霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二三章 二名(ふたな)(しま)〔二〇〇四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第79巻 天祥地瑞 午の巻 篇:第3篇 伊吹の山颪 よみ(新仮名遣い):いぶきのやまおろし
章:第23章 二名の島 よみ(新仮名遣い):ふたなのしま 通し章番号:2004
口述日:1934(昭和9)年07月20日(旧06月9日) 口述場所:関東別院南風閣 筆録者:白石恵子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年10月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
水上山方面の地では、数日の間天災が打ち続き、暴風雨、地鳴り震動が連続的に起こり、大井ケ堰は濁水が流れ落ちた。
大井の淵には四頭の竜神が互いに眼を怒らし、一人の艶男を奪おうと絶え間なく格闘を続け、竜体から流れる血汐は濁水に混じって朱のごとくであった。
水かさは日に日に増し、低地に住んでいた国津神たちは住家を流され、生命を奪われるものも多くあった。山神彦、川神姫は岩ケ根、瀬音、水音とともに、幼い乳飲み子をかかえ、頂上の神殿に参篭して天変地妖がおさまることを祈願したが、惨状はますます広がるばかりであった。
そこへ、黒雲を分けて喨喨たる音楽とともに、四柱の侍神を従えて、水上山の頂へ御樋代神・朝霧比女の神が降臨した。四柱の侍神は、大御照(おおみてらし)の神、朝空男の神、国生男の神、子心比女の神である。
朝霧比女の神が厳然として宣言するには、この惨状をもたらしたのは、天津神が生んで治めるべき国を、我が物顔に振舞った罪である、と。竜ケ島根はまだ完全に備わっていない国であり、竜神たちは人の顔を持っているが、身体は獣である。神の子の御魂をもって、獣の姫を娶るのは罪であり、艶男は神の掟にそむいた報いで、命を落とした。今日からは、いずれの神も心を清めて改めるべし、と。
そして、朝霧比女の神が天の数歌の言霊歌を歌うと、雷鳴、暴風雨、地震はぱったりと止まって、安静の状態にたちまち戻った。
山神彦、川神姫は、濁流が次第に減じていくのを眺めながら、神の治めるべき国を我が物としてきた罪を悟り、悔い改めを誓った。この言葉の誠を知った朝霧比女の神は、二人を許し、国の司として水上山に止まることを許した。
山神彦をはじめ、重臣の岩ケ根、水音、瀬音はそれぞれ、これまでの罪を悔い改める述懐の歌を歌った。
朝霧比女の神の侍神、大御照の神は、今は完全な神ではない竜の島根の乙女たちも、御樋代神が島に渡れば、島は生きる国となり、伊吹山に集まる曲津見たちも、花となり匂うであろう、と歌った。
また、朝空男の神は、山神彦、岩ケ根、瀬音、水音に、力をあわせ、御子が成人したら御子をこの地の司として辺りを治めさせるように託宣した。
国生男の神は、葭原の国に降って、都を造る業に携わるであろう、と歌った。
朝霧比女の神は、年老いた山神彦・川神姫は政から引退して、岩ケ根に任せること、岩ケ根は御子が成人したら、国の政治を御子に返すこと、そして御子は竜神から生まれたので、国津神たちには育てられず、子心比女の神に預けて育てさせるよう、宣言した。
子心比女の神は御子を抱えると、水上山の一同に御子の生い立ちを約束し、御樋代神とともに高光山に居を定めることを宣言した。そして、御樋代神一行は、悠然と雲を起こして、高光山方面を指して去っていった。
高光山の東に、御樋代神の御舎は建てられ、土阿(とあ)の宮殿を造って土阿の国と名づけた。そして、高光山より西を、予讃(よさ)の国と名づけた。葭原の国を総称して、貴の二名島(うづのふたなじま)と言うようになった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm7923
愛善世界社版: 八幡書店版:第14輯 277頁 修補版: 校定版:426頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 水上山(みなかみやま)方面(はうめん)()は、002数日(すうじつ)(あひだ)天災(てんさい)地妖(ちえう)()(つづ)き、003雷鳴(らいめい)(とどろ)電光(でんくわう)(ひら)めき、004暴風雨(ばうふうう)しきりに(いた)り、005驟雨(しうふ)沛然(はいぜん)として(たき)(ごと)く、006地鳴(ぢなり)震動(しんどう)連続(れんぞく)(てき)(おこ)り、007大井(おほゐ)(せき)濁水(だくすゐ)滔々(たうたう)(なが)()ち、008囂々(がうがう)たる水勢(すゐせい)雷鳴(らいめい)()して、009(みみ)()るるばかりの大騒動(おほさうだう)とはなりぬ。
010 大井(おほゐ)(ふち)には四頭(しとう)竜神(りうじん)(たがひ)(まなこ)(いか)らし、011一人(ひとり)艶男(あでやか)(うば)はむと、012間断(かんだん)なく格闘(かくとう)(つづ)け、013竜体(りうたい)より(なが)るる血汐(ちしほ)は、014濁水(だくすい)()して(しゆ)(ごと)く、015さすがに(ひろ)玉耶(たまや)(うみ)(くれなゐ)(うみ)(かは)りけり。016水量(みづかさ)()()()さり()きて、017低地(ていち)()める国津神(くにつかみ)(たち)住家(すみか)(なが)され、018生命(いのち)(うば)はるる(もの)(おほ)附近(ふきん)(やま)にのぼりて(なん)()けつつありけるが、019暴風雨(ばうふうう)地鳴(ぢなり)との(ため)()(おと)され、020水中(すいちう)(ぼつ)して生命(いのち)()するもの、021その(かず)()らざりき。
022 山神彦(やまがみひこ)023川神姫(かはかみひめ)岩ケ根(いはがね)024瀬音(せおと)025水音(みなおと)(とも)に、026(をさな)乳児(ちのみご)(かか)へ、027頂上(ちやうじやう)神殿(しんでん)参籠(さんろう)して、028(いち)()(はや)天変(てんぺん)地妖(ちえう)のをさまらむ(こと)祈願(きぐわん)すれども、029如何(いかん)ともせむ(すべ)もなく、030惨状(さんじやう)益々(ますます)その()(くは)ふるのみ。
031 かかるところへ大空(おほぞら)黒雲(くろくも)()け、032四柱(よはしら)侍神(じしん)(したが)へ、033嚠喨(りうりやう)たる音楽(おんがく)(とも)に、034水上山(みなかみやま)(いただき)さして(くだ)(たま)ひし(かみ)は、035御樋代(みひしろ)(がみ)朝霧(あさぎり)比女(ひめ)(かみ)()しましける。036侍神(じしん)大御照(おほみてらし)(かみ)037朝空男(あさぞらを)(かみ)038国生男(くにうみを)(かみ)039子心(こごころ)比女(ひめ)(かみ)()しましける。
040 朝霧(あさぎり)比女(ひめ)(かみ)は、041天変(てんぺん)地妖(ちえう)をものともせず、042儼然(げんぜん)として()らせ(たま)ふ。
043『われこそは()大神(おほかみ)神言(みこと)もて
044御樋代(みひしろ)(がみ)(くだ)()つるも
045葭原(よしはら)国土(くに)(けもの)(けが)されて
046(あめ)(つち)との(いか)りを(まね)けり
047竜ケ島(たつがしま)乙女(をとめ)(けが)せし(つみ)によりて
048国魂神(くにたまがみ)(いか)らしにけり
049われは(いま)葭原(よしはら)国土(くに)(しら)さむと
050(くだ)りて()れば(あさ)ましき(さま)
051天津(あまつ)(かみ)()ませ(たま)ひし()(くに)
052わが物顔(ものがほ)振舞(ふるま)ひし(つみ)なり
053山神彦(やまがみひこ)川神姫(かはかみひめ)今日(けふ)()
054(なげ)きにあふも(かみ)(こころ)
055今日(けふ)よりはたかぶる(こころ)()りすてて
056(ただ)しく(きよ)(かみ)(つか)へよ
057(この)(くに)(なれ)(をさ)むる(くに)ならず
058御樋代(みひしろ)(がみ)(しら)(くに)なり
059玉耶湖(たまやこ)(なか)(うか)べる竜ケ島(たつがしま)
060(いま)(まつた)(そな)はらぬ(くに)
061(ひと)(おも)なしつる女神(めがみ)身体(からたま)
062その大方(おほかた)(けもの)なるぞや
063(かみ)()御魂(みたま)()ちて(けもの)なす
064(ひめ)(めと)るは(つみ)とこそ()
065艶男(あでやか)(かみ)(おきて)(そむ)きたる
066(むく)いによりて()せにけるかも
067今日(けふ)よりはいづれの(かみ)村肝(むらきも)
068(こころ)(きよ)めて(あらた)めよかし。
069(ひと)(ふた)()()(いつ)(むゆ)(なな)()(ここの)(たり)
070(もも)()(よろづ)八千万(やちよろづ)
071(かぜ)(はや)()(あめ)()るな
072(くも)退(しりぞ)地震振(なゐふ)()まれ
073これの神国(みくに)()(かみ)
074()さし(たま)へる御樋代(みひしろ)(がみ)
075永久(とは)(しづ)まる清所(すがど)なり
076(あめ)はれ(くに)はれ(くも)はれよ
077(よし)島根(しまね)今日(けふ)よりは
078黄金(こがね)(はな)()()(くに)
079()(なほ)しつつ(ひら)くべし
080ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
081わが言霊(ことたま)(ちから)あれ
082生言霊(いくことたま)(ひかり)あれ』
083()らせ(たま)ふや、084さしも(はげ)しかりし雷鳴(らいめい)(しづ)まり、085電光(でんくわう)(かげ)(ぼつ)し、086暴風雨(ぼうふうう)跡形(あとかた)もなく()()(くも)()え、087地震(ないふる)はひたと()まりて、088安静(あんせい)(むかし)にかへりしこそ(かしこ)けれ。
089 山神彦(やまがみひこ)濁流(だくりう)次第(しだい)々々(しだい)(げん)()くを(なが)めながら、090(おそ)(かしこ)(うた)ふ。
091御樋代(みひしろ)(かみ)(ひかり)(かしこ)けれ
092(もも)のなやみも()()せぬれば
093大御祖(おほみおや)(かみ)のみあとを()ぎて()
094われは御国(みくに)(あだ)なりしかも
095(をさ)むべき(かみ)(をさ)むる(くに)なりしと
096今更(いまさら)ながら(さと)らひにけり
097御祖(みおや)より(かさ)(きた)りし罪科(つみとが)
098(ゆる)させ(たま)御樋代(みひしろ)(かみ)
099わが(せがれ)(みづ)藻屑(もくづ)()()てしも
100御祖(みおや)(つみ)のめぐり()つるか
101(かしこ)しや(うづ)言霊(ことたま)(さち)はひて
102(くに)のなやみは()()せにけり
103今日(けふ)よりは(こころ)(きよ)めて御樋代(みひしろ)
104(かみ)(をしへ)にまつろひ(まつ)らむ』
105 川神姫(かはかみひめ)(おそ)(おそ)御前(みまへ)にひれ()して、106述懐(じゆつくわい)(うた)ふ。
107『はしけやし(いづ)(おん)(かみ)天降(あも)りまして
108われらが(なや)みを(すく)はせ(たま)ひぬ
109()らず()らず(つみ)(をか)せしわれなりし
110(ゆる)させ(たま)天降(あも)ります(かみ)
111(おん)(かほ)(あふ)ぐもまぶしくなりにけり
112(くも)りきりたるわがまなかひは
113まなかひの(くら)むばかりに(おも)はるる
114(かみ)のよそほひ(たふと)きろかも
115(いま)となりてわが()生命(いのち)()しむまじ
116ただ惟神(かむながら)(かみ)(まか)せむ
117よしやよしわれらの生命(いのち)()さるとも
118(つみ)()ゆれば()ゆる(こと)なし
119(むかし)より(この)(をか)()(しづ)まりて
120(くに)(まも)りしことのはづかし
121()(かみ)御許(みゆる)しなくばよき(こと)
122(つみ)なりといふ(こと)(さと)りぬ』
123 御樋代(みひしろ)(がみ)朝霧(あさぎり)比女(ひめ)(かみ)はうなづきながら、
124()言葉(ことば)()みてありけり(うべ)(うべ)
125(くに)(つかさ)とありし()なれば
126()(つみ)をここに(あらた)(ゆる)すべし
127水上(みなかみ)(やま)永久(とは)(しづ)まれ』
128 山神彦(やまがみひこ)(なみだ)(そで)(ぬぐ)ひながら、
129再生(さいせい)(おも)ひするかな御樋代(みひしろ)(がみ)
130なさけの言葉(ことば)かたじけなみつつ
131天地(あめつち)(かみ)(いか)りて国原(くにはら)
132修羅(しゆら)(ちまた)となりにけりしな
133常闇(とこやみ)()(てら)しつつ天降(あも)りましし
134(かみ)御前(みまへ)(をのの)くわれなり』
135 岩ケ根(いはがね)(おそ)(おそ)(うた)ふ。
136二柱(ふたはしら)(かみ)(つか)へて今日(けふ)までも
137(やす)()れにしわが()(はづ)かし
138御樋代(みひしろ)(かみ)御前(みまへ)()(をが)
139わが身体(からたま)はいすくみにける
140()(かみ)御許(みゆる)しなくて(つか)へたる
141われは(かな)しも(つみ)(かさ)ねて
142目路(めぢ)(かぎ)国津(くにつ)(かみ)らの()(いへ)
143跡形(あとかた)もなく()せにけるかも
144かくの(ごと)なげきの(たね)(つちか)ひし
145われは(ゐや)なき罪人(つみびと)なりける
146わが生命(いのち)よしや()すとも(いと)はまじ
147なやめる(かみ)(ゆる)させ(たま)
148(この)(たち)(ふる)(つか)へて(とし)()いぬ
149(しる)きいさをのあともなくして』
150 水音(みなおと)(うた)ふ。
151久方(ひさかた)雲井(くもゐ)()けて天降(あも)りませし
152(かみ)御前(みまへ)にわれ(をのの)きぬ
153常闇(とこやみ)(しこ)国原(くにはら)伊照(いて)らして
154天降(あも)(たま)ひし(たふと)(かみ)はも
155滝津瀬(たきつせ)水音(みなおと)とみにしづまりて
156(みなぎ)(みづ)(ひく)みたるかも
157つぎつぎに(ただよ)(みづ)(なが)()きて
158狭霧(さぎり)()ちたつこれの国原(くにはら)
159如何(いかが)して(うづ)(めぐみ)(むく)いむと
160(おも)ふはわれらが真心(まごころ)なりけり』
161 瀬音(せおと)(かしこ)(うた)ふ。
162常闇(とこやみ)(なげ)きに()きしわが(たま)
163(かみ)(ひかり)によみがへるける
164幾千代(いくちよ)(すゑ)(すゑ)まで(わす)れまじ
165(かみ)(めぐみ)のいやちこなるを
166あはれあはれ水上山(みなかみやま)聖場(せいぢやう)
167(よみがへ)りつつ朝日(あさひ)()らへり
168(くさ)()(えら)ぎよろこぶ()となりぬ
169(ひかり)(かみ)天降(あも)りましてゆ』
170 大御照(おほみてらし)(かみ)御歌(みうた)()ませ(たま)ふ。
171天津(あまつ)()大御照(おほみて)らしの(かみ)なれば
172御樋代(みひしろ)(がみ)()ひて(くだ)れる
173今日(けふ)よりは御空(みそら)雲霧(くもきり)()(はら)
174葭原(よしはら)国土(くに)()かさむと(おも)
175光闇(ひかりやみ)()きかふ()なりわれあらば
176(ゆふ)さりくるも国原(くにはら)(あか)るし
177竜神(たつがみ)(しま)乙女(をとめ)(こころ)せよ
178(かれ)()(まつた)(かみ)にあらねば
179御樋代(みひしろ)(かみ)(わた)らせ(たま)ひなば
180(たつ)島根(しまね)()(くに)とならむ
181伊吹山(いぶきやま)尾根(をね)(あつま)曲津見(まがつみ)
182百花(ももばな)千花(ちばな)()りて(にほ)へるよ』
183 岩ケ根(いはがね)(かしら)()にすりつけながら、
184『ありがたし天津(あまつ)御神(みかみ)御宣示(みことのり)
185(こころ)(きざ)みて(わす)れざらまし
186(なげ)かひの()(おく)りつつよろこびの
187今日(けふ)はよき()にあひにけらしな』
188 朝空男(あさぞらを)(かみ)御歌(みうた)()ませ(たま)ふ。
189(なや)ましき水上(みなかみ)(やま)のありさまを
190われあはれみて(くだ)()つるも
191御樋代(みひしろ)(かみ)のみあとに(したが)ひて
192天降(あも)りしわれは朝空男(あさぞらを)(かみ)
193朝津日(あさつひ)御空(みそら)(のぼ)夕月(ゆふづき)
194()()にかかりて国土(くに)(てら)しまさむ
195()(かみ)(うづ)()(くに)(うま)(くに)
196(をさ)めて永久(とは)(いしずゑ)(かた)めむ
197山神彦(やまがみひこ)岩ケ根(いはがね)瀬音(せおと)水音(みなおと)
198(ちから)(あは)せて御子(みこ)(そだ)てよ
199()()ちし御子(みこ)(この)()(つかさ)とし
200(ちか)(あた)りを(やす)(をさ)めよ』
201 山神彦(やまがみひこ)(うれ)しさのあまり、202落涙(らくるい)しながら()()して(うた)ふ。
203(つみ)(ふか)きわれらが(ひこ)をかくまでも
204(ゆぐ)ませ(たま)ふと(おも)へば(かな)しき
205真心(まごころ)のあらむ(かぎ)りを(ささ)げつつ
206御樋代(みひしろ)(がみ)永久(とは)(つか)へむ』
207 川神姫(かはかみひめ)(おな)じく()して(うた)ふ。
208常闇(とこやみ)()()れにけり(くま)もなく
209御樋代(みひしろ)(がみ)(ひかり)によりて
210わが(つま)(とも)にかしこみ(この)(くに)
211(ちか)(あた)りを(つつし)(をさ)めむ』
212 国生男(くにうみを)(かみ)御歌(みうた)()ませ(たま)ふ。
213葭原(よしはら)国土(くに)(はて)なく(ひろ)ければ
214われは(ちから)(かぎ)りを(つく)さむ
215はてしなき(この)国原(くにはら)天降(あも)りまして
216(みやこ)つくると(おも)へばいさまし』
217 御樋代(みひしろ)(かみ)(ふたた)(うた)はせ(たま)ふ。
218朝霧(あさぎり)四方(よも)()ちたつ夕霞(ゆふかすみ)
219棚引(たなび)()むるこれの国原(くにはら)
220水上山(みなかみやま)これの清所(すがど)(とし)()いし
221二人(ふたり)(やす)ませ岩ケ根(いはがね)にあづけむ
222(この)御子(みこ)()()ちまさば岩ケ根(いはがね)
223(くに)政治(まつり)御子(みこ)(かへ)せよ
224(この)御子(みこ)竜神(たつがみ)(はら)()りませば
225国津(くにつ)(かみ)らの()には(そだ)たじ
226子心(こごころ)比女(ひめ)(かみ)嬰児(みづこ)(まも)らせて
227(やす)雄々(をを)ししく(そだ)てむと(おも)ふ』
228 岩ケ根(いはがね)()()して(うた)ふ。
229『ありがたし()います(きみ)のあとうけて
230水上(みなかみ)(やま)(つか)(まつ)らむ
231貴御子(うづみこ)()()ちまさば(われ)(ただ)
232これの御国(みくに)(かへ)(まつ)らむ
233(うづ)()()()(たの)みまゐらする
234御樋代(みひしろ)(かみ)子心(こごころ)比女(ひめ)(かみ)に』
235 子心(こごころ)比女(ひめ)(かみ)御歌(みうた)()ませ(たま)ふ。
236御樋代(みひしろ)(かみ)(おほ)せをかしこみて
237(あさ)(ゆふ)なを(めぐ)(そだ)てむ』
238 ()(うた)(たま)ひて、239竜彦(たつひこ)御子(みこ)御肌(みはだ)(かか)へさせ(たま)ひ、
240(うづ)()(めぐ)しき御子(みこ)(なれ)こそは
241(くに)(はしら)よすくすく(そだ)てよ。
242(かみ)(めぐみ)はいや(ひろ)
243(なれ)生命(いのち)(なが)かれと
244朝夕(あさゆふ)(いの)りて(はぐく)まむ
245山神彦(やまがみひこ)川神姫(かはかみひめ)
246(こころ)(やす)かれ岩ケ根(いはがね)
247すくすく(この)()()()ちを
248(たの)しみ()てよ惟神(かむながら)
249われはこれより高光(たかみつ)
250御山(みやま)()して御樋代(みひしろ)
251(かみ)(したが)()()かむ
252ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
253恩頼(みたまのふゆ)永久(とは)にあれ
254恩頼(みたまのふゆ)永久(とは)にあれ』
255(うた)はせ(たま)ひつつ、256悠然(いうぜん)として(くも)(おこ)し、257御樋代(みひしろ)(かみ)(ほか)四柱(よはしら)は、258高光山(たかみつやま)方面(はうめん)()して()(たま)ひける。
 
259 (ちなみ)()ふ、260高光山(たかみつやま)(さかひ)として、261(ひがし)御樋代(みひしろ)(がみ)(うづ)御舎(みあらか)()てられ、262土阿(とあ)宮殿(きうでん)(つく)り、263(あらた)めて土阿(とあ)(くに)名付(なづ)(たま)ひ、264高光山(たかみつやま)以西(いせい)予讃(よさ)(くに)名付(なづ)(たま)ひ、265葭原(よしはら)国土(くに)総称(そうしよう)して(うづ)二名島(ふたなじま)(たた)(たま)ひけるぞ(かしこ)けれ。
266昭和九・七・二〇 旧六・九 於関東別院南風閣 白石恵子謹録)
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