霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一六章 泥足坊(でいだるばう)〔一六七二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第65巻 山河草木 辰の巻 篇:第3篇 虎熊惨状 よみ(新仮名遣い):とらくまさんじょう
章:第16章 泥足坊 よみ(新仮名遣い):でいだるぼう 通し章番号:1672
口述日:1923(大正12)年07月17日(旧06月4日) 口述場所:祥雲閣 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年4月14日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]: 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ:スーラヤの湖(スダルマ湖の別名) データ凡例: データ最終更新日:2018-07-07 22:28:58 文字数:2548 OBC :rm6516
愛善世界社版:183頁 八幡書店版:第11輯 675頁 修補版: 校定版:191頁 普及版:84頁 初版: ページ備考:
001神(かみ)の教(をしへ)の三千彦(みちひこ)が
002スダルマ湖水(こすい)の西岸(せいがん)に
003無事(ぶじ)安着(あんちやく)の折(をり)もあれ
004初稚姫(はつわかひめ)のあれまして
005三五教(あななひけう)の宣伝(せんでん)は
006同行(どうかう)ならぬと手厳(てきび)しく
007いましめられて是非(ぜひ)もなく
008伴(ともな)ひ来(きた)りしデビス姫(ひめ)
009涙(なみだ)とともに袂(たもと)をば
010別(わか)ちて一人(ひとり)スタスタと
011姫(ひめ)の身(み)の上(うへ)案(あん)じつつ
012ハルセイ山(ざん)の峠(たうげ)をば
013半(なかば)登(のぼ)りし折柄(をりから)に
014道(みち)のかたへに悲(かな)しげに
015倒(たふ)れて泣(な)ける女(をんな)あり
016何人(なにびと)ならむと立(たち)寄(よ)つて
017つらつら見(み)れば此(こ)は如何(いか)に
018年(とし)は二八(にはち)の花盛(はなざか)り
019伊太彦(いたひこ)司(つかさ)が最愛(さいあい)の
020ブラヷーダ姫(ひめ)と覚(さと)りしゆ
021労(いた)はり助(たす)け介抱(かいはう)し
022厚(あつ)き情(なさけ)にほだされて
023胸(むね)に焔(ほのほ)の炎々(えんえん)と
024立(たち)上(のぼ)りたる苦(くる)しさに
025心(こころ)は同(おな)じ恋(こひ)の暗(やみ)
026月下(げつか)に抱(いだ)き泣(な)きゐたる
027時(とき)しもあれやデビス姫(ひめ)
028ここに突然(とつぜん)現(あら)はれて
029心(こころ)の迷(まよ)ひを説(と)き明(あ)かす
030二人(ふたり)は恋(こひ)の夢(ゆめ)さめて
031汚(けが)れし心(こころ)を悔悟(くわいご)なし
032詫(わ)ぶればデビスに非(あら)ずして
033木花姫(このはなひめ)の御(おん)化身(けしん)
034尊(たふと)き神(かみ)の御(お)試(ため)しに
035会(あ)ひし二人(ふたり)の胸(むね)の裡(うち)
036可憐(かれん)の乙女(をとめ)を振(ふり)棄(す)てて
037人跡(じんせき)稀(まれ)な山径(やまみち)を
038只(ただ)スタスタと登(のぼ)り行(ゆ)く
039ハルセイ山(ざん)の峰(みね)を吹(ふ)く
040嵐(あらし)に裾(すそ)をば煽(あふ)られて
041足(あし)もトボトボ頂上(ちやうじやう)に
042上(のぼ)りて見(み)れば三(さん)人(にん)の
043見知(みし)らぬ男(をとこ)が朧夜(おぼろよ)の
044木蔭(こかげ)にひそみ何事(なにごと)か
045声(こゑ)高々(たかだか)と話(はな)し居(ゐ)る
046三千彦(みちひこ)心(こころ)に思(おも)ふやう
047これぞ全(まつた)く山賊(さんぞく)の
048往来(ゆきき)の人(ひと)を待(ま)ち構(かま)へ
049宝(たから)を奪(うば)ふその為(ため)に
050よからぬ事(こと)の相談(さうだん)を
051なし居(ゐ)るならむと傍(かたはら)の
052木蔭(こかげ)に腰(こし)を打(うち)卸(おろ)し
053様子(やうす)如何(いか)にと聞(き)き居(ゐ)たる。
054甲(かふ)『オイ、055随分(ずいぶん)恐(おそ)ろしかつたぢやないか。056今(いま)通(とほ)つた奴(やつ)は、0561一体(いつたい)ありや何(なん)だらうな。057何(なに)程(ほど)勇気(ゆうき)を出(だ)して呼(よ)びとめようと思(おも)つても、058あまり先方(むかう)が大(おほ)きな男(をとこ)だものだから、059怖気(おぢけ)がついて、060自然(しぜん)に身体(からだ)が慄(ふる)ひ、061どうする事(こと)も出来(でき)なかつたのだ。062あんな奴(やつ)に出会(であ)ふと泥(どろ)さまもサツパリ駄目(だめ)だのう』
063乙(おつ)『うん、064彼奴(あいつ)ア何(なん)でもデーダラボッチに違(ちが)ひないぞ。065大(おほ)きな法螺貝(ほらがひ)の様(やう)な声(こゑ)を出(だ)しやがつて、066四辺(あたり)の山(やま)や谷(たに)を響(ひび)かして通(とほ)りやがつた時(とき)の怖(こは)さと云(い)つたら、067体(からだ)が縮(ちぢ)まる様(やう)だつた。068睾丸(きんたま)は、0681何処(どこ)かへ転宅(てんたく)する。069心臓院(しんざうゐん)の庵主(あんしゆ)さまは荷物(にもつ)を引担(ひつかた)げて遁走(とんそう)する。070肺臓院(はいざうゐん)の半鐘(はんしよう)は急(きふ)を訴(うつた)へる。071五臓郡(ござうぐん)六腑村(ろくふむら)の百姓(ひやくしやう)は鍬(くは)を担(かた)げて逃(に)げ出(だ)す。072本当(ほんたう)に小宇宙(せううちう)の君子国(くんしこく)は、073地異(ちい)天変(てんぺん)の乱痴気(らんちき)騒(さわ)ぎだつたよ。074その結果(けつくわ)、075俺(おれ)の顔(かほ)まで真青(まつさを)になつて了(しま)つたよ』
076丙(へい)『ハヽヽヽヽ、077弱(よわ)い奴(やつ)だな。078あんな小(ちひ)さいデーダラボッチがあるかい。079デーダラボッチと云(い)へば大道坊(おほだうばう)とも泥足坊(でいだるばう)とも別称(べつしよう)して、080スメール山(ざん)を足(あし)で蹴(け)り倒(たふ)し、081印度(いんど)の海(うみ)を埋(う)めようとするやうな大道者(おほだうもの)だ。082俺(おれ)達(たち)の大(おほ)道路妨(だうろばう)とはチツとは選(せん)を異(こと)にしてゐるが、083然(しか)し乍(なが)ら今(いま)通(とほ)つた奴(やつ)は屹度(きつと)比丘(びく)に違(ちが)ひないぞ。084貴様(きさま)の目(め)はあんまり、085びつくりして目(め)の黒玉(くろたま)が転宅(てんたく)して、086白目(しろめ)許(ばか)りになり、087視神経(ししんけい)の作用(さよう)で、088さう大(おほ)きく見(み)えたのだらう。089大(おほ)きいと云(い)つても八(はつ)尺(しやく)位(くらゐ)のものだ。090キツト彼(あ)れは軍人(ぐんじん)上(あが)りの比丘(びく)に違(ちが)ひないわ。091疑心(ぎしん)暗鬼(あんき)を生(しやう)ずと云(い)つて、092恐(こは)い恐(こは)いと思(おも)つてるから、093そんな幻映(げんえい)を生(しやう)じたのだ。094チツとしつかりせぬと此(この)商売(しやうばい)は駄目(だめ)だぞ』
095乙(おつ)『成程(なるほど)比丘(びく)かも知(し)れぬ。096体中(からだぢう)が比丘(びく)々々(びく)しよつた。097ハルセイ峠(たうげ)の二度(にど)ビツクリと云(い)つて、098如何(いか)に聖人(せいじん)君子(くんし)の泥棒(どろばう)さまでも、099此(この)峠(たうげ)丈(だ)けは一度(いちど)や二度(にど)はビツクリする事(こと)はあると、100昔(むかし)から定評(ていひやう)があるのだ。101三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)が「胴(どう)を据(す)ゑ、102腹帯(はらおび)をしめて居(を)らぬと、103ビツクリ箱(ばこ)が開(あ)くぞよ、104今(いま)にビツクリして目(め)まひが来(く)るぞよ。105フン延(の)びる人民(じんみん)沢山(たつぴつ)出来(でき)るぞよ」と謡(うた)ひもつて通(とほ)りよつた。106チとビツクリに慣(な)れて置(お)かぬと、107吾々(われわれ)の商売(しやうばい)は真逆(まさか)の時(とき)に、108十二分(じふにぶん)の活動(くわつどう)が出来(でき)ぬからのう。109何(なん)と云(い)つても貴様(きさま)等(たち)二人(ふたり)は新米(しんまい)だから仕方(しかた)がないわ』
110甲(かふ)『オイ、111何(なに)は兎(と)もあれ、112今晩(こんばん)はテンと仕事(しごと)がないぢやないか。113折角(せつかく)香(かう)ばしさうな奴(やつ)が来(き)たと思(おも)へば、114吾(われ)は伊太彦(いたひこ)宣伝使(せんでんし)なんて、115肝玉(きもたま)の飛(と)び出(で)る様(やう)な声(こゑ)で通(とほ)つて了(しま)ひやがる。116今度(こんど)は四五(しご)人(にん)の足音(あしおと)がしたので一働(ひとはたら)きやらうと思(おも)ひ、117捻鉢巻(ねぢはちまき)で木蔭(こかげ)に潜(ひそ)んで居(ゐ)れば、118デーダラボッチのやうな比丘(びく)が通(とほ)りやがる。119本当(ほんたう)に怪体(けたい)が悪(わる)いぢやないか。120俺(おれ)達(たち)のやうな新米(しんまい)は到底(たうてい)あんな奴(やつ)にかかつたら駄目(だめ)だ。121年(とし)の若(わか)い、122足(あし)の弱(よわ)い、123女(をんな)でも通(とほ)りよると、124都合(つがふ)が宜(い)いのだけどなア』
125乙(おつ)『さうだ。126俺(おれ)達(たち)は人間(にんげん)相手(あひて)の商売(しやうばい)だ。127人間(にんげん)は男(をとこ)許(ばか)りぢやない。128爺(ぢぢ)も婆(ばば)もある。129時(とき)には若(わか)い女(をんな)もあるだらう。130小口(こぐち)から無理(むり)に手(て)を出(だ)すと失敗(しくじ)るから、131マアよい鳥(とり)が来(く)る迄(まで)、132ここで待(ま)つのだな』
133甲(かふ)『待(ま)つ身(み)につらき沖(おき)の舟(ふね)
134 ほんに遣(や)る瀬(せ)がないわいな
135  チヽツヽシヤン シヤン シヤン
136アツハヽヽヽヽ』
137丙(へい)『馬鹿(ばか)、138何(なに)を惚(とぼ)けてゐるのだ。139千騎(せんき)一騎(いつき)ぢやないか』
140甲(かふ)『何(なに)、141歌(うた)でも謡(うた)つて肝玉(きもだま)を錬(ね)つて大(おほ)きくしてるのだ。142英雄(えいゆう)閑日月(かんじつげつ)あり、143綽々(しやくしやく)として余裕(よゆう)を存(そん)する事(こと)大空(おほぞら)の如(ごと)しだ』
144乙(おつ)『ヘン、145よう仰有(おつしや)りますわい。146鮟鱇(あんこう)の様(やう)な口(くち)から阿呆(あはう)らしい、147そんな歌(うた)がよく謡(うた)へたものだ。148貴様(きさま)の口(くち)つたら丸(まる)で河獺(とます)の様(やう)だぞ。149貴様(きさま)が飯(めし)を喰(くら)ふ時(とき)は、150狐(きつね)のやうに口(くち)を尖(とが)らし、151鼻(はな)が曲(まが)り、152顔(かほ)一面(いちめん)が丸(まる)で馬(うま)のやうに躍動(やくどう)するんだからな。153そして頭(あたま)許(ばか)り無茶(むちや)苦茶(くちや)に動(うご)かしやがつて、154額口(ひたひぐち)から上(うへ)が縦(たて)に振動(ふりうご)くと云(い)ふ怪体(けたい)な御(ご)面相(めんさう)だから、155泥棒(どろばう)の嚇(おど)し文句(もんく)もサツパリ駄目(だめ)だ。156驚(おどろ)く処(どころ)か向(むか)ふの方(はう)から笑(わら)つてかかるのだもの、157飯(めし)食(く)ふ時(とき)ばかりか、158一言(ひとくち)喋(しやべ)つても顔中(かほぢう)が縦横(たてよこ)十文字(じふもんじ)に躍動(やくどう)すると云(い)ふ、159珍(ちん)な代物(しろもの)だからサツパリ駄目(だめ)だい。160一層(いつそう)の事(こと)、161貴様(きさま)は泥棒(どろばう)を廃(よ)して、162ハルナの都(みやこ)の裏町辺(うらまちへん)で小屋者(こやもの)となり、163顔芸(かほげい)でもしたら、164人気(にんき)を呼(よ)ぶかも知(し)れないぞ。165ハヽヽヽヽ』
166甲(かふ)『コリヤ、167こんな山(やま)の上(うへ)で人(ひと)の顔(かほ)の棚卸(たなおろ)しばかりしやがつて、168あまり馬鹿(ばか)にするな。169之(これ)でも泥棒(どろばう)さまとして、170相手(あひて)によつては睨(にら)みが利(き)くのだ。171マア俺(おれ)の過去(くわこ)は咎(とが)めず、172将来(しやうらい)の活動(くわつどう)を見(み)てをれ。173「あんな者(もの)がこんな者(もの)であつたか」と申(まを)して、174貴様(きさま)等(たち)がビツクリするやうな大事業(だいじげふ)をして見(み)せるわ』
175乙(おつ)『ヘン、176御(お)手並(てなみ)拝見(はいけん)した上(うへ)で、177その業託(ごふたく)は聞(き)かして貰(もら)はうかい』
178 三千彦(みちひこ)は三(さん)人(にん)の話(はなし)を、179木蔭(こかげ)に潜(ひそ)んで面白(おもしろ)がつて聞(き)いてゐた。
180三千彦(みちひこ)(独言(ひとりごと))『然(しか)し乍(なが)らブラヷーダ姫(ひめ)は後(あと)からここを上(のぼ)つて来(く)るに違(ちが)ひない。181屹度(きつと)此奴(こいつ)等(ら)三(さん)人(にん)の為(ため)に裸体(はだか)にしられ、182凌辱(りようじよく)を受(う)けるかも知(し)れないから、183ブラヷーダさまが無事(ぶじ)、184ここを通過(つうくわ)する迄(まで)、185此(この)木蔭(こかげ)に潜(ひそ)んで待(ま)つて居(を)らう。186もし事(こと)急(きふ)なりと見(み)れば、187デーダラボッチだと云(い)つて嚇(おど)かして散(ち)らしてやれば宜(よ)いのだ。188うん、189さうださうだ』
190と一人(ひとり)頷(うなづ)き乍(なが)ら息(いき)をこらして控(ひか)へてゐる。
191 折(をり)から細(ほそ)いやさしい女(をんな)の宣伝歌(せんでんか)が聞(きこ)えて来(き)た。192泥棒(どろぼう)連(れん)は耳(みみ)を澄(す)まして無言(むごん)の儘(まま)、193様子(やうす)を窺(うかが)つてゐる。
194(大正一二・七・一七 旧六・四 於祥雲閣 北村隆光録)
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