霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三章 離(はな)れ島(じま)〔一九八四〕

インフォメーション
著者: 巻: 篇: よみ(新仮名遣い):
章: よみ(新仮名遣い): 通し章番号:
口述日: 口述場所: 筆録者: 校正日: 校正場所: 初版発行日:
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]: 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: 文字数: OBC :rm7903
愛善世界社版: 八幡書店版: 修補版: 校定版: 普及版: 初版: ページ備考:
001 麗子(うららか)は人面(にんめん)竜身(りうしん)の湖中(こちう)の怪物(くわいぶつ)にさらはれ、002黒雲(くろくも)の中(なか)を暫(しば)し何処(いづこ)ともなく、003一瀉(いつしや)千(せん)里(り)的(てき)の速力(そくりよく)にて運(はこ)ばれつつ、004とある紫壁(しへき)蒼瓦(さうぐわ)の門前(もんぜん)におろされ、005ふと辺(あた)りを見(み)れば湖水(こすい)すれすれに浮(うか)べる竜神(たつがみ)の都(みやこ)の表門前(おもてもんぜん)なりける。
006 数多(あまた)の人面(にんめん)竜身(りうしん)の竜神族(たつがみぞく)は、007「ウオーウオー」と叫(さけ)びながら、008身体(からだ)に藻(も)の衣(ころも)を纒(まと)ひ、009顔面(がんめん)のみを出(だ)して幾百千(いくひやくせん)ともなく、010門(もん)の両側(りやうがは)に端坐(たんざ)し迎(むか)へ居(ゐ)たり。
011 竜神(たつがみ)の王(わう)は声(こゑ)もさはやかに歌(うた)ふ。
012『あはれあはれ
013百年(ももとせ)千年(ちとせ)相待(あひま)ちし
014国津(くにつ)御祖(みおや)の愛娘(まなむすめ)
015麗子姫(うららかひめ)を今(いま)此処(ここ)に
016迎(むか)へまつりぬ今日(けふ)よりは
017竜(たつ)の都(みやこ)の王(こきし)となりて
018われ等(ら)が一族(いちぞく)悉(ことごと)に
019人面(にんめん)竜身(りうしん)のこの姿(すがた)を
020人(ひと)の姿(すがた)に生(う)み直(なほ)し
021竜神族(たつがみやから)を悉(ことごと)く
022国津神(くにつかみ)等(ら)のみすがたに
023よみがへらせて天地(あめつち)の
024恵(めぐみ)を湖(うみ)の中(なか)までも
025照(て)らさせ給(たま)へ麗子(うららか)の姫(ひめ)よ
026ウオーウオー
027あなさやけおけ
028竜(たつ)の都(みやこ)の鉄門(かなど)は今(いま)や
029天(あめ)と地(つち)との一時(ひととき)に
030開(ひら)けし如(ごと)くさやさやに
031開(ひら)け初(そ)めけりあな尊(たふと)
032あなさやけおけ
033あな面白(おもしろ)の出(い)でましよ』
034と、035各自(おのもおのも)くさぐさの音楽(おんがく)を奏(かな)で、036歓迎(くわんげい)の意(い)を表(へう)し、037竜神族(たつがみぞく)は一斉(いつせい)に立(た)ち上(あが)り、038陸(くが)に湖(うみ)に出没(しゆつぼつ)して踊(をど)り狂(くる)ふその声(こゑ)、039天地(てんち)も崩(くづ)るるばかりに思(おも)はれける。
040 麗子(うららか)はあまりの変(かは)りたる光景(くわうけい)に、041稍(やや)暫(しば)し不審(ふしん)の念(ねん)晴(は)れやらず、042艶男(あでやか)の恋(こひ)しき兄(せ)の事(こと)は忘(わす)れられず、043父母(ふぼ)の安否(あんぴ)を気遣(きづか)ひながら黙然(もくねん)と俯(うつむ)いて居(ゐ)る。
044 竜神(たつがみ)の王(わう)は莞爾(くわんじ)として、045麗子(うららか)の手(て)をそつと握(にぎ)り、
046『いぶかしくおぼしめすらむ此(この)島(しま)は
047竜神族(たつがみやから)の棲(す)める都(みやこ)よ
048君(きみ)なくば竜神族(たつがみやから)はいつまでも
049このあさましき姿(すがた)保(たも)たむ
050頭(あたま)のみ人(ひと)と生(うま)れて身体(からたま)は
051このあさましき竜(たつ)の姿(すがた)よ』
052 ここに麗子(うららか)は最早(もはや)詮(せん)なしと決心(けつしん)の臍(ほぞ)をかため、053人面(にんめん)竜身(りうしん)のあはれなる此(この)族(やから)と嫁(とつ)ぎ、054人間(にんげん)の子孫(しそん)を生(う)み了(おほ)せむものと、055雄々(をを)しくも艶男(あでやか)に対(たい)する恋心(こひごころ)を断(た)ち切(き)らむとしたが、056どうやら心(こころ)の底(そこ)に一片(いつぺん)の名残(なごり)が残(のこ)つて居(ゐ)た。
057『思(おも)ひきや艶男(あでやか)の君(きみ)にあらずして
058竜(たつ)の都(みやこ)の君(きみ)なりしはや
059かくならば何(なに)を嘆(なげ)かむ今日(けふ)よりは
060竜(たつ)の都(みやこ)の君(きみ)に仕(つか)へむ
061垂乳根(たらちね)の父(ちち)と母(はは)とはさぞやさぞ
062わがなきあとを嘆(なげ)かせ給(たま)はむ
063わが思(おも)ふ心(こころ)の中(なか)の生命(いのち)なる
064君(きみ)もさぞかし嘆(なげ)かせ給(たま)はむ
065さりながら竜神族(たつがみやから)のもろもろを
066助(たす)くる神業(わざ)と思(おも)ひて慰(なぐさ)む
067水(みづ)の中(なか)にかかる都(みやこ)のある事(こと)を
068悟(さと)らざりしよ今(いま)の今(いま)まで
069夢(ゆめ)なれば早(はや)く醒(さ)めかしわれは今(いま)
070見(み)しらぬ国土(くに)に誘(いざな)はれ来(き)つ
071千万(ちよろづ)の竜神族(たつがみやから)に迎(むか)へられ
072夢路(ゆめぢ)を辿(たど)る心地(ここち)するかも
073竜神(たつがみ)の王(こきし)よもろもろ族(やから)たち
074われは今日(けふ)より国土(くに)の君(きみ)ぞや
075親(おや)を捨(す)て恋(こひ)を捨(す)てたるわれにして
076如何(いか)でひるまむ此(この)島国(しまぐに)に
077わが言葉(ことば)諾(うべな)ふ力(ちから)なかりせば
078われは黄泉(よみぢ)に旅(たび)だちなさむ
079賤(いや)しけれど国(くに)の御祖(みおや)の御子(みこ)なるぞ
080汝(なれ)竜神(たつがみ)を如何(いか)で恐(おそ)れむ』
081 竜神(たつがみ)の王(わう)は、082麗子(うららか)の直立(ちよくりつ)せる前(まへ)に跪(ひざまづ)きて、
083『有難(ありがた)しうららの君(きみ)の御言明(みことのり)
084幾代(いくよ)経(ふ)るとも違(たが)はざるべし
085あさましき姿(すがた)を持(も)てる竜神(たつがみ)の
086救(すく)ひの神(かみ)は天降(あも)りましけり
087百年(ももとせ)の願(ねがひ)叶(かな)ひてわれは今(いま)
088救(すく)ひの神(かみ)にあひにけるかも
089今(いま)までは湖(うみ)の悪魔(あくま)と国津(くにつ)神(かみ)に
090貶(さげ)すまれつつ禍(わざはひ)なしけり
091今日(けふ)よりは本津心(もとつこころ)に改(あらた)めて
092天地(てんち)の神業(みわざ)に仕(つか)へまつらむ
093伊吹山(いぶきやま)に続(つづ)く竜宮島(りうぐうしま)ケ根(ね)は
094われらが永久(とは)の住処(すみか)なるぞや
095汝(な)が君(きみ)は今日(けふ)より竜宮(りうぐう)の弟姫(おとひめ)と
096あらはれましてわれらを守(まも)らせ
097竜宮(りうぐう)の弟姫(おとひめ)これにある限(かぎ)り
098此(こ)の島ケ根(しまがね)は安(やす)けかるべし』
099 麗子(うららか)は歌(うた)ふ。
100『大空(おほぞら)は高(たか)く涯(はて)なし湖底(うなぞこ)は
101深(ふか)く広(ひろ)しも神(かみ)の御稜威(みいづ)に
102もろもろの魚族(うろくづ)残(のこ)らずわが徳(とく)に
103まつろひ来(きた)れ安(やす)く守(まも)らむ
104国津(くにつ)神(かみ)の御子(みこ)と生(うま)れて此(この)島(しま)の
105君(きみ)となりしは神(かみ)の心(こころ)か
106此(この)島(しま)に見(み)る月光(つきかげ)も水上山(みなかみやま)に
107見(み)るも等(ひと)しき光(ひかり)ならずや
108月(つき)も日(ひ)も隈(くま)なく照(て)らせ竜宮(りうぐう)の
109島根(しまね)の君(きみ)はここにありけり
110夜(よる)されば御空(みそら)に月(つき)は輝(かがや)きて
111此(こ)の島ケ根(しまがね)を安(やす)く照(て)らさむ
112朝(あさ)されば天津(あまつ)日光(ひかげ)は煌々(くわうくわう)と
113湖(うみ)の底(そこ)ひも明(あか)し給(たま)はれ
114月(つき)も冴(さ)えよ星(ほし)も瞬(またた)け湖底(うなぞこ)の
115真砂(まさご)も照(て)れよ魚族(うろくづ)も生(い)きよ
116みぐるしき竜神族(たつがみやから)の身体(からたま)を
117百年(ももとせ)の後(のち)に人(ひと)となさばや
118われは今(いま)竜神(たつがみ)の君(きみ)と嫁(とつ)ぎつつ
119全(まつた)き御子(みこ)を生(う)まむと思(おも)ふ
120此(この)島(しま)にわれ天降(あも)りてゆ木(き)も草(くさ)も
121俄(にはか)に光(ひかり)増(ま)しにけらしな』
122 かかる所(ところ)へ、123遥(はる)か向(むか)ふの方(はう)より竜神(たつがみ)たちは、124金(きん)、125銀(ぎん)、126瑪瑙(めなう)、127瑠璃(るり)、128硨磲(しやこ)、129珊瑚(さんご)、130水晶(すゐしやう)等(とう)にて飾(かざ)りたてたる神輿(みこし)を担(かつ)ぎ来(きた)り、131弟姫(おとひめ)の立(た)たせる前(まへ)にどつかとおろし平伏(へいふく)する。
132 竜神(たつがみ)の王(わう)は此(この)輿(こし)を指(ゆびさ)し弟姫(おとひめ)に向(むか)ひ、
133『いざ御(お)駕籠(かご)召(め)しませ百年(ももとせ)千年(ちとせ)経(へ)て
134つくりし輿(こし)よ君(きみ)のみために
135一度(ひとたび)も用(もち)ひし事(こと)のなき神輿(みこし)
136君(きみ)に捧(ささ)げむわれの真心(まごころ)
137百年(ももとせ)も千年(ちとせ)も心(こころ)用(もち)ひつつ
138所有(あらゆる)宝(たから)につくりし輿(こし)はや
139此(この)輿(こし)は君(きみ)ならずして地(ち)の上(うへ)に
140召(め)すべき神(かみ)はあらじと思(おも)ふ』
141 麗子(うららか)は意外(いぐわい)の意外(いぐわい)に、142驚異(きやうい)の眼(まなこ)をみはりながら、
143『思(おも)ひきやかかる島根(しまね)にかくの如(ごと)
144うるはしき宝(たから)の輿(こし)のありとは
145竜神(たつがみ)の心(こころ)をこめし輿(こし)なれば
146われもいなまじ乗(の)りてや進(すす)まむ』
147 竜神(たつがみ)の王(わう)は大(おほ)いに喜(よろこ)び歌(うた)ふ。
148『有難(ありがた)し弟姫神(おとひめがみ)の御言明(みことのり)
149聞(き)くは吾身(わがみ)の生命(いのち)なりけり
150生命(いのち)にもかへて作(つく)りし此(この)神輿(みこし)
151早(はや)く召(め)しませ弟姫(おとひめ)の神(かみ)
152百神(ももがみ)もさぞ喜(よろこ)ばむ百千年(ももちとせ)の
153心(こころ)づくしも今(いま)報(むく)はれて』
154 ここに麗子姫(うららかひめ)は、155夢(ゆめ)に夢見(ゆめみ)る心地(ここち)して、156神輿(みこし)の鉄門(かなど)を開(ひら)き、157さつと立(た)ち入(い)り、158直立(ちよくりつ)不動(ふどう)の姿勢(しせい)をとれども、159さりとて頭(かしら)の天井(てんじやう)につかふる憂(うれ)ひもなく、160最(もつと)も高(たか)く広(ひろ)き神輿(みこし)なりければ、161長柄(ながえ)の棒(ぼう)を担(かつ)ぐ竜神族(たつがみぞく)は、162幾百(いくひやく)人(にん)とも数(かぞ)へ切(き)れぬ多人数(たにんずう)なりける。
163 竜神(たつがみ)の王(わう)は神輿(みこし)の前(まへ)に立(た)ち、164幣帛(にぎて)を振(ふ)りながら先頭(せんとう)をなし、165遥(はる)か彼方(かなた)の御殿(ごてん)をさして進(すす)み行(ゆ)く。
166 竜神(たつがみ)等(たち)は、167「ウオーウオー」と一斉(いつせい)に声(こゑ)を揃(そろ)へ、168天地(てんち)を揺(ゆる)がさむばかりの勢(いきほひ)にて、169粛々(しゆくしゆく)と行列(ぎやうれつ)正(ただ)しく前進(ぜんしん)する。
170 行(ゆ)くこと約(やく)二十町(にじつちやう)ばかり、171ここに七宝(しつぽう)を以(もつ)て飾(かざ)られたる大楼門(だいろうもん)が巍然(ぎぜん)として建(た)つて居(ゐ)る。172白衣(びやくえ)をつけし竜神(たつがみ)たちは、173左右(さいう)に鉄門(かなど)をぱつと開(ひら)いた。174神輿(みこし)は粛々(しゆくしゆく)として門内(もんない)に潜(くぐ)り入(い)る。175迦陵(かりよう)頻伽(びんが)の声(こゑ)、176彼方(かなた)此方(こなた)の木々(きぎ)の梢(こずゑ)ゆ伝(つた)はり来(きた)り、177その荘厳(さうごん)さ言語(げんご)のつくすべきにあらず、178神輿(みこし)は大竜殿(だいりうでん)の玄関(げんくわん)に恭(うやうや)しくおろされた。
179 竜神(たつがみ)の王(わう)は歌(うた)ふ。
180『これこそはわが住(す)む館(たち)よとこたちよ
181いざ進(すす)みませ奥(おく)の殿(との)まで
182百年(ももとせ)の匠(たくみ)になりし大殿(おほとの)は
183汝(なれ)が出(い)でまし待(ま)ちて居(ゐ)たるも
184漸(やうや)くに建(た)ち上(あが)りたる大殿(おほとの)よ
185先(ま)づ汝(な)が命(みこと)住(す)みて治(をさ)めよ』
186 麗子(うららか)は神輿(みこし)の戸(と)を開(ひら)き、187清楚(せいそ)たる姿(すがた)にて、188悠々(いういう)清庭(すがには)に立(た)ち出(い)で、189竜神(たつがみ)の王(わう)のしりへについて奥殿(おくでん)深(ふか)く進(すす)み入(い)る。
190 これより麗子(うららか)は、191竜宮(りうぐう)の弟姫(おとひめ)と称(たた)へられ、192竜神(たつがみ)の王(わう)に大竜身彦(おほたつみひこ)の命(みこと)と名(な)を与(あた)へ、193此(この)島(しま)の司(つかさ)として輝(かがや)き渡(わた)る事(こと)となりける。
194麗子(うららか)は思(おも)はず知(し)らず竜神(たつがみ)に
195招(まね)かれ島(しま)の司(つかさ)となりける
196此(この)島(しま)に跡(あと)をたれつつ竜宮(りうぐう)の
197弟姫神(おとひめがみ)と仰(あふ)がれにける
198此(この)神(かみ)のいさをしなくば海中(わだなか)の
199魚族(うろくづ)永久(とは)に栄(さか)えざるべし。
200(昭和九・七・一六 旧六・五 於関東別院南風閣 白石恵子謹録)
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