霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 樹下(じゆか)(ゆめ)〔一九九三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第79巻 天祥地瑞 午の巻 篇:第2篇 竜宮風景 よみ(新仮名遣い):りゅうぐうふうけい
章:第12章 樹下の夢 よみ(新仮名遣い):じゅかのゆめ 通し章番号:1993
口述日:1934(昭和9)年07月18日(旧06月7日) 口述場所:関東別院南風閣 筆録者:内崎照代 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年10月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
艶男はつれづれを慰めるために神苑を立ち出て、庭伝いに森かげを逍遥しながら、乙女たちの恋の告白に悩む気持ちを歌っていた。
竜宮島にとどまって国土を開くと一度は誓ったが、竜神族の体の醜さに嫌悪を覚え、乙女たちの恋の告白に答えることもできずに辟易し、今はただ故郷へ帰りたい心が募り、心は沈んでいた。
そこへ、乙女の中でも最も激しい気性と思いを持った燕子花がそっと艶男を追ってきた。そして再び、猛烈な恋の告白の歌で艶男に迫った。燕子花の押しの強さに押しきられ、艶男はついに燕子花の思いを受け入れてしまった。
これより、燕子花は公然と艶男の寝殿に寝起きし、艶男にまめまめしく仕えることになった。
艶男は女の一念に押し切られて、人面竜神の乙女とちぎってしまったことを恥ずかしく思い、悩んでいた。そして、神々に、妻の体が人身となるよう祈り、言霊歌を七日七夜、絶え間なく宣り上げた。
すると、不思議なことに燕子花の体はたちまち人身となり、鱗は跡形もなく消えうせてしまった。この奇跡に艶男と燕子花は喜び、感謝の歌を歌った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm7912
愛善世界社版: 八幡書店版:第14輯 227頁 修補版: 校定版:238頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 艶男(あでやか)徒然(つれづれ)(なぐさ)めむと神苑(みその)()()で、002庭伝(にはづた)ひに百津(ゆつ)桂樹(かつらぎ)(しげ)れる(もり)かげを、003彼方(あなた)此方(こなた)逍遥(せうえう)しながら、004七乙女(ななをとめ)のかなしき(こゑ)などを(おも)()で、005ひそかに(うた)ふ。
006『なげけとや(かみ)()ふらむあひながら
007あはれぬ(こひ)(むね)はをどるも
008七乙女(ななおとめ)(ちから)かぎりに村肝(むらきも)
009(こころ)のたけをあかしけるかも
010わが(こころ)いづらにゆきしよ乙女子(をとめご)
011かなしき言葉(ことば)をよそに()きつつ
012いまとなり乙女(をとめ)(あか)真心(まごころ)
013(おも)ひてかなしくなりにけらしな
014桂樹(かつらぎ)(うれ)にさへづる小鳥(ことり)さへ
015おのもおのもに(こひ)をかたれり
016(むし)()(こころ)しづめて()くときは
017みな(かな)しさの(こゑ)なりにけり
018()(なか)(こひ)てふものは(たま)()
019生命(いのち)をぬすむ(おに)なりにけり
020()さつらさ七人(ななたり)乙女(をとめ)におもはれて
021わがかへすべき(すべ)さへもなし
022(すべ)もなき(こころ)いだきて桂樹(かつらぎ)
023(もり)にさまよふ(さび)しき(われ)なり
024とつおひつ思案(しあん)にくるる(ゆふ)まぐれ
025(わら)ふが(ごと)(ふくろふ)(こゑ)
026島根(しまね)()(かぜ)(ひびき)もかなしげに
027わが(みみ)にひびくと(おも)へば(さび)
028(かく)(ごと)(あさ)(ゆふ)なをなやみつつ
029(たの)しき(われ)(なん)(こころ)ぞも
030(われ)ながらわが心根(こころね)をときかねて
031(こひ)山路(やまぢ)をゆきつもどりつ
032(ひと)なくば(こころ)あくまで()かむかと
033(おも)ひしことも幾度(いくど)なりしか
034乙女(をとめ)()れば()ふしかなしも神苑(みその)()れば
035(すが)しきかもよ竜神(たつがみ)(しま)
036只一人(ただひとり)繁樹(しげき)(もり)をさすらひつ
037乙女(をとめ)()ふしく(そで)ぬらすなり
038大竜身彦(おほたつみひこ)(みこと)御恵(みめぐ)みに
039(われ)寝殿(やすど)一人(ひとり)()ぬるも
040真夜中(まよなか)(ゆめ)にあらはれ七乙女(ななをとめ)
041いやつぎつぎにかなしきこと()
042一度(ひとたび)水上山(みなかみやま)にかへらむと
043(おも)ふも(せん)なし今日(けふ)のわれには
044麗子(うららか)(こきし)となりて(われ)一人(ひとり)
045つれなき夜半(よは)をかこつのみなる
046七乙女(ななをとめ)(うるは)しけれど麗子(うららか)
047(はな)姿(すがた)にしかじとおもふ
048(ひと)()姿(すがた)ならねばこの(しま)
049()ぐし乙女(をとめ)もためらはれける
050国津(くにつ)(かみ)御子(みこ)(うま)れて竜神(たつがみ)
051乙女(をとめ)にあふとおもへば口惜(くや)しき
052(うるは)しき乙女(をとめ)ながらもどことなく
053(いそ)(かを)りのあるはさびしき
054()(はな)(なが)めてここに()ぎむかと
055(おも)へど乙女(をとめ)はうべなはぬらし
056いぶかしやああいぶかしやこの(しま)
057()むは(ひと)()(りう)のからだよ
058(うろこ)一面(いちめん)(はかま)(ごと)()えにつつ
059(かた)より(うへ)(ひと)姿(すがた)よ。
060わづかに左右(さいう)()()りて
061(なが)(はかま)()けながら
062右往(うわう)左往(さわう)()(かよ)
063このありさまを()るにつけ
064両手(りやうて)両足(りやうあし)()(われ)
065いやおそろしくいやらしく
066もの()ふさへも不思議(ふしぎ)なれ
067人間(にんげん)世界(せかい)にかけはなれ
068(たつ)島根(しまね)永久(とことは)
069()()(きた)りし乙女子(をとめご)
070(きよ)きやさしき瑞姿(みづすがた)
071近寄(ちかよ)()れば()(かを)
072(うろこ)のかをり(わが)(はな)
073さやりていとどもの()けれ
074(われ)竜宮(りうぐう)島ケ根(しまがね)
075千代(ちよ)八千代(やちよ)(なが)らへて
076国土(くに)をひらくと(ちか)ひてし
077この(こと)()のかなしさよ
078(いま)となりてはただ(われ)
079故郷(くに)にかへらむ(こころ)のみ
080(あさ)(ゆふ)なにむれおきつ
081うら(かな)しくもなりにけり
082ああ如何(いかん)せむ千秋(せんしう)
083うらみもはるるときや何時(いつ)
084(いづ)御霊(みたま)瑞御霊(みづみたま)
085わが()ぎごとを(きこ)()
086一日(ひとひ)(はや)片時(かたとき)
087いとすむやけく(すく)ひませ
088(なみ)()()くこの(しま)
089(うづ)乙女(をとめ)(かこ)まれて
090身動(みうご)きならぬ(くる)しさを
091あはれみ(たま)厳御霊(いづみたま)
092(みづ)御霊(みたま)(おん)(まへ)
093生命(いのち)(ささ)げて()(まつ)る。
094()てしなき(なや)みにしづむわが(たま)
095(すく)はせ(たま)(もと)御国(みくに)
096厳御霊(いづみたま)(みづ)御霊(みたま)御心(みこころ)
097(まか)せて(われ)はよき()()つべし
098(うるは)しき乙女(をとめ)はあれど身体(からたま)
099みにくさ(くさ)(はな)もちならずも
100()きしめて(はだ)にふれなばおそろしく
101わが(たましひ)(をのの)くならむ
102(うるは)しき(はな)なりながら(みち)()
103(とげ)もつ(あざみ)乙女(をとめ)なりける
104如何(いか)にしてこれの島根(しまね)(のが)れむと
105(あさ)(ゆふ)なになやむ(くる)しさ
106われなくばこの島ケ根(しまがね)にただ一人(ひとり)
107麗子姫(うららかひめ)はなげくなるらむ
108麗子(うららか)()()おもひてただ(われ)
109この島ケ根(しまがね)(とど)まりてをるも』
110 かかるところへ、111七人(ななたり)乙女(をとめ)(なか)にも(もつと)射向(いむか)(かみ)(きこ)えたる燕子花(かきつばた)は、112(しの)(あし)にあらはれ(きた)り、113百津(ゆつ)桂樹(かつらぎ)()(ささ)へながら、
114艶男(あでやか)(きみ)行方(ゆくへ)をもとめつつ
115(かつら)(もり)(われ)()つるも
116何故(なにゆゑ)(きみ)樹蔭(こかげ)にさまよふか
117(こころ)もとなく(われ)かなしもよ
118わが()りし(あか)言葉(ことば)(いか)らして
119()(たま)ひしか(なさけ)なの(きみ)
120(たま)()生命(いのち)をかけし(きみ)なれば
121(くさ)()けても(さが)さでおくべき
122この(もり)のすみずみまでも(たづ)ねつつ
123(やうや)くここに(きみ)()ひぬる
124わが(むね)(こひ)()えつつ大空(おほぞら)
125月日(つきひ)もくらくなりにけらしな
126(くも)(ひく)小暗(をぐら)(つつ)むこの(もり)
127(きみ)()(わた)るわが(こころ)かも
128よしやよし(きみ)水底(みそこ)(くぐ)るとも
129生命(いのち)にかけて()ひしき()かむ
130()くならば最早(もはや)(せん)なしわが(おも)
131はらして一夜(いちや)をやすませ(たま)へ』
132 艶男(あでやか)はハツと(おも)つたが、133(なに)くはぬ(かほ)にて、
134『いとこやの(きみ)にますとは()らざりき
135この桂樹(かつらぎ)(もり)(した)かげ
136よくもまた(たづ)()しよなわが()ふる
137(きみ)をしみればよみがへるかも
138()てしなき(おも)(いだ)きて()らず()らず
139(われ)樹蔭(こかげ)にさまよひてゐし』
140 燕子花(かきつばた)(うた)ふ。
141空言(そらごと)()らす(きみ)よと(おも)へども
142(おん)(おも)()れば(うれ)しかりけり
143(たつ)(しま)伊吹(いぶき)(やま)にこもるとも
144いねむと(おも)ふわれならなくに
145和田(わだ)(はら)うたかたの(うみ)()(ふね)
146たよりとするは(かぜ)(ちから)
147(きみ)()ひて桂樹(かつらぎ)のかげに立寄(たちよ)れば
148尾花(をばな)(すゑ)もわれを(まね)かず
149()()さへ()()なりせば艶男(あでやか)
150(きみ)(おそ)れず(わが)(こひ)(ゆる)せよ
151小波(さざなみ)(しづ)かに()つや鏡湖(かがみこ)
152そこの(こころ)(きみ)()まずや
153よそながら(きみ)のみあとを(した)ひつつ
154もゆる(こころ)のままにわれ()
155天地(あめつち)(かみ)(いの)りつ(わが)(こひ)
156(いろ)()せざれと(きみ)にまみえし
157(おも)ふこと()ぐるは(まさ)しく天地(あめつち)
158(かみ)(こころ)(こひ)にぞありける
159幾夜(いくよ)われ滝津瀬(たきつせ)(おと)()きながら
160(きみ)如何(いか)にと(ねむ)らざりしよ
161(きみ)をおきて(あだ)(ごころ)をわれ()てば
162(かがみ)(うみ)のそこひ(かわ)かむ
163いたづきの()とはいつはり身体(からたま)
164御魂(みたま)(かがみ)(ごと)(ひか)れる
165(くも)りなき身体(からたま)もちていたづくと
166()らす言葉(ことば)(うら)めしきかな
167生命(いのち)まで(きみ)(ささ)げし乙女子(をとめご)
168(あは)れみ(たま)(こころ)まさずや
169(きみ)はいま(とほ)(なみ)()ふみながら
170御国(みくに)にかへらす(こころ)ならずや
171よしやよしこの島ケ根(しまがね)をさかるとも
172(かなら)(われ)(ともな)(たま)はれ
173竜神(たつがみ)のいやしき身体(からたま)もちながら
174(きみ)()ふるははづかしきかも
175(はづ)かしき(おも)ひを()てて()ふしさと
176かなしさ(ゆゑ)(きみ)につき()
177百津桂(ゆつかつら)(しげ)れる(もり)人目(ひとめ)なし
178いやいねませよ(くさ)(しとね)
179草枕(くさまくら)(たび)()たせる(きみ)ならば
180(つゆ)(まくら)もいとひ(たま)はじ
181この(もり)()()(まくら)になよ(ぐさ)
182(しとね)となして天国(みくに)にあそばむ』
183 艶男(あでやか)は、184燕子花(かきつばた)猛烈(まうれつ)なる恋愛心(れんあいしん)と、185()しの(つよ)きその振舞(ふるま)ひに征服(せいふく)され、186(つひ)草枕(くさまくら)(ゆめ)(むす)ぶこととはなりぬ。187これより燕子花(かきつばた)七乙女(ななをとめ)()()ぢず、188公然(こうぜん)艶男(あでやか)寝殿(やすど)朝夕(あさゆふ)起臥(きぐわ)し、189(をつと)歓心(くわんしん)()ふべく、190(こころ)(かぎ)()(かぎ)り、191まめまめしく(つか)へける。192艶男(あでやか)朝庭(あさには)()()で、193(つるぎ)(いけ)(おも)(すす)ぎながら、194昨日(きのふ)のことなど(おも)()で、195述懐(じゆつくわい)(うた)ふ。
196『ああ(はづ)かしや(なさけ)なや
197千引(ちびき)(いは)(かた)まりし
198大和男(やまとを)()(たましひ)
199うち(くだ)かれてなよ(ぐさ)
200()ふるがままに(まか)せたり
201(をんな)(つよ)(たましひ)
202(いはほ)()ぬく(くは)(ゆみ)
203弥猛心(やたけごころ)のとどくまで
204(つらぬ)(とほ)燕子花(かきつばた)
205(ひめ)(みこと)射向(いむか)ひに
206(われ)はもろくも(やぶ)れけり
207天地(てんち)(かみ)(ゆる)しませ
208竜神(たつがみ)乙女(をとめ)()ひながら
209(けもの)姿(すがた)にさまよへる
210(しま)乙女(をとめ)(とつ)ぎたる
211わが()(つみ)ぞおそろしき
212ああ(せん)もなし(せん)もなし
213()くまで(よわ)(こころ)かと
214(われ)とわが()をせめれども
215最早(もはや)(やぶ)れの(ゆみ)(まと)
216(つらぬ)(すべ)(なみ)(うへ)
217()きつ(しづ)みつ(ひと)()
218ここに()つるかあさましや
219これを(おも)へば麗子(うららか)
220(ひめ)もさぞかし(くる)しからむ
221(くに)(こきし)()ひながら
222(なか)(けもの)(つま)をもつ
223如何(いか)()()(すご)すらむ
224(われ)(かみ)()(ひと)()
225(けもの)(ちか)乙女子(をとめご)
226(まくら)(なら)ぶる(はづ)かしさ
227(あは)れみ(たま)厳御霊(いづみたま)
228(みづ)御霊(みたま)(おん)(まへ)
229(こころ)()ぢらひ()(まつ)
230ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
231わが言霊(ことたま)(ちから)あれ
232わが言霊(ことたま)(ひかり)あれ。
233わが()らむ生言霊(いくことたま)(さち)はひに
234乙女(をとめ)(また)(ひと)とせよかし
235わが(はだ)()へる乙女(をとめ)優姿(やさすがた)
236(かみ)()となれ(ひと)()となれ
237(むらさき)(にほ)へる(つま)燕子花(かきつばた)
238まことの(ひと)()れさせ(たま)
239(ひと)(ふた)()()(いつ)(むゆ)(なな)()(ここの)(たり)
240百千万(ももちよろづ)(かみ)(あは)れみ(たま)へ、(すく)はせ(たま)へ』
241 ()七日(なぬか)七夜(ななよ)間断(かんだん)なく艶男(あでやか)()れる言霊(ことたま)に、242不思議(ふしぎ)燕子花(かきつばた)全体(ぜんたい)(たちま)人身(じんしん)(へん)じ、243荒々(あらあら)しき太刀膚(たちはだ)(かげ)もなく、244全身(ぜんしん)(もち)(ごと)(はだ)(こま)やかに(まつた)人身(じんしん)(うま)(かは)りける。
245 艶男(あでやか)(うた)ふ。
246『ありがたし生言霊(いくことたま)(さち)はひに
247乙女(をとめ)(たま)(はだへ)となりぬる
248栲綱(たくづぬ)(しろ)きたたむき淡雪(あはゆき)
249(わか)やぐ(はだへ)となりにけるかも』
250 燕子花(かきつばた)(うた)ふ。
251『わが(きみ)(めぐ)みの(つゆ)(きよ)められ
252わが太刀膚(たちはだ)()せにけらしな
253()くならば最早(もはや)()づべきこともなし
254(きみ)(つか)へて御子(みこ)()まむかも
255ありがたし(けが)れし(われ)身体(からたま)
256(かみ)(めぐ)みに(ひと)となりぬる』
257昭和九・七・一八 旧六・七 於関東別院南風閣 内崎照代謹録)
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