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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第15巻(寅の巻)
序
凡例
総説歌
第1篇 正邪奮戦
第1章 破羅門
第2章 途上の変
第3章 十六花
第4章 神の栄光
第5章 五天狗
第6章 北山川
第7章 釣瓶攻
第8章 ウラナイ教
第9章 薯蕷汁
第10章 神楽舞
第2篇 古事記言霊解
第11章 大蛇退治の段
第3篇 神山霊水
第12章 一人旅
第13章 神女出現
第14章 奇の岩窟
第15章 山の神
第16章 水上の影
第17章 窟の酒宴
第18章 婆々勇
第4篇 神行霊歩
第19章 第一天国
第20章 五十世紀
第21章 帰顕
第22章 和と戦
第23章 八日の月
跋文
余白歌
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第15巻(寅の巻)
> 第4篇 神行霊歩 > 第20章 五十世紀
<<< 第一天国
(B)
(N)
帰顕 >>>
第二〇章
五十
(
ごじつ
)
世紀
(
せいき
)
〔五八七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第15巻 如意宝珠 寅の巻
篇:
第4篇 神行霊歩
よみ(新仮名遣い):
しんこうれいほ
章:
第20章 五十世紀
よみ(新仮名遣い):
ごじゅっせいき
通し章番号:
587
口述日:
口述場所:
筆録者:
藤津久子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年12月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
三人はどうやって鏡の岩を突破しようかと思案に暮れている。松彦は、河鹿峠で吹き飛ばされて失った、三人の肉体の死骸と、乗ってきた馬の死骸を持ってこなくては、天国に入れない、と謎をかける。
厳彦は、松彦の謎にある「馬」は心の駒を表し、「肉体」は魂のことであると気づいた。そうして、自分たちが天国の美しさに心の駒の手綱を緩め、魂を宙に飛ばしてしまい、祝詞の奏上を忘れていたことに気づいた。
三人が天津祝詞を合奏すると、鏡の岩が自然に開かれて、大きな道が現れた。一行が進んで行くと、向こうから小さな五人連れの男女が歩いてきた。松彦は、これは五十世紀の人間の魂である、と説明した。
一行は美しい湖水の岸についた。松彦は三人を舟に迎え入れると、高天原さして漕ぎ出した。やがて、波の彼方の一つ島に、麗しい金殿玉楼が見えてきた。一行は上陸すると、壮麗な門をくぐり、松彦の案内で中に進んで行く。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-01-20 21:04:36
OBC :
rm1520
愛善世界社版:
256頁
八幡書店版:
第3輯 374頁
修補版:
校定版:
254頁
普及版:
117頁
初版:
ページ備考:
001
松彦
(
まつひこ
)
の
天使
(
てんし
)
に
伴
(
ともな
)
はれた
一行
(
いつかう
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は、
002
鏡
(
かがみ
)
の
岩
(
いは
)
にピタリと
行当
(
ゆきあた
)
り、
003
如何
(
いか
)
にして
此
(
この
)
関所
(
せきしよ
)
を
突破
(
とつぱ
)
せむかと
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
けて、
004
胸
(
むね
)
に
問
(
と
)
ひ
心
(
こころ
)
に
掛
(
か
)
け、
005
首
(
くび
)
を
上下
(
じやうげ
)
左右
(
さいう
)
に
静
(
しづ
)
かに
振
(
ふ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
006
やや
当惑
(
たうわく
)
の
体
(
てい
)
にて
幾何
(
いくばく
)
かの
時間
(
じかん
)
を
費
(
つひ
)
やしゐたり。
007
玉彦
(
たまひこ
)
『
吾々
(
われわれ
)
は
現界
(
げんかい
)
に
於
(
おい
)
ても、
008
心
(
こころ
)
の
鏡
(
かがみ
)
が
曇
(
くも
)
つてゐる
為
(
ため
)
に、
009
万事
(
ばんじ
)
に
付
(
つ
)
け
往
(
ゆ
)
き
当
(
あた
)
り
勝
(
が
)
ちだ、
010
神界
(
しんかい
)
へ
来
(
き
)
ても
矢張
(
やつぱり
)
往
(
ゆ
)
き
当
(
あた
)
る
身魂
(
みたま
)
の
性来
(
しやうらい
)
と
見
(
み
)
える
哩
(
わい
)
。
011
アヽ、
012
どうしたら
宜
(
よ
)
からうな。
013
見
(
み
)
す
見
(
み
)
す
引返
(
ひきかへ
)
す
訳
(
わけ
)
にも
往
(
ゆ
)
かず、
014
何
(
なん
)
とか
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
も
好
(
よ
)
い
智慧
(
ちゑ
)
を
出
(
だ
)
して
呉
(
く
)
れさうなものだなア』
015
松彦
(
まつひこ
)
『
貴方
(
あなた
)
はそれだから
不可
(
いか
)
ないのですよ。
016
自分
(
じぶん
)
の
垢
(
あか
)
を
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
に
塗付
(
ぬりつ
)
けるといふ
事
(
こと
)
がありますか』
017
玉彦
(
たまひこ
)
『
吾々
(
われわれ
)
は
常
(
つね
)
に
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
ります。
018
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
が
善
(
ぜん
)
であれば、
019
肉体
(
にくたい
)
もそれに
連
(
つ
)
れて
感化
(
かんくわ
)
され、
020
霊肉
(
れいにく
)
共
(
とも
)
に
清浄
(
せいじやう
)
潔白
(
けつぱく
)
になり
天国
(
てんごく
)
に
救
(
すく
)
はれると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
固
(
かた
)
く
信
(
しん
)
じてゐました。
021
斯
(
こ
)
う
九分
(
くぶ
)
九厘
(
くりん
)
で
最上
(
さいじやう
)
天国
(
てんごく
)
に
行
(
ゆ
)
けぬと
云
(
い
)
ふことは
吾々
(
われわれ
)
の
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
もどうやら
怪
(
あや
)
しいものだ。
022
コラコラ
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
、
023
臍下
(
さいか
)
丹田
(
たんでん
)
から
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て、
024
此
(
こ
)
の
肉
(
にく
)
の
宮
(
みや
)
を
何故
(
なぜ
)
保護
(
ほご
)
をせないのか、
025
それでは
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
の
職責
(
しよくせき
)
が
尽
(
つく
)
せぬでは
無
(
な
)
いか。
026
肉体
(
にくたい
)
天国
(
てんごく
)
へ
行
(
ゆ
)
けば
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
もが
行
(
ゆ
)
ける
道理
(
だうり
)
だ。
027
別
(
べつ
)
に
玉彦
(
たまひこ
)
の
徳
(
とく
)
許
(
ばか
)
りでない、
028
矢張
(
やつぱり
)
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
の
徳
(
とく
)
にもなるのだ。
029
何
(
なに
)
をグヅグヅして
居
(
を
)
るのかい』
030
と
握
(
にぎ
)
り
拳
(
こぶし
)
を
固
(
かた
)
めて
臍
(
へそ
)
の
辺
(
あたり
)
をポンポン
叩
(
たた
)
く。
031
松彦
(
まつひこ
)
『アハヽヽヽ、
032
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い』
033
玉彦
(
たまひこ
)
『
之
(
これ
)
は
怪
(
け
)
しからぬ、
034
千思
(
せんし
)
万慮
(
ばんりよ
)
を
尽
(
つく
)
し、
035
如何
(
いか
)
にして
此
(
この
)
鉄壁
(
てつぺき
)
を
通過
(
つうくわ
)
せむかと
思案
(
しあん
)
にくるるのを
見
(
み
)
て、
036
可笑
(
おか
)
しさうに
吾々
(
われわれ
)
を
嘲笑
(
てうせう
)
なさるのか、
037
貴方
(
あなた
)
も
余程
(
よつぽど
)
吝
(
けち
)
な
守護神
(
しゆごじん
)
が
伏在
(
ふくざい
)
して
居
(
ゐ
)
ますな』
038
松彦
(
まつひこ
)
『
天国
(
てんごく
)
には
恨
(
うら
)
みも
無
(
な
)
ければ
悲
(
かな
)
しみも
無
(
な
)
い。
039
亦
(
また
)
嘲
(
あざけ
)
りもありませぬ。
040
私
(
わたくし
)
の
笑
(
わら
)
つたのは
貴方
(
あなた
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
が
私
(
わたくし
)
の
体
(
たい
)
を
籍
(
か
)
つて
言
(
い
)
はれたのですよ』
041
玉彦
(
たまひこ
)
『さう
聞
(
き
)
けば、
042
さうかも
知
(
し
)
れませぬな。
043
これこれ
厳彦
(
いづひこ
)
サン、
044
楠彦
(
くすひこ
)
サン、
045
貴方
(
あなた
)
がたの
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
は
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
いますかな』
046
楠
(
くす
)
、
047
厳
(
いづ
)
『アア
未
(
いま
)
だに
何
(
なん
)
とも
御
(
ご
)
宣示
(
せんじ
)
がありませぬ。
048
茲
(
ここ
)
暫
(
しば
)
らく
御
(
ご
)
沈黙
(
ちんもく
)
の
為体
(
ていたらく
)
と
見
(
み
)
えます
哩
(
わい
)
。
049
斯
(
こ
)
うなると
実
(
じつ
)
に
恥
(
はづか
)
しいものだ。
050
吾々
(
われわれ
)
の
背後
(
はいご
)
には
立派
(
りつぱ
)
な
女神
(
めがみ
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
が
鏡
(
かがみ
)
に
写
(
うつ
)
るのが
見
(
み
)
える、
051
有難
(
ありがた
)
い、
052
吾々
(
われわれ
)
は
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
矢張
(
やつぱり
)
身魂
(
みたま
)
が
立派
(
りつぱ
)
だから、
053
守護神
(
しゆごじん
)
もあの
通
(
とほ
)
り
立派
(
りつぱ
)
なと
思
(
おも
)
う
刹那
(
せつな
)
、
054
パツと
消
(
き
)
えて
了
(
しま
)
つて
後
(
あと
)
には
霊衣
(
れいい
)
さへ
見
(
み
)
えなくなつて
了
(
しま
)
つた。
055
アヽ
心
(
こころ
)
の
油断
(
ゆだん
)
といふものは
恐
(
おそ
)
ろしいものだナア』
056
松彦
(
まつひこ
)
『
貴方
(
あなた
)
がたは
何
(
なに
)
か
一
(
ひと
)
つ
落
(
おと
)
して
来
(
き
)
たものはありませぬか』
057
三人
『
最早
(
もはや
)
娑婆
(
しやば
)
の
執着心
(
しふちやくしん
)
を
捨
(
す
)
てた
以上
(
いじやう
)
は、
058
落
(
おと
)
すも
落
(
おと
)
さぬもありませぬワ。
059
強
(
た
)
つて
落
(
おと
)
したと
云
(
い
)
へば
執着心
(
しふちやくしん
)
位
(
くらゐ
)
のものでせうよ』
060
松彦
(
まつひこ
)
『イーエ、
061
ソンナものぢやありませぬ。
062
貴方
(
あなた
)
がたに
取
(
と
)
つて、
063
高天原
(
たかあまはら
)
の
関門
(
くわんもん
)
を
通過
(
つうくわ
)
すれば
容易
(
ようい
)
に
通過
(
つうくわ
)
が
出来
(
でき
)
ます』
064
玉彦
(
たまひこ
)
『コレコレ
楠
(
くす
)
サン、
065
厳
(
いづ
)
サン、
066
お
前
(
まへ
)
たち
何
(
なに
)
か
落
(
おと
)
した
物
(
もの
)
が
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
せないか』
067
厳彦
(
いづひこ
)
『オー
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
した。
068
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
を
下
(
くだ
)
る
時
(
とき
)
に、
069
大切
(
たいせつ
)
な
馬
(
うま
)
一匹
(
いつぴき
)
と
自分
(
じぶん
)
の
肉体
(
にくたい
)
を
一
(
ひと
)
つ
落
(
おと
)
して
来
(
き
)
た
様
(
やう
)
に
記憶
(
きおく
)
が
浮
(
うか
)
んで
来
(
く
)
る。
070
落
(
おと
)
したと
云
(
い
)
つたら、
071
マアソンナ
物
(
もの
)
だらう。
072
もしもし
松彦
(
まつひこ
)
サン、
073
馬
(
うま
)
の
死骸
(
しがい
)
や
人間
(
にんげん
)
の
死骸
(
しがい
)
を
拾
(
ひろ
)
つて
来
(
こ
)
なくては
此処
(
ここ
)
が
通過
(
つうくわ
)
出来
(
でき
)
ないのですか』
074
松彦
(
まつひこ
)
『さうです。
075
馬
(
うま
)
の
死骸
(
しがい
)
と
人間
(
にんげん
)
の
死骸
(
しがい
)
を
拾
(
ひろ
)
つて
来
(
き
)
なさい。
076
さうすれば
容易
(
ようい
)
に
通過
(
つうくわ
)
が
出来
(
でき
)
ませう』
077
玉彦
(
たまひこ
)
『
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
078
貴方
(
あなた
)
の
仰有
(
おつしや
)
る
事
(
こと
)
は
少
(
すこ
)
し
脱線
(
だつせん
)
ぢやありますまいか。
079
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
き
四面
(
しめん
)
玲瓏
(
れいろう
)
たる
天国
(
てんごく
)
に
左様
(
さやう
)
な
穢苦
(
むさくる
)
しい
死骸
(
しがい
)
を
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
てどうして
関門
(
くわんもん
)
が
通過
(
つうくわ
)
出来
(
でき
)
ませうか。
080
清
(
きよ
)
きが
上
(
うへ
)
にも
清
(
きよ
)
き
天国
(
てんごく
)
に、
081
死
(
し
)
んだ
馬
(
うま
)
を
引
(
ひき
)
ずつて
来
(
き
)
た
処
(
ところ
)
で
乗
(
の
)
る
訳
(
わけ
)
にも
往
(
ゆ
)
かず、
082
一足
(
ひとあし
)
も
歩
(
ある
)
く
訳
(
わけ
)
にも
往
(
ゆ
)
くまいし、
083
ハテ
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
ります
哩
(
わい
)
』
084
松彦
(
まつひこ
)
『サア
其
(
その
)
落
(
おと
)
した
馬
(
うま
)
と
人間
(
にんげん
)
の
死骸
(
しがい
)
を
生
(
い
)
かしさへすれば、
085
立派
(
りつぱ
)
に
通過
(
つうくわ
)
が
出来
(
でき
)
るのだ。
086
マア
一寸
(
ちよつと
)
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
と
篤
(
とつく
)
り
御
(
ご
)
相談
(
さうだん
)
をなさいませ。
087
私
(
わたくし
)
はそれまで
此処
(
ここ
)
に
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
ます』
088
玉彦
(
たまひこ
)
『ヤア
御
(
お
)
忙
(
いそが
)
しいのに
済
(
す
)
みませぬな』
089
厳彦
(
いづひこ
)
(
横手
(
よこて
)
を
打
(
う
)
ち)『ヤア
分
(
わか
)
つた
分
(
わか
)
つた、
090
本
(
ほん
)
守護神
(
しゆごじん
)
の
囁
(
ささや
)
きに
依
(
よ
)
つて、
091
一切
(
いつさい
)
万事
(
ばんじ
)
解決
(
かいけつ
)
が
着
(
つ
)
いた。
092
馬
(
うま
)
を
落
(
おと
)
したと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は、
093
心
(
こころ
)
の
駒
(
こま
)
の
手綱
(
たづな
)
が
緩
(
ゆる
)
んで
何処
(
どこ
)
かへ
逸走
(
いつそう
)
して
了
(
しま
)
つたと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だつた。
094
死骸
(
しがい
)
を
落
(
おと
)
したと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
吾々
(
われわれ
)
の
身魂
(
みたま
)
が
天国
(
てんごく
)
の
美
(
うる
)
はしき
光景
(
くわうけい
)
に
憧憬
(
あこが
)
れ
魂
(
たましひ
)
を
宙
(
ちう
)
に
飛
(
と
)
ばして
了
(
しま
)
つたといふ
謎
(
なぞ
)
であつた。
095
さうして
最
(
もつと
)
も
一
(
ひと
)
つ
大事
(
だいじ
)
なのは、
096
神界
(
しんかい
)
旅行
(
りよかう
)
に
必要
(
ひつえう
)
なる
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
の
奏上
(
そうじやう
)
や
神言
(
かみごと
)
の
合奏
(
がつそう
)
であつた。
097
箕売
(
みうり
)
が
笠
(
かさ
)
で
ひる
とは
此
(
この
)
事
(
こと
)
だ。
098
現界
(
げんかい
)
に
居
(
ゐ
)
る
時
(
とき
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に、
099
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
称
(
とな
)
へ、
100
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
の
言霊
(
ことたま
)
を
朝夕
(
あさゆふ
)
奏上
(
そうじやう
)
したものだ。
101
其
(
その
)
言霊
(
ことたま
)
の
奏上
(
そうじやう
)
も、
102
天国
(
てんごく
)
に
自分
(
じぶん
)
も
救
(
すく
)
はれ、
103
数多
(
あまた
)
の
人
(
ひと
)
を
救
(
すく
)
はむが
為
(
ため
)
であつた。
104
然
(
しか
)
るに
其
(
そ
)
の
目的
(
もくてき
)
たる
天国
(
てんごく
)
に
舞
(
ま
)
ひ
上
(
のぼ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
105
肝腎
(
かんじん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
身魂
(
みたま
)
を
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にやら
遺失
(
ゐしつ
)
して
了
(
しま
)
ひ、
106
心
(
こころ
)
の
駒
(
こま
)
は
有頂天
(
うちやうてん
)
となつて
空中
(
くうちう
)
に
飛散
(
ひさん
)
して
了
(
しま
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
107
アヽ
天国
(
てんごく
)
と
云
(
い
)
ふ
処
(
ところ
)
は、
108
油断
(
ゆだん
)
のならぬ
処
(
ところ
)
だな、
109
結構
(
けつこう
)
な
処
(
ところ
)
の
気遣
(
きづか
)
ひの
処
(
ところ
)
で
怖
(
こわ
)
い
処
(
ところ
)
だ。
110
サアサア
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
様
(
さま
)
、
111
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
此
(
この
)
鏡岩
(
かがみいは
)
に
向
(
むか
)
つて
奏上
(
そうじやう
)
致
(
いた
)
しませう』
112
と
一同
(
いちどう
)
は
夜
(
よ
)
の
明
(
あ
)
けたる
心地
(
ここち
)
して、
113
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
ち、
114
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
一心
(
いつしん
)
不乱
(
ふらん
)
になつて
百度
(
ももたび
)
計
(
ばか
)
り
奏上
(
そうじやう
)
した。
115
鏡
(
かがみ
)
の
岩
(
いは
)
は
自然
(
しぜん
)
と
左右
(
さいう
)
に
開
(
ひら
)
かれ、
116
坦々
(
たんたん
)
たる
花
(
はな
)
を
以
(
もつ
)
て
飾
(
かざ
)
られたる、
117
清
(
きよ
)
き
大道
(
だいだう
)
が
現
(
あら
)
はれて
来
(
き
)
た。
118
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
声
(
こゑ
)
を
揃
(
そろ
)
へて、
119
三人
『ヤア
松彦
(
まつひこ
)
様
(
さま
)
、
120
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
いました。
121
御
(
お
)
蔭
(
かげ
)
様
(
さま
)
で
難関
(
なんくわん
)
も
無事
(
ぶじ
)
に
通過
(
つうくわ
)
致
(
いた
)
しました。
122
何分
(
なにぶん
)
に
馴
(
な
)
れぬ
神界
(
しんかい
)
の
旅行
(
りよかう
)
、
123
勝手
(
かつて
)
も
存
(
ぞん
)
じませぬから、
124
何
(
なん
)
とぞ
宜
(
よろ
)
しく
御
(
お
)
世話
(
せわ
)
下
(
くだ
)
さいませ』
125
松彦
(
まつひこ
)
『
否々
(
いやいや
)
、
126
貴方
(
あなた
)
の
事
(
こと
)
は
貴方
(
あなた
)
がおやりなさい。
127
現界
(
げんかい
)
に
於
(
おい
)
て
貴方
(
あなた
)
がたは、
128
常
(
つね
)
に、
129
人
(
ひと
)
を
杖
(
つゑ
)
に
突
(
つ
)
くな、
130
師匠
(
ししやう
)
を
便
(
たよ
)
りにするなと
云
(
い
)
つて
廻
(
まは
)
つて
居
(
を
)
られたでせう』
131
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は、
132
三人
『アハヽヽヽ、
133
余
(
あま
)
り
好
(
い
)
い
景色
(
けしき
)
で
気分
(
きぶん
)
が
良
(
よ
)
くなつて
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
忘
(
わす
)
れて
了
(
しま
)
つた。
134
さうすると
矢張
(
やつぱ
)
り
執着心
(
しふちやくしん
)
も
必要
(
ひつえう
)
だ』
135
松彦
(
まつひこ
)
『それは
決
(
けつ
)
して
執着心
(
しふちやくしん
)
ではありませぬ。
136
貴方
(
あなた
)
がたの
身魂
(
みたま
)
を
守
(
まも
)
る
生命
(
いのち
)
の
綱
(
つな
)
ですよ。
137
ヤア
急
(
いそ
)
いで
参
(
まゐ
)
りませう』
138
向
(
むか
)
ふの
方
(
はう
)
より、
139
身
(
み
)
の
丈
(
たけ
)
二
(
に
)
尺
(
しやく
)
ばかりの
男女
(
だんぢよ
)
五人
(
ごにん
)
連
(
づれ
)
、
140
手
(
て
)
を
繋
(
つな
)
ぎ
乍
(
なが
)
ら、
141
ヒヨロヒヨロと
此方
(
こなた
)
に
向
(
むか
)
つて
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
るあり。
142
玉彦
(
たまひこ
)
『ヤア
小
(
ちい
)
さいお
方
(
かた
)
が
御
(
お
)
出
(
い
)
でたぞ。
143
此処
(
ここ
)
は
小人島
(
こびとじま
)
の
様
(
やう
)
だな。
144
天国
(
てんごく
)
にはコンナ
小
(
ちい
)
さい
人間
(
にんげん
)
が
住
(
す
)
まつて
居
(
を
)
るのですか。
145
ナア
松彦
(
まつひこ
)
サン』
146
松彦
(
まつひこ
)
『
何
(
なに
)
、
147
神界
(
しんかい
)
許
(
ばか
)
りか、
148
現界
(
げんかい
)
も
此
(
この
)
通
(
とほ
)
りですよ。
149
一番
(
いちばん
)
図抜
(
づぬ
)
けて
大男
(
おほをとこ
)
と
云
(
い
)
はれるのが
三
(
さん
)
尺
(
しやく
)
内外
(
ないぐわい
)
一
(
いつ
)
尺
(
しやく
)
八寸
(
はつすん
)
もあれば
一人前
(
いちにんまへ
)
の
人間
(
にんげん
)
だ。
150
顕幽
(
けんいう
)
一致
(
いつち
)
、
151
現界
(
げんかい
)
に
住
(
す
)
まつてゐる
人間
(
にんげん
)
の
霊体
(
れいたい
)
が
此
(
この
)
高天原
(
たかあまはら
)
に
遊
(
あそ
)
びに
来
(
き
)
てゐるのだ。
152
ああやつて
手
(
て
)
を
繋
(
つな
)
いで
歩
(
ある
)
かないと、
153
鶴
(
つる
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て、
154
高
(
たか
)
い
処
(
ところ
)
へ
持
(
も
)
つて
上
(
あが
)
るから、
155
其
(
その
)
難
(
なん
)
を
防
(
ふせ
)
ぐ
為
(
ため
)
、
156
ああやつて
手
(
て
)
を
繋
(
つな
)
いで
歩
(
ある
)
いて
居
(
ゐ
)
るのだ』
157
玉彦
(
たまひこ
)
『ハテ
益々
(
ますます
)
合点
(
がてん
)
が
往
(
ゆ
)
かなくなつて
来
(
き
)
た。
158
吾々
(
われわれ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は、
159
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
を
振出
(
ふりだ
)
しに、
160
世界
(
せかい
)
各国
(
かくこく
)
を
股
(
また
)
にかけ、
161
現界
(
げんかい
)
は
大抵
(
たいてい
)
跋渉
(
ばつせふ
)
した
積
(
つも
)
りだが、
162
何程
(
なにほど
)
小
(
ちい
)
さき
人間
(
にんげん
)
だと
云
(
い
)
つても
六
(
ろく
)
尺
(
しやく
)
より
低
(
ひく
)
い
男女
(
だんぢよ
)
は
無
(
な
)
かつた。
163
赤
(
あか
)
ん
坊
(
ばう
)
だつてあれ
位
(
くらゐ
)
の
背丈
(
せたけ
)
は、
164
現界
(
げんかい
)
の
人間
(
にんげん
)
なれば
持
(
も
)
つてゐますよ。
165
貴方
(
あなた
)
、
166
何
(
なに
)
かの
間違
(
まちが
)
ひではありますまいか』
167
松彦
(
まつひこ
)
『
六
(
ろく
)
尺
(
しやく
)
以上
(
いじやう
)
の
人間
(
にんげん
)
の
住
(
す
)
まつて
居
(
を
)
つたのは、
168
今
(
いま
)
より
殆
(
ほとん
)
ど
三十五万
(
さんじふごまん
)
年
(
ねん
)
の
昔
(
むかし
)
の
事
(
こと
)
だ。
169
貴方
(
あなた
)
が
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
で
帰幽
(
きいう
)
してからは、
170
最早
(
もはや
)
三十五万
(
さんじふごまん
)
年
(
ねん
)
を
経過
(
けいくわ
)
して
居
(
ゐ
)
るのだ。
171
現界
(
げんかい
)
は
二十
(
にじつ
)
世紀
(
せいき
)
といふ、
172
魂
(
たましひ
)
の
小
(
ちい
)
さい
人間
(
にんげん
)
が
住
(
す
)
まつて
居
(
ゐ
)
た
時代
(
じだい
)
を
超過
(
てうくわ
)
し、
173
既
(
すで
)
に
三千
(
さんぜん
)
年
(
ねん
)
暮
(
く
)
れてゐる。
174
現界
(
げんかい
)
で
云
(
い
)
へば、
175
キリストが
現
(
あら
)
はれてから
五十
(
ごじつ
)
世紀
(
せいき
)
の
今日
(
こんにち
)
だ。
176
世
(
よ
)
は
漸次
(
だんだん
)
開
(
ひら
)
けるに
伴
(
つ
)
れて、
177
地上
(
ちじやう
)
の
人間
(
にんげん
)
は
労苦
(
らうく
)
を
厭
(
いと
)
ひ、
178
歩
(
ある
)
くのにも
電車
(
でんしや
)
だとか、
179
自動車
(
じどうしや
)
、
180
汽車
(
きしや
)
、
181
風車
(
ふうしや
)
、
182
羽車
(
はぐるま
)
等
(
など
)
に
乗
(
の
)
つて
天地間
(
てんちかん
)
を
往来
(
わうらい
)
し、
183
少
(
すこ
)
しも
手足
(
てあし
)
を
使
(
つか
)
はないものだから、
184
身体
(
しんたい
)
は
追
(
お
)
ひ
追
(
お
)
ひと
虚弱
(
きよじやく
)
になつて
最早
(
もはや
)
五十
(
ごじつ
)
世紀
(
せいき
)
の
今日
(
こんにち
)
では、
185
コンナ
弱々
(
よわよわ
)
しい
人間
(
にんげん
)
になつて
了
(
しま
)
つたのだ。
186
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
187
十九
(
じふく
)
世紀
(
せいき
)
の
終
(
をは
)
りから
二十
(
にじつ
)
世紀
(
せいき
)
にかけて
芽
(
め
)
を
吹
(
ふ
)
き
出
(
だ
)
した、
188
三五教
(
あななひけう
)
の
教
(
をしへ
)
を
信
(
しん
)
じ
不言
(
ふげん
)
実行
(
じつかう
)
に
勉
(
つと
)
め、
189
労苦
(
らうく
)
を
楽
(
たの
)
しみとしてゐる
人間
(
にんげん
)
の
系統
(
けいとう
)
に
限
(
かぎ
)
つて、
190
夫
(
そ
)
れと
反対
(
はんたい
)
に
六
(
ろく
)
尺
(
しやく
)
以上
(
いじやう
)
の
体躯
(
たいく
)
を
保
(
たも
)
ち、
191
現幽
(
げんいう
)
神界
(
しんかい
)
に
於
(
おい
)
て、
192
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
として
活動
(
くわつどう
)
してゐるミロク
人種
(
じんしゆ
)
もありますよ』
193
三
(
さん
)
人
(
にん
)
『
吾々
(
われわれ
)
は
昨夜
(
さくや
)
、
194
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
で
落命
(
らくめい
)
したと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
るのに、
195
最早
(
もはや
)
三十五万
(
さんじふごまん
)
年
(
ねん
)
も
暮
(
く
)
れたのでせうか。
196
如何
(
いか
)
に
神界
(
しんかい
)
に
時間
(
じかん
)
が
無
(
な
)
いと
云
(
い
)
つても
之
(
これ
)
は
又
(
また
)
余
(
あま
)
り
早
(
はや
)
いぢやありませぬか』
197
松彦
(
まつひこ
)
『サアお
話
(
はなし
)
は
聖地
(
せいち
)
に
到着
(
たうちやく
)
の
上
(
うへ
)
ゆつくりと
致
(
いた
)
しませう。
198
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
がお
待兼
(
まちか
)
ね、
199
ぼつぼつ
参
(
まゐ
)
りませう』
200
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて
歩
(
あゆ
)
み
出
(
だ
)
した。
201
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
松彦
(
まつひこ
)
の
後
(
あと
)
にいそいそと
随
(
したが
)
ひ
行
(
ゆ
)
く。
202
忽
(
たちま
)
ち
眼前
(
がんぜん
)
に
展開
(
てんかい
)
せる
湖水
(
こすゐ
)
の
岸
(
きし
)
に
着
(
つ
)
いた。
203
金波
(
きんぱ
)
銀波
(
ぎんぱ
)
洋々
(
やうやう
)
として
魚鱗
(
ぎよりん
)
の
如
(
ごと
)
く
日光
(
につくわう
)
に
映
(
えい
)
じ、
204
其
(
その
)
壮観
(
さうくわん
)
譬
(
たと
)
ふるに
物
(
もの
)
なき
程
(
ほど
)
である。
205
七宝
(
しつぽう
)
珠玉
(
しゆぎよく
)
を
以
(
もつ
)
て
飾
(
かざ
)
られたる
目無
(
めなし
)
堅間
(
かたま
)
の
御船
(
みふね
)
は、
206
幾十艘
(
いくじつそう
)
とも
無
(
な
)
く
浮
(
うか
)
んでゐる。
207
松彦
(
まつひこ
)
は、
208
其
(
その
)
中
(
うち
)
最
(
もつと
)
も
美
(
うる
)
はしき、
209
新
(
あたら
)
しき
船
(
ふね
)
にヒラリと
飛
(
と
)
び
乗
(
の
)
り、
210
三
(
さん
)
人
(
にん
)
に
同乗
(
どうじやう
)
を
勧
(
すす
)
め、
211
自
(
みづか
)
ら
櫓
(
ろ
)
を
操
(
あやつ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
212
西南
(
せいなん
)
を
指
(
さ
)
して
波上
(
はじやう
)
豊
(
ゆたか
)
に
揺
(
ゆら
)
れ
行
(
ゆ
)
く。
213
湖面
(
こめん
)
は
日光
(
につくわう
)
七色
(
しちしよく
)
の
波
(
なみ
)
を
以
(
もつ
)
て
彩
(
いろ
)
どられたる
如
(
ごと
)
き
波紋
(
はもん
)
を
描
(
ゑが
)
きつつ、
214
船唄
(
ふなうた
)
勇
(
いさ
)
ましく
聖地
(
せいち
)
の
高天原
(
たかあまはら
)
を
指
(
さ
)
して、
215
勇
(
いさ
)
み
漕
(
こ
)
ぎ
行
(
ゆ
)
く。
216
波
(
なみ
)
の
彼方
(
あなた
)
に、
217
霞
(
かすみ
)
の
上
(
うへ
)
に
浮
(
う
)
いてゐる
黄金
(
わうごん
)
の
瓦
(
かはら
)
、
218
銀
(
ぎん
)
の
柱
(
はしら
)
、
219
真珠
(
しんじゆ
)
、
220
瑪瑙
(
めなう
)
、
221
珊瑚
(
さんご
)
、
222
瑠璃
(
るり
)
、
223
琥珀
(
こはく
)
、
224
硨磲
(
しやこ
)
等
(
など
)
の
七宝
(
しつぽう
)
を
鏤
(
ちりば
)
めたる
金殿
(
きんでん
)
玉楼
(
ぎよくろう
)
は
太陽
(
たいやう
)
の
光
(
ひかり
)
に
瞬
(
またた
)
きて、
225
六合
(
りくがふ
)
を
照
(
てら
)
す
許
(
ばか
)
りの
荘麗
(
さうれい
)
を
示
(
しめ
)
してゐる。
226
漸
(
やうや
)
くにして
船
(
ふね
)
は
一
(
ひと
)
つの
島
(
しま
)
に
着
(
つ
)
いた。
227
地上
(
ちじやう
)
一面
(
いちめん
)
に
敷
(
し
)
かれたる
金銀
(
きんぎん
)
真珠
(
しんじゆ
)
の
清庭
(
すがには
)
がある。
228
東
(
ひがし
)
の
門
(
もん
)
は
巨大
(
きよだい
)
なる
真珠
(
しんじゆ
)
を
以
(
もつ
)
て
固
(
かた
)
められ、
229
西
(
にし
)
には
瑪瑙
(
めなう
)
の
神門
(
しんもん
)
、
230
南
(
みなみ
)
は
瑠璃
(
るり
)
の
神門
(
しんもん
)
、
231
北
(
きた
)
には
硨磲
(
しやこ
)
の
神門
(
しんもん
)
を
以
(
もつ
)
て
囲
(
かこ
)
まれ、
232
東北
(
とうほく
)
には
白金
(
はくきん
)
の
門
(
もん
)
、
233
西南
(
せいなん
)
には
白銀
(
はくぎん
)
の
門
(
もん
)
、
234
西北
(
せいほく
)
には
黄金
(
わうごん
)
の
門
(
もん
)
、
235
東南
(
とうなん
)
には
瑪瑙
(
めなう
)
の
門
(
もん
)
を
造
(
つく
)
られ、
236
其
(
その
)
他
(
た
)
に、
237
八
(
やつ
)
の
潜
(
くぐ
)
り
門
(
もん
)
は
各
(
おのおの
)
珍
(
めづ
)
らしき
宝玉
(
ほうぎよく
)
を
鏤
(
ちりば
)
められ、
238
其
(
その
)
壮観
(
さうくわん
)
美麗
(
びれい
)
なる
事
(
こと
)
、
239
筆舌
(
ひつぜつ
)
の
能
(
よ
)
く
尽
(
つく
)
す
処
(
ところ
)
ではない。
240
松彦
(
まつひこ
)
は
先
(
ま
)
づ
東門
(
とうもん
)
より
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
伴
(
ともな
)
ひ、
241
静々
(
しづしづ
)
と
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
242
入口
(
いりくち
)
には
眉目
(
びもく
)
美
(
うる
)
はしき
男女
(
だんぢよ
)
の
天使
(
てんし
)
、
243
満面
(
まんめん
)
に
笑
(
ゑみ
)
を
湛
(
たた
)
へて
一行
(
いつかう
)
を
歓迎
(
くわんげい
)
しつつありき。
244
松彦
(
まつひこ
)
は
是
(
これ
)
等
(
ら
)
の
美
(
うる
)
はしき
天使
(
てんし
)
に
目礼
(
もくれい
)
し
乍
(
なが
)
ら、
245
三
(
さん
)
人
(
にん
)
と
共
(
とも
)
に
奥
(
おく
)
へ
奥
(
おく
)
へと
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
246
(
大正一一・四・四
旧三・八
藤津久子
録)
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