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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第34巻(酉の巻)
序文
総説
第1篇 筑紫の不知火
第1章 筑紫上陸
第2章 孫甦
第3章 障文句
第4章 歌垣
第5章 対歌
第6章 蜂の巣
第7章 無花果
第8章 暴風雨
第2篇 有情無情
第9章 玉の黒点
第10章 空縁
第11章 富士咲
第12章 漆山
第13章 行進歌
第14章 落胆
第15章 手長猿
第16章 楽天主義
第3篇 峠の達引
第17章 向日峠
第18章 三人塚
第19章 生命の親
第20章 玉卜
第21章 神護
第22章 蛙の口
第23章 動静
余白歌
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霊界物語
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海洋万里(第25~36巻)
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第34巻(酉の巻)
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<<< 落胆
(B)
(N)
楽天主義 >>>
第一五章
手長猿
(
てながざる
)
〔九五六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第34巻 海洋万里 酉の巻
篇:
第2篇 有情無情
よみ(新仮名遣い):
うじょうむじょう
章:
第15章 手長猿
よみ(新仮名遣い):
てながざる
通し章番号:
956
口述日:
1922(大正11)年09月13日(旧07月22日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年12月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
黒姫は、自分の尋ねる息子かもしれないと思った建日館の建国別が、案に相違して別人だったことに力を落とし、火の国の神館で若い女房の愛子姫をめとっていると聞いた高山彦を訪ねるべく、心も面白からずとぼとぼと険しい坂道を降って行く。
芳公と房公も、黒姫の姿を見失わないようにと、山道を拍子をとりながら追って行く。一方黒姫は高山川のほとりで、腰掛岩に座って体を休めていた。黒姫が思案に暮れていると、手長猿の大群が鎖つなぎに降りてきて、頭のかぶりものを奪ってしまった。
黒姫は猿に向かって石を投げたり抵抗したが、猿たちは糞尿をかけたり実を投げたりしてきた。とうとう猿は黒姫の髪をつかもうとしてきたので、黒姫は鎮魂の姿勢を取ったところ、猿たちも真似をして鎮魂の姿勢を取った。
黒姫は猿たちが自分の真似をするのを見て、大地に大の字になった。すると猿も真似をして樹上で大の字になったので、樹から落ちてしまい、猿たちは逃げてしまった。
次いで猿の親玉のような五六匹の大猿が現れてやはり黒姫を悩め始めたので、黒姫は片足で立って見せた。大猿も真似をして樹上で片足立ちをし、地上に落ちて悲鳴を上げ、逃げてしまった。
猿に奪われた笠は、樹上から黒姫のもとに落ちてきた。そこへ房公と芳公が追いついてやってきた。黒姫は猿の襲撃のことを房公と芳公に話した。二人が建日館で酒も飲まずに追って来たことを聞いて、黒姫は二人をからかった。
ひとしきり話を交わすと、黒姫は笠をかぶり杖をついてさっさと先に行ってしまう。房公と芳公が呼び止めるのも聞かず、火の国の都を指して急ぎ行く。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-09-17 11:12:51
OBC :
rm3415
愛善世界社版:
195頁
八幡書店版:
第6輯 432頁
修補版:
校定版:
203頁
普及版:
83頁
初版:
ページ備考:
001
建日
(
たけひ
)
の
館
(
やかた
)
を
訪
(
たづ
)
ねたる
002
三五教
(
あななひけう
)
の
黒姫
(
くろひめ
)
は
003
建国別
(
たけくにわけ
)
を
真実
(
ほんたう
)
の
004
生
(
う
)
みの
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
と
思
(
おも
)
ひつめ
005
はるばる
訪
(
たづ
)
ねて
来
(
き
)
たものを
006
案
(
あん
)
に
相違
(
さうゐ
)
の
悲
(
かな
)
しさに
007
早々
(
さうさう
)
館
(
やかた
)
を
立出
(
たちい
)
でて
008
二人
(
ふたり
)
の
従者
(
じゆうしや
)
を
見捨
(
みす
)
てつつ
009
髪
(
かみ
)
ふり
紊
(
みだ
)
し
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
に
010
逆
(
さか
)
らひ
乍
(
なが
)
ら
坂路
(
さかみち
)
を
011
足
(
あし
)
に
任
(
まか
)
せて
降
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く
012
たよりも
力
(
ちから
)
も
抜
(
ぬ
)
け
果
(
は
)
てし
013
此
(
この
)
黒姫
(
くろひめ
)
の
心根
(
こころね
)
は
014
聞
(
き
)
くも
無残
(
むざん
)
の
次第
(
しだい
)
なり
015
万里
(
ばんり
)
の
波濤
(
はたう
)
を
乗越
(
のりこ
)
えて
016
こがれ
慕
(
した
)
うたハズバンド
017
高山彦
(
たかやまひこ
)
は
火
(
ひ
)
の
国
(
くに
)
の
018
神
(
かみ
)
の
館
(
やかた
)
にましまして
019
花
(
はな
)
を
欺
(
あざむ
)
く
愛子姫
(
あいこひめ
)
020
二度目
(
にどめ
)
の
女房
(
にようばう
)
に
持
(
も
)
ち
給
(
たま
)
ひ
021
睦
(
むつ
)
まじさうに
日
(
ひ
)
を
送
(
おく
)
り
022
栄
(
さか
)
え
玉
(
たま
)
ふと
聞
(
き
)
くよりも
023
黒姫
(
くろひめ
)
心
(
こころ
)
も
何
(
なん
)
となく
024
面白
(
おもしろ
)
からずなり
果
(
は
)
てて
025
行
(
ゆ
)
く
足並
(
あしなみ
)
もトボトボと
026
力
(
ちから
)
なげにぞ
見
(
み
)
えにける。
027
黒姫
『あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
028
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましまして
029
火
(
ひ
)
の
国都
(
くにみやこ
)
にましませる
030
高山彦
(
たかやまひこ
)
に
巡
(
めぐ
)
り
会
(
あ
)
ひ
031
愛子
(
あいこ
)
の
姫
(
ひめ
)
と
睦
(
むつ
)
まじく
032
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
打
(
うち
)
あけて
033
互
(
たがひ
)
に
手
(
て
)
を
取
(
と
)
り
三五
(
あななひ
)
の
034
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
広
(
ひろ
)
めさせ
035
救
(
すく
)
はせ
玉
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
036
純世
(
すみよ
)
の
姫
(
ひめ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
037
願
(
ねが
)
ひまつる』と
宣
(
の
)
り
乍
(
なが
)
ら
038
岩石
(
がんせき
)
崎嶇
(
きく
)
たる
峻坂
(
しゆんぱん
)
を
039
トントントンと
降
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く
040
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
041
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ。
042
黒姫
(
くろひめ
)
の
駆出
(
かけだ
)
した
姿
(
すがた
)
を
見失
(
みうしな
)
はじと、
043
房公
(
ふさこう
)
、
044
芳公
(
よしこう
)
の
両人
(
りやうにん
)
は、
045
九十九
(
つくも
)
曲
(
まが
)
りの
山路
(
やまみち
)
を
伝
(
つた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
046
足拍子
(
あしびやうし
)
を
取
(
と
)
つて
唄
(
うた
)
ひ
行
(
ゆ
)
く。
047
芳公
(
よしこう
)
『ウントコドツコイドツコイシヨ
048
天
(
てん
)
が
地
(
ち
)
となりウントコシヨ
049
地
(
ち
)
が
天
(
てん
)
となるウントコシヨ
050
奇妙
(
きめう
)
な
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
て
来
(
き
)
た
051
高山彦
(
たかやまひこ
)
の
老爺
(
おぢい
)
さまが
052
年
(
とし
)
の
三十
(
さんじふ
)
も
違
(
ちが
)
ふよな
053
若
(
わか
)
い
女房
(
にようばう
)
を
貰
(
もら
)
ふやら
054
五十
(
ごじふ
)
の
尻
(
しり
)
を
作
(
つく
)
つたる
055
皺苦茶
(
しわくちや
)
婆
(
ば
)
さまの
黒姫
(
くろひめ
)
が
056
万里
(
ばんり
)
の
波
(
なみ
)
を
乗越
(
のりこ
)
えて
057
ウントコドツコイ
暑
(
あつ
)
いのに
058
汗
(
あせ
)
をタラタラ
流
(
なが
)
しつつ
059
薄情爺
(
はくじやうおやぢ
)
の
後
(
あと
)
をつけ
060
心
(
こころ
)
の
丈
(
たけ
)
を
口説
(
くど
)
かむと
061
ウントコドツコイやつて
来
(
く
)
る
062
コリヤ
又
(
また
)
何
(
なん
)
としたことだ
063
愛子
(
あいこ
)
の
姫
(
ひめ
)
もウントコシヨ
064
愛子
(
あいこ
)
の
姫
(
ひめ
)
ではないかいな
065
ウントコドツコイ
棺桶
(
くわんをけ
)
に
066
片足
(
かたあし
)
ドツコイつつ
込
(
こ
)
んだ
067
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
用
(
よう
)
のない
爺
(
おやぢ
)
068
薬鑵頭
(
やかんあたま
)
の
寿老面
(
げほうづら
)
069
入日
(
いりひ
)
の
影
(
かげ
)
かドツコイシヨ
070
物干棹
(
ものほしざを
)
かと
云
(
い
)
ふやうな
071
鰌
(
どぢやう
)
の
様
(
やう
)
な
化物
(
ばけもの
)
に
072
秋波
(
しうは
)
を
送
(
おく
)
つて
吾
(
わが
)
夫
(
つま
)
と
073
かしづき
仕
(
つか
)
へる
不思議
(
ふしぎ
)
さよ
074
男
(
をとこ
)
が
不自由
(
ふじゆう
)
な
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
と
075
どうして
思
(
おも
)
うたか
知
(
し
)
らないが
076
あんな
爺
(
おやぢ
)
と
添
(
そ
)
ふならば
077
モツト
立派
(
りつぱ
)
な
人
(
ひと
)
がある
078
此
(
この
)
芳公
(
よしこう
)
はウントコシヨ
079
如何
(
いか
)
に
汚
(
きた
)
ない
男
(
をとこ
)
でも
080
年
(
とし
)
は
若
(
わか
)
いしドツコイシヨ
081
そこらあたりに
艶
(
つや
)
がある
082
同
(
おな
)
じ
男
(
をとこ
)
を
持
(
も
)
つなれば
083
木乃伊
(
みいら
)
の
様
(
やう
)
に
干
(
ひ
)
すぼつた
084
骨
(
ほね
)
と
皮
(
かは
)
とのがり
坊子
(
ばうし
)
を
085
持
(
も
)
たいでも
良
(
よ
)
かりそなものぢやのに
086
私
(
わたし
)
は
呆
(
あき
)
れてウントコシヨ
087
口
(
くち
)
が
利
(
き
)
けなくなつて
来
(
き
)
た
088
ウントコドツコイ
危
(
あぶ
)
ないぞ
089
それそれそこに
石
(
いし
)
がある
090
草鞋
(
わらぢ
)
を
切
(
き
)
つては
堪
(
たま
)
らない
091
ま
一人
(
ひとり
)
虎公
(
とらこう
)
が
居
(
を
)
つたなら
092
草鞋
(
わらぢ
)
を
出
(
だ
)
して
呉
(
く
)
れようが
093
生憎
(
あひにく
)
虎公
(
とらこう
)
は
酒
(
さけ
)
の
席
(
せき
)
094
あゝ
是
(
これ
)
からは
黒姫
(
くろひめ
)
が
095
火
(
ひ
)
の
国都
(
くにみやこ
)
へドツコイシヨ
096
乗込
(
のりこ
)
んだなら
大変
(
たいへん
)
だ
097
決
(
けつ
)
して
無事
(
ぶじ
)
にはウントコシヨ
098
治
(
をさ
)
まるまいぞ、のう
房公
(
ふさこう
)
099
俺
(
おれ
)
は
案
(
あん
)
じて
仕様
(
しやう
)
がない
100
サアサア
早
(
はや
)
う
行
(
ゆ
)
かうかい
101
女心
(
をんなごころ
)
の
一筋
(
ひとすぢ
)
に
102
悔
(
くや
)
し
残念
(
ざんねん
)
つきつめて
103
短気
(
たんき
)
を
出
(
だ
)
して
谷底
(
たにぞこ
)
へ
104
身投
(
みな
)
げをドツコイしられたら
105
聖地
(
せいち
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
言訳
(
いひわけ
)
が
106
どうして
是
(
これ
)
が
立
(
た
)
つものか
107
黒姫
(
くろひめ
)
さまも
黒姫
(
くろひめ
)
ぢや
108
おい
等
(
ら
)
二人
(
ふたり
)
を
振棄
(
ふりす
)
てて
109
走
(
はし
)
つて
行
(
ゆ
)
くとは
何事
(
なにごと
)
ぞ
110
孫公
(
まごこう
)
の
奴
(
やつ
)
はドツコイシヨ
111
どこへ
隠
(
かく
)
れて
居
(
を
)
るだろか
112
此奴
(
こいつ
)
の
事
(
こと
)
も
気
(
き
)
にかかる
113
あちら
此方
(
こちら
)
に
気
(
き
)
を
取
(
と
)
られ
114
頭
(
あたま
)
の
揉
(
も
)
めた
事
(
こと
)
ぢやワイ
115
ウントコドツコイ
危
(
あぶ
)
ないぞ
116
それそれそこにも
石車
(
いしぐるま
)
117
爪先
(
つまさき
)
用心
(
ようじん
)
して
来
(
こ
)
いよ
118
若
(
も
)
しも
辷
(
すべ
)
つて
怪我
(
けが
)
したら
119
お
嬶
(
かか
)
のお
鉄
(
てつ
)
にドツコイシヨ
120
どしても
言訳
(
いひわけ
)
立
(
た
)
たないぞ
121
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
を
出
(
で
)
る
時
(
とき
)
に
122
俺
(
おれ
)
のお
嬶
(
かか
)
のお
滝
(
たき
)
奴
(
め
)
が
123
もうしもうしこちの
人
(
ひと
)
124
お
前
(
まへ
)
一人
(
ひとり
)
のウントコシヨ
125
決
(
けつ
)
して
体
(
からだ
)
ぢやない
程
(
ほど
)
に
126
お
前
(
まへ
)
の
体
(
からだ
)
は
私
(
わし
)
の
物
(
もの
)
127
私
(
わたし
)
の
体
(
からだ
)
はウントコシヨ
128
ヤツパリお
前
(
まへ
)
の
物
(
もの
)
ぢやぞえ
129
自分
(
じぶん
)
一人
(
ひとり
)
と
慢心
(
まんしん
)
し
130
私
(
わたし
)
を
忘
(
わす
)
れて
怪我
(
けが
)
したら
131
私
(
わたし
)
は
恨
(
うら
)
んで
化
(
ば
)
けて
出
(
で
)
る
132
仮令
(
たとへ
)
死
(
し
)
んでもドツコイシヨ
133
高天原
(
たかあまはら
)
へは
行
(
ゆ
)
かれぬと
134
抜
(
ぬ
)
かした
時
(
とき
)
の
其
(
その
)
顔
(
かほ
)
が
135
今
(
いま
)
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
にブラついて
136
お
嬶
(
かか
)
が
恋
(
こひ
)
しうなつて
来
(
き
)
た
137
貴様
(
きさま
)
のお
嬶
(
かか
)
も
其
(
その
)
通
(
とほ
)
り
138
どこの
何処
(
いづこ
)
へ
行
(
い
)
つたとて
139
人情
(
にんじやう
)
許
(
ばか
)
りは
変
(
かは
)
らない
140
どうぞ
用心
(
ようじん
)
して
呉
(
く
)
れよ
141
お
鉄
(
てつ
)
に
代
(
かは
)
つて
気
(
き
)
をつける
142
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
143
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
144
と
両手
(
りやうて
)
を
動
(
うご
)
かせ、
145
足
(
あし
)
を
千鳥
(
ちどり
)
に
踏
(
ふ
)
み
乍
(
なが
)
ら、
146
一足
(
ひとあし
)
々々
(
ひとあし
)
拍子
(
ひやうし
)
を
取
(
と
)
つて
此
(
この
)
急坂
(
きふはん
)
を
降
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
147
黒姫
(
くろひめ
)
は
漸
(
やうや
)
くにして
高山川
(
たかやまがは
)
の
畔
(
ほとり
)
に
着
(
つ
)
いた。
148
ここには
恰好
(
かつかう
)
な
天然
(
てんねん
)
の
腰掛岩
(
こしかけいは
)
が
人待顔
(
ひとまちがほ
)
に
並
(
なら
)
んゐる。
149
暫
(
しば
)
し
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
め、
150
こし
方
(
かた
)
行末
(
ゆくすゑ
)
の
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
ひ
煩
(
わづら
)
ひ、
151
落涙
(
らくるい
)
に
及
(
およ
)
んでゐる。
152
そこには
樫
(
かし
)
の
大木
(
たいぼく
)
が
天
(
てん
)
を
封
(
ふう
)
じて
一二本
(
いちにほん
)
立
(
た
)
つてゐる。
153
黒姫
(
くろひめ
)
は
目
(
め
)
を
塞
(
ふさ
)
ぎ、
154
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
れてゐると、
155
樫
(
かし
)
の
木
(
き
)
の
枝
(
えだ
)
に
数十匹
(
すうじつひき
)
の
手長猿
(
てながざる
)
が
此
(
この
)
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て、
156
枝
(
えだ
)
から
一匹
(
いつぴき
)
の
猿
(
さる
)
が
吊
(
つ
)
りおりる。
157
次
(
つぎ
)
から
互
(
たがひ
)
に
次
(
つぎ
)
へと
手
(
て
)
をつなぎ、
158
七八匹
(
しちはつぴき
)
の
奴
(
やつ
)
が
鎖
(
くさり
)
の
様
(
やう
)
になつて、
159
蜘蛛
(
くも
)
が
空
(
そら
)
からおりた
様
(
やう
)
に『チウチウ』と
黒姫
(
くろひめ
)
の
頭
(
あたま
)
の
上
(
うへ
)
に
降
(
お
)
り
来
(
きた
)
り、
160
黒姫
(
くろひめ
)
の
笠
(
かさ
)
をグイと
引
(
ひ
)
つたくり、
161
ツルツルと
次第
(
しだい
)
々々
(
しだい
)
に
木
(
き
)
の
上
(
うへ
)
へ
持
(
も
)
つてあがつて
了
(
しま
)
つた。
162
黒姫
(
くろひめ
)
は
宣伝使
(
せんでんし
)
のレツテルとも
云
(
い
)
ふべき
大切
(
たいせつ
)
な
冠
(
かむ
)
り
物
(
もの
)
を
奪
(
と
)
られ、
163
樹上
(
じゆじやう
)
の
手長猿
(
てながざる
)
の
群
(
むれ
)
を
眺
(
なが
)
めて、
164
目
(
め
)
を
怒
(
いか
)
らし、
165
残念
(
ざんねん
)
相
(
さう
)
に
睨
(
にら
)
んでゐる。
166
猿
(
さる
)
は
凱歌
(
がいか
)
を
奏
(
そう
)
した
様
(
やう
)
な
心持
(
こころもち
)
になつて『キヤツキヤツ』と
黒姫
(
くろひめ
)
を
冷笑
(
れいせう
)
的
(
てき
)
にからかつてゐるやうな
気分
(
きぶん
)
がする。
167
黒姫
(
くろひめ
)
は
縁起
(
えんぎ
)
の
悪
(
わる
)
い、
168
冠
(
かむ
)
り
物
(
もの
)
を
四
(
よ
)
つ
手
(
で
)
にしてやられて、
169
無念
(
むねん
)
さやる
方
(
かた
)
なく、
170
あり
合
(
あ
)
ふ
石
(
いし
)
をひろつて、
171
樹上
(
じゆじやう
)
の
猿
(
さる
)
の
群
(
むれ
)
に
向
(
むか
)
つて
投
(
な
)
げつけた。
172
猿
(
さる
)
は『キーキーキヤアキヤア』と
声
(
こゑ
)
をはりあげ、
173
同類
(
どうるゐ
)
を
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
から
呼
(
よ
)
び
集
(
あつ
)
める。
174
またたく
間
(
うち
)
に
ぐみ
のなつた
程
(
ほど
)
、
175
樫
(
かし
)
の
木
(
き
)
の
上
(
うへ
)
に
猿
(
さる
)
が
集
(
あつ
)
まつて
来
(
き
)
た。
176
さうして
樹上
(
じゆじやう
)
から
小便
(
せうべん
)
の
雨
(
あめ
)
を
降
(
ふ
)
らす、
177
糞
(
くそ
)
を
垂
(
た
)
れる、
178
樫
(
かし
)
の
実
(
み
)
をむしつては、
179
黒姫
(
くろひめ
)
目
(
め
)
がけて
投
(
な
)
げつける。
180
黒姫
(
くろひめ
)
は
樫
(
かし
)
の
実
(
み
)
と
小便
(
せうべん
)
の
両攻
(
りやうぜ
)
めに
会
(
あ
)
うて、
181
身動
(
みうご
)
きもならず、
182
怨
(
うら
)
めしげに
立
(
た
)
つてゐた。
183
一足
(
ひとあし
)
でも
黒姫
(
くろひめ
)
が
動
(
うご
)
かうものなら、
184
忽
(
たちま
)
ち
猿
(
さる
)
の
群
(
むれ
)
は
寄
(
よ
)
つて
集
(
たか
)
つて、
185
かきむしり、
186
如何
(
どん
)
な
事
(
こと
)
をするか
分
(
わか
)
らぬ
形勢
(
けいせい
)
となつて
来
(
き
)
た。
187
猿
(
さる
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
は、
188
弱身
(
よわみ
)
を
見
(
み
)
せたが
最後
(
さいご
)
、
189
どこ
迄
(
まで
)
も
調子
(
てうし
)
に
乗
(
の
)
つて
追跡
(
つゐせき
)
し、
190
乱暴
(
らんばう
)
を
働
(
はたら
)
くのである。
191
黒姫
(
くろひめ
)
は
其
(
その
)
呼吸
(
こきふ
)
を
幾分
(
いくぶん
)
か
悟
(
さと
)
つたと
見
(
み
)
えて、
192
痩我慢
(
やせがまん
)
にも
地
(
ち
)
から
生
(
は
)
えた
木
(
き
)
の
様
(
やう
)
に
身動
(
みうご
)
きもせず、
193
猿
(
さる
)
の
群
(
むれ
)
と
睨
(
にら
)
めつくらをやつて
居
(
ゐ
)
た。
194
時々
(
じじ
)
刻々
(
こくこく
)
に
猿
(
さる
)
の
群
(
むれ
)
は
集
(
あつ
)
まり
来
(
きた
)
る。
195
又
(
また
)
しても、
196
頭
(
あたま
)
の
上
(
うへ
)
へ
猿
(
さる
)
の
腕
(
かいな
)
がおりて
来
(
き
)
て、
197
今度
(
こんど
)
は
髪
(
かみ
)
の
毛
(
け
)
をグツと
手
(
て
)
に
巻
(
ま
)
き、
198
引上
(
ひきあ
)
げようとする。
199
黒姫
(
くろひめ
)
も
堪
(
たま
)
らなくなつて、
200
『
一
(
ひと
)
二
(
ふた
)
三
(
み
)
四
(
よ
)
五
(
いつ
)
六
(
むゆ
)
七
(
なな
)
八
(
や
)
九
(
ここの
)
十
(
たり
)
百
(
もも
)
千
(
ち
)
万
(
よろづ
)
!』と
手
(
て
)
を
組
(
く
)
んで
鎮魂
(
ちんこん
)
の
姿勢
(
しせい
)
を
取
(
と
)
る。
201
手長猿
(
てながざる
)
の
群
(
むれ
)
は
之
(
これ
)
を
見
(
み
)
て、
202
各自
(
かくじ
)
に
手
(
て
)
を
組
(
く
)
み『キヤツキヤツ』と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
黒姫
(
くろひめ
)
を
一匹
(
いつぴき
)
も
残
(
のこ
)
らず
睨
(
にら
)
みつける。
203
黒姫
(
くろひめ
)
は
股
(
また
)
を
拡
(
ひろ
)
げて、
204
トンと
飛
(
と
)
び
上
(
あが
)
り
大地
(
だいち
)
に
大
(
だい
)
の
字
(
じ
)
になつて
見
(
み
)
せた。
205
手長猿
(
てながざる
)
の
奴
(
やつ
)
、
206
又
(
また
)
之
(
これ
)
に
倣
(
なら
)
つて、
207
木
(
き
)
の
上
(
うへ
)
をも
省
(
かへり
)
みず、
208
一斉
(
いつせい
)
に
飛
(
と
)
び
上
(
あが
)
り
大
(
だい
)
の
字
(
じ
)
になつた
途端
(
とたん
)
に、
209
ステンドーと
大地
(
だいち
)
へ
雪崩
(
なだれ
)
を
打
(
う
)
つて
転倒
(
てんたふ
)
し、
210
『キヤツキヤツ』と
悲鳴
(
ひめい
)
をあげ、
211
はうばうの
体
(
てい
)
で
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く、
212
其
(
その
)
可笑
(
をか
)
しさ。
213
黒姫
(
くろひめ
)
はやつと
安心
(
あんしん
)
の
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
でおろし、
214
手拭
(
てぬぐひ
)
を
懐
(
ふところ
)
から
取出
(
とりいだ
)
し、
215
汗
(
あせ
)
を
拭
(
ふ
)
いた。
216
猿
(
さる
)
の
親玉
(
おやだま
)
ともいふべき
五六匹
(
ごろつぴき
)
の
大
(
おほ
)
きな
奴
(
やつ
)
、
217
樫
(
かし
)
の
木
(
き
)
の
上
(
うへ
)
から、
218
逃
(
に
)
げもせず
黒姫
(
くろひめ
)
の
様子
(
やうす
)
を
眺
(
なが
)
めてゐたが、
219
黒姫
(
くろひめ
)
が
汗
(
あせ
)
を
拭
(
ふ
)
いたのを
見
(
み
)
て、
220
同
(
おな
)
じく
両
(
りやう
)
の
手
(
て
)
で、
221
懐
(
ふところ
)
から
手拭
(
てぬぐひ
)
を
出
(
だ
)
す
真似
(
まね
)
をし
乍
(
なが
)
ら、
222
顔
(
かほ
)
をツルリと
撫
(
な
)
でた。
223
樹上
(
じゆじやう
)
の
大猿
(
おほざる
)
は
又
(
また
)
もや
樫
(
かし
)
の
実
(
み
)
を
むし
つては
黒姫
(
くろひめ
)
目
(
め
)
がけて、
224
雨霰
(
あめあられ
)
と
投
(
な
)
げつけ
出
(
だ
)
した。
225
黒姫
(
くろひめ
)
は
両手
(
りやうて
)
を
拡
(
ひろ
)
げ、
226
一方
(
いつぱう
)
の
足
(
あし
)
をピンと
上
(
あ
)
げ、
227
左
(
ひだり
)
の
足
(
あし
)
でトントントンと
地搗
(
ぢつ
)
きをして
見
(
み
)
せた。
228
樹上
(
じゆじやう
)
の
大猿
(
おほざる
)
は
一斉
(
いつせい
)
に
両手
(
りやうて
)
を
拡
(
ひろ
)
げ、
229
一方
(
いつぱう
)
の
足
(
あし
)
をピンと
上
(
あ
)
げて、
230
木
(
き
)
の
上
(
うへ
)
でトントントンと
地搗
(
ぢつき
)
の
真似
(
まね
)
をした
途端
(
とたん
)
にドスドスドスンと
一匹
(
いつぴき
)
も
残
(
のこ
)
らず
地上
(
ちじやう
)
に
墜落
(
つゐらく
)
し『キヤツキヤツ』と
悲鳴
(
ひめい
)
をあげ、
231
転
(
こ
)
けつ
転
(
まろ
)
びつ、
232
何処
(
いづこ
)
ともなく
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
して
了
(
しま
)
つた。
233
折柄
(
をりから
)
サツと
吹
(
ふ
)
き
来
(
きた
)
る
可
(
か
)
なり
荒
(
あら
)
い
風
(
かぜ
)
に
黒姫
(
くろひめ
)
の
被
(
かぶ
)
つてゐた
笠
(
かさ
)
は
音
(
おと
)
もなく、
234
秋
(
あき
)
の
初
(
はじめ
)
の
桐
(
きり
)
の
葉
(
は
)
の
落
(
お
)
ちるが
如
(
ごと
)
く、
235
フワリフワリと
黒姫
(
くろひめ
)
の
前
(
まへ
)
に
落
(
お
)
ちて
来
(
き
)
た。
236
黒姫
(
くろひめ
)
は
再生
(
さいせい
)
の
思
(
おも
)
ひをなし、
237
直
(
ただち
)
に
地上
(
ちじやう
)
にうづくまり、
238
拍手
(
かしはで
)
を
打
(
う
)
ち、
239
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
始
(
はじ
)
めた。
240
乍併
(
しかしながら
)
、
241
祝詞
(
のりと
)
の
声
(
こゑ
)
はどこともなく、
242
力
(
ちから
)
なく
震
(
ふる
)
ひを
帯
(
お
)
びてゐた。
243
かかる
所
(
ところ
)
へ
房公
(
ふさこう
)
、
244
芳公
(
よしこう
)
の
両人
(
りやうにん
)
はドンドンと
地響
(
ぢひび
)
きさせ
乍
(
なが
)
ら、
245
息
(
いき
)
をはづませ、
246
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
追
(
お
)
ひ
付
(
つ
)
き
来
(
きた
)
り、
247
房公
(
ふさこう
)
『ハーハーハー、
248
ア、
249
息
(
いき
)
が
苦
(
くる
)
しいワイ。
250
マアマア
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
251
よう
此処
(
ここ
)
に
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さつた。
252
どれ
丈
(
だけ
)
心配
(
しんぱい
)
したことか
分
(
わか
)
りませぬよ』
253
芳公
(
よしこう
)
『
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
254
おつむりの
髪
(
かみ
)
が
大変
(
たいへん
)
に
乱
(
みだ
)
れてゐるぢやありませぬか』
255
黒姫
(
くろひめ
)
『よい
所
(
ところ
)
へ
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さつた。
256
今
(
いま
)
の
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
、
257
手長猿
(
てながざる
)
の
奴
(
やつ
)
、
258
何百
(
なんびやく
)
とも
知
(
し
)
れずやつて
来
(
き
)
よつて、
259
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
髪
(
かみ
)
の
毛
(
け
)
迄
(
まで
)
、
260
ワヤにして
了
(
しま
)
うたのだ。
261
乍併
(
しかしながら
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
蔭
(
かげ
)
で、
262
一匹
(
いつぴき
)
も
残
(
のこ
)
らず
退散
(
たいさん
)
したから、
263
マア
安心
(
あんしん
)
して
下
(
くだ
)
さい。
264
お
前
(
まへ
)
さま、
265
エロウ
早
(
はや
)
かつたぢやないか、
266
お
酒
(
さけ
)
を
頂
(
いただ
)
く
間
(
ま
)
がありましたかなア』
267
房公
(
ふさこう
)
『
滅相
(
めつさう
)
な、
268
そんなこと
所
(
どころ
)
ですか、
269
黒姫
(
くろひめ
)
さまが
血相
(
けつさう
)
変
(
か
)
へてお
帰
(
かへ
)
りになつたものだから、
270
気
(
き
)
が
気
(
き
)
でなく、
271
もしもの
事
(
こと
)
があつてはならないと、
272
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
が
宙
(
ちう
)
を
飛
(
と
)
んで
此処
(
ここ
)
まで
駆
(
かけ
)
つて
来
(
き
)
たのです』
273
黒姫
(
くろひめ
)
『アヽそれは
済
(
す
)
まないことでしたなア。
274
さうして
虎公
(
とらこう
)
さまや、
275
玉公
(
たまこう
)
は
如何
(
どう
)
して
御座
(
ござ
)
るかなア』
276
芳公
(
よしこう
)
『
今頃
(
いまごろ
)
は
甘
(
うま
)
い
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よひ
)
つぶれて、
277
管
(
くだ
)
でも
巻
(
ま
)
いてをりませうかい。
278
斯
(
か
)
うなると
親方
(
おやかた
)
のない
者
(
もの
)
は
気楽
(
きらく
)
ですワイ』
279
黒姫
(
くろひめ
)
『そんな
気兼
(
きがね
)
は
入
(
い
)
らないのだから、
280
ゆつくりと
御
(
お
)
酒
(
さけ
)
でも
頂
(
いただ
)
いて
来
(
き
)
なさるとよかつたに、
281
それはそれは
惜
(
をし
)
い
酒外
(
さかはづ
)
れをなされましたワイ』
282
房公
(
ふさこう
)
『ハイ、
283
おかげ
様
(
さま
)
で、
284
酒外
(
さかはづ
)
れを
致
(
いた
)
しまして
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
285
併
(
しか
)
し
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
286
お
前
(
まへ
)
さまも、
287
サツパリ、
288
目的
(
もくてき
)
が
逆外
(
さかはづ
)
れになりましたなア。
289
大将
(
たいしやう
)
がサカ
外
(
はづ
)
れに
会
(
あ
)
うてゐるのに、
290
伴
(
とも
)
の
吾々
(
われわれ
)
が
外
(
はづ
)
れないと
云
(
い
)
ふ
訳
(
わけ
)
はありませぬからなア、
291
アツハヽヽヽ、
292
本当
(
ほんたう
)
に
誠
(
まこと
)
に、
293
御
(
お
)
互
(
たがひ
)
様
(
さま
)
に
御
(
お
)
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
の
至
(
いた
)
りで
御座
(
ござ
)
いますワイ、
294
ホツホヽヽヽ』
295
とおチヨボ
口
(
ぐち
)
をし
乍
(
なが
)
ら、
296
肩
(
かた
)
をゆすつてチヨクツて
見
(
み
)
せた。
297
黒姫
(
くろひめ
)
は、
298
黒姫
『エヽ
又
(
また
)
そんな
洒落
(
しやれ
)
をなさるのか、
299
エヽ
辛気臭
(
しんきくさ
)
い
代物
(
しろもの
)
だなア』
300
と
口汚
(
くちぎたな
)
く
罵
(
ののし
)
り
乍
(
なが
)
ら、
301
矢庭
(
やには
)
に
笠
(
かさ
)
を
引
(
ひ
)
つかぶり、
302
金剛杖
(
こんがうづゑ
)
をつき、
303
足
(
あし
)
を
早
(
はや
)
めて、
304
二人
(
ふたり
)
に
構
(
かま
)
はずスタスタと
駆出
(
かけだ
)
した。
305
房公
(
ふさこう
)
は
大声
(
おほごゑ
)
を
張
(
は
)
り
上
(
あ
)
げて、
306
房公
(
ふさこう
)
『モシモシ
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
307
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さいな、
308
さうしたものぢやありませぬぞや』
309
黒姫
(
くろひめ
)
『エヽお
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
は
若
(
わか
)
いから、
310
足
(
あし
)
が
達者
(
たつしや
)
だ、
311
ゆつくり
休
(
やす
)
んでお
出
(
い
)
で、
312
此
(
この
)
黒姫
(
くろひめ
)
は
年
(
とし
)
が
老
(
よ
)
つて、
313
足
(
あし
)
が
重
(
おも
)
いから、
314
ボツボツ
先
(
さき
)
へ
行
(
ゆ
)
きます。
315
後
(
あと
)
から
追
(
お
)
ひ
付
(
つ
)
いておくれよ』
316
芳公
(
よしこう
)
『モシモシ
黒姫
(
くろひめ
)
さま、
317
我
(
が
)
を
出
(
だ
)
して
一人旅
(
ひとりたび
)
をなさると、
318
又
(
また
)
猿
(
さる
)
の
奴
(
やつ
)
が
襲撃
(
しふげき
)
しますぞや。
319
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さいな、
320
私
(
わたし
)
はお
前
(
まへ
)
さまの
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
案
(
あん
)
じて
忠告
(
ちうこく
)
するのだよ』
321
黒姫
(
くろひめ
)
は
耳
(
みみ
)
にもかけず、
322
後
(
あと
)
ふり
向
(
む
)
きもせず、
323
尻
(
しり
)
をプリンプリン
振
(
ふ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
324
杖
(
つゑ
)
を
力
(
ちから
)
に
雨
(
あめ
)
に
洗
(
あら
)
ひさらされた
石
(
いし
)
だらけの
坂路
(
さかみち
)
を、
325
コツリコツリと
杖
(
つゑ
)
に
音
(
おと
)
させつつ、
326
火
(
ひ
)
の
国
(
くに
)
の
都
(
みやこ
)
を
指
(
さ
)
して
急
(
いそ
)
ぎ
行
(
ゆ
)
く。
327
(
大正一一・九・一三
旧七・二二
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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(B)
(N)
楽天主義 >>>
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