霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】サブスク完了しました。どうもありがとうございます。サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は従来バージョンをお使い下さい

第一五章 (やま)(かみ)〔五八二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第15巻 如意宝珠 寅の巻 篇:第3篇 神山霊水 よみ(新仮名遣い):しんざんれいすい
章:第15章 山の神 よみ(新仮名遣い):やまのかみ 通し章番号:582
口述日: 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年12月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
高国別は岩窟で不思議な女神を追いかけるうち、落とし穴にはまって命を落としてしまう。天国をさまよううちに、宣伝使亀彦、梅彦ら一行と出会い、活津彦根神と呼ばれる。亀彦と梅彦はそれぞれ、神素盞嗚大神の娘である菊子姫、幾代姫と夫婦となっていた。
そして高国別は神素盞嗚大神の長女である愛子姫と契りを結ぶが、木花姫神が現れて、まだ現界に役割が残っているとして生き返る。
目を覚ました高国別は、深い井戸の底に落ち込んでいることに気がついた。そこへ天国で見たとおりに亀彦、梅彦、菊子姫、幾代姫、愛子姫が現れる。
井戸の底から石段を上ってきた高国別は、一同と合流する。夢で見たとおり、愛子姫は高国別を夫として迎え、六人で岩屋の探検に進んで行くことになった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2021-01-16 18:38:24 OBC :rm1515
愛善世界社版:184頁 八幡書店版:第3輯 348頁 修補版: 校定版:183頁 普及版:83頁 初版: ページ備考:
001(この)()(すま)素盞嗚(すさのを)
002(かみ)(みこと)(したが)ひて
003御稜威(みいづ)(たか)高国別(たかくにわけ)
004(くし)岩窟(いはや)(おちい)りし
005老若(らうにやく)男女(なんによ)生命(せいめい)
006一人(ひとり)(のこ)さず(たす)けむと
007地底(ちてい)(ほら)()()みて
008(かみ)(ねがひ)をかけまくも
009雄々(をを)しき姿(すがた)すたすたと
010(こゑ)する(はう)辿(たど)りつつ
011()(あた)りたる(いは)()
012(また)もや両手(りやうて)()みながら
013進退(しんたい)(ここ)(きは)まりて
014(しば)思案(しあん)()()たる。
015 (とき)しもあれや何処(いづこ)よりか、016閃光(せんくわう)(かがや)高国別(たかくにわけ)(まへ)火玉(ひだま)となりて(すす)()るものあり。
017 高国別(たかくにわけ)(つるぎ)(つか)()をかけて、018()らば()らむと身構(みがま)へす。019巨大(きよだい)なる()(たま)は、020高国別(たかくにわけ)四五間(しごけん)(まへ)万雷(ばんらい)(いち)()()つるが(ごと)音響(おんきやう)(とも)落下(らくか)し、021白煙(はくえん)となつて四辺(あたり)(つつ)咫尺(しせき)(べん)ぜざる(もや)(なか)022高国別(たかくにわけ)きつ(はら)()臍下(さいか)丹田(たんでん)(いき)()め、023天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)しければ、024今迄(いままで)咫尺(しせき)(べん)ぜざりし猛煙(まうえん)(ぬぐ)ふがごとく()()せて、025優美(いうび)なる一人(ひとり)女神(めがみ)026莞爾(くわんじ)として佇立(ちよりつ)して()たまふ。
027 高国別(たかくにわけ)は、
028高国別『ヤア(なんぢ)何者(なにもの)なるぞ、029(さつ)する(ところ)(この)岩窟(がんくつ)(わだか)まる金毛(きんまう)九尾(きうび)悪狐(あくこ)眷属(けんぞく)ならむ、030()両刃(もろは)長剣(ちやうけん)()()てむ』
031()ふより(はや)剣光(けんくわう)(ひらめ)(いなづま)早業(はやわざ)032()つてかかれば女神(めがみ)中空(ちうくう)()(あが)り、033飛鳥(ひてう)(ごと)(みぎ)(ひだり)(うへ)(した)(たい)(かは)し、034(つひ)には(また)もや以前(いぜん)火弾(くわだん)(くわ)し、035(うな)りを()てて岩窟(いはや)(うち)()()(ごと)()()りにける。
036 油断(ゆだん)はならじと高国別(たかくにわけ)附近(あたり)キヨロキヨロ見廻(みまは)(をり)しも、037()(たけ)一丈(いちぢやう)五六(ごろく)(しやく)もあらむと(おも)はる大男(おほをとこ)038異様(いやう)(けもの)()きつれながら(この)()(あら)はれ、039高国別(たかくにわけ)一寸(ちよつと)会釈(ゑしやく)したり。040高国別(たかくにわけ)(また)もや魔神(まがみ)襲来(しふらい)ならむと()(くば)身構(みがま)へする。041(だい)(をとこ)大口(おほぐち)()けて高笑(たかわら)ひ、
042『アハヽヽヽヽ、043(なんぢ)高天原(たかあまはら)より(くだ)(きた)れる俄造(にはかづく)りの似非(えせ)審神者(さには)044(わが)正体(しやうたい)見届(みとど)けよ』
045(かがみ)(ごと)()見開(みひら)き、046かつ()めつけたり。047高国別(たかくにわけ)両手(りやうて)()み、048鎮魂(ちんこん)姿勢(しせい)()り、049ウンと一声(ひとこゑ)言霊(ことたま)発射(はつしや)したるに、050(だい)(をとこ)(たちま)(たい)(へん)優美(いうび)なる女神(めがみ)となりぬ。
051 高国別(たかくにわけ)は、
052高国別千変(せんぺん)万化(ばんくわ)悪神(あくがみ)悪戯(いたづら)053(いま)正体(しやうたい)(あら)はして()れむ』
054両刃(もろは)長剣(ちやうけん)(ひらめ)かし、055女神(めがみ)(むか)つて(ほね)(とほ)れとばかり()きかかる。056女神(めがみ)手早(てばや)(たい)をヒラリと(かは)した途端(とたん)057(いきほひ)(あま)つて高国別(たかくにわけ)岩窟(がんくつ)(なか)隧道(すゐだう)を、058トントントン、059七八間(しちはちけん)(ばか)()(すご)し、060(そこ)ひも()れぬ陥穽(おとしあな)真逆(まつさか)さまに転落(てんらく)し、061高国別(たかくにわけ)(その)(まま)(いき)()え、062最早(もはや)(この)()(ひと)にはあらざりけり。
063 高国別(たかくにわけ)唯一人(ただひとり)064(てん)(あを)(やま)(きよ)百花(ひやくくわ)爛漫(らんまん)たる原野(げんや)神言(かみごと)奏上(そうじやう)しながら何処(どこ)(あて)ともなく、065(あし)(うご)くままに()(まか)(すす)()く。
066 前方(ぜんぱう)屹立(きつりつ)する(くも)(ころも)(なかば)(かぶ)りたる高山(かうざん)()えて()た。067高国別(たかくにわけ)(やま)(ひつ)つけらるる(ごと)心地(ここち)して、068(あし)(まか)せて(すす)()く。069パタリと()(あた)つた峻坂(しゆんぱん)070(あふ)()れば鮮花色(せんくわしよく)男女(だんぢよ)(むれ)四五(しご)(にん)071何事(なにごと)面白(おもしろ)可笑(おか)しく(ささや)きながら、072此方(こなた)(むか)つて悠々(いういう)(すす)(きた)る。073高国別(たかくにわけ)両手(りやうて)()んで独言(ひとりごと)
074高国別『アヽ(われ)素盞嗚(すさのをの)(みこと)大神(おほかみ)()(とも)(つか)へまつり、075カナンが一家(いつか)休息(きうそく)(たま)(みこと)(めい)によつて諸人(しよにん)(あと)()ひ、076不思議(ふしぎ)岩窟(いはや)(しの)()りしと(おも)ひきや、077天空(てんくう)快濶(くわいくわつ)一点(いつてん)雲霧(うんむ)風塵(ふうぢん)もなき大原野(だいげんや)(わた)り、078(いま)(また)(この)山口(やまぐち)(きた)るこそ合点(がてん)がゆかぬことである(わい)
079(あと)振返(ふりかへ)四方(しはう)光景(くわうけい)(なが)めて思案(しあん)()れて()る。080()(にん)男女(だんぢよ)此処(ここ)(あら)はれて一斉(いつせい)(うやうや)しく目礼(もくれい)しながら、
081五人貴下(きか)高国別(たかくにわけ)宣伝使(せんでんし)082活津(いくつ)彦根(ひこねの)(かみ)(おは)さずや、083(われ)()(かむ)伊邪諾(いざなぎの)大神(おほかみ)使者(ししや)として貴下(きか)(むか)への(ため)罷越(まかりこし)たり、084イザイザ()案内(あんない)(まを)さむ』
085(さき)()つて(すす)()く。086高国別(たかくにわけ)何心(なにごころ)なく、087いそいそと()(にん)(あと)(したが)急坂(きふはん)(のぼ)()く。088(やうや)(さか)絶頂(ぜつちやう)(たつ)した。089二男(になん)三女(さんぢよ)神人(しんじん)(くち)(そろ)へて、
090五人『これはこれは高国別(たかくにわけ)(さま)091(つか)れで御座(ござ)いませう。092此処(ここ)(うづ)(たうげ)絶頂(ぜつちやう)093()()休息(きうそく)(くだ)さいませ』
094 高国別(たかくにわけ)は、
095高国別『アヽ(おも)ひも()らぬ一人旅(ひとりたび)096(なん)となく(この)(うるは)しき山野(さんや)跋渉(ばつせふ)するにも話相手(はなしあひて)もなく(やや)寂寥(せきれう)(かん)じて()ました。097(しか)るに(この)(さか)(した)より(うるは)しき貴方(あなた)()()(むか)へ、098(いち)(ゑん)合点(がてん)(まゐ)(まを)さず、099(うづ)(たうげ)とは何国(なにくに)(やま)御座(ござ)るか』
100 ()(にん)は、
101五人『ハイ』
102()つたまま、103ニコニコと(わら)つて(こた)へぬ。104(をり)しも()()はれぬ(すず)しき(かぜ)(おもむろ)()(きた)り、105高国別(たかくにわけ)(かほ)()颯々(さつさつ)たる(こゑ)()て、106幅広(はばひろ)木葉(このは)(ひるがへ)しながら()ぎて()く。
107高国別『オー(まる)天国(てんごく)浄土(じやうど)のやうな心持(こころもち)(いた)す、108百鳥(ももどり)(そら)(うた)百花(ひやくくわ)爛漫(らんまん)として()(みだ)れ、109(かぜ)(きよ)(かん)ばしく、110(かす)かに(きこ)ゆる微妙(びめう)音楽(おんがく)111(くも)()てたる葦原(あしはら)(くに)にもかかる(うるは)しき郷土(きやうど)のあるか、112アヽ心持(こころもち)よや』
113芝生(しばふ)(うへ)にどつかと()し、114言葉(ことば)(すず)しく一同(いちどう)(むか)ひ、
115高国別合点(がてん)()かぬ今日(けふ)旅行(りよかう)116貴方(あなた)()(いづ)れの(かみ)()()すか、117名乗(なの)らせたまへ』
118 一人(ひとり)(をとこ)(うやうや)しく、
119(わたくし)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)たりし亀彦(かめひこ)御座(ござ)います。120これなる(をんな)菊子姫(きくこひめ)(まを)し、121(かむ)素盞嗚(すさのを)大神(おほかみ)第六(だいろく)(おん)(むすめ)122(いま)大神(おほかみ)御心(みこころ)により千代(ちよ)(かは)らぬ宿(やど)(つま)123此処(ここ)地底(ちてい)(くに)天国(てんごく)124(うづ)(たうげ)御座(ござ)います』
125高国別『アヽ、126貴方(あなた)(おと)名高(なだか)亀彦(かめひこ)宣伝使(せんでんし)127貴方(あなた)大神(おほかみ)(おん)(むすめ)菊子姫(きくこひめ)(さま)か、128(おも)はぬ(ところ)でお()(かか)りました。129してして(ちち)素盞嗚(すさのを)大神(おほかみ)(いま)何処(いづ)くに(おはしま)すか、130()かま()しう(ぞん)じます』
131 菊子姫(きくこひめ)(なみだ)をはらはらと(はら)ひながら、
132菊子姫(まを)すも(せん)なき(こと)ながら、133(ちち)大神(おほかみ)天地(てんち)諸神人(しよしんじん)のために、134千座(ちくら)置戸(おきど)()はせたまひ(いま)味気(あぢき)なき漂泊(さすらひ)一人旅(ひとりたび)135何処(いづく)(はた)(おは)すらむ、136せめては(その)()消息(せうそく)なりとも()かま()し』
137(なみだ)ぐみ芝生(しばふ)(うへ)()()しにけり。
138 梅彦(うめひこ)は、
139梅彦『これはこれは菊子姫(きくこひめ)殿(どの)140此処(ここ)地底(ちてい)天国(てんごく)御座(ござ)る。141天国(てんごく)(なみだ)禁物(きんもつ)142歓喜(くわんき)(はな)(ひら)くパラダイスで御座(ござ)るぞ。143いや高国別(たかくにわけ)(さま)144吾々(われわれ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)たりし梅彦(うめひこ)(まを)(もの)145これなる(つま)菊子姫(きくこひめ)(あね)幾代姫(いくよひめ)御座(ござ)います。146大神(おほかみ)内命(ないめい)()つて夫婦(ふうふ)(やく)(むす)びました。147(この)()宜敷(よろし)くお(ねが)(いた)します』
148高国別『アヽ左様(さやう)御座(ござ)つたか、149(おも)ひも()らぬ不思議(ふしぎ)対面(たいめん)150(まつた)大神(おほかみ)(さま)のお()(あは)せ、151アヽ有難(ありがた)し。152()くも(うるは)しき山上(さんじやう)にて大神(おほかみ)姫御子(ひめみこ)()()(かか)(こと)望外(ばうぐわい)仕合(しあは)せで御座(ござ)る』
153梅彦貴神(あなた)はペテロの(みやこ)(おい)驍名(げうめい)(かく)れなき(おん)神様(かみさま)154幾度(いくたび)生死(せいし)往来(ゆきき)(あそ)ばされ、155此処(ここ)活津(いくつ)彦根(ひこねの)(かみ)(あら)はれ(たま)ひし天下(てんか)無双(むさう)忠勇(ちうゆう)義烈(ぎれつ)(かみ)(さま)(うけたま)はる。156(あめ)太玉(ふとたまの)(みこと)仲介(なかだち)により、157素盞嗚(すさのを)大神(おほかみ)()(ゆる)しを()第一(だいいち)御子(みこ)たる、158(この)愛子姫(あいこひめ)(さま)貴下(きか)(つま)神定(かむさだ)めさせ(たま)へば、159(いま)より愛子姫(あいこひめ)(さま)(つま)となし、160神国(しんこく)のためにお(つく)(くだ)されば有難(ありがた)(ぞん)じます。161貴方(あなた)にお(わた)(まを)(まで)(われ)()日夜(にちや)気懸(きがか)り、162(これ)にて(わが)願望(ぐわんばう)成就(じやうじゆ)(いた)しました』
163梅彦(うめひこ)(こころ)()()きし様子(やうす)なり。
164愛子姫『これはこれは、165(おと)名高(なだか)高国別(たかくにわけ)(さま)166(をつと)となり(つま)となるも(かみ)(むす)びたまひし身魂(みたま)因縁(いんねん)167千代(ちよ)八千代(やちよ)(わらは)(とも)に、168()(たづさ)へて神業(しんげふ)(つく)させたまへ』
169(かほ)紅葉(もみぢ)()らしつつ(やさ)しき()(ひざ)にあて(かた)(いづ)るは愛子姫(あいこひめ)なり。170高国別(たかくにわけ)は、171(ゆめ)(うつつ)(まぼろし)合点(がてん)()かぬと、172(しば)茫然(ばうぜん)として大空(おほぞら)()(あふ)思案(しあん)()()たり。
173 梅彦(うめひこ)はモドかしがり、
174梅彦高国別(たかくにわけ)(さま)175(なに)()思案(しあん)なさいます、176何事(なにごと)(むす)びの(かみ)(おん)(さだ)め、177(ただち)()承諾(しようだく)なさいませ』
178高国別『アヽ、179有難(ありがた)有難(ありがた)し、180(おも)ひも()らぬ山上(さんじやう)見合(みあ)ひ、181(やま)(かみ)(さま)()仲介(なかだち)182(くさ)(むしろ)(くも)天井(てんじやう)183(かぜ)音楽(おんがく)木々(きぎ)()()()(をど)り、184イヤもう有難(ありがた)承知(しようち)(つかまつ)りました』
185高国別(たかくにわけ)笑顔(ゑがほ)をもつて(むか)へゐる。186これより世俗(せぞく)(つま)(やま)(かみ)()ふのである。187愛子姫(あいこひめ)()(あが)り、188高国別(たかくにわけ)(むか)つて、189南方(なんぱう)諸山(しよざん)(あつ)してそそり()てる高山(たかやま)(ゆび)さし、
190愛子姫(くも)彼方(かなた)黄金(こがね)(やま)(われ)()永久(とこしへ)故郷(ふるさと)191いざいざ()一同(いちどう)(すす)みませう』
192(さき)()つて急坂(きふはん)(みなみ)(くだ)る。193一同(いちどう)一歩(いつぽ)一歩(いつぽ)(ちから)()れながらアブト(しき)(りう)(さか)(くだ)()く。194雲表(うんぺう)屹立(きつりつ)せる彼方(かなた)(とほ)高山(たかやま)山頂(さんちやう)何時(いつ)()にやら(たつ)してゐた。195三夫婦(みふうふ)山頂(さんちやう)衝立(つつた)天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)するや、196(やま)(つつ)みし五色(ごしき)(くも)(とびら)(ひら)きし(ごと)く、197(さつ)左右(さいう)(ひら)けた。198()(とど)かぬ(ばか)りの青野原(あをのはら)199(しろ)き、200(あか)き、201(あを)き、202黄色(きいろ)き、203紫色(むらさきいろ)三重(みへ)五重(いつへ)十重(とへ)二十重(はたへ)(たふ)は、204眼下(がんか)青野(あをの)(はら)部落(ぶらく)(なか)幾百(いくひやく)ともなく屹立(きつりつ)し、205(その)絶景(ぜつけい)(たと)ふるに(もの)なく、206(とほ)()(はな)てば紺碧(こんぺき)(なみ)(たた)へたる大海原(おほうなばら)207(なみ)(しづか)純白(じゆんぱく)真帆(まほ)片帆(かたほ)208右往(うわう)左往(さわう)(はし)()くさま、209画伯(ぐわはく)()()れる一幅(いつぷく)大画帳(だいぐわちやう)(ごと)く、210(とき)(うつ)るも(わす)れて一同(いちどう)絶景(ぜつけい)見守(みまも)つて()た。211(この)(とき)山頂(さんちやう)(うるは)しき(ほこら)(なか)より、212黄金(わうごん)(とびら)(ひら)(あら)はれ()でたる一柱(ひとはしら)女神(めがみ)213二人(ふたり)侍女(じぢよ)(ともな)悠々(いういう)(ろく)(にん)(まへ)(あら)はれて、
214女神(わらは)木花姫(このはなひめ)なり、215(なんぢ)()忠勇(ちうゆう)義烈(ぎれつ)至仁(しじん)至愛(しあい)神人(かみ)なれば、216(なんぢ)永久(とこしへ)()むべき(くに)(この)聖域(せいゐき)なり。217(しか)しながら()現界(げんかい)(おい)(つと)むべき(こと)あれば、218(ふたた)現界(げんかい)()(かへ)されよ。219今後(こんご)(こころ)(ゆる)ませ(たま)ふな。220体主(たいしゆ)霊従(れいじう)魔風(まかぜ)(さそ)はれなば、221(ふたた)此処(ここ)(きた)(こと)(あた)はざるべし、222(いま)より(すみや)かに現界(げんかい)(かへ)(たま)へ』
223優美(いうび)にして荘重(さうちよう)なる言葉(ことば)(のこ)し、224黄金(わうごん)(とびら)()ぢて、225侍女(じぢよ)(とも)(また)もや(ほこら)(うち)姿(すがた)(かく)したまうた。
226 (たちま)四辺(しへん)暗黒(あんこく)となり、227身体(しんたい)寒冷(かんれい)(おぼ)ゆると()()(よみがへ)()れば、228高国別(たかくにわけ)岩窟内(がんくつない)(ふか)井戸(ゐど)(そこ)(たふ)()たるなり。
229高国別『アヽ(ゆめ)であつたか、230(しか)(なが)(われ)活津彦根(いくつひこね)(あふ)せられしは不審(ふしん)(ひと)つ、231吾身(わがみ)守護神(しゆごじん)()らずして(なまじひ)審神(さには)(おこな)ひしため、232大神(おほかみ)()仁慈(じんじ)によつて(をし)へたまひしか、233アヽ有難(ありがた)有難(ありがた)し』
234と、235合掌(がつしやう)(こゑ)(すず)しく天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)したりける。236フト(そら)(あふ)()れば(あな)周囲(まわり)(うるは)しき二男(になん)三女(さんぢよ)(ゆめ)()神人(しんじん)()(あら)はれ、237井底(せいてい)(のぞ)きて何事(なにごと)(ささや)()るあり。238高国別(たかくにわけ)(ゆめ)夢見(ゆめみ)心地(ここち)して、239(また)もや両手(りやうて)()(こころ)(もつ)れを手繰(たぐ)()る。240(やや)ありて高国別(たかくにわけ)井底(せいてい)より(そら)(あふ)ぎながら、
241高国別『もしもし亀彦(かめひこ)(さま)242梅彦(うめひこ)(さま)243その()(さん)(にん)女性(めがみ)(さま)244(わたくし)高国別(たかくにわけ)御座(ござ)います。245(ひと)(いのち)(すく)はむために、246地中(ちちう)岩窟(いはや)(しの)()り、247(あやま)つてかかる古井戸(ふるゐど)(そこ)()ちました。248(なん)とかして(わたくし)をお(すく)(くだ)さいますまいか』
249亀彦『ヤア(うはさ)()(およ)高国別(たかくにわけ)(さま)か、250それは(さぞ)(こま)りでせう、251(なん)とか(ひと)工夫(くふう)をしてお(すく)(まを)さねばなりませぬ。252(しか)(なが)(かか)岩窟(いはや)(なか)にある古井戸(ふるゐど)には階段(かいだん)があるものです。253この亀彦(かめひこ)一度(いちど)フサの(くに)(しこ)岩窟(いはや)古井戸(ふるゐど)()()んだ(とき)254如何(いかが)はせむかと(こころ)(いた)めましたが、255フト(かたはら)()れば階段(かいだん)(きざ)まれてありました。256よくよく調(しら)べなさいませ』
257高国別有難(ありがた)御座(ござ)います、258(すこ)しの()がかりも(あし)がかりも御座(ござ)いませぬ。259恰度(ちやうど)竹筒(たけづつ)(なか)()ちたやうなものです』
260 梅彦(うめひこ)は、
261梅彦『アヽ、262(こま)つたな、263吾々(われわれ)一度(いちど)古井戸(ふるゐど)()ちた経験(けいけん)があるが、264階段(かいだん)がないとは意外(いぐわい)だ、265(なん)とか工夫(くふう)をせねばなりますまい。266亀彦(かめひこ)サン、267貴方(あなた)(まはし)(おび)(はづ)して(くだ)さい、268吾々(われわれ)(おび)(まはし)とを()きます。269これを(つな)いで井底(せいてい)()(くだ)しませう』
270()ひつつ、271くるくると(おび)()き、272(まはし)(はづ)手早(てばや)(つな)いだ。273亀彦(かめひこ)(おな)じく(おび)(まはし)()(はづ)し、274手早(てばや)(つな)(あは)井戸(ゐど)()(おろ)して()た。
275 梅彦(うめひこ)は、
276梅彦『モシモシ、277高国別(たかくにわけ)(さま)278この(おび)にお(つか)まり(くだ)さい』
279高国別『イヤ、280有難(ありがた)う、281折角(せつかく)思召(おぼしめし)ながらどうも(とど)きませぬ。282(くは)ふるに(あや)しき臭気(しうき)(いた)します』
283 梅彦(うめひこ)は、
284梅彦『アヽ、285(なん)()まわし(わる)(こと)だらう。286エヽ仕方(しかた)がない、287(さん)(にん)のお女中(ぢよちう)288貴女(あなた)(がた)(おび)(ほど)いて(くだ)さいませ』
289愛子姫(あいこひめ)『ハイ、290如何(どう)(いた)しませう。291菊子(きくこ)さま、292幾代(いくよ)さま』
293二女(にじよ)『さうですなア、294(わたし)裸体(はだか)になるのは(はづ)かしいワ』
295梅彦(うめひこ)(はづ)かしいの(なん)のと()つてゐる(どころ)か、296人命(じんめい)(かか)はる大事(だいじ)だ。297サアサアコンナ(とき)には(はぢ)(くそ)もあつたものでない、298(おび)をお()きなさい』
299愛子姫(あいこひめ)『それでも(あま)残酷(ざんこく)ですワ』
300亀彦(かめひこ)『これこれ愛子姫(あいこひめ)さま、301(なに)仰有(おつしや)るのだ、302貴女(あなた)こそ残酷(ざんこく)だ。303高国別(たかくにわけ)(さま)危急(ききふ)存亡(そんばう)場合(ばあひ)304サアサア、305キリキリとお()きなさい。306もしもし高国別(たかくにわけ)さま、307()うも仕方(しかた)がありませぬ、308吾々(われわれ)(おび)()(まはし)()き、309(さん)(にん)女神(めがみ)(おび)(つな)(あは)して、310(いま)垂下(すゐか)(いた)しますからね、311少々(せうせう)(くさ)くても()辛抱(しんばう)(くだ)さいませ、312(をんな)(にほ)ひと()ふものは(かへ)つて(ゆか)しいものですよ、313アハヽヽヽ』
314高国別(たかくにわけ)(それ)(ばか)りは御免(ごめん)(かうむ)()い、315ヤア(かみ)(さま)宿(やど)(たま)(あたま)(うへ)で、316ソンナ(もの)をべらべらさして(もら)つては有難(ありがた)迷惑(めいわく)だ。317どうぞ(はや)手繰(たぐ)()げて(くだ)さい』
318亀彦(かめひこ)『エヽ、319無理(むり)(ばか)()(かみ)(さま)だな、320(この)()(およ)んでどうも仕方(しかた)がありませぬワ。321(ちつ)とは(はな)(つま)んで()辛抱(しんばう)なさいませ。322異性(いせい)(にほ)ひは(かへ)つてよいものですよ』
323高国別(たかくにわけ)『アハヽヽヽ、324ヤア(みな)さま、325()心配(しんぱい)をかけました。326()うやら梯子(はしご)(きざ)まれてあるやうに(おも)ひます』
327亀彦(かめひこ)『アハヽヽヽ、328矢張(やつぱ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)洒落(しやれ)上手(じやうず)だなア、329此処迄(ここまで)洒落(しやれ)ると、330洒落(しやれ)徹底(てつてい)して面白(おもしろ)い。331もしもし(さん)(にん)姫御前(ひめごぜん)332()安心(あんしん)なさいませ、333(おび)()くのだけは(ゆる)して()げませう』
334三女(さんぢよ)『ホヽヽヽ、335(たれ)(おび)ども(ほど)きますものか、336(おび)()時間(じかん)にはも(ちつ)(はや)いぢやありませぬか、337ホヽヽヽヽ』
338亀彦(かめひこ)『また貴女(あなた)(がた)洒落(しやれ)るのか、339モシモシ高国別(たかくにわけ)さま、340(はや)くお(あが)りなさらぬか』
341高国別(たかくにわけ)『アヽ矢張(やつぱ)間違(まちが)ひだつた、342(ちつ)とも手係(てがか)りがありませぬワ。343(まこと)()みませぬが(わたくし)一命(いちめい)(たす)けると思召(おぼしめ)し、344どうぞお慈悲(じひ)(さん)(にん)女性(めがみ)(さま)(おび)()いて、345(つな)(あは)して(たす)けて(くだ)さい、346(ねが)ひぢやお(ねが)ひぢや』
347亀彦(かめひこ)『エヽ、348(なん)矢張(やつぱ)虚言(うそ)だつたか、349これは仕方(しかた)がない。350サアサア(さん)(にん)女性(めがみ)(さま)351ちつと時間(じかん)(はや)いが(をつと)()(こと)だ、352女房(にようばう)()かぬと()(こと)があるものか、353(はや)()いたり、354()いたり。355エヽ(なに)356(はづ)かしいと。357(なに)(はづ)かしい、358(みづ)()らさぬ夫婦仲(めをとなか)ぢやないか』
359菊子姫(きくこひめ)『それでも(ねえ)さまに(はづ)かしいワ』
360亀彦(かめひこ)(なに)361(ねえ)さまのお婿(むこ)さまを(たす)けるのだ。362ソンナ遠慮(ゑんりよ)()るものか』
363愛子姫(あいこひめ)『ホヽヽヽヽ、364エヽ仕方(しかた)がありませぬ、365(わたし)率先(そつせん)して模範(もはん)(しめ)しませう』
366(おび)()きかける。367井戸(ゐど)(そこ)より陽気(やうき)(こゑ)で、368鼻歌(はなうた)(うた)ひながら、369トン、370トンと(あが)つて()る。
371高国別(たかくにわけ)『ヤア皆様(みなさま)372種々(いろいろ)()心配(しんぱい)をかけました。373(かげ)梯子段(はしごだん)(にはか)出来(でき)ました。374()(かく)咄嗟(とつさ)場合(ばあひ)急造(きふざう)したものですから、375(じつ)やにこいものです。376アハヽヽヽ』
377(うめ)378(かめ)(なん)だ、379裸体(はだか)になり(そん)をしたワイ』
380高国別(たかくにわけ)人間(にんげん)(うま)赤子(あかご)にならねば(かみ)(さま)()神徳(しんとく)(いただ)けませぬよ、381赤子(あかご)(とき)には裸体(はだか)(うま)れたのだもの、382アハヽヽヽ』
383 高国別(たかくにわけ)拍手(かしはで)()合掌(がつしやう)しながら天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)(はじ)めた。384一同(いちどう)(こゑ)(そろ)へて合唱(がつしやう)する、385(その)声音(せいおん)朗々(らうらう)としてさしもに(ひろ)岩窟(いはや)(ひび)(わた)り、386天地(てんち)開明(かいめい)気分(きぶん)(ただよ)ふ。
387愛子姫(あいこひめ)貴方(あなた)(ちち)(ゆる)せし(わが)(をつと)388活津彦根(いくつひこね)(かみ)(さま)389ようマア無事(ぶじ)()(くだ)さいました』
390高国別(たかくにわけ)『ヤア合点(がてん)()かぬ(こと)もあればあるものだなア、391(まへ)(うづ)(たうげ)でお()にかかつた(やま)(かみ)さまだなア。392ヤア有難(ありがた)有難(ありがた)い、393三夫婦(みふうふ)(そろ)うた瑞霊(みづのみたま)夫婦(ふうふ)()れ、394二三(にさん)(ろく)(にん)()(たづさ)へて(むつ)まじく、395此処(ここ)結婚(けつこん)(しき)()げませうか』
396亀彦(かめひこ)結婚(けつこん)(しき)()げやうと()つた(ところ)が、397(この)(やう)岩窟(いはや)(なか)398()うする(こと)出来(でき)ないぢやありませぬか』
399高国別(たかくにわけ)『イヤ、400御霊(みたま)御霊(みたま)結婚(けつこん)401(こころ)(さかづき)()()はし、402千代(ちよ)八千代(やちよ)末長(すゑなが)く、403(むつ)びて(すす)六人(むたり)(づれ)404(さかえ)(はな)三夫婦(みふうふ)が、405天地人(てんちじん)(そろ)うて岩窟(いはや)探険(たんけん)406()つの御霊(みたま)(ちち)大神(おほかみ)()引合(ひきあは)せ、407アヽ有難(ありがた)有難(ありがた)し、408目出度(めでた)目出度(めでた)し、409一度(いちど)(ひら)梅彦(うめひこ)さま、410万代(よろづよ)(いは)亀彦(かめひこ)さま、411(うれ)しき便(たよ)りを菊子姫(きくこひめ)412幾代(いくよ)(かは)らぬ幾代姫(いくよひめ)413(かみ)(めぐみ)愛子姫(あいこひめ)414(むつ)()うたる三夫婦(みふうふ)が、415身魂(みたま)行末(ゆくすゑ)こそは(たの)しけれ』
416といそいそ神歌(しんか)(うた)ひながら、417(また)もや(おく)(おく)へと(すす)()く。
418大正一一・四・三 旧三・七 加藤明子録)
419(昭和一〇・三・二三 於花蓮港分院 王仁校正)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→