霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第九章 薯蕷汁(とろろじる)〔五七六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第15巻 如意宝珠 寅の巻 篇:第1篇 正邪奮戦 よみ(新仮名遣い):せいじゃふんせん
章:第9章 薯蕷汁 よみ(新仮名遣い):とろろじる 通し章番号:576
口述日:1922(大正11)年04月02日(旧03月06日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年12月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
ウラナイ教もまた、邪神が人の身に巣くって立てた曲業の教えであった。
教主・高姫は、三人の宣伝使に危難を救われたとて、強いて一行を饗応の宴に迎え入れた。
五人が広間で待っていると高姫が現れ、ウラナイ教の祀る大自在天が三五教の宣伝使に乗り移って自分を助けたのだから、一行は大自在天の道具として使われただけだ、と言い捨てる。
また高姫は、わざと縁の欠けたどんぶりにとろろ飯を盛ってこさせ、宣伝使たちの身魂にふさわしい器を見つけてきた、と嘲笑する。国彦は怒ってとろろ飯を座敷に投げ捨ててしまった。
高姫らはその有様を見て、宣伝使の行いをあげつらって三五教をあざ笑う。黒姫と名乗るもう一人の婆は、素盞嗚命をこき下ろした。そして、高姫を変性男子の血筋で日の出神の生き宮である、と持ち上げた。
国彦は罵り合いの末、屁をこいて出て行ってしまった。道彦と安彦はその場を取り繕い、なぜ盲人ばかり信者にしているのか、と逆に質問をした。
黒姫は、世間のことが何もわからないようにしておいて神一筋となるよう、耳の鼓膜を破り、目の玉を抜いてしまうのだ、と答えた。そして高姫と黒姫は一同に、三五教を捨ててウラナイ教に改心するようにと迫り、出刃包丁を閃かして襲い掛かった。
安彦、道彦は逃げようとするが、とろろ汁にすべって転んでしまう。高姫と黒姫もすべって転び、出刃包丁は安彦の側の床に突き刺さった。
田加彦、百舌彦が加勢に来るが、やはりとろろ汁にすべって転んでしまう。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2025-05-07 06:27:26 文字数:4968 OBC :rm1509
愛善世界社版:102頁 八幡書店版:第3輯 318頁 修補版: 校定版:102頁 普及版:46頁 初版: ページ備考:
001 千早(ちはや)振(ふ)る遠(とほ)き神代(かみよ)のその始(はじ)め、002神(かみ)の教(をしへ)に背(そむ)きたる、003天足(あだる)彦(ひこ)や胞場姫(えばひめ)の、004醜(しこ)の身魂(みたま)の凝結(ぎようけつ)し、005八岐(やまた)大蛇(をろち)や、006金毛(きんまう)九尾(きうび)白面(はくめん)の悪狐(あくこ)となつて、007天地(てんち)の水火(いき)を曇(くも)らせつ、008常世(とこよ)の国(くに)に現(あら)はれし、009常世(とこよ)彦(ひこ)や常世姫(とこよひめ)、010盤古(ばんこ)大神(だいじん)の体(からだ)に宿(やど)りて世(よ)を乱(みだ)し、011一度(いちど)は神(かみ)の御教(みをしへ)に、012服(まつろ)ひ奉(まつ)り真心(まごころ)に、013立帰(たちかへ)りしも束(つか)の間(ま)の、014いや次々(つぎつぎ)に伝(つた)はりて、015ウラル彦(ひこ)やウラル姫(ひめ)の、016又(また)もや体(からだ)に宿(やど)りつつ、017天地(てんち)を乱(みだ)す曲業(まがわざ)の、018力(ちから)も失(う)せて常世(とこよ)国(くに)、019島(しま)の八十島(やそしま)八十国(やそくに)の深山(みやま)の奥(おく)に立籠(たてこも)り、020人(ひと)の身魂(みたま)を宿(やど)として、021バラモン教(けう)やウラナイの、022教(をしへ)を樹(た)てて北山(きたやま)の、023鳥(とり)も通(かよ)はぬ山奥(やまおく)に、024数多(あまた)の魔神(まがみ)を呼(よ)び集(つど)へ、025ウラナイ教(けう)と銘(めい)打(う)つて、026又(また)もや国(くに)を乱(みだ)し行(ゆ)く、027其(そ)の曲業(まがわざ)ぞ由々(ゆゆ)しけれ。
028 館(やかた)の主(あるじ)高姫(たかひめ)は、029安彦(やすひこ)、030国彦(くにひこ)、031道彦(みちひこ)の宣伝使(せんでんし)に危難(きなん)を救(すく)はれ、032感謝(かんしや)の意(い)を表(あら)はし館(やかた)に迎(むか)へ入(い)れて、033鄭重(ていちよう)に饗応(きやうおう)せむと強(しひ)て一行(いつかう)を迎(むか)へ入(い)れた。
034 一行(いつかう)五(ご)人(にん)は美(うる)はしき一室(ひとま)に招(せう)ぜられ、035手足(てあし)を伸(の)ばし悠々(いういう)として寛(くつろ)いでゐる。036高姫(たかひめ)は此(こ)の場(ば)に現(あら)はれ、
037高姫『コレハコレハ三(さん)人(にん)の宣伝使(せんでんし)様(さま)、038能(よ)うマア危(あやふ)き所(ところ)を御(お)救(たす)け下(くだ)さいました。039これと云(い)ふも全(まつた)く妾(わたし)が日頃(ひごろ)信仰(しんかう)するウラナイ教(けう)の御(ご)本尊(ほんぞん)大自在天(だいじざいてん)様(さま)の御(お)引合(ひきあは)せでございませう。040神(かみ)様(さま)は三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)に憑依(のりうつ)つて、041妾(わらは)の危難(きなん)を御(お)救(すく)ひ下(くだ)さつたのです。042謂(ゐ)はば貴方(あなた)等(がた)は神(かみ)の御(お)道具(だうぐ)に御(お)使(つか)はれなさつただけのもの、043貴方(あなた)の奥(おく)には大自在天(だいじざいてん)様(さま)が御(お)鎮(しづ)まりでございます。044誠(まこと)に以(もつ)て御(お)道具(だうぐ)御(ご)苦労(くらう)でございました。045何(なに)もございませぬが悠々(いういう)と御(お)あがり下(くだ)さいませ』
046と言(い)ひ棄(す)てて徐々(しづしづ)と次(つぎ)の間(ま)に姿(すがた)を隠(かく)した。
047国彦(くにひこ)『ナンダ、048怪体(けつたい)な挨拶(あいさつ)じやないか。049われわれは三五教(あななひけう)の教理(けうり)に依(よ)つて、050敵(てき)を敵(てき)と致(いた)さず生命(いのち)を的(まと)に危険(きけん)を冒(をか)して救(すく)つてやつたのだ。051それに何(なん)ぞや、052大自在天(だいじざいてん)の御(お)道具(だうぐ)に使(つか)はれなさつたなぞと、053減(へら)ず口(ぐち)を叩(たた)きよつて何(ど)うも宗旨(しうし)根性(こんじやう)と云(い)ふものは、054何処迄(どこまで)も抜(ぬ)けぬものとみえるワイ』
055道彦(みちひこ)『マアマア何(ど)うでも好(い)いぢやないか。056彼奴(あいつ)を片端(かたつぱし)から三五教(あななひけう)に兜(かぶと)を脱(ぬ)がしさへすれば好(い)いのだ。057何(なん)でも好(い)いから言(い)はすだけ言(い)はして置(お)けば、058腹(はら)の底(そこ)が自然(しぜん)に解(わか)つて来(く)る。059さう言葉尻(ことばじり)を捉(とら)へて、060ゴテゴテ言(い)ふものでは無(な)い。061洋々(やうやう)たる海(うみ)の如(ごと)き寛容心(くわんようしん)を以(もつ)て衆生(しうじやう)済度(さいど)に掛(かか)らねば、062彼(あ)れ位(くらゐ)なことに目(め)に角(かど)を立(た)てて鼻息(はないき)を喘(はづ)ますやうなことでは、063到底(たうてい)宣伝使(せんでんし)どころか、064信者(しんじや)たるの価値(かち)さへもないと云(い)つても然(しか)りだよ』
065 斯(か)く話(はな)す折(をり)しも以前(いぜん)の高姫(たかひめ)は、066縁(ふち)の欠(か)けたる丼鉢(どんぶりばち)に麦飯(むぎめし)を盛(も)り、067粘々(ねばねば)したものをドロリとかけ、068三(さん)人(にん)の小間使(こまづかひ)に持(も)たせて入(い)り来(きた)り、
069高姫『コレハコレハ皆(みな)サン、070ご苦労(くらう)でございました。071山家(やまが)のこととて何(なに)か御(お)構(かま)ひを致(いた)さねばなりませぬが、072麦飯(むぎめし)に薯蕷汁(とろろ)が出来(でき)ました。073これなりとドツサリ御(お)あがり下(くだ)さい。074俄(にはか)の客来(きやくらい)で沢山(たくさん)の鉢(はち)の中(なか)から探(さが)しましたが、075縁(ふち)の欠(か)けたのは漸(やうや)く三(み)つよりございませぬ。076二人(ふたり)の御供(みとも)は最前(さいぜん)ソツとあがれとも音(おと)はぬのに、077喜三郎(きさぶろう)をなさいましたから、078どうぞ辛抱(しんばう)して下(くだ)さいませ。079貴方(あなた)等(がた)に出(だ)すやうな器(うつは)は漸(やうや)う三(み)つ見(み)つかりました。080後(あと)は立派(りつぱ)な完全(くわんぜん)無欠(むけつ)の器(うつは)ばつかりでございます。081この様(やう)に見(み)えても痰(たん)なぞは滅多(めつた)に混入(こんにふ)してゐる気遣(きづか)ひはございませぬ。082どうぞタント タント御(お)あがり下(くだ)さいませ。083オホヽヽヽヽ』
084と厭(いや)らしき笑(わら)ひと共(とも)に、085白(しろ)い出歯(でば)をニユツと出(だ)し、086のそりのそりと又(また)もや元(もと)の居室(ゐま)に姿(すがた)を隠(かく)しける。
087国彦(くにひこ)『われわれを飽(あ)く迄(まで)侮辱(ぶじよく)しよる怪(け)しからぬ奴(やつ)だ。088恰(まる)で一途(いちづ)の川(かは)の二人(ふたり)婆(ばば)のやうな面(つら)をしよつて、089モー堪忍袋(かんにんぶくろ)の緒(を)が切(き)れた』
090と云(い)ひ乍(なが)ら、091丼鉢(どんぶりばち)の麦飯(むぎめし)とろろを座敷(ざしき)一面(いちめん)に投(な)げつける。092座敷(ざしき)はヌルヌルととろろの泥田(どろた)のやうになつて了(しま)つた。
093 又(また)もや二人分(ふたりぶん)の丼鉢(どんぶりばち)を次(つぎ)の室(ま)に投(な)げ付(つ)け、094次(つぎ)の室(ま)も亦(また)とろろの泥田(どろた)となつた。
095国彦(くにひこ)『さアこれで溜飲(りういん)が下(さが)つた。096婆(ばば)の奴(やつ)滑(すべ)り倒(こ)けよると一層(ひとしほ)御(ご)愛嬌(あいけう)だがナア』
097安彦(やすひこ)『オイ国彦(くにひこ)、098貴様(きさま)は乱暴(らんばう)な奴(やつ)だナア。099三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)が喧嘩(けんくわ)を買(か)うと云(い)ふことがあるものか、100如何(いか)なる強敵(きやうてき)に向(むか)つても飽(あ)く迄(まで)無抵抗(むていかう)主義(しゆぎ)で、101誠(まこと)で勝(か)つのだよ。102ナント云(い)ふ情無(なさけな)いことをして呉(く)れるのだ。103今日(けふ)限(かぎ)り破門(はもん)を致(いた)すから、104さう心得(こころえ)ろ』
105国彦(くにひこ)『それだから三五教(あななひけう)は腰抜(こしぬ)け教(けう)だと云(い)ふのだよ。106貴様(きさま)の方(はう)から破門(はもん)する迄(まで)に、107こちらの方(はう)から国交(こくかう)断絶(だんぜつ)だ』
108と自暴糞(やけくそ)になり、109捻鉢巻(ねぢはちまき)となつてドンドンと四股(しこ)を踏(ふ)み鳴(な)らし、110荒(あ)れ狂(くる)ふ此(こ)の物音(ものおと)に驚(おどろ)いて、111高姫(たかひめ)を始(はじ)め数人(すうにん)の男女(だんぢよ)此(この)場(ば)に現(あら)はれ、
112高姫(たかひめ)『コレハコレハ三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)様(さま)、113誠(まこと)に御(ご)立派(りつぱ)な御(ご)教理(けうり)には感心(かんしん)致(いた)しました。114口(くち)では立派(りつぱ)なことを仰有(おつしや)るが、115其(そ)の行(おこな)ひは一層(ひとしほ)見上(みあ)げたもの、116人(ひと)の座敷(ざしき)に泊(とま)り乍(なが)ら、117吾々(われわれ)一同(いちどう)が心(こころ)を籠(こ)めた御(ご)馳走(ちそう)を座敷(ざしき)一面(いちめん)に撒(ま)き散(ち)らし襖(ふすま)を蹴倒(けたふ)し、118障子(しやうじ)の骨(ほね)を折(を)り、119イヤもう乱暴(らんばう)狼藉(ろうぜき)、120実(じつ)に立派(りつぱ)な御(ご)教理(けうり)には、121ウラナイ教(けう)の吾々(われわれ)も、122あまり感心(かんしん)の度(ど)が過(す)ぎてアフンと致(いた)します。123開(あ)いた口(くち)が閉(すぼ)まりませぬ。124三五教(あななひけう)の御教(みをしへ)通(どほ)り手(て)も足(あし)も踏込(ふみこ)む所(ところ)がございませぬ。125オホヽヽヽヽ。126コレコレ皆(みな)の者(もの)ども、127この宣伝使(せんでんし)様(さま)の立派(りつぱ)な御教(みをしへ)をお前(まへ)達(たち)は、128能(よ)く腹(はら)へ入(い)れて置(お)くがよいぞや』
129 もう一人(ひとり)の婆(ばば)は口(くち)を尖(とが)らし、
130婆(黒姫)『コリヤお前(まへ)達(たち)は三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)だと云(い)つて偉(えら)さうに天下(てんか)を股(また)にかけて歩(ある)く代物(しろもの)だらう。131大方(おほかた)三五教(あななひけう)は斯(こ)んな行(おこな)ひの悪(わる)い宗教(しうけう)だと思(おも)つて居(を)つた。132やつぱり人(ひと)の風評(うはさ)は疑(うたが)はれぬワイ。133屹度(きつと)変性(へんじやう)女子(によし)の世(よ)の乱(みだ)れたやり方(かた)を見倣(みなら)うて、134其処中(そこらぢう)をとろろドツコイ泥(どろ)だらけに穢(けが)して歩(ある)く悪(あく)の御用(ごよう)だらう。135素盞嗚(すさのをの)命(みこと)は天(あま)の岩戸(いはと)を閉(し)める役(やく)だと云(い)ふことだが、136悪(あく)も其処(そこ)まで徹底(てつてい)すれば反(かへ)つて面白(おもしろ)い。137このウラナイ教(けう)は斯(こ)う見(み)えても立派(りつぱ)なものだぞ。138変性(へんじやう)男子(なんし)の生粋(きつすゐ)の教(をしへ)を守(まも)つとるのだぞ。139三五教(あななひけう)も初(はじ)めは変性(へんじやう)男子(なんし)の教(をしへ)で立派(りつぱ)なものだつたが、140素盞嗚(すさのをの)命(みこと)の身魂(みたま)の憑(うつ)つた肉体(にくたい)が出(で)て来(き)て、141人(ひと)の苦労(くらう)で徳(とく)を取(と)らうとしよつて、142変性(へんじやう)男子(なんし)を押込(おしこ)めて世(よ)の乱(みだ)れた行(や)り方(かた)の、143女子(によし)の教(をしへ)が覇張(はば)るものだから三五教(あななひけう)もコンナ悪(あく)の教(をしへ)になつて了(しま)つたのだ。144三五教(あななひけう)の奴(やつ)は二(ふた)つ目(め)には、145ウラル教(けう)が何(ど)うだのバラモン教(けう)が悪(あく)だのと、146お題目(だいもく)のやうに仰有(おつしや)るけれど、147今(いま)の宣伝使(せんでんし)の行(おこな)ひは何(ど)うぢやな。148これでも善(ぜん)の立派(りつぱ)な教(をしへ)と云(い)ふのかい。149この高姫(たかひめ)も元(もと)は変性(へんじやう)男子(なんし)の御(お)血筋(ちすぢ)の肉体(にくたい)だ、150日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)ぢや。151竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)さまもチヨコチヨコ御(お)出(い)でになつて、152体主霊従国(がいこく)の悪神(あくがみ)の仕組(しぐみ)を、153すつかりと握(にぎ)つてござるのぢや。154変性(へんじやう)女子(によし)と云(い)ふ奴(やつ)は胴体(どうたい)無(な)しの烏賊(いか)上(のぼ)り、155三文(さんもん)の大神楽(だいかぐら)のやうに頤太(あごた)ばつかり発達(はつたつ)しよつて、156鰐(わに)のやうな口(くち)を開(あ)けて、157其方(そちら)此方(こちら)の有象(うざう)無象(むざう)を噛(か)んだり、158吐(は)いたりする大化物(おほばけもの)だ。159お前(まへ)達(たち)は其(そ)の大化物(おほばけもの)を神(かみ)様(さま)だと思(おも)つて戴(いただ)いて居(ゐ)る小化物(こばけもの)ならよいが、160小馬鹿(こばか)者(もの)の薄(うす)馬鹿者(ばかもの)だよ。161これからちつとウラナイ教(けう)の教(をしへ)を聴(き)きなさい。162身(み)の行(おこな)ひを換(か)へて誠(まこと)水晶(すゐしやう)のやり方(かた)に立替(たてか)へねば何時(いつ)まで経(た)つても五六七(みろく)の世(よ)は来(き)はせぬぞえ』
163国彦(くにひこ)『エーエ、164ツベコベと能(よ)う八釜敷(やかまし)く吐(ぬか)す婆(ばば)だな。165貴様(きさま)は偉(えら)さうにツベコベと小理窟(こりくつ)を並(なら)べよるが、166人(ひと)を招待(せうたい)するに欠(か)けた穢(きたな)い鉢(はち)を選(えら)んで出(だ)すと云(い)ふことがあるかい。167これが抑(そもそ)も貴様(きさま)の方(はう)から俺(おれ)を焚(た)きつけにかかつてゐよるのだ。168三五教(あななひけう)だつて、169いらはぬ蜂(はち)はささぬぞ、170釣鐘(つりがね)も叩(たた)くものが無(な)ければ音(おと)なしいものだ、171春秋(しゆんじう)の筆法(ひつぱふ)で言(い)へば、172貴様(きさま)が丼鉢(どんぶりばち)を投(な)げたのだ。173イヤ大自在天(だいじざいてん)がやつたのだ。174俺(おれ)は大自在天(だいじざいてん)の道具(だうぐ)に使(つか)はれたのだ。175此処(ここ)の大将(たいしやう)が最前(さいぜん)さう云(い)つたぢやないか。176ナント大自在天(だいじざいてん)と云(い)ふ神(かみ)は乱暴(らんばう)な神(かみ)だなア。177ウラナイ教(けう)はコンナ悪魔(あくま)の乱暴(らんばう)な神(かみ)を御(ご)本尊(ほんぞん)にして居(ゐ)るのか苟(いやし)くも三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)は、178至粋(しすゐ)至純(しじゆん)の身魂(みたま)の持主(もちぬし)だぞ』
179高姫(たかひめ)『オホヽヽヽ、180至粋(しすゐ)至純(しじゆん)の身魂(みたま)の持主(もちぬし)の為(な)さること哩(わい)のー。181自分(じぶん)のした責任(せきにん)を、182勿体無(もつたいな)い、183大自在天(だいじざいてん)様(さま)に塗(ぬ)りつけて、184それで自分(じぶん)は知(し)らぬ顔(かほ)の半兵衛(はんべゑ)をきめこんでゐるのか。185都合(つがう)の好(い)い教理(けうり)だなア』
186国彦(くにひこ)『われわれの魂(たましひ)は水晶魂(すゐしやうだま)だ。187真澄(ますみ)の鏡(かがみ)も同様(どうやう)だ。188それだからウラナイ教(けう)の悪(あく)がすつかり此方(こちら)の鏡(かがみ)に映(うつ)つて居(ゐ)るのだ。189アーア水晶(すゐしやう)の身魂(みたま)も辛(つら)いものだワイ。190アハヽヽヽ』
191黒姫(くろひめ)『団子(だんご)理窟(りくつ)をこねる日(ひ)には際限(さいげん)が無(な)い。192兎(と)も角(かく)行(おこな)ひが一等(いつとう)だ。193立派(りつぱ)な御(お)座敷(ざしき)の真(ま)ん中(なか)に主人(しゆじん)の好意(かうい)で出(だ)した麦飯(むぎめし)とろろを打(ぶ)ち開(あ)けるとは沙汰(さた)の限(かぎ)り、194やつぱり悪(あく)の性来(しやうらい)は何(ど)うしても現(あら)はれるものぢや。195ソンナ馬鹿(ばか)な教(をしへ)の宣伝使(せんでんし)になるよりも、196一(ひと)つ改心(かいしん)してウラナイ教(けう)になつたら如何(どう)だい。197誠(まこと)の変性(へんじやう)男子(なんし)の教(をしへ)は此(こ)の高姫(たかひめ)さまと、198黒姫(くろひめ)がチヤント要(かなめ)を握(にぎ)つてゐるのだよ。199昔(むかし)の神代(かみよ)の根本(こんぽん)の身魂(みたま)の因縁(いんねん)から、200人民(じんみん)の大先祖(だいせんぞ)のことから又(また)万劫(まんがふ)末代(まつだい)のこと、201根(ね)の国(くに)、202底(そこ)の国(くに)、203なにも彼(か)も知(し)つて知(し)つて知(し)り抜(ぬ)いた世界(せかい)で、204たつた一人(ひとり)の日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)ぢや。205この黒姫(くろひめ)は竜宮(りうぐう)の乙姫(おとひめ)の守護(しゆご)だぞ。206艮(うしとら)の金神(こんじん)様(さま)も元(もと)は此処(ここ)から現(あら)はれたのだ。207本(もと)が大事(だいじ)ぢや。208「本(もと)断(き)れて末(すゑ)続(つづ)くとは思(おも)ふなよ。209本(もと)ありての枝(えだ)もあれば、210末(すゑ)もあるぞよ」と三五教(あななひけう)は教(をし)へて居(ゐ)るぢやないか。211その根本(こんぽん)の本(もと)の本(もと)の大本(おほもと)は、212此(この)日(ひ)の出神(でのかみ)がグツト握(にぎ)つて居(ゐ)るのぢや。213神(かみ)の奥(おく)には奥(おく)があるぞ。214三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)のやうに理窟(りくつ)ばかり言(い)つてこの頃(ごろ)流行(はや)る学(がく)の力(ちから)を以(もつ)て、215神(かみ)の因縁(いんねん)を説(と)かうと思(おも)つても、216それは駄目(だめ)ぢや。217千(せん)年(ねん)万(まん)年(ねん)経(た)つたとて誠(まこと)の神(かみ)の因縁(いんねん)が判(わか)つて堪(たま)るものか。218誠(まこと)の神(かみ)の御用(ごよう)が致(いた)し度(た)くば、219ウラナイ教(けう)に改心(かいしん)して随(したが)うがよかろう』
220国彦(くにひこ)『婆(ば)アサン、221大(おほ)きに御(ご)心配(しんぱい)かけました。222この国彦(くにひこ)は三五教(あななひけう)でも無(な)ければ、223ウラル教(けう)でもない、224ウラナイ教(けう)では尚更(なほさら)ないのだ。225あまり三五教(あななひけう)の悪(わる)いことばつかり仰有(おつしや)ると、226ウラナイ教(けう)の化(ば)けの皮(かは)が現(あら)はれるぞえ。227左様(さやう)なら、228モシモシ三五教(あななひけう)の二人(ふたり)の宣伝使(せんでんし)サン御悠(ごゆつ)くりと下(くだ)らぬ説教(せつけう)でも聴(き)かして貰(もら)つて、229眉毛(まゆげ)を読(よ)まれ、230尻(しり)の毛(け)が一本(いつぽん)も無(な)いとこ迄(まで)抜(ぬ)かれなさるがよろしからう。231コラ二人(ふたり)の皺苦茶(しわくちや)婆(ばば)、232用心(ようじん)せーよ。233何処(どこ)に何(なに)が破裂(はれつ)致(いた)さうやら判(わか)らぬぞよ』
234と尻(しり)をクリツと捲(まく)つて裏門(うらもん)から、235一発(いつぱつ)破裂(はれつ)させ乍(なが)ら何処(いづく)とも無(な)く姿(すがた)を隠(かく)して了(しま)つた。
236道彦(みちひこ)『アハヽヽヽ』
237安彦(やすひこ)『アーア道彦(みちひこ)サン、238彼様(あんな)乞食(こじき)を伴(つ)れて来(く)るものだから、239薩張(さつぱ)り三五教(あななひけう)と混同(こんどう)されて偉(えら)い迷惑(めいわく)をした。240これから迂濶(うつかり)と何(なん)でも無(な)い者(もの)を連(つ)れて歩(ある)くものぢやない』
241道彦(みちひこ)『アヽ左様(さやう)ですな、242モシモシ高姫(たかひめ)サン、243黒姫(くろひめ)サン、244三五教(あななひけう)には彼(あ)の様(やう)な宣伝使(せんでんし)は、245一人(ひとり)も居(を)りませぬよ。246彼(あ)の男(をとこ)は途中(とちう)から道案内(みちあんない)に伴(つ)れて来(き)たのですから、247好(い)い気(き)になつて宣伝使(せんでんし)気取(きど)りでアンナことを言(い)つたのですよ。248アハヽヽヽ』
249黒姫(くろひめ)『神(かみ)様(さま)の宣伝使(せんでんし)は嘘(うそ)は言(い)はぬもの、250誠(まこと)一(ひと)つの教(をしへ)を樹(た)てるのは、251此(こ)のウラナイ教(けう)。252三五教(あななひけう)は矢張(やつぱ)り嘘(うそ)をつきますなア。253彼(あ)の男(をとこ)は元(もと)は与太彦(よたひこ)と云(い)うて、254貴方(あなた)等(がた)と一緒(いつしよ)に宣伝(せんでん)に歩(ある)いて居(を)つた人(ひと)でせう。255違(ちが)ひますかな』
256安彦、道彦『サア』
257黒姫『サア返答(へんたふ)は』
258安彦、道彦『サアそれはマアマアマア彼奴(あいつ)は俄(にはか)に気(き)が違(ちが)つたのですよ。259それだからアンナ脱線(だつせん)した行(おこな)ひをやるのですワ。260アハヽヽヽ』
261黒姫(くろひめ)『能(よ)う嘘(うそ)をつく人(ひと)だナ。262今(いま)お前(まへ)サンは道(みち)案内(あんない)に途中(とちう)から雇(やと)うて来(き)たと云(い)つたぢやないか。263それだから三五教(あななひけう)は駄目(だめ)、264ウラナイ教(けう)が誠(まこと)の教(をしへ)と云(い)ふのだ』
265安彦(やすひこ)『一体(いつたい)此処(ここ)の館(やかた)には盲人(めくら)ばつかり居(を)りますな』
266と話(はなし)を態(わざ)と横(よこ)へ転(てん)じた。
267黒姫(くろひめ)『誠(まこと)の教(をしへ)を聴(き)かうと思(おも)へば、268目(め)が開(あ)いて居(を)つては小理窟(こりくつ)が多(おほ)くつて仕様(しやう)がないから、269みな盲目(めくら)や聾(つんぼ)ばかり寄(よ)せてあるのだ。270見(み)ざる、271聞(き)かざると言(い)うて、272盲目(めくら)聾(つんぼ)程(ほど)よいものは無(な)い。273此処(ここ)へ来(く)る奴(やつ)は、274みな此(この)高姫(たかひめ)サンと黒姫(くろひめ)が耳(みみ)の鼓膜(こまく)を破(やぶ)り、275眼(め)の球(たま)を抜(ぬ)いて、276世間(せけん)の事(こと)がなにも解(わか)らぬやうに、277神一筋(かみひとすぢ)になるやうにしてあるのだ。278お前(まへ)も怪体(けつたい)な目(め)をウラナイ教(けう)に、279すつくり御(お)供(そな)へしなさい。280さうしたら本当(ほんたう)の安心(あんしん)が出来(でき)るぢやらう。281昔(むかし)竜宮城(りうぐうじやう)に仕(つか)へて居(を)つた小島別(こじまわけ)は、282盲目(めくら)であつたお蔭(かげ)で、283結構(けつこう)な国魂(くにたま)の神(かみ)となつて神(かみ)の教(をしへ)を筑紫(つくし)の島(しま)でやつて居(ゐ)るといふことだ。284目(め)の明(あ)いた奴(やつ)に碌(ろく)な奴(やつ)が居(ゐ)るものかい。285盲目(めくら)千(せん)人(にん)に目明(めあ)き一人(ひとり)の世(よ)の中(なか)に、286十目(じふもく)の視(み)る所(ところ)十指(じつし)の指(ゆび)さす所(ところ)、287大勢(おほぜい)の盲目(めくら)の方(はう)に附(つ)くのが誠(まこと)だ。288サア、289これからウラナイ教(けう)に帰順(きじゆん)さしてやらう』
290と高姫(たかひめ)、291黒姫(くろひめ)の二人(ふたり)は、292出刃(でば)庖丁(ぼうちやう)をひらめかし、293安彦(やすひこ)、294道彦(みちひこ)の眼球(がんきう)目蒐(めが)けて突(つ)いてかかる。295二人(ふたり)は、
296安彦、道彦『コリヤ大変(たいへん)』
297と逃(に)げ出(だ)す途端(とたん)に、298座敷(ざしき)一面(いちめん)のとろろ汁(じる)に足(あし)を、299辷(すべ)らして、300スツテンドウと仰向(あふむ)けになつた。
301 二人(ふたり)の婆(ばば)も、302とろろに足(あし)を滑(すべ)らし、303仰向(あふむ)けにドツと倒(たふ)れた。304婆(ばば)の持(も)つた出刃(でば)庖丁(ぼうちやう)は道彦(みちひこ)の眼(め)の四五寸(しごすん)側(そば)に光(ひか)つてゐる。
305 道彦(みちひこ)、306安彦(やすひこ)は一生(いつしやう)懸命(けんめい)逃(に)げ出(だ)さうとすれど、307ヌルヌルと足(あし)が滑(すべ)つて同(おな)じ所(ところ)にジタバタやつてゐる。308百舌彦(もずひこ)、309田加彦(たかひこ)は一室(ひとま)から飛(と)んで出(で)て、
310百舌彦、田加彦『コラコラ婆(ばば)の癖(くせ)に手荒(てあら)いことを致(いた)すな。311その出刃(でば)渡(わた)せ』
312と矢庭(やには)に引捉(ひつとら)へむとして、313又(また)もやズルリと滑(すべ)り、314二人(ふたり)は尻餅(しりもち)搗(つ)いた途端(とたん)に、315道彦(みちひこ)の顔(かほ)の上(うへ)に臀(しり)をドツカと下(お)ろした。316その痛(いた)さに気(き)が付(つ)けば王仁(おに)は、317宮垣内(みやがいち)の茅屋(ばうをく)に法華(ほつけ)坊主(ばうず)の数珠(じゆず)に頭(あたま)をしばかれ居(ゐ)たりける。
318(大正一一・四・二 旧三・六 外山豊二録)
319(昭和一〇・三・二〇 於彰化支部 王仁校正)
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