霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第七章 相聞(さうもん)(一)〔一九八八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第79巻 天祥地瑞 午の巻 篇:第2篇 竜宮風景 よみ(新仮名遣い):りゅうぐうふうけい
章:第7章 相聞(一) よみ(新仮名遣い):そうもん 通し章番号:1988
口述日:1934(昭和9)年07月17日(旧06月6日) 口述場所:関東別院南風閣 筆録者:白石恵子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年10月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
弟姫神の兄、艶男の姿の美しさに、竜神の侍女神たちは先を争って集まって来た。侍女神たちはいずれも人面竜身であったが、その美しさには犯しがたい気品があった。
侍女神の一人山吹は、恐る恐る艶男の近くに寄り、艶男への恋心を歌った。しかし艶男は、実を結ばぬ恋ゆえに、応えるわけには行かないと断り、返事をしばし待つようにと返した。
艶男は庭の白砂を踏みながら、曲玉池の木陰に進んでいくと、今度は侍女神の白菊が物憂げに立っていた。艶男はその風情に打たれて名を問うと、白菊は艶男への思いをぶつけてきた。
艶男は自分は国津神の長の家を継ぐものであり、ここには長くとどまることができないから、思いに応えることができない、と返した。白菊は悲しみと恨みを歌ってそっとその場を離れた。
艶男は、妹を追って来たこの竜宮島で、はからずもこのような恋の情けの雨に悩まされるとは、と嘆じた。人面竜身の姿は自分の心にはそぐわないが、しかし面差しを見れば涙にくれる乙女であるし、このような恋の思いを打ち明けられて心悲しくなってしまうのだ、と悩みを一人歌う。
すると、前方の森からまた七人の竜神の乙女が入り来たった。艶男はまた見つかっては大変と、伊吹山の中腹にある鏡の湖に向かって逃げていった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm7907
愛善世界社版: 八幡書店版:第14輯 200頁 修補版: 校定版:135頁 普及版: 初版: ページ備考:
001万里(まで)海原(うなばら)(うか)びたる
002葭原(よしはら)国土(くに)真秀良場(まほらば)なる
003玉耶(たまや)湖水(こすい)中心(ちうしん)
004御空(みそら)をついてそばだてる
005大地(だいち)(はな)ともたとふべき
006伊吹(いぶき)(やま)後方(こうはう)
007高光山(たかみつやま)相次(あひつ)ぐの名山(めいざん)なり
008(この)(やま)南端(なんたん)突出(とつしゆつ)せる
009万木(ばんぼく)万草(ばんさう)(ゆたか)なる
010珊瑚礁(さんごせう)(もつ)(かた)まりし
011風光(ふうくわう)明媚(めいび)島ケ根(しまがね)
012竜宮島(りうぐうじま)(とな)ふなり
013(この)島ケ根(しまがね)はまだ(あたら)しく
014人面(にんめん)竜身(りうしん)竜族(たつぞく)数多(あまた)住居(ぢうきよ)して
015神仙郷(しんせんきやう)(おも)ひあり
016(やや)進歩(しんぽ)せる竜神(たつがみ)
017頭部(とうぶ)両腕(りやううで)
018(やうや)国津(くにつ)(かみ)姿(すがた)()たれども
019(その)()(いま)完全(くわんぜん)なる
020人体(じんたい)ならず肩部(けんぶ)より(した)
021(のこ)らず(うろこ)(もつ)人体(じんたい)(つつ)まれたる
022異様(いやう)獣族(じうぞく)なり
023かかる(あたら)しき島ケ根(しまがね)
024(とら)はれ(きた)りし麗子姫(うららかひめ)
025容姿(ようし)艶麗(えんれい)にして天人(てんにん)(ごと)
026竜神族(たつがみやから)(たちま)(かみ)尊敬(そんけい)
027竜神(たつがみ)(わう)たる大竜身彦(おほたつみひこ)
028麗子姫(うららかひめ)(つま)としながら
029(かみ)(わう)(あふ)
030()()真心(まごころ)(かぎ)りをつくして
031(つか)へまつりける
032かかるところへ麗子姫(うららかひめ)(あに)なる
033艶男(あでやか)(きた)りしより
034(この)島ケ根(しまがね)(わか)()たちは
035旱天(かんてん)驟雨(しうう)()たるが(ごと)
036随喜(ずゐき)渇仰(かつかう)して一目(ひとめ)なりとも
037天人(てんにん)(かんばせ)(をが)まむと
038(さき)(あらそ)()(きた)
039竜神(たつがみ)(なか)にも
040眉目形(みめかたち)うるはしき乙女(をとめ)
041大竜身彦(おほたつみひこ)神殿(しんでん)
042朝夕(あさゆふ)(つか)(はべ)りて
043艶男(あでやか)端麗(たんれい)なる容姿(ようし)
044目引(めひ)袖引(そでひ)(なが)めつつ
045()みを(たた)()たりける
046侍女神(じぢよしん)(おも)なる(かみ)
047桔梗(ききやう)山吹(やまぶき)女郎花(をみなへし)
048(はぎ)撫子(なでしこ)藤袴(ふぢばかま)
049白菊(しらぎく)山菊(やまぎく)百合(ゆり)(はな)
050椿(つばき)(さくら)燕子花(かきつばた)
051あやめ、石竹(せきちく)などと
052(はな)やかなる()持主(もちぬし)なりける
053これらの女神(めがみ)はいづれも
054竜体(りうたい)なりとはいへ
055その容貌(ようばう)端麗(たんれい)にして
056容易(ようい)(をか)すべからず()えにける。
057 山吹(やまぶき)(おそ)(おそ)艶男(あでやか)(そば)(ちか)く、058裲襠姿(うちかけすがた)にて()(きた)り、059(こころ)(たけ)(うた)ふ。
060久方(ひさかた)天津国(あまつくに)より(くだ)りましし
061(かみ)にあらずや(きみ)のよそほひ
062われは(いま)伊吹(いぶき)(やま)山峡(やまかひ)
063(あめ)(しを)るる山吹(やまぶき)(はな)
064山吹(やまぶき)(はな)()けども(にほ)へども
065手折(たを)(ひと)なきわれぞ(さび)しき
066(きみ)()()れてこぼるる山吹(やまぶき)
067(つゆ)はづかしきおもひなりけり
068はてしなきおもひ(いだ)きてわれは(いま)
069(たふと)(きみ)(まへ)にはぢらふ
070竜神(たつがみ)(たち)天降(あも)りし(きみ)こそは
071わが()(ため)生命(いのち)なるかも
072(たま)()生命(いのち)()つるも()しまむじ
073(きみ)(おん)()にふるる山吹(やまぶき)
074山吹(やまぶき)(はな)(なさけ)のつゆあびて
075ほのかに()みつ打伏(うちふ)(なつ)なり
076水上(みなかみ)(やま)より(くだ)りし君許(きみがり)
077ただ一夜(ひとよ)さの(つゆ)(ねが)はし
078()(きみ)(なさけ)のつゆのなかりせば
079あれは山吹(やまぶき)()くよしもなし
080(うみ)()姿(すがた)(うつ)山吹(やまぶき)
081(はな)(こころ)(きみ)()らずや
082七重(ななへ)八重(やへ)(はな)()くわが()山吹(やまぶき)
083(きみ)のすがたに(およ)ばざらめや
084(とき)じくに七重(ななへ)八重(やへ)()山吹(やまぶき)
085竜宮(りうぐう)(しま)(はな)にぞありける
086われはまだ年若(としわか)けれど(きみ)おもふ
087(こころ)はあかし山吹(やまぶき)(はな)
088黄金色(こがねいろ)()山吹(やまぶき)君許(きみがり)
089()ちてし()れば(おも)あからむも
090山吹(やまぶき)のあかき(こころ)をみそなはし
091(なさけ)のつゆを()らさせ(たま)へ』
092 艶男(あでやか)はこれに(こた)へて、
093山吹(やまぶき)(ひめ)(こころ)はさとれども
094手折(たを)(すべ)なきわが()なりけり
095(ひと)()(なさけ)をさとるわれながら
096(はな)にかこまれ(うご)くよしなし
097百千花(ももちばな)(にほ)竜宮(りうぐう)島ケ根(しまがね)
098(おも)はぬ(はな)(いろ)()るかな
099いろいろと(はな)(にほ)へど手折(たを)るべき
100(ちから)なき()をわれ如何(いか)にせむ
101伊吹山(いぶきやま)尾根(をね)にかがよふ(つき)かげを
102()れば(はづ)かし艶男(あでやか)(くも)
103村肝(むらきも)(こころ)(くも)りてわれは(いま)
104あやめもわかずなりにけらしな
105(はな)()(こひ)()ひつつ(この)(しま)
106さまよふわれの(こころ)いぶかし
107如何(いか)にして(きみ)(こころ)(かな)はむと
108(おも)へど(せん)なし()()一人(ひとり)
109よしやよし山吹(やまぶき)(はな)手折(たを)るとも
110仇花(あだばな)なれや()(むす)ばねば』
111 山吹(やまぶき)はこれに(こた)へて、
112『わがおもふ(こころ)(たけ)君許(きみがり)
113(あか)しまつりし(こと)(はづ)かし
114()にもあれ(かく)にもあれや竜宮(りうぐう)
115(には)(にほ)へる(はな)手折(たを)らせよ』
116 艶男(あでやか)(こた)ふ。
117()にもあれ(かく)にもあれや(いま)(しば)
118わが(かへ)(ごと)()たせ(たま)はれ』
119()ひつつ、120悠然(いうぜん)として(には)白砂(しらすな)()みながら、121曲玉池(まがたまいけ)()かげに(むか)つて(すす)()く。
122 此処(ここ)には、123侍女神(じぢよしん)白菊(しらぎく)物憂(ものう)げに()つて()る。124その優姿(やさすがた)125海棠(かいだう)(あめ)(しを)れてうつぶせるが(ごと)風情(ふぜい)あり。
126 艶男(あでやか)はこれを()(うた)ふ。
127曲玉(まがたま)(いけ)(みぎは)()(はな)
128いづれの(はな)()かまほしさよ
129(いけ)(そこ)(すが)しく(うつ)御姿(みすがた)
130()にも(まれ)なるよそほひなるかな』
131 白菊(しらぎく)(うた)ふ。
132『わが(こころ)いづらに()くかしら(ぎく)
133水鏡(みづかがみ)()(あさ)なりにけり
134(きみ)こそは天津(あまつ)国人(くにびと)()(しま)
135天降(あも)らす()より()(あふ)ぎつつ
136(あふ)()れば(つき)(かんばせ)(はな)(いろ)
137(この)島ケ根(しまがね)(まれ)なる艶人(あでびと)
138艶人(あでびと)(うへ)をおもひて(あさ)なさな
139われは(いの)るも曲玉(まがたま)(いけ)
140曲玉(まがたま)(みづ)(そこ)まで()みきれど
141われは(くも)れり(こころ)水底(みなそこ)
142いや(ふか)きおもひの(そこ)打明(うちあ)けて
143(きみ)()せたき(ひと)つのものあり
144白菊(しらぎく)のかげのうつらふ玉水(たまみづ)
145(きみ)()まずや(むす)(たま)はずや
146(いや)しかる身体(むくろ)をもてど(ひと)()ふる
147(きよ)(こころ)(へだ)てあるべき
148島ケ根(しまがね)()白菊(しらぎく)(はな)(つゆ)
149(むす)ばせ(たま)一夜(いちや)(まくら)を』
150 艶男(あでやか)(うた)ふ。
151竜宮(りうぐう)島根(しまね)(はか)らず(わた)()
152(なさけ)のつゆの(あめ)にあふかな
153われこそは水上山(みなかみやま)国津(くにつ)御祖(みおや)
154(かみ)家継(いへつ)彦遅(ひこぢ)なるぞや
155永久(とこしへ)()むべき(しま)にあらざれば
156手折(たを)(すべ)さへしら(ぎく)(はな)
157 白菊(しらぎく)(うた)ふ。
158(はづ)かしきわが()なるかな()(きみ)
159(そで)にはぢかれ(はな)()らむとすも
160わが(こころ)いづらに()きしかしら(ぎく)
161(はな)はづかしき(あさ)なりにけり
162うちつけにわが(はな)ちたる言霊(ことたま)
163(いは)にあたりてはね(かへ)されぬ
164朝夕(あさゆふ)乙女心(をとめごころ)のかなしさを
165()まさぬ(きみ)ぞつれなかりけり
166いざさらば(しば)(わか)れて(はづ)かしの
167(もり)()かげにわれ(やす)らはむ』
168(うた)ひつつ、169(そで)(かほ)(おほ)ひながら、170(うづ)乙女(をとめ)のしをしをと、171小暗(をぐら)木下闇(こしたやみ)(くぐ)りて、172何処(いづく)ともなく()()きにける。
173 艶男(あでやか)(ふと)(いき)(もら)しながら、
174『ああわれは(まよ)ひにけりな麗子(うららか)
175(あと)(した)ひてここに(なや)めるか
176(いま)となり麗子姫(うららかひめ)心根(こころね)
177ひしと(さと)りて(なみだ)ぐましも
178竜神(たつがみ)(こきし)なれども(たつ)()
179(いだ)かるる()(さび)しかるらむ
180麗子(うららか)(あと)(たづ)ねて()しわれは
181(なさけ)(あめ)になやまされける
182かくの(ごと)(こひ)(くる)しきものなるか
183(たま)生命(いのち)()なまく(おも)
184()なまくは(おも)へど故郷(くに)垂乳根(たらちね)
185いますが(ゆゑ)(こころ)(まか)せず
186水火土(しほつち)(かみ)(すく)はれわれは(いま)
187(おな)じなやみに(もだ)えぬるかな
188竜神(たつがみ)(まなこ)なければひそやかに
189(ふね)をかざして(かへ)らむものを
190村肝(むらきも)(こころ)にそぐはぬ竜神(たつがみ)
191乙女(をとめ)姿(すがた)()るもいやらし
192さりながら(その)おもざしを(なが)むれば
193(なみだ)ぐましき乙女(をとめ)のみなる
194乙女子(をとめご)(きよ)きなさけの(つゆ)あびて
195(こころ)(かな)しくなりにけらしな
196女神(めがみ)のみ数多(あまた)()まへる(この)(しま)
197()()一人(ひとり)如何(いか)()ふべき
198一枝(ひとえ)()らば百花(ももばな)千花(ちばな)(おし)なべて
199手折(たを)らにやならぬ破目(はめ)となるべし
200われは(いま)(ひと)つの生命(いのち)(たも)ちつつ
201(もも)生命(いのち)如何(いか)(ささ)へむ』
202 ()(うた)(をり)もあれ、203前方(ぜんぱう)森林(しんりん)より(しち)(にん)乙女(をとめ)204白衣(びやくえ)直垂(ひたたれ)()長袴(ながはかま)穿(うが)ち、205各自(てんで)水晶(すゐしやう)(つぼ)(いだ)きながら、206曲玉池(まがたまいけ)(みづ)()まむとや、207しとしとと()(きた)る。
208 艶男(あでやか)はまた見付(みつ)かつては大変(たいへん)と、209(たちま)(きびす)をかへし、210伊吹(いぶき)(やま)中腹(ちうふく)なる鏡湖(かがみこ)のかたへの樹蔭(こかげ)()がけ、211(いそ)()げて()く。
212 艶男(あでやか)樹蔭(こかげ)(いこ)ひながら(うた)ふ。
213(やうや)くにわれは(のが)れて(きた)りけり
214いざ(やす)らはむ桂木(かつらぎ)のかげ
215女神(めがみ)のみ数多(あまた)()まへる(この)(しま)
216(こころ)いぶかしくわれは(なや)むも
217(いま)(しば)心安(うらやす)らけく(たも)てども
218やがて(おそ)はむ(こひ)(あらし)
219(つばさ)あらば水上(みなかみ)(やま)(よる)()
220()(かへ)らむと(なや)めるわれかも
221麗子(うららか)(こひ)しき(きみ)のいます(しま)
222(つばさ)はがれし裸鳥(はだかどり)われは
223伊吹山(いぶきやま)尾根(をね)(つつ)める白雲(しらくも)
224()るるひまなきわが(おも)ひかな』
225昭和九・七・一七 旧六・六 於関東別院南風閣 白石恵子謹録)
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