霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】サイトの全面改修に伴いサブスク化します。詳しくはこちらをどうぞ。(2023/12/19)
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第一二章 邪神(じやしん)(かかり)〔一〇二四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第37巻 舎身活躍 子の巻 篇:第2篇 青垣山内 よみ(新仮名遣い):あおがきやまうち
章:第12章 邪神憑 よみ(新仮名遣い):じゃしんかかり 通し章番号:1024
口述日:1922(大正11)年10月09日(旧08月19日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年3月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
喜楽は斎藤宇一を伴って、亀岡の伯母を訪問した。伯母は大の稲荷信者であり、天理教にもかぶれていた。いつも喜楽のことを甲斐性無しだとこきおろしていたのに、喜楽が祈祷で評判を取っているとなったら、打って変わって丁重に迎えて歓迎した。
しかし喜楽が神懸りのときに飯を食べないと聞くと、偽物だとののしり始めた。神懸りは人並みはずれて飯を食わないと本物とみなされない、という地方の迷信のためである。
宇一はそれを聞いて伯母の家を出て行ってしまった。喜楽も抜け出して、宇一に追いつく。そのまま、宇一の知り合いの別の稲利下げのところに調査に赴いた。
そうしたところ、小谷重吉という稲利下げは逆上して苦しんでいるという。重吉は世話役の馬吉や宇一を金縛りにして大声を上げて責め立て暴れていたが、喜楽が霊を送って霊縛した。
天の数歌で重吉を起こしたが、半分天狗に憑かれたまましゃべっている。問答している途中、裏口から飛び出し、どこかへ行ってしまった。後で聞けば、天狗が住んでいるという岩山に逃げ込んでいたという。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-10-21 15:54:16 OBC :rm3712
愛善世界社版:149頁 八幡書店版:第7輯 86頁 修補版: 校定版:156頁 普及版:73頁 初版: ページ備考:
001 喜楽(きらく)矢田(やだ)(たき)修行(しうぎやう)()つた(ついで)002(あさ)(はや)くから亀岡(かめをか)伯母(をば)亀岡町西竪に住んでいた伯母の岩崎ふさ(うち)一寸(ちよつと)訪問(はうもん)してみた。003伯母(をば)(だい)稲荷(いなり)信者(しんじや)であり、004(また)(その)(ころ)一寸(ちよつと)天理教(てんりけう)にもかぶれてゐた。005喜楽(きらく)神憑(かむがか)初版・愛世版は「神憑り」、校定版は「神懸り」。になつたといふことを()いて、006一度(いちど)(まゐ)つて()たく(おも)ふてゐた(さい)である。007斎藤(さいとう)宇一(ういち)(ともな)うて、008(その)()伯母(をば)(たづ)ねて()ると、009何時(いつ)も『喜楽坊(きらくばう)喜楽坊(きらくばう)』と()びずてにし、010『お(まへ)はチンコだ、011甲斐性(かひしやう)なしだ。012(うち)(せがれ)体格(たいかく)丈夫(ぢやうぶ)だし、013余程(よほど)(かしこ)い』などと、014クソカスにこきおろすのが(れい)であつた。015それに今度(こんど)()つて(かは)つて、016門口(もんぐち)這入(はい)るなり、017伯母(をば)()んで()て、
018伯母(をば)『モシモシ()(だい)(さま)019()()(くだ)さいました、020どうぞ座敷(ざしき)()(とほ)(くだ)さいまして、021()ゆるりとなさいませ、022(なん)なつと()註文(ちうもん)次第(しだい)()馳走(ちそう)(こしら)へて()げます。023()げが(よろ)しいか、024小豆飯(あづきめし)をたきませうか、025瓢箪(へうたん)さまの()(だい)さまが御座(ござ)ると甘鯛(ぐじ)一塩(ひとしほ)()きだと()ふて、026(なま)なり()つて(くだ)さる、027種油(たねあぶら)()つて(くだ)さる、028(かみ)さまによると、029石油(せきゆ)でも五合(ごがふ)(くらゐ)おあがりになる、030あなたは(なに)がお()きで御座(ござ)いますか、031(なん)なりと()註文(ちゆうもん)なさりませ、032(かみ)さまに()よう()(いただ)くほど気持(きもち)のよいことはありませぬ』
033とサツパリ稲荷下(いなりさ)げに(ひと)をして(しま)うてゐる。034喜楽(きらく)(くび)左右(さいう)()り、
035喜楽(きらく)伯母(をば)サン、036(わたし)(かみ)さまがうつつてもそんな(いや)しい(もの)()あがりにはなりませぬ、037富士(ふじ)(やま)天狗(てんぐ)さまが(うつ)つて御座(ござ)るのだから……』
038伯母(をば)天狗(てんぐ)さまなら(なほ)のこと、039()あがりなさらんならん、040いつも()(だい)さまに鞍馬山(くらまやま)魔王(まわう)さまがお(うつ)りになり、041(なん)でもかんでも()あがりになり(しま)ひにや瓢箪(へうたん)さままで()(うつ)りになつて、042よい(こゑ)(うた)(をど)らはると、043(なん)とも()へぬ気持(きもち)のよいものだ、044さうすると、045()(まへ)(かみ)さまは()んだ(かみ)さまだな、046(もの)()はぬから……』
047 何時(いつ)(たぬき)()せ、048(きつね)()せをやつて()伯母(をば)は、049神憑(かむがか)初版・愛世版は「神憑り」、校定版は「神がかり」。(なん)でもかんでも()べるものと(おも)ふて()るらしい。050亀岡(かめをか)附近(ふきん)では何時(いつ)迷信家(めいしんか)()つて、051稲荷下(いなりさ)げの()(だい)さまを(まね)いて()寒施行(かんせげやう)といふことをする。052(その)(とき)()(だい)になる(をんな)神仏(しんぶつ)混淆(こんかう)()(きやう)をとなへ、053御幣(ごへい)()つて……おれはどこの稲荷(いなり)だ……とか、054魔王(まわう)だとか、055五郎助(ごろすけ)だとか、056太郎八(たろはち)だとか、057(たぬき)までがやつて()て、058一生(いつしやう)懸命(けんめい)一人(ひとり)(くち)()れて(しま)ふ。059小豆飯(あづきめし)三升(さんぜう)(くらゐ)一遍(いつぺん)にケロリと(たひら)げ、060油揚(あぶらげ)五十(ごじふ)(まい)(くらゐ)()もなく()つて(しま)生節(なまぶし)十本(じつぽん)061蒲鉾(かまぼこ)二十(にじふ)(まい)062種油(たねあぶら)一升(いつしよう)063醤油(しやうゆ)五合(ごがふ)御飯(ごはん)にお(さけ)(ほとん)想像(さうざう)もつかぬ(ほど)(たひら)げて(しま)ひ、064そしてよい(こゑ)()して、065身軽(みがる)()うたり(をど)つたりする。066いよいよ(かみ)よせが()むと、067(もと)肉体(にくたい)(かへ)る。068すると(その)稲荷下(いなりさ)げは大抵(たいてい)(をんな)(おほ)いが、
069『あゝ大変(たいへん)(はら)がへりました。070御膳(ごぜん)をよばれませうか』
071自分(じぶん)から催促(さいそく)して、072一人前(いちにんまへ)以上(いじやう)()つて(しま)ふ。073かういふ神憑(かむがか)りでないと亀岡(かめをか)地方(ちはう)では()てはやされぬのである。074伯母(をば)はこの(でん)をいつも()()るから、075自分(じぶん)(かか)(かみ)さまは(なに)()はないと()つたら、
076伯母(をば)『ソラお(まへ)神経(しんけい)だ。077ヤツパリ(かみ)さまぢやない』
078などと()つて、079(また)態度(たいど)一変(いつぺん)し、
080伯母(をば)『コレ喜三(きさ)081よい加減(かげん)()をさまして、082(はや)(かへ)つて(もと)乳屋(ちちや)をしたり、083百姓(ひやくせう)をしなさい。084(まへ)がさうヒヨロヒヨロしてるとお(よね)がどん(だけ)心配(しんぱい)するか()れぬ。085(わし)がこれから旅籠町(はたごちやう)天理王(てんりわう)さまへ()れて()つて()祈祷(きたう)して(もら)つて()げよか』
086親切(しんせつ)(さう)()うてくれる。087宇一(ういち)はポカンとして二人(ふたり)問答(もんだう)()いてゐたが(なん)(おも)つたか、088(だま)つてポイと此家(ここ)()(しま)つた。089喜楽(きらく)宇一(ういち)()たのを(さいは)ひ、090伯母(をば)(うち)(うま)()()し、091穴太(あなを)(かへ)途中(とちう)092荒塚村(あらつかむら)(まへ)宇一(ういち)()ひつき、093それから(その)(あし)寺村(てらむら)重吉(ぢうきち)といふ稲荷下(いなりさ)げの(ところ)調(しら)べがてら()くこととなつた。
094 (やうや)くにして寺村(てらむら)小谷(こたに)重吉(ぢうきち)(うち)()いた。095並河(なみかは)馬吉(うまきち)といふ(をとこ)世話係(せわがかり)元締(もとじめ)をして()る。096宇一(ういち)馬公(うまこう)懇意(こんい)(なか)であつた。097それは親類(しんるゐ)関係(くわんけい)からである。098馬吉(うまきち)宇一(ういち)姿(すがた)()るなり、
099馬吉(うまきち)『ヤア宇一(ういち)サンか、100()()(くだ)さつた。101(いま)穴太(あなを)相談(さうだん)()かうと(おも)うて()つた(ところ)だ。102昨夜(ゆうべ)から神憑(かむがか)りが(はげ)しうて、103どうにも()うにも仕様(しやう)がない、104穴太(あなを)先生(せんせい)にしづめて(もら)はうかと(おも)つてゐた(ところ)だ。105どうやろなア、106()(くだ)さるだらうか』
107(たづ)ねて()る。108宇一(ういち)は、
109宇一(ういち)(この)(ひと)喜楽(きらく)サンだ、110(たの)んでみたがよからう』
111馬吉(うまきち)『それは(ねが)うてもないこと、112イヤ失礼(しつれい)しました。113あなたが喜楽(きらく)サンで御座(ござ)いましたか、114何分(なにぶん)(よろ)しう()願申(ねがひまを)します、115サア何卒(どうぞ)(おく)()(とほ)(くだ)さい』
116 瓦葺(かはらぶき)田舎(いなか)では()なり(おほ)きな(いへ)であつた。117馬吉(うまきち)案内(あんない)につれて二人(ふたり)(おく)(とほ)ると、118(つぎ)()(なん)とも()れぬ(めう)(うな)(ごゑ)(きこ)えてゐる。119馬吉(うまきち)一寸(ちよつと)(その)(こゑ)する(はう)()し、
120馬吉(うまきち)『モシ喜楽(きらく)先生(せんせい)(さま)121あの(とほ)二三(にさん)日前(にちまへ)から(うな)(とほ)しで御座(ござ)います。122今迄(いままで)二三十(にさんじふ)(にん)病人(びやうにん)(たす)けましたので、123(みな)(もの)がエライ(かみ)さまだと()うて信心(しんじん)してゐましたが一寸(ちよつと)調子(てうし)()つたと()えて、124逆上(ぎやくじやう)したのか、125取止(とりと)めのない(わけ)(わか)らぬことを、126あの(とほ)りベラベラ(さへづ)つて()ります。127どうかして(なほ)(はふ)御座(ござ)いますまいかな』
128心配(しんぱい)らしく(たづ)ねてゐる。129喜楽(きらく)(うつむ)いて()をくみ思案(しあん)にくれてゐる。
130宇一(ういち)二三(にさん)日前(にちまへ)からうなり()したか、131ソラ大方(おほかた)大天狗(だいてんぐ)(くち)()れかも()れんぞ、132ズイ(ぶん)(おれ)ンとこで(さん)週間(しうかん)修行(しうぎやう)した(とき)にも、133(いへ)がゴーゴー()る、134ゆすれる、135ソレはソレは大変(たいへん)なことがあつた。136(うち)(おやぢ)(おこ)つて、137喜楽(きらく)サンに修行場(しうぎやうば)をどつかへ()つて()てくれと呶鳴(どな)つた(くらゐ)大騒動(おほさうどう)だつた。138(その)(とき)(おれ)もズイ(ぶん)(きも)(つぶ)したが、139モウ神憑(かむがか)りに経験(けいけん)がついたので、140あの(くらゐ)(うな)(ごゑ)(なん)でもないワ。141喜楽(きらく)サンでなくても(おれ)(ひと)這入(はい)つてしづめて()てやらうか、142ナア喜楽(きらく)サン、143如何(どう)せうかな』
144喜楽(きらく)『マアやつて()い、145万一(まんいち)()けなかつたら、146(おれ)()るとせう』
147宇一(ういち)『ヨシ()た、148喜楽(きらく)サン、149ここに()つてゐてくれ……オイ(うま)サン、150(まへ)一所(いつしよ)()てくれ、151おれが(ひと)審神者(さには)をして天狗(てんぐ)(くち)をきるか、152もし悪神(わるがみ)であつたら霊縛(れいばく)をかけてやらう』
153確信(かくしん)あるものの(ごと)意気(いき)揚々(やうやう)として、154一寸(ちよつと)した廊下(らうか)をわたり、155二間建(ふたまだて)(はな)座敷(ざしき)の、156(うな)(ごゑ)のする(はう)()して(すす)んで()く。
157 (しばら)くすると大変(たいへん)甲声(かんごゑ)(ふと)いやつが(きこ)えて()た……ハテな野天狗(のてんぐ)(あら)はれて(くち)()つてるのだなア……と(おも)(なが)ら、158自分(じぶん)(ちや)()み、159二人(ふたり)(かへ)つて()るのを()つてゐたが、160何時(いつ)までたつても(かへ)つて()ない。161『ウンウン』と(うな)(こゑ)段々(だんだん)(はげ)しくなる。162(この)(いへ)(もの)はビツクリして、163(おな)(むら)親類(しんるゐ)(みんな)()げて()つて不在(ふざい)である。
164 ()(くれ)間近(まぢか)く、165座敷(ざしき)(すみ)はソロソロうす(ぐら)くなつて()た。166(ほそ)廊下(らうか)(わた)つて(こゑ)のする居間(ゐま)()つて()ると、167二人(ふたり)(とも)あべこべに霊縛(れいばく)にかかり、168ふンのびて(しま)ひ、169(その)(うへ)小谷(こたに)重吉(ぢうきち)神憑(かむがか)りになつたまま()(まる)(ひか)らせ、170妙見(めうけん)サンが波切丸(なみきりまる)宝剣(ほうけん)()()げたやうな恰好(かつかう)で、171力瘤(ちからこぶ)だらけの(うで)を、172赤裸(まつぱだか)になつて、173頭上(づじやう)片仮名(かたかな)のフの()(がた)にし、174(ひだり)()(にぎ)つて馬吉(うまきち)(あたま)をグイグイ(おさ)へつけ(なが)ら、
175重吉(ぢうきち)『コリヤ悪人(あくにん)(ども)176改心(かいしん)(いた)すかどうぢや、177きさまは(おれ)(ところ)女房(にようばう)何々(なになに)して()るだらう。178白状(はくじやう)せい、179コリヤ宇一(ういち)180貴様(きさま)(あま)(しやう)がよくないぞ、181鞍馬山(くらまやま)大僧正(だいそうぜう)(その)悪事(あくじ)をスツクリ調(しら)()げて制敗(せいばい)をしてやるのだ、182サア如何(どう)ぢや』
183()つては(あたま)をコツンとなぐる。184二人(ふたり)強直(きやうちよく)状態(じやうたい)となり、185(くび)(ばか)りふつて(こゑ)をも()()さず(くるし)んでゐた。186小谷(こたに)重吉(ぢうきち)神憑(かむがか)りは喜楽(きらく)姿(すがた)()るより、187二人(ふたり)(うへ)からツツと()りて叮嚀(ていねい)にキチンとすわり、
188重吉(ぢうきち)『これはこれは大先生(だいせんせい)さま、189()()(くだ)さいました。190(わたし)一体(いつたい)神憑(かむがか)りですやろか、191(ただし)()(ちが)うて()るのですやろか、192自分(じぶん)がてに合点(がてん)()きませぬ。193どうぞ(ひと)(しら)べて(くだ)さいな、194オホヽヽヽ』
195(いや)らしう(わら)ふ。196如何(どう)しても普通(ふつう)とは()えぬ。197そこで『ウーム!』と(ひと)鎮魂(ちんこん)をやつて()ると、198重吉(ぢうきち)(なん)感応(かんのう)もなく依然(いぜん)として(すわ)つて()る。199(れい)二人(ふたり)にかかつたと()え、200(にはか)二人(ふたり)強直(きやうちよく)状態(じやうたい)から(まぬ)がれ、201ムクムクと立上(たちあ)がり、202重吉(ぢうきち)左右(さいう)責寄(せめよ)つて、203宇一(ういち)(ひだり)()を、204馬吉(うまきち)(みぎ)()をグツと(うしろ)へまはし、205手早(てばや)手拭(てぬぐひ)(くく)らうとする。
206喜楽(きらく)『オイそんな乱暴(らんばう)なことしちや()かぬ、207()()て、208コリヤ神憑(かむがかり)だから、209本人(ほんにん)(わる)いのぢやない、210そして(おれ)がここへ()以上(いじやう)は、211キツとあばれささぬから、212(その)()(はな)してやれ』
213馬吉(うまきち)今日(けふ)(まで)こんな(こと)はなかつたのです、214(ただ)(おほ)きい(こゑ)(こわ)(つら)して()なる一方(いつぱう)でしたが、215(いま)(さき)から様子(やうす)がガラツと(かは)り、216(わたし)(この)(をとこ)女房(にようばう)何々(なになに)したとか()つて、217(おぼ)えもないことをぬかし(あたま)をコツきよるのです。218こんな神憑(かむがかり)があつてたまるものか、219常平常(つねへいぜい)から此奴(こいつ)悋気(りんき)(ぶか)(やつ)だから、220(わたくし)此処(ここ)(あそ)びに()るのを、221(なに)(めう)目的(もくてき)があつて()()るのだと(おも)うて()つたに(ちが)ひない。222それが(ひと)つになつて()(くる)ひ、223(なさけ)ないことをぬかすのだらうから、224(ひと)(あたま)から()()し、225(みづ)でもかけてやらねば(なほ)りますまいで、226なア宇一(ういち)(くん)227(まへ)如何(どう)(おも)ふか』
228宇一(ういち)(おれ)(まつた)くの気違(きちがひ)とは()(おも)はぬワ、229ドエライ野天狗(のてんぐ)()きやがつて重吉(ぢうきち)肉体(にくたい)精神(せいしん)とゴツチヤ()ぜになつて、230こんな(こと)(ぬか)すのだと(おも)ふ。231(ひと)喜楽(きらく)サンに鎮魂(ちんこん)して(もら)うたら(わか)るだらう、232(おれ)もこんな審神者(さには)をしたことは今日(けふ)(はじ)めてだ、233こんな(やつ)相手(あひて)になつて()らうものならそれこそ(いのち)がけだ、234最前(さいぜん)(おれ)喉笛(のどぶえ)(くら)ひつかうとしたので、235横面(よこづら)をはり(たふ)してやつたら、236(にはか)(くち)()()しあんな(こと)(ぬか)すんだよ』
237 重吉(ぢうきち)(また)もや()(あが)り、238両腕(りやううで)をプリンプリン()(なが)ら、
239重吉(ぢうきち)(この)(はう)鞍馬山(くらまやま)魔王(まわう)大僧正(だいそうぜう)だ、240これから鞍馬山(くらまやま)(てん)(くも)()つて、241()つて()る、242(その)(はう)はそれ(まで)ここに()つて()れ、243今度(こんど)おれが(かへ)つたら、244大変(たいへん)神力(しんりき)()けて(かへ)り、245どいつも此奴(こいつ)もゴテゴテ()かす(やつ)(かた)(ぱし)からふン()ばし、246(また)から(ひき)さき(いまし)めてやる(ほど)に、247ウツフーン』
248()(なが)ら、249ドシンドシンと一足(ひとあし)々々(ひとあし)(あし)(ちから)()(そと)()ようとする。250喜楽(きらく)両手(りやうて)()んで、251『ウーン』と一声(ひとこゑ)(れい)(おく)つた。252重吉(ぢうきち)(その)()(だい)()になつて(たふ)れて(しま)うた。
253馬吉(うまきち)『コレ喜楽(きらく)サン、254そんな無茶(むちや)なことして如何(どう)なりますか、255()(あし)(つめ)たうなつたぢやありませぬか、256()(あと)(もど)らぬやうなことがあつたら吾々(われわれ)大変(たいへん)ですがな、257どうして(くだ)さる』
258気色(けしき)をかへて、259鼻息(はないき)をはずませ、260(うで)をニユツとつき()して(せま)つて()る。
261喜楽(きらく)『ナアニ心配(しんぱい)いりませぬよ。262(いま)(もど)してやりますよ』
263()(なが)ら、264二拍手(にはくしゆ)して(あま)数歌(かずうた)二回(にくわい)まで(とな)()げた。265重吉(ぢうきち)は、
266『アハヽヽヽ』
267(わら)(なが)ら、268身体(しんたい)(もと)(ごと)(やはらか)くなつて(おき)あがり、
269重吉(ぢうきち)『アー喜楽(きらく)サン、270ホンに(えら)()神力(しんりき)ぢや、271モウ(これ)ならお(まへ)さまも大丈夫(だいぢやうぶ)だ、272サア法貴谷(ほふきだに)修行(しうぎやう)()きませう、273喜楽(きらく)サン()いて()(くだ)さい、274(まへ)さまに真言(しんごん)秘密(ひみつ)(はふ)(をし)へて()げるから、275(この)魔王(まわう)大僧正(だいそうぜう)直接(ちよくせつ)に、276神変(しんぺん)不可思議(ふかしぎ)魔術(まじゆつ)(さづ)けますぞや。277アーン』
278喜楽(きらく)『おかげで(わたし)はいろいろの神術(かむわざ)高熊山(たかくまやま)(おそ)はりましたから、279モウ結構(けつこう)御座(ござ)います、280どうぞ結構(けつこう)(はふ)があるのならば、281(うま)サンや、282宇一(ういち)サンに(さづ)けて()げて(くだ)さい』
283とからかひ気分(きぶん)()ふ。284重吉(ぢうきち)(かた)(いか)らし(なが)ら、285(ことば)芝居(しばゐ)口調(くてう)になつて、
286重吉(ぢうきち)『コレなる両人(りやうにん)は、287(うま)れつきの精神(せいしん)(わる)いに()つて、288(かみ)()せしめの(ため)289ふン()ばしてやつたのだ。290かやうな(もの)魔訶(まか)不思議(ふしぎ)(はふ)(さづ)けやうものなら、291どんなことを(いた)すか(わか)りませぬワイ、292ウツフヽヽヽ』
293()ちはだかつて、294得意面(とくいづら)をさらしてゐる。295半分(はんぶん)肉体(にくたい)296半分(はんぶん)野天狗(のてんぐ)神憑(かむがかり)といふ状態(じやうたい)であつた。297馬吉(うまきち)握拳(にぎりこぶし)をかためて重吉(ぢうきち)横面(よこづら)をピシヤピシヤとなぐりつけ、
298馬吉(うまきち)『コリヤ小谷(こたに)重吉(ぢうきち)299きさまは偽気違(にせきちがひ)偽神(にせかむ)がかりだ、300常平常(つねへいぜい)から(おれ)誤解(ごかい)してゐやがるからそんな(こと)をぬかしやがるんだ。301(おれ)貴様(きさま)()ふやうな悪人(あくにん)ぢやないぞ、302どうぢや貴様(きさま)去年(きよねん)303○○の(かか)を○○した(とき)に、304()いて(おれ)仲裁(ちうさい)(たの)みに()よつたぢやないか、305(その)御恩(ごおん)(わす)れたのか馬鹿(ばか)野郎(やろう)()!』
306(つら)ふくらして真向(まむき)になつて(おこ)つてゐる。
307宇一(ういち)『オイ馬公(うまこう)308こんな半気違(はんきちがひ)をつかまへて(おこ)つたつて仕方(しかた)がないぢやないか』
309馬吉(うまきち)『おれも親類(しんるゐ)なり、310友達(ともだち)だと(おも)うて、311家内(かない)でさへも()()らぬ重公(ぢうこう)世話(せわ)をしてやつて()るのに、312喜楽(きらく)サンの(まへ)で、313()りもせぬことを(ぬか)しやがると、314業腹(がふはら)がにえてたまらぬのだ』
315 重公(ぢうこう)(その)()(しり)をまくり、
316重吉(ぢうきち)『コラ馬公(うまこう)317けつでもくらへ!』
318()(なが)ら、319真黒(まつくろ)けの(しり)()し、320(ふた)()(たた)いて裏口(うらぐち)から、321どこともなし飛出(とびだ)して(しま)うた。322()はズツポリとくれて、323何処(どこ)()つたか、324チツとも見分(みわ)けがつかなくなつて(しま)うた。325(あと)にて()けば法貴谷(ほうきだに)石凝(いしこり)とか()天狗(てんぐ)()んでゐる岩山(いはやま)()()んでゐることが四五(しご)(にち)してから(わか)つたのである。
326 喜楽(きらく)(ただ)一人(ひとり)穴太(あなを)自宅(じたく)(かへ)り、327日夜(にちや)参詣者(さんけいしや)(たい)して鎮魂(ちんこん)(ほどこ)神占(しんせん)取次(とりつ)いでゐた。
328大正一一・一〇・九 旧八・一九 松村真澄録)

王仁三郎が著した「大作」がこれ1冊でわかる!
飯塚弘明・他著『あらすじで読む霊界物語』(文芸社文庫)
絶賛発売中!

目で読むのに疲れたら耳で聴こう!
霊界物語の朗読 ユーチューブに順次アップ中!
霊界物語の音読まとめサイト
逆リンク(このページにリンクが張られているページ)
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→