霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】サイトの全面改修に伴いサブスク化します。詳しくはこちらをどうぞ。(2023/12/19)
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第七章 五万円(ごまんゑん)〔一〇一九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第37巻 舎身活躍 子の巻 篇:第2篇 青垣山内 よみ(新仮名遣い):あおがきやまうち
章:第7章 五万円 よみ(新仮名遣い):ごまんえん 通し章番号:1019
口述日:1922(大正11)年10月09日(旧08月19日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年3月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
友人の斎藤宇一の奥座敷を借りて、いよいよ幽斎の修行に着手することになった。宇一の叔母の静子、妹の高子、多田琴、岩森徳子、上田幸吉その他に三人の者が修行者となった。
瑞月は小幡川で拾った仮天然笛で羽織袴を身につけて厳粛に審神者を修した。初めてで様子がわからなかったが、多田琴が神主の座に着くと、組んだ手を前後左右に振り回して飛び上がり、戸も障子もふすまもガタガタになってしまった。
一週間もすると多田琴が口を切り始めた。多田は日一日と発動が激しくなり、言葉も円滑に使うようになってきた。このころは、激しく発動するほど偉い神が来たのだと勘違いしていた。
多田琴は白滝大明神、斎藤静子は恒富大明神だと口を切って飛び上がり始めた。今から思えば笑止だが、初めて会った発動、託宣を目の前にして、人間も修行さえすれば老若男女の区別なく神通が得られるものだという確信はついた。
神主たちの発動騒ぎに昼も夜も家のぐるりは野次馬が集まっていた。多田は発動したままほかの修行者を連れて実家に帰ってしまった。自分は連れ戻そうとしたが体が動かない。
宇一が瑞月の審神者となって確かめると、瑞月の口が切れて、松岡天使であると名乗り、天下の万民を助ける神の使いは、よほどの修行をせなくてはならない、この方の言うことに叛いてはならないと言いだした。
宇一は修行しても自分にはなかなか神様がかからないので、なんとか口が切れるようにしてくれ、と松岡神に頼み込んだ。松岡神は、神が五万円やるから穴太の地を買収して大神苑を作れと宇一に命じた。
宇一は五万円と聞いてにわかに喜びだした。松岡神は、相場に詳しい大霜天狗を瑞月にかからせてやるから、相場のことを尋ねて五万円儲けるがよいと言い渡した。
とたんに宇一の一家は態度を一変し、今まで喜楽と呼び捨てにしていたのが、上田大先生様とあがめだした。宇一の父・元市はさっそく瑞月に大霜天狗の神主となるよう要請した。
大霜天狗は、小判を埋めたところがあるからそこにこの神主の肉体を連れて行って掘り出させる、と言って引き取った。自分は大霜天狗の言を疑ったが、元市はすっかり信じ切って喜んでいた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-10-19 14:09:49 OBC :rm3707
愛善世界社版:89頁 八幡書店版:第7輯 63頁 修補版: 校定版:93頁 普及版:42頁 初版: ページ備考:
001 友人(ゆうじん)斎藤(さいとう)宇一(ういち)奥座敷(おくざしき)()つて、002(いよいよ)幽斎(いうさい)修業(しうげふ)着手(ちやくしゆ)する(こと)となつた。003修業者(しうげふしや)宇一(ういち)叔母(をば)(あた)静子(しづこ)004(および)(いもうと)(あた)高子(たかこ)十三(じふさん)(さい))、005多田(ただ)(こと)006岩森(いはもり)徳子(とくこ)007上田(うへだ)幸吉(かうきち)(その)(ほか)二三(にさん)(にん)(もの)(もつ)て、008朝夕(あさゆふ)(のき)(なが)るる小川(をがは)水浴(すいよく)をなし、009午前(ごぜん)四十(よんじつ)分間(ぷんかん)づつ三回(さんくわい)010午後(ごご)にも(また)三回(さんくわい)011(よる)二回(にくわい)都合(つがふ)八回(はちくわい)で、012(いち)(にち)三百(さんびやく)二十(にじつ)分間(ぷんかん)013厳格(げんかく)修業(しうげふ)した。014そして瑞月(ずゐげつ)小幡川(をばたがは)(ひろ)つた(かり)天然笛(てんねんぶえ)で、015羽織(はおり)(はかま)(ちやく)し、016(きは)めて厳粛(げんしゆく)審神者(さには)(やく)(しう)するのであつた。
017 (はじ)めての審神者(さには)(こと)でチツとも様子(やうす)(わか)らぬ。018第一番(だいいちばん)多田(ただ)(こと)神主(かむぬし)()()くや(いな)や、019()んだ()前後(ぜんご)左右(さいう)(ふり)まはし、020二十貫(にじふくわん)20貫は75キログラムもあらうといふ(をんな)が、021(ふる)(いへ)(とこ)()ちる(ほど)(とび)あがり()した。022()障子(しやうじ)(ふすま)もガタガタになつて(しま)つた。023(いつ)週間(しうかん)(ほど)(のち)には、024(あま)りドンドン飛上(とびあが)つた(ため)か、025(ゆか)二三寸(にさんずん)()がり、026障子(しやうじ)(ふすま)もバタバタと(ひと)りこけるやうになつて(しま)つた。027宇一(ういち)(この)(とき)まだ二十(にじふ)二三(にさん)(さい)028両親(りやうしん)から苦情(くじやう)(おこ)り、029修業所(しうげふしよ)をどこかへ移転(いてん)してくれとの命令(めいれい)(くだ)された。
030 さうかうする(うち)031多田(ただ)(こと)(くち)()(はじ)めた。
032多田琴『シヽヽ白滝(しらたき)白滝(しらたき)白滝(しらたき)
033といひかけた。034審神者(さには)(はじ)めての口切(くちき)りで、035(きも)をとられ、036(おどろ)きと(ひと)つは(はじ)めて(くち)()れた(よろこ)びとで、037(いよいよ)幽斎(いうさい)修業(しうげふ)前途(ぜんと)有望(いうばう)だと、038()らず()らずに天狗(てんぐ)になつて(しま)つた。039多田(ただ)神主(かむぬし)日一日(ひいちにち)発動(はつどう)(はげ)しくなり、040(ことば)円滑(ゑんくわつ)使(つか)ふやうになつて()た。041(その)(とき)審神者(さには)としては(おほ)きな(こゑ)()し、042よく発動(はつどう)し、043(あら)飛上(とびあ)がる(ほど)(えら)(かみ)()たのだと(しん)じ、044本当(ほんたう)のしとやかな神感者(しんかんしや)()ても、045もどかしい(やう)()になつて(しま)つた。
046 多田(ただ)(こと)(つづ)いて(また)斎藤(さいとう)静子(しづこ)面相(めんさう)(にはか)猛悪(まうあく)になり、047()んだ()無性(むしやう)矢鱈(やたら)震動(しんどう)させ、048これ(また)ドンドンと()(くる)()した。049一人(ひとり)大女(おほをんな)050一人(ひとり)三十(さんじふ)になつても(もら)()のないといふ、051(よん)(しやく)4尺は121センチメートル()らずのチンコさんである。052それが一時(いつとき)(まけ)(おと)らずドンドンドンと飛上(とびあ)がり()した。053静子(しづこ)(あね)(はじ)め、054養子(やうし)()元市(もといち)といふのは、055宇一(ういち)両親(りやうしん)であつたのが、056静子(しづこ)神憑(かむがかり)になつたので、057(にはか)乗気(のりき)になり、058修業場(しうげふぢやう)移転(いてん)することを取消(とりけ)して(もら)ひたいと申込(まをしこ)んだ。
059 多田(ただ)神主(かむぬし)はソロソロ大口(おほぐち)をあけ、060()白玉(しらたま)巴形(ともゑがた)(あか)模様(もやう)出来(でき)て、
061多田琴(しづか)御前(ごぜん)義経(よしつね)弁慶(べんけい)062加藤(かとう)清正(きよまさ)どちらが(えら)い、063(この)(はう)和田(わだ)義盛(よしもり)(つま)巴御前(ともえごぜん)であるぞよ、064(その)証拠(しようこ)には(この)(はう)()(たま)()よツ』
065()()(しめ)す。066初心(しよしん)審神者(さには)(その)()(たま)をよくよく()れば、067まがふ(かた)なき(ひと)(ともえ)が、068両眼(りやうがん)真紅(しんく)(いろ)染出(そめだ)して()る。069……ヤツパリ巴御前(ともえごぜん)ぢやあるまいかなア……と思案(しあん)してゐると、070神主(かむぬし)審神者(さには)(ほほ)べたをピシヤピシヤと(なぐ)り、
071多田琴馬鹿(ばか)審神者(さには)(めくら)審神者(さには)072(この)(はう)正体(しやうたい)(わか)らぬか。073(この)(はう)勿体(もつたい)なくも、074官幣(くわんぺい)大社(たいしや)稲荷(いなり)大明神(だいみやうじん)眷族(けんぞく)(さん)(たき)守護(しゆご)(いた)す、075白滝(しらたき)大明神(だいみやうじん)であるぞよ。076サアこれからは(この)白滝(しらたき)審神者(さには)をしてやらう。077(その)(はう)神主(かむぬし)()にすわれ』
078呶鳴(どな)りつけた。079静子(しづこ)(また)発動(はつどう)して、
080斎藤静子『おれは妙見山(めうけんさん)守護(しゆご)いたす、081天一(てんいち)天狐(てんこ)恒富(つねとみ)大明神(だいみやうじん)だ。082見違(みちが)(いた)すと、083今日(けふ)(かぎ)審神者(さには)(ゆる)さぬぞ。084ウンウン、085バタバタ ドスン ドスン』
086(ちひ)さい(ばば)アが飛上(とびあ)がる。087(いま)から(おも)へば抱腹(はうふく)絶倒(ぜつたう)(いた)りだが、088(その)(とき)審神者(さには)にとつては一生(いつしやう)懸命(けんめい)であつた。089(わら)余地(よち)(いか)()も、090調(しら)べる(すき)もない。091(ただ)(はじ)めて()うた発動(はつどう)状態(じやうたい)092(かみ)託宣(たくせん)093(いよいよ)人間(にんげん)にも修業(しうげふ)さへすれば、094老若(らうにやく)男女(なんによ)区別(くべつ)なく、095神通(じんつう)()られるものだ、096といふ確信(かくしん)はたしかについたが、097(その)(ほか)(こと)一切(いつさい)(みみ)にも這入(はい)らず、098(おも)(こと)もなかつた。099(ただ)一心(いつしん)不乱(ふらん)(さん)週間(しうかん)修業(しうげふ)(つづ)けて()た。
100 (いつ)週間(しうかん)(ほど)たつた(とき)101修業者(しうげふしや)一斉(いつせい)(くち)()り、102少女(せうぢよ)(くち)から、
103『チヽヽヽヽ、104ツヽヽヽヽ』
105(くち)(とが)らし、106()んだ()をヒヨイヒヨイと(うご)かし(なが)ら、107(しやべ)(はじ)めた。108修業場(しうげふば)一切(いつさい)他人(たにん)(ちか)よることを(きん)じてゐたが、109(あま)(おほ)きな発動(はつどう)(ひびき)神主(かむぬし)(こゑ)とに、110近所(きんじよ)(もの)()きつけ、111(つぎ)から(つぎ)へと喧伝(けんでん)して、112(ひる)(よる)(いへ)のぐるりは(ひと)(やま)になつて(しま)つた。
113 多田(ただ)(こと)は……白滝(しらたき)大明神(だいみやうじん)命令(めいれい)だ……と()つて、114修業者(しうげふしや)(のこ)らず引連(ひきつ)れ、115白衣(びやくい)()(はかま)をうがち、116(いち)()(あま)りの(みち)白昼(はくちう)大手(おほて)をふつて、
117多田琴家来(けらい)ツ、118(とも)して()い』
119()(なが)ら、120(なん)だか(わけ)(わか)らぬ(うた)をうたひ、121足拍子(あしべうし)()り、122(ほか)修業者(しうげふしや)(その)(うた)()はして、123(いし)(かはら)(たた)(なが)ら、124テンツテンツ ツンツクツンなど()(なが)ら、125中村(なかむら)多田(ただ)(かめ)(いへ)()つて(しま)つた。126審神者(さには)は……コリヤ大変(たいへん)だ、127(ひと)(しづ)めねばならぬ……と(あと)()つかけようとすれ(ども)128如何(どう)したものか、129自分(じぶん)(からだ)数百貫(すうひやくくわん)(いし)(おさ)へられたやうに(おも)たくなつて、130チツとも(うご)(こと)出来(でき)ない。131()むを()ず、132宇一(ういち)審神者(さには)代理(だいり)となりて(そば)にすわり、133自分(じぶん)惟神(かむながら)(てき)()()まされ、134瞑目(めいもく)してゐると、135(はら)(なか)から(まる)いかたまりが(ふた)()つグルグルグルと喉元(のどもと)へつめ()げ、136(なん)とも()はれぬ(くるし)さであつた。137三四十(さんしじつ)分間(ぷんかん)(いき)()れるやうな()()はされた揚句(あげく)
138喜楽(この)(はう)(この)肉体(にくたい)高熊山(たかくまやま)(みちび)き、139(その)霊魂(れいこん)富士山(ふじさん)()れて()つた松岡(まつをか)天使(てんし)である。140サアこれから本当(ほんたう)審神者(さには)をさしてやらう。141天下(てんか)万民(ばんみん)(たす)ける(かみ)使(つかひ)は、142余程(よほど)修業(しうげふ)(いた)さねば駄目(だめ)だ。143さアこれから(この)(はう)(まを)(こと)をチツとも(そむ)くでないぞよ』
144自分(じぶん)(くち)から()()した。145宇一(ういち)()ひつくばひ(なが)ら、
146宇一(ういち)(おそ)(なが)松岡(まつをか)(さま)申上(まをしあ)げます。147(わたし)(みな)一緒(いつしよ)修業(しうげふ)(いた)して()りますが、148まだ一遍(いつぺん)()(ふる)うた(こと)もなし、149(みな)(やう)(かみ)(さま)がうつつて(もの)()うて(くだ)さりませぬが、150如何(どう)いふ(わけ)御座(ござ)いますか。151(かみ)さまさへ(うつ)つて(くだ)さるのなら、152どんな修業(しうげふ)でも(いた)しますから、153どうぞ(をし)へて(くだ)さいませ』
154(たの)んで()る。155そうすると(また)神主(かむぬし)(くち)から、
156松岡(まつをか)(その)(はう)大体(だいたい)精神(せいしん)のよくない(をとこ)だから、157(かみ)(うつ)(こと)出来(でき)ぬのだ。158(さん)(ねん)()(ねん)修業(しうげふ)したとて、159(その)(はう)駄目(だめ)だから、160一層(いつそう)のこと、161審神者(さには)になつた(はう)がよからうぞ』
162宇一(ういち)神主(かむぬし)にもなれない(もの)如何(どう)して審神者(さには)出来(でき)ませうか』
163松岡(まつをか)(かみ)がせいと()つたら、164キツと出来(でき)る。165(かみ)(その)(はう)肉体(にくたい)使(つか)つてするのだから、166チツとも心配(しんぱい)()らぬ』
167宇一(ういち)左様(さやう)ならば御用(ごよう)(いた)します。168不束(ふつつか)審神者(さには)御座(ござ)いますから、169どうぞ(よろ)しう()(ねが)(いた)します』
170松岡(まつをか)『ヨシ、171(この)神主(かむぬし)肉体(にくたい)(その)(はう)監督(かんとく)(まか)すから、172よく()をつけたがよからうぞ。173何時(いつ)夜分(やぶん)飛出(とびだ)すか()れぬから、174()をつけて()るがよい』
175宇一(ういち)『ハイ、176有難(ありがた)御座(ござ)います。177(この)(たび)一同(いちどう)(もの)修業(しうげふ)()みましたら、178(その)(さき)如何(どう)(いた)しませうか』
179松岡(まつをか)(かみ)五万(ごまん)(ゑん)(ほど)(かね)をやるから、180(この)穴太(あなを)(ある)地点(ちてん)買収(ばいしう)し、181大神苑(だいしんゑん)(つく)り、182神殿(しんでん)(こしら)へ、183神道(しんだう)本部(ほんぶ)()てて、184布教(ふけう)をするのだ。185何事(なにごと)一々(いちいち)(かみ)命令(めいれい)遵奉(じゆんぽう)せなくては駄目(だめ)だから、186そう心得(こころえ)たが()からう』
187 宇一(ういち)斎藤(さいとう)源次(げんじ)といふ(ひと)東隣(ひがしとなり)紋屋(もんや)息子(むすこ)である。188(その)父親(てておや)相場(さうば)祖先(そせん)伝来(でんらい)財産(ざいさん)(ほとん)どなくして(しま)ひ、189(いま)(その)邸宅(ていたく)までが(あぶ)なく()いてゐたのである。190何時(なんどき)(いへ)屋敷(やしき)もどこへ()んでゆくか、191(なが)れるか()れぬやうな危険(きけん)状態(じやうたい)になつてゐた。192(いま)(この)松岡(まつをか)天使(てんし)五万(ごまん)(ゑん)(あた)へるといふことを()いて、193(のど)()らし、194元市(もといち)(その)()()んで()て、195叮嚀(ていねい)両手(りやうて)をつき、
196元市(もといち)松岡(まつをか)さま、197どうも有難(ありがた)御座(ござ)います。198これでいよいよ()神徳(しんとく)()りました。199どんな(こと)でも(かみ)さまの御用(ごよう)()きますから、200(はや)五万(ごまん)(ゑん)(かね)(くだ)さいませ。201(いづ)(てん)から()らして(くだ)さる(わけ)にも()きますまい。202相場(さうば)()つてでも五万(ごまん)(ゑん)(まう)けさして(くだ)さるのでせうなア』
203松岡(まつをか)相場(さうば)(こと)なれば(この)(はう)余程(よほど)不得手(ふえて)だ。204坂井(さかゐ)伝三郎(でんざぶらう)といふ百年前(ひやくねんまへ)相場師(さうばし)大阪(おほさか)()つた。205()(をとこ)八十五(はちじふご)(まん)(ゑん)財産(ざいさん)(のこ)らず相場(さうば)(まけ)(しま)ひ、206(わづか)(のこ)つた財産(ざいさん)を、207(さかひ)住吉(すみよし)明神(みやうじん)献上(けんじやう)(いた)し、208()神徳(しんとく)()つて、209(いま)住吉(すみよし)大眷族(だいけんぞく)大霜(おほしも)といふ天狗(てんぐ)となつて、210相場(さうば)守護(しゆご)(いた)して()るから、211(その)(かみ)(いま)(この)肉体(にくたい)にうつる(やう)守護(しゆご)してやらう。212それに()いたがよからうぞ。213松岡(まつをか)はこれで引取(ひきと)る。214ウンウンウン』
215元市(もといち)『マアマアマア一寸(ちよつと)()つて(くだ)さいませ、216モウ一言(ひとこと)()(たづ)(いた)したう御座(ござ)います』
217といふのも一切(いつさい)頓着(とんちやく)なしに、218審神者(さには)肉体(にくたい)三四(さんし)(しやく)(ちう)巻上(まきあ)げ、219ドスンと(もと)()(しり)(おろ)し、220パチツと()をあけて、221(もと)喜楽(きらく)になつて(しま)つた。
222 これより元市(もといち)夫婦(ふうふ)態度(たいど)一変(いつぺん)し、223(いま)まで『喜楽(きらく)々々(きらく)』と()びつけにしてゐたのが、224現金(げんきん)にも『上田(うへだ)大先生(おほせんせい)(さま)』とあがめ()して(しやべ)つた。225宇一(ういち)(した)しき友人(いうじん)(こと)とて『オイ喜楽(きらく)』などと()うてゐたが、226(にはか)(おやぢ)(なら)つて、227大先生(だいせんせい)』と()()した。228(なん)とはなしにテレ(くさ)いやうな()がしてならない。
229喜楽『どうぞ(いま)までのやうに喜楽(きらく)()うてくれ』
230何程(なにほど)(たの)んでも、231親子(おやこ)(とも)(くび)左右(さいう)にふり、
232斎藤親子『イエイエ滅相(めつさう)もない、233こんな立派(りつぱ)相場(さうば)(かみ)さまが()(うつ)(あそ)ばす()肉体(にくたい)粗末(そまつ)にしては、234(かみ)さまに(たい)申訳(まをしわけ)がありませぬ。235どうぞ大先生(おほせんせい)()はして(くだ)さい』
236(かね)(よく)(まよ)はされて、237一生(いつしやう)懸命(けんめい)(いや)らしい(ほど)大事(だいじ)にし()した。
238元市(もといち)『モシ大先生(おほせんせい)239最前(さいぜん)(かみ)さまが(おつ)しやつたやうに、240(せがれ)宇一(ういち)審神者(さには)(いた)しますから、241大霜(おほしも)さまの神懸(かむがか)りを(ひと)(ねが)うて(くだ)さいな』
242(たの)()む。243喜楽(きらく)仕方(しかた)がないので、244東側(ひがしがは)(みぞ)()をひたし、245(からだ)(きよ)め、246(ふたた)白衣(びやくい)(むらさき)(はかま)(ちやく)し、247(おく)()静坐(せいざ)し、248()()んだ。249(また)もや身体(しんたい)震動(しんどう)して、
250大霜(おほしも)『われこそは官幣(くわんぺい)大社(たいしや)住吉(すみよし)神社(じんじや)(いち)眷族(けんぞく)251大霜(おほしも)天狗(てんぐ)であるぞよ。252相場(さうば)(こと)なら(なん)でも()かしてやらう』
253大声(おほごゑ)怒鳴(どな)()てた。254元市(もといち)飛付(とびつ)くやうにして、255(あたま)(たたみ)にすりつけ(なが)ら、256(ひざ)(ちか)くまですり()り、
257元市(もといち)『ハイ、258有難(ありがた)御座(ござ)います。259(しか)(なが)(この)(とほ)(もん)一杯(いつぱい)(ひと)()いて()りますから、260どうぞ(ひく)(こゑ)(おつ)しやつて(くだ)さいませ。261(わたくし)折入(をりい)つて()(ねがひ)御座(ござ)いますから……』
262 大霜(おほしも)(ちひ)さい(こゑ)で、
263大霜(おほしも)『ヨシ(わか)つた、264()ンなつと()いてやらう。265大方(おほかた)五万(ごまん)(ゑん)(かね)相場(さうば)()たしてくれいと(まを)すのだらう』
266元市(もといち)『ハイ、267()(さつ)しの(とほ)五万(ごまん)(ゑん)(かね)必要(ひつえう)(おこ)りました。268(なん)とマアあなた(さま)は、269(わたくし)(こころ)御存(ごぞん)じで御座(ござ)います。270(うたがひ)もなき天狗(てんぐ)(さま)271これから家内中(かないぢう)打揃(うちそろ)うて、272(むら)(やつ)(なん)(まを)さう(とも)信仰(しんかう)(いた)しますから、273どうぞ(こめ)(あが)()がりをハツキリ()らして(くだ)さりませ』
274大霜(おほしも)『ヨシ、275(おれ)生前(せいぜん)(おい)坂井(さかゐ)伝三郎(でんざぶらう)といふ堂島(だうじま)相場師(さうばし)であつた。276相場(さうば)(ため)財産(ざいさん)をなくした(くらゐ)だから、277神界(しんかい)(おい)ても相場(さうば)(くは)しいので、278(その)方面(はうめん)守護(しゆご)(いた)して()(かみ)だ。279つまり()はば専門家(せんもんか)だ、280(この)(はう)(まけ)(だけ)(かね)(その)(はう)()たしてやつても、281(べつ)社会(しやくわい)(とが)にもなるまい。282五万(ごまん)(ゑん)などとそんな吝嗇臭(けちくさ)(こと)(まを)すな。283八十(はちじふ)(まん)(ゑん)()たしてやらう、284どうぢや(うれ)しいか?』
285元市(もといち)『ハイ、286(うれ)しう御座(ござ)います』
287大霜(おほしも)(その)八十(はちじふ)(まん)(ゑん)(かね)()()れたら如何(どう)する(つも)りだ』
288元市(もといち)『ハイ、289(まを)(まで)もなく、290曽我部(そがべ)(むら)全部(ぜんぶ)買収(ばいしう)し、291五万(ごまん)(ゑん)がとこ(はやし)()うて、292其処(そこ)天狗(てんぐ)さまの公園(こうゑん)となし、293(のこ)七十五(しちじふご)(まん)(ゑん)はマア一寸(ちよつと)(かんが)へさして(いただ)きませう』
294大霜(おほしも)七十五(しちじふご)(まん)(ゑん)財産家(ざいさんか)となつて羽振(はぶり)()かす(かんが)へだらう。295(その)(はう)(その)(かね)()()つたならば、296立派(りつぱ)(いへ)建築(けんちく)し、297(めかけ)をおいて、298栄耀(えいえう)栄華(えいぐわ)(くら)さうといふ、299(いま)から(かんが)へを()つて()らうがなア。300(あま)贅沢(ぜいたく)になると酒色(しゆしよく)(ふけ)つて衛生(ゑいせい)(じやう)面白(おもしろ)くない、301身体(しんたい)衰弱(すゐじやく)して短命(たんめい)になる。302(また)女房(にようばう)のあるのに(めかけ)などを()けば、303家内(かない)(つね)にもめる道理(だうり)だ。304一層(いつそう)(こと)305(いま)貧乏(びんばふ)(はう)(かへつ)幸福(かうふく)かも()れないぞ。306そうなると、307(かへつ)(かみ)(めぐみ)(あだ)となるから、308五万(ごまん)(ゑん)(だけ)にして()かうか』
309元市(もといち)『メヽ滅相(めつさう)な、310(かみ)さまの(ことば)二言(にごん)はないと()いて()ります。311あなたこそ(かみ)さまとなれば、312(かね)必要(ひつえう)御座(ござ)りますまいが、313肉体(にくたい)のある以上(いじやう)(かね)必要(ひつえう)です。314七十五(しちじふご)(まん)(ゑん)(うち)315十万(じふまん)(ゑん)(だけ)(わたくし)頂戴(ちやうだい)(いた)しまして、316(あと)六十五(ろくじふご)(まん)(ゑん)駅逓局(えきていきよく)(あづ)けたり、317慈善(じぜん)事業(じげふ)寄附(きふ)したり、318社会(しやくわい)(ため)使(つか)ひます』
319大霜(おほしも)『それも結構(けつこう)だが、320(かみ)さまのお(みち)(ため)使(つか)はうといふ()はないか』
321元市(もといち)『ハイ、322(かみ)さまの(はう)五万(ごまん)(ゑん)()約束(やくそく)(とほ)り、323チヤンときまつて()ります』
324大霜(おほしも)『アハヽヽヽ、325そんならそうでも()からうが、326相場(さうば)をする基本金(きほんきん)如何(どう)して(こしら)へるか』
327元市(もといち)『ハイ御存(ごぞん)じの(とほ)り、328スツカリ貧乏(びんばふ)(いた)しまして、329最早(もはや)(いち)(ゑん)(かね)()してくれる(もの)もありませぬので、330(この)資本(もとで)(かみ)さまの()厄介(やくかい)(あづか)つて()して(いただ)きたいもので御座(ござ)います』
331大霜(おほしも)『ヨシ、332そんなら小判(こばん)埋蔵所(まいざうしよ)()つて()るから、333それを(その)(はう)明示(めいじ)してやらう。334(たれ)にも()つてはならぬぞ。335乍併(しかしながら)(この)(かね)山奥(やまおく)(うづ)めてあるから、336(その)(はう)()かいでも、337(この)神主(かむぬし)肉体(にくたい)使(つか)うて()りにやらすから、338二三(にさん)(にち)()つて()るが()からう』
339元市(もといち)『ハイ有難(ありがた)う、340いくら(かく)してあるか()りませぬが、341一人(ひとり)では途中(とちう)(あぶ)なう御座(ござ)います。342もし(ぞく)にでも出会(であ)うたら大変(たいへん)ですから、343どうぞ(わたし)一人(ひとり)(だけ)はお(とも)にやつて(くだ)さいな』
344大霜(おほしも)『ならぬ ならぬ、345(その)(かね)一寸(ちよつと)百万(ひやくまん)(ゑん)ばかり小判(こばん)(かく)してあるが、346(その)(はう)(その)所在(ありか)()らすと、347(また)(わる)精神(せいしん)(いだ)し、348体主(たいしゆ)霊従(れいじう)におちてはならないに()つて、349()一万(いちまん)(ゑん)(ばか)資本(しほん)に、350(この)肉体(にくたい)()らしてくる。351キツと()いて()(こと)はならぬぞ』
352元市(もといち)『そんなら(せがれ)宇一(ういち)をお(とも)をさしますから、353それ(だけ)(ゆる)して(くだ)さい』
354大霜(おほしも)『イヤそれも()らぬ。355(この)神主(かむぬし)肉体(にくたい)(かみ)勝手(かつて)使(つか)うて()()して()る。356(その)(はう)改心(かいしん)次第(しだい)()つて(わた)してやる』
357元市(もといち)『ハイ承知(しようち)いたしました。358()安心(あんしん)(くだ)さいませ。359メツタに慢心(まんしん)する気遣(きづか)ひは御座(ござ)いませぬ。360ズントズント(こころ)(そこ)から改心(かいしん)(いた)して()ります』
361 喜楽(きらく)自分(じぶん)(はら)(なか)から()(こと)一々(いちいち)(のこ)らず傍聴(ばうちやう)し、362(また)元市(もといち)(ことば)()いて可笑(おか)しくてたまらず……ナアにそんな(かね)があるものか……と(こころ)(なか)(おも)つて仕方(しかた)がなかつた。
363大霜(おほしも)(かみ)最早(もはや)引取(ひきと)るぞよ。364(この)肉体(にくたい)大先生(だいせんせい)(あが)めて大切(たいせつ)(いた)せよ。365ドスス、366ウン』
367()()がり、368憑霊(ひようれい)(たちま)肉体(にくたい)(はな)れて(しま)つた。
369元市(もといち)『あゝ大先生(だいせんせい)370()苦労(くらう)はんで御座(ござ)いました。371どうぞ(からだ)大切(たいせつ)にして(くだ)さいや。372大変(たいへん)結構(けつこう)()神徳(かげ)(いただ)きました』
373喜楽(きらく)(わたくし)()いてゐましたが、374あんな(うま)(こと)大霜(おほしも)サンが()はれたけれど、375(うそ)ぢやなからうかと、376心配(しんぱい)でなりませぬワ』
377 元市(もといち)(くび)左右(さいう)()り、
378元市(もといち)大先生(だいせんせい)379そんな勿体(もつたい)ないことを()ふもんぢやありませぬ。380天狗(てんぐ)サンは一割(いちわり)正直(しやうぢき)()(かた)ですから、381(うそ)(おつ)しやる気遣(きづかひ)御座(ござ)いませぬ。382アー()れで(わし)(うん)(ひら)きかけた』
383とニコニコしてゐる。
384 (その)()(なん)となく(わが)()(かへ)りたくなつたので、385(ひさ)()りに自宅(じたく)(かへ)ることとなつた。
386大正一一・一〇・九 旧八・一九 松村真澄録)

王仁三郎が著した「大作」がこれ1冊でわかる!
飯塚弘明・他著『あらすじで読む霊界物語』(文芸社文庫)
絶賛発売中!

目で読むのに疲れたら耳で聴こう!
霊界物語の朗読 ユーチューブに順次アップ中!
霊界物語の音読まとめサイト
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→