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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第37巻(子の巻)
序
総説
第1篇 安閑喜楽
第1章 富士山
第2章 葱節
第3章 破軍星
第4章 素破抜
第5章 松の下
第6章 手料理
第2篇 青垣山内
第7章 五万円
第8章 梟の宵企
第9章 牛の糞
第10章 矢田の滝
第11章 松の嵐
第12章 邪神憑
第3篇 阪丹珍聞
第13章 煙の都
第14章 夜の山路
第15章 盲目鳥
第16章 四郎狸
第17章 狐の尾
第18章 奥野操
第19章 逆襲
第20章 仁志東
第4篇 山青水清
第21章 参綾
第22章 大僧坊
第23章 海老坂
第24章 神助
第25章 妖魅来
霊の礎(九)
余白歌
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霊界物語
>
舎身活躍(第37~48巻)
>
第37巻(子の巻)
> 第2篇 青垣山内 > 第7章 五万円
<<< 手料理
(B)
(N)
梟の宵企 >>>
第七章
五万円
(
ごまんゑん
)
〔一〇一九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第37巻 舎身活躍 子の巻
篇:
第2篇 青垣山内
よみ(新仮名遣い):
あおがきやまうち
章:
第7章 五万円
よみ(新仮名遣い):
ごまんえん
通し章番号:
1019
口述日:
1922(大正11)年10月09日(旧08月19日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年3月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
友人の斎藤宇一の奥座敷を借りて、いよいよ幽斎の修行に着手することになった。宇一の叔母の静子、妹の高子、多田琴、岩森徳子、上田幸吉その他に三人の者が修行者となった。
瑞月は小幡川で拾った仮天然笛で羽織袴を身につけて厳粛に審神者を修した。初めてで様子がわからなかったが、多田琴が神主の座に着くと、組んだ手を前後左右に振り回して飛び上がり、戸も障子もふすまもガタガタになってしまった。
一週間もすると多田琴が口を切り始めた。多田は日一日と発動が激しくなり、言葉も円滑に使うようになってきた。このころは、激しく発動するほど偉い神が来たのだと勘違いしていた。
多田琴は白滝大明神、斎藤静子は恒富大明神だと口を切って飛び上がり始めた。今から思えば笑止だが、初めて会った発動、託宣を目の前にして、人間も修行さえすれば老若男女の区別なく神通が得られるものだという確信はついた。
神主たちの発動騒ぎに昼も夜も家のぐるりは野次馬が集まっていた。多田は発動したままほかの修行者を連れて実家に帰ってしまった。自分は連れ戻そうとしたが体が動かない。
宇一が瑞月の審神者となって確かめると、瑞月の口が切れて、松岡天使であると名乗り、天下の万民を助ける神の使いは、よほどの修行をせなくてはならない、この方の言うことに叛いてはならないと言いだした。
宇一は修行しても自分にはなかなか神様がかからないので、なんとか口が切れるようにしてくれ、と松岡神に頼み込んだ。松岡神は、神が五万円やるから穴太の地を買収して大神苑を作れと宇一に命じた。
宇一は五万円と聞いてにわかに喜びだした。松岡神は、相場に詳しい大霜天狗を瑞月にかからせてやるから、相場のことを尋ねて五万円儲けるがよいと言い渡した。
とたんに宇一の一家は態度を一変し、今まで喜楽と呼び捨てにしていたのが、上田大先生様とあがめだした。宇一の父・元市はさっそく瑞月に大霜天狗の神主となるよう要請した。
大霜天狗は、小判を埋めたところがあるからそこにこの神主の肉体を連れて行って掘り出させる、と言って引き取った。自分は大霜天狗の言を疑ったが、元市はすっかり信じ切って喜んでいた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-10-19 14:09:49
OBC :
rm3707
愛善世界社版:
89頁
八幡書店版:
第7輯 63頁
修補版:
校定版:
93頁
普及版:
42頁
初版:
ページ備考:
001
友人
(
ゆうじん
)
斎藤
(
さいとう
)
宇一
(
ういち
)
の
奥座敷
(
おくざしき
)
を
借
(
か
)
つて、
002
愈
(
いよいよ
)
幽斎
(
いうさい
)
の
修業
(
しうげふ
)
に
着手
(
ちやくしゆ
)
する
事
(
こと
)
となつた。
003
修業者
(
しうげふしや
)
は
宇一
(
ういち
)
の
叔母
(
をば
)
に
当
(
あた
)
る
静子
(
しづこ
)
、
004
及
(
および
)
妹
(
いもうと
)
に
当
(
あた
)
る
高子
(
たかこ
)
(
十三
(
じふさん
)
歳
(
さい
)
)、
005
多田
(
ただ
)
琴
(
こと
)
、
006
岩森
(
いはもり
)
徳子
(
とくこ
)
、
007
上田
(
うへだ
)
幸吉
(
かうきち
)
其
(
その
)
外
(
ほか
)
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
の
者
(
もの
)
を
以
(
もつ
)
て、
008
朝夕
(
あさゆふ
)
軒
(
のき
)
を
流
(
なが
)
るる
小川
(
をがは
)
に
水浴
(
すいよく
)
をなし、
009
午前
(
ごぜん
)
に
四十
(
よんじつ
)
分間
(
ぷんかん
)
づつ
三回
(
さんくわい
)
、
010
午後
(
ごご
)
にも
亦
(
また
)
三回
(
さんくわい
)
、
011
夜
(
よる
)
二回
(
にくわい
)
都合
(
つがふ
)
八回
(
はちくわい
)
で、
012
一
(
いち
)
日
(
にち
)
に
三百
(
さんびやく
)
二十
(
にじつ
)
分間
(
ぷんかん
)
、
013
厳格
(
げんかく
)
に
修業
(
しうげふ
)
した。
014
そして
瑞月
(
ずゐげつ
)
は
小幡川
(
をばたがは
)
で
拾
(
ひろ
)
つた
仮
(
かり
)
天然笛
(
てんねんぶえ
)
で、
015
羽織
(
はおり
)
袴
(
はかま
)
を
着
(
ちやく
)
し、
016
極
(
きは
)
めて
厳粛
(
げんしゆく
)
に
審神者
(
さには
)
の
役
(
やく
)
を
修
(
しう
)
するのであつた。
017
初
(
はじ
)
めての
審神者
(
さには
)
の
事
(
こと
)
でチツとも
様子
(
やうす
)
は
分
(
わか
)
らぬ。
018
第一番
(
だいいちばん
)
に
多田
(
ただ
)
琴
(
こと
)
が
神主
(
かむぬし
)
の
座
(
ざ
)
に
着
(
つ
)
くや
否
(
いな
)
や、
019
組
(
く
)
んだ
手
(
て
)
を
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
振
(
ふり
)
まはし、
020
二十貫
(
にじふくわん
)
[
※
20貫は75キログラム
]
もあらうといふ
女
(
をんな
)
が、
021
古
(
ふる
)
い
家
(
いへ
)
の
床
(
とこ
)
が
落
(
お
)
ちる
程
(
ほど
)
飛
(
とび
)
あがり
出
(
だ
)
した。
022
戸
(
と
)
も
障子
(
しやうじ
)
も
襖
(
ふすま
)
もガタガタになつて
了
(
しま
)
つた。
023
一
(
いつ
)
週間
(
しうかん
)
程
(
ほど
)
の
後
(
のち
)
には、
024
余
(
あま
)
りドンドン
飛上
(
とびあが
)
つた
為
(
ため
)
か、
025
床
(
ゆか
)
が
二三寸
(
にさんずん
)
下
(
さ
)
がり、
026
障子
(
しやうじ
)
も
襖
(
ふすま
)
もバタバタと
独
(
ひと
)
りこけるやうになつて
了
(
しま
)
つた。
027
宇一
(
ういち
)
は
此
(
この
)
時
(
とき
)
まだ
二十
(
にじふ
)
二三
(
にさん
)
歳
(
さい
)
、
028
両親
(
りやうしん
)
から
苦情
(
くじやう
)
が
起
(
おこ
)
り、
029
修業所
(
しうげふしよ
)
をどこかへ
移転
(
いてん
)
してくれとの
命令
(
めいれい
)
を
下
(
くだ
)
された。
030
さうかうする
内
(
うち
)
、
031
多田
(
ただ
)
琴
(
こと
)
が
口
(
くち
)
を
切
(
き
)
り
始
(
はじ
)
めた。
032
多田琴
『シヽヽ
白滝
(
しらたき
)
白滝
(
しらたき
)
白滝
(
しらたき
)
』
033
といひかけた。
034
審神者
(
さには
)
は
始
(
はじ
)
めての
口切
(
くちき
)
りで、
035
肝
(
きも
)
をとられ、
036
驚
(
おどろ
)
きと
一
(
ひと
)
つは
始
(
はじ
)
めて
口
(
くち
)
の
切
(
き
)
れた
喜
(
よろこ
)
びとで、
037
愈
(
いよいよ
)
幽斎
(
いうさい
)
修業
(
しうげふ
)
も
前途
(
ぜんと
)
有望
(
いうばう
)
だと、
038
知
(
し
)
らず
知
(
し
)
らずに
天狗
(
てんぐ
)
になつて
了
(
しま
)
つた。
039
多田
(
ただ
)
の
神主
(
かむぬし
)
は
日一日
(
ひいちにち
)
と
発動
(
はつどう
)
が
烈
(
はげ
)
しくなり、
040
詞
(
ことば
)
も
円滑
(
ゑんくわつ
)
に
使
(
つか
)
ふやうになつて
来
(
き
)
た。
041
其
(
その
)
時
(
とき
)
の
審神者
(
さには
)
としては
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
し、
042
よく
発動
(
はつどう
)
し、
043
荒
(
あら
)
く
飛上
(
とびあ
)
がる
程
(
ほど
)
偉
(
えら
)
い
神
(
かみ
)
が
来
(
き
)
たのだと
信
(
しん
)
じ、
044
本当
(
ほんたう
)
のしとやかな
神感者
(
しんかんしや
)
を
見
(
み
)
ても、
045
もどかしい
様
(
やう
)
な
気
(
き
)
になつて
了
(
しま
)
つた。
046
多田
(
ただ
)
琴
(
こと
)
に
続
(
つづ
)
いて
又
(
また
)
斎藤
(
さいとう
)
静子
(
しづこ
)
の
面相
(
めんさう
)
が
俄
(
にはか
)
に
猛悪
(
まうあく
)
になり、
047
組
(
く
)
んだ
手
(
て
)
を
無性
(
むしやう
)
矢鱈
(
やたら
)
に
震動
(
しんどう
)
させ、
048
これ
又
(
また
)
ドンドンと
荒
(
あ
)
れ
狂
(
くる
)
ひ
出
(
だ
)
した。
049
一人
(
ひとり
)
は
大女
(
おほをんな
)
、
050
一人
(
ひとり
)
は
三十
(
さんじふ
)
になつても
貰
(
もら
)
ひ
手
(
て
)
のないといふ、
051
四
(
よん
)
尺
(
しやく
)
[
※
4尺は121センチメートル
]
足
(
た
)
らずのチンコさんである。
052
それが
一時
(
いつとき
)
に
負
(
まけ
)
ず
劣
(
おと
)
らずドンドンドンと
飛上
(
とびあ
)
がり
出
(
だ
)
した。
053
静子
(
しづこ
)
の
姉
(
あね
)
を
始
(
はじ
)
め、
054
養子
(
やうし
)
に
来
(
き
)
た
元市
(
もといち
)
といふのは、
055
宇一
(
ういち
)
の
両親
(
りやうしん
)
であつたのが、
056
静子
(
しづこ
)
が
神憑
(
かむがかり
)
になつたので、
057
俄
(
にはか
)
に
乗気
(
のりき
)
になり、
058
修業場
(
しうげふぢやう
)
を
移転
(
いてん
)
することを
取消
(
とりけ
)
して
貰
(
もら
)
ひたいと
申込
(
まをしこ
)
んだ。
059
多田
(
ただ
)
の
神主
(
かむぬし
)
はソロソロ
大口
(
おほぐち
)
をあけ、
060
目
(
め
)
の
白玉
(
しらたま
)
に
巴形
(
ともゑがた
)
の
赤
(
あか
)
い
模様
(
もやう
)
が
出来
(
でき
)
て、
061
多田琴
『
静
(
しづか
)
御前
(
ごぜん
)
と
義経
(
よしつね
)
弁慶
(
べんけい
)
、
062
加藤
(
かとう
)
清正
(
きよまさ
)
どちらが
偉
(
えら
)
い、
063
此
(
この
)
方
(
はう
)
は
和田
(
わだ
)
義盛
(
よしもり
)
の
妻
(
つま
)
巴御前
(
ともえごぜん
)
であるぞよ、
064
其
(
その
)
証拠
(
しようこ
)
には
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
目
(
め
)
の
玉
(
たま
)
を
見
(
み
)
よツ』
065
と
目
(
め
)
を
指
(
さ
)
し
示
(
しめ
)
す。
066
初心
(
しよしん
)
の
審神者
(
さには
)
は
其
(
その
)
目
(
め
)
の
玉
(
たま
)
をよくよく
見
(
み
)
れば、
067
まがふ
方
(
かた
)
なき
一
(
ひと
)
つ
巴
(
ともえ
)
が、
068
両眼
(
りやうがん
)
に
真紅
(
しんく
)
の
色
(
いろ
)
を
染出
(
そめだ
)
して
居
(
ゐ
)
る。
069
……ヤツパリ
巴御前
(
ともえごぜん
)
ぢやあるまいかなア……と
思案
(
しあん
)
してゐると、
070
神主
(
かむぬし
)
は
審神者
(
さには
)
の
頬
(
ほほ
)
べたをピシヤピシヤと
殴
(
なぐ
)
り、
071
多田琴
『
馬鹿
(
ばか
)
審神者
(
さには
)
の
盲
(
めくら
)
審神者
(
さには
)
、
072
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
正体
(
しやうたい
)
が
分
(
わか
)
らぬか。
073
此
(
この
)
方
(
はう
)
は
勿体
(
もつたい
)
なくも、
074
官幣
(
くわんぺい
)
大社
(
たいしや
)
稲荷
(
いなり
)
大明神
(
だいみやうじん
)
の
眷族
(
けんぞく
)
三
(
さん
)
の
滝
(
たき
)
に
守護
(
しゆご
)
致
(
いた
)
す、
075
白滝
(
しらたき
)
大明神
(
だいみやうじん
)
であるぞよ。
076
サアこれからは
此
(
この
)
白滝
(
しらたき
)
が
審神者
(
さには
)
をしてやらう。
077
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
神主
(
かむぬし
)
の
座
(
ざ
)
にすわれ』
078
と
呶鳴
(
どな
)
りつけた。
079
静子
(
しづこ
)
は
又
(
また
)
発動
(
はつどう
)
して、
080
斎藤静子
『おれは
妙見山
(
めうけんさん
)
に
守護
(
しゆご
)
いたす、
081
天一
(
てんいち
)
天狐
(
てんこ
)
恒富
(
つねとみ
)
大明神
(
だいみやうじん
)
だ。
082
見違
(
みちが
)
ひ
致
(
いた
)
すと、
083
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
り
審神者
(
さには
)
は
許
(
ゆる
)
さぬぞ。
084
ウンウン、
085
バタバタ ドスン ドスン』
086
と
小
(
ちひ
)
さい
婆
(
ばば
)
アが
飛上
(
とびあ
)
がる。
087
今
(
いま
)
から
思
(
おも
)
へば
抱腹
(
はうふく
)
絶倒
(
ぜつたう
)
の
至
(
いた
)
りだが、
088
其
(
その
)
時
(
とき
)
の
審神者
(
さには
)
にとつては
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
であつた。
089
笑
(
わら
)
ふ
余地
(
よち
)
も
怒
(
いか
)
る
間
(
ま
)
も、
090
調
(
しら
)
べる
隙
(
すき
)
もない。
091
只
(
ただ
)
始
(
はじ
)
めて
会
(
あ
)
うた
発動
(
はつどう
)
状態
(
じやうたい
)
、
092
神
(
かみ
)
の
託宣
(
たくせん
)
、
093
愈
(
いよいよ
)
人間
(
にんげん
)
にも
修業
(
しうげふ
)
さへすれば、
094
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
の
区別
(
くべつ
)
なく、
095
神通
(
じんつう
)
が
得
(
え
)
られるものだ、
096
といふ
確信
(
かくしん
)
はたしかについたが、
097
其
(
その
)
外
(
ほか
)
の
事
(
こと
)
は
一切
(
いつさい
)
耳
(
みみ
)
にも
這入
(
はい
)
らず、
098
思
(
おも
)
ふ
事
(
こと
)
もなかつた。
099
只
(
ただ
)
一心
(
いつしん
)
不乱
(
ふらん
)
に
三
(
さん
)
週間
(
しうかん
)
の
修業
(
しうげふ
)
を
続
(
つづ
)
けて
居
(
ゐ
)
た。
100
一
(
いつ
)
週間
(
しうかん
)
程
(
ほど
)
たつた
時
(
とき
)
、
101
修業者
(
しうげふしや
)
は
一斉
(
いつせい
)
に
口
(
くち
)
を
切
(
き
)
り、
102
少女
(
せうぢよ
)
の
口
(
くち
)
から、
103
『チヽヽヽヽ、
104
ツヽヽヽヽ』
105
と
口
(
くち
)
を
尖
(
とが
)
らし、
106
組
(
く
)
んだ
手
(
て
)
をヒヨイヒヨイと
動
(
うご
)
かし
乍
(
なが
)
ら、
107
喋
(
しやべ
)
り
始
(
はじ
)
めた。
108
修業場
(
しうげふば
)
は
一切
(
いつさい
)
他人
(
たにん
)
の
近
(
ちか
)
よることを
禁
(
きん
)
じてゐたが、
109
余
(
あま
)
り
大
(
おほ
)
きな
発動
(
はつどう
)
の
響
(
ひびき
)
と
神主
(
かむぬし
)
の
声
(
こゑ
)
とに、
110
近所
(
きんじよ
)
の
者
(
もの
)
が
聞
(
き
)
きつけ、
111
次
(
つぎ
)
から
次
(
つぎ
)
へと
喧伝
(
けんでん
)
して、
112
昼
(
ひる
)
も
夜
(
よる
)
も
家
(
いへ
)
のぐるりは
人
(
ひと
)
の
山
(
やま
)
になつて
了
(
しま
)
つた。
113
多田
(
ただ
)
琴
(
こと
)
は……
白滝
(
しらたき
)
大明神
(
だいみやうじん
)
の
命令
(
めいれい
)
だ……と
云
(
い
)
つて、
114
修業者
(
しうげふしや
)
を
残
(
のこ
)
らず
引連
(
ひきつ
)
れ、
115
白衣
(
びやくい
)
に
緋
(
ひ
)
の
袴
(
はかま
)
をうがち、
116
一
(
いち
)
里
(
り
)
余
(
あま
)
りの
道
(
みち
)
を
白昼
(
はくちう
)
大手
(
おほて
)
をふつて、
117
多田琴
『
家来
(
けらい
)
ツ、
118
伴
(
とも
)
して
来
(
こ
)
い』
119
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
120
何
(
なん
)
だか
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
歌
(
うた
)
をうたひ、
121
足拍子
(
あしべうし
)
を
取
(
と
)
り、
122
外
(
ほか
)
の
修業者
(
しうげふしや
)
は
其
(
その
)
歌
(
うた
)
に
合
(
あ
)
はして、
123
石
(
いし
)
や
瓦
(
かはら
)
を
叩
(
たた
)
き
乍
(
なが
)
ら、
124
テンツテンツ ツンツクツンなど
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
125
中村
(
なかむら
)
の
多田
(
ただ
)
亀
(
かめ
)
の
家
(
いへ
)
へ
行
(
い
)
つて
了
(
しま
)
つた。
126
審神者
(
さには
)
は……コリヤ
大変
(
たいへん
)
だ、
127
一
(
ひと
)
つ
鎮
(
しづ
)
めねばならぬ……と
後
(
あと
)
追
(
お
)
つかけようとすれ
共
(
ども
)
、
128
如何
(
どう
)
したものか、
129
自分
(
じぶん
)
の
体
(
からだ
)
は
数百貫
(
すうひやくくわん
)
の
石
(
いし
)
で
押
(
おさ
)
へられたやうに
重
(
おも
)
たくなつて、
130
チツとも
動
(
うご
)
く
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ない。
131
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず、
132
宇一
(
ういち
)
は
審神者
(
さには
)
代理
(
だいり
)
となりて
側
(
そば
)
にすわり、
133
自分
(
じぶん
)
は
惟神
(
かむながら
)
的
(
てき
)
に
手
(
て
)
を
組
(
く
)
まされ、
134
瞑目
(
めいもく
)
してゐると、
135
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
から
丸
(
まる
)
いかたまりが
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つグルグルグルと
喉元
(
のどもと
)
へつめ
上
(
あ
)
げ、
136
何
(
なん
)
とも
言
(
い
)
はれぬ
苦
(
くるし
)
さであつた。
137
三四十
(
さんしじつ
)
分間
(
ぷんかん
)
息
(
いき
)
が
切
(
き
)
れるやうな
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
はされた
揚句
(
あげく
)
、
138
喜楽
『
此
(
この
)
方
(
はう
)
は
此
(
この
)
肉体
(
にくたい
)
を
高熊山
(
たかくまやま
)
へ
導
(
みちび
)
き、
139
其
(
その
)
霊魂
(
れいこん
)
を
富士山
(
ふじさん
)
へ
伴
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つた
松岡
(
まつをか
)
天使
(
てんし
)
である。
140
サアこれから
本当
(
ほんたう
)
の
審神者
(
さには
)
をさしてやらう。
141
天下
(
てんか
)
の
万民
(
ばんみん
)
を
助
(
たす
)
ける
神
(
かみ
)
の
使
(
つかひ
)
は、
142
余程
(
よほど
)
の
修業
(
しうげふ
)
を
致
(
いた
)
さねば
駄目
(
だめ
)
だ。
143
さアこれから
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
をチツとも
叛
(
そむ
)
くでないぞよ』
144
と
自分
(
じぶん
)
の
口
(
くち
)
から
言
(
い
)
ひ
出
(
だ
)
した。
145
宇一
(
ういち
)
は
這
(
は
)
ひつくばひ
乍
(
なが
)
ら、
146
宇一
(
ういち
)
『
恐
(
おそ
)
れ
乍
(
なが
)
ら
松岡
(
まつをか
)
様
(
さま
)
に
申上
(
まをしあ
)
げます。
147
私
(
わたし
)
は
皆
(
みな
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
修業
(
しうげふ
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りますが、
148
まだ
一遍
(
いつぺん
)
も
手
(
て
)
も
震
(
ふる
)
うた
事
(
こと
)
もなし、
149
皆
(
みな
)
の
様
(
やう
)
に
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
がうつつて
物
(
もの
)
を
言
(
い
)
うて
下
(
くだ
)
さりませぬが、
150
如何
(
どう
)
いふ
訳
(
わけ
)
で
御座
(
ござ
)
いますか。
151
神
(
かみ
)
さまさへ
憑
(
うつ
)
つて
下
(
くだ
)
さるのなら、
152
どんな
修業
(
しうげふ
)
でも
致
(
いた
)
しますから、
153
どうぞ
教
(
をし
)
へて
下
(
くだ
)
さいませ』
154
と
頼
(
たの
)
んで
居
(
を
)
る。
155
そうすると
又
(
また
)
神主
(
かむぬし
)
の
口
(
くち
)
から、
156
松岡
(
まつをか
)
『
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
大体
(
だいたい
)
精神
(
せいしん
)
のよくない
男
(
をとこ
)
だから、
157
神
(
かみ
)
が
憑
(
うつ
)
る
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ぬのだ。
158
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
や
五
(
ご
)
年
(
ねん
)
修業
(
しうげふ
)
したとて、
159
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
駄目
(
だめ
)
だから、
160
一層
(
いつそう
)
のこと、
161
審神者
(
さには
)
になつた
方
(
はう
)
がよからうぞ』
162
宇一
(
ういち
)
『
神主
(
かむぬし
)
にもなれない
者
(
もの
)
が
如何
(
どう
)
して
審神者
(
さには
)
が
出来
(
でき
)
ませうか』
163
松岡
(
まつをか
)
『
神
(
かみ
)
がせいと
云
(
い
)
つたら、
164
キツと
出来
(
でき
)
る。
165
神
(
かみ
)
が
其
(
その
)
方
(
はう
)
の
肉体
(
にくたい
)
を
使
(
つか
)
つてするのだから、
166
チツとも
心配
(
しんぱい
)
は
要
(
い
)
らぬ』
167
宇一
(
ういち
)
『
左様
(
さやう
)
ならば
御用
(
ごよう
)
を
致
(
いた
)
します。
168
不束
(
ふつつか
)
な
審神者
(
さには
)
で
御座
(
ござ
)
いますから、
169
どうぞ
宜
(
よろ
)
しう
御
(
お
)
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
170
松岡
(
まつをか
)
『ヨシ、
171
此
(
この
)
神主
(
かむぬし
)
の
肉体
(
にくたい
)
は
其
(
その
)
方
(
はう
)
の
監督
(
かんとく
)
に
任
(
まか
)
すから、
172
よく
気
(
き
)
をつけたがよからうぞ。
173
何時
(
いつ
)
夜分
(
やぶん
)
に
飛出
(
とびだ
)
すか
知
(
し
)
れぬから、
174
気
(
き
)
をつけて
居
(
ゐ
)
るがよい』
175
宇一
(
ういち
)
『ハイ、
176
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
177
此
(
この
)
度
(
たび
)
の
一同
(
いちどう
)
の
者
(
もの
)
の
修業
(
しうげふ
)
が
済
(
す
)
みましたら、
178
其
(
その
)
先
(
さき
)
は
如何
(
どう
)
致
(
いた
)
しませうか』
179
松岡
(
まつをか
)
『
神
(
かみ
)
が
五万
(
ごまん
)
円
(
ゑん
)
程
(
ほど
)
金
(
かね
)
をやるから、
180
此
(
この
)
穴太
(
あなを
)
の
或
(
ある
)
地点
(
ちてん
)
を
買収
(
ばいしう
)
し、
181
大神苑
(
だいしんゑん
)
を
作
(
つく
)
り、
182
神殿
(
しんでん
)
を
拵
(
こしら
)
へ、
183
神道
(
しんだう
)
の
本部
(
ほんぶ
)
を
建
(
た
)
てて、
184
布教
(
ふけう
)
をするのだ。
185
何事
(
なにごと
)
も
一々
(
いちいち
)
神
(
かみ
)
の
命令
(
めいれい
)
を
遵奉
(
じゆんぽう
)
せなくては
駄目
(
だめ
)
だから、
186
そう
心得
(
こころえ
)
たが
宜
(
よ
)
からう』
187
宇一
(
ういち
)
は
斎藤
(
さいとう
)
源次
(
げんじ
)
といふ
人
(
ひと
)
の
東隣
(
ひがしとなり
)
の
紋屋
(
もんや
)
の
息子
(
むすこ
)
である。
188
其
(
その
)
父親
(
てておや
)
が
相場
(
さうば
)
に
祖先
(
そせん
)
伝来
(
でんらい
)
の
財産
(
ざいさん
)
を
殆
(
ほとん
)
どなくして
了
(
しま
)
ひ、
189
今
(
いま
)
や
其
(
その
)
邸宅
(
ていたく
)
までが
危
(
あぶ
)
なく
浮
(
う
)
いてゐたのである。
190
何時
(
なんどき
)
家
(
いへ
)
も
屋敷
(
やしき
)
もどこへ
飛
(
と
)
んでゆくか、
191
流
(
なが
)
れるか
知
(
し
)
れぬやうな
危険
(
きけん
)
状態
(
じやうたい
)
になつてゐた。
192
今
(
いま
)
此
(
この
)
松岡
(
まつをか
)
天使
(
てんし
)
の
五万
(
ごまん
)
円
(
ゑん
)
を
与
(
あた
)
へるといふことを
聞
(
き
)
いて、
193
喉
(
のど
)
を
鳴
(
な
)
らし、
194
元市
(
もといち
)
が
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
飛
(
と
)
んで
来
(
き
)
て、
195
叮嚀
(
ていねい
)
に
両手
(
りやうて
)
をつき、
196
元市
(
もといち
)
『
松岡
(
まつをか
)
さま、
197
どうも
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
198
これでいよいよ
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
が
有
(
あ
)
りました。
199
どんな
事
(
こと
)
でも
神
(
かみ
)
さまの
御用
(
ごよう
)
を
聞
(
き
)
きますから、
200
早
(
はや
)
く
五万
(
ごまん
)
円
(
ゑん
)
の
金
(
かね
)
を
下
(
くだ
)
さいませ。
201
何
(
いづ
)
れ
天
(
てん
)
から
降
(
ふ
)
らして
下
(
くだ
)
さる
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
きますまい。
202
相場
(
さうば
)
に
依
(
よ
)
つてでも
五万
(
ごまん
)
円
(
ゑん
)
儲
(
まう
)
けさして
下
(
くだ
)
さるのでせうなア』
203
松岡
(
まつをか
)
『
相場
(
さうば
)
の
事
(
こと
)
なれば
此
(
この
)
方
(
はう
)
は
余程
(
よほど
)
不得手
(
ふえて
)
だ。
204
坂井
(
さかゐ
)
伝三郎
(
でんざぶらう
)
といふ
百年前
(
ひやくねんまへ
)
に
相場師
(
さうばし
)
が
大阪
(
おほさか
)
に
居
(
を
)
つた。
205
其
(
そ
)
の
男
(
をとこ
)
は
八十五
(
はちじふご
)
万
(
まん
)
円
(
ゑん
)
の
財産
(
ざいさん
)
を
残
(
のこ
)
らず
相場
(
さうば
)
で
負
(
まけ
)
て
了
(
しま
)
ひ、
206
僅
(
わづか
)
に
残
(
のこ
)
つた
財産
(
ざいさん
)
を、
207
堺
(
さかひ
)
の
住吉
(
すみよし
)
明神
(
みやうじん
)
に
献上
(
けんじやう
)
致
(
いた
)
し、
208
其
(
そ
)
の
神徳
(
しんとく
)
に
依
(
よ
)
つて、
209
今
(
いま
)
は
住吉
(
すみよし
)
の
大眷族
(
だいけんぞく
)
大霜
(
おほしも
)
といふ
天狗
(
てんぐ
)
となつて、
210
相場
(
さうば
)
の
守護
(
しゆご
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
るから、
211
其
(
その
)
神
(
かみ
)
が
今
(
いま
)
此
(
この
)
肉体
(
にくたい
)
にうつる
様
(
やう
)
に
守護
(
しゆご
)
してやらう。
212
それに
聞
(
き
)
いたがよからうぞ。
213
松岡
(
まつをか
)
はこれで
引取
(
ひきと
)
る。
214
ウンウンウン』
215
元市
(
もといち
)
『マアマアマア
一寸
(
ちよつと
)
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ、
216
モウ
一言
(
ひとこと
)
御
(
お
)
尋
(
たづ
)
ね
致
(
いた
)
したう
御座
(
ござ
)
います』
217
といふのも
一切
(
いつさい
)
頓着
(
とんちやく
)
なしに、
218
審神者
(
さには
)
の
肉体
(
にくたい
)
を
三四
(
さんし
)
尺
(
しやく
)
宙
(
ちう
)
に
巻上
(
まきあ
)
げ、
219
ドスンと
元
(
もと
)
の
座
(
ざ
)
に
尻
(
しり
)
を
卸
(
おろ
)
し、
220
パチツと
目
(
め
)
をあけて、
221
元
(
もと
)
の
喜楽
(
きらく
)
になつて
了
(
しま
)
つた。
222
これより
元市
(
もといち
)
夫婦
(
ふうふ
)
は
態度
(
たいど
)
一変
(
いつぺん
)
し、
223
今
(
いま
)
まで『
喜楽
(
きらく
)
々々
(
きらく
)
』と
呼
(
よ
)
びつけにしてゐたのが、
224
現金
(
げんきん
)
にも『
上田
(
うへだ
)
大先生
(
おほせんせい
)
様
(
さま
)
』とあがめ
出
(
だ
)
して
喋
(
しやべ
)
つた。
225
宇一
(
ういち
)
も
親
(
した
)
しき
友人
(
いうじん
)
の
事
(
こと
)
とて『オイ
喜楽
(
きらく
)
』などと
云
(
い
)
うてゐたが、
226
俄
(
にはか
)
に
爺
(
おやぢ
)
に
倣
(
なら
)
つて、
227
『
大先生
(
だいせんせい
)
』と
言
(
い
)
ひ
出
(
だ
)
した。
228
何
(
なん
)
とはなしにテレ
臭
(
くさ
)
いやうな
気
(
き
)
がしてならない。
229
喜楽
『どうぞ
今
(
いま
)
までのやうに
喜楽
(
きらく
)
と
云
(
い
)
うてくれ』
230
と
何程
(
なにほど
)
頼
(
たの
)
んでも、
231
親子
(
おやこ
)
共
(
とも
)
に
首
(
くび
)
を
左右
(
さいう
)
にふり、
232
斎藤親子
『イエイエ
滅相
(
めつさう
)
もない、
233
こんな
立派
(
りつぱ
)
な
相場
(
さうば
)
の
神
(
かみ
)
さまが
御
(
お
)
憑
(
うつ
)
り
遊
(
あそ
)
ばす
御
(
ご
)
肉体
(
にくたい
)
を
粗末
(
そまつ
)
にしては、
234
神
(
かみ
)
さまに
対
(
たい
)
し
申訳
(
まをしわけ
)
がありませぬ。
235
どうぞ
大先生
(
おほせんせい
)
と
言
(
い
)
はして
下
(
くだ
)
さい』
236
と
金
(
かね
)
の
欲
(
よく
)
に
迷
(
まよ
)
はされて、
237
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
厭
(
いや
)
らしい
程
(
ほど
)
大事
(
だいじ
)
にし
出
(
だ
)
した。
238
元市
(
もといち
)
『モシ
大先生
(
おほせんせい
)
、
239
最前
(
さいぜん
)
神
(
かみ
)
さまが
仰
(
おつ
)
しやつたやうに、
240
伜
(
せがれ
)
の
宇一
(
ういち
)
が
審神者
(
さには
)
を
致
(
いた
)
しますから、
241
大霜
(
おほしも
)
さまの
神懸
(
かむがか
)
りを
一
(
ひと
)
つ
願
(
ねが
)
うて
下
(
くだ
)
さいな』
242
と
頼
(
たの
)
み
込
(
こ
)
む。
243
喜楽
(
きらく
)
は
仕方
(
しかた
)
がないので、
244
東側
(
ひがしがは
)
の
溝
(
みぞ
)
に
身
(
み
)
をひたし、
245
体
(
からだ
)
を
清
(
きよ
)
め、
246
再
(
ふたた
)
び
白衣
(
びやくい
)
に
紫
(
むらさき
)
の
袴
(
はかま
)
を
着
(
ちやく
)
し、
247
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
静坐
(
せいざ
)
し、
248
手
(
て
)
を
組
(
く
)
んだ。
249
又
(
また
)
もや
身体
(
しんたい
)
震動
(
しんどう
)
して、
250
大霜
(
おほしも
)
『われこそは
官幣
(
くわんぺい
)
大社
(
たいしや
)
住吉
(
すみよし
)
神社
(
じんじや
)
の
一
(
いち
)
の
眷族
(
けんぞく
)
、
251
大霜
(
おほしも
)
天狗
(
てんぐ
)
であるぞよ。
252
相場
(
さうば
)
の
事
(
こと
)
なら
何
(
なん
)
でも
聞
(
き
)
かしてやらう』
253
と
大声
(
おほごゑ
)
で
怒鳴
(
どな
)
り
立
(
た
)
てた。
254
元市
(
もといち
)
は
飛付
(
とびつ
)
くやうにして、
255
頭
(
あたま
)
を
畳
(
たたみ
)
にすりつけ
乍
(
なが
)
ら、
256
膝
(
ひざ
)
近
(
ちか
)
くまですり
寄
(
よ
)
り、
257
元市
(
もといち
)
『ハイ、
258
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
259
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
門
(
もん
)
一杯
(
いつぱい
)
人
(
ひと
)
が
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
りますから、
260
どうぞ
低
(
ひく
)
い
声
(
こゑ
)
で
仰
(
おつ
)
しやつて
下
(
くだ
)
さいませ。
261
私
(
わたくし
)
も
折入
(
をりい
)
つて
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
が
御座
(
ござ
)
いますから……』
262
大霜
(
おほしも
)
小
(
ちひ
)
さい
声
(
こゑ
)
で、
263
大霜
(
おほしも
)
『ヨシ
分
(
わか
)
つた、
264
何
(
な
)
ンなつと
聞
(
き
)
いてやらう。
265
大方
(
おほかた
)
五万
(
ごまん
)
円
(
ゑん
)
の
金
(
かね
)
を
相場
(
さうば
)
に
勝
(
か
)
たしてくれいと
申
(
まを
)
すのだらう』
266
元市
(
もといち
)
『ハイ、
267
御
(
お
)
察
(
さつ
)
しの
通
(
とほ
)
り
五万
(
ごまん
)
円
(
ゑん
)
の
金
(
かね
)
の
必要
(
ひつえう
)
が
起
(
おこ
)
りました。
268
何
(
なん
)
とマアあなた
様
(
さま
)
は、
269
私
(
わたくし
)
の
心
(
こころ
)
を
御存
(
ごぞん
)
じで
御座
(
ござ
)
います。
270
疑
(
うたがひ
)
もなき
天狗
(
てんぐ
)
様
(
さま
)
、
271
これから
家内中
(
かないぢう
)
が
打揃
(
うちそろ
)
うて、
272
村
(
むら
)
の
奴
(
やつ
)
が
何
(
なん
)
と
申
(
まを
)
さう
共
(
とも
)
信仰
(
しんかう
)
を
致
(
いた
)
しますから、
273
どうぞ
米
(
こめ
)
の
上
(
あが
)
り
下
(
さ
)
がりをハツキリ
知
(
し
)
らして
下
(
くだ
)
さりませ』
274
大霜
(
おほしも
)
『ヨシ、
275
俺
(
おれ
)
は
生前
(
せいぜん
)
に
於
(
おい
)
て
坂井
(
さかゐ
)
伝三郎
(
でんざぶらう
)
といふ
堂島
(
だうじま
)
の
相場師
(
さうばし
)
であつた。
276
相場
(
さうば
)
の
為
(
ため
)
に
財産
(
ざいさん
)
をなくした
位
(
くらゐ
)
だから、
277
神界
(
しんかい
)
に
於
(
おい
)
ても
相場
(
さうば
)
に
詳
(
くは
)
しいので、
278
其
(
その
)
方面
(
はうめん
)
の
守護
(
しゆご
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
ゐ
)
る
神
(
かみ
)
だ。
279
つまり
言
(
い
)
はば
専門家
(
せんもんか
)
だ、
280
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
負
(
まけ
)
た
丈
(
だけ
)
の
金
(
かね
)
は
其
(
その
)
方
(
はう
)
に
勝
(
か
)
たしてやつても、
281
別
(
べつ
)
に
社会
(
しやくわい
)
の
科
(
とが
)
にもなるまい。
282
五万
(
ごまん
)
円
(
ゑん
)
などとそんな
吝嗇臭
(
けちくさ
)
い
事
(
こと
)
申
(
まを
)
すな。
283
八十
(
はちじふ
)
万
(
まん
)
円
(
ゑん
)
勝
(
か
)
たしてやらう、
284
どうぢや
嬉
(
うれ
)
しいか?』
285
元市
(
もといち
)
『ハイ、
286
嬉
(
うれ
)
しう
御座
(
ござ
)
います』
287
大霜
(
おほしも
)
『
其
(
その
)
八十
(
はちじふ
)
万
(
まん
)
円
(
ゑん
)
の
金
(
かね
)
を
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れたら
如何
(
どう
)
する
積
(
つも
)
りだ』
288
元市
(
もといち
)
『ハイ、
289
申
(
まを
)
す
迄
(
まで
)
もなく、
290
曽我部
(
そがべ
)
村
(
むら
)
を
全部
(
ぜんぶ
)
買収
(
ばいしう
)
し、
291
五万
(
ごまん
)
円
(
ゑん
)
がとこ
林
(
はやし
)
を
買
(
か
)
うて、
292
其処
(
そこ
)
を
天狗
(
てんぐ
)
さまの
公園
(
こうゑん
)
となし、
293
残
(
のこ
)
り
七十五
(
しちじふご
)
万
(
まん
)
円
(
ゑん
)
はマア
一寸
(
ちよつと
)
考
(
かんが
)
へさして
頂
(
いただ
)
きませう』
294
大霜
(
おほしも
)
『
七十五
(
しちじふご
)
万
(
まん
)
円
(
ゑん
)
の
財産家
(
ざいさんか
)
となつて
羽振
(
はぶり
)
を
利
(
き
)
かす
考
(
かんが
)
へだらう。
295
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
其
(
その
)
金
(
かね
)
が
手
(
て
)
に
入
(
い
)
つたならば、
296
立派
(
りつぱ
)
な
家
(
いへ
)
を
建築
(
けんちく
)
し、
297
妾
(
めかけ
)
をおいて、
298
栄耀
(
えいえう
)
栄華
(
えいぐわ
)
に
暮
(
くら
)
さうといふ、
299
今
(
いま
)
から
考
(
かんが
)
へを
持
(
も
)
つて
居
(
を
)
らうがなア。
300
余
(
あま
)
り
贅沢
(
ぜいたく
)
になると
酒色
(
しゆしよく
)
に
耽
(
ふけ
)
つて
衛生
(
ゑいせい
)
上
(
じやう
)
面白
(
おもしろ
)
くない、
301
身体
(
しんたい
)
衰弱
(
すゐじやく
)
して
短命
(
たんめい
)
になる。
302
又
(
また
)
女房
(
にようばう
)
のあるのに
妾
(
めかけ
)
などを
置
(
お
)
けば、
303
家内
(
かない
)
が
常
(
つね
)
にもめる
道理
(
だうり
)
だ。
304
一層
(
いつそう
)
の
事
(
こと
)
、
305
今
(
いま
)
の
貧乏
(
びんばふ
)
の
方
(
はう
)
が
却
(
かへつ
)
て
幸福
(
かうふく
)
かも
知
(
し
)
れないぞ。
306
そうなると、
307
却
(
かへつ
)
て
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
が
仇
(
あだ
)
となるから、
308
五万
(
ごまん
)
円
(
ゑん
)
丈
(
だけ
)
にして
置
(
お
)
かうか』
309
元市
(
もといち
)
『メヽ
滅相
(
めつさう
)
な、
310
神
(
かみ
)
さまの
言
(
ことば
)
に
二言
(
にごん
)
はないと
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
ります。
311
あなたこそ
神
(
かみ
)
さまとなれば、
312
お
金
(
かね
)
の
必要
(
ひつえう
)
は
御座
(
ござ
)
りますまいが、
313
肉体
(
にくたい
)
のある
以上
(
いじやう
)
は
金
(
かね
)
は
必要
(
ひつえう
)
です。
314
七十五
(
しちじふご
)
万
(
まん
)
円
(
ゑん
)
の
内
(
うち
)
、
315
十万
(
じふまん
)
円
(
ゑん
)
丈
(
だけ
)
は
私
(
わたくし
)
が
頂戴
(
ちやうだい
)
致
(
いた
)
しまして、
316
後
(
あと
)
の
六十五
(
ろくじふご
)
万
(
まん
)
円
(
ゑん
)
は
駅逓局
(
えきていきよく
)
へ
預
(
あづ
)
けたり、
317
慈善
(
じぜん
)
事業
(
じげふ
)
に
寄附
(
きふ
)
したり、
318
社会
(
しやくわい
)
の
為
(
ため
)
に
使
(
つか
)
ひます』
319
大霜
(
おほしも
)
『それも
結構
(
けつこう
)
だが、
320
神
(
かみ
)
さまのお
道
(
みち
)
の
為
(
ため
)
に
使
(
つか
)
はうといふ
気
(
き
)
はないか』
321
元市
(
もといち
)
『ハイ、
322
神
(
かみ
)
さまの
方
(
はう
)
は
五万
(
ごまん
)
円
(
ゑん
)
御
(
お
)
約束
(
やくそく
)
の
通
(
とほ
)
り、
323
チヤンときまつて
居
(
を
)
ります』
324
大霜
(
おほしも
)
『アハヽヽヽ、
325
そんならそうでも
宜
(
よ
)
からうが、
326
相場
(
さうば
)
をする
基本金
(
きほんきん
)
は
如何
(
どう
)
して
拵
(
こしら
)
へるか』
327
元市
(
もといち
)
『ハイ
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り、
328
スツカリ
貧乏
(
びんばふ
)
を
致
(
いた
)
しまして、
329
最早
(
もはや
)
一
(
いち
)
円
(
ゑん
)
の
金
(
かね
)
も
貸
(
か
)
してくれる
者
(
もの
)
もありませぬので、
330
此
(
この
)
資本
(
もとで
)
を
神
(
かみ
)
さまの
御
(
ご
)
厄介
(
やくかい
)
に
預
(
あづか
)
つて
貸
(
か
)
して
頂
(
いただ
)
きたいもので
御座
(
ござ
)
います』
331
大霜
(
おほしも
)
『ヨシ、
332
そんなら
小判
(
こばん
)
の
埋蔵所
(
まいざうしよ
)
を
知
(
し
)
つて
居
(
を
)
るから、
333
それを
其
(
その
)
方
(
はう
)
に
明示
(
めいじ
)
してやらう。
334
誰
(
たれ
)
にも
言
(
い
)
つてはならぬぞ。
335
乍併
(
しかしながら
)
此
(
この
)
金
(
かね
)
は
山奥
(
やまおく
)
に
埋
(
うづ
)
めてあるから、
336
其
(
その
)
方
(
はう
)
が
行
(
ゆ
)
かいでも、
337
此
(
この
)
神主
(
かむぬし
)
の
肉体
(
にくたい
)
を
使
(
つか
)
うて
掘
(
ほ
)
りにやらすから、
338
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
るが
宜
(
よ
)
からう』
339
元市
(
もといち
)
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う、
340
いくら
隠
(
かく
)
してあるか
知
(
し
)
りませぬが、
341
一人
(
ひとり
)
では
途中
(
とちう
)
が
危
(
あぶ
)
なう
御座
(
ござ
)
います。
342
もし
賊
(
ぞく
)
にでも
出会
(
であ
)
うたら
大変
(
たいへん
)
ですから、
343
どうぞ
私
(
わたし
)
一人
(
ひとり
)
丈
(
だけ
)
はお
供
(
とも
)
にやつて
下
(
くだ
)
さいな』
344
大霜
(
おほしも
)
『ならぬ ならぬ、
345
其
(
その
)
金
(
かね
)
は
一寸
(
ちよつと
)
百万
(
ひやくまん
)
円
(
ゑん
)
ばかり
小判
(
こばん
)
で
隠
(
かく
)
してあるが、
346
其
(
その
)
方
(
はう
)
に
其
(
その
)
所在
(
ありか
)
を
知
(
し
)
らすと、
347
又
(
また
)
悪
(
わる
)
い
精神
(
せいしん
)
を
出
(
いだ
)
し、
348
体主
(
たいしゆ
)
霊従
(
れいじう
)
におちてはならないに
依
(
よ
)
つて、
349
先
(
ま
)
ず
一万
(
いちまん
)
円
(
ゑん
)
計
(
ばか
)
り
資本
(
しほん
)
に、
350
此
(
この
)
肉体
(
にくたい
)
に
掘
(
ほ
)
らしてくる。
351
キツと
従
(
つ
)
いて
来
(
く
)
る
事
(
こと
)
はならぬぞ』
352
元市
(
もといち
)
『そんなら
伜
(
せがれ
)
の
宇一
(
ういち
)
をお
供
(
とも
)
をさしますから、
353
それ
丈
(
だけ
)
許
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さい』
354
大霜
(
おほしも
)
『イヤそれも
成
(
な
)
らぬ。
355
此
(
この
)
神主
(
かむぬし
)
の
肉体
(
にくたい
)
を
神
(
かみ
)
が
勝手
(
かつて
)
に
使
(
つか
)
うて
掘
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
して
来
(
く
)
る。
356
其
(
その
)
方
(
はう
)
の
改心
(
かいしん
)
次第
(
しだい
)
に
依
(
よ
)
つて
渡
(
わた
)
してやる』
357
元市
(
もといち
)
『ハイ
承知
(
しようち
)
いたしました。
358
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ。
359
メツタに
慢心
(
まんしん
)
する
気遣
(
きづか
)
ひは
御座
(
ござ
)
いませぬ。
360
ズントズント
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
から
改心
(
かいしん
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ります』
361
喜楽
(
きらく
)
は
自分
(
じぶん
)
の
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
から
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
一々
(
いちいち
)
残
(
のこ
)
らず
傍聴
(
ばうちやう
)
し、
362
又
(
また
)
元市
(
もといち
)
の
言
(
ことば
)
も
聞
(
き
)
いて
可笑
(
おか
)
しくてたまらず……ナアにそんな
金
(
かね
)
があるものか……と
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
で
思
(
おも
)
つて
仕方
(
しかた
)
がなかつた。
363
大霜
(
おほしも
)
『
神
(
かみ
)
は
最早
(
もはや
)
引取
(
ひきと
)
るぞよ。
364
此
(
この
)
肉体
(
にくたい
)
を
大先生
(
だいせんせい
)
と
崇
(
あが
)
めて
大切
(
たいせつ
)
に
致
(
いた
)
せよ。
365
ドスス、
366
ウン』
367
と
飛
(
と
)
び
上
(
あ
)
がり、
368
憑霊
(
ひようれい
)
は
忽
(
たちま
)
ち
肉体
(
にくたい
)
を
離
(
はな
)
れて
了
(
しま
)
つた。
369
元市
(
もといち
)
『あゝ
大先生
(
だいせんせい
)
、
370
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
はんで
御座
(
ござ
)
いました。
371
どうぞ
体
(
からだ
)
を
大切
(
たいせつ
)
にして
下
(
くだ
)
さいや。
372
大変
(
たいへん
)
な
結構
(
けつこう
)
な
御
(
お
)
神徳
(
かげ
)
を
頂
(
いただ
)
きました』
373
喜楽
(
きらく
)
『
私
(
わたくし
)
も
聞
(
き
)
いてゐましたが、
374
あんな
甘
(
うま
)
い
事
(
こと
)
大霜
(
おほしも
)
サンが
言
(
い
)
はれたけれど、
375
嘘
(
うそ
)
ぢやなからうかと、
376
心配
(
しんぱい
)
でなりませぬワ』
377
元市
(
もといち
)
は
首
(
くび
)
を
左右
(
さいう
)
に
振
(
ふ
)
り、
378
元市
(
もといち
)
『
大先生
(
だいせんせい
)
、
379
そんな
勿体
(
もつたい
)
ないことを
言
(
い
)
ふもんぢやありませぬ。
380
天狗
(
てんぐ
)
サンは
一割
(
いちわり
)
正直
(
しやうぢき
)
な
御
(
お
)
方
(
かた
)
ですから、
381
嘘
(
うそ
)
を
仰
(
おつ
)
しやる
気遣
(
きづかひ
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ。
382
アー
之
(
こ
)
れで
私
(
わし
)
の
運
(
うん
)
も
開
(
ひら
)
きかけた』
383
とニコニコしてゐる。
384
其
(
その
)
日
(
ひ
)
は
何
(
なん
)
となく
吾
(
わが
)
家
(
や
)
へ
帰
(
かへ
)
りたくなつたので、
385
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りに
自宅
(
じたく
)
へ
帰
(
かへ
)
ることとなつた。
386
(
大正一一・一〇・九
旧八・一九
松村真澄
録)
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