霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第九章 (うし)(くそ)〔一〇二一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第37巻 舎身活躍 子の巻 篇:第2篇 青垣山内 よみ(新仮名遣い):あおがきやまうち
章:第9章 牛の糞 よみ(新仮名遣い):うしのくそ 通し章番号:1021
口述日:1922(大正11)年10月09日(旧08月19日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年3月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
元市は修行場の貸し出しを謝絶し、自分のことをののしり始めた。静子を中村から引き戻し、高子はそのまま中村で神がかりの修行をしていた。一方で息子の宇一は親父の目を盗んでまた喜楽のところへ出入りし始めた。
するとまた大霜天狗が喜楽にかかり、口を切って宇一に席払いを命じた。宇一は審神者気取りになって、前回の小判堀りの失敗をとがめたてた。
大霜は、改心ができていないから戒めを与えたのだ、と返した。そして改心ができたらいくらでも金を与えてやる、というと、宇一は必要だから欲しいのだ、と食いついてきた。
宇一は、父親が相場で財産を失くして肩身が狭い思いをしているから、それを埋め合わせるお金をもらえたら喜んで信仰します、とお金をねだった。大霜は殊勝な心がけに免じて十万円を与えると、大店の番頭が財布を落とした場所を託宣した。
これを聞いて宇一は大霜のいうとおり禊や祝詞を一生懸命上げ、喜楽に早く行こうとせきたてた。自分は、大霜の言うことは本当のようには思われない、と愚痴を言ったが、宇一はお金の話に乗り気で、信仰を盾に喜楽を促した。
二人は大霜に言われた峠道を下りてきた。暗闇の中に、財布のような黒いものが落ちていたので、二人はそれに手をかけた。財布と思ったのは、牛の糞であった。
宇一はがっかりして、もう神懸りはやめようと喜楽に言った。二人は力なく穴太に帰ってきた。
こうして神様は天狗を使い、自分たちの執着を根底から払拭し去り真の神柱としてやろうと思し召し、いろいろと工夫をこらしてくださったのだと二十年ほど経って気が付いた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-10-20 13:31:11 OBC :rm3709
愛善世界社版:113頁 八幡書店版:第7輯 72頁 修補版: 校定版:119頁 普及版:55頁 初版: ページ備考:
001 斎藤(さいとう)元市(もといち)()大霜(おほしも)天狗(てんぐ)託宣(たくせん)のがらりと(はづ)れたのに愛想(あいさう)をつかし、002修業場(しうげふば)()すことを謝絶(しやぜつ)し、003それきり自分(じぶん)(はう)へは見向(みむ)きもせなくなつたのみならず、004大先生(だいせんせい)』と、005(しばら)(あが)めてゐた喜楽(きらく)に『泥狸(どぶだぬき)006(たぬき)007野天狗(のてんぐ)008気違(きちがひ)』と(ののし)(はじ)めた。009そして自分(じぶん)(つま)(いもうと)のチンコの静子(しづこ)を、010中村(なかむら)修業場(しうげふば)から引張(ひつぱり)(かへ)り、011園部(そのべ)下司(げし)熊吉(くまきち)といふ博奕打(ばくちうち)稲荷下(いなりさ)げをする(をとこ)女房(にようばう)にやつて(しま)つた。012十三(じふさん)(さい)高子(たかこ)(はう)神懸(かむがか)りが面白(おもしろ)いので、013中村(なかむら)多田(ただ)(かめ)(うち)修業(しうげふ)をして()た。014宇一(ういち)(おやぢ)()(しの)んで、015そろそろ喜楽(きらく)(たく)出入(でい)りを(はじ)めた。016そして(かみ)(みち)覚束(おぼつか)なげに研究(けんきう)してゐた。
017 奥山(おくやま)失敗(しつぱい)して(かへ)つてから、018五日目(いつかめ)()さであつた。019(また)もや大霜(おほしも)天狗(てんぐ)サンが、020五日間(いつかかん)沈黙(ちんもく)(やぶ)つて、021(はら)(なか)からグルグルと()(のぼ)り、022喉元(のどもと)()()なり(はじ)めた。023喜楽(きらく)はヤア(また)かと、024迷惑(めいわく)してゐると、025(かみなり)のやうな(おほ)きな(こゑ)で、
026大霜(おほしも)(この)(はう)住吉(すみよし)眷族(けんぞく)大霜(おほしも)であるぞよ。027男山(をとこやま)眷族(けんぞく)小松林(こまつばやし)命令(めいれい)()つて、028(ふたた)びここに(あら)はれ、029(その)(はう)申渡(まをしわた)すことがあるから、030シツカリ()くがよいぞ。031宇一(ういち)(しばら)(せき)(とほ)ざけたがよからう』
032 宇一(ういち)審神者(さには)気取(きど)りになり、
033宇一(ういち)『コレ大霜(おほしも)天狗(てんぐ)サン、034(あま)(ひと)馬鹿(ばか)にしなさるな。035奥山(おくやま)(かね)()けてあるなんて、036()うそんな出放題(ではうだい)()へましたなア、037モウこれからお(まへ)()ふことは一言(ひとこと)()きませぬで……オイ喜楽(きらく)038チとシツカリせぬと()かんぜ。039(まへ)(くち)から()ふのぢやないか、040余程(よほど)()()けぬと気違(きちがひ)になつて(しま)うぞ。041……オイ大霜(おほしも)042これでも(かみ)(まを)すことに二言(にごん)がないといふか。043八十(はちじふ)(まん)(ゑん)なんて駄法螺(だぼら)()きやがつて、044(おれ)たち親子(おやこ)馬鹿(ばか)にしやがつたな』
045大霜(おほしも)八十(はちじふ)(まん)(ゑん)でも八百万(はつぴやくまん)(ゑん)でも(その)(はう)心次第(こころしだい)(あた)へてやる。046まだ改心(かいしん)出来(でき)ぬから、047(まこと)のことが()うてやれぬのだ。048(かね)(よく)(はな)れたら(いく)らでも(かね)(あた)へてやる』
049宇一(ういち)(かね)必要(ひつえう)があるから()しくなるのです。050(たれ)だつて必要(ひつえう)のない(もの)()しいことはありませぬ、051()しくない(かね)なら()りませぬワイ。052石瓦(いしかはら)同然(どうぜん)だから、053(かね)()しがらぬ(やつ)には(かね)をやらう、054()しがる(やつ)にはやらぬといふ意地(いぢ)(わる)(かみ)がどこにあるか、055チツと(かんが)へなさい。056審神者(さには)()をつけます』
057大霜(おほしも)『そんならこれから(かみ)改心(かいしん)して、058()しがる(やつ)にチツと(ばか)(あた)へてやらう』
059宇一(ういち)『ハイ、060(わたし)(べつ)必要(ひつえう)(ござ)いませぬが、061(うち)(おやぢ)先祖(せんぞ)からの財産(ざいさん)相場(さうば)でスツクリ()くして(しま)つたものですから、062親類(しんるゐ)からはいろいろ攻撃(こうげき)せられ、063あの養子(やうし)ようしぢやない、064わるうしだと(ひと)()はれるのが残念(ざんねん)ぢやと()やんで()ります。065(あま)(よく)(こと)(まを)しませぬから、066(もと)身上(しんじやう)になる(ところ)(まで)(かね)(あた)へてやつて(くだ)さい。067そしたら(おやぢ)(よろこ)んで信仰(しんかう)いたします。068(この)(ごろ)大霜(おほしも)サンが喜楽(きらく)にうつつて(だま)しやがつたと()つて(おこ)つてゐます。069それ(ゆゑ)(わたし)(おやぢ)内証(ないしよう)で、070()うして(かみ)さまの御用(ごよう)をさして(もら)はうと勉強(べんきやう)して()るので(ござ)います』
071大霜(おほしも)『お(まへ)(おや)似合(にあ)はぬ殊勝(しゆしよう)(やつ)だ、072それ(だけ)心掛(こころがけ)があらば結構(けつこう)だ。073そんならこれから(かね)所在(ありか)本当(ほんたう)()らしてやる、074(けつ)して(うたが)ふではないぞ。075(さき)(だま)されたから今度(こんど)(うそ)だらうと、076そんな(うたがひ)(おこ)さうものなら、077(また)もや金銀(きんぎん)(はい)つた財布(さいふ)牛糞(うしくそ)()けるか()れぬぞ、078よいか!』
079宇一(ういち)(けつ)して(かみ)さまのお(ことば)(はじ)めから(うたが)うて()るのぢや(ござ)いませぬが、080(この)(あひだ)(やう)(かみ)(さま)から間違(まちが)はされると、081(また)しても(だま)されるのぢやないかと、082自然(しぜん)(こころ)がひがみまして、083一寸(ちよつと)(ばか)(うたがひ)(おこ)つて(まゐ)ります』
084大霜(おほしも)『それが大体(だいたい)(わる)いのだ。085綺麗(きれい)サツパリと改心(かいしん)をいたして、086(この)(はう)(まを)すことを(いち)から(じふ)(まで)(しん)ずるのだぞ』
087宇一(ういち)『ハイ、088一点(いつてん)(うたがひ)をさし(はさ)みませぬから、089()げを(ねが)ひます』
090大霜(おほしも)『そんなら()つてやらう、091一万(いちまん)(りやう)でよいか』
092宇一(ういち)『ハイ、093当分(たうぶん)一万(いちまん)(りやう)あれば、094さぞ(おやぢ)(よろこ)ぶこつて(ござ)りませう』
095大霜(おほしも)(その)一万(いちまん)(りやう)如何(どう)する(つも)りだ。096天狗(てんぐ)公園(こうゑん)(さき)にするか、097自分(じぶん)目的(もくてき)相場(さうば)(はう)にかかるか、098(その)先決(せんけつ)問題(もんだい)からきめておかねば()うてやる(こと)出来(でき)ぬワイ』
099宇一(ういち)『ハイ、100そこは(かみ)さまにお(まか)(いた)します。101()命令(めいれい)(どほ)りになりますから……』
102大霜(おほしも)『そんなら()つてやらう、103よつく()け! 葦野山(あしのやま)(たうげ)二町(にちやう)(ばか)西(にし)()りかけた(ところ)道端(みちばた)(くさむら)に、104十万(じふまん)(ゑん)這入(はい)つた(おほ)きな(いろ)(くろ)財布(さいふ)がおちてゐる。105それは(こう)(いけ)番頭(ばんとう)京都(きやうと)銀行(ぎんかう)から取出(とりだ)して、106大阪(おほさか)(かへ)途中(とちう)泥坊(どろばう)用心(ようじん)にと、107ワザと(みち)(てん)じて葦野山(あしのやま)(たうげ)()えた(ところ)108泥坊(どろばう)(やつ)109チヤンと先廻(さきまは)りを(いた)し、110葦野山(あしのやま)(たうげ)()つてゐた。111それとも()らず番頭(ばんとう)は、112百円札(ひやくゑんさつ)一千(いつせん)(まい)都合(つがふ)十万(じふまん)(ゑん)()つて、113葦野山(あしのやま)(たうげ)をスタスタと(のぼ)り、114(よる)十二(じふに)()(ごろ)(とほ)つた(ところ)を、115泥棒(どろばう)(もの)をも()はず、116(あと)からグーイと()つたくり、117()つて()(やう)(いた)すのを、118(この)大天狗(だいてんぐ)大喝(だいかつ)一声(いつせい)……曲者(くせもの)!……と()(うへ)から呶鳴(どな)りつけた(ところ)119泥棒(どろばう)一生(いつしやう)懸命(けんめい)()()す、120番頭(ばんとう)生命(いのち)カラガラ能勢(のせ)方面(はうめん)()げて()く。121アヽ大切(たいせつ)主人(しゆじん)(かね)泥棒(どろばう)()られて、122如何(どう)申訳(まをしわけ)があらう、123一層(いつそう)(いけ)()()げて申訳(まをしわけ)をせうと、124(いま)(おほ)きな(いけ)のふちにウロウロしてゐる(ところ)だ。125それをどうぞして(たす)けてやらうと、126(この)(はう)眷族(けんぞく)間配(まくば)つて守護(しゆご)(いた)して()るから、127()今晩(こんばん)大丈夫(だいぢやうぶ)だが、128(いづ)彼奴(あいつ)(かね)()ない以上(いじやう)()ぬに(ちが)ひない、129それ(ゆゑ)(その)(はう)(その)(かね)(ひろ)ひ、130(その)(すぢ)(とど)けたなら規則(きそく)として一割(いちわり)(もら)へるのだ、131一割(いちわり)でも一万(いちまん)(ゑん)になる、132サア(はや)()け!』
133宇一(ういち)『それは何時(いつ)(ぞく)()ましたので(ござ)いますか?』
134大霜(おほしも)今晩(こんばん)十二(じふに)()(ごろ)()たのだ』
135宇一(ういち)一寸(ちよつと)()つて(くだ)さい、136まだ午後(ごご)()()御座(ござ)います。137()()れて()らぬのに、138今晩(こんばん)十二(じふに)()(ぞく)()たとは、139そら昨夜(さくや)間違(まちが)ひと(ちが)ひますか?』
140大霜(おほしも)『ナニ今晩(こんばん)間違(まちがひ)ない、141(かみ)過去(くわこ)142現在(げんざい)143未来(みらい)(ひと)つに()()くのだ。144(さき)()()(こと)()らぬ(やう)では(かみ)とは(まを)さぬぞよ。145サア(はや)()け、146グヅグヅして()ると番頭(ばんとう)寿命(じゆめう)がなくなるばかりか、147十万(じふまん)(ゑん)(かね)(また)(ほか)(やつ)(ひろ)はれて(しま)へば、148メツタに()()(ため)しがない』
149宇一(ういち)葦野山(あしのやま)(たうげ)(わづか)(いち)()(ばか)りの(ところ)です。150(いま)から()きましたら(ろく)()には()きます。151(ろく)時間(じかん)()つて()るのですか?』
152大霜(おほしも)『オウそうぢや、153(まへ)肉体(にくたい)()つた現界(げんかい)人間(にんげん)だ、154神界(しんかい)(おな)調子(てうし)には()かぬワイ、155そんなら十二(じふに)()(ぞく)()(かね)()るのだから、156(あま)早過(はやす)ぎてもいかず、157遅過(おそす)ぎてもいかぬから、158此処(ここ)十一(じふいち)時半(じはん)()つて()け、159そうすれば丁度(ちやうど)都合(つがふ)がよからう』
160宇一(ういち)最前(さいぜん)(まを)した(やう)(けつ)して(うたがひ)(いた)しませぬけれど、161もし間違(まちが)つたら如何(どう)して(くだ)さいますか?』
162大霜(おほしも)間違(まちが)うと(おも)ふなら()かぬがよかろ、163(あと)不足(ふそく)()くのは面倒(めんだう)だから、164一層(いつそ)(こと)喜楽(きらく)一人(ひとり)()くがよい、165一万(いちまん)(ゑん)謝金(しやきん)(その)(はう)自由(じいう)使(つか)うたが()からうぞ』
166宇一(ういち)『もし大霜(おほしも)さま、167(この)(あひだ)(やう)喜楽(きらく)(だけ)()きますと、168不結果(ふけつくわ)(をは)るかも()れませぬ。169(わたし)一緒(いつしよ)()らつて()つたら如何(どう)ですか?』
170大霜(おほしも)『それも()からう。171それまでに(みづ)三百(さんびやく)三十三(さんじふさん)(ばい)(あたま)からかぶり神言(かみごと)五十遍(ごじつぺん)()げよ。172そうすればこれから丁度(ちやうど)十一(じふいち)時半(じはん)(まで)時間(じかん)がかかる、173それから()つたがよからう。174(かみ)(これ)から引取(ひきと)るぞよ』
175 ドスンと飛上(とびあが)り、176(たたみ)(ひび)かせ(しづ)まつて(しま)つた。177宇一(ういち)釣瓶(つるべ)三百(さんびやく)三十三(さんじふさん)(ばい)(みづ)をカブるのは苦痛(くつう)(たま)らず、178(ちひ)さい(しやく)で、179一杯(いつぱい)(みづ)(さん)しづく(ほど)()んで『(ひと)(ふた)(みつ)つ……』と()つて三百(さんびやく)三十三(さんじふさん)(ばい)かぶる真似(まね)をしてゐた。180祝詞(のりと)神言(かみごと)では(なが)いと()つて、181天津(あまつ)祝詞(のりと)()へて(もら)ひ、182(やうや)くにして五十遍(ごじつぺん)早口(はやぐち)(とな)へて(しま)ひ、
183宇一(ういち)『サア喜楽(きらく)184ソロソロ()かうぢやないか。185まだ()()()ぎだが、186道々(みちみち)修行(しうぎやう)したりなんかしもつて()けば、187丁度(ちやうど)よい時間(じかん)になるよ。188(おそ)いより(はや)いがましだからな』
189喜楽(きらく)『モウおかうかい、190おれは(なん)だか本当(ほんたう)のやうに(おも)はぬワ。191(また)(この)(あひだ)(やう)()()はされると馬鹿(ばか)らしいからな』
192宇一(ういち)羹物(あつもの)にこりて(なます)()くとはお(まへ)(こと)だ、193そう(かみ)さまだつて何遍(なんべん)(ひと)(もてあそ)びになさる(はず)がない、194(うたが)ふのが一番(いちばん)(わる)い、195(なん)でも唯々(いい)諾々(だくだく)として(これ)(めい)()(したが)ふと()ふのが、196信仰(しんかう)(みち)だ。197そんな(こと)()はずに()かうぢやないか』
198喜楽(きらく)(あま)(ひと)(わか)らぬよにしてをつてくれ。199もし失策(しくじ)つたら(また)次郎松(じろまつ)サンに村中(むらぢう)()(ある)かれると(こま)るからなア』
200 宇一(ういち)は『ヨシヨシ』と()(なが)ら、201(はや)くも(わが)茅家(あばらや)立出(たちい)でる。202喜楽(きらく)()いて、203田圃路(たんぼみち)辿(たど)天川村(てんがはむら)(みぎ)()て、204出山(いでやま)()え、205上佐伯(かみさへき)御霊(ごりやう)神社(じんじや)(もり)辿(たど)りつき、206(もり)(すぎ)()(かぶ)(こし)打掛(うちか)けて、207(よる)のボヤボヤした春風(はるかぜ)()()(なが)ら、208(ねむ)たいのを無理(むり)辛抱(しんばう)して、209時刻(じこく)(いた)るのを()つてゐた。
210 (いよいよ)十一(じふいち)()社務所(しやむしよ)時計(とけい)打出(うちだ)した。
211宇一『アヽモウ十一(じふいち)()だ、212(はや)()かう』
213宇一(ういち)(さき)()つ。214喜楽(きらく)(あと)からスタスタと(けは)しき葦野山(あしのやま)(たうげ)を、215七八丁(しちはつちやう)(ばか)(のぼ)つて()く。216(たうげ)茶屋(ちやや)山田屋(やまだや)()ふのがあつた。217まだ時刻(じこく)(はや)いので、218一寸(ちよつと)一服(いつぷく)して()かうと、219()(すき)から(なか)(のぞ)くと、220(この)五六軒(ごろくけん)よりかない(むら)(わか)(もの)が、221まだ(あそ)んでゐる。222……コリヤ(かへつ)都合(つがふ)(わる)い……と()(なが)ら、223(たうげ)右側(みぎがは)松林(まつばやし)(すす)()り、224(しばら)時刻(じこく)(いた)るを()つてゐる(あひだ)に、225二人(ふたり)(とも)グツスリ寝込(ねこ)んで(しま)つた。
226 フツと(さき)()()いたのは宇一(ういち)であつた。
227宇一(ういち)『オイ喜楽(きらく)228(はや)()きぬか、229(いま)一寸(ちよつと)(みち)(はう)(のぞ)いて()りたら、230(かみ)さまの()ふたやうに、231一人(ひとり)(くろ)(をとこ)が、232財布(さいふ)(やう)(もの)(かた)げて(とほ)りよつたぞ。233(また)(その)(あと)二人(ふたり)(をとこ)一町(いつちやう)ほど(はな)れて()きよつた。234ヤツパリ(かみ)(さま)(おつ)しやる(こと)(ちが)はぬワ。235丁度(ちやうど)(いま)財布(さいふ)をボツタクられてる(ところ)だ。236(あま)(はや)()くと(おれ)(たち)泥棒(どろばう)間違(まちが)へられて天狗(てんぐ)さまに(しか)られては大変(たいへん)だから、237ゆつくりして()かうだないか』
238(ちひ)さい(こゑ)(ささや)く。239喜楽(きらく)(こころ)(うち)は、240八分(はちぶ)まで(しん)ぜられない、241如何(どう)してもウソの(やう)()がする。242けれ(ども)二分(にぶ)(ばか)(なん)とはなしに希望(きばう)(いと)につながれてるやうな()がした。
243 そこで両人(りやうにん)(はやし)(なか)から街道(かいだう)()り、244(たうげ)二町(にちやう)ばかり(くだ)つて()ると、245一寸(ちよつと)(まが)(みち)がある。246ここに間違(まちが)ひないとよく()(ひか)らして()れば、247財布(さいふ)(やう)なものが(くろ)()ちてゐる。248二人(ふたり)()()()ツで()(くろ)(もの)()をかけると、249財布(さいふ)(おも)ふたのは(うし)(くそ)段塚(だんづか)であつた。
250 二人(ふたり)(あま)馬鹿(ばか)らしいので、251(たがひ)(なん)とも()はず、252まだ(ほか)()ちてるに(ちが)ひないと、253(よご)れた()をそこらの(くさ)にこすりつけ()()(なが)らガザリガザリと(くさ)(なか)(さが)して()た。254ここは(つね)から牛車(ぎうしや)一服(いつぷく)する場所(ばしよ)で、255路傍(みちばた)草原(くさはら)(うし)をつなぐ(ため)256どこにもかしこにも牛糞(うしくそ)だらけである。257……コラ此処(ここ)ではあるまい……と(また)一町(いつちやう)(ばか)(くだ)り、258そこら(ぢう)(さが)してみたが、259何一(なにひと)つおちてゐない。260念入(ねんい)りに葦野峠(あしのたうげ)西坂(にしさか)五六丁(ごろくちやう)(あひだ)(さが)してる(あひだ)に、261()はガラリと()けて(しま)つた。262宇一(ういち)失望(しつばう)落胆(らくたん)(あま)り、
263宇一(ういち)『オイ喜楽(きらく)264貴様(きさま)神懸(かむがか)りはサツパリ駄目(だめ)だ。265今度(こんど)(くそ)(つか)ましやがつただないか、266クソ忌々(いまいま)しい、267もうこんな(こと)(たれ)にもいふなよ。268(まへ)(くち)(かる)いから(こま)る。269そして今日(けふ)(かぎ)神懸(かむがか)りは()めようぢやないか』
270喜楽(きらく)『グヅグヅして()ると(かね)財布(さいふ)牛糞(うしぐそ)になると(かみ)さまが()ふたぢやないか。271モウ仕方(しかた)がない、272これも修業(しうげふ)ぢやと(おも)うて(あきら)めようかい』
273宇一(ういち)『サア(はや)()なう、274(たれ)出会(であ)うか()れやしない。275(あま)()つともよくないから……』
276()(なが)ら、277(ちから)なげに両人(りやうにん)穴太(あなを)(かへ)つて()た。
278 (かく)(ごと)くして(かみ)さまは天狗(てんぐ)使(つか)ひ、279自分(じぶん)()執着(しふちやく)根底(こんてい)より払拭(ふつしき)()り、280(しん)神柱(かむばしら)としてやらうと思召(おぼしめ)し、281いろいろと工夫(くふう)をおこらし(くだ)さつたのだと、282二十(にじふ)(ねん)(ほど)()つて()がついた。283それ(まで)時々(ときどき)(おも)()して、284馬鹿(ばか)らしくつて(たま)らなかつたのである。285あゝ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
286大正一一・一〇・九 旧八・一九 松村真澄録)

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