霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は従来バージョンをお使い下さい| サブスクのお知らせ

第二二章 (かはづ)(くち)〔九六三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第34巻 海洋万里 酉の巻 篇:第3篇 峠の達引 よみ(新仮名遣い):とうげのたてひき
章:第22章 蛙の口 よみ(新仮名遣い):かわずのくち 通し章番号:963
口述日:1922(大正11)年09月14日(旧07月23日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年12月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
矢方の村の大蛇の三公の館では、三公が子分たちの慰労会を開いていた。高公は、三公がお愛を殺し、二人の男を生き埋めにしたことを気分悪く思い、そのことを愚痴にしてやけ酒を飲んでいる。
徳公は、実は親分はお愛を殺しておらず、生きたまま息ができるようにして埋めておいて、自分に掘り出させて恩義を感じさせる計略なのだ、と酒の席で明かしてしまう。一方で六公たちを遣わして虎公を亡き者にし、お愛の心を靡かせようというのである。
与三公は、徳公にお愛を掘り出しに行けと催促するが、徳公は酒を飲みすぎて管を巻いている。そこへ六公の一団が帰ってきた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-09-20 13:43:27 OBC :rm3422
愛善世界社版:278頁 八幡書店版:第6輯 462頁 修補版: 校定版:288頁 普及版:120頁 初版: ページ備考:
001 矢方(やかた)(むら)大蛇(をろち)三公(さんこう)(やかた)には、002(なん)となく物騒(ものさわ)がしき(こゑ)(きこ)えて()る。003夜前(やぜん)一件(いつけん)(つい)て、004三公(さんこう)兄弟分(きやうだいぶん)乾児(こぶん)(たい)慰労会(ゐらうくわい)(もよほ)して()たのであつた。005数多(あまた)乾児(こぶん)(ひさ)()りにうまい(さけ)()うて、006口々(くちぐち)四辺(あたり)(かま)はず(しやべ)()した。
007(かふ)(徳公)『オイ、008(みな)(やつ)009(なん)(うめ)(さけ)()えか。010(おれ)今日(けふ)丁度(ちやうど)()(げつ)ばかり()んな(うめ)(さけ)()んだ(こと)はないわ。011時々(ときどき)()んな(こと)があれば()えけどな』
012(おつ)(高公)『こりや、013(とく)014貴様(きさま)はこんな水臭(みづくさ)(さけ)(うめ)えと(ぬか)しやがつたが、015余程(よほど)下司口(げすぐち)だな。016こんな(さけ)()(ぐらゐ)なら泥水(どろみづ)でも()んだ(はう)が、017何程(なにほど)気持(きもち)がいいか(わか)りやしないよ』
018 (とく)泣声(なきごゑ)になつて、
019徳公(とくこう)『こりや、020高公(たかこう)021貴様(きさま)(なん)()勿体(もつたい)()(こと)()ふのだ。022それ(ほど)(わる)(さけ)なら何故(なぜ)ガブガブと()んだのだい』
023高公(たかこう)『あまり此処(ここ)親分(おやぶん)無茶(むちや)(こと)をしやがるので(しやく)(さは)つて仕方(しかた)がないから、024焼糞(やけくそ)になつて一杯(いつぱい)()んでやつたのだ。025(さけ)なつと()まねばお(あい)幽霊(いうれい)何時(いつ)()()るか(わか)つたものぢやないわ、026小気味(こぎみ)(わる)い。027それだから(あぢ)なくもない(きら)ひ……でも()(さけ)辛抱(しんばふ)して()んでやるのだ』
028徳公(とくこう)勿体(もつたい)ない(こと)()ふな。029こんな結構(けつこう)(さけ)があるものか。030貴様(きさま)(いま)幽霊(いうれい)()ると(ぬか)しやがつたが、031(いき)人間(にんげん)幽霊(いうれい)になつて(たま)るかい』
032高公(たかこう)『それだといつて、033(あい)現在(げんざい)(ころ)したぢやないか。034さうして二人(ふたり)(をとこ)をフン(じば)つて生埋(いきうめ)にしたぢやないか。035どんな(つよ)(をとこ)だつて土中(どちう)()められ、036あんな(おも)たい(いし)()せられちや往生(わうじやう)せずには()られないわ。037屹度(きつと)今夜(こんや)あたり貴様(きさま)素首(そつくび)()つこ()きに()るから用心(ようじん)せいよ』
038徳公(とくこう)馬鹿(ばか)()ふな。039そこには(そこ)があり(ふた)もあるのだ。040(あい)(やつ)(けつ)して()んでは()やせぬ。041彼奴(あいつ)ずるいから死真似(しにまね)をして()やがつたのだ。042親分(おやぶん)ちやん(その)呼吸(こきふ)(はか)つて()んだにして(しま)つたのだ。043(ほか)二人(ふたり)(やつ)だつて(その)(とほ)(きず)(ひと)つした(やつ)はない、044兼公(かねこう)野郎(やらう)でも(ただ)(しば)りあげた(だけ)(こと)だ。045彼奴(あいつ)()(さん)(にん)一所(いつしよ)にまつべて()いたのは(たがひ)温味(ぬくみ)(たも)たす()めだ。046そして(あたま)(ところ)(ほそ)(あな)をあけ、047(いき)(かよ)(やう)にしてあるのだよ。048そこは与三公(よさこう)哥兄(あにい)()()んで、049如才(じよさい)なくしてあるのだよ。050(まへ)(はし)くれの人足(にんそく)だからそこ(まで)(わか)るめえ』
051高公(たかこう)『それでも、052あれ()(おも)たい(いし)沢山(たくさん)()せられちや、053身体(からだ)(なに)()げて(しま)ふぢやないか』
054徳公(とくこう)貴様(きさま)馬鹿(ばか)だな。055あれ()親分(おやぶん)恋慕(れんぼ)して()るお(あい)を、056さうムザムザと(ころ)しさうな(はず)があるかい。057(これ)には(ふか)計略(けいりやく)があるのだ。058あの沢山(たくさん)()んだ(いは)(した)には、059(さん)(にん)(けつ)して(いか)つてあるのぢやない。060うまく(その)(うへ)(はづ)してあるのだ』
061高公(たかこう)(なん)(また)そんな(めう)(こと)をしたのだい』
062徳公(とくこう)馬鹿(ばか)だなア、063貴様(きさま)()には親分(おやぶん)神謀(しんぼう)鬼策(きさく)(わか)るものぢやない。064秘密(ひみつ)(まも)るなら()つて()かせてやらう。065如何(どう)他言(たごん)はせぬか』
066高公(たかこう)(けつ)して(けつ)して(たれ)にも()はないから、067(おれ)(その)(わけ)()かして()れえ』
068徳公(とくこう)『やあ何奴(どいつ)此奴(こいつ)(さけ)(くら)()うて(ふせ)りよつたな。069与三公(よさこう)哥兄(あにい)(まで)ズブ(ろく)()うて()らあ。070そんなら()つてやらう。071(そもそ)(その)理由(りいう)()うだ。072(この)徳公(とくこう)はな、073遠国(ゑんごく)から()たものだからまだ虎公(とらこう)やお(あい)(かほ)()られて()らないのだ。074それを(さいはひ)親分(おやぶん)から(たの)まれたのだ。075(これ)から旅人(たびびと)装束(しやうぞく)をして(みち)(まよ)うた(やう)(かほ)をし、076昨夕(ゆうべ)喧嘩場(けんくわば)へやつて()つて(つち)をクワイクワイと掘上(ほりあ)げ、077(さん)(にん)(やつ)引張(ひつぱ)()()一番(いちばん)にお(あい)(いましめ)()親切(しんせつ)さうに(みづ)でも()まし、078懐中(ふところ)から(くすり)でも()して(あた)へてやり……何処(どこ)のお(かた)()りませぬが(あやふ)(こと)御座(ござ)いました、079ネ、080わつちや(たび)(もの)でげえすが、081夜前(やぜん)(この)(あたり)大喧嘩(おほげんくわ)があつたと()き、082一寸(ちよつと)道寄(みちよ)りをして(さが)して()(ところ)083御存(ごぞん)じの(とほ)此処(ここ)(この)(やう)(おほ)きな(いし)()んである。084()れば(つち)(あたら)しい、085()うやら昨夜(さくや)喧嘩(けんくわ)何人(なにびと)かが(ころ)され、086()けられて()るのであらう。087あゝ()(どく)な、088(なん)とかして(たす)けてやらうと(おも)ひやして、089(これ)御覧(ごらん)なされ、090(この)(とほ)(おほ)きな(いし)此処(ここ)()()(つち)()()けて()れば、091貴方(あなた)(がた)(さん)(にん)()遭難(さうなん)092此奴(こいつ)(ひと)(たす)けねばなるまいと、093秘蔵(ひざう)(くすり)(あた)(みづ)()ませた(ところ)が、094(まへ)(この)(とほ)()(かへ)つて、095(なん)()んな(うれ)しい(こと)御座(ござ)いませぬ……と(ひと)つかち()むのだ。096さうするとお(あい)(やつ)097(やさ)しい()をしやがつて……(わたし)虎公(とらこう)()(をとこ)女房(にようばう)御座(ござ)いますが、098大蛇(をろち)三公(さんこう)()大親分(おほおやぶん)()めに()んな()()はされ、099(つち)(なか)()められて()んで(しま)(ところ)御座(ござ)いましたが、100(まへ)のお(かげ)可惜(あたら)生命(いのち)(たす)かり()んな(うれ)しい(こと)御座(ござ)いませぬ、101生命(いのち)(おや)旅人(たびびと)(さま)102何卒(どうぞ)(わたし)何時(いつ)(まで)可愛(かあい)がつて(くだ)さいませ、103虎公(とらこう)何程(なにほど)(えら)いと()つても、104女房(にようばう)がこれ()(えら)()()うて()るのに、105(ゆめ)にも御存(ごぞん)じないとはあまり(つれ)ない(をとこ)だ。106何卒(どうぞ)(たび)()(かた)107(わたし)(ちから)になつて(くだ)さい…ヘン…なんて(ぬか)しやがるのだ。108さアそうなれば()めたものだよ。109そこで(おれ)が……これこれお女中(ぢよちう)110(れい)(かへつ)(いた)()る。111()(なか)相見互(あひみたがひ)だ……とかますのだ。112さうするとお(あい)(やつ)(おれ)男前(をとこまへ)気前(きまへ)ぞつこん惚込(ほれこ)みやがつて、113(おれ)(みぎ)()けと()へばハイと()つて(みぎ)()き、114(ひだり)()けと()へばハイと()つて(ひだり)()くなり、115()ねと()へばハイと()つて()ぬし、116(かた)()てと()へば(かた)()つし、117随分(ずゐぶん)もてたものだよ。118オホヽヽヽ』
119高公(たかこう)『オイ(とく)120(よだれ)()ちるぞ。121()つとも()い。122(とら)(たぬき)皮算用(かはざんよう)しても駄目(だめ)だぞ』
123徳公(とくこう)(なに)124大丈夫(だいぢやうぶ)だ。125チヤーンと確信(かくしん)があるのだから滅多(めつた)(はづ)れつこは()いわ』
126高公(たかこう)『さうして(その)(あい)()(いれ)貴様(きさま)(もの)にするのか。127大親分(おほおやぶん)返上(へんじやう)するのだらうな』
128徳公(とくこう)『そこは、129うまく徳公(とくこう)弁舌(べんぜつ)でチヨロまかし、130(ある)山奥(やまおく)()()()つて(しの)()り、131一寸(ちよつと)した小屋(こや)(むす)んで……お(まへ)(わたし)()ふならば、132(たけ)(はしら)(かや)屋根(やね)133(とら)(おほかみ)棲処(すみか)でも(けつ)して(いと)ひはせぬ(ほど)に、134コレ(とく)さま、135何卒(どうぞ)(わたし)(いづ)れの山奥(やまおく)なりと()れて()つて(くだ)さい。136虎公(とらこう)大蛇(をろち)三公(さんこう)にでも見付(みつ)けられたら大変(たいへん)だから……と向方(むかう)から()きたてられるのだ。137そこで(わざ)(この)徳公(とくこう)()ちつき(はら)ひ……これお(あい)138天下(てんか)無双(むさう)英雄(えいゆう)豪傑(がうけつ)139(この)徳公(とくこう)()(あひだ)虎公(とらこう)千匹(せんびき)万匹(まんびき)140(また)大蛇(をろち)三公(さんこう)がどんなに不足相(ふそくさう)()つて()ても大丈夫(だいぢやうぶ)だ……と(ふと)()てやるのだ。141さうするとお(あい)(やつ)……否々(いやいや)何程(なにほど)(まへ)(つよ)うても、142(だま)すに()なしと()(こと)御座(ござ)んす。143さあ(いち)()(はや)(わたし)奥山(おくやま)()れていつて(くだ)さい……とお()(あそ)ばすにチヤンと(きま)つてるのだ。144そこで(この)徳公(とくこう)が……エー仕方(しかた)がない、145女子(ぢよし)小人(せうにん)(やしな)(がた)しだ、146(しか)しお(まへ)がそれ(ほど)(こわ)がるのなら(おれ)(ひと)山奥(やまおく)(まで)(おく)つてやらう。147(しか)(けつ)して夫婦(ふうふ)にならう(など)との野心(やしん)(おこ)しちや()けないぞ……と高尚(かうしやう)()るのだ。148さうするとお(あい)(やつ)149益々(ますます)感心(かんしん)しやがつて、150(しま)ひの()てにや本気(ほんき)になつて()れて()やがるのだ。151その(とき)(あま)(かほ)しちや()けない。152ピンと(ひと)肱鉄砲(ひぢでつぱう)()ますのだ。153……(おも)ひきつて……さうするとお(あい)(やつ)益々(ますます)恋慕心(れんぼしん)(つの)つて()る。154(はじ)かれた(をんな)には益々(ますます)(をとこ)熱心(ねつしん)になる(やう)に、155(をんな)意地(いぢ)()てておかねばならないと(めう)(ところ)(ちから)()れて、156(おれ)手込(てご)みにしようとするのだ。157そこで(おれ)はツンと()ました(かほ)して……これこれ(をんな)()としてあられもない(こと)をなさいますな。158みつともない……と(くら)はすのだ。159(あい)(やつ)益々(ますます)カツカとなり…(サワリ)ほんにまあ(をんな)(こころ)(をとこ)とは、160(それ)ほど(まで)(ちが)ふものかいな。161生命(いのち)(おや)(おも)ひつめ、162ホンに()()いた(をとこ)ぢやと、163(おも)()めたが()みつきで、164(こひ)(とりこ)となりました。165もう()うなる(うへ)徳公(とくこう)さま、166()いて()はうと()つて(あぶ)つて()はうとも、167貴方(あなた)のお()きに紫壇竿(しだんざを)168一筋縄(ひとすぢなは)()かぬ(この)(をんな)169何卒(どうぞ)三筋(みすぢ)(いと)()(ころ)して(くだ)しやんせ、170(をが)むわいなと()(あは)し、171口説(くど)(なげ)けば徳公(とくこう)も、172(とどろ)(むね)をジツと(おさ)へ、173(まへ)(こころ)(さつ)すれども、174(この)徳公(とくこう)にも国許(くにもと)には可愛(かあい)女房(にようばう)がある。175如何(どう)して二度目(にどめ)(つま)()たれようか。176そこ(はな)しや……プリンと背中(せなか)()けるのだ。177さうするとお(あい)(やつ)……そんならもう仕方(しかた)がない、178(わたし)(これ)()にます……と九寸(くすん)五分(ごぶ)をスラリと()()き、179アハヤ(のんど)につき()てむとする。180徳公(とくこう)(あはただ)しく()()め……やれ()てお(あい)181(まへ)心底(しんてい)見届(みとど)けた。182(この)()(おろ)七生(しちしやう)(まで)(まこと)夫婦(ふうふ)……と(くは)すと()いのだが、183其処(そこ)はそれ、184大蛇(をろち)三公(さんこう)()大親分(おほおやぶん)(あと)(ひか)へて()るのだから、185(あい)山奥(やまおく)(ひと)()()()き……これお(あい)どの、186一寸(ちよつと)(この)徳公(とくこう)買物(かひもの)にいつて()るから、187(さび)しからうが留守(るす)をして(くだ)さい。188(すぐ)(かへ)つて()るから……と()まして()いてフイと其処(そこ)(はづ)すのだ。189さうすると大蛇(をろち)親分(おやぶん)が、190与三公(よさこう)191勘公(かんこう)()面々(めんめん)()()れ、192(その)小屋(こや)十重(とへ)二十重(はたへ)()()かせ()き、193自分(じぶん)否応(いやおう)()はさず()()てるのだ。194何程(なにほど)(いや)がつた(をんな)でも、195一辺(いつぺん)ウンと()はすれば、196もう此方(こつち)(もの)だ。197チヤンと()んな段取(だんどり)出来(でき)()るのだから(おどろ)いたものだらう。198(おれ)責任(せきにん)(ぢう)(かつ)(だい)なりと()ふべしだ』
199()(なが)ら、200一升(いつしよう)徳利(どくり)(くち)から(また)もや喇叭(らつぱ)()みを(はじ)める。201与三公(よさこう)(この)()行歩(かうほ)蹣跚(まんさん)として(あら)はれ(きた)り、
202与三(よさ)『やあ何奴(どいつ)此奴(こいつ)意地(いぢ)(きたな)(さけ)()(つぶ)れて()()やがるな。203(なん)だ、204そこら(ぢう)八百屋(はほや)開店(かいてん)しやがつて(くさ)くて()られたものぢやない。205ヤアお(まへ)徳公(とくこう)じやないか』
206徳公(とくこう)『へい、207徳利(とつくり)御座(ござ)います。208トクとお(あらた)(くだ)さいませ。209徳公(とくこう)徳利飲(とつくりの)みでげえすから何卒(どうぞ)トク(しん)()くとこ(まで)()まして(くだ)さい。210(あい)(また)トクりと(なつ)トクをさせねばなりませぬ。211トク(めい)全権(ぜんけん)公使(こうし)だからトク大目(おほめ)()(くだ)さいませ』
212与三(よさ)『そんな(こと)トク(べつ)使命(しめい)(つと)まると(おも)ふか。213もう時刻(じこく)だ。214トクトク()かねばなるまいぞ。215貴様(きさま)酒癖(さけくせ)(わる)いからトクりと心中(しんぢう)するかも()れやしない。216トクりと(かんが)へて()よ』
217徳公(とくこう)八釜(やかま)しう()ふない。218(おれ)だけはトク(べつ)待遇(たいぐう)をやつて()れ。219()んな(やく)()くのは(おい)一寸(ちよつと)()(すす)まないのではないけれどな、220本当(ほんたう)(こと)()へば哥兄(あにい)221(まへ)トク()される(ところ)だつたが、222生憎(あいにく)トク禿(とく)頭病(とうびやう)(やう)(あたま)をして()るから、223(あい)(やつ)によく(かほ)()られて()るなり、224(また)(その)(やう)土瓶(どびん)章魚(たこ)禿(はげ)ではお(あい)だつて()れはしないし、225如何(どう)しても(この)徳公(とくこう)ぢやなくちや(つと)まらないのだから、226トク(べつ)大切(たいせつ)にするのだよ』
227与三(よさ)『エヽ(おれ)(あたま)批評(ひへう)までしやがつて仕方(しかた)()(やつ)だ。228貴様(きさま)如何(どう)やら秘密(ひみつ)(この)高公(たかこう)(うち)あけた(やう)だ。229よもやそんな(こと)(いた)しちや()るまいなア』
230徳公(とくこう)(たか)()れた高公(たかこう)(くらゐ)()つた(ところ)で、231ナニそれが邪魔(じやま)になりますけエ。232(たか)(くく)つて()つたのだからそう声高(こはだか)にケンケン()つて(くだ)さるな。233相互(たがひ)迷惑(めいわく)だからエヽガラガラガラ、234エ、235(さけ)(やつ)236あと(もど)りをしやがる。237()しからぬ(やつ)だ、238ウンウンウン』
239与三(よさ)『いい加減(かげん)準備(こしらへ)をして()かないと(おそ)くなるぞ』
240徳公(とくこう)八釜(やかま)しう()ふない。241()んだつて(なん)だい。242(あい)(おれ)女房(にようばう)になると()ふではなし、243折角(せつかく)(ほね)()つて成功(せいこう)さした(ところ)鹿猪(ろくちよ)つきて猟狗(れふく)()らると()(やう)()()ふかも()れないからな。244まあ(さけ)()まれる(とき)()んだ(はう)余程(よほど)利口(りこう)だなア。245自分(じぶん)(おも)(やう)にするのが人間(にんげん)(うま)れた()一生(いつしやう)徳利(とくり)だ。246オツハツヽヽヽ』
247 ()(くだ)()(ところ)門前(もんぜん)(にはか)(さわ)がしき(ひと)足音(あしおと)……其処(そこ)勘公(かんこう)がやつて()て、
248勘公(かんこう)『オイ(みな)(やつ)249()加減(かげん)()きぬか。250(いま)六公(ろくこう)(かへ)つて()たから(せき)をあけねばなるまい』
251 (この)(こゑ)一同(いちどう)はムクムクと(あたま)()げ、252ヒヨロヒヨロし(なが)(うら)田圃(たんぼ)駆出(かけだ)し、253(かぜ)(さけ)(ゑい)()まして()る。
254大正一一・九・一四 旧七・二三 北村隆光録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki