霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二一章 帰顕(きけん)〔五八八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第15巻 如意宝珠 寅の巻 篇:第4篇 神行霊歩 よみ(新仮名遣い):しんこうれいほ
章:第21章 帰顕 よみ(新仮名遣い):きけん 通し章番号:588
口述日: 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年12月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
一行4人(松彦、玉彦、厳彦、楠彦)は、金砂、銀砂、真珠を敷き詰めた清庭を進んで行くと、黄錦の制服を着た神人が迎え出た。それは言依別命であった。言依別命は一行を宮殿の奥へ招きいれ、国祖・国治立命に面会した。
次に、神素盞嗚命に面会した。神素盞嗚命は、言依別命ら一行四人(言依別命、玉彦、厳彦、楠彦)は、聖地の有様を観覧してから現界に復帰し、使命を果たした後に再び高天原に帰り来るように、と神命を申し渡した。
その後、一行は松彦の案内で聖地の様子を見聞した後、松彦から与えられた四つの金色の翼を着けると、気がつけば河鹿峠の谷底に倒れていた。馬は辺りで草を食んでいる。
一行は高天原の様子を見せてもらったご神恩に感謝し、天津祝詞を奏上すると、馬に乗って山中を進んでいった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-01-21 16:33:09 文字数:3388 OBC :rm1521
愛善世界社版:266頁 八幡書店版:第3輯 378頁 修補版: 校定版:264頁 普及版:122頁 初版: ページ備考:
001 松彦(まつひこ)一行(いつかう)は金砂(きんさ)、002銀砂(ぎんさ)、003真珠(しんじゆ)を一面(いちめん)に敷(し)きつめたる清庭(すがには)を進(すす)む折(をり)しも、004二三(にさん)の従者(じゆうしや)を伴(とも)なひ、005黄錦(わうきん)の制服(せいふく)を着(ちやく)したる顔色(がんしよく)美(うる)はしく、006姿(すがた)何処(どこ)となく優美(いうび)高尚(かうしやう)なる神人(しんじん)現(あら)はれ来(きた)り、007莞爾(くわんじ)として松彦(まつひこ)に向(むか)ひ、
008神人『松彦(まつひこ)殿(どの)、009御(ご)苦労(くらう)なりしよ。010先(ま)づ先(ま)づ奥(おく)にて休息(きうそく)あれ。011オー玉彦(たまひこ)、012厳彦(いづひこ)、013楠彦(くすひこ)殿(どの)よくマア御(お)出(い)で下(くだ)さいました』
014 三柱(みはしら)は此(この)声(こゑ)の何(なん)とも言(い)ひ得(え)ぬ温味(あたたかみ)あるにフト顔(かほ)を上(あ)ぐれば、015河(かは)の辺(ほとり)にて別(わか)れたる言依別(ことよりわけ)の命(みこと)なりける。
016 三(さん)人(にん)は驚(おどろ)き乍(なが)ら、
017三人『ヤア貴神(あなた)は言依別(ことよりわけの)命(みこと)様(さま)』
018と言(い)つたきり、019嬉(うれ)し涙(なみだ)をハラハラと流(なが)してゐる。020言依別(ことよりわけの)命(みこと)は、
021言依別『御(ご)一同(いちどう)此方(こちら)へ御(お)出(い)でなされ』
022と先(さき)に立(た)ちて歩(あゆ)み、023緩(ゆる)やかに美(うる)はしき宮殿(きうでん)の階段(かいだん)を上(のぼ)り行(ゆ)く。
024 一行(いつかう)は恐(おそ)る恐(おそ)る後(あと)に続(つづ)く。025美(うる)はしき桧造(ひのきづく)りの宮殿(きうでん)の真中央(まんなか)に、026四(よ)人(にん)は据(す)ゑられた。027言依別(ことよりわけの)命(みこと)は数多(あまた)の美(うる)はしき男女(だんぢよ)の侍神(じしん)に命(めい)じ、028玉杯(たまもひ)に酒(さけ)を盛(も)り、029珍(めづ)らしき果物(このみ)を添(そ)へて差出(さしだ)し勧(すす)むる。030一同(いちどう)は意外(いぐわい)の待遇(たいぐう)に狂喜(きやうき)し、031身(み)の措(を)き所(どころ)も知(し)らず、032何(なん)となく心(こころ)いそいそとして落着(おちつ)きかねし風情(ふぜい)なり。
033 寸時(しばらく)休憩(きうけい)の後(のち)、034言依別(ことよりわけの)命(みこと)は三(さん)人(にん)を伴(ともな)ひ、035木(き)の香(か)薫(かほ)れる美(うる)はしき廊下(らうか)を伝(つた)ひて、036奥(おく)へ奥(おく)へと伴(ともな)ひ行(ゆ)く。037言依別(ことよりわけ)は拍手(はくしゆ)を終(をは)り、038神言(かみごと)を奏上(そうじやう)するや錦(にしき)の帳(とばり)をサツト押開(おしひら)け入(い)り来(きた)る白髪(はくはつ)の老神(らうしん)、039莞爾(くわんじ)として一同(いちどう)の前(まへ)に現(あら)はれ給(たま)ひ、
040老神(国祖)『汝(なんぢ)言依別(ことよりわけの)命(みこと)以下(いか)三(さん)人(にん)の神司(かむつかさ)、041よくも参(まゐ)りしよな。042汝(なんぢ)は此(こ)の高天原(たかあまはら)の荘厳(さうごん)を胸底(きようてい)深(ふか)く畳込(たたみこ)み、043聖地(せいち)の状況(じやうきやう)を十分(じふぶん)に視察(しさつ)し、044数日(すうじつ)此処(ここ)に滞留(たいりう)して聖地(せいち)の空気(くうき)を吸(す)ひ身魂(みたま)を清(きよ)め、045復(ふたた)び現界(げんかい)に現(あら)はれ、046汝(なんぢ)が残(のこ)りの使命(しめい)を果(はた)し、047然(しか)して後(のち)改(あらた)めて此処(ここ)へ帰(かへ)り来(こ)られよ。048われこそは国祖(こくそ)国治立(くにはるたちの)命(みこと)なるぞ』
049と儼(げん)として犯(をか)すべからざる威容(ゐよう)に笑(ゑみ)を湛(たた)へ、050軽(かる)く一礼(いちれい)して奥殿(おくでん)に入(い)らせ給(たま)うた。
051 言依別(ことよりわけ)以下(いか)三(さん)人(にん)は、052嬉(うれ)しさに胸(むね)塞(せま)り、053何(なん)の応答(いらへ)もなくばかり、054嬉(うれ)し涙(なみだ)に時(とき)の移(うつ)るをも知(し)らず俯向(うつむ)きゐる。055又(また)もや威厳(ゐげん)の中(なか)に温情(おんじやう)の籠(こも)れる声(こゑ)にて、
056神素盞嗚大神『汝(なんぢ)言依別(ことよりわけの)命(みこと)並(ならび)に玉彦(たまひこの)命(みこと)、057厳彦(いづひこの)命(みこと)、058楠彦(くすひこの)命(みこと)、059汝(なんぢ)が至誠(しせい)は地(ち)の高天原(たかあまはら)に通(つう)じたり。060悠々(いういう)聖地(せいち)の状況(じやうきやう)を観覧(くわんらん)し、061復(ふたた)び現界(げんかい)に復帰(ふくき)して汝(なんぢ)が使命(しめい)を果(はた)せし上(うへ)、062改(あらた)めて此処(ここ)に帰(かへ)り来(きた)れ。063われこそは豊国姫(とよくにひめの)神(かみ)の分霊(わけみたま)否(いな)伊都能売(いづのめ)の身魂(みたま)、064神(かむ)素盞嗚(すさのを)なるぞ』
065と声(こゑ)も涼(すず)しく宣(の)らせ給(たま)へば、066一同(いちどう)は思(おも)はず、067ハツと頭(かしら)を擡(もた)げ御(お)顔(かほ)を眺(なが)むれば、068三五(さんご)の月(つき)の御(おん)顔色(かんばせ)譬(たと)ふるに物(もの)無(な)き気高(けだか)さに、069又(また)もやハツと頭(かしら)を下(さ)ぐる其(そ)の刹那(せつな)、070微妙(びめう)の言葉(ことば)につれて徐々(しづしづ)と奥殿(おくでん)に入(い)らせ給(たま)ふ後姿(うしろすがた)を遥(はるか)に拝(はい)し奉(たてまつ)り、071又(また)もや恭敬(きようけい)礼拝(れいはい)感謝(かんしや)の涙(なみだ)に咽(むせ)びつつ、072祝詞(のりと)の声(こゑ)も嬉(うれ)し涙(なみだ)に湿(しめ)る許(ばか)りなりき。
073 この時(とき)何処(いづこ)よりともなく現(あら)はれ来(きた)る以前(いぜん)の天使(てんし)松彦(まつひこ)は、
074松彦(まつひこ)『ヤア皆様(みなさま)、075結構(けつこう)でございました。076大神(おほかみ)様(さま)の命(めい)に依(よ)つて、077これから神界(しんかい)の一部(いちぶ)を御(ご)案内(あんない)いたしませう。078サア御(お)出(い)でなさいませ』
079と御殿(ごてん)を下(さが)り、080スタスタと進(すす)み行(ゆ)く。081四(よ)人(にん)は松彦(まつひこ)の後(あと)に続(つづ)く。082松彦(まつひこ)は十重(とへ)の高楼(たかどの)に四(よ)人(にん)を導(みちび)き、083四方(よも)の風景(ふうけい)を指(ゆび)さして一々(いちいち)説明(せつめい)を与(あた)ふる。
084 金銀(きんぎん)の波(なみ)を湛(たた)へたる湖(みづうみ)は四方(しはう)を囲(かこ)み、085金銀(きんぎん)の帆(ほ)を張(は)りたる五色(ごしき)の船(ふね)は、086右往(うわう)左往(さわう)に往来(わうらい)しつつありき。087遥(はるか)の彼方(かなた)に浮(う)かべる如(ごと)く見(み)ゆる松(まつ)生茂(おひしげ)る一(ひと)つの島(しま)を示(しめ)し、088松彦(まつひこ)は、
089松彦『彼(か)の島(しま)は三十八万(さんじふはちまん)年(ねん)の昔(むかし)、090顕恩郷(けんおんきやう)と称(とな)へて南天王(なんてんわう)の守(まも)り給(たま)ひし楽園(らくゑん)でありました。091大地(だいち)の傾斜(けいしや)旧(もと)に復(ふく)してより、092今(いま)は御覧(ごらん)の如(ごと)く低地(ていち)は残(のこ)らず湖水(こすゐ)となり、093唯(ただ)高山(かうざん)の頂(いただ)きのみ頭(あたま)を現(あら)はし、094今(いま)は国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)の御(お)安息(やすみ)場所(ばしよ)となりました。095彼(あ)のきらきらと輝(かがや)く光(ひかり)は、096十曜(とえう)の神紋(しんもん)でございます』
097言依別(ことよりわけ)『三十八万(さんじふはちまん)年(ねん)とは、098それは何時(いつ)から計算(けいさん)しての年数(ねんすう)でございますか』
099松彦(まつひこ)『素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)、100天(てん)の高天原(たかあまはら)を神退(かむやら)ひに退(やら)はれ給(たま)ひし日(ひ)より計算(けいさん)しての年数(ねんすう)でございます』
101言依別(ことよりわけ)『アア然(しか)らば最早(もはや)数十万(すふじふまん)年(ねん)の年月(ねんげつ)を経(へ)たるか。102はて不思議(ふしぎ)千万(せんばん)、103合点(がてん)の行(ゆ)かぬことであるワイ』
104松彦(まつひこ)『神界(しんかい)に時間(じかん)はありませぬ。105これも現界(げんかい)より見(み)ての年数(ねんすう)です。106アレアレ四方(よも)を御覧(ごらん)なさいませ。107尊(みこと)御(ご)退隠(たいいん)時代(じだい)は、108彼(あ)の波(なみ)の漂(ただよ)ふ辺(あた)りは残(のこ)らず美(うる)はしき山(やま)でございました。109また少(すこ)しく東(ひがし)に当(あた)つて小(ちい)さき、110黒(くろ)き影(かげ)の見(み)えまするのは、111古(いにしへ)のシナイ山(ざん)の頂(いただき)でございます。112斯(か)くの如(ごと)く世態(せたい)は一変(いつぺん)し、113陸地(りくち)は大湖水(だいこすゐ)となり、114海(うみ)の各所(かくしよ)に新(あたら)しき島嶼(たうしよ)が続出(ぞくしゆつ)しました』
115と話(はな)す折(をり)しも、116美(うる)はしき羽翼(うよく)を列(なら)べて十四五(じふしご)の鳥(とり)、117此(こ)の十重(とへ)の塔(たふ)に翺(か)け来(きた)り、118五(ご)人(にん)が前(まへ)に羽根(はね)を休(やす)めける。
119 見(み)れば鳥(とり)と見(み)しは見誤(みあやま)りにて、120羽根(はね)の生(は)へたる小(ちい)さき人間(にんげん)なりき。121松彦(まつひこ)は一同(いちどう)に向(むか)ひ、
122松彦『彼(かれ)は天地(てんち)の間(あひだ)を往来(わうらい)し、123神々(かみがみ)の御(お)言葉(ことば)を伝(つた)ふる使神(つかいがみ)であります。124地上(ちじやう)の世界(せかい)は炎熱(えんねつ)甚(はなはだ)しく相(あひ)成(な)りたれば、125今(いま)は罪(つみ)軽(かる)き神人(しんじん)は残(のこ)らず、126日(ひ)の御国(みくに)に移住(いぢう)をすることになつてゐます。127そのために空中(くうちう)郵便(ゆうびん)が開始(かいし)され、128つまり彼(か)の使(つかい)は三十(さんじつ)世紀(せいき)の昔(むかし)に於(お)ける郵便(ゆうびん)配達夫(はいたつふ)の役(やく)を勤(つと)むるものでございますよ。129日(ひ)の御国(みくに)に御用(ごよう)がございますれば、130此処(ここ)で手紙(てがみ)を御(お)書(か)きなさいませ。131この十重(とへ)の神殿(しんでん)は謂(い)はば天(てん)と地(ち)との文書(ぶんしよ)の往復(わうふく)を掌(つかさど)る一等(いつとう)郵便局(ゆうびんきよく)のやうなものです』
132言依別(ことよりわけ)『吾々(われわれ)は神代(かみよ)の文字(もじ)は知(し)つてゐますが、133今日(こんにち)の時代(じだい)は文字(もじ)も大変(たいへん)異(かは)つてゐませうね』
134松彦(まつひこ)『昔(むかし)のやうに今日(こんにち)の時代(じだい)は、135毛筆(まうひつ)や、136鉛筆(えんぴつ)や、137万年筆(まんねんひつ)などの必要(ひつえう)はありませぬ。138唯(ただ)指先(ゆびさき)を以(もつ)て空中(くうちう)に七十五(しちじふご)声(せい)の文字(もじ)を記(しる)せば、139配達夫(はいたつふ)は直(ただち)に配達(はいたつ)して呉(く)れますよ。140私(わたくし)が一(ひと)つ手本(てほん)を見(み)せませう。141この交通(かうつう)機関(きくわん)は廿一(にじふいつ)世紀(せいき)の初期(しよき)から開始(かいし)されたのですよ』
142と右(みぎ)の指(ゆび)を以(もつ)て空中(くうちう)に七十五(しちじふご)声(せい)の片仮名(かたかな)を綴(つづ)りて、143一(ひと)つの語(ご)を作(つく)り、
144松彦『サア、145これで手紙(てがみ)が書(か)けました。146文字(もじ)が言語(げんご)を発(はつ)する時代(じだい)となつて来(き)ました』
147と言(い)つて笑(わら)つてゐる。148四(よ)人(にん)は耳(みみ)を傾(かたむ)けて珍(めづ)らしき文字(もじ)の声(こゑ)を聞(き)かむと努(つと)めける。149文字(もじ)の声(こゑ)は音楽(おんがく)の如(ごと)く聞(きこ)え来(き)たりぬ。150其(そ)の文面(ぶんめん)に拠(よ)れば、
151『唯今(ただいま)地(ち)の高天原(たかあまはら)に誠(まこと)の神(かみ)の教(をしへ)を伝(つた)ふる言依別(ことよりわけの)命(みこと)、152玉彦(たまひこ)、153厳彦(いづひこ)、154楠彦(くすひこ)の四柱(よはしら)が御(お)出(い)でになり、155国治立(くにはるたち)の大神(おほかみ)様(さま)、156又(また)神(かむ)素盞嗚(すさのを)の大神(おほかみ)様(さま)に御(ご)対面(たいめん)遊(あそ)ばされ、157唯今(ただいま)十重(とへ)の高楼(たかどの)に御(お)上(あ)がりになつて、158四辺(あたり)の景色(けしき)を眺(なが)めてゐられます。159天(てん)の高天原(たかあまはら)に於(おい)て此(こ)の方々(かたがた)に対(たい)して御用(ごよう)がございますれば、160直(すぐ)に御(ご)返事(へんじ)を下(くだ)さいませ。161左様(さやう)なら』
162と明瞭(はつきり)と聞(きこ)えて来(き)た。163使(つかい)の神(かみ)は空中(くうちう)の文字(もじ)をクルクルと巻(ま)き乍(なが)ら、164羽根(はね)の間(あひだ)にはさみ、165天空(てんくう)目蒐(めが)けて電光(でんくわう)石火(せきくわ)の如(ごと)く飛(と)び去(さ)りぬ。
166松彦(まつひこ)『今(いま)に御(ご)返事(へんじ)が参(まゐ)りませうよ。167暫(しばら)く四辺(あたり)の景色(けしき)を眺(なが)めて御(お)待(ま)ち下(くだ)さいませ』
168 三(さん)人(にん)は驚(おどろ)きて、
169三人『モシ言依別(ことよりわけ)の命(みこと)さま、170妙(めう)なものですなア。171随分(ずゐぶん)世(よ)の中(なか)も開(ひら)けました。172二十(にじつ)世紀(せいき)時代(じだい)の人間(にんげん)は文明(ぶんめい)の極致(きよくち)に達(たつ)したとか、173神界(しんかい)の秘密(ひみつ)を探(さぐ)つたとか、174時代(じだい)を征服(せいふく)したとか言(い)うて居(ゐ)た時代(じだい)もありましたが、175今日(こんにち)になつて見(み)れば実(じつ)に幼稚(えうち)なものですな』
176と話(はな)しゐる。177此(この)時(とき)以前(いぜん)の使(つかい)は、178電(いなづま)の如(ごと)く此(この)場(ば)に降(くだ)り来(き)たりぬ。179而(しか)して松彦(まつひこ)に空中(くうちう)返書(へんしよ)を手渡(てわた)し乍(なが)ら、180又(また)もや矢(や)を射(い)る如(ごと)く東天(とうてん)指(さ)して翔(か)け去(さ)りにける。181其(そ)の文面(ぶんめん)に曰(い)ふ。
182『天(てん)の高天原(たかあまはら)より返事(へんじ)を致(いた)します。183唯今(ただいま)御(お)申越(まをしこ)しの言依別(ことよりわけの)命(みこと)外(ほか)三(さん)人(にん)は、184未(ま)だ現界(げんかい)に尽(つく)す可(べ)き神業(しんげふ)の数多(あまた)あれば、185一度(いちど)現界(げんかい)へ御(お)帰(かへ)し下(くだ)され度(た)し。186時代(じだい)は三十五万(さんじふごまん)年(ねん)の古(いにしへ)に復(かへ)して、187河鹿(かじか)峠(たうげ)の谷底(たにそこ)へ帰顕(きけん)せしめられ度(た)し。188右(みぎ)御(ご)返事(へんじ)申(まを)します。189地(ち)の高天原(たかあまはら)の消息(おとづれ)の司(つかさ)松彦(まつひこ)殿(どの)』
190と空中(くうちう)文字(もじ)の返書(へんしよ)が声(こゑ)を発(はつ)して、191自然(しぜん)に物語(ものがた)りゐる。
192玉彦(たまひこ)『アア未来(みらい)の世(よ)は結構(けつこう)だナア。193吾々(われわれ)も此(この)儘(まま)神界(しんかい)にゐたいものだが、194アーア三十五万(さんじふごまん)年(ねん)の未(ま)だ苦労(くらう)を済(す)まさねば、195此処(ここ)へ来(く)ることは出来(でき)ぬのかなア。196アヽ仕方(しかた)がありませぬ、197左様(さやう)なら、198松彦(まつひこ)様(さま)、199これから御(お)暇(いとま)を致(いた)します』
200 松彦(まつひこ)は、
201松彦『皆様(みなさま)、202暫(しば)らく御(お)待(ま)ち下(くだ)さいませ。203空中(くうちう)交通機(かうつうき)を上(あ)げませう』
204と又(また)もや指先(ゆびさき)にて空中(くうちう)に、205何事(なにごと)か記(しる)す其(そ)の刹那(せつな)、206金色(こんじき)燦然(さんぜん)たる鳥(とり)の翼(つばさ)の如(ごと)きもの四組(よくみ)、207何処(いづこ)ともなく此(この)場(ば)に降(くだ)り来(き)たりぬ。
208松彦『サア之(これ)を御(お)着(つ)けなされ』
209と云(い)ふより早(はや)く自然(しぜん)的(てき)に四(よ)人(にん)の肩(かた)の辺(あた)りに、210金色(こんじき)の翼(つばさ)はピタリとくいつきたり。211四(よ)人(にん)は一度(いちど)に、
212四人『アアこれは立派(りつぱ)だナア』
213と羽(は)ばたきを試(こころ)むるや、214身(み)は益々(ますます)高(たか)く空中(くうちう)に飛(と)び揚(あ)がり、215一瀉(いつしや)千里(せんり)の勢(いきほひ)を以(もつ)て電波(でんぱ)よりも早(はや)く、216西(にし)の空(そら)を目蒐(めが)けて進(すす)み行(ゆ)く。217眼下(がんか)に横(よこ)たはる四(よ)人(にん)の肉体(にくたい)、218ハツと見下(みおろ)す途端(とたん)に吾(われ)に返(かへ)り四辺(あたり)を見(み)れば、219河鹿河(かじかがは)の谷底(たにそこ)に倒(たふ)れ居(ゐ)たるなり。220乗(の)り来(き)し駒(こま)は如何(いか)にと見(み)れば、221無心(むしん)の馬(うま)は河辺(かはべり)の青草(あをくさ)をグイグイとむしりゐたりける。
222言依別(ことよりわけ)『アア暫(しばら)くの間(あひだ)、223気(き)が遠(とほ)くなつたと思(おも)へば、224有(あ)り難(がた)い、225高天原(たかあまはら)の状況(じやうきやう)やら、226数十万(すうじふまん)年後(ねんご)の世界(せかい)の状況(じやうきやう)を見(み)せて貰(もら)つた。227これも全(まつた)く国治立(くにはるたちの)尊(みこと)、228神(かむ)素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)の広(ひろ)き、229厚(あつ)き御恵(みめぐ)みだ。230サア一同(いちどう)此処(ここ)に禊身(みそぎ)を修(しう)し、231天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)して、232潔(いさぎよ)く大神(おほかみ)の御(ご)隠退場(いんたいぢやう)に参向(さんかう)致(いた)しませう』
233と身(み)を浄(きよ)め、234口(くち)を嗽(そそ)ぎ拍手(はくしゆ)の声(こゑ)勇(いさ)ましく、235天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し終(をは)つて又(また)もや駒(こま)にヒラリと跨(またが)り、236天馬(てんば)空(くう)を駆(か)ける如(ごと)く、237身(み)も軽々(かるがる)しく坂道(さかみち)指(さ)して、238道(みち)なき小柴(こしば)の山中(さんちう)を一目散(いちもくさん)に上(のぼ)り行(ゆ)く。
239(大正一一・四・四 旧三・八 外山豊二録)
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