霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 一人旅(ひとりたび)〔五七九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第15巻 如意宝珠 寅の巻 篇:第3篇 神山霊水 よみ(新仮名遣い):しんざんれいすい
章:第12章 一人旅 よみ(新仮名遣い):ひとりたび 通し章番号:579
口述日:1922(大正11)年04月02日(旧03月06日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年12月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
追放された素盞嗚尊は、母神に会おうと地教山にやってきた。しかし、バラモン教の鬼掴の一団に囲まれてしまう。
尊が鬼掴を放り投げると、その勢いに辟易したバラモン教の一団は逃げてしまう。尊が山を登っていくと、大蛇に道をさえぎられた。
困惑している尊の前に、母神・伊邪冊命が現れ、世界を遍歴して八岐大蛇を退治し、叢雲の剣を得て天照大御神に奉るように、と命じた。
尊は母神の命を奉じることとし、山を降った。降る途中、帰順した鬼掴を共とし、西南指して進んでいった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-01-16 01:42:46 文字数:2882 OBC :rm1512
愛善世界社版:145頁 八幡書店版:第3輯 334頁 修補版: 校定版:145頁 普及版:66頁 初版: ページ備考:
001天津神(あまつかみ)達(たち)八百万(やほよろづ)
002国津神(くにつかみ)達(たち)八百万(やほよろづ)
003百(もも)の罪咎(つみとが)身(み)一(ひと)つに
004負(お)ひてしとしと濡(ぬ)れ鼠(ねずみ)
005猫(ねこ)に追(お)はれし心地(ここち)して
006凩(こがらし)荒(すさ)ぶ冬(ふゆ)の野(の)を
007母(はは)の命(みこと)に遇(あ)はむとて
008出(いで)ます姿(すがた)ぞ不愍(いぢら)しき
009天(あま)の岩戸(いはと)も明放(あけはな)れ
010一度(ひとたび)清(きよ)き神(かみ)の代(よ)と
011輝(かがや)き渡(わた)るひまもなく
012天足(あだる)の彦(ひこ)や胞場姫(えばひめ)の
013醜(しこ)の霊魂(みたま)の荒(すさ)び来(く)る
014山(やま)の尾上(をのへ)や河(かは)の瀬(せ)は
015風(かぜ)腥(なまぐさ)く土(つち)腐(くさ)り
016河(かは)は濁水(だくすゐ)満(み)ち溢(あふ)れ
017雨(あめ)は日(ひ)に夜(よ)に降(ふ)り続(つづ)き
018流(なが)れ流(なが)れて進(すす)む身(み)の
019蓑(みの)もなければ笠(かさ)もなく
020とある家路(いへぢ)に立(た)ち寄(よ)りて
021一夜(いちや)の宿(やど)を訪(おとな)へば
022はつと答(こた)へて出(い)で来(きた)る
023荒(あら)くれ男(をとこ)の顔(かほ)みれば
024こは抑(そ)も如何(いか)にこは如何(いか)に
025鬼雲彦(おにくもひこ)の夫婦(めをと)づれ
026地教(ちけう)の山(やま)の山(やま)の下(した)
027奇石(きせき)怪巌(くわいがん)立(た)ち並(なら)ぶ
028谷(たに)の辺(ほとり)に細々(ほそぼそ)と
029立(た)つる煙(けぶり)も幽(かす)かなる
030奥(おく)に聞(きこ)ゆる唸(うな)り声(ごゑ)
031神(かむ)素盞嗚(すさのを)の大神(おほかみ)は
032物(もの)をも云(い)はず戸(と)を開(ひら)き
033つかつか立(た)ち寄(よ)り見給(みたま)へば
034八岐(やまた)大蛇(をろち)の蜿蜒(えんえん)と
035室(しつ)一面(いちめん)に蟠(わだか)まり
036赤(あか)き血潮(ちしほ)は全身(ぜんしん)に
037洫(にじ)み渉(わた)りて凄(すさま)じく
038命(みこと)を見(み)るより驚愕(きやうがく)し
039忽(たちま)ち毒気(どくき)を吹(ふ)きかくる
040鬼雲彦(おにくもひこ)と思(おも)ひしは
041全(まつた)く大蛇(をろち)の化身(けしん)にて
042鬼雲姫(おにくもひめ)と思(おも)ひしは
043大蛇(をろち)に従(したが)ふ金毛(きんまう)の
044白面(はくめん)九尾(きうび)の古狐(ふるぎつね)
045裏口(うらぐち)あけてトントンと
046後(あと)振(ふ)り返(かへ)り振(ふ)り返(かへ)り
047深山(みやま)をさして逃(に)げて往(ゆ)く
048神(かむ)素盞嗚(すさのを)の大神(おほかみ)は
049天津(あまつ)祝詞(のりと)の太祝詞(ふとのりと)
050声(こゑ)爽(さはや)かに宣(の)りあげて
051この曲津霊(まがつひ)を言霊(ことたま)の
052御息(みいき)に和(なご)め助(たす)けむと
053心(こころ)を籠(こ)めて数歌(かずうた)の
054一(ひと)二(ふた)三(み)四(よ)五(い)つ六(む)つ
055七(なな)八(や)九(ここの)十(たり)の数(かず)
056百(もも)千(ち)万(よろづ)の言霊(ことたま)に
057さしもに太(ふと)き八(や)つ岐(また)の
058大蛇(をろち)も煙(けぶり)と消(き)えて行(ゆ)く
059あゝ訝(いぶ)かしと大神(おほかみ)は
060眼(まなこ)を据(す)ゑて見(み)たまへば
061家(いへ)と見(み)えしは草野原(くさのはら)
062跡方(あとかた)もなき虫(むし)の声(こゑ)
063不審(ふしん)の雲(くも)に蔽(おほ)はれつ
064地教(ちけう)の山(やま)を目標(めあて)とし
065息(いき)もせきせき登(のぼ)ります
066折柄(をりから)吹(ふ)き来(く)る山颪(やまおろし)
067八握(やつか)の髯(ひげ)のぼうぼうと
068風(かぜ)に吹(ふ)かれて散(ち)り果(は)つる
069木々(きぎ)の梢(こづゑ)の紅葉(もみぢば)も
070命(みこと)が赤(あか)き誠心(まことごころ)を
071照(て)らしあかすぞ殊勝(しゆしよう)なる。
072 素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)は、073地教山(ちけうざん)の中腹(ちうふく)なる道(みち)の辺(べ)の巌(いはほ)に腰(こし)打(う)ち掛(か)け、074高天原(たかあまはら)に於(お)ける磐戸隠(いはとがく)れの顛末(てんまつ)を追懐(つゐくわい)し、075無念(むねん)の涙(なみだ)にくれ居(ゐ)たまふ時(とき)こそあれ、076忽(たちま)ち山上(さんじやう)より岩石(がんせき)も割(わ)るるばかりの音響(おんきやう)陸続(りくぞく)として聞(きこ)え来(きた)る。
077 怪(あや)しの物音(ものおと)は刻々(こくこく)に近(ちか)づき来(き)たる。078素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)は又(また)もや大蛇(をろち)の悪神(あくがみ)襲来(しふらい)せるかと、079ツト立(た)ち上(あが)り、080剣(つるぎ)の握(つか)に手(て)をかけて身構(みがま)へしつつ待(ま)ち居(ゐ)たまへば、081雲(くも)突(つ)く許(ばか)りの大男(おほをとこ)四五十(しごじふ)人(にん)の手下(てした)と共(とも)に、082尊(みこと)の前(まへ)に大手(おほて)を拡(ひろ)げて立(た)ち塞(ふさ)がり、
083男『ヤア、084其(その)方(はう)は天教山(てんけうざん)の高天原(たかあまはら)に於(おい)て、085天(あま)の岩戸(いはと)に、086皇(すめ)大神(おほかみ)を閉(と)ぢ込(こ)めまつりたる悪魔(あくま)の張本(ちやうほん)、087建速(たけはや)素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)ならむ。088一寸(いつすん)たりともこの山(やま)に登(のぼ)る事(こと)罷(まか)りならぬ』
089と呶鳴(どな)りつくるを、090尊(みこと)は言葉(ことば)優(やさ)しく、
091素盞嗚尊『吾(われ)は汝(なんぢ)が言(い)ふ如(ごと)く、092高天原(たかあまはら)を神退(かむやら)ひに退(やら)はれたる、093素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)なり。094さりながらこの地教(ちけう)の山(やま)には、095吾母(わがはは)の永久(とこしへ)に鎮(しづ)まり居(ゐ)ませば、096一度(いちど)拝顔(はいがん)を得(え)て、097身(み)の進退(しんたい)を決(けつ)せむと思(おも)ひ、098遥々(はるばる)此処(ここ)に来(きた)れるものぞ。099汝(なんぢ)物(もの)の哀(あは)れを知(し)るならば、100一度(いちど)は此(この)道(みち)を開(ひら)きて、101吾(われ)を母(はは)に会(あ)はせかし』
102と下(した)から出(いづ)ればつけ上(あが)り、103大(だい)の男(をとこ)は鼻息(はないき)荒(あら)く仁王(にわう)の如(ごと)き腕(うで)をニウツと前(まへ)に出(だ)し、
104男『男子(だんし)の言葉(ことば)に二言(にごん)は無(な)いぞ、105罷(まか)りならぬと云(い)へば絶対(ぜつたい)に罷(まか)りならぬ。106仮令(たとへ)天地(てんち)は上下(うへした)にかへるとも、107ミロクの世(よ)が来(く)るとも、108いつかな、109いつかな、110吾々(われわれ)が守護(しゆご)する限(かぎ)りは、111一分(いちぶ)一寸(いつすん)たりとも当山(たうざん)に登(のぼ)る事(こと)は許(ゆる)さぬ。112たつて登山(とざん)せむと思(おも)はば此(この)方(はう)の腕(うで)を捻(ね)ぢて登(のぼ)れ、113此(この)方(はう)は天教山(てんけうざん)に坐(ま)し在(ま)す大神(おほかみ)の命(めい)を奉(ほう)じ、114素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)万一(まんいち)此(この)山(やま)に登(のぼ)り来(きた)らば都牟刈(つむがり)の太刀(たち)をもつて斬(き)りはふれ、115との厳(きび)しき御(おん)仰(あふ)せ、116万々一(まんまんいち)其(その)方(はう)を此(この)岩(いは)より一歩(いつぽ)たりとも登(のぼ)すが最後(さいご)、117吾々(われわれ)一族(いちぞく)は天地間(てんちかん)に居(ゐ)る事(こと)は出来(でき)ないのだ。118汝(なんぢ)も元(もと)は葦原(あしはら)の国(くに)の主宰(しゆさい)ならずや、119物(もの)の道理(だうり)も分(わか)つて居(を)らう、120下(さが)れ下(さが)れ、121一(いち)時(じ)も早(はや)く此(この)場(ば)を立(た)ち去(さ)らぬか』
122素盞嗚尊『アヽ是非(ぜひ)に及(およ)ばぬ、123然(しか)らば汝(なんぢ)の勝手(かつて)に邪魔(じやま)ひろげ、124吾(われ)は母(はは)に面会(めんくわい)のため、125たつて登山(とざん)致(いた)す』
126と群(むら)がる人々(ひとびと)の中(なか)を悠然(いうぜん)として登(のぼ)り往(ゆ)かむとしたまふを、127大(だい)の男(をとこ)はぐつと猿臂(えんぴ)を延(の)ばし、
128男『コラコラコラ、129俺(おれ)を誰方(どなた)と思(おも)うて居(ゐ)るか、130実(じつ)の事(こと)を白状(はくじやう)すれば、131バラモン教(けう)の大棟梁(だいとうりやう)、132鬼雲彦(おにくもひこ)のお脇立(わきだち)と聞(きこ)えたる、133鬼掴(おにつかみ)なるぞ』
134と云(い)ひながら尊(みこと)の胸倉(むなぐら)をぐつと取(と)りぬ。135尊(みこと)はエヽ面倒(めんだう)と云(い)ひながら、136片足(かたあし)をあげてポンと蹴(け)り玉(たま)ひし拍子(へうし)に、137鬼掴(おにつかみ)の体(からだ)は四五間(しごけん)ばかり空中(くうちう)滑走(くわつそう)をしながら片辺(かたへ)の林(はやし)の中(なか)に、138ドスンと倒(たふ)れさまに着陸(ちやくりく)し、139頭蓋骨(づがいこつ)を打(う)つてウンウンと唸(うな)り居(ゐ)る。140尊(みこと)は委細(ゐさい)構(かま)はず大手(おほて)を振(ふ)つて急坂(きふはん)をとぼとぼ登(のぼ)りたまへば、141数多(あまた)の家来(けらい)は此(この)勢(いきほひ)に辟易(へきえき)し、142蜘蛛(くも)の子(こ)を散(ち)らすが如(ごと)く四辺(あたり)の森林(しんりん)に姿(すがた)を隠(かく)したりけり。
143 尊(みこと)は猶(なほ)も足(あし)を速(はや)めて急坂(きふはん)を登(のぼ)りたまふ時(とき)しもあれ、144傍(かたはら)の木(き)の茂(しげ)みより、145又(また)ツト頭(かしら)を出(だ)したる滅法界(めつぽふかい)巨大(きよだい)なる大蛇(だいじや)の姿(すがた)路上(ろじやう)に横(よこた)はり、146尊(みこと)の通路(つうろ)を妨(さまた)げて動(うご)かず。
147 尊(みこと)は大蛇(をろち)に遮(さへぎ)られ、148稍(やや)当惑(たうわく)の体(てい)にて暫(しば)し思案(しあん)に暮(く)れたまふ時(とき)、149山上(さんじやう)より嚠喨(りうりやう)たる音楽(おんがく)響(ひび)き来(きた)り、150数多(あまた)の美(うる)はしき神人(しんじん)列(れつ)を正(ただ)し此(この)場(ば)に現(あら)はれ給(たま)ひ、151中(なか)に優(すぐ)れて高尚(かうしやう)優美(いうび)なる一柱(ひとはしら)の女神(めがみ)は、152素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)に向(むか)ひ、
153女神『ヤヨ、154愛(あい)らしき素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)よ、155妾(わらは)は汝(なんぢ)が母(はは)伊邪冊(いざなみの)命(みこと)なるぞ、156汝(なんぢ)が心(こころ)の清(きよ)き事(こと)は高天原(たかあまはら)に日月(じつげつ)の如(ごと)く照(て)り輝(かがや)けり。157さりながら大八洲(おほやしま)国(くに)になり出(い)づる、158数多(あまた)の神人(しんじん)の罪(つみ)汚(けが)れを救(すく)ふは汝(なんぢ)の天賦(てんぷ)の職責(しよくせき)なれば、159千座(ちくら)の置戸(おきど)を負(お)ひて洽(あまね)く世界(せかい)を遍歴(へんれき)し、160所在(あらゆる)艱難(かんなん)辛苦(しんく)を嘗(な)め、161天地(てんち)に蟠(わだか)まる鬼(おに)、162大蛇(をろち)、163悪狐(あくこ)、164醜女(しこめ)、165曲津見(まがつみ)の心(こころ)を清(きよ)め、166善(ぜん)を助(たす)け悪(あく)を和(なご)め、167八岐(やまた)の大蛇(をろち)を十握(とつか)の剣(つるぎ)をもつて切(き)りはふり、168彼(かれ)が所持(しよぢ)せる叢雲(むらくも)の剣(つるぎ)を得(え)て天教山(てんけうざん)に坐(ま)し在(ま)す天照(あまてらす)大神(おほかみ)に奉(たてまつ)るまでは、169唯今(ただいま)限(かぎ)り妾(わらは)は汝(なんぢ)が母(はは)に非(あら)ず、170汝(なんぢ)又(また)妾(わらは)が子(こ)に非(あら)ず、171片時(かたとき)も早(はや)く当山(たうざん)を去(さ)れよ、172再(ふたた)び汝(なんぢ)に会(あ)ふ事(こと)あらむ、173曲津(まがつ)の猛(たけ)び狂(くる)ふ葦原(あしはら)の国(くに)、174随分(ずゐぶん)心(こころ)を配(くば)らせられよ』
175と宣(の)らせ給(たま)ふと見(み)れば、176姿(すがた)は煙(けぶり)と消(き)えて後(あと)には地教山(ちけうざん)の峰(みね)吹(ふ)き渡(わた)る松風(まつかぜ)の音(おと)のみにして、177道(みち)に障碍(さや)りたる大蛇(をろち)の影(かげ)も何時(いつ)しか見(み)えずなりぬ。
178 素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)は止(や)むを得(え)ず此処(ここ)より踵(きびす)をかへし、179急坂(きふはん)を下(くだ)らせたまへば、180以前(いぜん)の男(をとこ)、181鬼掴(おにつかみ)は大地(たいち)に平伏(ひれふ)し尊(みこと)に向(むか)つて帰順(きじゆん)の意(い)を表(へう)し、
182鬼掴『私(わたくし)は実(じつ)を申(まを)せば鬼雲彦(おにくもひこ)の家来(けらい)とは偽(いつは)り、183高天原(たかあまはら)の或(ある)尊(たふと)き神(かみ)様(さま)より内命(ないめい)を受(う)け、184貴神(きしん)の当山(たうざん)に登(のぼ)らせたまふを道(みち)にて遮断(しやだん)せよとの厳命(げんめい)を頂(いただ)きしもの、185嗚呼(あゝ)併(しか)しながら此(この)度(たび)の天(あま)の岩戸(いはと)の変(へん)は貴神(きしん)の罪(つみ)に非(あら)ず、186罪(つみ)は却(かへ)つて天津(あまつ)神(かみ)の方(はう)にあり、187何(いづ)れの神(かみ)も御(ご)心中(しんちう)御(お)察(さつ)し申(まを)上(あ)げ居(ゐ)る方々(かたがた)のみ。188吾(われ)は之(これ)より心(こころ)を改(あらた)め貴神(きしん)の境遇(きやうぐう)に満腔(まんこう)の同情(どうじやう)を表(へう)し奉(たてまつ)り労苦(らうく)を共(とも)にせむと欲(ほつ)す、189何卒(なにとぞ)々々(なにとぞ)世界(せかい)万民(ばんみん)の為(ため)に吾(わ)が願(ねがひ)を許(ゆる)させ給(たま)へ』
190と誠心(せいしん)表(おもて)に現(あら)はれ涙(なみだ)を流(なが)して歎願(たんぐわん)したりける。191尊(みこと)は、
192素盞嗚尊『其(その)方(はう)は頭(かしら)の傷(きず)は如何(いかが)なせしや』
193と尋(たづ)ね玉(たま)ふに、194鬼掴(おにつかみ)は畏(かしこ)みながら、
195鬼掴『ハイ、196お蔭様(かげさま)にて思(おも)はず知(し)らず、197神(かむ)素盞嗚(すさのを)の大神(おほかみ)様(さま)と御(おん)名(な)を称(たた)へまつりし其(その)刹那(せつな)より、198さしも激烈(げきれつ)なる痛(いた)みも忘(わす)れたる如(ごと)くに止(と)まり、199割(わ)れたる頭(あたま)も元(もと)の如(ごと)くに全快(ぜんくわい)致(いた)したり。200瑞霊(みづのみたま)の御(ご)神徳(しんとく)には恐(おそ)れ入(い)り奉(たてまつ)る』
201と両手(りやうて)を合(あは)して涙(なみだ)をホロホロ流(なが)し居(ゐ)る。202素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)は大(おほい)に喜(よろこ)びたまひ、
203素盞嗚尊『吾(わ)れ、204高天原(たかあまはら)を退(やら)はれしより、205時雨(しぐれ)の中(なか)の一人旅(ひとりたび)、206実(じつ)に淋(さび)しい思(おも)ひを致(いた)したるが、207世(よ)の中(なか)は妙(めう)なものかな、208一人(ひとり)の同情者(どうじやうしや)を得(え)たり。209いざ之(これ)より汝(なんぢ)と吾(われ)とは生(うみ)の兄弟(きやうだい)となりて大八洲(おほやしま)の国(くに)に蟠(わだか)まる悪魔(あくま)を滅(ほろぼ)し、210万民(ばんみん)を救(すく)ひ天下(てんか)に吾(われ)等(ら)が至誠(しせい)を現(あら)はさむ、211鬼掴(おにつかみ)来(きた)れ』
212と先(さき)に立(た)ち、213柴笛(しばふえ)を吹(ふ)きながら足(あし)を速(はや)めて何処(いづこ)ともなく天(あま)の数歌(かずうた)を歌(うた)ひつつ、214西南(せいなん)指(さ)して進(すす)みたまふ。
215(大正一一・四・二 旧三・六 加藤明子録)
216(昭和一〇・三・二〇 於彰化神聖会支部 王仁校正)
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