なん)と素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)も先(さき)の見(み)えぬ神(かみ)様(さま)だな。151あのやうな宣伝使(せんでんし)をようも遣(つか)はしたな」と思召(おぼしめ)したら、152貴方(あなた)許(ばか)りの恥(はぢ)ぢやありませぬ。153つまり主人(しゆじん)の名誉(めいよ)を傷(きず)つけるやうなものです。154ヤレ聖地(せいち)へ着(つ)いたから嬉(うれ)しいと思(おも)つちやなりませぬ。155益々(ますます)緊張(きんちやう)して、156心得(こころえ)た上(うへ)にも心得(こころえ)ねばならぬでせう』
157玉国(たまくに)『あ、158お前(まへ)ならこそ、159面(おもて)を犯(をか)して、160ようそこ迄(まで)云(い)つて呉(く)れた。161や、162有難(ありがた)い。163沢山(たくさん)の弟子(でし)があつても、164私(わたし)の肺腑(はいふ)を衝(つ)くやうな意見(いけん)をして呉(く)れる者(もの)は無(な)い。165人間(にんげん)は何(なに)が不幸(ふかう)だと云(い)つても、166真心(まごころ)で忠告(ちうこく)して呉(く)れるものがないほど不幸(ふかう)はないからのう。167イヤ、1671気(き)がついた事(こと)があれば、168何卒(どうぞ)、169私(わし)は怒(おこ)らないから注意(ちうい)して貰(もら)ひたい』
170真純(ますみ)『貴方(あなた)に御(ご)注意(ちうい)申(まをし)上(あ)げたい事(こと)は山(やま)程(ほど)厶(ござ)いますが、171もはや聖地(せいち)も近(ちか)づきましたから道々(みちみち)申(まをし)上(あ)げても、172どうせ申(まをし)上(あ)げきれないと思(おも)ひまして……又(また)お姫(ひめ)様(さま)の御(ご)同道(どうだう)ですから、173あまりの事(こと)を申(まを)せば先生(せんせい)の御(ご)人格(じんかく)に関(くわん)しますから、174貴方(あなた)ユツクリお考(かんが)へ下(くだ)さいませ。175又(また)「人(ひと)から気(き)をつけられて気(き)づく位(くらゐ)ではいかぬ」と、176厳(いづ)の霊(みたま)のお筆先(ふでさき)にもありますからな。177然(しか)し人(ひと)の欠点(けつてん)はよく分(わか)りますが、178自分(じぶん)の顔(かほ)の墨(すみ)は分(わか)らぬもので厶(ござ)います。179私(わたし)の欠点(けつてん)も沢山(たくさん)ありませう。180何(なん)と云(い)つても貴方(あなた)の教(をしへ)を受(う)けた弟子(でし)ですから、181欠点(けつてん)だらけでせう、182いや間違(まちがひ)だらけでせう。183何卒(どうぞ)御(ご)注意(ちうい)下(くだ)さいませ』
184玉国(たまくに)『私(わたし)の教育(けういく)を受(う)けたから欠点(けつてん)だらけ、185間違(まちが)ひだらけ、186とはどうも仕方(しかた)がないな。187イヤさうだらう。188お前(まへ)に間違(まちがひ)だらけを教(をし)へとつたら、189そこは神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)に許(ゆる)して貰(もら)ふのだな』
190 初稚姫(はつわかひめ)は後(あと)振(ふり)返(かへ)り、
191初稚(はつわか)『オホヽヽヽ、192大変(たいへん)にお話(はなし)がはづんで居(を)りますな。193これからは最早(もはや)聖域内(せいゐきない)になりますから、194宣伝歌(せんでんか)の外(ほか)は一切(いつさい)喋(しやべ)らないやうにして下(くだ)さい。195此(この)玉(たま)さへ納(をさ)まれば、196何程(いくら)なりとお喋(しやべ)りなさつて宜(よろ)しい』
197玉国(たまくに)『はい、198畏(かしこ)まりました。199屹度(きつと)心得(こころえ)ます』
200初稚(はつわか)『さうして、201御(ご)両人(りやうにん)とも自分(じぶん)の欠点(けつてん)をよく考(かんが)へて、202今(いま)の内(うち)にお直(なほ)し成(な)さいませや。203聖地(せいち)には立派(りつぱ)な神司(かむづかさ)許(ばか)り居(を)られますから、204何卒(どうぞ)お恥(はづか)しくない様(やう)にお願(ねがひ)しますよ。205貴方(あなた)は今(いま)勝利(しようり)の都(みやこ)へ近(ちか)づいたとお謡(うた)ひなさいましたが、206勝利(しようり)の都(みやこ)と御(ご)油断(ゆだん)なされば、207聖地(せいち)に於(おい)て敗者(はいしや)となり、208失敗(しつぱい)の都(みやこ)となるかも知(し)れませぬよ。209何事(なにごと)も九分(くぶ)九厘(くりん)と云(い)ふ所(ところ)が大切(たいせつ)です。210最(もつと)も注意(ちうい)を要(えう)する所(ところ)です。211誰(たれ)でも得意(とくい)になると九分(くぶ)九厘(くりん)で転覆(てんぷく)するものですからな』
212玉国(たまくに)『あ、213何(なん)と窮屈(きうくつ)な事(こと)で厶(ござ)いますな。214私(わたし)は只(ただ)今(いま)迄(まで)難行(なんぎやう)苦行(くぎやう)して漸(やうや)く聖地(せいち)の空(そら)を見(み)たのですから、215やれやれユツクリ一服(いつぷく)をさして貰(もら)つて嬉(うれ)しく楽(たの)しく参拝(さんぱい)をしようと思(おも)ひましたが、216人間(にんげん)の考(かんが)へは実(じつ)に果敢(はか)ないものですな。217エルサレムと云(い)ふ所(ところ)は天国(てんごく)浄土(じやうど)かと思(おも)つてゐましたのに意外(いぐわい)にも窮屈(きうくつ)な所(ところ)で厶(ござ)いますな』
218初稚(はつわか)『「結構(けつこう)な処(ところ)の恐(こは)い所(ところ)だ」と厳御魂(いづのみたま)の神諭(しんゆ)にも出(で)てゐるでせう。219油断(ゆだん)は少(すこ)しもなりませぬよ。220寸善(すんぜん)尺魔(しやくま)の世(よ)の中(なか)ですから弥勒(みろく)の世(よ)が完成(くわんせい)する迄(まで)は、221腹帯(はらおび)をしつかりしめて気(き)を張弓(はりゆみ)にして置(お)かなくては魔神(まがみ)に襲(おそ)はれますからな』
222玉国(たまくに)『聖地(せいち)でさへも魔神(まがみ)が居(を)りますか』
223初稚(はつわか)『美(うつく)しい花(はな)には害虫(がいちう)多(おほ)く、224よき果物(くだもの)には虫害(ちうがい)多(おほ)きが如(ごと)く、225宝(たから)の集(あつ)まる所(ところ)には盗人(ぬすびと)の狙(ねら)ふ如(ごと)く、226世界中(せかいぢう)の人間(にんげん)がエルサレム エルサレムと云(い)つて憧憬(どうけい)してるのですから、227悪(あく)の強(つよ)い欲(よく)の深(ふか)いものは皆(みな)聖地(せいち)に来(き)て、228何(なに)か思惑(おもわく)を立(た)てようとするのですよ。229エルサレム程(ほど)偽善者(ぎぜんしや)の集(あつ)まる所(ところ)はないのですから、230よく善悪(ぜんあく)正邪(せいじや)を弁(わきま)へて、231御(お)交際(つきあひ)を願(ねが)ひますよ。232それ丈(だ)け御(ご)注意(ちうい)致(いた)しておきます。233又(また)真純彦(ますみひこ)様(さま)も最前(さいぜん)から玉国別(たまくにわけ)さまの欠点(けつてん)を親切(しんせつ)に注意(ちうい)されましたが、234貴方(あなた)には玉国別(たまくにわけ)様(さま)以上(いじやう)の欠点(けつてん)がありますから、235よく反省(はんせい)なさいませや』
236真純(ますみ)『恐(おそ)れ入(い)りまして厶(ござ)います。237聖地(せいち)に到着(たうちやく)迄(まで)に幾千(いくら)も時間(じかん)が厶(ござ)いませぬから、238何(なん)だか俄(にはか)に心(こころ)忙(せは)しくなつて参(まゐ)りました。239之(これ)から自分(じぶん)の欠点(けつてん)を考(かんが)へもつて歩(ある)きますから、240姫(ひめ)様(さま)何卒(どうぞ)ユツクリ歩(ある)いて下(くだ)さいませ。241さう急(いそ)いでお歩(ある)き下(くだ)さると、242自分(じぶん)の欠点(けつてん)を考(かんが)へる暇(ひま)が厶(ござ)いませぬからな』
243初稚(はつわか)『よい考(かんが)へは到底(たうてい)人間(にんげん)では出(で)ませぬよ。244神(かみ)様(さま)にお願(ねが)ひなさいませ。245さうすれば刹那(せつな)刹那(せつな)に気(き)をつかせて貰(もら)ひます。246今(いま)から考(かんが)へたつてよい考(かんが)へが出(で)るはずは厶(ござ)いませぬわ』
247真純(ますみ)『然(しか)らば惟神(かむながら)に任(まか)して参(まゐ)りませう。248取越(とりこ)し苦労(くらう)は致(いた)しますまい』
249初稚(はつわか)『ア、250そこへお気(き)がついたらそれで宜(よろ)しう厶(ござ)います。251貴方(あなた)はいつも宣伝歌(せんでんか)の末尾(まつび)に惟神(かむながら)々々(かむながら)と仰有(おつしや)るでせう。252それさへお忘(わす)れにならなければそれで宜(よろ)しう厶(ござ)います。253サア急(いそ)いで参(まゐ)りませう』
254玉国(たまくに)『姫(ひめ)様(さま)、255真純彦(ますみひこ)を通(とほ)し結構(けつこう)な御(ご)教訓(けうくん)を賜(たま)はりまして、256玉国別(たまくにわけ)も初(はじ)めて落付(おちつ)きました。257有難(ありがた)く感謝(かんしや)致(いた)します』
258初稚(はつわか)『感謝(かんしや)なんかして頂(いただ)くと妾(わたし)困(こま)りますわ』
259と一層(いつそう)足(あし)を早(はや)めて進(すす)み行(ゆ)く。
260 真純彦(ますみひこ)は道々(みちみち)小声(こごゑ)に謡(うた)ひ乍(なが)ら、261二人(ふたり)の後(あと)について行(ゆ)く。
262真純彦(ますみひこ)『あゝ有難(ありがた)や有難(ありがた)や
263待(ま)ちに待(ま)つたるエルサレム
264吾(わが)目(め)の前(まへ)に開展(かいてん)し
265何(なん)とはなしに村肝(むらきも)の
266心(こころ)は勇(いさ)み身(み)は踊(をど)り
267足(あし)の歩(あゆ)みも軽々(かるがる)と
268知(し)らずに早(はや)くなりにけり
269只(ただ)何事(なにごと)も惟神(かむながら)
270神(かみ)に任(まか)せと姫(ひめ)様(さま)の
271千古(せんこ)不滅(ふめつ)の御(ご)教訓(けうくん)
272今更(いまさら)乍(なが)ら有難(ありがた)く
273感謝(かんしや)の涙(なみだ)漂(ただよ)ひぬ
274神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
275善(ぜん)と悪(あく)とを立分(たてわ)ける
276此(この)世(よ)を造(つく)りし神直日(かむなほひ)
277心(こころ)も広(ひろ)き大直日(おほなほひ)
278只(ただ)何事(なにごと)も人(ひと)の世(よ)は
279直日(なほひ)に見直(みなほ)し聞直(ききなほ)し
280身(み)の過(あやま)ちは宣(の)り直(なほ)す
281神(かみ)の教(をしへ)を聞(き)き乍(なが)ら
282ついうかうかと忘(わす)れ行(ゆ)く
283人(ひと)の心(こころ)ぞ浅間(あさま)しき
284取越(とりこし)苦労(くらう)や過越(すぎこし)の
285苦労(くらう)をやめて刹那心(せつなしん)
286善悪(ぜんあく)正邪(せいじや)に超越(てうゑつ)し
287只(ただ)何事(なにごと)も皇神(すめかみ)の
288心(こころ)のままに任(まか)しなば
289いかなる重(おも)き神業(しんげふ)も
290いと平(たひら)けく安(やす)らけく
291奉仕(ほうし)し得(う)べき真諦(しんたい)を
292今更(いまさら)の如(ごと)悟(さと)りけり
293朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
294月(つき)は盈(み)つともかくるとも
295仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
296神(かみ)の誠(まこと)の御教(みをしへ)に
297従(したが)ひ進(すす)む身(み)なりせば
298如何(いか)なる枉(まが)の猛(たけ)びをも
299いと安々(やすやす)と免(まぬが)れむ
300次第(しだい)次第(しだい)にエルサレム
301山(やま)の景色(けしき)も近(ちか)づきて
302茂(しげ)り合(あ)ひたる橄欖(かんらん)の
303木(こ)の葉(は)の風(かぜ)にそよぐさま
304見(み)ゆる許(ばか)りになりにけり
305いよいよこれよりゲッセマネ
306神(かみ)の集(あつ)まる花園(はなぞの)に
307時々(じじ)刻々(こくこく)に近(ちか)づきて
308別(わか)れて程(ほど)経(へ)し神司(かむつかさ)
309三千彦(みちひこ)伊太彦(いたひこ)其(その)外(ほか)の
310神(かみ)の柱(はしら)に会(あ)ふならむ
311思(おも)へば思(おも)へば勇(いさ)ましや
312あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
313御霊(みたま)幸(さきは)ひましませよ』
314と謡(うた)ひ乍(なが)ら315漸(やうや)くにしてヨルダン川(がは)の渡(わた)し場(ば)に着(つ)いた。316昔(むかし)はここに黄金橋(わうごんけう)と云(い)ふ黄金(こがね)の橋(はし)のかかつてゐた処(ところ)である。317川(かは)の西岸(せいがん)には日出別(ひのでわけの)命(みこと)数多(あまた)の神司(かむつかさ)を従(したが)へ、318幾百旒(いくひやくりう)とも知(し)れぬ紫(むらさき)赤(あか)白(しろ)黄(き)浅黄(あさぎ)の旗(はた)を河風(かはかぜ)になびかせ、319初稚姫(はつわかひめ)一行(いつかう)の到着(たうちやく)を待(ま)たせ玉(たま)ひつつあつた。320日出別(ひのでわけの)命(みこと)の命(めい)によつて新造(しんざう)の無棚舟(たななしぶね)は、321四(よ)人(にん)の水夫(かこ)が櫓櫂(ろかい)を操(あやつ)り乍(なが)ら、322此方(こなた)に向(むか)つて漕(こ)ぎ来(きた)る。323川(かは)の向(むか)ふには、324ウラーウラーの声(こゑ)山岳(さんがく)も揺(ゆる)ぐ許(ばか)りに聞(きこ)えて来(き)た。325初稚姫(はつわかひめ)一行(いつかう)は迎(むか)への舟(ふね)に身(み)を托(たく)し悠々(いういう)として向(むか)ふ岸(ぎし)に渡(わた)り、326川岸(かはぎし)に着(つ)くや日出別(ひのでわけの)命(みこと)は初稚姫(はつわかひめ)の側(そば)にツと寄(よ)り添(そ)ひ、327固(かた)き握手(あくしゆ)を交換(かうくわん)した。328次(つ)いで玉国別(たまくにわけ)、329真純彦(ますみひこ)に握手(あくしゆ)を交(か)はし、330数百(すうひやく)人(にん)の神司(かむつかさ)や信徒(まめひと)に前後(ぜんご)を守(まも)られて、331安(やす)の河原(かはら)と称(とな)へられたるゲッセマネの園(その)へと練(ね)り行(ゆ)く事(こと)となつた。
332(大正一二・七・一八 旧六・五 於祥雲閣 北村隆光録)
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