霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は従来バージョンをお使い下さい| サブスクのお知らせ

第一四章 落胆(らくたん)〔九五五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第34巻 海洋万里 酉の巻 篇:第2篇 有情無情 よみ(新仮名遣い):うじょうむじょう
章:第14章 落胆 よみ(新仮名遣い):らくたん 通し章番号:955
口述日:1922(大正11)年09月13日(旧07月22日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年12月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
建日館にて、黒姫を案内してきた玉公は、幾公から臨時の門番を頼まれて門番部屋に詰め、門を守っていた。
そこへ虎公が、黒姫のお供を連れてきたと言って門の外から声をかけた。虎公、房公、芳公、玉公は門の内外で、おかしな掛け合いを続けている。
虎公は門の外、塀の小さな窓から酒席に向かって無花果の実を三四十ばかり投げ込むいたずらを始めた。酔った客たちは驚き、熊公は喧嘩を始めた。見かねた虎公は酒席に飛び込み、熊公をなだめた。
お種は虎公を見つけて声をかけた。虎公はようやく、お種に黒姫のお供が門の外にやってきていることを告げた。お種の注進を受けて、建日別一行は黒姫を伴って虎公のところにやってきて挨拶をなした。
房公と芳公は一同と目通りする。建日別夫婦は黒姫たちに、ゆっくりとするように勧めるが、黒姫は気が急くと言って火の国に向かってさっさと旅立ってしまう。
房公と芳公は、黒姫が建日別が息子でなかったことを気に病んで落ち込んでいると見て取り、心配になって後を追って黒姫の後を探ねて行く。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-09-16 09:18:26 OBC :rm3414
愛善世界社版:182頁 八幡書店版:第6輯 427頁 修補版: 校定版:190頁 普及版:77頁 初版: ページ備考:
001 此処(ここ)建国別(たけくにわけ)神館(かむやかた)表門前(おもてもんまへ)002玉公(たまこう)門番(もんばん)幾公(いくこう)臨時(りんじ)代理(だいり)(たの)まれ、003ツクネンとして門扉(もんぴ)()ぢ、004()つて()(ちん)(やう)におとなしく、005門番(もんばん)部屋(べや)縁側(えんがは)(こし)をかけ、006両手(りやうて)(ひざ)(うへ)にチンと()いて、007コクリコクリと居眠(ゐねむ)つて()る。
008 (もん)(そと)から虎公(とらこう)(こゑ)
009虎公(とらこう)(たの)まう(たの)まう』
010 (この)(こゑ)玉公(たまこう)()()まし、
011玉公(たまこう)(たれ)だい、012(おほ)きな(こゑ)呶鳴(どな)(やつ)ア。013此処(ここ)建国別(たけくにわけ)(さま)神館(かむやかた)表門(おもてもん)だぞ。014チツと謹慎(きんしん)()(へう)せぬかい。015何処(どこ)(たれ)だか()らぬが()をドンドンと(たた)きやがつて、016拍子(べうし)()けた(こゑ)()しやがるのだ』
017呶鳴(どな)(かへ)した。
018虎公(とらこう)『オイ、019(いく)門番(もんばん)020(たれ)でも()い、021虎公(とらこう)だ。022摩利支(まりし)(てん)でも()(こか)すと()漆山(うるしやま)()大相撲取(おほずもうとり)()れて()たのだ。023愚図(ぐづ)々々(ぐづ)(ぬか)して(もん)()けぬと()ふと、024漆山(うるしやま)拳骨(げんこつ)(たた)()つて這入(はい)つてやらうか』
025玉公(たまこう)(その)(こゑ)侠客(けふかく)虎公(とらこう)だないか。026チツと(しづか)にせぬかい。027漆山(うるしやま)なんて、028そんな(いや)らしい()相撲取(すもうとり)(なん)()めに()れて()たのだ。029(この)(やかた)(すこ)大変(たいへん)なお目出度(めでた)(こと)(おこ)つて、030ヤツサモツサの最中(さいちう)だ。031(しばら)其処辺(そこら)(ひか)へて()れ。032()主人(しゆじん)(はう)からお(ゆる)しが(さが)つたら貴様(きさま)(はう)()けなくても此方(こちら)から()けてやらア』
033虎公(とらこう)『さう()(こゑ)玉公(たまこう)ぢや()いか』
034玉公(たまこう)(おれ)幾公(いくこう)門番(もんばん)(たの)まれたので、035臨時(りんじ)門番(もんばん)(つと)めて()るのだ。036(この)(もん)開閉(かいへい)するのは玉公(たまこう)権限(けんげん)にあるのだから、037まア(しばら)其処(そこ)()つて()つて()らうよ』
038虎公(とらこう)黒姫(くろひめ)さまのお(とも)(やつ)を、039たつた二匹(にひき)()れて()たのだから、040()つと()(わけ)にはゆかぬわい』
041房公(ふさこう)『オイ虎公(とらこう)042二匹(にひき)とはチツとひどいぢやないか。043あまり馬鹿(ばか)にすない』
044虎公(とらこう)(なに)馬鹿(ばか)にするものか。045(をとこ)(なか)(をとこ)一匹(いつぴき)()(やつ)が、046両人(りやうにん)()()るじやないか。047それだから二匹(にひき)()つたのだよ』
048房公(ふさこう)『アハヽヽヽうまい(こと)()(なほ)しやがつたな。049ヨシこれから(おれ)(たち)一匹(いつぴき)二匹(にひき)()んでくれ。050本当(ほんたう)光栄(くわうえい)だ。051由縁(いはれ)()けば(なん)となく有難(ありがた)いわ。052(しか)(なが)執拗(しつかう)()ふと(はら)()つと()(こと)があらう。053あまり沢山(たくさん)一匹(いつぴき)二匹(にひき)()うてくれなよ。054時所位(じしよゐ)(おう)じて()うてくれよ』
055 玉公(たまこう)門内(もんない)より(この)(はなし)()きはつり、
056玉公(たまこう)『オイ虎公(とらこう)057(とら)一匹(いつぴき)()()(こと)(わか)つて()るが、058(その)(ほか)(ねこ)でも()れて()たのか』
059虎公(とらこう)八釜(やかま)しう()ふない。060(はや)()けぬか』
061玉公(たまこう)『エー、062仕方(しかた)()(やつ)だなア。063そんならドツと()()んで、064今日(けふ)(だけ)治外(ちぐわい)法権(はふけん)だ。065()けてやらう』
066()(なが)らサツと白木(しらき)(もん)左右(さいう)(ひら)いた。
067玉公(たまこう)『ヤア虎公(とらこう)ばかりかと(おも)へば、068(ねこ)(うし)(ねずみ)()()るのだな。069そして其処(そこ)()(やつ)一体(いつたい)(なん)だい、070怪体(けたい)(つら)をした(やつ)だなア。071アハヽヽヽ丁度(ちやうど)六匹(ろつぴき)だなア』
072虎公(とらこう)『さうだ六匹(ろつぴき)だ。073(はや)(おく)案内(あんない)(いた)せ。074虎転別(とらてんわけ)(さま)()()りだ』
075玉公(たまこう)(なに)(ぬか)しやがるのだい。076(とら)077(てん)(わけ)(わか)らぬわい。078大方(おほかた)鼬貂別(いたちてんわけ)(くらゐ)のものだらう。079アハヽヽヽ』
080と、081(はら)(かか)(こし)(ゆす)つて()せる。
082虎公(とらこう)『そのスタイルは(なん)だ。083みつともないぞ』
084 (へい)(へだ)てた(つぎ)屋敷(やしき)所謂(いはゆる)上館(かみやかた)広庭(ひろには)には、085数多(あまた)老若(らうにやく)男女(なんによ)のワイワイと(よろこ)(さわ)(をど)(くる)(こゑ)(きこ)えて()る。
086虎公(とらこう)『オイ玉公(たまこう)087あの(こゑ)一体(いつたい)(なん)だ』
088玉公(たまこう)『あれかい、089ありや貴様(きさま)090(おれ)(おく)つて()黒姫(くろひめ)さまと親子(おやこ)対面(たいめん)出来(でき)たので、091あゝワイワイ(さわ)いで()るのだ。092貴様(きさま)らは(みな)(やつ)(さけ)(くら)つて(をど)つて()るのを神妙(しんめう)()いて()るのだよ。093万一(まんいち)彼奴(あいつ)()喧嘩(けんくわ)でもオツ(ぱじ)めよつたら、094喧嘩(けんくわ)仲裁(ちうさい)をするのだ。095(この)(ごろ)はあまり喧嘩(けんくわ)()いので、096侠客(けふかく)として張合(はりあひ)()けただらう。097屹度(きつと)喧嘩(けんくわ)があの調子(てうし)では突発(とつぱつ)するだらうから、098貴様(きさま)売出(うりだ)時機(じき)()たのだ』
099虎公(とらこう)『そいつは面白(おもしろ)い。100(はや)喧嘩(けんくわ)がオツ(ぱじ)まらぬかいなア』
101房公(ふさこう)『モシモシ門番(もんばん)さま、102本当(ほんたう)親子(おやこ)対面(たいめん)出来(でき)たのですか』
103玉公(たまこう)『サア、104シツカリした(こと)(わか)らないが、105あの(うれ)(さう)(こゑ)から()くと屹度(きつと)目出度(めでた)いに(ちが)ひない。106テツキリ最前(さいぜん)()黒姫(くろひめ)()(ばあ)さまは、107此処(ここ)大将(たいしやう)のお(かあ)さまらしいわい』
108房公(ふさこう)『ヤアそりや有難(ありがた)い。109これで(おれ)(かた)()()りたやうだ。110ナア芳公(よしこう)111(うれ)しいぢやないか』
112芳公(よしこう)(おれ)(なん)だか()らぬが、113あんまり(うれ)しうないわ。114(ひと)何処(どこ)やらに物足(ものた)らぬ心持(こころもち)がしてならない。115そう()註文(ちゆうもん)(どほ)りうまく()つたか()らぬがなア』
116房公(ふさこう)『あゝそれでもあの(とほ)(うれ)しさうに大勢(おほぜい)(さわ)いで()るぢやないか』
117芳公(よしこう)『さあ、118それもさうだなア』
119虎公(とらこう)今日(けふ)建国別(たけくにわけ)(さま)(この)(やかた)()養子(やうし)にお入来(いで)(あそ)ばした(まん)一周(いつしう)(ねん)のお(いはひ)だから、120それで(みな)(やつ)祝酒(いはひざけ)(くら)()うて(さわ)いで()るのだらうよ。121そこへ黒姫(くろひめ)さまが(その)大将(たいしやう)母親(ははおや)だつたら、122それこそ(たい)したものだ、123地異(ちい)天変(てんぺん)大騒動(おほさうどう)だ。124(いや)大祝(おほいはひ)だ。125ナア玉公(たまこう)126(まへ)如何(どう)(おも)ふか』
127 虎公(とらこう)(へだ)ての(へい)(ちひ)さき武者窓(むしやまど)から背伸(せの)びをし(なが)ら、128上館(かみやかた)庭前(ていぜん)酒宴(しゆえん)(せき)一寸(ちよつと)(なが)め、
129虎公(とらこう)『エー何奴(どいつ)此奴(こいつ)行儀(げうぎ)(わる)(やつ)ばつかりだ。130真裸(まつぱだか)になつて(さけ)()うて無礼講(ぶれいかう)遺憾(ゐかん)なくやつて()やがる。131(おれ)(にはか)(なん)だか(さけ)()みたくなつて()た。132此処(ここ)(やつ)()()かぬ(やつ)ばつかりだな。133虎公(とらこう)()御座(ござ)るのに徳利(とくり)(ひと)()げて()(やつ)()いと()えるわい。134ウン、135此処(ここ)無花果(いちじゆく)沢山(たくさん)になつて()る。136(これ)むしつて宴会(えんくわい)(せき)()かしてやらう。137随分(ずゐぶん)面白(おもしろ)うなるだらう』
138独言(ひとりごと)()(なが)ら、139三四十(さんしじふ)(ばか)むしつては高塀(たかへい)()しに()げつける。140数多(あまた)泥酔者(よひどれ)(かき)(そと)から、141虎公(とらこう)()んな悪戯(いたづら)をして()るとは(ゆめ)にも()らずに、
142(かふ)『ヤイコラ、143馬鹿(ばか)にするない。144(おれ)(あたま)無花果(いちじゆく)をカツつけやがつたのは貴様(きさま)だらう』
145(おつ)(なに)(ぬか)しやがるのだ。146最前(さいぜん)から(おれ)(だま)つて()れば(おれ)脳天(なうてん)へブツつけやがつて(おれ)があてたなんて、147()うそんな(こと)()へたものだ。148(なん)()つても貴様(きさま)(おれ)喧嘩(けんくわ)()(つも)りだなア。149よし()()えても(おれ)虎公(とらこう)(いち)乾児(こぶん)だぞ。150熊公(くまこう)(うで)()せてやらうか』
151()(なが)ら、152徳利(とくり)()()げて縦横(じうわう)無尽(むじん)()(まは)(その)権幕(けんまく)に、153一同(いちどう)老若(らうにやく)男女(なんによ)は『キヤツキヤツ』と悲鳴(ひめい)をあげて前後(ぜんご)左右(さいう)()(まは)る。154熊公(くまこう)(さけ)(いきほひ)(じやう)じて手当(てあた)次第(しだい)155(はち)()げる、156徳利(とくり)()(まは)す、157ガチヤンガチヤン ドタンバタンの乱痴気(らんちき)(さわ)ぎが(へい)(そと)(まで)()にとる(ごと)(きこ)えて()た。158虎公(とらこう)自分(じぶん)乾児(こぶん)熊公(くまこう)乱暴(らんばう)()てとり、159矢庭(やには)高塀(たかへい)両手(りやうて)()け、160モンドリ()つて園内(えんない)()()み、
161虎公(とらこう)『こりやこりや、162()て、163熊公(くまこう)(やつ)164(なに)乱暴(らんばう)をするか』
165 熊公(くまこう)はヘベレケに()うて、166()(ろく)()えなくなつて()た。
167熊公(くまこう)『ナヽヽヽ(なん)だ。168(おれ)(たれ)だと(おも)つて()るのだ。169武野(たけの)(むら)(かく)れなき大侠客(だいけふかく)170虎公(とらこう)さまを親分(おやぶん)()熊公(くまこう)だぞ。171愚図(ぐづ)々々(ぐづ)(ぬか)すと何方(どいつ)此奴(こいつ)生首(なまくび)()()いてやらうかい。172ヘン、173馬鹿(ばか)野郎(やらう)()174(なに)(くま)さまのする(こと)横鎗(よこやり)()れやがるのだ。175糞面白(くそおもしろ)くも()えや。176ゲヽヽヽヽガラガラガラ ウワツプツプツプツ』
177 虎公(とらこう)矢庭(やには)熊公(くまこう)横面(よこづら)を、178(くび)()べよとばかり平手(ひらて)でピシヤツと(なぐ)りつけた。179熊公(くまこう)不意(ふい)(くら)つてヒヨロヒヨロと五歩(いつあし)六歩(むあし)(あと)(さが)つてドスンと仰向(あふむ)けに(たふ)れて(しま)つた。
180虎公(とらこう)『オイ(くま)181しつかりせぬかい。182()んな目出度(めでた)席上(せきじやう)(なに)乱暴(らんばう)するのだい』
183熊公(くまこう)『こりやアこりやア親方(おやかた)御座(ござ)いましたか、184(まこと)()みませぬ。185こない(あば)れるのぢや()かつたけれど、186八公(はちこう)(やつ)187失礼(しつれい)な、188(くま)さまの(あたま)無花果(いちじゆく)をカツつけやがつたものだから……(おれ)(あたま)虎公(とらこう)(いき)がかかつた(あたま)だ。189貴様(きさま)のやうな(やつ)(なぐ)られて(だま)つて()つては親分(おやぶん)面汚(つらよご)しだから、190(はら)()つて()つて(はらわた)がニヽヽヽ()繰返(くりかへ)つて、191(おも)はず()らず酪酊(めいてい)して()んな乱暴(らんばう)をやりました。192なア親方(おやかた)193(みぎ)(やう)次第(しだい)でげえすから何卒(どうぞ)燗酒(かんざけ)見直(みなほ)して(くだ)さい。194ゲープーあゝえらいえらいひどい(こと)195(さけ)悪酔(わるよ)ひして(しま)つた。196(なに)しろ安価(やす)(さけ)()ましやがるものだから、197薩張(さつぱり)(はらわた)(なに)台無(だいな)しにして(しま)つた』
198虎公(とらこう)(みな)さま、199何卒(どうぞ)(もと)のお(せき)にお()(くだ)さいませ。200熊公(くまこう)(やつ)201(さけ)(くら)()乱暴(らんばう)(いた)しまして(まこと)()みませぬ。202(わたし)(かは)つてお(わび)(いた)します』
203 (この)(こゑ)一同(いちどう)はヤツと安心(あんしん)したものの(ごと)(もと)()()いた。204虎公(とらこう)熊公(くまこう)引抱(ひつかか)へ、205上館(かみやかた)表門(おもてもん)から迂回(うくわい)して門口(もんぐち)()れて()た。206(この)(とき)婢女(はしため)のお(たね)()(をんな)207門口(かどぐち)(さわ)がしさに不審(ふしん)(おこ)し、208(あわただ)しく(たすき)(まま)馳来(はせきた)り、
209(たね)『まアまアこれは虎公(とらこう)さまで御座(ござ)いますか。210()()(くだ)さいました。211何卒(どうぞ)まア、212這入(はい)(くだ)さいまし』
213虎公(とらこう)『いえいえ、214()主人(しゆじん)のお(ゆる)しある(まで)此処(ここ)(ひか)へて()りませう。215(しか)此処(ここ)黒姫(くろひめ)さまと()(かた)()えて()(はず)だ。216(その)黒姫(くろひめ)さまのお(とも)芳公(よしこう)217房公(ふさこう)()二人(ふたり)(もの)門口(かどぐち)()つて()ると()(こと)を、218一寸(ちよつと)(おく)()らして(くだ)さい』
219(たね)武野村(たけのむら)親分(おやぶん)虎公(とらこう)さま、220(たしか)(まを)()げます。221何卒(どうぞ)()つて()(くだ)さい』
222足軽(あしがる)中門(なかもん)(なか)姿(すがた)(かく)して仕舞(しま)つた。
223 (しばら)くすると黒姫(くろひめ)建国別(たけくにわけ)224建能姫(たけのひめ)225建彦(たけひこ)226幾公(いくこう)(おく)られ、227中門(なかもん)をサツと(ひら)いて(この)()徐々(しづしづ)とやつて()た。
228虎公(とらこう)『ヤアこれはこれは建国別(たけくにわけ)(さま)229建能姫(たけのひめ)(さま)230黒姫(くろひめ)(さま)いかい世話(せわ)御座(ござ)いましたらう。231如何(どう)御座(ござ)いましたな、232()因縁(いんねん)解決(かいけつ)がつきましたか』
233建国別(たけくにわけ)『ア、234貴方(あなた)虎公(とらこう)親分(おやぶん)さま、235()()(くだ)さいました。236さア何卒(どうぞ)(おく)へお這入(はい)(くだ)さいませ。237此処(ここ)(もん)(まへ)238今日(けふ)(さいは)(わたくし)此処(ここ)(まゐ)つた一周(いつしう)(ねん)(いはひ)239何卒(どうぞ)(みな)さま、240(なに)もありませぬがお(さけ)なつと(あが)つて(くだ)さいませ』
241虎公(とらこう)『ハイ有難(ありがた)御座(ござ)います。242乍併(しかしながら)此処(ここ)黒姫(くろひめ)(さま)のお(とも)をして(まゐ)つた(ふさ)243(よし)両人(りやうにん)()えて()ります。244そして黒姫(くろひめ)(さま)貴方(あなた)()縁類(えんるゐ)(かた)ではありませぬでしたかな』
245建国別(たけくにわけ)『はい、246(まつた)(ちが)ひました』
247虎公(とらこう)『それはそれは残念(ざんねん)(こと)御座(ござ)います。248オイ房公(ふさこう)249芳公(よしこう)250薩張(さつぱり)駄目(だめ)だ、251観念(かんねん)せい。252もう()うなりや仕方(しかた)がないわ。253矢張(やつぱり)()国都(くにみやこ)(まで)(とも)して高山彦(たかやまひこ)254黒姫(くろひめ)戦争(せんそう)観戦(くわんせん)するより(みち)はないわ』
255房公(ふさこう)(わたし)黒姫(くろひめ)従者(じゆうしや)房公(ふさこう)256芳公(よしこう)(まを)(もの)御座(ござ)います。257黒姫(くろひめ)(さま)(なが)らくお邪魔(じやま)しましてお(いそが)しい(なか)(まこと)()みませぬ』
258建国別(たけくにわけ)『いえいえ如何(どう)(いた)しまして……黒姫(くろひめ)(さま)()親切(しんせつ)()訪問(はうもん)(くだ)さいまして吾々(われわれ)夫婦(ふうふ)(もの)感涙(かんるゐ)(むせ)んで()ります。259何卒(どうぞ)そんな(こと)()はずに(おく)へお這入(はい)(くだ)さつて、260(さけ)でも(ひと)つお(あが)りなさつて(くだ)さいませ』
261虎公(とらこう)『オイ房公(ふさこう)262芳公(よしこう)あの(とほ)親切(しんせつ)仰有(おつしや)るのだから、263折角(せつかく)のお(こころざし)だ、264()にするのも()まないから一杯(いつぱい)よばれて()ようぢやないか』
265房公(ふさこう)『さうだ。266一杯(いつぱい)頂戴(ちやうだい)したいものだね……なア芳公(よしこう)267貴様(きさま)もあまり下戸(げこ)でもあるまい、268(ひと)()馳走(ちそう)にならうか』
269建能姫(たけのひめ)何卒(どうぞ)(みな)さま(そろ)うて(おく)へお這入(はい)(くだ)さいませ。270差上(さしあ)げる(もの)とては(べつ)(なに)御座(ござ)いませぬが、271(さけ)沢山(たくさん)用意(ようい)してありますから、272(はや)此方(こちら)へお這入(はい)(くだ)さいませ。273サア(わが)夫様(つまさま)274(おく)(まゐ)りませう。275黒姫(くろひめ)(さま)(あま)りお(いそ)ぎでなくば、276(とも)(かた)一緒(いつしよ)(おく)(はう)引返(ひきかへ)して(くだ)さつたら如何(どう)でせうか』
277黒姫(くろひめ)『ハイ、278()親切(しんせつ)有難(ありがた)御座(ござ)いますが、279(わたし)(なん)となく(こころ)()きますから(これ)御免(ごめん)(かうむ)ります。280御縁(ごえん)御座(ござ)いますれば(また)()にかかりませう』
281建国別(たけくにわけ)何卒(どうぞ)282先生(せんせい)にお()ひになりましたら、283吾々(われわれ)夫婦(ふうふ)(もの)(よろ)しく(まを)して()つたとお(つた)(くだ)さいませ。284(じつ)(ところ)()へば、285吾々(われわれ)夫婦(ふうふ)貴女(あなた)()(くに)(まで)(おく)申上(まをしあ)げるのが本意(ほんい)ですが、286御存(ごぞん)じの(とほ)今日(けふ)斯様(かやう)次第(しだい)ですから失礼(しつれい)(いた)します。287せめて二三(にさん)(にち)()逗留(とうりう)(くだ)さいますれば、288吾々(われわれ)夫婦(ふうふ)(もの)()(おく)申上(まをしあ)げるのですが、289(あま)貴女(あなた)がお()(あそ)ばすから致方(いたしかた)ありませぬ。290()無礼(ぶれい)(だん)何卒(なにとぞ)()(ゆる)(くだ)さいませ』
291黒姫(くろひめ)『ハイ有難(ありがた)う。292永々(ながなが)()世話(せわ)になりました。293房公(ふさこう)294芳公(よしこう)295二人(ふたり)はゆつくりお(さけ)なつと頂戴(ちやうだい)して何処(どこ)なつと()きなさい』
296(やや)捨鉢(すてばち)気味(ぎみ)になつて夫婦(ふうふ)目礼(もくれい)し、297サツサと足早(あしばや)門前(もんぜん)小径(こみち)(かへ)()く。298玉公(たまこう)(ほか)(さん)(にん)(やかた)番頭役(ばんとうやく)たる建彦(たけひこ)幾公(いくこう)(すす)められ、299(おく)()()して(すす)んで()く。
300 (あと)(のこ)つた房公(ふさこう)301芳公(よしこう)両人(りやうにん)(たがひ)(かほ)見合(みあは)(した)()(やや)(くび)(かたむ)けて(あき)(がほ)……。
302房公(ふさこう)『オイ芳公(よしこう)303如何(どう)しよう。304(さけ)()()いが、305黒姫(くろひめ)さまのあの気色(けしき)では、306目算(もくさん)(はづ)れ、307落胆(らくたん)(あま)谷川(たにがは)()()げて()(やう)(いきほひ)だつたよ。308愚図(ぐづ)々々(ぐづ)しては()られない。309サア(これ)から(あと)追駆(おつかけ)黒姫(くろひめ)さまの()(あやま)ちの()(やう)()かうぢや()いか』
310芳公(よしこう)『おい、311さうだ。312(まへ)()(とほ)愚図(ぐづ)々々(ぐづ)しては()られない。313サア()かう』
314両人(りやうにん)捩鉢巻(ねぢはちまき)をグツと()め、315尻端折(しりはしを)つて(もと)()(みち)をトントンと地響(ぢひび)きさせ(なが)ら、316黒姫(くろひめ)(あと)(たづ)ねて(はし)()く。
317大正一一・九・一三 旧七・二二 北村隆光録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki