霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二一章 仙聖郷(せんせいきやう)〔一六七七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第65巻 山河草木 辰の巻 篇:第4篇 神仙魔境 よみ(新仮名遣い):しんせんまきょう
章:第21章 仙聖郷 よみ(新仮名遣い):せんせいきょう 通し章番号:1677
口述日:1923(大正12)年07月17日(旧06月4日) 口述場所:祥雲閣 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年4月14日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]: 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2026-06-21 07:10:04 文字数:4065 OBC :rm6521
愛善世界社版:230頁 八幡書店版:第11輯 692頁 修補版: 校定版:241頁 普及版:105頁 初版: ページ備考:
001スマナー『花(はな)は紅(くれなゐ)葉(は)は緑(みどり)
002錦(にしき)の山(やま)の尾(を)めぐらせる
003中国一(ちうごくいち)のパラダイス
004仙聖郷(せんせいきやう)は永久(とこしへ)に
005天国(てんごく)浄土(じやうど)の楽(たのし)みを
006味(あぢ)はひゐたる郷(さと)なれど
007天足彦(あだるのひこ)や胞場姫(えばひめ)の
008醜(しこ)の魔神(まがみ)の血筋(ちすぢ)らが
009いつとはなしに窺(うかが)ひて
010人(ひと)の心(こころ)は日(ひ)に月(つき)に
011荒(すさ)び行(ゆ)くこそうたてけれ
012虎熊山(とらくまやま)の山砦(さんさい)に
013巣(す)を構(かま)へたる盗人(ぬすびと)の
014手下(てした)の奴(やつ)等(ら)が襲来(しふらい)し
015吾(わが)たらちねの父母(ちちはは)を
016いとも無残(むざん)に斬(きり)殺(ころ)し
017あが背(せ)の君(きみ)や兄弟(おとどい)の
018命(いのち)を奪(うば)ひ有金(ありがね)を
019掠(かす)めて帰(かへ)りし悲(かな)しさに
020妾(わらは)は跡(あと)に只(ただ)独(ひと)り
021親(おや)と夫(をつと)と兄弟(きやうだい)の
022菩提(ぼだい)を弔(とむら)ひゐたりしに
023人(ひと)の悪事(あくじ)を剔抉(てつけつ)し
024誣告(ふこく)を以(もつ)て業(わざ)とする
025テーラの曲(まが)が現(あら)はれて
026朝(あさ)な夕(ゆふ)なに口説(くど)き立(た)て
027耳(みみ)の汚(けが)るる世迷言(よまひごと)
028聞(き)くに堪(た)へかねスマナーは
029此(この)世(よ)の中(なか)が厭(いや)になり
030亡(な)き父母(ちちはは)や吾(わが)夫(つま)の
031後(あと)を慕(した)ひて天国(てんごく)に
032上(のぼ)らむものと胸(むね)定(さだ)め
033遺書(ゐしよ)を認(したた)め吾(わが)家(いへ)を
034二日(ふつか)以前(いぜん)に立(たち)出(い)でて
035白骨堂(はくこつだう)に勤経(ごんぎやう)し
036いよいよ茲(ここ)に昇天(しようてん)の
037覚悟(かくご)を定(さだ)むる折(をり)もあれ
038三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)
039神力(しんりき)無双(むそう)の三千彦(みちひこ)が
040現(あら)はれましてスマナーが
041迷(まよ)ふ心(こころ)の無分別(むふんべつ)
042うまらに委曲(つばら)に諭(さと)しまし
043神(かみ)の教(をしへ)を宣(の)らせしゆ
044俄(にはか)に胸(むね)も晴(は)れ渡(わた)り
045真如(しんによ)の日月(じつげつ)輝(かがや)きて
046今(いま)は全(まつた)き神(かみ)の子(こ)と
047生(うま)れ変(かは)りし嬉(うれ)しさよ
048三千彦(みちひこ)司(つかさ)に従(したが)ひて
049吾(わが)家(や)に来(きた)り眺(なが)むれば
050いとど騒(さわ)がし人(ひと)の声(こゑ)
051様子(やうす)あらむと裏口(うらぐち)ゆ
052一間(ひとま)に入(い)りて窺(うかが)へば
053悪逆(あくぎやく)無道(むだう)のテーラさま
054妾(わらは)が家(いへ)の財産(ざいさん)を
055占領(せんりやう)せむと狂(くる)ひ立(た)ち
056ターク、インター其(その)外(ほか)の
057青年隊(せいねんたい)の人々(ひとびと)と
058争(あらそ)ひゐるこそ歎(うた)てけれ
059最早(もはや)妾(わらは)は健在(まめやか)に
060命(いのち)を保(たも)ちて帰(かへ)りなば
061テーラさまの御(ご)心配(しんぱい)
062必(かなら)ず無用(むよう)に遊(あそ)ばせよ
063捕手(とりて)の役人(やくにん)キングレス
064其(その)他(ほか)百(もも)の人(ひと)達(たち)に
065はるばる来(きた)り玉(たま)ひたる
066好意(かうい)を感謝(かんしや)し奉(たてまつ)る
067神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
068善(ぜん)と悪(あく)とを立分(たてわ)ける
069此(この)世(よ)を造(つく)りし神直日(かむなほひ)
070心(こころ)も広(ひろ)き大直日(おほなほひ)
071只(ただ)何事(なにごと)も人(ひと)の世(よ)は
072直日(なほひ)に見直(みなほ)し聞直(ききなほ)し
073世(よ)の過(あやま)ちは宣(の)り直(なほ)す
074神(かみ)の教(をしへ)を聞(き)きしより
075妾(わらは)はテーラの計画(けいくわく)を
076決(けつ)して決(けつ)して憎(にく)まない
077早(はや)く此(この)場(ば)を立(たち)帰(かへ)り
078身(み)の潔白(けつぱく)を示(しめ)されよ
079青年(せいねん)会長(くわいちやう)其(その)外(ほか)の
080清(きよ)き身魂(みたま)の人(ひと)達(たち)は
081少時(しばらく)後(あと)に残(のこ)りませ
082妾(わらは)が為(ため)に御心(みこころ)を
083配(くば)らせ玉(たま)ひし慰安(いやしろ)の
084御酒(みき)御饌(みけ)仕(つか)へ奉(たてまつ)り
085妾(わらは)が寸志(すんし)を現(あら)はさむ
086暫(しばら)く待(ま)たせ玉(たま)へかし
087三千彦(みちひこ)司(つかさ)と諸共(もろとも)に
088帰(かへ)り来(きた)れる上(うへ)からは
089いかに捕手(とりて)の数(かず)多(おほ)く
090吾(わが)家(や)に迫(せま)り来(きた)る共(とも)
091テーラが如何(いか)に騒(さわ)ぐ共(とも)
092物(もの)の数(かず)にはあらざらめ
093あゝ有難(ありがた)し有難(ありがた)し
094天地(てんち)に誠(まこと)の神(かみ)まして
095吾(わが)家(や)を守(まも)り吾(わが)身(み)をば
096厚(あつ)く恵(めぐ)ませ玉(たま)ひけり
097あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
098御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ
099旭(あさひ)は照(て)る共(とも)曇(くも)る共(とも)
100月(つき)は盈(み)つ共(とも)虧(か)くる共(とも)
101仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)む共(とも)
102誠(まこと)一(ひと)つは世(よ)を救(すく)ふ
103誠(まこと)の道(みち)に外(はづ)れたる
104テーラの如(ごと)き行(おこな)ひは
105いかでか神(かみ)の許(ゆる)すべき
106省(かへり)み玉(たま)へテーラさま
107スマナー姫(ひめ)が赤心(まごころ)を
108こめて忠告(ちうこく)仕(つかまつ)る
109あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
110御霊(みたま)のふゆを賜(たま)へかし』
111と歌(うた)ひ乍(なが)ら、112三千彦(みちひこ)の後(あと)に従(したが)ひ、113しづしづと奥(おく)の方(はう)から現(あら)はれて来(き)た。114逃腰(にげごし)になつてゐたテーラは、115「コリヤたまらぬ」と上(あが)り口(ぐち)より慌(あわ)てて庭(には)にひつくり返(かへ)り、116向(むか)ふ脛(ずね)を打(う)ち四這(よつばひ)となつて裏口(うらぐち)の闇(やみ)に紛(まぎ)れて逃出(にげだ)して了(しま)つた。117キングレス其(その)他(た)の面々(めんめん)は118何(いづ)れも真(まこと)の捕手(とりて)にあらず、119テーラが虎熊山(とらくまやま)の盗人(ぬすびと)をワザとに変装(へんさう)させ、120此(この)狂言(きやうげん)を描(か)いたのであつた。121そして二(に)週間(しうかん)以前(いぜん)に躍(をど)り込(こ)み、122家内(かない)を殆(ほとん)ど全滅(ぜんめつ)の厄(やく)に会(あ)はせた泥棒(どろばう)も、123又(また)キングレスの部下(ぶか)の者(もの)であつた。124キングレスはスマナー姫(ひめ)の言霊(ことたま)と三千彦(みちひこ)の神力(しんりき)に圧倒(あつたう)され、125五体(ごたい)俄(にはか)に戦慄(せんりつ)し、126其(その)場(ば)にドツと尻餅(しりもち)をつき、127口(くち)許(ばか)りポカンとあけて、128慄(ふる)うてゐる。129捕手(とりて)に化(ば)けてゐた十数(じふすう)人(にん)の小泥棒(こどろばう)も同(おな)じく、130其(その)場(ば)に腰(こし)を抜(ぬ)かし、131ふるひ戦(をのの)いて居(ゐ)る。
132 三千彦(みちひこ)は厳然(げんぜん)として座敷(ざしき)の中央(ちうあう)に座(ざ)を構(かま)へ、133青年隊(せいねんたい)並(ならび)に泥棒組(どろばうぐみ)に向(むか)つて、134宣伝歌(せんでんか)を挨拶(あいさつ)に代(か)へて謡(うた)つた。
135三千彦(みちひこ)『人(ひと)は神(かみ)の子(こ)神(かみ)の宮(みや)
136神(かみ)に斉(ひと)しき者(もの)ならば
137天地(てんち)を経綸(けいりん)すると云(い)ふ
138尊(たふと)き神(かみ)の御使(みつかひ)ぞ
139小(ちひ)さき欲(よく)に捉(とら)はれて
140広(ひろ)き此(この)世(よ)を自(おのづか)ら
141身(み)の置所(おきどこ)もなき迄(まで)に
142狭(せば)め行(ゆ)くこそ歎(うた)てけれ
143限(かぎ)りも知(し)らぬ天地(あめつち)の
144清(きよ)けく広(ひろ)き世(よ)の中(なか)に
145安養(あんやう)浄土(じやうど)の楽(たの)しみを
146得(え)させむ為(ため)にウブスナの
147斎苑(いそ)の館(やかた)にあれませる
148此(この)世(よ)の垢(あか)を洗(あら)ふてふ
149瑞(みづ)の御霊(みたま)の神柱(かむばしら)
150神(かむ)素盞嗚(すさのを)の大神(おほかみ)は
151神(かみ)の司(つかさ)を四方(よも)の国(くに)
152放(はな)ち玉(たま)ひて曲神(まがかみ)の
153虜(とりこ)となれる人々(ひとびと)を
154安(やす)きに救(すく)ひ助(たす)けむと
155計(はか)らせ玉(たま)ふ尊(たふと)さよ
156吾(わ)れは三千彦(みちひこ)宣伝使(せんでんし)
157神(かみ)の力(ちから)を身(み)に受(う)けて
158フサの国(くに)をば横断(わうだん)し
159漸(やうや)く茲(ここ)に来(き)て見(み)れば
160音(おと)に名高(なだか)き仙聖郷(せんせいきやう)
161高天原(たかあまはら)の楽園(らくゑん)も
162怪(あや)しき雲霧(くもきり)立(たち)こめて
163常夜(とこよ)の暗(やみ)と成(なり)さがり
164悪鬼(あくき)羅刹(らせつ)は縦横(じうわう)に
165跳梁(てうりやう)跋扈(ばつこ)なしにける
166此(この)惨状(さんじやう)を一瞥(いちべつ)し
167神(かみ)の使(つかひ)の身(み)を以(もつ)て
168いかでか看過(かんくわ)すべけむや
169吾(わが)宣(の)る教(をしへ)は皇神(すめかみ)の
170聖(きよ)き尊(たふと)き勅言(ちよくげん)ぞ
171心(こころ)を清(きよ)め耳(みみ)すませ
172謹(つつし)み畏(かしこ)みきこしめせ
173弱味(よわみ)につけ込(こ)む風(かぜ)の神(かみ)
174寄(よ)るべ渚(なぎさ)の未亡人(みばうじん)
175スマナー姫(ひめ)の留守宅(るすたく)へ
176をどり込(こ)みたるテーラこそ
177げにも憐(あは)れな曲津身(まがつみ)の
178醜(しこ)の虜(とりこ)となり果(はて)て
179重(おも)き罪(つみ)をば知(し)らずして
180犯(をか)したるこそうたてけれ
181キングレスや其(その)外(ほか)の
182捕手(とりて)と称(しよう)する人々(ひとびと)よ
183汝(なれ)は真(まこと)の捕吏(ほり)ならず
184どこかの山(やま)に山砦(さんさい)を
185構(かま)へて旅人(りよにん)をおびやかす
186大泥棒(おほどろばう)と覚(おぼ)えたり
187誠(まこと)捕手(とりて)の役(やく)ならば
188繊弱(かよわ)き姫(ひめ)の言霊(ことたま)に
189いかでか打(う)たれて倒(たふ)るべき
190心(こころ)に弱味(よわみ)のある者(もの)は
191只(ただ)一言(ひとこと)の言霊(ことたま)も
192きつく恐(おそ)るるものぞかし
193許(ゆる)しがたなき奴(やつ)なれど
194吾(われ)等(ら)も同(おな)じ神(かみ)の子(こ)の
195同胞(はらから)なれば咎(とが)めずて
196誠(まこと)の道(みち)にまつろはせ
197救(すく)ひやらむと思(おも)ふこそ
198吾(わが)赤心(まごころ)の願(ねがひ)ぞや
199心(こころ)を直(なほ)し魂(たま)清(きよ)め
200今(いま)迄(まで)尽(つく)せし罪科(つみとが)を
201皇(すめ)大神(おほかみ)の大前(おほまへ)に
202包(つつ)まずかくさずさらけ出(だ)し
203今後(こんご)を戒(いまし)め善道(ぜんだう)に
204いづれも揃(そろ)うて立(たち)帰(かへ)れ
205吾(わ)れも汝(なんぢ)も神(かみ)の御子(みこ)
206いかに曇(くも)れる魂(たましひ)も
207研(みが)き上(あ)ぐれば元(もと)の如(ごと)
208水晶魂(すいしやうみたま)となりぬべし
209あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
210神(かみ)に誓(ちか)ひて宣(の)り伝(つた)ふ
211旭(あさひ)はてる共(とも)曇(くも)る共(とも)
212月(つき)は盈(み)つ共(とも)虧(か)くる共(とも)
213仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)む共(とも)
214誠(まこと)の力(ちから)は世(よ)を救(すく)ふ
215誠(まこと)にまさる力(ちから)なし
216此(この)世(よ)の主権(しゆけん)を握(にぎ)る共(とも)
217誠(まこと)の道(みち)を欠(か)くならば
218これ風前(ふうぜん)の燈火(ともしび)ぞ
219省(かへり)み玉(たま)へ諸人(もろびと)よ
220神(かみ)の教(をしへ)の三千彦(みちひこ)が
221一同(いちどう)に向(むか)ひ大神(おほかみ)の
222神心(みこころ)審(つぶ)さに宣(の)べ伝(つた)ふ
223あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
224御霊(みたま)幸(さきは)ひましませよ』
225と繰返(くりかへ)し繰返(くりかへ)し宣伝歌(せんでんか)を以(もつ)て一同(いちどう)に説(と)き諭(さと)した。226キングレスは涙(なみだ)をハラハラと流(なが)し、227犬突這(いぬつくばひ)となつて三千彦(みちひこ)に向(むか)ひ、
228キング『三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)三千彦(みちひこ)司(つかさ)の前(まへ)に、229私(わたくし)は一切(いつさい)の罪悪(ざいあく)を打(うち)あけて白状(はくじやう)を致(いた)します。230モウ此(この)上(うへ)はあなたの御教(みをしへ)に従(したが)ひ、231善道(ぜんだう)に立(たち)帰(かへ)りまするから、232今(いま)迄(まで)の罪(つみ)をお赦(ゆる)し下(くだ)さいませ。233私(わたくし)の如(ごと)き悪人(あくにん)は又(また)と世界(せかい)に厶(ござ)いますまい。234実(じつ)の所(ところ)は虎熊山(とらくまやま)の山砦(さんさい)に立籠(たてこ)もり、235十(じふ)里(り)四方(しはう)の村々(むらむら)を劫(おび)やかし、236旅人(たびびと)を苦(くるし)め居(を)りましたる所(ところ)、237バラモン教(けう)の軍人(ぐんじん)たりし、238セール、239ハールの両人(りやうにん)、240沢山(たくさん)の部下(ぶか)を引(ひき)つれ、241虎熊山(とらくまやま)に登(のぼ)り来(きた)り、242私(わたくし)等(たち)の部下(ぶか)二十(にじふ)人(にん)と共(とも)に高手(たかて)小手(こて)に縛(いましめ)られ、243止(や)むをえず降服(かうふく)致(いた)し、244彼(かれ)等(ら)の乾児(こぶん)となり、245此方(こちら)の方面(はうめん)へ働(はたら)きに出(で)て居(を)る者(もの)で厶(ござ)います。246そして此(この)郷(さと)のテーラといふ男(をとこ)は、247吾々(われわれ)仲間(なかま)と常(つね)に気脈(きみやく)を通(つう)じ、248家尻切(やじりきり)、249庫破(くらやぶ)りの手引(てびき)をしてをつた者(もの)で厶(ござ)いますが、250二(に)週間(しうかん)以前(いぜん)に当家(たうけ)を鏖殺(おうさつ)し、251此(この)財産(ざいさん)を横領(わうりやう)せむと、252彼(か)れテーラの献策(けんさく)に仍(よ)り、253抜刀(ばつたう)を以(もつ)て押(おし)入(い)り、254家族(かぞく)を全滅(ぜんめつ)させむと計(はか)りました所(ところ)、255天罰(てんばつ)忽(たちま)ち酬(むく)い来(き)て、256只(ただ)一人(ひとり)のスマナー姫(ひめ)さまを打(うち)漏(も)らし、257それが為(ため)に忽(たちま)ち陰謀(いんぼう)露顕(ろけん)致(いた)し、258身動(みうご)きもならぬ神罰(しんばつ)にあてられ、259懺悔(ざんげ)の情(じやう)に堪(た)へませぬ。260何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)赦(ゆる)しがたき吾々(われわれ)なれ共(ども)、261今(いま)の宣伝歌(せんでんか)のお詞(ことば)の通(とほ)り、262心(こころ)も広(ひろ)き大直日(おほなほひ)に見直(みなほ)し聞直(ききなほ)し宣直(のりなほ)し下(くだ)さいまして、263命(いのち)丈(だけ)はお助(たす)けを願(ねが)ひます。264たつて許(ゆる)さぬと仰有(おつしや)れば、265是非(ぜひ)も厶(ござ)いませねば、266私(わたくし)の命(いのち)をお取(と)り下(くだ)され、267部下(ぶか)十数(じふすう)人(にん)の命(いのち)をお助(たす)け下(くだ)さいまして、268彼(かれ)等(ら)に誠(まこと)の教(をしへ)をお伝(つた)へ下(くだ)さつた上(うへ)、269神(かみ)様(さま)のお道(みち)に御(お)救(すく)ひ下(くだ)さいますやう』
270と面(おもて)に誠(まこと)を現(あら)はして、271心(こころ)の底(そこ)より謝罪(しやざい)する。
272三千(みち)『人間界(にんげんかい)から云(い)へば赦(ゆる)しがたない大罪人(だいざいにん)、273お前(まへ)達(たち)は今日(こんにち)の法律(はふりつ)に依(よ)れば、274強盗(がうたう)殺人(さつじん)罪(ざい)として首(くび)のない代物(しろもの)だが、275神(かみ)様(さま)は大慈(だいじ)大悲(だいひ)にまします故(ゆゑ)、276改心(かいしん)さへすればキツとお許(ゆる)し下(くだ)さるだらう。277併(しか)し此(この)三千彦(みちひこ)は人(ひと)を審判(さば)く権利(けんり)もなければ、278許(ゆる)す権利(けんり)もない。279従(したが)つてお前(まへ)達(たち)を苦(くる)しめる権能(けんのう)もない。280どうか誠(まこと)の道(みち)に立(たち)帰(かへ)り、281朝(あさ)な夕(ゆふ)なに神(かみ)さまにお仕(つか)へして、282神(かみ)の御子(みこ)たる誠(まこと)の人間(にんげん)に立(たち)帰(かへ)つて貰(もら)ひたい。283それが神(かみ)の御子(みこ)たる三千彦(みちひこ)の希望(きばう)である。284其処(そこ)にゐるキングレスの部下(ぶか)の人(ひと)達(たち)、285拙者(せつしや)の云(い)ふ事(こと)が心(こころ)にはまつたならば、286今(いま)茲(ここ)で神(かみ)様(さま)にお詫(わび)をなさるがよからう。287又(また)青年会(せいねんくわい)の人(ひと)達(たち)も288此(この)郷(さと)はウラル教(けう)の教(をしへ)を奉(ほう)ずると聞(き)いてゐるが、289どうか神(かみ)様(さま)の御心(みこころ)を誤解(ごかい)せぬ様(やう)、290誠(まこと)の道(みち)を歩(あゆ)んで下(くだ)さい。291真(しん)にウラル教(けう)の教(をしへ)が拡(ひろ)まつてゐるならば、292此(この)仙聖郷(せんせいきやう)は昔(むかし)の儘(まま)に、293天下(てんか)の安楽郷(あんらくきやう)として、294太平(たいへい)無事(ぶじ)でなければならぬのだ。295然(しか)るにかかる惨事(さんじ)の突発(とつぱつ)するといふのは、296神(かみ)の御心(みこころ)に反(そむ)いた点(てん)があるのではあるまいかと、297此(この)三千彦(みちひこ)は愚考(ぐかう)致(いた)します。298そしてスマナー姫(ひめ)様(さま)は親(おや)兄弟(きやうだい)夫(をつと)に別(わか)れ、299心(こころ)淋(さび)しく暮(くら)してゐられるのだから、300青年(せいねん)の方々(かたがた)は陰(いん)に陽(やう)に、301親切(しんせつ)に守(まも)つて上(あ)げて下(くだ)さい。302そしてどこ迄(まで)も父母(ふぼ)祖先(そせん)の霊(みたま)に対(たい)し孝養(かうやう)を尽(つく)し、303亡(な)き夫(をつと)に、304貞操(ていさう)を固(かた)く守(まも)られるやう、305保護(ほご)して下(くだ)さる様(やう)、3051願(ねが)つておきますよ』
306 タークは感涙(かんるい)に咽(むせ)び乍(なが)ら、
307ターク『有難(ありがた)し誠(まこと)の神(かみ)のあれまして
308亡(ほろ)ぼし玉(たま)ひぬ醜(しこ)の曲津(まがつ)を。
309御詞(みことば)を朝(あさ)な夕(ゆふ)なに能(よ)く守(まも)り
310神(かみ)の大道(おほぢ)に仕(つか)へ進(すす)まむ』
311インター『われも亦(また)教司(をしへつかさ)の言(こと)の葉(は)を
312肝(きも)に銘(めい)じて忘(わす)れざるらむ』
313三千彦(みちひこ)『みちのくの山(やま)の奥(おく)にも皇神(すめかみ)の
314守(まも)りありせば安(やす)くましませ。
315古(いにしへ)の仙聖郷(せんせいきやう)に立直(たてなほ)し
316笑(ゑ)み栄(さか)えつつ永久(とこしへ)にあれよ』
317スマナー姫(ひめ)『三千彦(みちひこ)の神(かみ)の司(つかさ)に助(たす)けられ
318今日(けふ)は嬉(うれ)しくゑみ栄(さか)えける。
319おそひ来(く)る醜(しこ)の曲津(まがつ)の影(かげ)もなく
320亡(ほろ)びし今日(けふ)ぞいとど嬉(うれ)しき』
321 斯(か)かる所(ところ)へ村(むら)の中老(ちうらう)、322各自(てんで)に得物(えもの)を携(たづさ)へ、323裏口(うらぐち)表口(おもてぐち)より慌(あわただ)しく走(はし)り来(く)る。324又(また)スマナー姫(ひめ)を捜(さが)しに行(い)つた青年(せいねん)は、325比較(ひかく)的(てき)遠路(ゑんろ)の為(ため)、326一人(ひとり)も未(ま)だ帰(かへ)つて来(こ)ない。327裏口(うらぐち)の水門壺(すいもんつぼ)の中(なか)にアブアブして苦(くる)しんでゐる男(をとこ)を見(み)れば、328逃(に)げしなに過(あやま)つて落(おち)込(こ)んだテーラであつた。329俄(にはか)に大地(だいち)はビリビリと震動(しんどう)し、330四辺(あたり)の山岳(さんがく)は轟々(ぐわうぐわう)と唸(うな)り出(だ)したとみるまに、331轟前(ぐわうぜん)たる爆音(ばくおん)、332天地(てんち)もわるる許(ばか)りに響(ひび)き来(きた)り、333水門壺(すいもんつぼ)におちて居(ゐ)た、334テーラは其(その)震動(しんどう)にはね飛(と)ばされて、335二三間(にさんげん)飛(とび)上(あが)り、336どんと大地(だいち)に投(な)げ付(つ)けられ、337苦(くる)しげに泡(あわ)をふいてゐる。338此(この)音響(おんきやう)は虎熊山(とらくまやま)の火山(くわざん)が一(いち)時(じ)に爆発(ばくはつ)した響(ひびき)であつた。
339(大正一二・七・一七 旧六・四 於祥雲閣 松村真澄録)
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