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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
第65巻(辰の巻)
序文
総説
第1篇 盗風賊雨
第1章 感謝組
第2章 古峽の山
第3章 岩侠
第4章 不聞銃
第5章 独許貧
第6章 噴火口
第7章 反鱗
第2篇 地異転変
第8章 異心泥信
第9章 劇流
第10章 赤酒の声
第11章 大笑裡
第12章 天恵
第3篇 虎熊惨状
第13章 隔世談
第14章 山川動乱
第15章 饅頭塚
第16章 泥足坊
第17章 山颪
第4篇 神仙魔境
第18章 白骨堂
第19章 谿の途
第20章 熊鷹
第21章 仙聖郷
第22章 均霑
第23章 義侠
第5篇 讃歌応山
第24章 危母玉
第25章 道歌
第26章 七福神
余白歌
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霊界物語
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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第65巻(辰の巻)
> 第2篇 地異転変 > 第10章 赤酒の声
<<< 劇流
(B)
(N)
大笑裡 >>>
第一〇章
赤酒
(
せきしゆ
)
の
声
(
こえ
)
〔一六六六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第65巻 山河草木 辰の巻
篇:
第2篇 地異転変
よみ(新仮名遣い):
ちいてんぺん
章:
第10章 赤酒の声
よみ(新仮名遣い):
せきしゅのこえ
通し章番号:
1666
口述日:
1923(大正12)年07月16日(旧06月3日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年4月14日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm6510
愛善世界社版:
115頁
八幡書店版:
第11輯 651頁
修補版:
校定版:
119頁
普及版:
55頁
初版:
ページ備考:
001
その
夜
(
よ
)
はカラリと
明
(
あ
)
けた。
002
薄暗
(
うすくら
)
がりの
牢獄
(
らうごく
)
の
中
(
なか
)
で、
003
ブラヷーダは
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
の
手紙
(
てがみ
)
を
読
(
よ
)
んで
見
(
み
)
た。
004
その
文面
(
ぶんめん
)
には、
005
一、
006
拙者
(
せつしや
)
は
貴女
(
あなた
)
の
御存
(
ごぞん
)
じの
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
007
虎熊山
(
とらくまやま
)
の
岩窟
(
いはや
)
に、
008
以前
(
いぜん
)
の
吾
(
わが
)
部下
(
ぶか
)
、
009
セール、
010
ハールの
両人
(
りやうにん
)
、
011
数多
(
あまた
)
の
部下
(
ぶか
)
を
従
(
したが
)
へ
山賊
(
さんぞく
)
を
働
(
はたら
)
き
居
(
ゐ
)
ると
聞
(
き
)
き、
012
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
に
責任
(
せきにん
)
を
負
(
お
)
ひ、
013
故意
(
わざ
)
と
囚人
(
とらはれびと
)
となつて、
014
第一
(
だいいち
)
牢獄
(
らうごく
)
に
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
まれて
居
(
を
)
ります。
015
承
(
うけたま
)
はりますれば
貴女
(
あなた
)
方
(
がた
)
お
二人
(
ふたり
)
も
亦
(
また
)
、
016
此
(
この
)
山砦
(
さんさい
)
に
捕
(
とら
)
はれ、
017
日夜
(
にちや
)
セールの
無体
(
むたい
)
の
恋慕
(
れんぼ
)
にお
苦
(
くる
)
しみ
遊
(
あそ
)
ばす
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
きました。
018
就
(
つ
)
いては
私
(
わたし
)
にも
種々
(
いろいろ
)
と
考
(
かんが
)
へがありますれば、
019
茲
(
ここ
)
一両日
(
いちりやうじつ
)
、
020
言
(
げん
)
を
左右
(
さいう
)
に
托
(
たく
)
して
時
(
とき
)
を
待
(
ま
)
ち、
021
あく
迄
(
まで
)
も
貞操
(
ていさう
)
をお
守
(
まも
)
り
下
(
くだ
)
さいませ。
022
屹度
(
きつと
)
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
して
上
(
あ
)
げませうから、
023
万事
(
ばんじ
)
に
抜目
(
ぬけめ
)
のない
貴女
(
あなた
)
様
(
さま
)
、
024
よもやとは
思
(
おも
)
ひますが、
025
もしや
短気
(
たんき
)
を
起
(
おこ
)
して
下
(
くだ
)
さつては、
026
折角
(
せつかく
)
の
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
の
心遣
(
こころづか
)
ひが
無
(
む
)
になりますから、
027
ここ
一両日
(
いちりやうじつ
)
、
028
臨機
(
りんき
)
応変
(
おうへん
)
の
態度
(
たいど
)
を
採
(
と
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
029
治道
(
ちだう
)
より
030
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
様
(
さま
)
へ』
031
と
記
(
しる
)
してあつた。
032
両人
(
りやうにん
)
は
各
(
おのおの
)
同
(
おな
)
じ
手紙
(
てがみ
)
を
見
(
み
)
てニツコと
笑
(
わら
)
ひ、
033
早
(
はや
)
救
(
すく
)
はれる
時
(
とき
)
の
来
(
き
)
た
事
(
こと
)
を
喜
(
よろこ
)
んだ。
034
そして
自分
(
じぶん
)
の
昨晩
(
ゆうべ
)
云
(
い
)
つた
此
(
この
)
狂言
(
きやうげん
)
を、
035
何
(
なん
)
とかして
早
(
はや
)
く
実現
(
じつげん
)
さし
度
(
た
)
いものだと、
036
一
(
いち
)
時
(
じ
)
千秋
(
せんしう
)
の
思
(
おも
)
ひで
待
(
ま
)
つてゐたが、
037
その
夜
(
よ
)
は
何
(
なん
)
の
音沙汰
(
おとさた
)
も
無
(
な
)
く、
038
たうとう
夜
(
よ
)
は
明
(
あ
)
けて
了
(
しま
)
つたのである。
039
ブラヷーダは
細
(
ほそ
)
い
声
(
こゑ
)
で、
040
ブラヷ『
常久
(
とこしへ
)
の
暗夜
(
やみよ
)
もやがて
晴
(
は
)
れぬらむ
041
救
(
すく
)
ひの
神
(
かみ
)
の
影
(
かげ
)
見
(
み
)
えければ』
042
デビス
姫
(
ひめ
)
『
今
(
いま
)
は
早
(
はや
)
心
(
こころ
)
にかかる
雲
(
くも
)
も
無
(
な
)
し
043
暁
(
あかつき
)
告
(
つ
)
ぐる
鶏
(
にはとり
)
の
声
(
こゑ
)
に。
044
姉妹
(
おとどひ
)
が
心
(
こころ
)
を
協
(
あは
)
せて
枉津見
(
まがつみ
)
を
045
言向和
(
ことむけやは
)
す
時
(
とき
)
は
来
(
き
)
にけり』
046
かかる
所
(
ところ
)
へ、
047
足音
(
あしおと
)
高
(
たか
)
くやつて
来
(
き
)
たのはセールであつた。
048
デビスは
中
(
なか
)
から
声
(
こゑ
)
をかけ、
049
デビス『もしもし、
050
貴方
(
あなた
)
はセールの
親分
(
おやぶん
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか。
051
嫌
(
いや
)
だワ。
052
夜前
(
やぜん
)
は
妾
(
わたし
)
に、
053
あれ
丈
(
だ
)
け
固
(
かた
)
く
約束
(
やくそく
)
し
乍
(
なが
)
ら、
054
何故
(
なぜ
)
聞
(
き
)
いて
下
(
くだ
)
さらないの。
055
早
(
はや
)
く
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
をフン
縛
(
じば
)
つて、
056
此処
(
ここ
)
へ
入
(
い
)
れて
下
(
くだ
)
さいな。
057
そして
思
(
おも
)
ふ
存分
(
ぞんぶん
)
恨
(
うらみ
)
を
晴
(
は
)
らさして
下
(
くだ
)
さいな。
058
ね、
059
親分
(
おやぶん
)
さま』
060
セール『イヤ、
061
済
(
す
)
まなかつた。
062
何時
(
なんどき
)
でも
呼
(
よ
)
んでやる。
063
実
(
じつ
)
は
昨夜
(
ゆうべ
)
、
064
あまりお
前
(
まへ
)
の
返事
(
へんじ
)
が
気
(
き
)
が
利
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
たので、
065
前祝
(
まへいはひ
)
に
葡萄酒
(
ぶどうしゆ
)
をグイグイとやつた
所
(
ところ
)
酔
(
よ
)
つて
了
(
しま
)
ひ、
066
誠
(
まこと
)
に
済
(
す
)
まぬ
事
(
こと
)
した。
067
これからヤク、
068
エールの
牢番
(
らうばん
)
に
云
(
い
)
ひつけ、
069
ここへ
引
(
ひつ
)
張
(
ぱ
)
つて
来
(
き
)
てやらう』
070
デビス『それが
定
(
きま
)
つた
上
(
うへ
)
は、
071
別
(
べつ
)
に
慌
(
あわ
)
てるには
及
(
およ
)
びませぬ。
072
妾
(
わたし
)
が
何程
(
なんぼ
)
さかしい
女
(
をんな
)
だとて、
073
昼
(
ひる
)
は
顔
(
かほ
)
が
見
(
み
)
えますから
今晩
(
こんばん
)
にして
下
(
くだ
)
さいな、
074
暗
(
くら
)
がりで
嬲
(
なぶり
)
殺
(
ごろし
)
にしたう
厶
(
ござ
)
いますからね。
075
なア
旦那
(
だんな
)
さま』
076
セール『ウン、
077
よし、
078
気
(
き
)
に
入
(
い
)
つた。
079
俺
(
おれ
)
に
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
と
云
(
い
)
ひよつたな、
080
それに
間違
(
まちが
)
ひはない。
081
それにきまつた
上
(
うへ
)
は
何事
(
なにごと
)
によらず、
082
お
前
(
まへ
)
の
望
(
のぞ
)
みを
聞
(
き
)
いてやらう。
083
今
(
いま
)
牢獄
(
らうごく
)
を
出
(
だ
)
せなら
出
(
だ
)
さぬ
事
(
こと
)
もない。
084
何分
(
なにぶん
)
自分
(
じぶん
)
の
奥
(
おく
)
さまを、
085
こんな
所
(
ところ
)
へ
入
(
い
)
れて
虐待
(
ぎやくたい
)
するのも、
086
済
(
す
)
まぬからな』
087
デビス『
出
(
だ
)
して
頂
(
いただ
)
くのは
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
いますが、
088
首尾
(
しゆび
)
よう
敵
(
かたき
)
を
討
(
う
)
つ
迄
(
まで
)
、
089
此処
(
ここ
)
に
斯
(
か
)
うして
置
(
お
)
いて
下
(
くだ
)
さい。
090
そして
晩
(
ばん
)
に
此処
(
ここ
)
にブラヷーダさまを
入
(
い
)
れて
貰
(
もら
)
ひ、
091
そこへ
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
を
呼
(
よ
)
んで
両方
(
りやうはう
)
から
斬
(
き
)
り
苛
(
さいな
)
めさして
下
(
くだ
)
さい。
092
夜通
(
よどほ
)
しかかつて、
093
耳
(
みみ
)
を
切
(
き
)
り、
094
鼻
(
はな
)
を
切
(
き
)
り、
095
指
(
ゆび
)
を
斬
(
き
)
つて、
096
バルチザンの
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
をせねば、
097
虫
(
むし
)
が
得心
(
とくしん
)
しませぬワ』
098
セール『
成程
(
なるほど
)
099
そりや
面白
(
おもしろ
)
からう。
100
そんなら、
101
今夜
(
こんや
)
は
首尾
(
しゆび
)
よく
目的
(
もくてき
)
を
達
(
たつ
)
し、
102
明日
(
あす
)
は
結婚
(
けつこん
)
の
式
(
しき
)
を
挙
(
あ
)
げる
事
(
こと
)
にしよう。
103
それでは、
104
懐剣
(
くわいけん
)
は
一本
(
いつぽん
)
づつお
前
(
まへ
)
に、
105
上
(
あ
)
げて
置
(
お
)
かう』
106
デビス『ハイ、
107
有難
(
ありがた
)
う。
108
然
(
しか
)
し
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
109
一
(
ひと
)
つ
約束
(
やくそく
)
をして
置
(
お
)
きたう
厶
(
ござ
)
います』
110
セール『ウン、
111
よしよし。
112
何
(
なん
)
でも
約束
(
やくそく
)
をしてやる』
113
デビス『そんなら
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
。
114
妾
(
わたし
)
を
本妻
(
ほんさい
)
にして
下
(
くだ
)
さい。
115
そしてブラヷーダ
姫
(
ひめ
)
は
第二
(
だいに
)
夫人
(
ふじん
)
ですから、
116
それを
今
(
いま
)
の
中
(
うち
)
に
誓
(
ちか
)
つて
頂
(
いただ
)
きたう
厶
(
ござ
)
いますワ』
117
セール『ナーンだ。
118
そんな
事
(
こと
)
か。
119
それなら
俺
(
おれ
)
の
思惑
(
おもわく
)
通
(
どほり
)
だ。
120
お
前
(
まへ
)
もお
頭
(
かしら
)
の
奥
(
おく
)
さまとなれば
121
余
(
あま
)
り
悪
(
わる
)
くはあるまいぞ。
122
……
果報
(
くわはう
)
は
寝
(
ね
)
て
待
(
ま
)
てとはよく
云
(
い
)
つたものだな』
123
デビス『そんなら
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
124
恥
(
はづか
)
しう
厶
(
ござ
)
いますから、
125
今晩
(
こんばん
)
は
外
(
ほか
)
の
小盗人
(
こぬすと
)
が
寄
(
よ
)
りつかぬやうにして
下
(
くだ
)
さいませや』
126
セール『よしよし、
127
お
前
(
まへ
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
なら
何
(
なん
)
でも
聞
(
き
)
いてやる。
128
明日
(
あす
)
は
結婚
(
けつこん
)
するのだから、
129
その
用意
(
ようい
)
に
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
を
集
(
あつ
)
めて
置
(
お
)
かねばならぬ。
130
乾児
(
こぶん
)
の
奴
(
やつ
)
等
(
ら
)
を
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
に
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
の
準備
(
じゆんび
)
に
差遣
(
さしつか
)
はさう。
131
今晩
(
こんばん
)
を
楽
(
たのし
)
みに
待
(
ま
)
つてゐよ。
132
ヤア
俺
(
わし
)
も
之
(
これ
)
から
髯
(
ひげ
)
でも
剃
(
そ
)
つて、
133
チツと
めか
さうかい。
134
花嫁
(
はなよめ
)
さまに
対
(
たい
)
しても、
135
あまり
無躾
(
ぶしつけ
)
だからな』
136
と
元気
(
げんき
)
よく
吾
(
わが
)
居間
(
ゐま
)
に
帰
(
かへ
)
り、
137
子分
(
こぶん
)
を
残
(
のこ
)
らず
呼
(
よ
)
び
寄
(
よ
)
せ、
138
各自
(
めいめい
)
用
(
よう
)
を
吩
(
い
)
ひつけ、
139
山
(
やま
)
を
下
(
くだ
)
つて
馳走
(
ちそう
)
の
用意
(
ようい
)
をなすべく
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
へ
派遣
(
はけん
)
して
了
(
しま
)
つた。
140
後
(
あと
)
にセールは、
141
又
(
また
)
もやヤクを
相手
(
あひて
)
に、
142
お
祝
(
いはひ
)
として
葡萄酒
(
ぶだうしゆ
)
を
呻
(
あふ
)
つてゐる。
143
ヤク『もし
親方
(
おやかた
)
、
144
明日
(
あす
)
はお
目出度
(
めでた
)
う
厶
(
ござ
)
います。
145
何卒
(
どうぞ
)
御
(
ご
)
成功
(
せいこう
)
を
祈
(
いの
)
りますよ』
146
セール『ウン、
147
云
(
い
)
ふにヤ
及
(
およ
)
ばぬ。
148
既
(
すで
)
に
成功
(
せいこう
)
したも
同然
(
どうぜん
)
だ。
149
イツヒヽヽヽ、
150
お
前
(
まへ
)
も
羨
(
けな
)
りいだらうが、
151
マア
暫
(
しば
)
らく
辛抱
(
しんばう
)
してくれ。
152
俺
(
おれ
)
の
手
(
て
)
で
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
を
片
(
かた
)
づける
事
(
こと
)
は、
153
何程
(
なんぼ
)
泥棒
(
どろばう
)
だつて
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
の
恩義
(
おんぎ
)
上
(
じやう
)
、
154
手
(
て
)
を
下
(
くだ
)
す
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
かず、
155
又
(
また
)
沢山
(
たくさん
)
の
子分
(
こぶん
)
があつても、
156
九分
(
くぶ
)
九厘
(
くりん
)
迄
(
まで
)
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
の
部下
(
ぶか
)
だつたのだから、
157
真逆
(
まさか
)
の
時
(
とき
)
躊躇
(
ちうちよ
)
をし、
158
自分
(
じぶん
)
の
長上
(
ちやうぢやう
)
を
殺
(
ころ
)
すやうな
手本
(
てほん
)
を
出
(
だ
)
すと
皆
(
みな
)
が
赤化
(
せきくわ
)
しよつて、
159
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
迄
(
まで
)
、
160
気
(
き
)
に
入
(
い
)
らぬと
何時
(
いつ
)
首
(
くび
)
を
掻
(
か
)
くかも
知
(
し
)
れぬので、
161
実
(
じつ
)
は
思想
(
しさう
)
上
(
じやう
)
の
大問題
(
だいもんだい
)
と
心配
(
しんぱい
)
してゐたのだ。
162
然
(
しか
)
るに
何
(
なん
)
の
幸
(
さいはひ
)
ぞ、
163
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
に
恨
(
うらみ
)
を
抱
(
いだ
)
いた
二人
(
ふたり
)
のナイスが、
164
敵
(
かたき
)
を
討
(
う
)
たして
呉
(
く
)
れと
云
(
い
)
ふのだから、
165
俺
(
おれ
)
にとつても
之
(
これ
)
以上
(
いじやう
)
の
好都合
(
かうつがふ
)
はない。
166
居
(
ゐ
)
乍
(
なが
)
らにして
敵
(
てき
)
を
平
(
たひら
)
げ、
167
邪魔物
(
じやまもの
)
を
無
(
な
)
くし、
168
惚
(
ほ
)
れた
女
(
をんな
)
と
合衾
(
がふきん
)
の
式
(
しき
)
を
挙
(
あ
)
げるとは
実
(
じつ
)
に
愉快
(
ゆくわい
)
な
事
(
こと
)
だ。
169
アハヽヽヽオイ、
170
ヤク、
171
お
前
(
まへ
)
も
一杯
(
いつぱい
)
やれ、
172
何
(
なに
)
も
遠慮
(
ゑんりよ
)
は
入
(
い
)
らぬ、
173
もとは
只
(
ただ
)
で
盗
(
と
)
つた
酒
(
さけ
)
だから、
174
何程
(
なんぼ
)
飲
(
の
)
んでも
175
懐
(
ふところ
)
の
えぐれ
る
気遣
(
きづか
)
ひもなし
気楽
(
きらく
)
なものだ』
176
ヤク『ハイ、
177
頂戴
(
ちやうだい
)
致
(
いた
)
します。
178
親分
(
おやぶん
)
様
(
さま
)
の
空前
(
くうぜん
)
絶後
(
ぜつご
)
の
御
(
お
)
目出度
(
めでた
)
さですから、
179
私
(
わたし
)
も
抃舞
(
べんぶ
)
雀躍
(
じやくやく
)
して
居
(
を
)
ります』
180
と
無性
(
むしやう
)
矢鱈
(
やたら
)
に
酒
(
さけ
)
をすすめて、
181
酔
(
よ
)
ひ
潰
(
つぶ
)
さうとかかつてゐる。
182
セールは
上機嫌
(
じやうきげん
)
でソロソロ
謡
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
した。
183
セール『
飲
(
の
)
めよ
騒
(
さわ
)
げよ
一寸先
(
いつすんさき
)
や
暗夜
(
やみよ
)
184
暗
(
やみ
)
に
包
(
つつ
)
んだ
獄牢
(
ひとや
)
の
中
(
うち
)
に
185
月雪花
(
つきゆきはな
)
にも
譬
(
たと
)
ふべき
186
二人
(
ふたり
)
のナイスが
待
(
ま
)
つてゐる
187
誰
(
たれ
)
を
待
(
ま
)
つかと
尋
(
たづ
)
ねて
見
(
み
)
たら
188
バラモン
教
(
けう
)
にて
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
き
189
陸軍
(
りくぐん
)
大尉
(
たいゐ
)
のセールさま
190
色
(
いろ
)
が
黒
(
くろ
)
うて
背
(
せ
)
が
高
(
たか
)
うて
191
目玉
(
めだま
)
が
丸
(
まる
)
うて
天狗鼻
(
てんぐばな
)
192
古今
(
ここん
)
無双
(
むさう
)
の
男
(
をとこ
)
らしい
男
(
をとこ
)
193
今
(
いま
)
は
泥棒
(
どろばう
)
の
親分
(
おやぶん
)
となつて
194
数多
(
あまた
)
の
乾児
(
こぶん
)
を
使役
(
しえき
)
する
195
ヤツパリ
身魂
(
みたま
)
は
争
(
あらそ
)
はれない
196
一中隊
(
いつちうたい
)
の
兵卒
(
へいそつ
)
を
197
指揮
(
しき
)
した
身魂
(
みたま
)
はどこ
迄
(
まで
)
も
198
一中隊
(
いつちうたい
)
の
盗人
(
ぬすびと
)
を
199
相
(
あひ
)
も
変
(
かは
)
らず
支配
(
しはい
)
して
200
虎熊山
(
とらくまやま
)
の
山砦
(
さんさい
)
に
201
羽振
(
はぶ
)
りを
利
(
き
)
かす
甲斐性
(
かひしやう
)
もの
202
恋
(
こひ
)
の
仇
(
あだ
)
なるハールの
少尉
(
せうゐ
)
203
今
(
いま
)
は
何処
(
いづこ
)
の
山
(
やま
)
の
果
(
は
)
て
204
野辺
(
のべ
)
に
逍遥
(
さまよひ
)
メソメソと
205
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
不運
(
ふうん
)
をかこちつつ
206
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
果敢
(
はか
)
なみゐるだらう
207
二人
(
ふたり
)
のナイスを
此
(
この
)
セールが
208
両手
(
りやうて
)
に
花
(
はな
)
の
結婚
(
けつこん
)
を
209
やつたと
聞
(
き
)
いたら
嘸
(
さぞ
)
や
嘸
(
さぞ
)
210
地団太
(
ぢだんだ
)
踏
(
ふ
)
んで
口惜
(
くや
)
しがり
211
舌
(
した
)
でも
噛
(
か
)
んで
死
(
し
)
ぬだらう
212
その
有様
(
ありさま
)
がアリアリと
213
吾
(
わが
)
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
にちらついて
214
ほんに
愉快
(
ゆくわい
)
な
事
(
こと
)
だわい
215
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
俺
(
おれ
)
の
様
(
やう
)
な
216
幸福者
(
しあはせもの
)
が
世
(
よ
)
にあらうか
217
数万
(
すまん
)
の
金
(
かね
)
を
懐
(
ふところ
)
に
218
抱
(
いだ
)
いた
比丘
(
びく
)
はうまうまと
219
吾
(
わが
)
手
(
て
)
に
知
(
し
)
らずに
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
んで
220
福
(
ふく
)
を
授
(
さづ
)
けに
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れた
221
木花姫
(
このはなひめ
)
か
弁財天
(
べんざいてん
)
222
出雲
(
いづも
)
の
姫
(
ひめ
)
も
真裸足
(
まつぱだし
)
223
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
す
様
(
やう
)
なナイスをば
224
左右
(
さいう
)
に
侍
(
はべ
)
らしうま
酒
(
さけ
)
に
225
舌
(
した
)
の
鼓
(
つづみ
)
を
撃
(
う
)
ち
乍
(
なが
)
ら
226
小股
(
こまた
)
にはさんだ
三味線
(
しやみせん
)
を
227
ピンピンツンツン
引
(
ひ
)
き
立
(
た
)
てて
228
糸
(
いと
)
がきれる
程
(
ほど
)
抱
(
だ
)
きしめて
229
思
(
おも
)
ふ
存分
(
ぞんぶん
)
痴話
(
ちわ
)
喧嘩
(
けんくわ
)
230
罰
(
ばち
)
が
当
(
あた
)
つても
構
(
かま
)
やせぬ
231
ほんに
愉快
(
ゆくわい
)
な
事
(
こと
)
だわい
232
之
(
これ
)
と
云
(
い
)
ふのもバラモンの
233
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
御
(
おん
)
恵
(
めぐ
)
み
234
これだによつて
平生
(
へいぜ
)
から
235
神信心
(
かみしんじん
)
はせにやならぬ
236
と
云
(
い
)
ふて
泥棒
(
どろばう
)
の
親分
(
おやぶん
)
が
237
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
手
(
て
)
を
合
(
あ
)
はし
238
お
経
(
きやう
)
を
云
(
い
)
ふのも
何
(
なん
)
とやら
239
薄気味
(
うすきみ
)
悪
(
わる
)
い
心地
(
ここち
)
する
240
さはさり
乍
(
なが
)
らそんな
事
(
こと
)
241
気
(
き
)
にかけてゐたら
恋
(
こひ
)
の
道
(
みち
)
242
欲
(
よく
)
の
目的
(
もくてき
)
達
(
たつ
)
しない
243
よくない
奴
(
やつ
)
は
悪
(
あく
)
といふ
244
よくがありやこそ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
245
善
(
ぜん
)
と
云
(
い
)
はれて
暮
(
くら
)
すのだ
246
善
(
ぜん
)
は
急
(
いそ
)
げだ
今晩
(
こんばん
)
の
247
二人
(
ふたり
)
の
仇討
(
あだう
)
ち
済
(
す
)
んだなら
248
時
(
とき
)
を
移
(
うつ
)
さず
合衾
(
がふきん
)
の
249
式
(
しき
)
をば
挙
(
あ
)
げて
偕老
(
かいらう
)
の
250
契
(
ちぎり
)
を
結
(
むす
)
ぶ
下準備
(
したじゆんび
)
251
お
前
(
まへ
)
も
充分
(
じゆうぶん
)
気
(
き
)
をつけて
252
落度
(
おちど
)
のないやうにやつてくれ
253
あゝ
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い
254
面白
(
おもしろ
)
うなつて
来
(
き
)
たわいナ。
255
アハヽヽヽ
酒
(
さけ
)
は
浩然
(
こうぜん
)
の
気
(
き
)
を
養
(
やしな
)
ふと
云
(
い
)
つて、
256
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
クシヤクシヤして
居
(
ゐ
)
た
俺
(
おれ
)
の
気分
(
きぶん
)
もカラリと
晴
(
は
)
れ、
257
世界晴
(
せかいば
)
れのやうだ。
258
どうして
又
(
また
)
、
259
こんな
好運児
(
かううんじ
)
に
生
(
うま
)
れて
来
(
き
)
たものだらうな。
260
エヽヽヽヽ』
261
と
一人
(
ひとり
)
管
(
くだ
)
を
巻
(
ま
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
262
ヤクは
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に、
263
酔
(
よ
)
はさうとかかつてゐる。
264
漸
(
やうや
)
くにして、
265
その
日
(
ひ
)
は
暮
(
く
)
れて
了
(
しま
)
つた。
266
肝腎
(
かんじん
)
のセールはグタグタになつてゐる。
267
ヤクはソツと
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立
(
たち
)
出
(
い
)
で
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
の
牢獄
(
らうごく
)
の
前
(
まへ
)
へと
急
(
いそ
)
いだ。
268
ヤク『オイ、
269
エール、
270
之
(
これ
)
からが
正念場
(
しやうねんば
)
だぞ。
271
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
両人
(
りやうにん
)
が
今夜
(
こんや
)
こそ
捨身
(
しやしん
)
的
(
てき
)
大活動
(
だいくわつどう
)
をやつて
大将
(
たいしやう
)
を
往生
(
わうじやう
)
させるのだ。
272
抜
(
ぬ
)
からないやうにせよ』
273
エール『
心配
(
しんぱい
)
するな。
274
策戦
(
さくせん
)
計画
(
けいくわく
)
はスツカリ
整
(
ととの
)
ふてゐるのだ』
275
治道
(
ちだう
)
『ヤ、
276
両人
(
りやうにん
)
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だつた。
277
サア
之
(
これ
)
から
愈
(
いよいよ
)
本芝居
(
ほんしばゐ
)
にかからう。
278
万事
(
ばんじ
)
抜目
(
ぬけめ
)
なく
頼
(
たの
)
むよ』
279
ヤク『ハイ、
280
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
281
然
(
しか
)
し
小頭
(
こがしら
)
が
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
、
282
ウロウロしてゐますから、
283
暗
(
くら
)
がりに
余程
(
よほど
)
うまくやらないと、
284
芝居
(
しばゐ
)
の
打
(
う
)
ち
損
(
そこな
)
ひをやつたら
大変
(
たいへん
)
ですから、
285
気
(
き
)
をつけて
下
(
くだ
)
さい』
286
治道
(
ちだう
)
『
何事
(
なにごと
)
も
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御心
(
みこころ
)
の
287
ままになれよと
祈
(
いの
)
るのみなる』
288
(
大正一二・七・一六
旧六・三
於祥雲閣
北村隆光
録)
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