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霊界物語
如意宝珠(第13~24巻)
第15巻(寅の巻)
序
凡例
総説歌
第1篇 正邪奮戦
第1章 破羅門
第2章 途上の変
第3章 十六花
第4章 神の栄光
第5章 五天狗
第6章 北山川
第7章 釣瓶攻
第8章 ウラナイ教
第9章 薯蕷汁
第10章 神楽舞
第2篇 古事記言霊解
第11章 大蛇退治の段
第3篇 神山霊水
第12章 一人旅
第13章 神女出現
第14章 奇の岩窟
第15章 山の神
第16章 水上の影
第17章 窟の酒宴
第18章 婆々勇
第4篇 神行霊歩
第19章 第一天国
第20章 五十世紀
第21章 帰顕
第22章 和と戦
第23章 八日の月
跋文
余白歌
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第15巻(寅の巻)
> 第3篇 神山霊水 > 第17章 窟の酒宴
<<< 水上の影
(B)
(N)
婆々勇 >>>
第一七章
窟
(
いはや
)
の
酒宴
(
しゆえん
)
〔五八四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第15巻 如意宝珠 寅の巻
篇:
第3篇 神山霊水
よみ(新仮名遣い):
しんざんれいすい
章:
第17章 窟の酒宴
よみ(新仮名遣い):
いわやのしゅえん
通し章番号:
584
口述日:
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年12月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
岩窟の中に館があり、高姫、黒姫、蠑螈別を始めとするウラナイ教の信徒たちが酒宴を張っている。
黒姫は、池に投げ込んでおいた二人の女(岸子姫と岩子姫)を連れてきて、芸をさせて慰みものにしようと案を出す。丁ン助と久助は、二人を池から連れてこようとするが、池のほとりには三男六女の宣伝使たちが立っていた。
丁ン助と久助は恐れをなしてへたり込んでしまう。亀彦が二人を怒鳴りつけると、二人は逃げ出してしまった。
丁ン助と久助が、宣伝使たちがやってきたことを知らせると、館の門前に宣伝歌が響いてきた。高姫、黒姫、蠑螈別らウラナイ教の一同はたちまち苦しみを覚えてその場に倒れてしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-01-16 02:16:46
OBC :
rm1517
愛善世界社版:
219頁
八幡書店版:
第3輯 361頁
修補版:
校定版:
208頁
普及版:
100頁
初版:
ページ備考:
001
四面
(
しめん
)
岩壁
(
がんぺき
)
を
以
(
もつ
)
て
包
(
つつ
)
まれたる
広
(
ひろ
)
き
館
(
やかた
)
の
内
(
うち
)
には
糸竹
(
しちく
)
管絃
(
くわんげん
)
の
響
(
ひびき
)
爽
(
さはや
)
かに、
002
飲
(
の
)
めよ、
003
騒
(
さわ
)
げの
大乱舞
(
だいらんぶ
)
が
行
(
おこな
)
はれて
居
(
ゐ
)
る。
004
ずつと
見渡
(
みわた
)
せば
中央
(
ちうあう
)
に
黎牛
(
やく
)
の
皮
(
かは
)
を
幾枚
(
いくまい
)
とも
無
(
な
)
く
積
(
つ
)
み
重
(
かさ
)
ね、
005
其
(
その
)
上
(
うへ
)
に
見
(
み
)
るも
憎
(
にく
)
さうなる
面構
(
つらがま
)
への
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は
数多
(
あまた
)
の
男女
(
だんぢよ
)
に
酌
(
しやく
)
をさせ
乍
(
なが
)
ら、
006
墨
(
すみ
)
の
様
(
やう
)
な
黒
(
くろ
)
き
酒
(
さけ
)
をグビリグビリと
傾
(
かたむ
)
けて
居
(
ゐ
)
る。
007
数十
(
すうじふ
)
人
(
にん
)
の
男女
(
だんぢよ
)
は
何
(
いづ
)
れも
一癖
(
ひとくせ
)
あるらしき
面構
(
つらがま
)
へ、
008
けい
を
敲
(
たた
)
く、
009
笛
(
ふえ
)
を
吹
(
ふ
)
く、
010
弓弦
(
ゆみづる
)
を
弾
(
だん
)
ずる、
011
石
(
いし
)
と
石
(
いし
)
とを
打
(
う
)
ち
乍
(
なが
)
ら
真裸
(
まつぱだか
)
の
儘
(
まま
)
踊
(
をど
)
り
狂
(
くる
)
うて
居
(
ゐ
)
る、
012
恰
(
あたか
)
も
百鬼
(
ひやくき
)
昼行
(
ちうかう
)
の
有様
(
ありさま
)
である。
013
蠑螈別
(
いもりわけ
)
『ヤア
大変
(
たいへん
)
に
酔
(
ゑい
)
がまわつた。
014
如何
(
どう
)
だ、
015
皆
(
みな
)
の
者共
(
ものども
)
、
016
一
(
ひと
)
つ
何
(
なに
)
か
面白
(
おもしろ
)
い
芸当
(
げいたう
)
をやつて
呉
(
く
)
れないか』
017
黒姫
(
くろひめ
)
『さアさア
皆
(
みな
)
サン、
018
これから
須佐之男
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
征伐
(
せいばつ
)
の
芝居
(
しばゐ
)
をやりませう。
019
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
サン、
020
お
前
(
まへ
)
が
須佐之男
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
になるのだよ、
021
黒姫
(
くろひめ
)
がお
前
(
まへ
)
の
髭
(
ひげ
)
を
むし
る
役
(
やく
)
、
022
高姫
(
たかひめ
)
さまは
手足
(
てあし
)
の
爪
(
つめ
)
を
脱
(
ぬ
)
く
役
(
やく
)
だよ』
023
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
『エーエ、
024
滅相
(
めつさう
)
な、
025
誰
(
たれ
)
がソンナ
役
(
やく
)
になりませうか、
026
爪
(
つめ
)
を
抜
(
ぬ
)
かれる
様
(
やう
)
な
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
は
根
(
ね
)
つからした
覚
(
おぼ
)
えが
御座
(
ござ
)
いませぬ』
027
黒姫
(
くろひめ
)
『
吐
(
ぬか
)
すな
吐
(
ぬか
)
すな、
028
貴様
(
きさま
)
は
爪
(
つめ
)
に
火
(
ひ
)
を
点
(
とぼ
)
して
吝
(
けち
)
な
事
(
こと
)
許
(
ばか
)
り
考
(
かんが
)
へ、
029
人
(
ひと
)
を
苦
(
くる
)
しめる
奴
(
やつ
)
だ、
030
鷹
(
たか
)
の
様
(
やう
)
に
爪
(
つめ
)
の
長
(
なが
)
い
代物
(
しろもの
)
だ、
031
喰
(
く
)
ひつめ
者
(
もの
)
だ、
032
如何
(
どう
)
でも
斯
(
こ
)
うでも
此
(
この
)
婆
(
ばば
)
がつめかけて
抜
(
ぬ
)
いてやらねば
措
(
を
)
くものかいヤイ』
033
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
『
爪
(
つめ
)
の
長
(
なが
)
いのは、
034
それやお
前
(
まへ
)
サンの
事
(
こと
)
だないか。
035
一途
(
いちづ
)
の
川辺
(
かはべ
)
で
往来
(
わうらい
)
の
旅人
(
たびびと
)
を
嚇
(
おどか
)
して
肝腎
(
かんじん
)
の
身魂
(
みたま
)
を
引
(
ひ
)
きぬく
欲婆
(
よくば
)
アサンだ。
036
お
前
(
まへ
)
サンから
爪
(
つめ
)
を
抜
(
ぬ
)
きなさい』
037
黒姫
(
くろひめ
)
『
能
(
よ
)
うツベコベと
理窟
(
りくつ
)
を
言
(
い
)
ふ
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
だナア、
038
エーエ
憎
(
にく
)
らしい、
039
頬辺
(
ほつぺた
)
なと
抓
(
つ
)
めつてやらうか』
040
と
鷹
(
たか
)
の
様
(
やう
)
な
鋭利
(
えいり
)
な
爪
(
つめ
)
で
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
の
頬
(
ほほ
)
をグツト
捻
(
ねぢ
)
る。
041
丁ン助
『イヽヽヽ
痛
(
いた
)
い
哩
(
わい
)
痛
(
いた
)
い
哩
(
わい
)
、
042
放
(
はな
)
サンかい』
043
黒姫
(
くろひめ
)
『
放
(
はな
)
さぬ
放
(
はな
)
さぬ、
044
神
(
かみ
)
が
爪
(
つめ
)
を
掛
(
かけ
)
たら、
045
いつかないつかな
放
(
はな
)
しはせぬぞ。
046
話
(
はな
)
すのは
庚申
(
かうしん
)
待
(
ま
)
ちの
晩
(
ばん
)
だ、
047
人
(
ひと
)
の
難儀
(
なんぎ
)
は
見
(
み
)
ざる、
048
聞
(
き
)
かざる、
049
言
(
い
)
はざるの
苦労人
(
くらうにん
)
の
黒姫
(
くろひめ
)
だ。
050
尻
(
けつ
)
なつと
喰
(
くら
)
ふとけ、
051
苦労
(
くらう
)
知
(
し
)
らずの
真黒
(
まつくろ
)
々助
(
くろすけ
)
の
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
奴
(
め
)
が』
052
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
『ヤアヤア、
053
婆
(
ば
)
アサン、
054
ヒヽヽヽひどい
哩
(
わい
)
、
055
ソヽヽヽそれや
余
(
あんま
)
りぢや、
056
頬辺
(
ほうぺた
)
がチヽヽヽちぎれる
哩
(
わい
)
』
057
黒姫
(
くろひめ
)
『チヽヽヽちつとは
痛
(
いた
)
からう、
058
血
(
ち
)
の
出
(
で
)
るとこ
迄
(
まで
)
、
059
いや
頬
(
ほう
)
が
ち
ぎれるとこ
迄
(
まで
)
、
060
いつかないつかな
放
(
はな
)
しやせぬぞや。
061
チ
ン
チ
クリンの
チ
ンピラ
奴
(
やつこ
)
、
062
ち
つとは
正念
(
しやうねん
)
が
行
(
い
)
つたか、
063
貴様
(
きさま
)
は
又
(
また
)
してもウラナイ
教
(
けう
)
の
裏
(
うら
)
をかく
奴
(
やつ
)
ぢや。
064
今
(
いま
)
にひよつとして
三五教
(
あななひけう
)
の
奴
(
やつ
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
よつたならば、
065
直
(
すぐ
)
に
黒
(
くろ
)
い
黒
(
くろ
)
い
燕
(
つばめ
)
の
様
(
やう
)
に
燕返
(
つばめがへ
)
しの
早業
(
はやわざ
)
をやる
代物
(
しろもの
)
だ。
066
この
黒姫
(
くろひめ
)
が
黒
(
くろ
)
い
目
(
め
)
でグツと
睨
(
にら
)
んだら
違
(
ちが
)
ひはせぬぞや』
067
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
『もしもし
高姫
(
たかひめ
)
さま、
068
ちつと
挨拶
(
あいさつ
)
して
下
(
くだ
)
さいな』
069
高姫
(
たかひめ
)
『マアマア
十万
(
じふまん
)
億土
(
おくど
)
の
成敗
(
せいばい
)
の
事
(
こと
)
思
(
おも
)
へば
磯
(
いそ
)
の
様
(
やう
)
なものだ。
070
お
前
(
まへ
)
の
将来
(
しやうらい
)
のためだよ、
071
もつともつと
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
072
首
(
くび
)
の
脱
(
ぬ
)
ける
処
(
ところ
)
まで
捻
(
ひね
)
つてやりなさい、
073
アーア
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
を
悪
(
あく
)
の
道
(
みち
)
に
引
(
ひ
)
き
入
(
い
)
れ
様
(
やう
)
と
思
(
おも
)
へば
骨
(
ほね
)
の
折
(
を
)
れる
事
(
こと
)
だワイ。
074
もしもし
大広木
(
おほひろき
)
正宗
(
まさむね
)
さま、
075
何
(
なに
)
して
御座
(
ござ
)
る、
076
酒
(
さけ
)
ばつかり
あふ
つて
居
(
を
)
らずに、
077
ちつとお
前
(
まへ
)
さまも
此
(
この
)
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
の
成敗
(
せいばい
)
をなさつたが
宜
(
よ
)
からうにナア』
078
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
『もうもうもう、
079
改心
(
かいしん
)
致
(
いた
)
します、
080
之
(
これ
)
からは
善
(
ぜん
)
の
ぜ
の
字
(
じ
)
も
申
(
まを
)
しませぬ、
081
飽迄
(
あくまで
)
も
悪
(
あく
)
を
立
(
た
)
て
通
(
とほ
)
します』
082
高姫
(
たかひめ
)
『これこれ
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
、
083
何
(
なに
)
を
言
(
い
)
ふのだ、
084
善一筋
(
ぜんひとすぢ
)
のウラナイ
教
(
けう
)
の
教
(
をしへ
)
ぢやぞい』
085
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
『ソヽヽヽそのウラナイ
教
(
けう
)
だから
裏
(
うら
)
を
言
(
い
)
つて
居
(
を
)
るのだ。
086
悪
(
あく
)
と
言
(
い
)
へば
善
(
ぜん
)
、
087
善
(
ぜん
)
と
言
(
い
)
へば
悪
(
あく
)
ぢやがなア』
088
黒姫
(
くろひめ
)
『はて
扨
(
さ
)
て
合点
(
がてん
)
の
悪
(
わる
)
い
男
(
をとこ
)
ぢや、
089
底
(
そこ
)
には
底
(
そこ
)
がある、
090
奥
(
おく
)
には
奥
(
おく
)
がある、
091
裏
(
うら
)
には
裏
(
うら
)
がある。
092
エーエ、
093
もうもう
手
(
て
)
が
倦
(
だる
)
うなつて
来
(
き
)
た、
094
モウこれで
勘
(
こら
)
へてやらう。
095
いやまだまだ
膏
(
あぶら
)
をとらねばならぬが、
096
婆
(
ばば
)
の
手
(
て
)
が
続
(
つづ
)
かぬから
一寸
(
ちよつと
)
一服
(
いつぷく
)
ぢや、
097
エヘヽヽヽ』
098
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
『
何
(
なに
)
が
何
(
なん
)
だか
皆
(
みな
)
サンの
仰有
(
おつしや
)
る
事
(
こと
)
は
一寸
(
ちよつと
)
も
訳
(
わけ
)
が
分
(
わか
)
りませぬワ。
099
善
(
ぜん
)
をすればお
気
(
き
)
に
入
(
い
)
るのやら、
100
悪
(
あく
)
がお
気
(
き
)
に
入
(
い
)
るのやら、
101
薩張
(
さつぱ
)
り
訳
(
わけ
)
が
分
(
わか
)
らなくなつて
来
(
き
)
た。
102
善
(
ぜん
)
なら
善
(
ぜん
)
、
103
悪
(
あく
)
なら
悪
(
あく
)
と、
104
はつきり
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい、
105
どちらへでも
私
(
わたし
)
はつきます』
106
高姫
(
たかひめ
)
『
善
(
ぜん
)
とも
悪
(
あく
)
とも
分
(
わか
)
らぬのが
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
ぢや。
107
人間
(
にんげん
)
の
分際
(
ぶんざい
)
として、
108
さう
善悪
(
ぜんあく
)
がはつきりと
分
(
わか
)
つて
堪
(
たま
)
るものかい。
109
何事
(
なにごと
)
も
高姫
(
たかひめ
)
の
仰有
(
おつしや
)
る
通
(
とほ
)
りに、
110
ヘイヘイ、
111
ハイハイと
盲目
(
めくら
)
滅法
(
めつぱふ
)
に
盲従
(
まうじゆう
)
すれば
良
(
い
)
いのだよ』
112
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
『アーア
又
(
また
)
しても
又
(
また
)
しても、
113
人
(
ひと
)
の
顔
(
かほ
)
を
抓
(
つめ
)
つたり
殴
(
なぐ
)
つたり、
114
爪
(
つめ
)
を
抜
(
ぬ
)
いたりせねば
改心
(
かいしん
)
さす
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ぬのか、
115
そこになるとアナヽ、
116
アヽヽヽ、
117
何
(
なん
)
ぢやつた、
118
忘
(
わす
)
れた
忘
(
わす
)
れた。
119
あ
ないでも、
120
あ
なでも
あ
つたら
隠
(
かく
)
れ
度
(
た
)
い
様
(
やう
)
な
気
(
き
)
がします
哩
(
わい
)
。
121
あ
な
恐
(
おそ
)
ろしや、
122
あ
な
有難
(
ありがた
)
や、
123
あ
な
苦
(
くる
)
しや、
124
あ
な
痛
(
いた
)
やなア』
125
黒姫
(
くろひめ
)
『
矢
(
や
)
つ
張
(
ぱり
)
貴様
(
きさま
)
は
三五教
(
あななひけう
)
に
未練
(
みれん
)
があるな、
126
よしよしこれから
須佐之男
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
ぢやないが、
127
頭
(
あたま
)
の
毛
(
け
)
も
髭
(
ひげ
)
も
爪
(
つめ
)
も
一本
(
いつぽん
)
も
無
(
な
)
い
様
(
やう
)
に
抜
(
ぬ
)
いてやらう。
128
これこれ
久助
(
きうすけ
)
、
129
釘抜
(
くぎぬき
)
を
持
(
も
)
つて
来
(
こ
)
い』
130
久助
(
きうすけ
)
『
釘抜
(
くぎぬき
)
は
此
(
この
)
館
(
やかた
)
には
一
(
ひと
)
つも
御座
(
ござ
)
いませぬ、
131
如何
(
いかが
)
致
(
いた
)
しませう』
132
黒姫
(
くろひめ
)
『アヽそうか、
133
釘抜
(
くぎぬき
)
は
無
(
な
)
いか、
134
それでは
仕方
(
しかた
)
がない。
135
これこれ
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
、
136
貴様
(
きさま
)
は
余
(
よ
)
つ
程
(
ぽど
)
幸福者
(
しあわせもの
)
だ、
137
之
(
これ
)
と
言
(
い
)
ふも
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
慈悲
(
じひ
)
ぢや、
138
ウラナイ
教
(
けう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御恩
(
ごおん
)
を
夢
(
ゆめ
)
にも
忘
(
わす
)
れてはならぬぞよ』
139
蠑螈別
(
いもりわけ
)
はグタグタに
酔
(
よ
)
ひ
潰
(
つぶ
)
れ、
140
蠑螈別
『オイオイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
141
何
(
なに
)
か
面白
(
おもしろ
)
い
芸当
(
げいたう
)
をして
見
(
み
)
せぬか、
142
折角
(
せつかく
)
飲
(
の
)
んだ
酒
(
さけ
)
が
沈
(
しづ
)
んで
仕舞
(
しま
)
ふ、
143
ちつと
浮
(
う
)
かして
呉
(
く
)
れ、
144
瓢箪
(
へうたん
)
ばかりが
浮物
(
うきもの
)
ぢやあるまい、
145
偶
(
たま
)
には
人間
(
にんげん
)
の
心
(
こころ
)
も
浮
(
う
)
かさねばならぬ、
146
それだから
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
浮世
(
うきよ
)
と
言
(
い
)
ふのだ』
147
黒姫
(
くろひめ
)
『アヽ
其
(
その
)
瓢箪
(
へうたん
)
で
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
した、
148
水
(
みづ
)
の
中
(
なか
)
に
浮
(
う
)
かして
置
(
お
)
いた
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
、
149
誰
(
たれ
)
か
行
(
い
)
つて
浚
(
さら
)
へて
来
(
こ
)
い、
150
此処
(
ここ
)
で
一
(
ひと
)
つ
面白
(
おもしろ
)
い
芸当
(
げいたう
)
をさして
楽
(
たの
)
しまう』
151
蠑螈別
(
いもりわけ
)
『アハヽヽヽ、
152
妙案
(
めうあん
)
々々
(
めうあん
)
、
153
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い、
154
サアサ
皆
(
みな
)
の
者共
(
ものども
)
、
155
二人
(
ふたり
)
の
奴
(
やつ
)
を
引摺
(
ひきずり
)
上
(
あ
)
げて
此
(
この
)
場
(
ば
)
へ
連
(
つ
)
れて
来
(
こ
)
い』
156
黒姫
(
くろひめ
)
『こら
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
、
157
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
爪
(
つめ
)
抜
(
ぬ
)
きの
成敗
(
せいばい
)
を
許
(
ゆる
)
してやる、
158
其
(
その
)
代
(
かは
)
りに
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
を
引摺
(
ひきずり
)
上
(
あ
)
げて
此
(
この
)
場
(
ば
)
へ
連
(
つ
)
れて
来
(
こ
)
い』
159
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
『はい、
160
畏
(
かしこ
)
まつて
御座
(
ござ
)
います、
161
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
私
(
わたし
)
一人
(
ひとり
)
では
到底
(
たうてい
)
手
(
て
)
にあひませぬ、
162
誰
(
たれ
)
か
助太刀
(
すけだち
)
を
貸
(
か
)
して
下
(
くだ
)
さいませ、
163
一人
(
ひとり
)
づつ
担
(
かつ
)
げて
連
(
つ
)
れて
参
(
まゐ
)
ります』
164
黒姫
(
くろひめ
)
『
久助
(
きうすけ
)
、
165
貴様
(
きさま
)
は
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
の
後
(
あと
)
から
跟
(
つ
)
いて、
166
サア
早
(
はや
)
く
引
(
ひ
)
き
上
(
あ
)
げて
来
(
こ
)
い』
167
久助
『
畏
(
かしこ
)
まりました』
168
と
二人
(
ふたり
)
は
表
(
おもて
)
の
石門
(
いしもん
)
を
開
(
ひら
)
くや
否
(
いな
)
や
尻
(
しり
)
端折
(
はしを
)
つて
池
(
いけ
)
の
辺
(
ほとり
)
を
指
(
さ
)
して
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
走
(
はし
)
つて
来
(
き
)
た。
169
見
(
み
)
れば
池
(
いけ
)
の
辺
(
ほとり
)
に
三男
(
さんなん
)
六女
(
ろくぢよ
)
の
神人
(
しんじん
)
が
立
(
た
)
つてゐる。
170
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
『オイオイ
久公
(
きうこう
)
、
171
貴様
(
きさま
)
先
(
さき
)
へ
行
(
ゆ
)
かぬかい』
172
久助
(
きうすけ
)
『
何
(
なに
)
、
173
俺
(
おれ
)
は
貴様
(
きさま
)
の
助太刀
(
すけだち
)
だ、
174
言
(
い
)
はば
代理
(
だいり
)
ぢや。
175
貴様
(
きさま
)
が
先
(
さき
)
へ
行
(
い
)
つて
縮尻
(
しくじ
)
つたら
其
(
その
)
控
(
ひか
)
へに
俺
(
おれ
)
が
出
(
で
)
るのだ、
176
先陣
(
せんぢん
)
は
貴様
(
きさま
)
だ、
177
早
(
はや
)
う
行
(
ゆ
)
かぬかい』
178
と、
179
尻
(
しり
)
をトンと
押
(
お
)
す
拍子
(
へうし
)
に
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
はトンと
尻餅
(
しりもち
)
を
搗
(
つ
)
く、
180
丁ン助
『アイタヽ、
181
ナヽヽヽ
何
(
なに
)
をしやがるのだい、
182
アーア、
183
もう
腰
(
こし
)
が
抜
(
ぬ
)
けた。
184
貴様
(
きさま
)
が
弱腰
(
よわごし
)
を
無理
(
むり
)
に
突
(
つ
)
いたものだから、
185
腰
(
こし
)
の
蝶番
(
てふつがい
)
が
折
(
を
)
れて
仕舞
(
しま
)
つたよ、
186
貴様
(
きさま
)
が
代理
(
だいり
)
するのだ。
187
サアサ
行
(
ゆ
)
け
行
(
ゆ
)
け』
188
久助
(
きうすけ
)
『
触
(
さわ
)
り
三百
(
さんびやく
)
とは
貴様
(
きさま
)
の
事
(
こと
)
だ、
189
なまくらな、
190
起
(
おき
)
んかい。
191
一寸
(
ちよつと
)
押
(
お
)
した
位
(
くらゐ
)
で
腰
(
こし
)
の
枢
(
くろろ
)
が
外
(
はづ
)
れる
奴
(
やつ
)
が
何処
(
どこ
)
にあるか』
192
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
『それでも
抜
(
ぬ
)
けたら
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
い、
193
嘘
(
うそ
)
と
思
(
おも
)
ふなら
俺
(
おれ
)
を
歩
(
ある
)
かして
見
(
み
)
い、
194
一寸
(
ちよつと
)
も
歩
(
ある
)
けやせぬぞ』
195
久助
(
きうすけ
)
『エーエ、
196
腰抜
(
こしぬ
)
け
野郎
(
やらう
)
だな』
197
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
『オヽヽヽ
俺
(
おれ
)
は
腰抜
(
こしぬ
)
け
野郎
(
やらう
)
だ、
198
それだから
貴様
(
きさま
)
行
(
ゆ
)
けと
言
(
い
)
ふのだ』
199
久助
(
きうすけ
)
『
俺
(
おれ
)
も
何
(
なん
)
だか
急
(
きふ
)
に
足
(
あし
)
が
抜
(
ぬ
)
けた
様
(
やう
)
だ、
200
膝坊主
(
ひざぼうず
)
奴
(
め
)
が
危
(
あぶ
)
ない
危
(
あぶ
)
ないと
吐
(
ぬか
)
しよる』
201
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
『
何
(
なん
)
だ、
202
乞食
(
こじき
)
の
正
(
しやう
)
月
(
ぐわつ
)
の
様
(
やう
)
に「
餅
(
もち
)
無
(
な
)
い
餅
(
もち
)
無
(
な
)
い」ナンテ、
203
団子
(
だんご
)
理屈
(
りくつ
)
を
垂
(
た
)
れない、
204
サアサ
行
(
い
)
け
行
(
い
)
け、
205
俺
(
おれ
)
は
絶対
(
ぜつたい
)
に
腰
(
こし
)
が
抜
(
ぬ
)
けた。
206
もう
一足
(
ひとあし
)
も
歩
(
ある
)
けぬ、
207
貴様
(
きさま
)
胆玉
(
きもだま
)
を
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
してあの
池
(
いけ
)
を
覗
(
のぞ
)
きなつとして
来
(
こ
)
い、
208
帰
(
かへ
)
つて
申訳
(
まをしわけ
)
が
無
(
な
)
いぞ』
209
亀彦
(
かめひこ
)
は
二人
(
ふたり
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
てツカツカと
間近
(
まぢか
)
に
進
(
すす
)
み、
210
亀彦
『ヤア
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
悪神
(
あくがみ
)
の
眷属
(
けんぞく
)
、
211
能
(
よ
)
くも
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
女
(
をんな
)
を
苦
(
くる
)
しめよつたナア、
212
サア
返報
(
へんぱう
)
がへしだ。
213
股
(
また
)
から
引裂
(
ひきさ
)
き
頭
(
あたま
)
から
塩
(
しほ
)
をつけて
齧
(
かぶ
)
つて
喰
(
く
)
つてやらうか』
214
と
呶鳴
(
どな
)
りつけた。
215
二人
(
ふたり
)
はキアツと
声
(
こゑ
)
を
立
(
た
)
て
腰
(
こし
)
の
抜
(
ぬ
)
けたと
言
(
い
)
つた
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
は
真先
(
まつさき
)
に
韋駄天
(
ゐだてん
)
走
(
ばし
)
りに、
216
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
つた。
217
話
(
はなし
)
変
(
かは
)
つて
蠑螈別
(
いもりわけ
)
は、
218
蠑螈別
『アーア、
219
何
(
なん
)
だか
今日
(
けふ
)
は
心
(
こころ
)
の
沈
(
しづ
)
む
日
(
ひ
)
だ。
220
皆
(
みな
)
の
奴共
(
やつども
)
、
221
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
芸
(
げい
)
無
(
な
)
し
猿
(
ざる
)
の
唐変木
(
たうへんぼく
)
許
(
ばか
)
りだな、
222
一
(
ひと
)
つ
面白
(
おもしろ
)
い
事
(
こと
)
をやつて
見
(
み
)
せぬか、
223
アーア
頭痛
(
づつう
)
がする』
224
高姫
(
たかひめ
)
『これも
何
(
なに
)
かの
御
(
ご
)
都合
(
つがふ
)
で
御座
(
ござ
)
いませう、
225
さう、
226
おなげき
遊
(
あそ
)
ばすには
及
(
およ
)
びませぬ、
227
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
の
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
が
一
(
ひと
)
つ
踊
(
をど
)
つてお
目
(
め
)
に
掛
(
か
)
けませう』
228
と
高姫
(
たかひめ
)
はお
多福
(
たふく
)
面
(
づら
)
をニユツと
出
(
だ
)
し、
229
山車尻
(
だんじり
)
をプリツプリツと
振
(
ふ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
230
怪
(
あや
)
しき
腰付
(
こしつき
)
で
踊
(
をど
)
り
始
(
はじ
)
めた。
231
此
(
この
)
時
(
とき
)
慌
(
あはただ
)
しく
息
(
いき
)
せききつて
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
、
232
久助
(
きうすけ
)
は
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
走
(
はし
)
り
来
(
きた
)
り、
233
丁ン助、久助
『タヽヽヽ
大変
(
たいへん
)
で
御座
(
ござ
)
います』
234
と
言
(
い
)
つたきり、
235
丁
(
ちよん
)
久
(
きう
)
二人
(
ふたり
)
は
息
(
いき
)
を
喘
(
はづ
)
ませて
此
(
この
)
場
(
ば
)
にドツと
倒
(
たふ
)
れたり。
236
黒姫
(
くろひめ
)
『
大変
(
たいへん
)
とは
何事
(
なにごと
)
ぞ、
237
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
は
如何
(
どう
)
致
(
いた
)
した』
238
久助
(
きうすけ
)
『ドヽヽヽ
如何
(
どう
)
も
斯
(
こ
)
うもありませぬ、
239
タヽヽヽ
大変
(
たいへん
)
々々
(
たいへん
)
、
240
大変
(
たいへん
)
と
言
(
い
)
へば
矢
(
や
)
つ
張
(
ぱ
)
り
大変
(
たいへん
)
で
御座
(
ござ
)
います』
241
黒姫
(
くろひめ
)
『こら、
242
久助
(
きうすけ
)
、
243
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
、
244
しつかり
致
(
いた
)
さぬか、
245
何
(
なに
)
が
大変
(
たいへん
)
だ』
246
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
『いやもう、
247
タヽヽヽ
大変
(
たいへん
)
で
御座
(
ござ
)
います、
248
大変
(
たいへん
)
と
申
(
まを
)
すより
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げる
言葉
(
ことば
)
も
無
(
な
)
かりけり、
249
アーン、
250
アンアンアン、
251
オーン、
252
オンオンオン』
253
黒姫
(
くろひめ
)
『エー
腑甲斐
(
ふがひ
)
無
(
な
)
い
奴
(
やつ
)
だ、
254
又
(
また
)
歩
(
ある
)
きもつて
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
よつたのだらう、
255
臆病
(
おくびやう
)
な
奴
(
やつ
)
だ、
256
しつかり
致
(
いた
)
さぬか』
257
とキユーと
鼻
(
はな
)
を
捻
(
ねぢ
)
る。
258
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
『イヽヽヽ
痛
(
いた
)
い、
259
勘忍
(
かんにん
)
勘忍
(
かんにん
)
』
260
黒姫
(
くろひめ
)
『サア、
261
しつかりと
申
(
まを
)
さぬか、
262
様子
(
やうす
)
は
如何
(
いか
)
に』
263
丁
(
ちよ
)
ン
助
(
すけ
)
『ヨヽヽヽ
様子
(
やうす
)
も
何
(
なん
)
にもあつたものか、
264
ヨヽヽヽ
用心
(
ようじん
)
なさいませ、
265
酔
(
よ
)
つぱらつて
居
(
ゐ
)
るどこの
騒
(
さわ
)
ぎぢやありませぬぞ、
266
アヽヽヽ
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
267
大
(
おほ
)
きな
男
(
をとこ
)
が
三
(
さん
)
人
(
にん
)
とアルマの
様
(
やう
)
な
別嬪
(
べつぴん
)
が
而
(
しか
)
も
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
、
268
どうで、
269
ロヽヽヽ
碌
(
ろく
)
な
事
(
こと
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ
哩
(
わい
)
』
270
黒姫
(
くろひめ
)
『
貴様
(
きさま
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
何
(
なに
)
が
何
(
なん
)
だか、
271
テン
と
分
(
わか
)
らぬ、
272
こらこら
久助
(
きうすけ
)
、
273
様子
(
やうす
)
は
如何
(
どう
)
だ。
274
女
(
をんな
)
は
何処
(
どこ
)
に
居
(
ゐ
)
る。
275
』
276
久助
(
きうすけ
)
『
女
(
をんな
)
どころの
騒
(
さわ
)
ぎですかい、
277
たつた
今
(
いま
)
、
278
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
の
頸
(
くび
)
は
胴
(
どう
)
を
離
(
はな
)
れますよ、
279
何卒
(
どうぞ
)
しつかりと
用意
(
ようい
)
をして
下
(
くだ
)
さい』
280
高姫
(
たかひめ
)
『お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
は
何
(
なに
)
を
狼狽
(
うろた
)
へ
騒
(
さわ
)
ぐのだ、
281
昔
(
むかし
)
の
昔
(
むかし
)
のさる
昔
(
むかし
)
の
根
(
こ
)
つ
本
(
ぽん
)
の
天地
(
てんち
)
の
始
(
はじ
)
まりから、
282
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
調
(
しら
)
べて
調
(
しら
)
べて
調
(
しら
)
べ
上
(
あ
)
げた
此
(
この
)
方
(
はう
)
ぢや、
283
仮令
(
たとへ
)
百億万
(
ひやくおくまん
)
の
敵
(
てき
)
押
(
お
)
し
寄
(
よ
)
せ
来
(
きた
)
るとも、
284
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
のあらむ
限
(
かぎ
)
りは
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ、
285
しつかり
致
(
いた
)
さぬか。
286
してして
女
(
をんな
)
は
何
(
なん
)
と
致
(
いた
)
した』
287
此
(
この
)
時
(
とき
)
門前
(
もんぜん
)
に
勇壮
(
ゆうさう
)
なる
宣伝歌
(
せんでんか
)
の
声
(
こゑ
)
、
288
四辺
(
あたり
)
を
轟
(
とどろ
)
かし
響
(
ひび
)
き
来
(
き
)
たりぬ。
289
高姫
(
たかひめ
)
、
290
黒姫
(
くろひめ
)
、
291
蠑螈別
(
いもりわけ
)
を
始
(
はじ
)
め、
292
一同
(
いちどう
)
は
俄
(
にはか
)
に
頭
(
かしら
)
痛
(
いた
)
み
胸
(
むね
)
は
引裂
(
ひきさ
)
く
許
(
ばか
)
り
苦
(
くる
)
しくなつて、
293
其
(
その
)
場
(
ば
)
にドツと
倒
(
たふ
)
れたり。
294
アヽ
此
(
この
)
結末
(
けつまつ
)
は
如何
(
いかが
)
なり
行
(
ゆ
)
くならむか。
295
(
大正一一・四・三
旧三・七
北村隆光
録)
296
(昭和一〇・三・二四 於台湾蘇澳駅 王仁校正)
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