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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第37巻(子の巻)
序
総説
第1篇 安閑喜楽
第1章 富士山
第2章 葱節
第3章 破軍星
第4章 素破抜
第5章 松の下
第6章 手料理
第2篇 青垣山内
第7章 五万円
第8章 梟の宵企
第9章 牛の糞
第10章 矢田の滝
第11章 松の嵐
第12章 邪神憑
第3篇 阪丹珍聞
第13章 煙の都
第14章 夜の山路
第15章 盲目鳥
第16章 四郎狸
第17章 狐の尾
第18章 奥野操
第19章 逆襲
第20章 仁志東
第4篇 山青水清
第21章 参綾
第22章 大僧坊
第23章 海老坂
第24章 神助
第25章 妖魅来
霊の礎(九)
余白歌
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第37巻(子の巻)
> 第2篇 青垣山内 > 第12章 邪神憑
<<< 松の嵐
(B)
(N)
煙の都 >>>
第一二章
邪神
(
じやしん
)
憑
(
かかり
)
〔一〇二四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第37巻 舎身活躍 子の巻
篇:
第2篇 青垣山内
よみ(新仮名遣い):
あおがきやまうち
章:
第12章 邪神憑
よみ(新仮名遣い):
じゃしんかかり
通し章番号:
1024
口述日:
1922(大正11)年10月09日(旧08月19日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年3月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
喜楽は斎藤宇一を伴って、亀岡の伯母を訪問した。伯母は大の稲荷信者であり、天理教にもかぶれていた。いつも喜楽のことを甲斐性無しだとこきおろしていたのに、喜楽が祈祷で評判を取っているとなったら、打って変わって丁重に迎えて歓迎した。
しかし喜楽が神懸りのときに飯を食べないと聞くと、偽物だとののしり始めた。神懸りは人並みはずれて飯を食わないと本物とみなされない、という地方の迷信のためである。
宇一はそれを聞いて伯母の家を出て行ってしまった。喜楽も抜け出して、宇一に追いつく。そのまま、宇一の知り合いの別の稲利下げのところに調査に赴いた。
そうしたところ、小谷重吉という稲利下げは逆上して苦しんでいるという。重吉は世話役の馬吉や宇一を金縛りにして大声を上げて責め立て暴れていたが、喜楽が霊を送って霊縛した。
天の数歌で重吉を起こしたが、半分天狗に憑かれたまましゃべっている。問答している途中、裏口から飛び出し、どこかへ行ってしまった。後で聞けば、天狗が住んでいるという岩山に逃げ込んでいたという。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-10-21 15:54:16
OBC :
rm3712
愛善世界社版:
149頁
八幡書店版:
第7輯 86頁
修補版:
校定版:
156頁
普及版:
73頁
初版:
ページ備考:
001
喜楽
(
きらく
)
は
矢田
(
やだ
)
の
滝
(
たき
)
に
修行
(
しうぎやう
)
に
行
(
い
)
つた
序
(
ついで
)
、
002
朝
(
あさ
)
早
(
はや
)
くから
亀岡
(
かめをか
)
の
伯母
(
をば
)
[
※
亀岡町西竪に住んでいた伯母の岩崎ふさ
]
の
内
(
うち
)
を
一寸
(
ちよつと
)
訪問
(
はうもん
)
してみた。
003
伯母
(
をば
)
は
大
(
だい
)
の
稲荷
(
いなり
)
信者
(
しんじや
)
であり、
004
又
(
また
)
其
(
その
)
頃
(
ころ
)
一寸
(
ちよつと
)
天理教
(
てんりけう
)
にもかぶれてゐた。
005
喜楽
(
きらく
)
が
神憑
(
かむがか
)
り
[
※
初版・愛世版は「神憑り」、校定版は「神懸り」。
]
になつたといふことを
聞
(
き
)
いて、
006
一度
(
いちど
)
参
(
まゐ
)
つて
見
(
み
)
たく
思
(
おも
)
ふてゐた
際
(
さい
)
である。
007
斎藤
(
さいとう
)
宇一
(
ういち
)
を
伴
(
ともな
)
うて、
008
其
(
その
)
日
(
ひ
)
伯母
(
をば
)
を
訪
(
たづ
)
ねて
見
(
み
)
ると、
009
何時
(
いつ
)
も『
喜楽坊
(
きらくばう
)
喜楽坊
(
きらくばう
)
』と
呼
(
よ
)
びずてにし、
010
『お
前
(
まへ
)
はチンコだ、
011
甲斐性
(
かひしやう
)
なしだ。
012
内
(
うち
)
の
伜
(
せがれ
)
は
体格
(
たいかく
)
も
丈夫
(
ぢやうぶ
)
だし、
013
余程
(
よほど
)
賢
(
かしこ
)
い』などと、
014
クソカスにこきおろすのが
例
(
れい
)
であつた。
015
それに
今度
(
こんど
)
は
打
(
う
)
つて
変
(
かは
)
つて、
016
門口
(
もんぐち
)
へ
這入
(
はい
)
るなり、
017
伯母
(
をば
)
が
飛
(
と
)
んで
来
(
き
)
て、
018
伯母
(
をば
)
『モシモシ
御
(
お
)
台
(
だい
)
様
(
さま
)
、
019
能
(
よ
)
う
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました、
020
どうぞ
座敷
(
ざしき
)
へ
御
(
お
)
通
(
とほ
)
り
下
(
くだ
)
さいまして、
021
御
(
ご
)
ゆるりとなさいませ、
022
何
(
なん
)
なつと
御
(
ご
)
註文
(
ちうもん
)
次第
(
しだい
)
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
を
拵
(
こしら
)
へて
上
(
あ
)
げます。
023
お
揚
(
あ
)
げが
宜
(
よろ
)
しいか、
024
小豆飯
(
あづきめし
)
をたきませうか、
025
瓢箪
(
へうたん
)
さまの
御
(
お
)
台
(
だい
)
さまが
御座
(
ござ
)
ると
甘鯛
(
ぐじ
)
の
一塩
(
ひとしほ
)
が
好
(
す
)
きだと
云
(
い
)
ふて、
026
生
(
なま
)
なり
食
(
く
)
つて
下
(
くだ
)
さる、
027
種油
(
たねあぶら
)
も
食
(
く
)
つて
下
(
くだ
)
さる、
028
神
(
かみ
)
さまによると、
029
石油
(
せきゆ
)
でも
五合
(
ごがふ
)
位
(
くらゐ
)
おあがりになる、
030
あなたは
何
(
なに
)
がお
好
(
す
)
きで
御座
(
ござ
)
いますか、
031
何
(
なん
)
なりと
御
(
ご
)
註文
(
ちゆうもん
)
なさりませ、
032
神
(
かみ
)
さまに
気
(
き
)
よう
食
(
く
)
て
頂
(
いただ
)
くほど
気持
(
きもち
)
のよいことはありませぬ』
033
とサツパリ
稲荷下
(
いなりさ
)
げに
人
(
ひと
)
をして
了
(
しま
)
うてゐる。
034
喜楽
(
きらく
)
は
首
(
くび
)
を
左右
(
さいう
)
に
振
(
ふ
)
り、
035
喜楽
(
きらく
)
『
伯母
(
をば
)
サン、
036
私
(
わたし
)
に
神
(
かみ
)
さまがうつつてもそんな
卑
(
いや
)
しい
物
(
もの
)
は
御
(
お
)
あがりにはなりませぬ、
037
富士
(
ふじ
)
の
山
(
やま
)
の
天狗
(
てんぐ
)
さまが
憑
(
うつ
)
つて
御座
(
ござ
)
るのだから……』
038
伯母
(
をば
)
『
天狗
(
てんぐ
)
さまなら
猶
(
なほ
)
のこと、
039
御
(
お
)
あがりなさらんならん、
040
いつも
御
(
お
)
台
(
だい
)
さまに
鞍馬山
(
くらまやま
)
の
魔王
(
まわう
)
さまがお
憑
(
うつ
)
りになり、
041
何
(
なん
)
でもかんでも
御
(
お
)
あがりになり
終
(
しま
)
ひにや
瓢箪
(
へうたん
)
さままで
御
(
お
)
憑
(
うつ
)
りになつて、
042
よい
声
(
こゑ
)
で
歌
(
うた
)
ひ
踊
(
をど
)
らはると、
043
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
へぬ
気持
(
きもち
)
のよいものだ、
044
さうすると、
045
御
(
お
)
前
(
まへ
)
の
神
(
かみ
)
さまは
死
(
し
)
んだ
神
(
かみ
)
さまだな、
046
物
(
もの
)
を
食
(
く
)
はぬから……』
047
何時
(
いつ
)
も
狸
(
たぬき
)
寄
(
よ
)
せ、
048
狐
(
きつね
)
寄
(
よ
)
せをやつて
居
(
ゐ
)
る
伯母
(
をば
)
は、
049
神憑
(
かむがか
)
り
[
※
初版・愛世版は「神憑り」、校定版は「神がかり」。
]
は
何
(
なん
)
でもかんでも
喰
(
た
)
べるものと
思
(
おも
)
ふて
居
(
ゐ
)
るらしい。
050
亀岡
(
かめをか
)
附近
(
ふきん
)
では
何時
(
いつ
)
も
迷信家
(
めいしんか
)
が
寄
(
よ
)
つて、
051
稲荷下
(
いなりさ
)
げの
御
(
お
)
台
(
だい
)
さまを
招
(
まね
)
いて
来
(
き
)
て
寒施行
(
かんせげやう
)
といふことをする。
052
其
(
その
)
時
(
とき
)
御
(
お
)
台
(
だい
)
になる
女
(
をんな
)
は
神仏
(
しんぶつ
)
混淆
(
こんかう
)
の
御
(
お
)
経
(
きやう
)
をとなへ、
053
御幣
(
ごへい
)
を
振
(
ふ
)
つて……おれはどこの
稲荷
(
いなり
)
だ……とか、
054
魔王
(
まわう
)
だとか、
055
五郎助
(
ごろすけ
)
だとか、
056
太郎八
(
たろはち
)
だとか、
057
狸
(
たぬき
)
までがやつて
来
(
き
)
て、
058
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
一人
(
ひとり
)
の
口
(
くち
)
へ
入
(
い
)
れて
了
(
しま
)
ふ。
059
小豆飯
(
あづきめし
)
の
三升
(
さんぜう
)
位
(
くらゐ
)
一遍
(
いつぺん
)
にケロリと
平
(
たひら
)
げ、
060
油揚
(
あぶらげ
)
の
五十
(
ごじふ
)
枚
(
まい
)
位
(
くらゐ
)
苦
(
く
)
もなく
食
(
く
)
つて
了
(
しま
)
ひ
生節
(
なまぶし
)
の
十本
(
じつぽん
)
、
061
蒲鉾
(
かまぼこ
)
の
二十
(
にじふ
)
枚
(
まい
)
、
062
種油
(
たねあぶら
)
一升
(
いつしよう
)
、
063
醤油
(
しやうゆ
)
五合
(
ごがふ
)
御飯
(
ごはん
)
にお
酒
(
さけ
)
と
殆
(
ほとん
)
ど
想像
(
さうざう
)
もつかぬ
程
(
ほど
)
平
(
たひら
)
げて
了
(
しま
)
ひ、
064
そしてよい
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して、
065
身軽
(
みがる
)
に
舞
(
ま
)
うたり
踊
(
をど
)
つたりする。
066
いよいよ
神
(
かみ
)
よせが
済
(
す
)
むと、
067
元
(
もと
)
の
肉体
(
にくたい
)
に
返
(
かへ
)
る。
068
すると
其
(
その
)
稲荷下
(
いなりさ
)
げは
大抵
(
たいてい
)
女
(
をんな
)
が
多
(
おほ
)
いが、
069
『あゝ
大変
(
たいへん
)
腹
(
はら
)
がへりました。
070
御膳
(
ごぜん
)
をよばれませうか』
071
と
自分
(
じぶん
)
から
催促
(
さいそく
)
して、
072
一人前
(
いちにんまへ
)
以上
(
いじやう
)
を
食
(
く
)
つて
了
(
しま
)
ふ。
073
かういふ
神憑
(
かむがか
)
りでないと
亀岡
(
かめをか
)
地方
(
ちはう
)
では
持
(
も
)
てはやされぬのである。
074
伯母
(
をば
)
はこの
伝
(
でん
)
をいつも
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
るから、
075
自分
(
じぶん
)
に
懸
(
かか
)
る
神
(
かみ
)
さまは
何
(
なに
)
も
食
(
く
)
はないと
云
(
い
)
つたら、
076
伯母
(
をば
)
『ソラお
前
(
まへ
)
の
神経
(
しんけい
)
だ。
077
ヤツパリ
神
(
かみ
)
さまぢやない』
078
などと
云
(
い
)
つて、
079
又
(
また
)
態度
(
たいど
)
が
一変
(
いつぺん
)
し、
080
伯母
(
をば
)
『コレ
喜三
(
きさ
)
、
081
よい
加減
(
かげん
)
に
目
(
め
)
をさまして、
082
早
(
はや
)
う
帰
(
かへ
)
つて
元
(
もと
)
の
乳屋
(
ちちや
)
をしたり、
083
百姓
(
ひやくせう
)
をしなさい。
084
お
前
(
まへ
)
がさうヒヨロヒヨロしてるとお
米
(
よね
)
がどん
丈
(
だけ
)
心配
(
しんぱい
)
するか
知
(
し
)
れぬ。
085
私
(
わし
)
がこれから
旅籠町
(
はたごちやう
)
の
天理王
(
てんりわう
)
さまへ
連
(
つ
)
れて
往
(
い
)
つて
御
(
ご
)
祈祷
(
きたう
)
して
貰
(
もら
)
つて
上
(
あ
)
げよか』
086
と
親切
(
しんせつ
)
相
(
さう
)
に
言
(
い
)
うてくれる。
087
宇一
(
ういち
)
はポカンとして
二人
(
ふたり
)
の
問答
(
もんだう
)
を
聞
(
き
)
いてゐたが
何
(
なん
)
と
思
(
おも
)
つたか、
088
黙
(
だま
)
つてポイと
此家
(
ここ
)
を
出
(
で
)
て
了
(
しま
)
つた。
089
喜楽
(
きらく
)
も
宇一
(
ういち
)
の
出
(
で
)
たのを
幸
(
さいは
)
ひ、
090
伯母
(
をば
)
の
内
(
うち
)
を
甘
(
うま
)
く
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
し、
091
穴太
(
あなを
)
へ
帰
(
かへ
)
る
途中
(
とちう
)
、
092
荒塚村
(
あらつかむら
)
の
前
(
まへ
)
で
宇一
(
ういち
)
に
追
(
お
)
ひつき、
093
それから
其
(
その
)
足
(
あし
)
で
寺村
(
てらむら
)
の
重吉
(
ぢうきち
)
といふ
稲荷下
(
いなりさ
)
げの
所
(
ところ
)
へ
調
(
しら
)
べがてら
行
(
ゆ
)
くこととなつた。
094
漸
(
やうや
)
くにして
寺村
(
てらむら
)
の
小谷
(
こたに
)
重吉
(
ぢうきち
)
の
家
(
うち
)
に
着
(
つ
)
いた。
095
並河
(
なみかは
)
馬吉
(
うまきち
)
といふ
男
(
をとこ
)
が
世話係
(
せわがかり
)
の
元締
(
もとじめ
)
をして
居
(
ゐ
)
る。
096
宇一
(
ういち
)
は
馬公
(
うまこう
)
と
懇意
(
こんい
)
の
仲
(
なか
)
であつた。
097
それは
親類
(
しんるゐ
)
関係
(
くわんけい
)
からである。
098
馬吉
(
うまきち
)
は
宇一
(
ういち
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
るなり、
099
馬吉
(
うまきち
)
『ヤア
宇一
(
ういち
)
サンか、
100
能
(
よ
)
う
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さつた。
101
今
(
いま
)
穴太
(
あなを
)
へ
相談
(
さうだん
)
に
行
(
ゆ
)
かうと
思
(
おも
)
うて
居
(
を
)
つた
所
(
ところ
)
だ。
102
昨夜
(
ゆうべ
)
から
神憑
(
かむがか
)
りが
烈
(
はげ
)
しうて、
103
どうにも
斯
(
か
)
うにも
仕様
(
しやう
)
がない、
104
穴太
(
あなを
)
の
先生
(
せんせい
)
にしづめて
貰
(
もら
)
はうかと
思
(
おも
)
つてゐた
所
(
ところ
)
だ。
105
どうやろなア、
106
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さるだらうか』
107
と
尋
(
たづ
)
ねて
居
(
ゐ
)
る。
108
宇一
(
ういち
)
は、
109
宇一
(
ういち
)
『
此
(
この
)
人
(
ひと
)
が
喜楽
(
きらく
)
サンだ、
110
頼
(
たの
)
んでみたがよからう』
111
馬吉
(
うまきち
)
『それは
願
(
ねが
)
うてもないこと、
112
イヤ
失礼
(
しつれい
)
しました。
113
あなたが
喜楽
(
きらく
)
サンで
御座
(
ござ
)
いましたか、
114
何分
(
なにぶん
)
宜
(
よろ
)
しう
御
(
お
)
願申
(
ねがひまを
)
します、
115
サア
何卒
(
どうぞ
)
奥
(
おく
)
へ
御
(
お
)
通
(
とほ
)
り
下
(
くだ
)
さい』
116
瓦葺
(
かはらぶき
)
の
田舎
(
いなか
)
では
可
(
か
)
なり
大
(
おほ
)
きな
家
(
いへ
)
であつた。
117
馬吉
(
うまきち
)
の
案内
(
あんない
)
につれて
二人
(
ふたり
)
は
奥
(
おく
)
へ
通
(
とほ
)
ると、
118
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
に
何
(
なん
)
とも
知
(
し
)
れぬ
妙
(
めう
)
な
唸
(
うな
)
り
声
(
ごゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えてゐる。
119
馬吉
(
うまきち
)
は
一寸
(
ちよつと
)
其
(
その
)
声
(
こゑ
)
する
方
(
はう
)
を
指
(
さ
)
し、
120
馬吉
(
うまきち
)
『モシ
喜楽
(
きらく
)
の
先生
(
せんせい
)
様
(
さま
)
、
121
あの
通
(
とほ
)
り
二三
(
にさん
)
日前
(
にちまへ
)
から
唸
(
うな
)
り
通
(
とほ
)
しで
御座
(
ござ
)
います。
122
今迄
(
いままで
)
二三十
(
にさんじふ
)
人
(
にん
)
病人
(
びやうにん
)
を
助
(
たす
)
けましたので、
123
皆
(
みな
)
の
者
(
もの
)
がエライ
神
(
かみ
)
さまだと
云
(
い
)
うて
信心
(
しんじん
)
してゐましたが
一寸
(
ちよつと
)
調子
(
てうし
)
に
乗
(
の
)
つたと
見
(
み
)
えて、
124
逆上
(
ぎやくじやう
)
したのか、
125
取止
(
とりと
)
めのない
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬことを、
126
あの
通
(
とほ
)
りベラベラ
囀
(
さへづ
)
つて
居
(
を
)
ります。
127
どうかして
直
(
なほ
)
す
法
(
はふ
)
は
御座
(
ござ
)
いますまいかな』
128
と
心配
(
しんぱい
)
らしく
尋
(
たづ
)
ねてゐる。
129
喜楽
(
きらく
)
は
俯
(
うつむ
)
いて
手
(
て
)
をくみ
思案
(
しあん
)
にくれてゐる。
130
宇一
(
ういち
)
『
二三
(
にさん
)
日前
(
にちまへ
)
からうなり
出
(
だ
)
したか、
131
ソラ
大方
(
おほかた
)
大天狗
(
だいてんぐ
)
の
口
(
くち
)
の
切
(
き
)
れかも
知
(
し
)
れんぞ、
132
ズイ
分
(
ぶん
)
俺
(
おれ
)
ンとこで
三
(
さん
)
週間
(
しうかん
)
修行
(
しうぎやう
)
した
時
(
とき
)
にも、
133
家
(
いへ
)
がゴーゴー
鳴
(
な
)
る、
134
ゆすれる、
135
ソレはソレは
大変
(
たいへん
)
なことがあつた。
136
家
(
うち
)
の
爺
(
おやぢ
)
が
怒
(
おこ
)
つて、
137
喜楽
(
きらく
)
サンに
修行場
(
しうぎやうば
)
をどつかへ
持
(
も
)
つて
行
(
い
)
てくれと
呶鳴
(
どな
)
つた
位
(
くらゐ
)
の
大騒動
(
おほさうどう
)
だつた。
138
其
(
その
)
時
(
とき
)
は
俺
(
おれ
)
もズイ
分
(
ぶん
)
肝
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
したが、
139
モウ
神憑
(
かむがか
)
りに
経験
(
けいけん
)
がついたので、
140
あの
位
(
くらゐ
)
の
唸
(
うな
)
り
声
(
ごゑ
)
は
何
(
なん
)
でもないワ。
141
喜楽
(
きらく
)
サンでなくても
俺
(
おれ
)
が
一
(
ひと
)
つ
這入
(
はい
)
つてしづめて
来
(
き
)
てやらうか、
142
ナア
喜楽
(
きらく
)
サン、
143
如何
(
どう
)
せうかな』
144
喜楽
(
きらく
)
『マアやつて
見
(
み
)
い、
145
万一
(
まんいち
)
可
(
い
)
けなかつたら、
146
俺
(
おれ
)
が
出
(
で
)
るとせう』
147
宇一
(
ういち
)
『ヨシ
来
(
き
)
た、
148
喜楽
(
きらく
)
サン、
149
ここに
待
(
ま
)
つてゐてくれ……オイ
馬
(
うま
)
サン、
150
お
前
(
まへ
)
も
一所
(
いつしよ
)
に
行
(
い
)
てくれ、
151
おれが
一
(
ひと
)
つ
審神者
(
さには
)
をして
天狗
(
てんぐ
)
の
口
(
くち
)
をきるか、
152
もし
悪神
(
わるがみ
)
であつたら
霊縛
(
れいばく
)
をかけてやらう』
153
と
確信
(
かくしん
)
あるものの
如
(
ごと
)
く
意気
(
いき
)
揚々
(
やうやう
)
として、
154
一寸
(
ちよつと
)
した
廊下
(
らうか
)
をわたり、
155
二間建
(
ふたまだて
)
の
離
(
はな
)
れ
座敷
(
ざしき
)
の、
156
唸
(
うな
)
り
声
(
ごゑ
)
のする
方
(
はう
)
を
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
んで
行
(
ゆ
)
く。
157
暫
(
しばら
)
くすると
大変
(
たいへん
)
な
甲声
(
かんごゑ
)
の
太
(
ふと
)
いやつが
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た……ハテな
野天狗
(
のてんぐ
)
が
現
(
あら
)
はれて
口
(
くち
)
を
切
(
き
)
つてるのだなア……と
思
(
おも
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
158
自分
(
じぶん
)
で
茶
(
ちや
)
を
汲
(
く
)
み、
159
二人
(
ふたり
)
の
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
るのを
待
(
ま
)
つてゐたが、
160
何時
(
いつ
)
までたつても
帰
(
かへ
)
つて
来
(
こ
)
ない。
161
『ウンウン』と
唸
(
うな
)
る
声
(
こゑ
)
は
段々
(
だんだん
)
と
烈
(
はげ
)
しくなる。
162
此
(
この
)
家
(
いへ
)
の
者
(
もの
)
はビツクリして、
163
同
(
おな
)
じ
村
(
むら
)
の
親類
(
しんるゐ
)
へ
皆
(
みんな
)
逃
(
に
)
げて
行
(
い
)
つて
不在
(
ふざい
)
である。
164
日
(
ひ
)
の
暮
(
くれ
)
に
間近
(
まぢか
)
く、
165
座敷
(
ざしき
)
の
隅
(
すみ
)
はソロソロうす
暗
(
ぐら
)
くなつて
来
(
き
)
た。
166
細
(
ほそ
)
い
廊下
(
らうか
)
を
渡
(
わた
)
つて
声
(
こゑ
)
のする
居間
(
ゐま
)
へ
行
(
い
)
つて
見
(
み
)
ると、
167
二人
(
ふたり
)
共
(
とも
)
あべこべに
霊縛
(
れいばく
)
にかかり、
168
ふンのびて
了
(
しま
)
ひ、
169
其
(
その
)
上
(
うへ
)
に
小谷
(
こたに
)
重吉
(
ぢうきち
)
が
神憑
(
かむがか
)
りになつたまま
目
(
め
)
を
丸
(
まる
)
く
光
(
ひか
)
らせ、
170
妙見
(
めうけん
)
サンが
波切丸
(
なみきりまる
)
の
宝剣
(
ほうけん
)
を
振
(
ふ
)
り
上
(
あ
)
げたやうな
恰好
(
かつかう
)
で、
171
力瘤
(
ちからこぶ
)
だらけの
腕
(
うで
)
を、
172
赤裸
(
まつぱだか
)
になつて、
173
頭上
(
づじやう
)
に
片仮名
(
かたかな
)
のフの
字
(
じ
)
型
(
がた
)
にし、
174
左
(
ひだり
)
の
手
(
て
)
を
握
(
にぎ
)
つて
馬吉
(
うまきち
)
の
頭
(
あたま
)
をグイグイ
押
(
おさ
)
へつけ
乍
(
なが
)
ら、
175
重吉
(
ぢうきち
)
『コリヤ
悪人
(
あくにん
)
共
(
ども
)
、
176
改心
(
かいしん
)
致
(
いた
)
すかどうぢや、
177
きさまは
俺
(
おれ
)
ン
所
(
ところ
)
の
女房
(
にようばう
)
と
何々
(
なになに
)
して
居
(
ゐ
)
るだらう。
178
白状
(
はくじやう
)
せい、
179
コリヤ
宇一
(
ういち
)
、
180
貴様
(
きさま
)
も
余
(
あま
)
り
性
(
しやう
)
がよくないぞ、
181
鞍馬山
(
くらまやま
)
の
大僧正
(
だいそうぜう
)
が
其
(
その
)
悪事
(
あくじ
)
をスツクリ
調
(
しら
)
べ
上
(
あ
)
げて
制敗
(
せいばい
)
をしてやるのだ、
182
サア
如何
(
どう
)
ぢや』
183
と
云
(
い
)
つては
頭
(
あたま
)
をコツンとなぐる。
184
二人
(
ふたり
)
は
強直
(
きやうちよく
)
状態
(
じやうたい
)
となり、
185
首
(
くび
)
計
(
ばか
)
りふつて
声
(
こゑ
)
をも
能
(
よ
)
う
出
(
だ
)
さず
苦
(
くるし
)
んでゐた。
186
小谷
(
こたに
)
重吉
(
ぢうきち
)
の
神憑
(
かむがか
)
りは
喜楽
(
きらく
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
るより、
187
二人
(
ふたり
)
の
上
(
うへ
)
からツツと
下
(
お
)
りて
叮嚀
(
ていねい
)
にキチンとすわり、
188
重吉
(
ぢうきち
)
『これはこれは
大先生
(
だいせんせい
)
さま、
189
能
(
よ
)
う
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました。
190
私
(
わたし
)
は
一体
(
いつたい
)
神憑
(
かむがか
)
りですやろか、
191
但
(
ただし
)
は
気
(
き
)
が
違
(
ちが
)
うて
居
(
ゐ
)
るのですやろか、
192
自分
(
じぶん
)
がてに
合点
(
がてん
)
が
行
(
ゆ
)
きませぬ。
193
どうぞ
一
(
ひと
)
つ
査
(
しら
)
べて
下
(
くだ
)
さいな、
194
オホヽヽヽ』
195
と
厭
(
いや
)
らしう
笑
(
わら
)
ふ。
196
如何
(
どう
)
しても
普通
(
ふつう
)
とは
見
(
み
)
えぬ。
197
そこで『ウーム!』と
一
(
ひと
)
つ
鎮魂
(
ちんこん
)
をやつて
見
(
み
)
ると、
198
重吉
(
ぢうきち
)
は
何
(
なん
)
の
感応
(
かんのう
)
もなく
依然
(
いぜん
)
として
坐
(
すわ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
199
霊
(
れい
)
が
二人
(
ふたり
)
にかかつたと
見
(
み
)
え、
200
俄
(
にはか
)
に
二人
(
ふたり
)
は
強直
(
きやうちよく
)
状態
(
じやうたい
)
から
免
(
まぬ
)
がれ、
201
ムクムクと
立上
(
たちあ
)
がり、
202
重吉
(
ぢうきち
)
の
左右
(
さいう
)
に
責寄
(
せめよ
)
つて、
203
宇一
(
ういち
)
は
左
(
ひだり
)
の
手
(
て
)
を、
204
馬吉
(
うまきち
)
は
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
をグツと
後
(
うしろ
)
へまはし、
205
手早
(
てばや
)
く
手拭
(
てぬぐひ
)
で
括
(
くく
)
らうとする。
206
喜楽
(
きらく
)
『オイそんな
乱暴
(
らんばう
)
なことしちや
可
(
い
)
かぬ、
207
待
(
ま
)
て
待
(
ま
)
て、
208
コリヤ
神憑
(
かむがかり
)
だから、
209
本人
(
ほんにん
)
が
悪
(
わる
)
いのぢやない、
210
そして
俺
(
おれ
)
がここへ
来
(
き
)
た
以上
(
いじやう
)
は、
211
キツとあばれささぬから、
212
其
(
その
)
手
(
て
)
を
放
(
はな
)
してやれ』
213
馬吉
(
うまきち
)
『
今日
(
けふ
)
迄
(
まで
)
こんな
事
(
こと
)
はなかつたのです、
214
只
(
ただ
)
大
(
おほ
)
きい
声
(
こゑ
)
で
怖
(
こわ
)
い
面
(
つら
)
して
呶
(
ど
)
なる
一方
(
いつぱう
)
でしたが、
215
今
(
いま
)
の
先
(
さき
)
から
様子
(
やうす
)
がガラツと
変
(
かは
)
り、
216
私
(
わたし
)
が
此
(
この
)
男
(
をとこ
)
の
女房
(
にようばう
)
を
何々
(
なになに
)
したとか
云
(
い
)
つて、
217
覚
(
おぼ
)
えもないことをぬかし
頭
(
あたま
)
をコツきよるのです。
218
こんな
神憑
(
かむがかり
)
があつてたまるものか、
219
常平常
(
つねへいぜい
)
から
此奴
(
こいつ
)
ア
悋気
(
りんき
)
深
(
ぶか
)
い
奴
(
やつ
)
だから、
220
私
(
わたくし
)
が
此処
(
ここ
)
へ
遊
(
あそ
)
びに
来
(
く
)
るのを、
221
何
(
なに
)
か
妙
(
めう
)
な
目的
(
もくてき
)
があつて
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
るのだと
思
(
おも
)
うて
居
(
を
)
つたに
違
(
ちが
)
ひない。
222
それが
一
(
ひと
)
つになつて
気
(
き
)
が
狂
(
くる
)
ひ、
223
情
(
なさけ
)
ないことをぬかすのだらうから、
224
一
(
ひと
)
つ
頭
(
あたま
)
から
血
(
ち
)
を
出
(
だ
)
し、
225
水
(
みづ
)
でもかけてやらねば
直
(
なほ
)
りますまいで、
226
なア
宇一
(
ういち
)
君
(
くん
)
、
227
お
前
(
まへ
)
如何
(
どう
)
思
(
おも
)
ふか』
228
宇一
(
ういち
)
『
俺
(
おれ
)
は
全
(
まつた
)
くの
気違
(
きちがひ
)
とは
能
(
よ
)
う
思
(
おも
)
はぬワ、
229
ドエライ
野天狗
(
のてんぐ
)
が
憑
(
つ
)
きやがつて
重吉
(
ぢうきち
)
の
肉体
(
にくたい
)
の
精神
(
せいしん
)
とゴツチヤ
交
(
ま
)
ぜになつて、
230
こんな
事
(
こと
)
を
吐
(
ぬか
)
すのだと
思
(
おも
)
ふ。
231
一
(
ひと
)
つ
喜楽
(
きらく
)
サンに
鎮魂
(
ちんこん
)
して
貰
(
もら
)
うたら
分
(
わか
)
るだらう、
232
俺
(
おれ
)
もこんな
審神者
(
さには
)
をしたことは
今日
(
けふ
)
が
始
(
はじ
)
めてだ、
233
こんな
奴
(
やつ
)
に
相手
(
あひて
)
になつて
居
(
を
)
らうものならそれこそ
命
(
いのち
)
がけだ、
234
最前
(
さいぜん
)
も
俺
(
おれ
)
の
喉笛
(
のどぶえ
)
に
喰
(
くら
)
ひつかうとしたので、
235
横面
(
よこづら
)
をはり
倒
(
たふ
)
してやつたら、
236
俄
(
にはか
)
に
口
(
くち
)
を
切
(
き
)
り
出
(
だ
)
しあんな
事
(
こと
)
吐
(
ぬか
)
すんだよ』
237
重吉
(
ぢうきち
)
は
又
(
また
)
もや
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り、
238
両腕
(
りやううで
)
をプリンプリン
振
(
ふ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
239
重吉
(
ぢうきち
)
『
此
(
この
)
方
(
はう
)
は
鞍馬山
(
くらまやま
)
の
魔王
(
まわう
)
大僧正
(
だいそうぜう
)
だ、
240
これから
鞍馬山
(
くらまやま
)
へ
天
(
てん
)
の
雲
(
くも
)
へ
乗
(
の
)
つて、
241
行
(
い
)
つて
来
(
く
)
る、
242
其
(
その
)
方
(
はう
)
はそれ
迄
(
まで
)
ここに
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
れ、
243
今度
(
こんど
)
おれが
帰
(
かへ
)
つたら、
244
大変
(
たいへん
)
な
神力
(
しんりき
)
を
受
(
う
)
けて
帰
(
かへ
)
り、
245
どいつも
此奴
(
こいつ
)
もゴテゴテ
吐
(
ぬ
)
かす
奴
(
やつ
)
を
片
(
かた
)
つ
端
(
ぱし
)
からふン
伸
(
の
)
ばし、
246
股
(
また
)
から
引
(
ひき
)
さき
戒
(
いまし
)
めてやる
程
(
ほど
)
に、
247
ウツフーン』
248
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
249
ドシンドシンと
一足
(
ひとあし
)
々々
(
ひとあし
)
足
(
あし
)
に
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れ
外
(
そと
)
へ
出
(
で
)
ようとする。
250
喜楽
(
きらく
)
は
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
んで、
251
『ウーン』と
一声
(
ひとこゑ
)
霊
(
れい
)
を
送
(
おく
)
つた。
252
重吉
(
ぢうきち
)
は
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
大
(
だい
)
の
字
(
じ
)
になつて
倒
(
たふ
)
れて
了
(
しま
)
うた。
253
馬吉
(
うまきち
)
『コレ
喜楽
(
きらく
)
サン、
254
そんな
無茶
(
むちや
)
なことして
如何
(
どう
)
なりますか、
255
手
(
て
)
も
足
(
あし
)
も
冷
(
つめ
)
たうなつたぢやありませぬか、
256
若
(
も
)
し
後
(
あと
)
へ
戻
(
もど
)
らぬやうなことがあつたら
吾々
(
われわれ
)
は
大変
(
たいへん
)
ですがな、
257
どうして
下
(
くだ
)
さる』
258
と
気色
(
けしき
)
をかへて、
259
鼻息
(
はないき
)
をはずませ、
260
腕
(
うで
)
をニユツとつき
出
(
だ
)
して
迫
(
せま
)
つて
来
(
く
)
る。
261
喜楽
(
きらく
)
『ナアニ
心配
(
しんぱい
)
いりませぬよ。
262
今
(
いま
)
戻
(
もど
)
してやりますよ』
263
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
264
二拍手
(
にはくしゆ
)
して
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
二回
(
にくわい
)
まで
唱
(
とな
)
へ
上
(
あ
)
げた。
265
重吉
(
ぢうきち
)
は、
266
『アハヽヽヽ』
267
と
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
268
身体
(
しんたい
)
元
(
もと
)
の
如
(
ごと
)
く
軟
(
やはらか
)
くなつて
起
(
おき
)
あがり、
269
重吉
(
ぢうきち
)
『アー
喜楽
(
きらく
)
サン、
270
ホンに
偉
(
えら
)
い
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
ぢや、
271
モウ
是
(
これ
)
ならお
前
(
まへ
)
さまも
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ、
272
サア
法貴谷
(
ほふきだに
)
へ
修行
(
しうぎやう
)
に
行
(
ゆ
)
きませう、
273
喜楽
(
きらく
)
サン
従
(
つ
)
いて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さい、
274
お
前
(
まへ
)
さまに
真言
(
しんごん
)
秘密
(
ひみつ
)
の
法
(
はふ
)
を
教
(
をし
)
へて
上
(
あ
)
げるから、
275
此
(
この
)
魔王
(
まわう
)
大僧正
(
だいそうぜう
)
が
直接
(
ちよくせつ
)
に、
276
神変
(
しんぺん
)
不可思議
(
ふかしぎ
)
の
魔術
(
まじゆつ
)
を
授
(
さづ
)
けますぞや。
277
アーン』
278
喜楽
(
きらく
)
『おかげで
私
(
わたし
)
はいろいろの
神術
(
かむわざ
)
を
高熊山
(
たかくまやま
)
で
教
(
おそ
)
はりましたから、
279
モウ
結構
(
けつこう
)
で
御座
(
ござ
)
います、
280
どうぞ
結構
(
けつこう
)
な
法
(
はふ
)
があるのならば、
281
馬
(
うま
)
サンや、
282
宇一
(
ういち
)
サンに
授
(
さづ
)
けて
上
(
あ
)
げて
下
(
くだ
)
さい』
283
とからかひ
気分
(
きぶん
)
に
云
(
い
)
ふ。
284
重吉
(
ぢうきち
)
は
肩
(
かた
)
を
怒
(
いか
)
らし
乍
(
なが
)
ら、
285
言
(
ことば
)
も
芝居
(
しばゐ
)
口調
(
くてう
)
になつて、
286
重吉
(
ぢうきち
)
『コレなる
両人
(
りやうにん
)
は、
287
生
(
うま
)
れつきの
精神
(
せいしん
)
が
悪
(
わる
)
いに
依
(
よ
)
つて、
288
神
(
かみ
)
が
見
(
み
)
せしめの
為
(
ため
)
、
289
ふン
伸
(
の
)
ばしてやつたのだ。
290
かやうな
者
(
もの
)
に
魔訶
(
まか
)
不思議
(
ふしぎ
)
の
法
(
はふ
)
を
授
(
さづ
)
けやうものなら、
291
どんなことを
致
(
いた
)
すか
分
(
わか
)
りませぬワイ、
292
ウツフヽヽヽ』
293
と
立
(
た
)
ちはだかつて、
294
得意面
(
とくいづら
)
をさらしてゐる。
295
半分
(
はんぶん
)
は
肉体
(
にくたい
)
、
296
半分
(
はんぶん
)
は
野天狗
(
のてんぐ
)
の
神憑
(
かむがかり
)
といふ
状態
(
じやうたい
)
であつた。
297
馬吉
(
うまきち
)
は
握拳
(
にぎりこぶし
)
をかためて
重吉
(
ぢうきち
)
の
横面
(
よこづら
)
をピシヤピシヤとなぐりつけ、
298
馬吉
(
うまきち
)
『コリヤ
小谷
(
こたに
)
重吉
(
ぢうきち
)
、
299
きさまは
偽気違
(
にせきちがひ
)
の
偽神
(
にせかむ
)
がかりだ、
300
常平常
(
つねへいぜい
)
から
俺
(
おれ
)
を
誤解
(
ごかい
)
してゐやがるからそんな
事
(
こと
)
をぬかしやがるんだ。
301
俺
(
おれ
)
は
貴様
(
きさま
)
の
云
(
い
)
ふやうな
悪人
(
あくにん
)
ぢやないぞ、
302
どうぢや
貴様
(
きさま
)
が
去年
(
きよねん
)
、
303
○○の
嬶
(
かか
)
を○○した
時
(
とき
)
に、
304
泣
(
な
)
いて
俺
(
おれ
)
に
仲裁
(
ちうさい
)
を
頼
(
たの
)
みに
来
(
き
)
よつたぢやないか、
305
其
(
その
)
御恩
(
ごおん
)
を
忘
(
わす
)
れたのか
馬鹿
(
ばか
)
野郎
(
やろう
)
奴
(
め
)
!』
306
と
面
(
つら
)
ふくらして
真向
(
まむき
)
になつて
怒
(
おこ
)
つてゐる。
307
宇一
(
ういち
)
『オイ
馬公
(
うまこう
)
、
308
こんな
半気違
(
はんきちがひ
)
をつかまへて
怒
(
おこ
)
つたつて
仕方
(
しかた
)
がないぢやないか』
309
馬吉
(
うまきち
)
『おれも
親類
(
しんるゐ
)
なり、
310
友達
(
ともだち
)
だと
思
(
おも
)
うて、
311
家内
(
かない
)
でさへも
能
(
よ
)
う
居
(
を
)
らぬ
重公
(
ぢうこう
)
の
世話
(
せわ
)
をしてやつて
居
(
ゐ
)
るのに、
312
喜楽
(
きらく
)
サンの
前
(
まへ
)
で、
313
有
(
あ
)
りもせぬことを
吐
(
ぬか
)
しやがると、
314
業腹
(
がふはら
)
がにえてたまらぬのだ』
315
重公
(
ぢうこう
)
は
其
(
その
)
間
(
ま
)
に
尻
(
しり
)
をまくり、
316
重吉
(
ぢうきち
)
『コラ
馬公
(
うまこう
)
、
317
けつでもくらへ!』
318
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
319
真黒
(
まつくろ
)
けの
尻
(
しり
)
を
出
(
だ
)
し、
320
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つ
叩
(
たた
)
いて
裏口
(
うらぐち
)
から、
321
どこともなし
飛出
(
とびだ
)
して
了
(
しま
)
うた。
322
日
(
ひ
)
はズツポリとくれて、
323
何処
(
どこ
)
へ
行
(
い
)
つたか、
324
チツとも
見分
(
みわ
)
けがつかなくなつて
了
(
しま
)
うた。
325
後
(
あと
)
にて
聞
(
き
)
けば
法貴谷
(
ほうきだに
)
の
石凝
(
いしこり
)
とか
云
(
い
)
ふ
天狗
(
てんぐ
)
が
住
(
す
)
んでゐる
岩山
(
いはやま
)
へ
逃
(
に
)
げ
込
(
こ
)
んでゐることが
四五
(
しご
)
日
(
にち
)
してから
分
(
わか
)
つたのである。
326
喜楽
(
きらく
)
は
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
穴太
(
あなを
)
の
自宅
(
じたく
)
に
帰
(
かへ
)
り、
327
日夜
(
にちや
)
の
参詣者
(
さんけいしや
)
に
対
(
たい
)
して
鎮魂
(
ちんこん
)
を
施
(
ほどこ
)
し
神占
(
しんせん
)
を
取次
(
とりつ
)
いでゐた。
328
(
大正一一・一〇・九
旧八・一九
松村真澄
録)
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