霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第65巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 盗風賊雨
第1章 感謝組
第2章 古峽の山
第3章 岩侠
第4章 不聞銃
第5章 独許貧
第6章 噴火口
第7章 反鱗
第2篇 地異転変
第8章 異心泥信
第9章 劇流
第10章 赤酒の声
第11章 大笑裡
第12章 天恵
第3篇 虎熊惨状
第13章 隔世談
第14章 山川動乱
第15章 饅頭塚
第16章 泥足坊
第17章 山颪
第4篇 神仙魔境
第18章 白骨堂
第19章 谿の途
第20章 熊鷹
第21章 仙聖郷
第22章 均霑
第23章 義侠
第5篇 讃歌応山
第24章 危母玉
第25章 道歌
第26章 七福神
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は
従来バージョン
をお使い下さい|
サブスク
のお知らせ
霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第65巻(辰の巻)
> 第4篇 神仙魔境 > 第18章 白骨堂
<<< 山颪
(B)
(N)
谿の途 >>>
第一八章
白骨堂
(
はくこつだう
)
〔一六七四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第65巻 山河草木 辰の巻
篇:
第4篇 神仙魔境
よみ(新仮名遣い):
しんせんまきょう
章:
第18章 白骨堂
よみ(新仮名遣い):
はっこつどう
通し章番号:
1674
口述日:
1923(大正12)年07月17日(旧06月4日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年4月14日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2018-04-06 15:00:12
OBC :
rm6518
愛善世界社版:
203頁
八幡書店版:
第11輯 682頁
修補版:
校定版:
213頁
普及版:
92頁
初版:
ページ備考:
001
三千彦
(
みちひこ
)
は、
002
山野
(
さんや
)
を
渉
(
わた
)
り
谷
(
たに
)
を
越
(
こ
)
え、
003
漸
(
やうや
)
くにして
仙聖山
(
せんせいざん
)
の
阪道
(
さかみち
)
に
取
(
と
)
りかかつた。
004
これは
仏者
(
ぶつしや
)
の
云
(
い
)
ふ
所謂
(
いはゆる
)
十宝山
(
じつぽうざん
)
の
一
(
ひと
)
つである。
005
さすがアルピニストの
三千彦
(
みちひこ
)
も、
006
長途
(
ちやうと
)
の
旅
(
たび
)
に
疲
(
つか
)
れ
果
(
は
)
て、
007
仙聖山
(
せんせいざん
)
の
頂
(
いただき
)
を
眺
(
なが
)
めて
吐息
(
といき
)
をついて
居
(
ゐ
)
る。
008
三千
(
みち
)
『あゝ
漸
(
やうや
)
く
此処
(
ここ
)
迄
(
まで
)
山野
(
さんや
)
を
渡
(
わた
)
り、
009
やつて
来
(
き
)
たものの、
010
何処
(
どこ
)
かで
道
(
みち
)
を
取
(
と
)
り
違
(
ちが
)
へ、
011
仙聖山
(
せんせいざん
)
の
方
(
はう
)
へ
来
(
き
)
て
仕舞
(
しま
)
つたやうだ。
012
どこにも
家
(
いへ
)
は
無
(
な
)
し、
013
声
(
こゑ
)
するものは
鳥
(
とり
)
の
声
(
こゑ
)
と
獣
(
けだもの
)
の
声
(
こゑ
)
ばかりだ。
014
実
(
じつ
)
に
淋
(
さび
)
しい
事
(
こと
)
だわい。
015
三千彦
(
みちひこ
)
は
健脚家
(
けんきやくか
)
だと、
016
玉国別
(
たまくにわけ
)
様
(
さま
)
に
褒
(
ほ
)
められたが、
017
かう
酷
(
きつ
)
い
山阪
(
やまさか
)
を
当途
(
あてど
)
もなしに
跋渉
(
ばつせう
)
しては、
018
もはや
弱音
(
よわね
)
を
吹
(
ふ
)
かねばならなくなつて
来
(
き
)
た。
019
二
(
ふた
)
つのコンパスは
何
(
なん
)
だか
硬化
(
かうくわ
)
しさうだ。
020
どこか
此処辺
(
ここら
)
でよい
雨宿
(
あまやど
)
りがあれば
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
め
運
(
うん
)
を
天
(
てん
)
に
任
(
まか
)
して、
021
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
の
名山
(
めいざん
)
を
跋渉
(
ばつせふ
)
し
山頂
(
さんちやう
)
から
見下
(
みお
)
ろし、
022
エルサレムの
方向
(
はうかう
)
を
定
(
さだ
)
めて
往
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
にせう。
023
それについてもデビス
姫
(
ひめ
)
、
024
ブラヷーダ
姫
(
ひめ
)
は
繊弱
(
かよわ
)
き
女
(
をんな
)
の
足
(
あし
)
、
025
定
(
さだ
)
めし
困難
(
こんなん
)
して
居
(
ゐ
)
るだらう、
026
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らブラヷーダ
姫
(
ひめ
)
はハルセイ
山
(
ざん
)
で
泥棒
(
どろばう
)
に
出逢
(
であ
)
つた
時
(
とき
)
の
度胸
(
どきよう
)
、
027
実
(
じつ
)
に
見上
(
みあ
)
げたものだつた。
028
あれだけの
勇気
(
ゆうき
)
があれば、
029
屹度
(
きつと
)
無事
(
ぶじ
)
に
往
(
ゆ
)
くであらう。
030
夫
(
そ
)
れよりも
今
(
いま
)
は
自分
(
じぶん
)
の
体
(
からだ
)
を
大切
(
たいせつ
)
にして、
031
往
(
ゆ
)
く
所
(
ところ
)
迄
(
まで
)
往
(
ゆ
)
かねばなるまい。
032
どこかよい
木蔭
(
こかげ
)
があれば
休
(
やす
)
む
事
(
こと
)
にして、
033
まだ
日
(
ひ
)
の
暮
(
くれ
)
に
間
(
ま
)
もあれば
一
(
ひと
)
つ
登
(
のぼ
)
つて
見
(
み
)
よう』
034
と
独
(
ひと
)
りごちつつ、
035
形
(
かたち
)
ばかりの
細
(
ほそ
)
い
道
(
みち
)
を、
036
右
(
みぎ
)
に
左
(
ひだり
)
に
折
(
を
)
れ
曲
(
まが
)
りつつ
登
(
のぼ
)
りゆく。
037
日
(
ひ
)
は
漸
(
やうや
)
く
高山
(
かうざん
)
の
頂
(
いただき
)
にさしかかり、
038
大
(
おほ
)
きな
影
(
かげ
)
が
襲
(
おそ
)
ふて
来
(
く
)
る。
039
道
(
みち
)
の
傍
(
かたはら
)
に
一
(
ひと
)
つの
白骨堂
(
はくこつだう
)
が
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
040
三千彦
(
みちひこ
)
はつと
立
(
た
)
ち
留
(
ど
)
まり、
041
三千
(
みち
)
『ハテ
不思議
(
ふしぎ
)
だ。
042
こんな
所
(
ところ
)
に
白骨堂
(
はくこつだう
)
が
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
る
以上
(
いじやう
)
は、
043
此
(
こ
)
の
山
(
やま
)
の
上
(
うへ
)
に
人
(
ひと
)
の
家
(
いへ
)
が
立
(
た
)
つて
居
(
を
)
るだらう。
044
先
(
ま
)
づこの
堂
(
だう
)
のひさしを
借
(
か
)
りて、
045
今宵
(
こよひ
)
一夜
(
いちや
)
を
過
(
す
)
ごさうかなア』
046
と
言
(
い
)
ひつつ
俄
(
にはか
)
に
勇気
(
ゆうき
)
を
鼓
(
こ
)
して、
047
細
(
ほそ
)
い
天然石
(
てんねんせき
)
の
階段
(
かいだん
)
を
登
(
のぼ
)
り
白骨堂
(
はくこつだう
)
に
近
(
ちか
)
づいた。
048
見
(
み
)
れば
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
が
細
(
ほそ
)
い
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して
何事
(
なにごと
)
か
祈
(
いの
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
049
三千彦
(
みちひこ
)
は
訝
(
いぶ
)
かりながら
足音
(
あしおと
)
を
忍
(
しの
)
ばせ、
050
白骨堂
(
はくこつだう
)
の
密樹
(
みつじゆ
)
の
蔭
(
かげ
)
に
身
(
み
)
を
潜
(
ひそ
)
ませ、
051
女
(
をんな
)
の
祈
(
いの
)
りを
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
た。
052
『
憐
(
あは
)
れ
憐
(
あは
)
れ
吾
(
わが
)
命
(
いのち
)
白
(
しろ
)
く
荒廃
(
くわうはい
)
せり
053
○
054
愁
(
うれ
)
へる
異端者
(
いたんしや
)
の
胸
(
むね
)
に
055
虐
(
しひたげ
)
の
力
(
ちから
)
を
悲
(
かな
)
しく
受
(
う
)
けて
泣
(
な
)
く
056
忍従
(
にんじゆう
)
と
犠牲
(
ぎせい
)
の
痛
(
いた
)
ましさ。
057
○
058
蒼白
(
あをじろ
)
き
中
(
なか
)
に
吾
(
われ
)
も
彼
(
かれ
)
も
朽
(
く
)
ちて
行
(
ゆ
)
く
059
其
(
その
)
幻滅
(
げんめつ
)
の
果敢
(
はか
)
なさよ
060
○
061
恋
(
こひ
)
もなく
友
(
とも
)
もなし
062
悲
(
かな
)
しくあえぎて
恋
(
こひ
)
も
忘
(
わす
)
れ
友
(
とも
)
も
忘
(
わす
)
れむ
063
一人
(
ひとり
)
行
(
ゆ
)
く
生命
(
いのち
)
の
原
(
はら
)
に
064
唯
(
ただ
)
横
(
よこ
)
たはる
黒
(
くろ
)
き
暗闇
(
くらやみ
)
065
父
(
ちち
)
よ
母
(
はは
)
よ オーそして
兄弟
(
はらから
)
よ
066
身失
(
みう
)
せたまひし
吾
(
わが
)
背
(
せ
)
の
為
(
ため
)
に
067
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
のすべて
滅
(
ほろび
)
行
(
ゆ
)
くものの
為
(
ため
)
に
068
大空
(
おほぞら
)
包
(
つつ
)
む
天
(
てん
)
の
空
(
そら
)
に
健
(
すこや
)
かなれ
069
○
070
白
(
しろ
)
き
生
(
せい
)
淋
(
さび
)
し
071
果敢
(
はか
)
なく
淋
(
さび
)
し
072
あはれあはれ
亡
(
な
)
き
人
(
ひと
)
あはれ』
073
斯
(
か
)
く
悲
(
かな
)
しげに
謡
(
うた
)
ひ
終
(
をは
)
り、
074
徐
(
おもむろ
)
に
懐中
(
ふところ
)
より
懐剣
(
くわいけん
)
を
取
(
と
)
り
出
(
だ
)
し、
075
淋
(
さび
)
しげにニヤリと
笑
(
わら
)
ひ、
076
顔
(
かほ
)
の
写
(
うつ
)
るやうな
刃口
(
はぐち
)
をつくづく
打
(
う
)
ち
眺
(
なが
)
めながら、
077
『オー、
078
願
(
ねが
)
はくは
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
を
作
(
つく
)
りたまひし
皇神
(
すめかみ
)
よ。
079
百
(
もも
)
の
罪
(
つみ
)
汚
(
けが
)
れを
許
(
ゆる
)
し
給
(
たま
)
ひて、
080
吾
(
わが
)
身魂
(
みたま
)
をスカーワナ(
安養
(
あんやう
)
浄土
(
じやうど
)
)へ
導
(
みちび
)
きたまへ』
081
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く、
082
今
(
いま
)
や
一刀
(
いつたう
)
を
吾
(
わが
)
喉
(
のど
)
に
突
(
つき
)
立
(
た
)
てむとする。
083
三千彦
(
みちひこ
)
は
吾
(
われ
)
を
忘
(
わす
)
れて
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
し、
084
矢庭
(
やには
)
に
腕
(
うで
)
を
叩
(
たた
)
いて
短刀
(
たんたう
)
を
打
(
う
)
ち
落
(
おと
)
した。
085
女
(
をんな
)
は
驚
(
おどろ
)
いて
三千彦
(
みちひこ
)
の
顔
(
かほ
)
をつくづく
眺
(
なが
)
め、
086
唇
(
くちびる
)
をびりびり
慄
(
ふる
)
はせて
居
(
ゐ
)
る。
087
三千
(
みち
)
『これこれお
女中
(
ぢよちう
)
、
088
短気
(
たんき
)
を
出
(
だ
)
しちやいけませぬ。
089
何
(
なん
)
の
為
(
た
)
めに
此
(
この
)
結構
(
けつこう
)
な
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
を
見捨
(
みす
)
てようとなさるのか、
090
まづまづ
気
(
き
)
を
落
(
おち
)
着
(
つ
)
けなさい。
091
吾
(
われ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
三千彦
(
みちひこ
)
と
申
(
まを
)
すもの、
092
神
(
かみ
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
を
受
(
う
)
けてエルサレムに
参
(
まゐ
)
る
途中
(
とちう
)
道
(
みち
)
踏
(
ふ
)
み
迷
(
まよ
)
ひ、
093
此処
(
ここ
)
迄
(
まで
)
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た
所
(
ところ
)
幽
(
かす
)
かに
白骨堂
(
はくこつだう
)
が
見
(
み
)
えるので、
094
一夜
(
いちや
)
の
宿
(
やど
)
をからむものと
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
貴女
(
あなた
)
の
今
(
いま
)
の
有様
(
ありさま
)
、
095
これが
何
(
ど
)
うして
黙言
(
だまつ
)
て
見
(
み
)
て
居
(
を
)
られようかとお
止
(
と
)
め
申
(
まをし
)
た
次第
(
しだい
)
で
厶
(
ござ
)
います。
096
何程
(
なにほど
)
辛
(
つら
)
いと
云
(
い
)
ふても
死
(
し
)
ぬには
及
(
およ
)
びますまい。
097
先
(
ま
)
づ
先
(
ま
)
づお
静
(
しづ
)
まりなさいませ』
098
女
(
をんな
)
『ハイ、
099
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
100
妾
(
わたし
)
は
此
(
この
)
山奥
(
やまおく
)
に
住
(
す
)
まひして
居
(
を
)
りまする、
101
小
(
ちひ
)
さき
村
(
むら
)
の
女
(
をんな
)
でスマナーと
申
(
まを
)
します。
102
親
(
おや
)
兄弟
(
きやうだい
)
夫
(
をつと
)
には
死
(
し
)
に
別
(
わか
)
れ、
103
頼
(
たよ
)
る
所
(
ところ
)
もなく、
104
又
(
また
)
村人
(
むらびと
)
の
若
(
わか
)
い
男
(
をとこ
)
等
(
たち
)
が
種々
(
いろいろ
)
様々
(
さまざま
)
の
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つて、
105
若後家
(
わかごけ
)
の
貞操
(
ていさう
)
を
破
(
やぶ
)
らせうと
致
(
いた
)
しますから、
106
一層
(
いつそう
)
の
事
(
こと
)
親
(
おや
)
兄弟
(
きやうだい
)
、
107
夫
(
をつと
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
ふて
安楽
(
あんらく
)
世界
(
せかい
)
へ
参
(
まゐ
)
らうと
存
(
ぞん
)
じ、
108
祖先
(
そせん
)
の
遺骨
(
ゐこつ
)
の
納
(
をさ
)
めてあるこの
白骨堂
(
はくこつだう
)
の
前
(
まへ
)
で、
109
自刃
(
じじん
)
せむと
致
(
いた
)
した
所
(
ところ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
110
もはや
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
在
(
あ
)
つても
何
(
なん
)
の
楽
(
たの
)
しみもなき
妾
(
わたし
)
、
111
悪魔
(
あくま
)
の
誘惑
(
いうわく
)
にかかつて
罪
(
つみ
)
を
作
(
つく
)
らうより、
112
夫
(
をつと
)
の
後
(
あと
)
を
慕
(
した
)
ふて
極楽
(
ごくらく
)
参
(
まゐ
)
りをせうと
覚悟
(
かくご
)
を
定
(
き
)
めました。
113
どうぞお
止
(
と
)
め
下
(
くだ
)
さいますな』
114
三千彦
(
みちひこ
)
は
涙
(
なみだ
)
を
払
(
はら
)
ひ
声
(
こゑ
)
を
曇
(
くも
)
らせて、
115
三千
(
みち
)
『
貴女
(
あなた
)
のお
言葉
(
ことば
)
も
一応
(
いちおう
)
尤
(
もつと
)
もながら、
116
貴女
(
あなた
)
が
一人
(
ひとり
)
残
(
のこ
)
されたのも
神界
(
しんかい
)
の
御
(
ご
)
都合
(
つがふ
)
でせう。
117
貴女
(
あなた
)
が
自殺
(
じさつ
)
すると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
罪悪中
(
ざいあくちう
)
の
罪悪
(
ざいあく
)
ですよ。
118
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ずして
命
(
いのち
)
が
終
(
をは
)
つたなら
天国
(
てんごく
)
に
往
(
ゆ
)
けませうが、
119
吾
(
わが
)
身
(
み
)
勝手
(
かつて
)
に
命
(
いのち
)
を
捨
(
す
)
てたものは
天国
(
てんごく
)
へは
往
(
ゆ
)
けませぬ。
120
屹度
(
きつと
)
地獄
(
ぢごく
)
に
往
(
ゆ
)
きますから、
121
お
考
(
かんが
)
へ
直
(
なほ
)
しを
願
(
ねが
)
ひます』
122
スマナー『
自殺
(
じさつ
)
を
致
(
いた
)
しましたら、
123
どうしても
天国
(
てんごく
)
へは
行
(
ゆ
)
けませぬか、
124
はて
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いますなア』
125
三千
(
みち
)
『
貴女
(
あなた
)
は
今
(
いま
)
承
(
うけたま
)
はれば、
126
親
(
おや
)
兄弟
(
きやうだい
)
、
127
夫
(
をつと
)
に
先立
(
さきだ
)
たれたと
仰有
(
おつしや
)
いましたが、
128
それや
又
(
また
)
どうして
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
になられたのですか。
129
貴女
(
あなた
)
が
今
(
いま
)
自害
(
じがい
)
して
果
(
は
)
てたなら、
130
親
(
おや
)
兄弟
(
きやうだい
)
、
131
夫
(
をつと
)
の
菩提
(
ぼだい
)
を
弔
(
とむら
)
ふものは
誰
(
たれ
)
も
厶
(
ござ
)
いますまい。
132
さすれば
却
(
かへつ
)
て
親
(
おや
)
に
対
(
たい
)
し
不孝
(
ふかう
)
となり、
133
夫
(
をつと
)
に
対
(
たい
)
して
不貞
(
ふてい
)
となるでせう』
134
スマナー『ハイ、
135
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
によく
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいました。
136
貴方
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
教訓
(
けうくん
)
によつて
妾
(
わたし
)
の
迷
(
まよ
)
ひも
醒
(
さ
)
めました。
137
何分
(
なにぶん
)
宜
(
よろ
)
しくお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
します。
138
妾
(
わたし
)
の
家
(
いへ
)
は
此
(
この
)
小村
(
こむら
)
では
厶
(
ござ
)
いますが、
139
夫
(
をつと
)
はバーダラと
申
(
まを
)
し、
140
村
(
むら
)
の
たばね
をして
居
(
を
)
りましたもので、
141
家
(
いへ
)
屋敷
(
やしき
)
も
可
(
か
)
なりに
広
(
ひろ
)
く、
142
財産
(
ざいさん
)
も
相応
(
さうおう
)
に
厶
(
ござ
)
いますが、
143
半月
(
はんつき
)
程
(
ほど
)
以前
(
いぜん
)
に、
144
虎熊山
(
とらくまやま
)
に
山砦
(
さんさい
)
を
作
(
つく
)
つて
居
(
ゐ
)
る
大泥棒
(
おほどろばう
)
の
乾児
(
こぶん
)
タールと
云
(
い
)
う
奴
(
やつ
)
が、
145
十数
(
じふすう
)
人
(
にん
)
の
手下
(
てした
)
を
引
(
ひ
)
きつれ
夜中
(
やちう
)
に
忍
(
しの
)
び
込
(
こ
)
み、
146
家内中
(
かないぢう
)
を
鏖殺
(
みなごろし
)
に
致
(
いた
)
し、
147
宝
(
たから
)
を
奪
(
うば
)
つて
帰
(
かへ
)
りました。
148
其
(
その
)
時
(
とき
)
妾
(
わたし
)
は、
149
押入
(
おしいれ
)
の
中
(
なか
)
に
布団
(
ふとん
)
を
被
(
かぶ
)
つて
都合
(
つがふ
)
よく
匿
(
かく
)
れましたので、
150
生
(
い
)
き
残
(
のこ
)
つたので
厶
(
ござ
)
います。
151
其
(
その
)
後
(
ご
)
は
村人
(
むらびと
)
の
世話
(
せわ
)
になつて
親
(
おや
)
兄弟
(
きやうだい
)
の
死骸
(
しがい
)
を
荼毘
(
だび
)
に
附
(
ふ
)
し、
152
此
(
この
)
堂
(
だう
)
に
白骨
(
はくこつ
)
を
納
(
をさ
)
めて、
153
相当
(
さうたう
)
のとひ
弔
(
とむら
)
ひを
致
(
いた
)
しましたが、
154
何
(
なん
)
となく
其
(
その
)
後
(
のち
)
は
心
(
こころ
)
淋
(
さび
)
しくなり、
155
又
(
また
)
いろいろの
若
(
わか
)
い
男
(
をとこ
)
が
煩
(
うる
)
さくて、
156
死
(
し
)
ぬ
気
(
き
)
になつたので
厶
(
ござ
)
います』
157
三千彦
(
みちひこ
)
は
涙
(
なみだ
)
を
流
(
なが
)
し
乍
(
なが
)
ら、
158
スマナーの
背
(
せな
)
を
三
(
み
)
つ
四
(
よ
)
つ
撫
(
な
)
でさすり
声
(
こゑ
)
も
柔
(
やさ
)
しく、
159
三千
(
みち
)
『スマナー
様
(
さま
)
、
160
承
(
うけたま
)
はれば
承
(
うけたま
)
はる
程
(
ほど
)
同情
(
どうじやう
)
に
堪
(
た
)
へませぬ。
161
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
162
斯
(
か
)
うなつた
上
(
うへ
)
は
最早
(
もはや
)
悔
(
くや
)
んでも
帰
(
かへ
)
らぬ
事
(
こと
)
、
163
これから
一
(
ひと
)
つ
気
(
き
)
を
取
(
と
)
り
直
(
なほ
)
し、
164
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
仕
(
つか
)
へになつたらどうですか』
165
スマナー『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
166
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
妾
(
わたし
)
の
村
(
むら
)
は
五六十
(
ごろくじつ
)
軒
(
けん
)
の
小在所
(
こざいしよ
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
167
先祖
(
せんぞ
)
代々
(
だいだい
)
からウラル
教
(
けう
)
を
信
(
しん
)
じて
居
(
を
)
りますので、
168
俄
(
にはか
)
に
貴方
(
あなた
)
のお
道
(
みち
)
に
入
(
い
)
る
事
(
こと
)
は
到底
(
たうてい
)
出来
(
でき
)
ますまい。
169
折角
(
せつかく
)
のお
言葉
(
ことば
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
170
何程
(
なにほど
)
妾
(
わたし
)
が
信
(
しん
)
じましても、
171
三百
(
さんびやく
)
人
(
にん
)
の
村人
(
むらびと
)
が
承知
(
しようち
)
せなければ
駄目
(
だめ
)
で
厶
(
ござ
)
いますからなア』
172
三千
(
みち
)
『
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
173
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
に
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
は
要
(
い
)
りませぬ。
174
何
(
いづ
)
れの
教
(
をしへ
)
も
誠
(
まこと
)
に
二
(
ふた
)
つはありませぬ。
175
又
(
また
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
は
元
(
もと
)
は
一柱
(
ひとはしら
)
ですから、
176
ウラル
教
(
けう
)
でも
宜
(
よろ
)
しい。
177
貴女
(
あなた
)
が
今
(
いま
)
死
(
し
)
ぬる
命
(
いのち
)
を
永
(
なが
)
らへて
比丘尼
(
びくに
)
となり、
178
祖先
(
そせん
)
を
弔
(
とむら
)
ひ、
179
又
(
また
)
村人
(
むらびと
)
を
慰
(
なぐさ
)
め、
180
この
山間
(
さんかん
)
に
小天国
(
せうてんごく
)
をお
造
(
つく
)
りになればよろしいでは
厶
(
ござ
)
いませぬか』
181
スマナー『
左様
(
さやう
)
ならば、
182
何事
(
なにごと
)
も
貴方
(
あなた
)
にお
任
(
まか
)
せ
致
(
いた
)
します。
183
どうぞ
一度
(
いちど
)
妾
(
わたし
)
の
淋
(
さび
)
しき
破屋
(
あばらや
)
にお
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいますまいか』
184
三千
(
みち
)
『それは
願
(
ねが
)
うてもない
仕合
(
しあは
)
せで
厶
(
ござ
)
います。
185
知
(
し
)
らぬ
山道
(
やまみち
)
に
往
(
ゆ
)
き
暮
(
く
)
れて、
186
宿
(
やど
)
るべき
家
(
いへ
)
もなし、
187
体
(
からだ
)
は
疲
(
つか
)
れ、
188
困
(
こま
)
つて
居
(
を
)
つた
所
(
ところ
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
189
厚面
(
あつかま
)
しうは
厶
(
ござ
)
いますが、
190
今晩
(
こんばん
)
は
宿
(
と
)
めて
頂
(
いただ
)
きませう』
191
スマナー『
早速
(
さつそく
)
の
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
192
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
193
左様
(
さやう
)
ならば
妾
(
わたし
)
が
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
を
致
(
いた
)
しませう』
194
と
白骨堂
(
はくこつだう
)
の
階段
(
かいだん
)
を
下
(
くだ
)
り、
195
再
(
ふたた
)
び
阪道
(
さかみち
)
を
四五町
(
しごちやう
)
下
(
くだ
)
り、
196
右
(
みぎ
)
に
折
(
を
)
れ、
197
樹木
(
じゆもく
)
茂
(
しげ
)
れる
山道
(
やまみち
)
を
辿
(
たど
)
つて、
198
奥
(
おく
)
へ
奥
(
おく
)
へと
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
199
夏
(
なつ
)
とは
云
(
い
)
へど
樹木
(
じゆもく
)
覆
(
おほ
)
へる
谷川
(
たにがは
)
の
畔
(
ほとり
)
の
道
(
みち
)
を
行
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
とて、
200
身
(
み
)
も
慄
(
ふる
)
ふ
許
(
ばか
)
り
寒
(
さむ
)
さを
感
(
かん
)
じた。
201
(
大正一二・七・一七
旧六・四
於祥雲閣
加藤明子
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 山颪
(B)
(N)
谿の途 >>>
霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
>
第65巻(辰の巻)
> 第4篇 神仙魔境 > 第18章 白骨堂
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第18章 白骨堂|第65巻|山河草木|霊界物語|/rm6518】
合言葉「みろく」を入力して下さい→