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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第15巻(寅の巻)
序
凡例
総説歌
第1篇 正邪奮戦
第1章 破羅門
第2章 途上の変
第3章 十六花
第4章 神の栄光
第5章 五天狗
第6章 北山川
第7章 釣瓶攻
第8章 ウラナイ教
第9章 薯蕷汁
第10章 神楽舞
第2篇 古事記言霊解
第11章 大蛇退治の段
第3篇 神山霊水
第12章 一人旅
第13章 神女出現
第14章 奇の岩窟
第15章 山の神
第16章 水上の影
第17章 窟の酒宴
第18章 婆々勇
第4篇 神行霊歩
第19章 第一天国
第20章 五十世紀
第21章 帰顕
第22章 和と戦
第23章 八日の月
跋文
余白歌
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霊界物語
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如意宝珠(第13~24巻)
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第15巻(寅の巻)
> 第3篇 神山霊水 > 第16章 水上の影
<<< 山の神
(B)
(N)
窟の酒宴 >>>
第一六章
水上
(
すゐじやう
)
の
影
(
かげ
)
〔五八三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第15巻 如意宝珠 寅の巻
篇:
第3篇 神山霊水
よみ(新仮名遣い):
しんざんれいすい
章:
第16章 水上の影
よみ(新仮名遣い):
すいじょうのかげ
通し章番号:
583
口述日:
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年12月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
亀彦、梅彦ら五人は、神素盞嗚大神のあとを追って西蔵にやってきたところ、女神の導きによって高国別を救うようにと、岩窟にやってきたのだ、と語った。
一行は、岩窟の中で鬼によって苦しめられていた老若男女を救った。さらに奥へ進んで行くと、岩戸の裏側に一人の女が縛められている。女は、愛子姫の従者・浅子姫であった。
浅子姫は、岸子姫・岩子姫らと共に愛子姫らを追って西蔵にやってきたが、ウラナイ教の蠑螈別によって捉えられてしまったのだ、と語った。そして岸子姫・岩子姫の安否を気遣った。
さらに進んで行くと池があり、岸子姫と岩子姫は、池に重りをつけられて投げ込まれ、苦しんでいた。梅彦と亀彦は池に飛び込んで二人を救出した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-01-17 17:35:10
OBC :
rm1516
愛善世界社版:
200頁
八幡書店版:
第3輯 354頁
修補版:
校定版:
199頁
普及版:
91頁
初版:
ページ備考:
001
三男
(
さんなん
)
三女
(
さんぢよ
)
は
神歌
(
しんか
)
を
謡
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
002
潔
(
いさぎよ
)
く
前進
(
ぜんしん
)
する。
003
又
(
また
)
もやトンと
行当
(
ゆきあた
)
つた
岩壁
(
がんぺき
)
、
004
高国別
(
たかくにわけ
)
『ヤア
又
(
また
)
しても
岸壁
(
がんぺき
)
だ、
005
如何
(
いか
)
に
一切
(
いつさい
)
万事
(
ばんじ
)
行詰
(
ゆきつま
)
りの
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だと
云
(
い
)
つても、
006
此処
(
ここ
)
まで
行詰
(
ゆきつま
)
りの
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いて
来
(
き
)
て
居
(
を
)
るのか。
007
吾々
(
われわれ
)
は
誠
(
まこと
)
の
神力
(
しんりき
)
を
以
(
もつ
)
て
此
(
この
)
岩戸
(
いはと
)
を
開
(
ひら
)
き、
008
行詰
(
ゆきつま
)
りの
世
(
よ
)
を
開
(
ひら
)
かねばなるまい。
009
先
(
ま
)
づ
先
(
ま
)
づ
休息
(
きうそく
)
の
上
(
うへ
)
、
010
ゆつくりと
相談
(
さうだん
)
致
(
いた
)
しませう』
011
亀彦
(
かめひこ
)
『
臨時
(
りんじ
)
議会
(
ぎくわい
)
の
開会
(
かいくわい
)
はどうでせう』
012
梅彦
(
うめひこ
)
『アハヽヽヽ、
013
議会
(
ぎくわい
)
と
聞
(
き
)
けば、
014
醜
(
しこ
)
の
岩窟
(
いはや
)
を
連想
(
れんさう
)
せずには
居
(
を
)
られない。
015
歴史
(
れきし
)
は
繰返
(
くりかへ
)
すとかや、
016
一
(
ひと
)
つゆるりと
秘密会
(
ひみつくわい
)
でも
開催
(
かいさい
)
しませう』
017
と
頃合
(
ころあひ
)
の
岩
(
いは
)
の
上
(
うへ
)
に
腰打掛
(
こしうちか
)
けた。
018
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
女性
(
ぢよせい
)
も
同
(
おな
)
じく
腰
(
こし
)
打
(
うち
)
かけ、
019
三女
『アーア、
020
有難
(
ありがた
)
い
有難
(
ありがた
)
い、
021
マア
此処
(
ここ
)
でゆつくりと
休
(
やす
)
まして
戴
(
いただ
)
きませう』
022
高国別
(
たかくにわけ
)
『エー、
023
あなた
方
(
がた
)
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
はどうして
此
(
この
)
岩窟
(
いはや
)
にお
這入
(
はい
)
りになりましたか』
024
亀彦
(
かめひこ
)
『
吾々
(
われわれ
)
は
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
が
地教山
(
ちけうざん
)
を
越
(
こ
)
え
此
(
この
)
西蔵
(
チベツト
)
の
秘密郷
(
ひみつきやう
)
にお
出
(
い
)
で
遊
(
あそ
)
ばしたと
聞
(
き
)
き、
025
取
(
と
)
る
物
(
もの
)
も
取
(
と
)
り
敢
(
あへ
)
ず、
026
お
後
(
あと
)
を
慕
(
した
)
つて
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
る
折
(
をり
)
しも、
027
小
(
ちい
)
さき
雑草
(
ざつさう
)
の
丘
(
をか
)
の
前
(
まへ
)
に
突当
(
つきあた
)
り、
028
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
むる
折
(
をり
)
しもあれ、
029
何処
(
いづく
)
よりともなく
一人
(
ひとり
)
の
女神
(
めがみ
)
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
030
「
此
(
この
)
地底
(
ちてい
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
には、
031
活津
(
いくつ
)
彦根
(
ひこねの
)
命
(
みこと
)
御
(
ご
)
探険
(
たんけん
)
あれば、
032
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
は
急
(
いそ
)
ぎお
跡
(
あと
)
を
慕
(
した
)
へ」との
一言
(
いちごん
)
を
残
(
のこ
)
し、
033
その
儘
(
まま
)
姿
(
すがた
)
は
消
(
き
)
えさせ
給
(
たま
)
うた。
034
傍
(
かたはら
)
を
見
(
み
)
れば
暗
(
くら
)
き
穴
(
あな
)
、
035
ハテ
訝
(
いぶ
)
かしやと
覗
(
のぞ
)
き
居
(
を
)
る
際
(
さい
)
、
036
地盤
(
ぢばん
)
はガタリと
陥落
(
かんらく
)
し、
037
七八間
(
しちはちけん
)
も
地中
(
ちちう
)
に
落込
(
おちこ
)
んだと
思
(
おも
)
へば、
038
此
(
この
)
岩窟
(
がんくつ
)
、
039
……それより
吾々
(
われわれ
)
一同
(
いちどう
)
はこの
岩窟内
(
がんくつない
)
を
神歌
(
しんか
)
を
謡
(
うた
)
ひつつ、
040
探
(
さぐ
)
り
来
(
きた
)
る
折
(
をり
)
しも、
041
道
(
みち
)
に
当
(
あた
)
つた
古井戸
(
ふるゐど
)
、
042
フト
見
(
み
)
れば
何
(
なに
)
か
怪
(
あや
)
しの
物影
(
ものかげ
)
、
043
合点
(
がてん
)
行
(
ゆ
)
かぬと
思
(
おも
)
ふ
折
(
をり
)
、
044
井戸
(
ゐど
)
の
底
(
そこ
)
より
貴下
(
きか
)
の
声
(
こゑ
)
、
045
……と
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
な
来歴
(
らいれき
)
で
御座
(
ござ
)
いましたよ』
046
高国別
(
たかくにわけ
)
『アヽそれは
結構
(
けつこう
)
でございました。
047
実
(
じつ
)
は
吾々
(
われわれ
)
が
彼
(
か
)
の
井戸
(
ゐど
)
に
陥
(
おちい
)
りし
刹那
(
せつな
)
、
048
失心
(
しつしん
)
致
(
いた
)
したと
見
(
み
)
え、
049
広大
(
くわうだい
)
なる
原野
(
げんや
)
を
通過
(
つうくわ
)
し、
050
高山
(
たかやま
)
の
頂
(
いただ
)
きに
登
(
のぼ
)
りつめ、
051
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
男女
(
だんぢよ
)
に
巡
(
めぐ
)
り
会
(
あ
)
ひしと
思
(
おも
)
へば、
052
ハツト
気
(
き
)
が
付
(
つ
)
き、
053
空
(
そら
)
を
仰
(
あふ
)
ぐ
途端
(
とたん
)
に、
054
貴下
(
きか
)
ら
一行
(
いつかう
)
のお
姿
(
すがた
)
………イヤもう
実
(
じつ
)
に
不思議
(
ふしぎ
)
千万
(
せんばん
)
な
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
います』
055
梅彦
(
うめひこ
)
『
吾々
(
われわれ
)
は
昨夜
(
さくや
)
の
夢
(
ゆめ
)
に、
056
貴下
(
きか
)
にお
目
(
め
)
にかかりましたが、
057
本日
(
ほんじつ
)
只今
(
ただいま
)
この
岩窟内
(
がんくつない
)
に
斯
(
こ
)
うして
休息
(
きうそく
)
して
居
(
を
)
る
有様
(
ありさま
)
が、
058
ありありと
目
(
め
)
に
附
(
つ
)
きました。
059
実
(
じつ
)
に
現幽
(
げんいう
)
一致
(
いつち
)
、
060
此
(
この
)
世
(
よ
)
と
云
(
い
)
ふ
所
(
ところ
)
は
不思議
(
ふしぎ
)
な
所
(
ところ
)
ですな』
061
俄
(
にはか
)
に
何処
(
どこ
)
ともなく、
062
阿鼻
(
あび
)
叫喚
(
けうくわん
)
の
声
(
こゑ
)
、
063
響
(
ひび
)
きわたる。
064
高国別
(
たかくにわけ
)
はツト
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り、
065
高国別
『ヤア
皆
(
みな
)
さま、
066
何
(
なに
)
か
此
(
この
)
岩窟内
(
がんくつない
)
には
変事
(
へんじ
)
が
起
(
おこ
)
つて
居
(
ゐ
)
ますよ。
067
サアサア
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く
探険
(
たんけん
)
と
出
(
で
)
かけませうかい』
068
と
云
(
い
)
ひつつ、
069
岩壁
(
がんぺき
)
を
力
(
ちから
)
に
任
(
まか
)
せてグツと
押
(
お
)
した。
070
岩
(
いは
)
の
戸
(
と
)
はパツと
開
(
ひら
)
いた。
071
見
(
み
)
れば
数十
(
すうじふ
)
人
(
にん
)
の
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
、
072
何
(
いづ
)
れも
高手
(
たかて
)
小手
(
こて
)
に
縛
(
いま
)
しめられ、
073
中央
(
ちうあう
)
に
朱
(
しゆ
)
の
如
(
ごと
)
き
赤
(
あか
)
き
面
(
つら
)
した
鬼神
(
きしん
)
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
、
074
鉄棒
(
てつぼう
)
を
提
(
ひつさ
)
げ、
075
足
(
あし
)
の
先
(
さき
)
にてポンポンと
男女
(
だんぢよ
)
を
蹴
(
け
)
り
苦
(
くる
)
しめて
居
(
を
)
る。
076
高国別
(
たかくにわけ
)
『ヤア
各
(
おのおの
)
方
(
がた
)
、
077
此処
(
ここ
)
は
冥土
(
めいど
)
の
地獄
(
ぢごく
)
の
様
(
やう
)
だ。
078
ヤア
何
(
いづ
)
れも
方
(
がた
)
、
079
飛込
(
とびこ
)
んで
救
(
すく
)
うてやりませう』
080
と
身
(
み
)
を
躍
(
をど
)
らして
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つた。
081
五
(
ご
)
人
(
にん
)
はあとに
引
(
ひ
)
つ
添
(
そ
)
ひ、
082
声
(
こゑ
)
を
揃
(
そろ
)
へて
言霊
(
ことたま
)
を
奏上
(
そうじやう
)
する。
083
鬼
(
おに
)
の
姿
(
すがた
)
は
追々
(
おひおひ
)
に
影
(
かげ
)
うすく、
084
遂
(
つひ
)
には
煙
(
けぶり
)
の
如
(
ごと
)
くなつて
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せたり。
085
数多
(
あまた
)
の
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
れば、
086
高手
(
たかて
)
小手
(
こて
)
に
縛
(
いまし
)
められ
居
(
ゐ
)
たりと
見
(
み
)
えしは、
087
幻
(
まぼろし
)
なりしか、
088
各自
(
てんで
)
に
双手
(
もろて
)
を
合
(
あは
)
せ、
089
岩窟
(
いはや
)
の
前
(
まへ
)
に
端坐
(
たんざ
)
して、
090
一同
(
いちどう
)
『
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
、
091
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
地上
(
ちじやう
)
に
現
(
あら
)
はれ
給
(
たま
)
ひて、
092
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
を
救
(
すく
)
ひ
給
(
たま
)
へ』
093
と
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
、
094
側目
(
わきめ
)
もふらず
拝
(
をが
)
んで
居
(
を
)
るのであつた。
095
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
るより、
096
一同
(
いちどう
)
の
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
は、
097
此方
(
こなた
)
に
向
(
む
)
き
直
(
なほ
)
り、
098
合掌
(
がつしやう
)
し
乍
(
なが
)
ら、
099
一同
『ヤア
有難
(
ありがた
)
し
有難
(
ありがた
)
し、
100
勿体
(
もつたい
)
なし、
101
あなた
様
(
さま
)
は
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
ご
)
眷属
(
けんぞく
)
様
(
さま
)
ならむ』
102
と
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
に
咽
(
むせ
)
ぶ。
103
高国別
(
たかくにわけ
)
『ヤア
最前
(
さいぜん
)
より
様子
(
やうす
)
を
聞
(
き
)
けば、
104
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
一同
(
いちどう
)
の
者
(
もの
)
、
105
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
ご
)
出現
(
しゆつげん
)
を
祈
(
いの
)
り
居
(
を
)
る
有様
(
ありさま
)
、
106
汝
(
なんぢ
)
の
至誠
(
しせい
)
は
天
(
てん
)
に
通
(
つう
)
じ、
107
只今
(
ただいま
)
カナンの
家
(
うち
)
に
尊
(
みこと
)
は
御
(
ご
)
逗留
(
とうりう
)
遊
(
あそ
)
ばすぞ。
108
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
岩窟
(
がんくつ
)
を
立出
(
たちい
)
で、
109
仁慈
(
じんじ
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
尊顔
(
そんがん
)
を
拝
(
はい
)
せよ』
110
と
宣示
(
せんじ
)
したれば、
111
一同
(
いちどう
)
は
此
(
この
)
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
いて
大
(
おほい
)
に
喜
(
よろこ
)
び、
112
一同
『ヤア
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
ご
)
再臨
(
さいりん
)
、
113
有難
(
ありがた
)
し
辱
(
かたじけ
)
なし』
114
と
嬉
(
うれ
)
し
腰
(
ごし
)
を
脱
(
ぬ
)
かし、
115
のたくり
廻
(
まは
)
り、
116
歓
(
ゑら
)
ぎ
喜
(
よろこ
)
ぶ。
117
高国別
(
たかくにわけ
)
は
一同
(
いちどう
)
に
向
(
むか
)
ひ、
118
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
称
(
とな
)
ふれば、
119
今迄
(
いままで
)
痩衰
(
やせおとろ
)
へたる
数十
(
すうじふ
)
人
(
にん
)
の
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
は、
120
俄
(
にはか
)
に
肉付
(
にくづ
)
き、
121
顔色
(
がんしよく
)
麗
(
うるは
)
しく、
122
元気
(
げんき
)
恢復
(
くわいふく
)
し、
123
忽
(
たちま
)
ちムクムクと
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り、
124
手
(
て
)
を
拍
(
う
)
つて、
125
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
踊
(
をど
)
り
狂
(
くる
)
ひ、
126
大神
(
おほかみ
)
の
再臨
(
さいりん
)
を
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
感謝
(
かんしや
)
する。
127
而
(
しかし
)
て
一同
(
いちどう
)
はイソイソとして、
128
大麻
(
おほぬさ
)
を
持
(
も
)
てる
男
(
をとこ
)
を
先頭
(
せんとう
)
にゾロゾロと
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
129
後
(
あと
)
見送
(
みおく
)
つて
高国別
(
たかくにわけ
)
は、
130
高国別
『アヽ
可愛
(
かあい
)
らしい
者
(
もの
)
だ。
131
これ
丈
(
だけ
)
の
善男
(
ぜんなん
)
善女
(
ぜんによ
)
が
心
(
こころ
)
を
一
(
ひと
)
つにして、
132
信仰
(
しんかう
)
を
励
(
はげ
)
むのを
見
(
み
)
れば、
133
何
(
なん
)
とも
彼
(
か
)
とも
知
(
し
)
れぬ
良
(
い
)
い
心持
(
こころも
)
ちがする。
134
尊
(
みこと
)
に
於
(
お
)
かせられても、
135
嘸
(
さぞ
)
御
(
ご
)
満足
(
まんぞく
)
に
思召
(
おぼしめ
)
すであらう。
136
嗚呼
(
ああ
)
、
137
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
138
高国別
(
たかくにわけ
)
一行
(
いつかう
)
は、
139
奥
(
おく
)
へ
奥
(
おく
)
へと
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
140
日
(
ひ
)
は
西山
(
せいざん
)
に
没
(
ぼつ
)
せしと
見
(
み
)
え、
141
岩窟
(
がんくつ
)
の
中
(
なか
)
は
俄
(
にはか
)
に
暗
(
くら
)
くなつて
来
(
き
)
た。
142
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
は
探
(
さぐ
)
り
探
(
さぐ
)
り
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
くにぞ、
143
傍
(
かたはら
)
に
怪
(
あや
)
しき
呻声
(
うめきごゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えゐる。
144
耳
(
みみ
)
ざとくも、
145
愛子姫
(
あいこひめ
)
は
其
(
その
)
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
き、
146
愛子姫
『もしもし
皆
(
みな
)
さま、
147
何
(
なん
)
だか
怪
(
あや
)
しき
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えるではありませぬか』
148
亀彦
(
かめひこ
)
『ヤアそれは、
149
あなたの
神経
(
しんけい
)
でせう。
150
岩窟
(
がんくつ
)
の
中
(
なか
)
は
音響
(
おんきやう
)
のこもるものですから、
151
大方
(
おほかた
)
最前
(
さいぜん
)
の
祝詞
(
のりと
)
の
声
(
こゑ
)
が
内耳
(
ないじ
)
深
(
ふか
)
く
潜伏
(
せんぷく
)
し、
152
反響
(
はんきやう
)
運動
(
うんどう
)
を
開始
(
かいし
)
して
居
(
を
)
るのでせう』
153
愛子姫
(
あいこひめ
)
『イエイエ
祝詞
(
のりと
)
の
声
(
こゑ
)
ではありませぬ、
154
苦悶
(
くもん
)
を
訴
(
うつた
)
ふる、
155
しかも
女
(
をんな
)
の
声
(
こゑ
)
、
156
悪神
(
あくがみ
)
の
巣窟
(
そうくつ
)
たる
此
(
この
)
岩窟
(
いはや
)
、
157
如何
(
いか
)
なる
惨事
(
さんじ
)
の
行
(
おこな
)
はれ
居
(
を
)
るやも
図
(
はか
)
られませぬ。
158
皆
(
みな
)
さま
一同
(
いちどう
)
に
立止
(
たちど
)
まり、
159
耳
(
みみ
)
を
澄
(
す
)
ませて
聞
(
き
)
いて
下
(
くだ
)
さい。
160
世界
(
せかい
)
を
救
(
すく
)
ふ
神
(
かみ
)
の
使
(
つかひ
)
の
吾々
(
われわれ
)
、
161
苦悶
(
くもん
)
の
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
き
逃
(
のが
)
し、
162
ムザムザと
通過
(
つうくわ
)
も
出来
(
でき
)
かねます』
163
亀彦
(
かめひこ
)
『ヤア
如何
(
いか
)
にも
苦
(
くる
)
しさうな
声
(
こゑ
)
だ。
164
もしもし
高国別
(
たかくにわけ
)
様
(
さま
)
、
165
暗
(
くら
)
さは
暗
(
くら
)
し、
166
余
(
あま
)
り
軽々
(
かるがる
)
しく
進
(
すす
)
むよりも、
167
一
(
ひと
)
つ
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
を
探
(
さぐ
)
り
当
(
あ
)
てませうか』
168
高国別
(
たかくにわけ
)
『ホンに
如何
(
いか
)
にも
妙
(
めう
)
な
声
(
こゑ
)
が
致
(
いた
)
しますな』
169
と
言
(
い
)
ひつつ、
170
傍
(
かたはら
)
の
岩壁
(
がんぺき
)
をグツと
押
(
お
)
した
途端
(
とたん
)
に、
171
不思議
(
ふしぎ
)
や、
172
岩
(
いは
)
の
戸
(
と
)
は
案外
(
あんぐわい
)
に
軽
(
かる
)
くパツと
開
(
ひら
)
いた。
173
能
(
よ
)
く
能
(
よ
)
く
見
(
み
)
れば、
174
白
(
しろ
)
き
影
(
かげ
)
、
175
岩窟内
(
がんくつない
)
に
横
(
よこ
)
たはり
苦
(
くる
)
しさうに
唸
(
うな
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
176
亀彦
(
かめひこ
)
『ヤア
怪
(
あや
)
しいぞ
怪
(
あや
)
しいぞ、
177
此
(
この
)
暗
(
くら
)
がりに、
178
何
(
なん
)
だか
削
(
けづ
)
りたての
材木
(
ざいもく
)
の
様
(
やう
)
な
者
(
もの
)
が
唸
(
うな
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
179
これは
大方
(
おほかた
)
、
180
白蛇
(
はくじや
)
であらう』
181
梅彦
(
うめひこ
)
『
白蛇
(
はくじや
)
にしては、
182
太
(
ふと
)
さの
割
(
わり
)
に
余
(
あま
)
りに
丈
(
たけ
)
が
短
(
みじか
)
いではありませぬか』
183
亀彦
(
かめひこ
)
『
白蛇
(
はくじや
)
の
奴
(
やつ
)
、
184
どつかで
半身
(
はんしん
)
切
(
き
)
られて
来
(
き
)
て、
185
九死
(
きうし
)
一生
(
いつしやう
)
苦悶
(
くもん
)
の
態
(
てい
)
と
云
(
い
)
ふ
場面
(
ばめん
)
だらう。
186
……オイオイ
白蛇
(
はくじや
)
の
先生
(
せんせい
)
、
187
どうしたどうした』
188
白
(
しろ
)
き
影
(
かげ
)
『アーア
恨
(
うら
)
めしやなア、
189
妾
(
わらは
)
は
姫君
(
ひめぎみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
後
(
あと
)
を
慕
(
した
)
ひ、
190
此処
(
ここ
)
まで
来
(
く
)
るは
来
(
き
)
たものの、
191
ウラナイ
教
(
けう
)
の
曲津
(
まがつ
)
神
(
かみ
)
、
192
蠑螈別
(
いもりわけ
)
が
計略
(
けいりやく
)
にかかり、
193
手足
(
てあし
)
を
縛
(
しば
)
られ、
194
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
へ
押込
(
おしこ
)
まれ、
195
逃
(
のが
)
れ
出
(
い
)
づる
方策
(
てだて
)
もなし、
196
アヽ
何
(
なん
)
とせう、
197
恨
(
うら
)
めしやなア』
198
亀彦
(
かめひこ
)
『ヨウ
大蛇
(
をろち
)
だと
思
(
おも
)
へば、
199
何
(
なん
)
だか
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
をほざいて
居
(
ゐ
)
るワ。
200
もしもし
高国別
(
たかくにわけ
)
様
(
さま
)
、
201
一寸
(
ちよつと
)
調
(
しら
)
べて
下
(
くだ
)
さいな』
202
高国別
『イヤあなた
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
乍
(
なが
)
ら
一寸
(
ちよつと
)
探
(
さぐ
)
つて
見
(
み
)
て
下
(
くだ
)
さい、
203
どうやら
人間
(
にんげん
)
らしう
御座
(
ござ
)
いますよ』
204
亀彦
(
かめひこ
)
『
滅相
(
めつさう
)
な、
205
あた
嫌
(
いや
)
らしい、
206
此
(
この
)
暗
(
くら
)
がりに、
207
コンナ
白
(
しろ
)
い
者
(
もの
)
が、
208
どうしてなぶられませうか……オイ
梅
(
うめ
)
サン、
209
お
前
(
まへ
)
は
平素
(
へいそ
)
より
大胆
(
だいたん
)
な
男
(
をとこ
)
だ。
210
一
(
ひと
)
つ
此処
(
ここ
)
らで
侠気
(
をとこぎ
)
を
出
(
だ
)
して、
211
幾代姫
(
いくよひめ
)
様
(
さま
)
に
英雄振
(
えいゆうぶり
)
をお
目
(
め
)
にかけたらどうだ』
212
梅彦
(
うめひこ
)
『イヤ
吾々
(
われわれ
)
も
吾々
(
われわれ
)
だが、
213
亀彦
(
かめひこ
)
サンも
亀彦
(
かめひこ
)
サンだ。
214
菊子姫
(
きくこひめ
)
様
(
さま
)
に
英雄振
(
えいゆうぶり
)
をお
見
(
み
)
せになつたらどうでせう、
215
余
(
あま
)
り
厚
(
あつ
)
かましう
致
(
いた
)
すのも
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
で
御座
(
ござ
)
る。
216
あなたには
先取権
(
せんしゆけん
)
が
御座
(
ござ
)
る、
217
どうぞ
御
(
ご
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
なく、
218
とつくりと、
219
頭
(
あたま
)
から
足
(
あし
)
の
先
(
さき
)
までお
調
(
しら
)
べなさいませ。
220
菊子姫
(
きくこひめ
)
様
(
さま
)
の
手前
(
てまへ
)
も
御座
(
ござ
)
いまするぞ』
221
亀彦
(
かめひこ
)
『アーア、
222
偉
(
えら
)
い
所
(
ところ
)
へ
尻平
(
しつぺい
)
を
持
(
も
)
つて
来
(
こ
)
られたものだ。
223
ナニ、
224
材木
(
ざいもく
)
が
動
(
うご
)
いて
居
(
を
)
るのだと
思
(
おも
)
へば
良
(
い
)
い、
225
……コラコラ
材木
(
ざいもく
)
、
226
その
方
(
はう
)
は
何者
(
なにもの
)
だ』
227
白
(
しろ
)
き
影
(
かげ
)
『アヽ
恨
(
うら
)
めしや』
228
亀彦
(
かめひこ
)
『ナヽ
何
(
なん
)
だ、
229
ウラナイ
教
(
けう
)
か、
230
幽霊
(
いうれい
)
か、
231
何
(
なん
)
だか
知
(
し
)
らぬが、
232
材木
(
ざいもく
)
の
幽霊
(
いうれい
)
は
昔
(
むかし
)
から
聞
(
き
)
いた
事
(
こと
)
はないワイ。
233
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
が
御
(
ご
)
退隠
(
たいいん
)
遊
(
あそ
)
ばしてより、
234
山川
(
さんせん
)
草木
(
さうもく
)
に
至
(
いた
)
る
迄
(
まで
)
、
235
言問
(
ことと
)
うと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だが、
236
やつぱりこの
材木
(
ざいもく
)
も
其
(
その
)
選
(
せん
)
に
漏
(
も
)
れないと
見
(
み
)
えて、
237
何
(
なん
)
だか
言問
(
ことと
)
ひをやつてゐる、
238
……コラ
材木
(
ざいもく
)
、
239
起
(
お
)
きぬか
起
(
お
)
きぬか』
240
梅彦
(
うめひこ
)
は、
241
白
(
しろ
)
き
影
(
かげ
)
を
目当
(
めあて
)
に、
242
スウツと
撫
(
な
)
でまわし、
243
梅彦
(
うめひこ
)
『ヤアこれは
人間
(
にんげん
)
だ、
244
しかも
肌
(
はだ
)
の
柔
(
やはら
)
かき
美人
(
びじん
)
と
見
(
み
)
える、
245
高手
(
たかて
)
小手
(
こて
)
に
縛
(
いまし
)
められて
居
(
を
)
る。
246
おほかた
悪神
(
わるがみ
)
の
奴
(
やつ
)
に
虐
(
しへた
)
[
*
ママ
]
げられて、
247
此
(
この
)
岩窟
(
いはや
)
に
幽閉
(
いうへい
)
されたのであらう』
248
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
249
スラスラと
縛
(
いましめ
)
を
解
(
と
)
いた。
250
白
(
しろ
)
き
影
(
かげ
)
はスツクと
立
(
た
)
ちあがり、
251
懐剣
(
くわいけん
)
逆手
(
さかて
)
に
持
(
も
)
つより
早
(
はや
)
く、
252
白き影
『ヤア、
253
ウラナイ
教
(
けう
)
の
悪神
(
あくがみ
)
、
254
蠑螈別
(
いもりわけ
)
の
手下
(
てした
)
の
者共
(
ものども
)
、
255
モウ
斯
(
こ
)
うなる
上
(
うへ
)
は、
256
妾
(
わらは
)
が
死物狂
(
しにものぐる
)
ひ
覚悟
(
かくご
)
を
致
(
いた
)
せ』
257
と
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
のほのかな
影
(
かげ
)
を
目当
(
めあて
)
に
短刀
(
たんたう
)
をピカつかせ
乍
(
なが
)
ら、
258
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
暴
(
あば
)
れ
狂
(
くる
)
ふ。
259
亀彦
(
かめひこ
)
『ヤア
待
(
ま
)
つた
待
(
ま
)
つた、
260
吾々
(
われわれ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だよ』
261
白き影
『ナニツ、
262
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
とは、
263
まつかな
偽
(
いつは
)
り、
264
浅子姫
(
あさこひめ
)
が
死物狂
(
しにものぐる
)
ひの
車輪
(
しやりん
)
の
働
(
はたら
)
き、
265
思
(
おも
)
ひ
知
(
し
)
れよ』
266
と
飛鳥
(
ひてう
)
の
如
(
ごと
)
くに
飛
(
と
)
び
廻
(
まは
)
る。
267
高国別
(
たかくにわけ
)
『ヤア
汝
(
なんぢ
)
浅子姫
(
あさこひめ
)
とは、
268
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
に
現
(
あら
)
はれたる
愛子姫
(
あいこひめ
)
の
腰元
(
こしもと
)
ならずや。
269
吾
(
われ
)
は
愛子姫
(
あいこひめ
)
の
夫
(
をつと
)
高国別
(
たかくにわけ
)
なるぞ』
270
浅子姫
(
あさこひめ
)
『
執念深
(
しふねんぶか
)
き
悪魔
(
あくま
)
の
計略
(
けいりやく
)
、
271
其
(
その
)
手
(
て
)
に
乗
(
の
)
つて
堪
(
たま
)
らうか、
272
浅子姫
(
あさこひめ
)
が
手練
(
しゆれん
)
の
早業
(
はやわざ
)
、
273
思
(
おも
)
ひ
知
(
し
)
れよ』
274
と
又
(
また
)
もや
短刀
(
たんたう
)
を
暗
(
やみ
)
に
閃
(
ひらめ
)
かし
暴狂
(
あれくる
)
ふ。
275
愛子姫
(
あいこひめ
)
は、
276
愛子姫
『そなたは
浅子姫
(
あさこひめ
)
に
非
(
あら
)
ずや、
277
先
(
ま
)
づ
先
(
ま
)
づ
静
(
しづ
)
まりなさい、
278
愛子姫
(
あいこひめ
)
に
間違
(
まちがひ
)
御座
(
ござ
)
らぬ』
279
浅子姫
(
あさこひめ
)
『ヤアさう
仰有
(
おつしや
)
るお
声
(
こゑ
)
は、
280
正
(
まさ
)
しく
愛子姫
(
あいこひめ
)
様
(
さま
)
』
281
愛子姫
(
あいこひめ
)
『そなたは
擬
(
まが
)
ふ
方
(
かた
)
なき
浅子姫
(
あさこひめ
)
の
声
(
こゑ
)
、
282
夜目
(
よめ
)
にもそれと
知
(
し
)
らるる
其
(
その
)
方
(
はう
)
の
姿
(
すがた
)
、
283
嬉
(
うれ
)
しや
嬉
(
うれ
)
しや、
284
思
(
おも
)
はぬ
所
(
ところ
)
で
会
(
あ
)
ひました』
285
浅子姫
(
あさこひめ
)
は
稍
(
やや
)
落着
(
おちつ
)
きたる
声
(
こゑ
)
にてハアハアと
息
(
いき
)
をはづませ
乍
(
なが
)
ら、
286
浅子姫
『そ、
287
そ、
288
そう
仰有
(
おつしや
)
るあなたは
擬
(
まが
)
ふ
方
(
かた
)
なき
愛子姫
(
あいこひめ
)
様
(
さま
)
、
289
お
懐
(
なつか
)
しう
御座
(
ござ
)
います』
290
とワツと
許
(
ばか
)
りに
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
泣
(
な
)
き
伏
(
ふ
)
しぬ。
291
此
(
この
)
時
(
とき
)
何処
(
いづく
)
よりともなく、
292
一道
(
いちだう
)
の
光明
(
くわうみやう
)
サツと
輝
(
かがや
)
き
渡
(
わた
)
り、
293
一同
(
いちどう
)
の
顔
(
かほ
)
は
昼
(
ひる
)
の
如
(
ごと
)
く
明
(
あきら
)
かになり
来
(
き
)
たりぬ。
294
浅子姫
(
あさこひめ
)
『これはこれは
何
(
いづ
)
れも
様
(
さま
)
、
295
不思議
(
ふしぎ
)
な
所
(
ところ
)
でお
目
(
め
)
にかかりました、
296
能
(
よ
)
うマア
危
(
あやふ
)
き
所
(
ところ
)
をお
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さいました。
297
是
(
こ
)
れと
云
(
い
)
ふも、
298
全
(
まつた
)
く
木花姫
(
このはなひめ
)
の
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
の
厚
(
あつ
)
き
所
(
ところ
)
』
299
と
合掌
(
がつしやう
)
し、
300
後
(
あと
)
は
一言
(
ひとこと
)
も
得
(
え
)
言
(
い
)
はず、
301
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
に
掻
(
か
)
き
曇
(
くも
)
るのみ。
302
勇
(
いさ
)
みを
附
(
つ
)
けんと
高国別
(
たかくにわけ
)
は、
303
浅子姫
(
あさこひめ
)
の
背中
(
せなか
)
を、
304
平手
(
ひらて
)
に
三
(
み
)
つ
四
(
よ
)
つ
打
(
う
)
ち
乍
(
なが
)
ら、
305
高国別
『
浅子姫
(
あさこひめ
)
殿
(
どの
)
、
306
しつかりなさいませ。
307
是
(
これ
)
には
深
(
ふか
)
き
様子
(
やうす
)
有
(
あ
)
らむ。
308
吾々
(
われわれ
)
も
此
(
この
)
先
(
さき
)
に
於
(
おい
)
て、
309
大
(
おほい
)
に
覚悟
(
かくご
)
せなくてはなりませぬ。
310
あなたを
斯
(
か
)
くの
如
(
ごと
)
く
岩窟
(
いはや
)
に
押込
(
おしこ
)
めし
以上
(
いじやう
)
は、
311
当
(
たう
)
岩窟
(
いはや
)
には
数多
(
あまた
)
の
悪神
(
わるがみ
)
の
巣窟
(
そうくつ
)
あらむ、
312
此処
(
ここ
)
に
立到
(
たちいた
)
られし
仔細
(
しさい
)
を
詳
(
つぶ
)
さに
物語
(
ものがた
)
られよ』
313
と
声
(
こゑ
)
を
励
(
はげ
)
まして
問
(
と
)
ひかくれば、
314
浅子姫
(
あさこひめ
)
はハツと
心
(
こころ
)
を
取直
(
とりなほ
)
し、
315
浅子姫
『
是
(
こ
)
れには
深
(
ふか
)
き
仔細
(
しさい
)
が
御座
(
ござ
)
いまする、
316
一先
(
ひとま
)
づ
妾
(
わらは
)
が
物語
(
ものがたり
)
お
聞
(
き
)
き
下
(
くだ
)
さいませ。
317
天
(
あめ
)
の
太玉
(
ふとたまの
)
命
(
みこと
)
、
318
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
に
現
(
あら
)
はれ
給
(
たま
)
ひ、
319
バラモン
教
(
けう
)
の
大棟梁
(
だいとうりやう
)
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
を
神退
(
かむやら
)
ひにやらひ
給
(
たま
)
ひ、
320
妾
(
わらは
)
は
愛子姫
(
あいこひめ
)
様
(
さま
)
と
共
(
とも
)
に、
321
顕恩城
(
けんおんじやう
)
を
守護
(
しゆご
)
しまつる
折
(
をり
)
しも、
322
天照
(
あまてらす
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
323
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
に
隠
(
かく
)
れ
給
(
たま
)
ひしより、
324
太玉
(
ふとたまの
)
命
(
みこと
)
は
急遽
(
きふきよ
)
、
325
天教山
(
てんけうざん
)
に
登
(
のぼ
)
らせ
給
(
たま
)
ひ、
326
その
不在中
(
ふざいちう
)
、
327
愛子姫
(
あいこひめ
)
様
(
さま
)
と
妾
(
わらは
)
は
城内
(
じやうない
)
を
守
(
まも
)
る
折
(
をり
)
しも
咫尺
(
しせき
)
暗澹
(
あんたん
)
として
昼夜
(
ちうや
)
を
弁
(
べん
)
ぜず、
328
荒振
(
あらぶる
)
神
(
かみ
)
は
五月蝿
(
さばへ
)
の
如
(
ごと
)
く
群
(
むら
)
がり
起
(
おこ
)
り、
329
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
は
又
(
また
)
もや
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
りて、
330
暗
(
やみ
)
に
紛
(
まぎ
)
れて
暴威
(
ばうゐ
)
を
逞
(
たくま
)
しうし、
331
妾
(
わらは
)
主従
(
しゆじゆう
)
は
生命
(
いのち
)
も
危
(
あやふ
)
き
所
(
ところ
)
、
332
闇
(
やみ
)
に
紛
(
まぎ
)
れて
城内
(
じやうない
)
を
逃
(
のが
)
れ
出
(
い
)
で、
333
エデンの
河
(
かは
)
を
生命
(
いのち
)
からがら
打渡
(
うちわた
)
り、
334
何
(
なん
)
の
目的
(
あてど
)
も
時
(
とき
)
の
途
(
みち
)
、
335
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
折
(
をり
)
しも、
336
暗
(
やみ
)
を
照
(
てら
)
して
現
(
あら
)
はれ
来
(
き
)
たる
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
にめぐり
会
(
あ
)
ひ、
337
愛子姫
(
あいこひめ
)
様
(
さま
)
、
338
菊子姫
(
きくこひめ
)
様
(
さま
)
、
339
幾代姫
(
いくよひめ
)
様
(
さま
)
は、
340
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
御
(
お
)
後
(
あと
)
を
慕
(
した
)
ひ、
341
西蔵
(
チベツト
)
に
難
(
なん
)
を
遁
(
のが
)
れさせ
給
(
たま
)
ひしと
聞
(
き
)
くより、
342
妾
(
わらは
)
は
岸子姫
(
きしこひめ
)
、
343
岩子姫
(
いはこひめ
)
と
共
(
とも
)
に、
344
夜
(
よ
)
を
日
(
ひ
)
に
継
(
つ
)
いで、
345
山野
(
さんや
)
を
渉
(
わた
)
り、
346
大河
(
おほかは
)
を
越
(
こ
)
え、
347
漸
(
やうや
)
くラサフの
都
(
みやこ
)
に
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば、
348
姫君
(
ひめぎみ
)
様
(
さま
)
に
奇
(
くし
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
にて
面会
(
めんくわい
)
を
得
(
え
)
させむと、
349
木花姫
(
このはなひめ
)
の
夢
(
ゆめ
)
のお
告
(
つ
)
げ、
350
妾
(
わらは
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
勇
(
いさ
)
み
進
(
すす
)
んで、
351
小高
(
こだか
)
き
丘
(
をか
)
の
入口
(
いりくち
)
より、
352
岩窟
(
いはや
)
に
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
る
折
(
をり
)
しも、
353
ウラナイ
教
(
けう
)
の
曲神
(
まがかみ
)
蠑螈別
(
いもりわけ
)
、
354
幾十
(
いくじふ
)
ともなく
数多
(
あまた
)
の
邪神
(
じやしん
)
を
引
(
ひ
)
き
連
(
つ
)
れ、
355
妾
(
わらは
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
取囲
(
とりかこ
)
み、
356
後手
(
うしろで
)
に
縛
(
しば
)
り
上
(
あ
)
げ、
357
此
(
この
)
岩窟
(
いはや
)
に
押込
(
おしこ
)
めたり。
358
嗚呼
(
ああ
)
、
359
岸子姫
(
きしこひめ
)
、
360
岩子姫
(
いはこひめ
)
は、
361
如何
(
いかが
)
なりしぞ、
362
心許
(
こころもと
)
なや』
363
と
又
(
また
)
もや
涙
(
なみだ
)
の
袖
(
そで
)
を
絞
(
しぼ
)
る。
364
高国別
(
たかくにわけ
)
『これにて
略
(
ほぼ
)
様子
(
やうす
)
は
判然
(
はんぜん
)
致
(
いた
)
しました。
365
……ヤア
一同
(
いちどう
)
の
方々
(
かたがた
)
、
366
岸子姫
(
きしこひめ
)
、
367
岩子姫
(
いはこひめ
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
心許
(
こころもと
)
なく
御座
(
ござ
)
れば、
368
急
(
いそ
)
ぎ
在処
(
ありか
)
を
尋
(
たづ
)
ね、
369
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
さねばなりますまい』
370
一同
『
然
(
しか
)
らば
進
(
すす
)
みませう』
371
と、
372
一同
(
いちどう
)
は
四辺
(
あたり
)
に
耳
(
みみ
)
を
欹
(
そばだ
)
て、
373
目
(
め
)
を
配
(
くば
)
り
乍
(
なが
)
ら、
374
急
(
いそ
)
ぎもせず、
375
遅
(
おく
)
れもせずと
云
(
い
)
ふ
足許
(
あしもと
)
にて、
376
奥深
(
おくふか
)
く
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
377
隧道
(
すゐだう
)
は
俄
(
にはか
)
に
前方
(
ぜんぱう
)
低
(
ひく
)
く、
378
板
(
いた
)
を
立
(
た
)
てたる
如
(
ごと
)
き
急坂
(
きふはん
)
になつて
来
(
き
)
た。
379
一行
(
いつかう
)
七
(
しち
)
人
(
にん
)
は、
380
一足
(
ひとあし
)
一足
(
ひとあし
)
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れ
乍
(
なが
)
ら、
381
アブト
式
(
しき
)
然
(
ぜん
)
と、
382
坂路
(
さかみち
)
の
隧道
(
すゐだう
)
を
下
(
くだ
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
383
行
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
七八丁
(
しちはつちやう
)
と
覚
(
おぼ
)
しき
所
(
ところ
)
に、
384
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
広
(
ひろ
)
き
水溜
(
みづたま
)
りがある。
385
薄暗
(
うすぐら
)
がりに
透
(
す
)
かし
見
(
み
)
れば、
386
何
(
なん
)
だか
水面
(
すゐめん
)
に
人
(
ひと
)
の
首
(
くび
)
の
様
(
やう
)
なものが
漂
(
ただよ
)
うて
居
(
ゐ
)
る。
387
亀彦
(
かめひこ
)
は
目
(
め
)
ざとくもこれに
目
(
め
)
を
注
(
そそ
)
ぎ、
388
亀彦
(
かめひこ
)
『ヤア
此奴
(
こいつ
)
ア
又
(
また
)
、
389
変挺
(
へんてこ
)
だ。
390
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
に
池
(
いけ
)
があると
思
(
おも
)
へば、
391
円
(
まる
)
い
顔
(
かほ
)
の
様
(
やう
)
な
物
(
もの
)
が
浮
(
う
)
いて
居
(
ゐ
)
る、
392
鴛鴦
(
おしどり
)
にしては
少
(
すこ
)
しく
大
(
おほ
)
きいやうだ。
393
ヤア
目鼻
(
めはな
)
が
付
(
つ
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
394
悪神
(
あくがみ
)
の
奴
(
やつ
)
、
395
酒
(
さけ
)
に
喰
(
くら
)
ひ
酔
(
よ
)
つて、
396
瓢箪
(
へうたん
)
に
目鼻
(
めはな
)
をつけ、
397
此
(
この
)
池
(
いけ
)
に
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
みよつたのではあるまいか。
398
瓢箪
(
へうたん
)
ばかりが
浮物
(
うきもの
)
か、
399
俺
(
おれ
)
の
心
(
こころ
)
も
浮
(
う
)
いて
来
(
き
)
た。
400
サアサア
浮
(
う
)
いたり
浮
(
う
)
いたりだ、
401
アハヽヽヽヽ』
402
梅彦
(
うめひこ
)
『
亀
(
かめ
)
サン、
403
あれを
能
(
よ
)
く
御覧
(
ごらん
)
なさい、
404
女
(
をんな
)
の
首
(
くび
)
ですよ。
405
ナンダか、
406
つぶやいて
居
(
ゐ
)
るぢやありませぬか』
407
幾代姫
(
いくよひめ
)
『ヤア
彼
(
あ
)
の
顔
(
かほ
)
は、
408
岩子姫
(
いはこひめ
)
、
409
岸子姫
(
きしこひめ
)
ではなからうか』
410
亀彦
(
かめひこ
)
『エー
何
(
なに
)
を
仰有
(
おつしや
)
います、
411
鴨
(
かも
)
かナンゾの
様
(
やう
)
に、
412
女
(
をんな
)
が
首
(
くび
)
ばつかりになつて、
413
池
(
いけ
)
の
中
(
なか
)
に
浮
(
う
)
いて
居
(
ゐ
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
がありませうか。
414
あなたは
視神経
(
ししんけい
)
の
作用
(
さよう
)
が、
415
どうか
変調
(
へんてう
)
を
来
(
きた
)
して
居
(
を
)
るのでせう。
416
腐
(
くさ
)
り
縄
(
なは
)
を
見
(
み
)
て
蛇
(
へび
)
と
思
(
おも
)
つて
驚
(
おどろ
)
いたり、
417
木
(
き
)
の
欠杭
(
かつくひ
)
を
見
(
み
)
て
化物
(
ばけもの
)
と
思
(
おも
)
ふ
事
(
こと
)
が
往々
(
まま
)
有
(
あ
)
るものです。
418
マアマア
気
(
き
)
を
附
(
つ
)
けてください、
419
変視
(
へんし
)
、
420
幻視
(
げんし
)
、
421
妄視
(
ばうし
)
の
精神
(
せいしん
)
作用
(
さよう
)
でせう、
422
コンナ
所
(
ところ
)
に
棲息
(
せいそく
)
する
者
(
もの
)
は、
423
キツト
河童
(
かつぱ
)
か、
424
鰐
(
わに
)
か、
425
まかり
間違
(
まちが
)
へば
人魚
(
にんぎよ
)
ですよ。
426
人魚
(
にんぎよ
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は、
427
能
(
よ
)
く
人間
(
にんげん
)
に
似
(
に
)
て
居
(
を
)
るものだ、
428
それで、
429
人
(
ひと
)
の
形
(
かたち
)
をした
翫弄具
(
おもちや
)
を
人形
(
にんぎやう
)
サンと
云
(
い
)
ふのだ。
430
アハヽヽヽヽ』
431
池
(
いけ
)
の
中
(
なか
)
より
女
(
をんな
)
の
首
(
くび
)
、
432
苦
(
くる
)
しき
声
(
こゑ
)
を
絞
(
しぼ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
433
岩子姫、岸子姫
『ヤア、
434
あなたは
幾代姫
(
いくよひめ
)
様
(
さま
)
、
435
菊子姫
(
きくこひめ
)
様
(
さま
)
、
436
愛子姫
(
あいこひめ
)
様
(
さま
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬか。
437
夜目
(
よめ
)
にはしかと
分
(
わか
)
りませぬが、
438
お
姿
(
すがた
)
が
能
(
よ
)
く
似
(
に
)
て
居
(
を
)
ります。
439
妾
(
わらは
)
は
悪神
(
あくがみ
)
に
捉
(
とら
)
へられ、
440
手足
(
てあし
)
を
縛
(
しば
)
られ、
441
重
(
おも
)
き
石錨
(
いしいかり
)
をつけられて
苦
(
くるし
)
んで
居
(
を
)
ります、
442
岩子姫
(
いはこひめ
)
、
443
岸子姫
(
きしこひめ
)
の
両人
(
りやうにん
)
で
御座
(
ござ
)
います。
444
どうぞお
助
(
たす
)
けくださいませ』
445
亀彦
(
かめひこ
)
『ヤア
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
の
同類
(
どうるゐ
)
奴
(
め
)
、
446
馬鹿
(
ばか
)
にするない、
447
何程
(
なにほど
)
化
(
ばけ
)
たつて、
448
モウ
駄目
(
だめ
)
だ。
449
手
(
て
)
を
替
(
か
)
へ
品
(
しな
)
を
換
(
か
)
へ、
450
結局
(
けつきよく
)
の
果
(
はて
)
には
池
(
いけ
)
の
中
(
なか
)
に
姿
(
すがた
)
を
現
(
あら
)
はし、
451
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
を
水中
(
すゐちう
)
に
引込
(
ひきこ
)
まむとの
水
(
みづ
)
も
洩
(
も
)
らさぬ………
否
(
いな
)
水責
(
みづぜ
)
めの
汝
(
なんぢ
)
の
計略
(
けいりやく
)
、
452
其
(
その
)
手
(
て
)
に
乗
(
の
)
つて
堪
(
たま
)
らうかい』
453
岩子姫
(
いはこひめ
)
『イエイエ、
454
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
妖怪
(
えうくわい
)
変化
(
へんげ
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬ、
455
どうぞお
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さいませ』
456
亀彦
(
かめひこ
)
『もしもし
高国別
(
たかくにわけ
)
様
(
さま
)
、
457
どうでせう、
458
彼奴
(
あいつ
)
は
本物
(
ほんもの
)
でせうか。
459
偽物
(
にせもの
)
の
能
(
よ
)
く
流行
(
りうかう
)
する
時節
(
じせつ
)
ですから、
460
ウツカリと
油断
(
ゆだん
)
はなりませぬぜ、
461
………コラコラ
化
(
ばけ
)
の
奴
(
やつ
)
、
462
新意匠
(
しんいしやう
)
をこらし、
463
レツテルを
替
(
か
)
へて、
464
厄雑物
(
やくざもの
)
を
突付
(
つきつ
)
けても
其
(
その
)
手
(
て
)
には
乗
(
の
)
らぬぞ、
465
意匠
(
いしやう
)
登録法
(
とうろくはふ
)
違反
(
ゐはん
)
で
告発
(
こくはつ
)
をしてやらうか』
466
高国別
(
たかくにわけ
)
『アハヽヽヽ、
467
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ、
468
亀彦
(
かめひこ
)
サン、
469
高国別
(
たかくにわけ
)
の
厳命
(
げんめい
)
だ、
470
あなた
真裸
(
まつぱだか
)
となつて
救
(
すく
)
うて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さい。
471
高国別
(
たかくにわけ
)
が
神
(
かみ
)
に
代
(
かは
)
つて
命令
(
めいれい
)
を
致
(
いた
)
します』
472
亀彦
(
かめひこ
)
『
滅相
(
めつさう
)
な、
473
どうしてどうして、
474
是
(
これ
)
ばつかりは
真
(
ま
)
つ
平
(
ぴら
)
御免
(
ごめん
)
、
475
アーメン
素麺
(
そうめん
)
、
476
トコロテン、
477
ステテコテンのテンテコテン、
478
テンデ
話
(
はなし
)
になりませぬワイ、
479
テンと
合点
(
がてん
)
がゆきませぬ、
480
是
(
こ
)
ればつかりは
平
(
ひら
)
に
御
(
お
)
断
(
ことわ
)
り
申
(
まを
)
す。
481
斯
(
か
)
く
申
(
まを
)
すは
決
(
けつ
)
して
亀彦
(
かめひこ
)
の
肉体
(
にくたい
)
では
御座
(
ござ
)
らぬ。
482
亀彦
(
かめひこ
)
が
守護神
(
しゆごじん
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
る』
483
梅彦
(
うめひこ
)
『アハヽヽヽ、
484
巧
(
うま
)
い
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ひよるワイ、
485
融通
(
ゆうづう
)
の
利
(
き
)
く
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
だ、
486
斯
(
こ
)
うなると
副守
(
ふくしゆ
)
先生
(
せんせい
)
も
重宝
(
ちようほう
)
なものだなア』
487
亀彦
(
かめひこ
)
『
亀彦
(
かめひこ
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
が、
488
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
命
(
めい
)
に
依
(
よ
)
つて、
489
梅彦
(
うめひこ
)
に
厳命
(
げんめい
)
する………
梅彦
(
うめひこ
)
、
490
速
(
すみや
)
かに
真裸
(
まつぱだか
)
となり、
491
水中
(
すゐちう
)
にザンブと
許
(
ばか
)
り
飛込
(
とびこ
)
んで、
492
二人
(
ふたり
)
の
妖怪
(
えうくわい
)
を
救
(
すく
)
ひ
来
(
きた
)
れ。
493
万々一
(
まんまんいち
)
、
494
彼
(
かれ
)
にして
大蛇
(
だいじや
)
の
変化
(
へんげ
)
なれば、
495
汝
(
なんぢ
)
は
一呑
(
ひとの
)
みに
蛇腹
(
じやふく
)
に
葬
(
ほうむ
)
られむ。
496
然
(
しか
)
る
時
(
とき
)
は、
497
汝
(
なんぢ
)
が
霊
(
みたま
)
を
引抜
(
ひきぬ
)
き、
498
至美
(
しび
)
至楽
(
しらく
)
の
天国
(
てんごく
)
に
救
(
すく
)
ひ、
499
百味
(
ひやくみ
)
の
飲食
(
おんじき
)
を
与
(
あた
)
へ
遣
(
つか
)
はす、
500
ゆめゆめ
疑
(
うたが
)
ふ
事
(
こと
)
勿
(
なか
)
れ』
501
梅彦
(
うめひこ
)
『ウンウンウン』
502
亀彦
(
かめひこ
)
『コラコラ、
503
偽神懸
(
にせかむがかり
)
は
厳禁
(
げんきん
)
するぞ、
504
亀
(
かめ
)
サンの
審神
(
さには
)
を
暗
(
くら
)
まさうと
思
(
おも
)
つても、
505
天眼通
(
てんがんつう
)
、
506
天耳通
(
てんじつう
)
、
507
宿命通
(
しゆくめいつう
)
、
508
自他心通
(
じたしんつう
)
、
509
感通
(
かんつう
)
、
510
漏尽通
(
ろうじんつう
)
の
六大
(
ろくだい
)
神通力
(
しんつうりき
)
を
具備
(
ぐび
)
せる、
511
古今
(
ここん
)
無双
(
むさう
)
の
審神者
(
さには
)
のティーチヤーに
向
(
むか
)
つて、
512
誤魔化
(
ごまくわ
)
しは
利
(
き
)
かぬぞ、
513
速
(
すみや
)
かに
飛込
(
とびこ
)
め』
514
池中
(
ちちう
)
に
浮
(
う
)
かべる
二
(
ふた
)
つの
首
(
くび
)
は、
515
苦痛
(
くつう
)
を
忘
(
わす
)
れて、
516
思
(
おも
)
はず、
517
『ホヽヽヽヽ』と
笑
(
わら
)
ひ
出
(
だ
)
せば、
518
亀彦
(
かめひこ
)
『それ
見
(
み
)
たか、
519
俺
(
おれ
)
の
天眼通
(
てんがんつう
)
はコンナものだ。
520
此
(
この
)
寒
(
さむ
)
いのに
池
(
いけ
)
の
中
(
なか
)
に
投
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
まれ、
521
人間
(
にんげん
)
なら、
522
何
(
なに
)
気楽
(
きらく
)
さうに
笑
(
わら
)
ふものか、
523
とうとう
化物
(
ばけもの
)
の
正体
(
しやうたい
)
を
現
(
あら
)
はしよつた。
524
アツハヽヽヽ』
525
幾代姫
(
いくよひめ
)
『
亀彦
(
かめひこ
)
様
(
さま
)
、
526
梅彦
(
うめひこ
)
様
(
さま
)
、
527
あなたは
分
(
わか
)
らぬお
方
(
かた
)
ですな、
528
………アーアコンナ
方
(
かた
)
を
二世
(
にせ
)
の
夫
(
をつと
)
に
持
(
も
)
つたと
思
(
おも
)
へば
恥
(
はづ
)
かしいワ』
529
亀彦
(
かめひこ
)
『コレコレ
嬶左衛門
(
かかざゑもん
)
殿
(
どの
)
、
530
何
(
なん
)
と
御意
(
ぎよい
)
召
(
め
)
さる。
531
親子
(
おやこ
)
は
一世
(
いつせ
)
、
532
夫婦
(
ふうふ
)
は
二世
(
にせ
)
で
御座
(
ござ
)
るぞ』
533
二女
(
にじよ
)
『
夫婦
(
ふうふ
)
二世
(
にせ
)
と
云
(
い
)
ふ
掟
(
をきて
)
を
幸
(
さひは
)
ひ、
534
あなたの
様
(
やう
)
な、
535
臆病神
(
おくびやうがみ
)
との
契
(
ちぎり
)
を
解
(
と
)
き、
536
第二
(
だいに
)
の
夫
(
をつと
)
を
持
(
も
)
ちませう。
537
ネー
愛子姫
(
あいこひめ
)
様
(
さま
)
、
538
決
(
けつ
)
して
天則
(
てんそく
)
違反
(
ゐはん
)
では
御座
(
ござ
)
いますまい』
539
亀彦
(
かめひこ
)
、
540
梅彦
(
うめひこ
)
、
541
両手
(
りやうて
)
を
拡
(
ひろ
)
げて、
542
亀彦、梅彦
『アヽ
待
(
ま
)
つた
待
(
ま
)
つた、
543
如何
(
いか
)
に
女権
(
ぢよけん
)
拡張
(
くわくちやう
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
ぢやとて、
544
姫御前
(
ひめごぜん
)
の
有
(
あ
)
られもない
其
(
その
)
暴言
(
ばうげん
)
、
545
これだから、
546
新
(
あたら
)
しい
女
(
をんな
)
を
女房
(
にようばう
)
に
持
(
も
)
つのは
困
(
こま
)
ると
言
(
い
)
ふのだ。
547
エー
仕方
(
しかた
)
がない、
548
俺
(
おれ
)
も
男
(
をとこ
)
だ………サア
梅
(
うめ
)
サン………ヤア
亀
(
かめ
)
サン………
一
(
ひ
)
イ
二
(
ふ
)
ウ
三
(
みつ
)
ツだ』
549
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く、
550
真裸
(
まつぱだか
)
となり、
551
ザンブと
飛込
(
とびこ
)
んだ。
552
亀彦、梅彦
『ヤア
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
浅
(
あさ
)
い
池
(
いけ
)
だワイ………オイオイ
二
(
ふた
)
つの
生首
(
なまくび
)
、
553
かぶりついちや
不可
(
いかん
)
よ、
554
俺
(
おれ
)
一人
(
ひとり
)
ではない、
555
俺
(
おれ
)
には
彼
(
あ
)
の
通
(
とほ
)
り
立派
(
りつぱ
)
な
奥方
(
おくがた
)
がお
二人
(
ふたり
)
も
随
(
つ
)
いて
御座
(
ござ
)
るのだ。
556
一度
(
いちど
)
死
(
し
)
んだから
二度
(
にど
)
とは
死
(
し
)
なないから、
557
吾々
(
われわれ
)
は
生命
(
いのち
)
位
(
ぐらゐ
)
は
何
(
なん
)
ともないが、
558
後
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
つた
菊子姫
(
きくこひめ
)
、
559
幾代姫
(
いくよひめ
)
の
悲歎
(
ひたん
)
の
程
(
ほど
)
が
思
(
おも
)
い
遣
(
や
)
られる……コラコラ
助
(
たす
)
けてやるから
生命
(
いのち
)
の
恩人
(
おんじん
)
だと
思
(
おも
)
つて、
560
かぶり
付
(
つ
)
いてはならぬぞ』
561
と
言
(
い
)
ひつつ、
562
コワゴワ
頭髪
(
とうはつ
)
をグツと
握
(
にぎ
)
り
締
(
し
)
めた。
563
岩子姫
(
いはこひめ
)
『アイタタ、
564
痛
(
いた
)
う
御座
(
ござ
)
んす、
565
どうぞ、
566
妾
(
わらは
)
の
腰
(
こし
)
の
辺
(
あたり
)
を
探
(
さぐ
)
つて
見
(
み
)
て
下
(
くだ
)
さい』
567
亀彦
(
かめひこ
)
『
女
(
をんな
)
の
分際
(
ぶんざい
)
としてあられもない
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふな、
568
立派
(
りつぱ
)
な
奥様
(
おくさま
)
が
大
(
おほ
)
きな
目
(
め
)
を
剥
(
む
)
いて
監督
(
かんとく
)
をして
御座
(
ござ
)
るぞ、
569
腰
(
こし
)
のあたりを
触
(
いら
)
つて
堪
(
たま
)
るものかい』
570
岸子姫
(
きしこひめ
)
『イエイエ、
571
腰
(
こし
)
の
辺
(
あた
)
りに、
572
可
(
か
)
なり
大
(
おほ
)
きい
紐
(
ひも
)
で
大
(
おほ
)
きい
石
(
いし
)
が
縛
(
しば
)
りつけて
御座
(
ござ
)
います。
573
三
(
みつ
)
つも
四
(
よつ
)
つも、
574
重
(
おも
)
い
石
(
いし
)
に
繋
(
つな
)
がれて
居
(
ゐ
)
ます、
575
どうぞ
其
(
その
)
綱
(
つな
)
を
切
(
き
)
つて
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さい』
576
亀彦
(
かめひこ
)
『アーア、
577
偉
(
えら
)
い
事
(
こと
)
になつて
来
(
き
)
たワイ、
578
神
(
かみ
)
が
綱
(
つな
)
を
掛
(
かけ
)
たら
放
(
はな
)
さぬぞよ、
579
アハヽヽヽ』
580
岩子姫
(
いはこひめ
)
『
冗談
(
じやうだん
)
仰有
(
おつしや
)
らずに、
581
どうぞ
真面目
(
まじめ
)
にほどいて
下
(
くだ
)
さい』
582
二人
(
ふたり
)
は
水中
(
すゐちう
)
に
手
(
て
)
を
下
(
おろ
)
し、
583
腰
(
こし
)
のあたりを
探
(
さぐ
)
つて
見
(
み
)
て、
584
亀彦、梅彦
『ヤア
甚
(
えら
)
い
事
(
こと
)
を
行
(
や
)
つて
居
(
ゐ
)
る……やつぱり
鱗
(
うろこ
)
でもなければ、
585
羽
(
はね
)
でもない、
586
人間
(
にんげん
)
の
肌
(
はだ
)
だ』
587
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
588
ほどかむとすれど、
589
綱
(
つな
)
は
膨
(
ふく
)
れてどうする
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ぬ。
590
亀彦、梅彦
『アーア
仕方
(
しかた
)
がない』
591
と
再
(
ふたた
)
び
岸
(
きし
)
に
這
(
は
)
ひ
上
(
あが
)
り、
592
双刃
(
もろは
)
の
剣
(
つるぎ
)
を
口
(
くち
)
に
啣
(
くは
)
へ、
593
バサバサと
飛込
(
とびこ
)
み、
594
プツツと
綱
(
つな
)
を
切
(
き
)
り、
595
二人
(
ふたり
)
を
肩
(
かた
)
にひつ
担
(
かつ
)
ぎ
乍
(
なが
)
ら
上
(
あが
)
つて
来
(
き
)
た。
596
高国別
(
たかくにわけ
)
および
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
女性
(
ぢよせい
)
は、
597
四人
『アーア
結構
(
けつこう
)
結構
(
けつこう
)
、
598
好
(
い
)
い
所
(
ところ
)
で
助
(
たす
)
かつたものだ』
599
浅子姫
(
あさこひめ
)
『
岩子
(
いはこ
)
さま、
600
岸子
(
きしこ
)
さま、
601
あなたは
酷
(
えら
)
い
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
ひましたな、
602
妾
(
わらは
)
も
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
様
(
さま
)
に
救
(
すく
)
はれました……アヽ
結構
(
けつこう
)
結構
(
けつこう
)
、
603
これと
云
(
い
)
ふも、
604
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
全
(
まつた
)
く
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
で
御座
(
ござ
)
いませう』
605
と
浅子姫
(
あさこひめ
)
は、
606
今更
(
いまさら
)
の
如
(
ごと
)
く
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
に
暮
(
く
)
れて
水面
(
すゐめん
)
に
向
(
むか
)
つて
合掌
(
がつしやう
)
しゐたりける。
607
(
大正一一・四・三
旧三・七
松村真澄
録)
608
(昭和一〇・三・二三 於花蓮港支部 王仁校正)
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