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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第65巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 盗風賊雨
第1章 感謝組
第2章 古峽の山
第3章 岩侠
第4章 不聞銃
第5章 独許貧
第6章 噴火口
第7章 反鱗
第2篇 地異転変
第8章 異心泥信
第9章 劇流
第10章 赤酒の声
第11章 大笑裡
第12章 天恵
第3篇 虎熊惨状
第13章 隔世談
第14章 山川動乱
第15章 饅頭塚
第16章 泥足坊
第17章 山颪
第4篇 神仙魔境
第18章 白骨堂
第19章 谿の途
第20章 熊鷹
第21章 仙聖郷
第22章 均霑
第23章 義侠
第5篇 讃歌応山
第24章 危母玉
第25章 道歌
第26章 七福神
余白歌
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霊界物語
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第65巻(辰の巻)
> 第4篇 神仙魔境 > 第23章 義侠
<<< 均霑
(B)
(N)
危母玉 >>>
第二三章
義侠
(
ぎけふ
)
〔一六七九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第65巻 山河草木 辰の巻
篇:
第4篇 神仙魔境
よみ(新仮名遣い):
しんせんまきょう
章:
第23章 義侠
よみ(新仮名遣い):
ぎきょう
通し章番号:
1679
口述日:
1923(大正12)年07月17日(旧06月4日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年4月14日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6523
愛善世界社版:
258頁
八幡書店版:
第11輯 702頁
修補版:
校定版:
271頁
普及版:
116頁
初版:
ページ備考:
001
仙聖郷
(
せんせいきやう
)
の
村人
(
むらびと
)
は、
002
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
土地
(
とち
)
の
財産
(
ざいさん
)
は
全部
(
ぜんぶ
)
バータラ
家
(
け
)
のものとなり、
003
何
(
いづ
)
れも
悲惨
(
みじめ
)
な
小作人
(
こさくにん
)
となり、
004
仙聖郷
(
せんせいきやう
)
に
住
(
す
)
み
乍
(
なが
)
ら、
005
実
(
じつ
)
に
悲惨
(
ひさん
)
の
生活
(
せいくわつ
)
を
送
(
おく
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
006
所
(
ところ
)
が
偶然
(
ぐうぜん
)
の
出来事
(
できごと
)
より
山林
(
さんりん
)
田畑
(
でんぱた
)
を
作
(
つく
)
れるだけ
与
(
あた
)
へられて、
007
嬉々
(
きき
)
として
其
(
その
)
業
(
げふ
)
を
楽
(
たの
)
しみ、
008
又
(
また
)
未亡人
(
みばうじん
)
のスマナーを
神
(
かみ
)
の
如
(
ごと
)
くに
敬
(
うやま
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
009
甲
(
かふ
)
乙
(
おつ
)
丙
(
へい
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
は
山林
(
さんりん
)
に
薪
(
たきぎ
)
をからむと
出
(
い
)
で
往
(
ゆ
)
き、
010
木蔭
(
こかげ
)
に
腰
(
こし
)
打
(
う
)
ち
卸
(
おろ
)
し、
011
雑談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
012
甲
(
かふ
)
『オイ、
013
世
(
よ
)
も
変
(
かは
)
れば
変
(
かは
)
るものぢやないか。
014
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
世界
(
せかい
)
から
羨
(
うらや
)
まれる
仙聖郷
(
せんせいきやう
)
の
住民
(
ぢうみん
)
であり
乍
(
なが
)
ら、
015
祖父
(
そふ
)
の
代
(
だい
)
からみじめな
小作人
(
こさくにん
)
の
境遇
(
きやうぐう
)
に
陥
(
おちい
)
り、
016
働
(
はたら
)
いて
作
(
つく
)
つた
米
(
こめ
)
の
大部分
(
だいぶぶん
)
はバータラ
家
(
け
)
に
納
(
をさ
)
め、
017
肝腎
(
かんじん
)
の
米
(
こめ
)
は
一粒
(
ひとつぶ
)
も
口
(
くち
)
に
入
(
はい
)
らず、
018
裏作
(
うらさく
)
の
麦類
(
むぎるゐ
)
を
飯米
(
はんまい
)
として
露命
(
ろめい
)
を
繋
(
つな
)
いで
来
(
き
)
たが、
019
今年
(
ことし
)
から、
020
お
米
(
こめ
)
を
頂
(
いただ
)
く
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
るやうになつたのも、
021
全
(
まつた
)
く
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のおかげだよ。
022
是
(
これ
)
でこそ
仙聖郷
(
せんせいきやう
)
相当
(
さうたう
)
の
生活
(
くらし
)
が
出来
(
でき
)
る
事
(
こと
)
だらう、
023
本当
(
ほんたう
)
に
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
だなア。
024
テーラの
悪人
(
あくにん
)
も
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
すつかり
改心
(
かいしん
)
するし、
025
泥棒
(
どろばう
)
迄
(
まで
)
があのやうに
田畑
(
たはた
)
を
耕
(
たがや
)
すやうになつたのだから、
026
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
も
変
(
かは
)
つたものだなア』
027
乙
(
おつ
)
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふても
天与
(
てんよ
)
の
産物
(
さんぶつ
)
を
独占
(
どくせん
)
する
者
(
もの
)
があつた
為
(
た
)
め、
028
吾々
(
われわれ
)
は
苦
(
くる
)
しんで
来
(
き
)
たのだ。
029
斯
(
か
)
うなつたら
村
(
むら
)
に
苦情
(
くじやう
)
も
起
(
おこ
)
らず、
030
愛神
(
あいしん
)
愛人
(
あいじん
)
の
道
(
みち
)
も
完全
(
くわんぜん
)
に
行
(
おこな
)
はるるであらう。
031
何程
(
なにほど
)
信心
(
しんじん
)
せよと
云
(
い
)
ふても、
032
今日
(
けふ
)
食
(
く
)
ふ
飯
(
めし
)
も
無
(
な
)
いやうの
事
(
こと
)
では
信心
(
しんじん
)
も
出来
(
でき
)
ず、
033
人
(
ひと
)
が
何程
(
なにほど
)
困
(
こま
)
つとつても
助
(
たす
)
ける
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ず、
034
人
(
ひと
)
の
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
るものでも、
035
叩
(
たた
)
き
落
(
おと
)
して
取
(
と
)
りたいやうに
思
(
おも
)
ふものだが、
036
かうして
平等
(
べうどう
)
になつた
以上
(
いじやう
)
は、
037
悪事
(
あくじ
)
悪念
(
あくねん
)
は
断
(
た
)
たれるであらう。
038
テーラの
奴
(
やつ
)
、
039
村中
(
むらぢう
)
の
憎
(
にく
)
まれ
者
(
もの
)
だつたが、
040
善悪
(
ぜんあく
)
不二
(
ふじ
)
と
云
(
い
)
ふて、
041
あの
奴
(
やつ
)
が
彼様
(
あんな
)
悪事
(
あくじ
)
を
企
(
たく
)
みよつたものだから、
042
吾々
(
われわれ
)
はこんな
結構
(
けつこう
)
に
成
(
な
)
つたのだ。
043
悪人
(
あくにん
)
だつて
憎
(
にく
)
めぬよ。
044
悪
(
あく
)
が
変
(
へん
)
じて
善
(
ぜん
)
となり、
045
善
(
ぜん
)
が
変
(
へん
)
じて
悪
(
あく
)
となると
云
(
い
)
ふのは、
046
大方
(
おほかた
)
こんな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふたのだらうよ』
047
丙
(
へい
)
『テーラの
奴
(
やつ
)
、
048
随分
(
ずいぶん
)
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
を
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
苦
(
くる
)
しめよつたが、
049
彼奴
(
あいつ
)
もこれで
一切
(
いつさい
)
の
罪
(
つみ
)
亡
(
ほろ
)
ぼしになるであらう。
050
仲々
(
なかなか
)
気
(
き
)
が
利
(
き
)
いた
事
(
こと
)
をやつた。
051
虎熊山
(
とらくまやま
)
の
泥棒
(
どろばう
)
を
引
(
ひつ
)
ぱつて
来
(
き
)
て、
052
あんな
荒
(
あら
)
い
仕事
(
しごと
)
をやり、
053
又
(
また
)
泥棒
(
どろばう
)
を
役人
(
やくにん
)
に
仕立
(
した
)
てて、
054
財産
(
ざいさん
)
を
横領
(
わうりやう
)
しようとしたのは、
055
吾々
(
われわれ
)
の
到底
(
たうてい
)
考
(
かんが
)
へ
付
(
つ
)
かない
芸当
(
げいたう
)
だ。
056
泥棒
(
どろばう
)
だつて
元
(
もと
)
からの
悪人
(
あくにん
)
ではないと
見
(
み
)
えて、
057
あの
通
(
とほ
)
り
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
迄
(
まで
)
神妙
(
しんめう
)
に
働
(
はたら
)
いて
居
(
ゐ
)
るぢやないか、
058
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
も、
059
も
些
(
すこ
)
し
甲斐性
(
かひしやう
)
があつたら、
060
彼
(
あ
)
れ
達
(
たち
)
の
仲間
(
なかま
)
に
入
(
はい
)
つて
居
(
ゐ
)
たかも
知
(
し
)
れないからなア』
061
甲
(
かふ
)
『お
前
(
まへ
)
のやうな
気
(
き
)
の
弱
(
よわ
)
い
男
(
をとこ
)
はまア
乞食
(
こじき
)
位
(
くらゐ
)
のものだなア。
062
俺
(
おれ
)
だつたら
屹度
(
きつと
)
泥棒
(
どろばう
)
の
親分
(
おやぶん
)
位
(
くらゐ
)
に、
063
あのままでモウ
一二
(
いちに
)
年
(
ねん
)
経
(
た
)
つたなら
成
(
な
)
るかも
分
(
わか
)
らなかつたよ。
064
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
二三
(
にさん
)
年前
(
ねんぜん
)
から
考
(
かんが
)
へて
居
(
ゐ
)
たが、
065
そんな
事
(
こと
)
をウツカリ
相談
(
さうだん
)
する
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
066
一人
(
ひとり
)
の
泥棒
(
どろばう
)
も
心細
(
こころぼそ
)
いなり、
067
泣
(
な
)
き
泣
(
な
)
き
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
暮
(
く
)
れて
来
(
き
)
たのだ。
068
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らテーラの
奴
(
やつ
)
、
069
三五教
(
あななひけう
)
の
先生
(
せんせい
)
の
前
(
まへ
)
で、
070
「
村人
(
むらびと
)
の
僕
(
しもべ
)
となつて
尽
(
つく
)
しますから
許
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さい」といつて
置
(
お
)
き
乍
(
なが
)
ら、
071
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
少
(
すこ
)
し
見幕
(
けんまく
)
が
荒
(
あら
)
いぢやないか。
072
鼻
(
はな
)
を
ピコ
づかせ
乍
(
なが
)
ら
073
「お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
がこんな
結構
(
けつこう
)
になつたのも
俺
(
おれ
)
のお
蔭
(
かげ
)
だ」と
云
(
い
)
ふて
威張
(
ゐば
)
りやがる。
074
番太
(
ばんた
)
のくせに
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
頭
(
あたま
)
をおさへようとするのだから
業腹
(
ごふはら
)
だ。
075
一
(
ひと
)
つ
青年隊
(
せいねんたい
)
を
召集
(
せうしふ
)
して、
076
テーラを
元
(
もと
)
の
通
(
とほ
)
り
番太
(
ばんた
)
にこき
卸
(
おろ
)
した
方
(
はう
)
が
慢心
(
まんしん
)
せいでよいかも
知
(
し
)
れないよ』
077
乙
(
おつ
)
『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな、
078
四民
(
しみん
)
平等
(
べうどう
)
とか、
079
衡平
(
かうへい
)
運動
(
うんどう
)
とかが、
080
盛
(
さかん
)
に
行
(
おこな
)
はれて
居
(
ゐ
)
る
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に、
081
いつ
迄
(
まで
)
も
怪体
(
けたい
)
な
思想
(
しさう
)
に
因
(
とら
)
へられて
居
(
ゐ
)
るものぢやない。
082
テーラは
吾々
(
われわれ
)
の
恩人
(
おんじん
)
見
(
み
)
たやうなものだ。
083
バータラ
家
(
け
)
があんな
目
(
め
)
に
遇
(
あ
)
つたのも、
084
何
(
なに
)
かの
因縁
(
いんねん
)
だらう、
085
吾々
(
われわれ
)
人民
(
じんみん
)
の
膏血
(
かうけつ
)
を
絞
(
しぼ
)
り、
086
贅沢
(
ぜいたく
)
三昧
(
ざんまい
)
に
暮
(
くら
)
して
来
(
き
)
た
報
(
むく
)
いだ。
087
仙聖郷
(
せんせいきやう
)
三百
(
さんびやく
)
人
(
にん
)
の
恨
(
うらみ
)
が
凝結
(
ぎようけつ
)
してあんな
惨事
(
さんじ
)
が
突発
(
とつぱつ
)
したのだ。
088
スマナー
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
も、
089
元
(
もと
)
は
貧民
(
ひんみん
)
の
腹
(
はら
)
から
生
(
うま
)
れ、
090
バータラ
家
(
け
)
に
拾
(
ひろ
)
ひあげられて
奥様
(
おくさま
)
になられたのだから、
091
吾々
(
われわれ
)
貧民
(
ひんみん
)
の
味方
(
みかた
)
をして
下
(
くだ
)
さつたのだ。
092
人間
(
にんげん
)
と
云
(
い
)
ふものは
自分
(
じぶん
)
が
難儀
(
なんぎ
)
をして
来
(
こ
)
ねば
同情
(
どうじやう
)
の
起
(
おこ
)
るものではない。
093
博愛
(
はくあい
)
だとか、
094
同情
(
どうじやう
)
だとか
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
る
者
(
もの
)
に、
095
一人
(
ひとり
)
も
博愛心
(
はくあいしん
)
や
同情心
(
どうじやうしん
)
を
保
(
たも
)
つて
居
(
ゐ
)
るものはない。
096
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
を
博愛
(
はくあい
)
と、
097
同情
(
どうじやう
)
の
仮面
(
かめん
)
を
被
(
かぶ
)
りて
胡麻
(
ごま
)
かす
贋君子
(
にせくんし
)
、
098
贋聖人
(
にせせいじん
)
ばかりだ。
099
あの
比丘尼
(
びくに
)
様
(
さま
)
こそは
本当
(
ほんたう
)
に
吾々
(
われわれ
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
様
(
さま
)
だ』
100
斯
(
か
)
く
話
(
はな
)
す
所
(
ところ
)
へ、
101
泥酔
(
へべれけ
)
に
酔
(
よ
)
ふてやつて
来
(
き
)
たのは、
102
一
(
いつ
)
たん
恐
(
こは
)
さに
改心
(
かいしん
)
したテーラであつた。
103
テーラは
丸
(
まる
)
い
目
(
め
)
をギヨロツと
剥
(
む
)
き
出
(
だ
)
し、
104
肩
(
かた
)
を
聳
(
そび
)
やかし
乍
(
なが
)
ら、
105
口汚
(
くちぎたな
)
く、
106
テーラ『オイ、
107
其処
(
そこ
)
に
居
(
を
)
る
餓鬼
(
がき
)
はダダ
誰人
(
だれ
)
だい。
108
仙聖郷
(
せんせいきやう
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
テーラ
様
(
さま
)
のお
通
(
とほ
)
りだぞ。
109
早
(
はや
)
く
茲
(
ここ
)
へ
来
(
き
)
て
土下座
(
どげざ
)
を
致
(
いた
)
さぬか。
110
貴様
(
きさま
)
達
(
たち
)
は
此方
(
このはう
)
様
(
さま
)
のお
蔭
(
かげ
)
によつて
親類
(
しんるゐ
)
の
財産
(
ざいさん
)
を
分
(
わ
)
けて
貰
(
もら
)
ひ、
111
何百
(
なんびやく
)
年
(
ねん
)
振
(
ぶ
)
りに
地主
(
ぢぬし
)
となつたのぢやないか。
112
俺
(
おれ
)
が
一
(
ひと
)
つ
頑張
(
ぐわんば
)
らうものなら、
113
親類
(
しんるゐ
)
の
此
(
この
)
方
(
はう
)
の、
114
皆
(
みんな
)
物
(
もの
)
になるのだが、
115
そこは
救世主
(
きうせいしゆ
)
様
(
さま
)
だけあつて、
116
お
前
(
まへ
)
たちの
物
(
もの
)
になるやうに
取
(
とり
)
計
(
はか
)
らつてやつたのだ。
117
恩知
(
おんし
)
らず
奴
(
め
)
、
118
いつも
俺
(
おれ
)
を
番太
(
ばんた
)
扱
(
あつか
)
ひにしやがつて、
119
碌
(
ろく
)
に
挨拶
(
あいさつ
)
もせぬぢやないか』
120
甲
(
かふ
)
『これや、
121
テーラ、
122
貴様
(
きさま
)
は
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
ふのだ。
123
不届
(
ふとど
)
き
千万
(
せんばん
)
にも
虎熊山
(
とらくまやま
)
の
泥棒
(
どろばう
)
と
腹
(
はら
)
を
合
(
あは
)
せ、
124
俺
(
おれ
)
たち
青年隊
(
せいねんたい
)
を
騒擾罪
(
さうぜうざい
)
で
引張
(
ひつぱ
)
らうとしたでは
無
(
な
)
いか。
125
吾々
(
われわれ
)
が
地主
(
ぢぬし
)
となつたのは、
126
先祖
(
せんぞ
)
代々
(
だいだい
)
の
恩恵
(
おんけい
)
が
報
(
むく
)
うて
来
(
き
)
たのだ。
127
恩
(
おん
)
に
着
(
き
)
せない。
128
些
(
ちつ
)
と
心得
(
こころえ
)
ないと
村中
(
むらぢう
)
が
貴様
(
きさま
)
を
恨
(
うら
)
んで
居
(
ゐ
)
るぞ。
129
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
何
(
なに
)
が
恐
(
おそ
)
ろしいと
言
(
い
)
つても、
130
恨
(
うらみ
)
と
人気
(
にんき
)
程
(
ほど
)
恐
(
おそ
)
ろしいものはないぞ。
131
些
(
ちつ
)
と
心得
(
こころえ
)
て
酒
(
さけ
)
を
喰
(
くら
)
はぬやうにせねば、
132
村中
(
むらぢう
)
寄
(
よ
)
つて
集
(
たか
)
つて、
133
叩
(
たた
)
き
払
(
はら
)
ひにせられて
仕舞
(
しま
)
ふぞ。
134
不心得
(
ふこころえ
)
者
(
もの
)
奴
(
め
)
が』
135
テーラ『ナヽ
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
しやがるんだい。
136
此
(
この
)
村
(
むら
)
に
俺
(
おれ
)
に
指一本
(
ゆびいつぽん
)
でもさへる
奴
(
やつ
)
があるかい。
137
グヅグヅ
吐
(
ぬか
)
すと、
138
恐
(
おそ
)
れ
乍
(
なが
)
らと
訴
(
うつた
)
へてやらうか』
139
甲
(
かふ
)
『ハヽヽヽ
貴様
(
きさま
)
の
訴
(
うつた
)
へる
所
(
ところ
)
は、
140
虎熊山
(
とらくまやま
)
の
泥棒
(
どろばう
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
であらう。
141
お
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
乍
(
なが
)
ら
虎熊山
(
とらくまやま
)
は
半
(
なかば
)
以上
(
いじやう
)
爆発
(
ばくはつ
)
し、
142
貴様
(
きさま
)
の
親分
(
おやぶん
)
も
友達
(
ともだち
)
も、
143
木端
(
こつぱ
)
微塵
(
みぢん
)
になつて
居
(
を
)
るのを
知
(
し
)
らぬのか。
144
貴様
(
きさま
)
の
悪行
(
あくぎやう
)
を
村中
(
むらぢう
)
が
連判
(
れんぱん
)
で
上
(
かみ
)
へ
届
(
とど
)
けたならば、
145
それこそ
貴様
(
きさま
)
は、
146
どんな
運命
(
うんめい
)
になるか
分
(
わか
)
らぬのだ。
147
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
は
吾々
(
われわれ
)
も
財産
(
ざいさん
)
が
無
(
な
)
いので、
148
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
つても
官
(
くわん
)
が
取
(
と
)
り
上
(
あ
)
げて
呉
(
く
)
れなんだが、
149
もはや、
150
租税
(
そぜい
)
を
納
(
をさ
)
める
公民
(
こうみん
)
となり、
151
選挙権
(
せんきよけん
)
も
獲得
(
くわくとく
)
したのだから、
152
官
(
くわん
)
だつて
屹度
(
きつと
)
少々
(
せうせう
)
の
無理
(
むり
)
だつて
取
(
と
)
り
上
(
あ
)
げて
呉
(
く
)
れるのだ。
153
何程
(
なにほど
)
貴様
(
きさま
)
が
威張
(
ゐば
)
つても、
154
大勢
(
おほぜい
)
と
一人
(
ひとり
)
とは
叶
(
かな
)
はぬから、
155
好
(
よ
)
い
加減
(
かげん
)
に
引込
(
ひつこ
)
んだらよからう。
156
貴様
(
きさま
)
の
偵羅
(
ていら
)
もモウ
駄目
(
だめ
)
だ。
157
そしてそんな
憎
(
にく
)
まれる
商売
(
しやうばい
)
は
止
(
や
)
めて
仕舞
(
しま
)
へ』
158
テーラ『グヅグヅ
吐
(
ぬか
)
すと、
159
キングレスの
親分
(
おやぶん
)
に
貴様
(
きさま
)
の
悪口
(
わるくち
)
を
報告
(
はうこく
)
して、
160
フン
縛
(
じば
)
つてやるぞ』
161
甲
(
かふ
)
『こら、
162
まだ
昔
(
むかし
)
の
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
るのか。
163
キングレスはもはや
貴様
(
きさま
)
の
様
(
やう
)
な
者
(
もの
)
を
相手
(
あひて
)
にする
男
(
をとこ
)
ぢやないぞ。
164
もう
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
親切
(
しんせつ
)
なる
友達
(
ともだち
)
だ。
165
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
も
遇
(
あ
)
つたら
貴様
(
きさま
)
の
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つて
大変
(
たいへん
)
悔
(
くや
)
んで
居
(
ゐ
)
た。
166
今度
(
こんど
)
グヅグヅ
云
(
い
)
つたら
知
(
し
)
らして
呉
(
く
)
れ。
167
懲戒
(
みせしめ
)
の
為
(
た
)
めに
足
(
あし
)
を
縛
(
しば
)
つて
沙羅
(
さら
)
双樹
(
さうじゆ
)
の
枝
(
えだ
)
に
俯向
(
うつむけ
)
に
吊
(
つ
)
るしてやらう。
168
さうしたら
169
些
(
ちつ
)
とは
改心
(
かいしん
)
をするだらうと
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
たぞ』
170
テーラ『ナヽ
何
(
なに
)
を
吐
(
こ
)
きやがるんだい。
171
そんなことに
驚
(
おどろ
)
く
哥兄
(
あにい
)
ぢやないぞ。
172
グヅグヅ
吐
(
ぬか
)
すと
片
(
かた
)
ツ
端
(
ぱし
)
から
笠
(
かさ
)
の
台
(
だい
)
を
張
(
は
)
り
飛
(
と
)
ばしてやらうか』
173
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く
蠑螺
(
さざえ
)
の
如
(
ごと
)
き
拳骨
(
げんこつ
)
を
固
(
かた
)
め、
174
ブウブウと
風
(
かぜ
)
を
切
(
き
)
つて
撲
(
なぐ
)
りつけむと
暴
(
あば
)
れ
出
(
だ
)
した。
175
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
木
(
き
)
の
幹
(
みき
)
を
盾
(
たて
)
に
取
(
と
)
り、
176
右
(
みぎ
)
へ
左
(
ひだり
)
へと
避
(
さ
)
け
乍
(
なが
)
ら、
177
身
(
み
)
を
守
(
まも
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
178
テーラは
勢
(
いきほひ
)
に
乗
(
じやう
)
じ
怒
(
いか
)
り
狂
(
くる
)
ひ、
179
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
逐
(
お
)
ひかけ
廻
(
まは
)
す。
180
俄
(
にはか
)
に
現
(
あら
)
はれた
大
(
だい
)
の
男
(
をとこ
)
、
181
矢庭
(
やには
)
に
後
(
うしろ
)
からテーラの
首筋
(
くびすぢ
)
をグツと
握
(
にぎ
)
り、
182
雷
(
らい
)
のやうな
声
(
こゑ
)
にて、
183
男
(
をとこ
)
『これや、
184
又
(
また
)
しても
貴様
(
きさま
)
は
暴
(
あば
)
れるのか。
185
もう
了見
(
れうけん
)
はせぬぞ』
186
テーラは
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
縮
(
ちぢ
)
み
上
(
あが
)
り、
187
テーラ『ハイ、
188
マヽ
誠
(
まこと
)
に
済
(
す
)
みませぬ。
189
チヨツ、
190
チヨツ、
191
チヨツと
酒
(
さけ
)
に
喰
(
くら
)
ひ
酔
(
よ
)
つたものだから
脱線
(
だつせん
)
を
致
(
いた
)
しました。
192
キングレス
様
(
さま
)
、
193
どうぞ
是
(
これ
)
限
(
かぎ
)
り
酒
(
さけ
)
も
慎
(
つつし
)
み、
194
乱暴
(
らんばう
)
も
致
(
いた
)
しませぬから、
195
何卒
(
どうぞ
)
許
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さい』
196
キングレス『イヤ、
197
許
(
ゆる
)
す
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬ。
198
幾
(
いく
)
ら
云
(
い
)
つても
貴様
(
きさま
)
は
駄目
(
だめ
)
だ。
199
頭
(
あたま
)
に
穴
(
あな
)
をあけ、
200
逆
(
さか
)
さに
木
(
き
)
に
吊
(
つ
)
り
上
(
あ
)
げ、
201
ちと
血
(
ち
)
を
出
(
だ
)
してやらぬ
事
(
こと
)
には
性念
(
しやうねん
)
が
入
(
い
)
るまい。
202
これこれ
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
方
(
かた
)
、
203
もう
私
(
わたし
)
が
現
(
あら
)
はれた
以上
(
いじやう
)
は
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
です。
204
サア
貴方
(
あなた
)
方
(
がた
)
思
(
おも
)
ふ
存分
(
ぞんぶん
)
、
205
此奴
(
こいつ
)
を
撲
(
なぐ
)
つてやつて
下
(
くだ
)
さい』
206
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
喜
(
よろこ
)
んで
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
走
(
はし
)
り
来
(
きた
)
る。
207
甲
(
かふ
)
『キングレス
様
(
さま
)
、
208
よう
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました。
209
別
(
べつ
)
にこんな
男
(
をとこ
)
を
撲
(
なぐ
)
つた
所
(
ところ
)
で、
210
何
(
なん
)
の
効
(
かう
)
もありませぬから、
211
苦
(
くる
)
しめてやらうとは
思
(
おも
)
ひませぬが、
212
どうぞ
将来
(
しやうらい
)
乱暴
(
らんばう
)
をせないやうに
充分
(
じゆうぶん
)
誡
(
いまし
)
めてやつて
下
(
くだ
)
さいませ』
213
キングレスは、
214
キング『ハイ、
215
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
216
これやテーラ、
217
此
(
この
)
後
(
ご
)
乱暴
(
らんばう
)
を
致
(
いた
)
すと
此
(
この
)
通
(
とほ
)
りだぞ』
218
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く
猫
(
ねこ
)
を
掴
(
つか
)
む
様
(
やう
)
に、
219
強力
(
がうりき
)
に
任
(
まか
)
せ
抓
(
つま
)
み
上
(
あ
)
げ、
220
四五間
(
しごけん
)
向
(
むか
)
ふの
田圃
(
たんぼ
)
の
中
(
なか
)
へ
放
(
ほ
)
りつけた。
221
テーラは
足
(
あし
)
を
打
(
う
)
ちチガチガし
乍
(
なが
)
ら、
222
四這
(
よつばひ
)
になつて
田
(
た
)
の
中
(
なか
)
を
横
(
よこ
)
ぎり、
223
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く。
224
是
(
これ
)
よりテーラは
猫
(
ねこ
)
の
如
(
ごと
)
くにおとなしくなり、
225
又
(
また
)
キングレスは
里人
(
さとびと
)
から
強力
(
がうりき
)
と
崇
(
あが
)
められ、
226
悪人
(
あくにん
)
征服
(
せいふく
)
の
役目
(
やくめ
)
となり、
227
此
(
この
)
仙聖郷
(
せんせいきやう
)
に
持
(
も
)
て
囃
(
はや
)
されて
一生
(
いつしやう
)
を
無事
(
ぶじ
)
に
送
(
おく
)
つた。
228
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
229
(
大正一二・七・一七
旧六・四
於祥雲閣
加藤明子
録)
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