霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三章 (はな)(じま)〔一九八四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第79巻 天祥地瑞 午の巻 篇:第1篇 竜の島根 よみ(新仮名遣い):たつのしまね
章:第3章 離れ島 よみ(新仮名遣い):はなれじま 通し章番号:1984
口述日:1934(昭和9)年07月16日(旧06月5日) 口述場所:関東別院南風閣 筆録者:白石恵子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年10月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
麗子は人面竜身の怪物にさらわれ、黒雲の中をものすごい速度で運ばれてきた。そして、とある紫の壁、蒼い瓦の門前に下ろされた。ふとあたりを見れば、そこは湖水すれすれに浮かんだ、竜神の都の表門であった。
数多の人面竜身の竜神族は、「ウォーウォー」と叫びながら、藻の衣をまとい、顔面のみを出して、幾百千ともなく門の両側に端座して迎えていた。
竜神の王は、国津神の娘、麗子姫を竜神族の王として迎え祭り、竜神族の子孫を人の姿に生みなおしてもらおうと、声もさわやかに歌った。竜神たちは、さまざまな音楽をかなでて歓迎の意を表し、陸に湖に出没して踊り狂う声は、天地も崩れるばかりであった。
麗子はあまりの光景に不審の念が晴れず、父母や兄の事を思いながら黙然とうつむいていた。竜神の王は、ここは竜神の都であり、麗子によって竜神族の竜身のすがたを救ってもらおうとしているのだ、と歌い説明した。
麗子はもはや仕方がないと決心を固め、この憐れな種族にとついで人間の子孫を生もうと、艶男への恋心を断ち切ろうとしたが、心の底に一片の名残が残っていた。
麗子は、今は竜神の王となって竜神族を助けようと決心を固めたことを歌った。竜神の王は感謝の意を表し、今日からは竜宮の弟姫として、竜神族の守りとなってくれるよう頼んだ。
竜神たちは、金、銀、瑪瑙など宝玉で飾った神輿を担ぎ来て、弟姫となった麗子の前に降ろし、平伏した。竜神の王は、この輿は麗子のために作ったものであり、竜神族の真心を表したもので、どうか乗ってくれるように頼んだ。
麗子は今はこの輿に乗って進もうと応じ、神輿の鉄戸を開いて立ち入った。神輿は直立しても頭が天井につかえることはなく、長柄の棒を担ぐ竜神族は幾百人という大きなものであった。
竜神の王を先頭に進んでいくと、七宝で飾られた大楼門が現れた。白衣をつけた竜神たちが左右に鉄戸を開き、神輿は粛々と中に入っていった。そこは妙なる鳥の声が木々のこずえに響き渡り、その荘厳さは言葉に尽くせないほどだった。
この大竜殿の玄関に、神輿はうやうやしく下ろされた。竜神の王は、ここが我が住む館であると歌った。麗子は神輿の戸を開いて庭に降り立つと、竜神王の後について奥殿へ進み入った。
これより麗子は、竜宮の弟姫とたたえられ、竜神の王に大竜身彦の命と名を与えると、この島の司として輝きわたることとなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-05-29 08:53:14 OBC :rm7903
愛善世界社版: 八幡書店版:第14輯 180頁 修補版: 校定版:60頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 麗子(うららか)人面(にんめん)竜身(りうしん)湖中(こちう)怪物(くわいぶつ)にさらはれ、002黒雲(くろくも)(なか)(しば)何処(いづこ)ともなく、003一瀉(いつしや)(せん)()(てき)速力(そくりよく)にて(はこ)ばれつつ、004とある紫壁(しへき)蒼瓦(さうぐわ)門前(もんぜん)におろされ、005ふと(あた)りを()れば湖水(こすい)すれすれに(うか)べる竜神(たつがみ)(みやこ)表門前(おもてもんぜん)なりける。
006 数多(あまた)人面(にんめん)竜身(りうしん)竜神族(たつがみぞく)は、007「ウオーウオー」と(さけ)びながら、008身体(からだ)()(ころも)(まと)ひ、009顔面(がんめん)のみを()して幾百千(いくひやくせん)ともなく、010(もん)両側(りやうがは)端坐(たんざ)(むか)()たり。
011 竜神(たつがみ)(わう)(こゑ)もさはやかに(うた)ふ。
012『あはれあはれ
013百年(ももとせ)千年(ちとせ)相待(あひま)ちし
014国津(くにつ)御祖(みおや)愛娘(まなむすめ)
015麗子姫(うららかひめ)(いま)此処(ここ)
016(むか)へまつりぬ今日(けふ)よりは
017(たつ)(みやこ)(こきし)となりて
018われ()一族(いちぞく)(ことごと)
019人面(にんめん)竜身(りうしん)のこの姿(すがた)
020(ひと)姿(すがた)()(なほ)
021竜神族(たつがみやから)(ことごと)
022国津神(くにつかみ)()のみすがたに
023よみがへらせて天地(あめつち)
024(めぐみ)(うみ)(なか)までも
025()らさせ(たま)麗子(うららか)(ひめ)
026ウオーウオー
027あなさやけおけ
028(たつ)(みやこ)鉄門(かなど)(いま)
029(あめ)(つち)との一時(ひととき)
030(ひら)けし(ごと)くさやさやに
031(ひら)()めけりあな(たふと)
032あなさやけおけ
033あな面白(おもしろ)()でましよ』
034と、035各自(おのもおのも)くさぐさの音楽(おんがく)(かな)で、036歓迎(くわんげい)()(へう)し、037竜神族(たつがみぞく)一斉(いつせい)()(あが)り、038(くが)(うみ)出没(しゆつぼつ)して(をど)(くる)ふその(こゑ)039天地(てんち)(くづ)るるばかりに(おも)はれける。
040 麗子(うららか)はあまりの(かは)りたる光景(くわうけい)に、041(やや)(しば)不審(ふしん)(ねん)()れやらず、042艶男(あでやか)(こひ)しき()(こと)(わす)れられず、043父母(ふぼ)安否(あんぴ)気遣(きづか)ひながら黙然(もくねん)(うつむ)いて()る。
044 竜神(たつがみ)(わう)莞爾(くわんじ)として、045麗子(うららか)()をそつと(にぎ)り、
046『いぶかしくおぼしめすらむ(この)(しま)
047竜神族(たつがみやから)()める(みやこ)
048(きみ)なくば竜神族(たつがみやから)はいつまでも
049このあさましき姿(すがた)(たも)たむ
050(あたま)のみ(ひと)(うま)れて身体(からたま)
051このあさましき(たつ)姿(すがた)よ』
052 ここに麗子(うららか)最早(もはや)(せん)なしと決心(けつしん)(ほぞ)をかため、053人面(にんめん)竜身(りうしん)のあはれなる(この)(やから)(とつ)ぎ、054人間(にんげん)子孫(しそん)()(おほ)せむものと、055雄々(をを)しくも艶男(あでやか)(たい)する恋心(こひごころ)()()らむとしたが、056どうやら(こころ)(そこ)一片(いつぺん)名残(なごり)(のこ)つて()た。
057(おも)ひきや艶男(あでやか)(きみ)にあらずして
058(たつ)(みやこ)(きみ)なりしはや
059かくならば(なに)(なげ)かむ今日(けふ)よりは
060(たつ)(みやこ)(きみ)(つか)へむ
061垂乳根(たらちね)(ちち)(はは)とはさぞやさぞ
062わがなきあとを(なげ)かせ(たま)はむ
063わが(おも)(こころ)(なか)生命(いのち)なる
064(きみ)もさぞかし(なげ)かせ(たま)はむ
065さりながら竜神族(たつがみやから)のもろもろを
066(たす)くる神業(わざ)(おも)ひて(なぐさ)
067(みづ)(なか)にかかる(みやこ)のある(こと)
068(さと)らざりしよ(いま)(いま)まで
069(ゆめ)なれば(はや)()めかしわれは(いま)
070()しらぬ国土(くに)(いざな)はれ()
071千万(ちよろづ)竜神族(たつがみやから)(むか)へられ
072夢路(ゆめぢ)辿(たど)心地(ここち)するかも
073竜神(たつがみ)(こきし)よもろもろ(やから)たち
074われは今日(けふ)より国土(くに)(きみ)ぞや
075(おや)()(こひ)()てたるわれにして
076如何(いか)でひるまむ(この)島国(しまぐに)
077わが言葉(ことば)(うべな)(ちから)なかりせば
078われは黄泉(よみぢ)(たび)だちなさむ
079(いや)しけれど(くに)御祖(みおや)御子(みこ)なるぞ
080(なれ)竜神(たつがみ)如何(いか)(おそ)れむ』
081 竜神(たつがみ)(わう)は、082麗子(うららか)直立(ちよくりつ)せる(まへ)(ひざまづ)きて、
083有難(ありがた)しうららの(きみ)御言明(みことのり)
084幾代(いくよ)()るとも(たが)はざるべし
085あさましき姿(すがた)()てる竜神(たつがみ)
086(すく)ひの(かみ)天降(あも)りましけり
087百年(ももとせ)(ねがひ)(かな)ひてわれは(いま)
088(すく)ひの(かみ)にあひにけるかも
089(いま)までは(うみ)悪魔(あくま)国津(くにつ)(かみ)
090(さげ)すまれつつ(わざはひ)なしけり
091今日(けふ)よりは本津心(もとつこころ)(あらた)めて
092天地(てんち)神業(みわざ)(つか)へまつらむ
093伊吹山(いぶきやま)(つづ)竜宮島(りうぐうしま)()
094われらが永久(とは)住処(すみか)なるぞや
095()(きみ)今日(けふ)より竜宮(りうぐう)弟姫(おとひめ)
096あらはれましてわれらを(まも)らせ
097竜宮(りうぐう)弟姫(おとひめ)これにある(かぎ)
098()島ケ根(しまがね)(やす)けかるべし』
099 麗子(うららか)(うた)ふ。
100大空(おほぞら)(たか)(はて)なし湖底(うなぞこ)
101(ふか)(ひろ)しも(かみ)御稜威(みいづ)
102もろもろの魚族(うろくづ)(のこ)らずわが(とく)
103まつろひ(きた)(やす)(まも)らむ
104国津(くにつ)(かみ)御子(みこ)(うま)れて(この)(しま)
105(きみ)となりしは(かみ)(こころ)
106(この)(しま)()月光(つきかげ)水上山(みなかみやま)
107()るも(ひと)しき(ひかり)ならずや
108(つき)()(くま)なく()らせ竜宮(りうぐう)
109島根(しまね)(きみ)はここにありけり
110(よる)されば御空(みそら)(つき)(かがや)きて
111()島ケ根(しまがね)(やす)()らさむ
112(あさ)されば天津(あまつ)日光(ひかげ)煌々(くわうくわう)
113(うみ)(そこ)ひも(あか)(たま)はれ
114(つき)()えよ(ほし)(またた)湖底(うなぞこ)
115真砂(まさご)()れよ魚族(うろくづ)()きよ
116みぐるしき竜神族(たつがみやから)身体(からたま)
117百年(ももとせ)(のち)(ひと)となさばや
118われは(いま)竜神(たつがみ)(きみ)(とつ)ぎつつ
119(まつた)御子(みこ)()まむと(おも)
120(この)(しま)にわれ天降(あも)りてゆ()(くさ)
121(にはか)(ひかり)()しにけらしな』
122 かかる(ところ)へ、123(はる)(むか)ふの(はう)より竜神(たつがみ)たちは、124(きん)125(ぎん)126瑪瑙(めなう)127瑠璃(るり)128硨磲(しやこ)129珊瑚(さんご)130水晶(すゐしやう)(とう)にて(かざ)りたてたる神輿(みこし)(かつ)(きた)り、131弟姫(おとひめ)()たせる(まへ)にどつかとおろし平伏(へいふく)する。
132 竜神(たつがみ)(わう)(この)輿(こし)(ゆびさ)弟姫(おとひめ)(むか)ひ、
133『いざ()駕籠(かご)()しませ百年(ももとせ)千年(ちとせ)()
134つくりし輿(こし)(きみ)のみために
135一度(ひとたび)(もち)ひし(こと)のなき神輿(みこし)
136(きみ)(ささ)げむわれの真心(まごころ)
137百年(ももとせ)千年(ちとせ)(こころ)(もち)ひつつ
138所有(あらゆる)(たから)につくりし輿(こし)はや
139(この)輿(こし)(きみ)ならずして()(うへ)
140()すべき(かみ)はあらじと(おも)ふ』
141 麗子(うららか)意外(いぐわい)意外(いぐわい)に、142驚異(きやうい)(まなこ)をみはりながら、
143(おも)ひきやかかる島根(しまね)にかくの(ごと)
144うるはしき(たから)輿(こし)のありとは
145竜神(たつがみ)(こころ)をこめし輿(こし)なれば
146われもいなまじ()りてや(すす)まむ』
147 竜神(たつがみ)(わう)(おほ)いに(よろこ)(うた)ふ。
148有難(ありがた)弟姫神(おとひめがみ)御言明(みことのり)
149()くは吾身(わがみ)生命(いのち)なりけり
150生命(いのち)にもかへて(つく)りし(この)神輿(みこし)
151(はや)()しませ弟姫(おとひめ)(かみ)
152百神(ももがみ)もさぞ(よろこ)ばむ百千年(ももちとせ)
153(こころ)づくしも(いま)(むく)はれて』
154 ここに麗子姫(うららかひめ)は、155(ゆめ)夢見(ゆめみ)心地(ここち)して、156神輿(みこし)鉄門(かなど)(ひら)き、157さつと()()り、158直立(ちよくりつ)不動(ふどう)姿勢(しせい)をとれども、159さりとて(かしら)天井(てんじやう)につかふる(うれ)ひもなく、160(もつと)(たか)(ひろ)神輿(みこし)なりければ、161長柄(ながえ)(ぼう)(かつ)竜神族(たつがみぞく)は、162幾百(いくひやく)(にん)とも(かぞ)()れぬ多人数(たにんずう)なりける。
163 竜神(たつがみ)(わう)神輿(みこし)(まへ)()ち、164幣帛(にぎて)()りながら先頭(せんとう)をなし、165(はる)彼方(かなた)御殿(ごてん)をさして(すす)()く。
166 竜神(たつがみ)(たち)は、167「ウオーウオー」と一斉(いつせい)(こゑ)(そろ)へ、168天地(てんち)(ゆる)がさむばかりの(いきほひ)にて、169粛々(しゆくしゆく)行列(ぎやうれつ)(ただ)しく前進(ぜんしん)する。
170 ()くこと(やく)二十町(にじつちやう)ばかり、171ここに七宝(しつぽう)(もつ)(かざ)られたる大楼門(だいろうもん)巍然(ぎぜん)として()つて()る。172白衣(びやくえ)をつけし竜神(たつがみ)たちは、173左右(さいう)鉄門(かなど)をぱつと(ひら)いた。174神輿(みこし)粛々(しゆくしゆく)として門内(もんない)(くぐ)()る。175迦陵(かりよう)頻伽(びんが)(こゑ)176彼方(かなた)此方(こなた)木々(きぎ)(こずゑ)(つた)はり(きた)り、177その荘厳(さうごん)言語(げんご)のつくすべきにあらず、178神輿(みこし)大竜殿(だいりうでん)玄関(げんくわん)(うやうや)しくおろされた。
179 竜神(たつがみ)(わう)(うた)ふ。
180『これこそはわが()(たち)よとこたちよ
181いざ(すす)みませ(おく)殿(との)まで
182百年(ももとせ)(たくみ)になりし大殿(おほとの)
183(なれ)()でまし()ちて()たるも
184(やうや)くに()(あが)りたる大殿(おほとの)
185()()(みこと)()みて(をさ)めよ』
186 麗子(うららか)神輿(みこし)()(ひら)き、187清楚(せいそ)たる姿(すがた)にて、188悠々(いういう)清庭(すがには)()()で、189竜神(たつがみ)(わう)のしりへについて奥殿(おくでん)(ふか)(すす)()る。
190 これより麗子(うららか)は、191竜宮(りうぐう)弟姫(おとひめ)(たた)へられ、192竜神(たつがみ)(わう)大竜身彦(おほたつみひこ)(みこと)()(あた)へ、193(この)(しま)(つかさ)として(かがや)(わた)(こと)となりける。
194麗子(うららか)(おも)はず()らず竜神(たつがみ)
195(まね)かれ(しま)(つかさ)となりける
196(この)(しま)(あと)をたれつつ竜宮(りうぐう)
197弟姫神(おとひめがみ)(あふ)がれにける
198(この)(かみ)のいさをしなくば海中(わだなか)
199魚族(うろくづ)永久(とは)(さか)えざるべし。
200昭和九・七・一六 旧六・五 於関東別院南風閣 白石恵子謹録)
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