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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第34巻(酉の巻)
序文
総説
第1篇 筑紫の不知火
第1章 筑紫上陸
第2章 孫甦
第3章 障文句
第4章 歌垣
第5章 対歌
第6章 蜂の巣
第7章 無花果
第8章 暴風雨
第2篇 有情無情
第9章 玉の黒点
第10章 空縁
第11章 富士咲
第12章 漆山
第13章 行進歌
第14章 落胆
第15章 手長猿
第16章 楽天主義
第3篇 峠の達引
第17章 向日峠
第18章 三人塚
第19章 生命の親
第20章 玉卜
第21章 神護
第22章 蛙の口
第23章 動静
余白歌
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海洋万里(第25~36巻)
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<<< 三人塚
(B)
(N)
玉卜 >>>
第一九章
生命
(
いのち
)
の
親
(
おや
)
〔九六〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第34巻 海洋万里 酉の巻
篇:
第3篇 峠の達引
よみ(新仮名遣い):
とうげのたてひき
章:
第19章 生命の親
よみ(新仮名遣い):
いのちのおや
通し章番号:
960
口述日:
1922(大正11)年09月14日(旧07月23日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年12月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
黒姫は、火の国に向かって山道を急いでいた。黒姫は向日峠の手前で街道に出る道がわからず、山中の遠回りの道に迷いこんでしまい、深谷川にかかる朽ちた丸木橋の手前で立ち止まっていた。
すると突然、三尺ばかりの一人の童子が現れ、この橋を渡らなければ想う人には会えない、という歌を歌うと忽然と消えてしまった。黒姫が不思議に思っていると、また七八人の童子が現れ、この先で大蛇の三公に縛られて生き埋めにされた高山彦やお愛という人がいる、と歌で告げた。
黒姫は高山彦と聞いてにわかに心配になってきた。そこへ玉治別の宣伝歌が聞こえてきた。玉治別が近くにいると知って心強くなった黒姫は、思い切って朽ちた丸木橋を渡り、無事に向こう岸に着いた。
すると、身なりがぼろぼろになって泣きはらした少女が向こうからやってきた。黒姫が心配して声をかけると、少女は泣き伏して、自分の姉が生き埋めにされたと黒姫に助けを求めた。
少女はお梅であった。黒姫はお梅を背負って道案内をしてもらい、三人が埋められている塚のところまでやってきた。黒姫は石を押しのけようと神号を唱えながら必死に押したが、石はびくともしなかった。
すると八人の童子がどこからともなく現れて、大きな石を投げ捨ててしまい、また煙となって消えてしまった。
黒姫は神に感謝し、一生懸命に土をかき分けて掘り起し出した。黒姫は三人の男女を掘り起こした。三人の縄を解き、草の上に寝かせて天の数歌を歌い、蘇生を祈願した。
お梅が汲んできた谷川の水を口に含ませると、お愛は気が付き、お梅に飛びついた。お梅は、三五教の宣伝使が助けてくれたのだとお愛に伝えた。孫公と兼公も気が付き、黒姫に礼を述べた。
黒姫は神助によって石を取り除き、三人を助けることができたことを告げた。一同は黒姫の後ろに端座して天津祝詞を奏上し、感謝祈願を行ったのち、元来た道を引き返して行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-09-19 10:15:01
OBC :
rm3419
愛善世界社版:
241頁
八幡書店版:
第6輯 449頁
修補版:
校定版:
251頁
普及版:
105頁
初版:
ページ備考:
001
黒姫
(
くろひめ
)
は
石塊
(
いしころ
)
だらけの
谷道
(
たにみち
)
を
火
(
ひ
)
の
国都
(
くにみやこ
)
へと
急
(
いそ
)
ぎつつ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
002
途中
(
とちう
)
の
深谷川
(
ふかたにがは
)
に
危
(
あやふ
)
い
一本
(
いつぽん
)
の
丸木橋
(
まるきばし
)
が
架
(
か
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
003
黒姫
(
くろひめ
)
は
石橋
(
いしばし
)
でも
叩
(
たた
)
いて
見
(
み
)
て
渡
(
わた
)
ると
云
(
い
)
ふ
注意深
(
ちういぶか
)
い
人間
(
にんげん
)
になつて
居
(
ゐ
)
た。
004
建日
(
たけひ
)
の
館
(
やかた
)
の
建国別
(
たけくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
を、
005
軽率
(
けいそつ
)
にも
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
では
無
(
な
)
いかと
訪問
(
はうもん
)
して
失敗
(
しつぱい
)
したのに
懲
(
こ
)
りたからである。
006
黒姫
(
くろひめ
)
は
一本橋
(
いつぽんばし
)
の
裏
(
うら
)
を
窺
(
のぞ
)
き
込
(
こ
)
むと、
007
幾年
(
いくねん
)
かの
風雨
(
ふうう
)
に
晒
(
さら
)
された
一本橋
(
いつぽんばし
)
は、
008
橋
(
はし
)
の
詰
(
つめ
)
の
方
(
はう
)
が
七八分
(
しちはちぶ
)
ばかり
朽
(
く
)
ちて
居
(
ゐ
)
る。
009
これや
如何
(
どう
)
したら
宜
(
よ
)
からうかと、
010
橋詰
(
はしづめ
)
に
佇
(
たたず
)
んで
吐息
(
といき
)
を
洩
(
も
)
らして
居
(
ゐ
)
る。
011
折
(
をり
)
しも
忽然
(
こつぜん
)
として
現
(
あら
)
はれた
三尺
(
さんじやく
)
ばかりの
一人
(
ひとり
)
の
童子
(
どうじ
)
黒姫
(
くろひめ
)
の
顔
(
かほ
)
を
見上
(
みあ
)
げてニヤリと
笑
(
わら
)
ひ、
012
童子
『
吾
(
わが
)
恋
(
こひ
)
は
深谷川
(
ふかたにがは
)
の
丸木橋
(
まるきばし
)
013
渡
(
わた
)
るにこはし
渡
(
わた
)
らねば
014
思
(
おも
)
ふ
方
(
かた
)
には
会
(
あ
)
はれない』
015
と
謡
(
うた
)
つたきりポツと
白煙
(
はくえん
)
と
共
(
とも
)
に
消
(
き
)
えて
了
(
しま
)
つた。
016
黒姫
(
くろひめ
)
は
此
(
この
)
奇怪
(
きくわい
)
な
現象
(
げんしやう
)
にうたれて
不安
(
ふあん
)
の
雲
(
くも
)
に
包
(
つつ
)
まれ
乍
(
なが
)
ら、
017
『
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』と
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
祈願
(
きぐわん
)
を
籠
(
こ
)
めて
居
(
ゐ
)
る。
018
此処
(
ここ
)
は
向日峠
(
むかふたうげ
)
の
手前
(
てまへ
)
であつた。
019
火
(
ひ
)
の
国
(
くに
)
の
都
(
みやこ
)
へ
行
(
ゆ
)
くのには、
020
火
(
ひ
)
の
国崎
(
くにざき
)
を
通
(
とほ
)
るのが
順路
(
じゆんろ
)
である。
021
されど
黒姫
(
くろひめ
)
は
左
(
ひだり
)
に
広
(
ひろ
)
き
火
(
ひ
)
の
国
(
くに
)
街道
(
かいだう
)
のある
事
(
こと
)
に
気
(
き
)
づかず、
022
思
(
おも
)
はず
右
(
みぎ
)
へ
右
(
みぎ
)
へとやつて
来
(
き
)
て、
023
此
(
この
)
山道
(
やまみち
)
に
迷
(
まよ
)
ひ
込
(
こ
)
んで
来
(
き
)
たのであつた。
024
此
(
この
)
時
(
とき
)
又
(
また
)
もや
忽然
(
こつぜん
)
として
七八
(
しちはち
)
人
(
にん
)
の
小
(
ちひ
)
さき
童子
(
どうじ
)
、
025
橋
(
はし
)
の
袂
(
たもと
)
に
現
(
あら
)
はれ
互
(
たがひ
)
に
手
(
て
)
をつなぎ
乍
(
なが
)
ら、
026
童子
(
どうじ
)
『それ
出
(
で
)
た、
027
やれ
出
(
で
)
た、
028
現
(
あら
)
はれた
029
向日峠
(
むかふたうげ
)
の
山麓
(
さんろく
)
の、
030
楠
(
くす
)
の
木蔭
(
こかげ
)
に
鬼
(
おに
)
が
出
(
で
)
た
031
鬼
(
おに
)
かと
思
(
おも
)
へば
恐
(
おそ
)
ろしい
032
大蛇
(
をろち
)
の
三公
(
さんこう
)
が
現
(
あら
)
はれて
033
お
愛
(
あい
)
の
方
(
かた
)
を
縛
(
しば
)
りつけ
034
高山彦
(
たかやまひこ
)
と
言
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
035
兼公
(
かねこう
)
迄
(
まで
)
もフン
縛
(
じば
)
り
036
穴
(
あな
)
を
穿
(
うが
)
つて
埋
(
い
)
けよつた
037
大
(
おほ
)
きな
岩
(
いは
)
が
乗
(
の
)
つてある』
038
と
言
(
い
)
つたきり、
039
又
(
また
)
もやプスと
童子
(
どうじ
)
の
姿
(
すがた
)
は
消
(
き
)
え、
040
後
(
あと
)
には
白煙
(
しろけぶり
)
が
幽
(
かす
)
かに
揺
(
ゆら
)
いで
居
(
ゐ
)
る。
041
黒姫
(
くろひめ
)
は
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
み
頭
(
かうべ
)
を
傾
(
かたむ
)
け、
042
黒姫
(
くろひめ
)
『はてな、
043
合点
(
がつてん
)
のゆかぬ
事
(
こと
)
だな。
044
今
(
いま
)
現
(
あら
)
はれた
童子
(
どうじ
)
は
魔
(
ま
)
か
神
(
かみ
)
か、
045
何
(
なに
)
かは
知
(
し
)
らぬが、
046
何
(
なん
)
とはなしに
気
(
き
)
がかりな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つた
様
(
やう
)
だ。
047
高山彦
(
たかやまひこ
)
と
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
がフン
縛
(
じば
)
られて
埋
(
う
)
められたとか、
048
お
愛
(
あい
)
の
方
(
かた
)
が
埋
(
うづ
)
められたとか
言
(
い
)
つた
様
(
やう
)
だ。
049
若
(
も
)
しや
恋
(
こひ
)
しい
夫
(
をつと
)
の
高山彦
(
たかやまひこ
)
様
(
さま
)
の
事
(
こと
)
ではあるまいか。
050
お
愛
(
あい
)
の
方
(
かた
)
と
云
(
い
)
つたのは、
051
大方
(
おほかた
)
愛子姫
(
あいこひめ
)
の
事
(
こと
)
だらう。
052
向日峠
(
むかふたうげ
)
の
山麓
(
さんろく
)
と
云
(
い
)
へば、
053
まだ
之
(
これ
)
から
何程
(
なにほど
)
の
里程
(
りてい
)
があるか
知
(
し
)
らぬが、
054
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ、
055
ヂツとしては
居
(
を
)
れなくなつた。
056
あゝ
如何
(
どう
)
したら
宜
(
よ
)
からうかな。
057
……
妾
(
わたし
)
位
(
くらゐ
)
因果
(
いんぐわ
)
の
者
(
もの
)
が
世
(
よ
)
にあらうか。
058
勿体
(
もつたい
)
ない、
059
若気
(
わかげ
)
の
至
(
いた
)
りで、
060
折角
(
せつかく
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
から
貰
(
もら
)
うた
男
(
をとこ
)
の
児
(
こ
)
を
捨
(
す
)
てた
天罰
(
てんばつ
)
が
酬
(
むく
)
うて
来
(
き
)
て、
061
する
事
(
こと
)
為
(
な
)
す
事
(
こと
)
、
062
何
(
なに
)
もかも
此
(
この
)
様
(
やう
)
に
鶍
(
いすか
)
の
嘴
(
はし
)
程
(
ほど
)
喰
(
く
)
ひ
違
(
ちが
)
ふのであらう。
063
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
罪
(
つみ
)
の
深
(
ふか
)
い
此
(
この
)
身
(
み
)
ぢやなあ』
064
と
独言
(
ひとりご
)
ちつつ
力
(
ちから
)
なげに
落涙
(
らくるい
)
と
共
(
とも
)
に
垂頂
(
うなだ
)
れて
居
(
ゐ
)
る。
065
此
(
こ
)
の
時
(
とき
)
何処
(
どこ
)
ともなく
宣伝歌
(
せんでんか
)
が
聞
(
きこ
)
え
来
(
き
)
たる。
066
(玉治別)
『
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
067
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
068
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
069
如何
(
いか
)
なる
災難
(
さいなん
)
来
(
きた
)
るとも
070
神
(
かみ
)
に
任
(
まか
)
した
宣伝使
(
せんでんし
)
071
誠
(
まこと
)
一
(
ひと
)
つを
立
(
た
)
て
貫
(
ぬ
)
けよ
072
神
(
かみ
)
は
汝
(
なんぢ
)
と
倶
(
とも
)
にあり
073
汝
(
なんぢ
)
の
誠
(
まこと
)
現
(
あら
)
はれて
074
汝
(
なんぢ
)
を
救
(
すく
)
ふ
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
075
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
生神
(
いきがみ
)
は
076
天教
(
てんけう
)
のお
山
(
やま
)
のみでない
077
至
(
いた
)
る
所
(
ところ
)
に
神
(
かみ
)
坐
(
ゐ
)
ます
078
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みを
諾
(
うべな
)
ひて
079
飽迄
(
あくまで
)
行
(
ゆ
)
けよ
三五
(
あななひ
)
の
080
黒姫司
(
くろひめつかさ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
081
深谷川
(
ふかたにがは
)
の
丸木橋
(
まるきばし
)
082
如何
(
いか
)
に
危
(
あやふ
)
く
見
(
み
)
えつれど
083
汝
(
なんぢ
)
の
心
(
こころ
)
に
信仰
(
あななひ
)
の
084
誠
(
まこと
)
の
花
(
はな
)
の
咲
(
さ
)
くならば
085
易
(
やす
)
く
渡
(
わた
)
らむ
神
(
かみ
)
の
橋
(
はし
)
086
進
(
すす
)
めよ
進
(
すす
)
め
早
(
はや
)
渡
(
わた
)
れ
087
吾
(
われ
)
は
玉治別
(
たまはるわけの
)
司
(
かみ
)
088
汝
(
なんぢ
)
の
身魂
(
みたま
)
につき
添
(
そ
)
ひて
089
汝
(
なれ
)
が
行末
(
ゆくすゑ
)
を
守
(
まも
)
りつつ
090
此処迄
(
ここまで
)
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
りけり
091
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
092
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
093
と
云
(
い
)
つたきり、
094
宣伝歌
(
せんでんか
)
の
声
(
こゑ
)
はピタリと
止
(
と
)
まつて
了
(
しま
)
つた。
095
黒姫
(
くろひめ
)
は
此
(
この
)
宣伝歌
(
せんでんか
)
の
近
(
ちか
)
く
聞
(
きこ
)
えたのに
力
(
ちから
)
を
得
(
え
)
、
096
玉治別
(
たまはるわけ
)
が
此
(
この
)
近
(
ちか
)
くに
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
る
事
(
こと
)
を
心強
(
こころづよ
)
く
思
(
おも
)
ひ、
097
萎
(
しほ
)
れきつたる
心
(
こころ
)
を
取直
(
とりなほ
)
し
心待
(
こころま
)
ちに
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
098
されども
玉治別
(
たまはるわけ
)
の
姿
(
すがた
)
どころか、
099
獣
(
けもの
)
一匹
(
いつぴき
)
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
せぬ。
100
黒姫
(
くろひめ
)
は
思
(
おも
)
ひきつて
此
(
この
)
丸木橋
(
まるきばし
)
をチヨコチヨコ
渡
(
わた
)
りに、
101
向
(
むか
)
ふに
渡
(
わた
)
り
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
で
下
(
おろ
)
し
乍
(
なが
)
ら、
102
黒姫
(
くろひめ
)
『あゝ
危
(
あやふ
)
い
事
(
こと
)
だつた。
103
ようまア
斯
(
こ
)
んな
朽果
(
くちは
)
てた
橋
(
はし
)
が
無事
(
ぶじ
)
に
渡
(
わた
)
れた
事
(
こと
)
だ。
104
之
(
これ
)
と
云
(
い
)
ふも
矢張
(
やつぱり
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御恵
(
みめぐ
)
みだ、
105
まだ
天道
(
てんだう
)
様
(
さま
)
も
黒姫
(
くろひめ
)
を
捨
(
す
)
て
玉
(
たま
)
はざる
証
(
しるし
)
であらう。
106
あゝ
有難
(
ありがた
)
い
有難
(
ありがた
)
い
勿体
(
もつたい
)
なや』
107
と
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
せ、
108
涙
(
なみだ
)
と
共
(
とも
)
に
感謝
(
かんしや
)
祈願
(
きぐわん
)
の
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
して
居
(
ゐ
)
る。
109
そこに
力
(
ちから
)
なげにチヨロチヨロと
現
(
あら
)
はれ
来
(
き
)
た
十四五
(
じふしご
)
才
(
さい
)
の
女
(
をんな
)
がある。
110
見
(
み
)
れば
目
(
め
)
を
腫
(
は
)
らし、
111
色
(
いろ
)
青
(
あを
)
ざめ、
112
髪
(
かみ
)
振乱
(
ふりみだ
)
し、
113
着物
(
きもの
)
の
裾
(
すそ
)
には
土
(
つち
)
が
一
(
いつ
)
ぱい
着
(
つ
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
114
黒姫
(
くろひめ
)
は
此
(
この
)
少女
(
せうぢよ
)
を
見
(
み
)
るより
言葉
(
ことば
)
を
掛
(
か
)
け、
115
黒姫
(
くろひめ
)
『これこれお
前
(
まへ
)
は
小
(
ちひ
)
さい
女
(
をんな
)
の
身分
(
みぶん
)
として、
116
斯
(
こ
)
んな
恐
(
おそ
)
ろしい
山道
(
やまみち
)
へ
何
(
なに
)
しに
来
(
き
)
たのだい。
117
見
(
み
)
れば
目
(
め
)
が
腫
(
は
)
れて
居
(
ゐ
)
る。
118
髪
(
かみ
)
も
乱
(
みだ
)
れ、
119
顔
(
かほ
)
の
色
(
いろ
)
は
青
(
あを
)
くなり、
120
着物
(
きもの
)
の
裾
(
すそ
)
には
赤
(
あか
)
い
土
(
つち
)
が
一
(
いつ
)
ぱい
着
(
つ
)
いて
居
(
を
)
るぢやないか。
121
之
(
これ
)
には
何
(
なに
)
か
様子
(
やうす
)
のある
事
(
こと
)
であらう。
122
差支
(
さしつかへ
)
なくば
此
(
この
)
をばさまに
云
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
123
妾
(
わたし
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だ。
124
妾
(
わたし
)
の
力
(
ちから
)
の
及
(
およ
)
ぶ
丈
(
だ
)
けはお
前
(
まへ
)
の
助
(
たす
)
けになりませう』
125
と
親切
(
しんせつ
)
に
労
(
いた
)
はり
問
(
と
)
へば、
126
少女
(
せうぢよ
)
は
腰
(
こし
)
を
屈
(
かが
)
め
慇懃
(
いんぎん
)
に
礼
(
れい
)
を
述
(
の
)
べ
乍
(
なが
)
ら、
127
少女
(
せうぢよ
)
(お梅)
『をば
様
(
さま
)
、
128
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
129
何卒
(
どうぞ
)
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さいませ。
130
妾
(
わたし
)
はお
梅
(
うめ
)
と
申
(
まを
)
す
女
(
をんな
)
で
御座
(
ござ
)
います。
131
お
愛
(
あい
)
と
云
(
い
)
ふ
姉
(
ねえ
)
さまが、
132
悪者
(
わるもの
)
の
為
(
た
)
めに
捕
(
とら
)
へられ、
133
殺
(
ころ
)
されて
土
(
つち
)
の
中
(
なか
)
に
埋
(
う
)
められて
了
(
しま
)
ひました。
134
さうして
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
の
方
(
かた
)
と
一所
(
いつしよ
)
に…』
135
と
此処迄
(
ここまで
)
言
(
い
)
つてワツとばかり
声
(
こゑ
)
を
放
(
はな
)
つて
泣
(
な
)
きくづれる。
136
少女
(
せうぢよ
)
は
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
張
(
は
)
りきつて
居
(
ゐ
)
た
精神
(
せいしん
)
が、
137
黒姫
(
くろひめ
)
の
情
(
なさけ
)
ある
言葉
(
ことば
)
に
絆
(
ほだ
)
されヤツと
安心
(
あんしん
)
した
途端
(
とたん
)
に
気
(
き
)
が
弛
(
ゆる
)
んで、
138
力
(
ちから
)
無
(
な
)
げに
倒
(
たふ
)
れたのである。
139
黒姫
(
くろひめ
)
は
深谷川
(
ふかたにがは
)
へ
辛
(
から
)
うじて
下
(
くだ
)
り
水筒
(
すゐとう
)
に
水
(
みづ
)
を
盛
(
も
)
り
来
(
きた
)
り、
140
少女
(
せうぢよ
)
の
口
(
くち
)
に
含
(
ふく
)
ませ
面部
(
めんぶ
)
に
吹
(
ふ
)
きかけなどして
甲斐
(
かひ
)
々々
(
がひ
)
しく
介抱
(
かいほう
)
をして
居
(
ゐ
)
る。
141
黒姫
(
くろひめ
)
が
熱心
(
ねつしん
)
なる
介抱
(
かいほう
)
の
効
(
かう
)
空
(
むな
)
しからず、
142
少女
(
せうぢよ
)
は
息
(
いき
)
を
吹
(
ふ
)
き
返
(
かへ
)
し、
143
苦
(
くる
)
しげに
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
で
乍
(
なが
)
ら、
144
お
梅
(
うめ
)
『あゝ
恐
(
こは
)
い
恐
(
こは
)
い、
145
をばさま、
146
何卒
(
どうぞ
)
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さいまし。
147
お
願
(
ねが
)
ひで
御座
(
ござ
)
います』
148
黒姫
(
くろひめ
)
『お
前
(
まへ
)
、
149
最前
(
さいぜん
)
の
言葉
(
ことば
)
に
姉
(
ねえ
)
さまのお
愛
(
あい
)
さまとやらが
悪者
(
わるもの
)
に
殺
(
ころ
)
され、
150
土中
(
どちう
)
に
埋
(
うづ
)
められたと
云
(
い
)
ひましたな』
151
お
梅
(
うめ
)
『はい、
152
高手
(
たかて
)
小手
(
こて
)
に
縛
(
いまし
)
めて、
153
森
(
もり
)
の
下
(
した
)
の
土中
(
どちう
)
に
埋
(
うづ
)
めて
了
(
しま
)
ひました。
154
さうして
高山彦
(
たかやまひこ
)
と
言
(
い
)
ふお
方
(
かた
)
と、
155
兼公
(
かねこう
)
と
云
(
い
)
ふ
無頼漢
(
ならずもの
)
と
一所
(
いつしよ
)
に、
156
深
(
ふか
)
い
穴
(
あな
)
へ
埋
(
う
)
められ、
157
大
(
おほ
)
きな
石
(
いし
)
を
其
(
その
)
上
(
うへ
)
に
幾
(
いく
)
つも
幾
(
いく
)
つも
乗
(
の
)
せて
帰
(
かへ
)
つて
了
(
しま
)
ひました』
158
黒姫
(
くろひめ
)
は
高山彦
(
たかやまひこ
)
と
聞
(
き
)
くより、
159
顔
(
かほ
)
を
蒼白
(
まつさを
)
にし
口
(
くち
)
を
尖
(
とが
)
らせ、
160
黒姫
(
くろひめ
)
『エ、
161
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ひなさる。
162
高山彦
(
たかやまひこ
)
と
云
(
い
)
ふ
人
(
ひと
)
が
如何
(
どう
)
なつたと
云
(
い
)
ふのだい』
163
お
梅
(
うめ
)
『ハイ、
164
姉
(
ねえ
)
さまのお
愛
(
あい
)
さまと
妾
(
わたし
)
が
縛
(
しば
)
られて、
165
大蛇
(
をろち
)
の
三公
(
さんこう
)
と
云
(
い
)
ふ
悪者
(
わるもの
)
に
嘖
(
さいな
)
まれて
居
(
ゐ
)
る
所
(
ところ
)
へ
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
謡
(
うた
)
ひ、
166
助
(
たす
)
けに
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいましたお
方
(
かた
)
で
御座
(
ござ
)
います。
167
其
(
その
)
方
(
かた
)
に
目潰
(
めつぶし
)
をかけて
引倒
(
ひつこ
)
かし、
168
荒縄
(
あらなは
)
で
縛
(
しば
)
り、
169
姉
(
ねえ
)
さまと
一所
(
いつしよ
)
に
埋
(
う
)
めて
了
(
しま
)
ひました。
170
ウワーツ…………』
171
と
又
(
また
)
泣
(
な
)
き
伏
(
ふ
)
す。
172
黒姫
(
くろひめ
)
はあわてふためき
乍
(
なが
)
ら、
173
黒姫
(
くろひめ
)
『これこれお
梅
(
うめ
)
さま、
174
シツカリして
下
(
くだ
)
され。
175
高山彦
(
たかやまひこ
)
さまは
何処
(
どこ
)
に
埋
(
う
)
めてあるか。
176
さあ
早
(
はや
)
く
行
(
い
)
つて
助
(
たす
)
けねばなるまい。
177
お
愛
(
あい
)
さまと
云
(
い
)
ふのは
火
(
ひ
)
の
国都
(
くにみやこ
)
の
愛子姫
(
あいこひめ
)
ではありませぬか。
178
さあ
行
(
ゆ
)
きませう』
179
と
促
(
うなが
)
せば
少女
(
せうぢよ
)
は、
180
お梅
『ハイ、
181
あまり
恐
(
こは
)
かつたので
気
(
き
)
が
遠
(
とほ
)
くなり、
182
をばさまの
仰
(
おつ
)
しやる
事
(
こと
)
がハツキリ
分
(
わか
)
りませぬが、
183
案内
(
あんない
)
しますから、
184
何卒
(
どうぞ
)
助
(
たす
)
けてやつて
下
(
くだ
)
さいませ』
185
黒姫
(
くろひめ
)
『あゝさうだらうとも、
186
無理
(
むり
)
もない。
187
可憐
(
かはい
)
さうに、
188
怖
(
こは
)
いのも
尤
(
もつと
)
もだ。
189
それにしてもようまアお
前
(
まへ
)
は
免
(
まぬが
)
れて
来
(
こ
)
られたものだ。
190
サア
一時
(
いつとき
)
も
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
しては
居
(
を
)
られませぬ。
191
息
(
いき
)
が
絶
(
き
)
れては
取返
(
とりかへ
)
しがつきませぬからな』
192
お
梅
(
うめ
)
『をばさま、
193
妾
(
わたし
)
が
案内
(
あんない
)
致
(
いた
)
します。
194
何卒
(
どうぞ
)
跟
(
つ
)
いて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さい』
195
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つ。
196
されどお
梅
(
うめ
)
は
夜前
(
やぜん
)
の
騒動
(
さうだう
)
に
気
(
き
)
を
脱
(
ぬ
)
かれ、
197
其
(
その
)
上
(
うへ
)
積
(
つ
)
み
重
(
かさ
)
ねられた
石
(
いし
)
を
取除
(
とりの
)
け
様
(
やう
)
として
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
気張
(
きば
)
つた
結果
(
けつくわ
)
、
198
身体
(
からだ
)
は
非常
(
ひじやう
)
に
疲
(
つか
)
れて
了
(
しま
)
ひ、
199
足許
(
あしもと
)
さへもヒヨロヒヨロである。
200
それ
故
(
ゆゑ
)
思
(
おも
)
はしく
足
(
あし
)
も
運
(
はこ
)
ばず、
201
余
(
あま
)
りのもどかしさに
黒姫
(
くろひめ
)
は
気
(
き
)
が
急
(
せ
)
いて
堪
(
たま
)
らず、
202
黒姫
(
くろひめ
)
『お
梅
(
うめ
)
さまとやら、
203
此
(
この
)
をばが
負
(
お
)
うてやりませう。
204
お
前
(
まへ
)
は
妾
(
わたし
)
の
背中
(
せなか
)
から
案内
(
あんない
)
して
下
(
くだ
)
さい。
205
一刻
(
いつこく
)
も
猶予
(
いうよ
)
はなりませぬから……』
206
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
207
お
梅
(
うめ
)
をグツと
背
(
せ
)
に
負
(
お
)
ひ、
208
杖
(
つゑ
)
を
力
(
ちから
)
に
雑草
(
ざつさう
)
生
(
お
)
ひ
茂
(
しげ
)
る
山道
(
やまみち
)
を、
209
我
(
われ
)
を
忘
(
わす
)
れて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
210
殆
(
ほとん
)
ど
十丁
(
じつちやう
)
ばかりも
来
(
き
)
たと
思
(
おも
)
ふ
時
(
とき
)
、
211
お
梅
(
うめ
)
は
背中
(
せなか
)
より
細
(
ほそ
)
い
声
(
こゑ
)
にて、
212
お梅
『をばさま、
213
あそこの
楠
(
くすのき
)
の
根元
(
ねもと
)
に、
214
沢山
(
たくさん
)
な
石
(
いし
)
が
積
(
つ
)
んで
御座
(
ござ
)
いませう。
215
あそこに
姉
(
ねえ
)
さまや、
216
二人
(
ふたり
)
の
方
(
かた
)
が
埋
(
う
)
められて
居
(
を
)
られます。
217
ワーンワーン』
218
と
又
(
また
)
もや
泣
(
な
)
き
出
(
だ
)
す。
219
黒姫
(
くろひめ
)
は
泣
(
な
)
き
叫
(
さけ
)
ぶお
梅
(
うめ
)
を
労
(
いた
)
はり
乍
(
なが
)
ら、
220
慌
(
あはただ
)
しく
塚
(
つか
)
の
前
(
まへ
)
に
馳寄
(
はせよ
)
り、
221
背中
(
せなか
)
よりお
梅
(
うめ
)
を
下
(
おろ
)
し、
222
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
の
金剛力
(
こんがうりき
)
を
出
(
だ
)
して、
223
口
(
くち
)
に
神号
(
しんがう
)
を
称
(
とな
)
へ
乍
(
なが
)
ら
巨大
(
きよだい
)
な
石
(
いし
)
に
手
(
て
)
をかけ、
224
押
(
お
)
せども
突
(
つ
)
けどもビクとも
動
(
うご
)
かぬのに
落胆
(
らくたん
)
し、
225
涙
(
なみだ
)
をタラタラと
流
(
なが
)
し
乍
(
なが
)
ら、
226
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
初
(
はじ
)
めた。
227
此
(
この
)
時
(
とき
)
丸木橋
(
まるきばし
)
の
袂
(
たもと
)
に
現
(
あら
)
はれた
三尺
(
さんじやく
)
ばかりの
八
(
はち
)
人
(
にん
)
の
童子
(
どうじ
)
、
228
何処
(
どこ
)
ともなく
出
(
い
)
で
来
(
きた
)
り、
229
巨大
(
きよだい
)
なる
石
(
いし
)
を
毬
(
まり
)
を
投
(
な
)
げる
様
(
やう
)
に
軽
(
かる
)
さうにポイポイと
取
(
と
)
り
除
(
の
)
け、
230
四五間
(
しごけん
)
先
(
さき
)
へ
投
(
な
)
げつけて
了
(
しま
)
つた。
231
さうして
又
(
また
)
もや
白煙
(
しろけぶり
)
となつて
童子
(
どうじ
)
の
姿
(
すがた
)
は
見
(
み
)
えなくなつた。
232
黒姫
(
くろひめ
)
は
感謝
(
かんしや
)
の
涙
(
なみだ
)
に
咽
(
むせ
)
びつつ
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
土
(
つち
)
を
掻
(
か
)
き
分
(
わ
)
け
汗
(
あせ
)
みどろになつて
掘
(
ほ
)
りだした。
233
見
(
み
)
れば
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
男女
(
だんぢよ
)
が
一緒
(
いつしよ
)
に
枕
(
まくら
)
を
並
(
なら
)
べて
埋
(
う
)
められて
居
(
ゐ
)
る。
234
黒姫
(
くろひめ
)
は
心
(
こころ
)
の
裡
(
うち
)
にて
神助
(
しんじよ
)
を
祈
(
いの
)
り
乍
(
なが
)
ら、
235
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
身体
(
からだ
)
を
掘
(
ほ
)
り
上
(
あ
)
げ
青草
(
あをくさ
)
の
上
(
うへ
)
に
寝
(
ね
)
かせ、
236
手早
(
てばや
)
く
縛
(
いましめ
)
の
縄
(
なは
)
を
一々
(
いちいち
)
解
(
と
)
き、
237
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
歌
(
うた
)
ひ
上
(
あ
)
げ、
238
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
蘇生
(
そせい
)
を
祈
(
いの
)
つた。
239
お
梅
(
うめ
)
は
其
(
そ
)
の
間
(
ま
)
に
黒姫
(
くろひめ
)
の
水筒
(
すゐとう
)
を
取
(
と
)
り
谷水
(
たにみづ
)
を
汲
(
く
)
み
来
(
きた
)
り、
240
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
口
(
くち
)
に
含
(
ふく
)
ませた。
241
お
愛
(
あい
)
は『ウン』と
一声
(
ひとこえ
)
叫
(
さけ
)
ぶと
共
(
とも
)
にムツクリと
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
り、
242
お
梅
(
うめ
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て
嬉
(
うれ
)
し
気
(
げ
)
に、
243
お愛
『ア、
244
お
前
(
まへ
)
は
妹
(
いもうと
)
のお
梅
(
うめ
)
であつたか。
245
ようまあ
無事
(
ぶじ
)
で
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さつた』
246
と
飛
(
と
)
びつく
様
(
やう
)
にする。
247
お
梅
(
うめ
)
は
嬉
(
うれ
)
しげに、
248
お梅
『
姉
(
ねえ
)
さま、
249
嬉
(
うれ
)
しいわ、
250
三五教
(
あななひけう
)
の
をば
さまが
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さつたのですよ。
251
お
礼
(
れい
)
を
申
(
まを
)
しなさい』
252
黒姫
(
くろひめ
)
は
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
の
顔
(
かほ
)
を
見較
(
みくら
)
べ、
253
高山彦
(
たかやまひこ
)
には
非
(
あら
)
ざるかと
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
調
(
しら
)
べて
居
(
ゐ
)
たが、
254
黒姫
『ヤア、
255
之
(
これ
)
は
孫公
(
まごこう
)
ぢやつた。
256
まア
如何
(
どう
)
したら
良
(
よ
)
からう』
257
と
身体
(
からだ
)
に
手
(
て
)
を
触
(
ふ
)
れて
見
(
み
)
た。
258
まだ
何処
(
どこ
)
ともなしに
温味
(
ぬくみ
)
がある。
259
黒姫
(
くろひめ
)
はお
愛
(
あい
)
の
感謝
(
かんしや
)
の
言葉
(
ことば
)
を
耳
(
みみ
)
にもかけずに、
260
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
に
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
鎮魂
(
ちんこん
)
をなし、
261
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
謡
(
うた
)
ひ
上
(
あ
)
げて
居
(
を
)
る。
262
二人
(
ふたり
)
は
漸
(
やうや
)
く『ウーン』と
呻
(
うめ
)
いて
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
り
四辺
(
あたり
)
をキヨロキヨロ
見廻
(
みまは
)
して
居
(
ゐ
)
る。
263
孫公
(
まごこう
)
『やあ、
264
黒姫
(
くろひめ
)
さまか。
265
ようまあ
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さいました』
266
と
云
(
い
)
つたきり
涙
(
なみだ
)
をタラタラと
流
(
なが
)
し、
267
大地
(
だいち
)
に
頭
(
かしら
)
を
下
(
さ
)
げて
感謝
(
かんしや
)
して
居
(
ゐ
)
る。
268
兼公
(
かねこう
)
は
四辺
(
あたり
)
をキヨロキヨロ
見廻
(
みまは
)
し、
269
兼公
『ヤア、
270
お
愛
(
あい
)
様
(
さま
)
、
271
誠
(
まこと
)
に
危
(
あぶな
)
い
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
いました』
272
お
愛
(
あい
)
『
兼公
(
かねこう
)
、
273
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
が、
274
妾
(
わたし
)
達
(
たち
)
一同
(
いちどう
)
の
生命
(
いのち
)
を
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さつたのですよ。
275
お
礼
(
れい
)
を
申
(
まを
)
しなさい』
276
兼公
(
かねこう
)
『
之
(
これ
)
は
之
(
これ
)
は、
277
誰方
(
どなた
)
か
存
(
ぞん
)
じませぬが、
278
能
(
よ
)
くもまあ
生命
(
いのち
)
を
拾
(
ひろ
)
つて
下
(
くだ
)
さいました。
279
悪者
(
わるもの
)
の
為
(
た
)
めにこんな
処
(
ところ
)
に、
280
生埋
(
いきう
)
めにされて
居
(
を
)
りました。
281
モ
少
(
すこ
)
し
貴女
(
あなた
)
のお
出
(
い
)
でが
遅
(
おそ
)
かつたら、
282
生命
(
いのち
)
は
助
(
たす
)
かりませぬでした。
283
私
(
わたし
)
は
矢方
(
やかた
)
の
村
(
むら
)
の
兼公
(
かねこう
)
と
申
(
まを
)
して、
284
あまり
良
(
よ
)
くない
人物
(
じんぶつ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
285
斯
(
こ
)
うなつたのも
全
(
まつた
)
く
天罰
(
てんばつ
)
で
御座
(
ござ
)
いませう。
286
何卒
(
どうぞ
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
詫
(
わび
)
をして
下
(
くだ
)
さいませ』
287
黒姫
(
くろひめ
)
『まあ、
288
何
(
なに
)
よりも
結構
(
けつこう
)
で
御座
(
ござ
)
いました。
289
妾
(
わたし
)
も
結構
(
けつこう
)
なお
神徳
(
かげ
)
を
頂
(
いただ
)
きまして、
290
斯
(
こ
)
んな
気持
(
きもち
)
の
良
(
よ
)
い
事
(
こと
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ。
291
さうお
礼
(
れい
)
を
云
(
い
)
つて
貰
(
もら
)
ひましては、
292
妾
(
わたし
)
の
折角
(
せつかく
)
の
善行
(
ぜんかう
)
が
煙
(
けぶり
)
となつて
消
(
き
)
えて
了
(
しま
)
ひます。
293
何事
(
なにごと
)
も
皆
(
みな
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さつたのです。
294
大
(
おほ
)
きな
岩石
(
がんせき
)
で
圧
(
おさ
)
へつけてあつた
此
(
この
)
塚
(
つか
)
は
婆
(
ばば
)
アの
力
(
ちから
)
に
及
(
およ
)
ばず、
295
苦
(
くる
)
しみ
悶
(
もだ
)
えて
居
(
ゐ
)
る
矢先
(
やさき
)
、
296
木花
(
このはな
)
咲耶姫
(
さくやひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
化身
(
けしん
)
が
現
(
あら
)
はれて、
297
岩
(
いは
)
を
取除
(
とりの
)
けて
下
(
くだ
)
さいました。
298
其
(
その
)
お
蔭
(
かげ
)
で
皆
(
みな
)
さまをお
助
(
たす
)
けする
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ましたのですから、
299
何卒
(
どうぞ
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
礼
(
れい
)
を
申上
(
まをしあ
)
げて
下
(
くだ
)
さい』
300
孫公
(
まごこう
)
初
(
はじ
)
めお
愛
(
あい
)
、
301
兼公
(
かねこう
)
、
302
お
梅
(
うめ
)
の
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
黒姫
(
くろひめ
)
の
後
(
うしろ
)
に
端坐
(
たんざ
)
し、
303
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
救命
(
きうめい
)
謝恩
(
しやおん
)
の
祝詞
(
のりと
)
を
終
(
をは
)
つて
一行
(
いつかう
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
はもと
来
(
き
)
し
道
(
みち
)
へ
引返
(
ひきかへ
)
し、
304
向日峠
(
むかふたうげ
)
の
山道
(
やまみち
)
指
(
さ
)
して
辿
(
たど
)
り
行
(
ゆ
)
く。
305
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
306
(
大正一一・九・一四
旧七・二三
北村隆光
録)
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