霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第37巻(子の巻)
序
総説
第1篇 安閑喜楽
第1章 富士山
第2章 葱節
第3章 破軍星
第4章 素破抜
第5章 松の下
第6章 手料理
第2篇 青垣山内
第7章 五万円
第8章 梟の宵企
第9章 牛の糞
第10章 矢田の滝
第11章 松の嵐
第12章 邪神憑
第3篇 阪丹珍聞
第13章 煙の都
第14章 夜の山路
第15章 盲目鳥
第16章 四郎狸
第17章 狐の尾
第18章 奥野操
第19章 逆襲
第20章 仁志東
第4篇 山青水清
第21章 参綾
第22章 大僧坊
第23章 海老坂
第24章 神助
第25章 妖魅来
霊の礎(九)
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サブスク完了しました
。どうもありがとうございます。
|
サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は
従来バージョン
をお使い下さい
霊界物語
>
舎身活躍(第37~48巻)
>
第37巻(子の巻)
> 第2篇 青垣山内 > 第8章 梟の宵企
<<< 五万円
(B)
(N)
牛の糞 >>>
第八章
梟
(
ふくろ
)
の
宵企
(
よひだくみ
)
〔一〇二〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第37巻 舎身活躍 子の巻
篇:
第2篇 青垣山内
よみ(新仮名遣い):
あおがきやまうち
章:
第8章 梟の宵企
よみ(新仮名遣い):
ふくろのよいだくみ
通し章番号:
1020
口述日:
1922(大正11)年10月09日(旧08月19日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年3月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
自宅へ帰って寝ていると、誰かが自分を揺り動かした。にわかに自分の身体は機械のように自動的に立ち上がり、自然に歩き出した。産土の社のそばの殿山という小さい丘の山に導かれた。
臍の下から円い塊がゴロゴロと音をさせて喉の近辺まで上がってきた。大霜天狗、と口を切って怒鳴りたてた。大霜は、金を掘らせてやるから道具を用意して奥山に行け、と命じた。
自分はやむを得ず険しい道を道具を持って奥山へと進んできた。大霜天狗に命じられた場所でつるはしを握ると、手が勝手に動き出して地面を掘り始めた。
大霜天狗が休憩しているときに、こんな場所から金が出てくるはずがないと思っていると、大霜は自分の疑いを非難した。そして神様の道に入った自分は金など要らないといっても、無理やりつるはしを振らされて地面を掘らされた。
結局、金は出ないまま岩盤に突き当たり、つるはしの先も坊主になってしまった。自分が大霜を責めると、大霜はお前の心を試したのだ、といって消えてしまった。
仕方がないので道具を持って山道を戻ってくると、途中で元市と宇一が待ち構えていた。結局、家に戻って本当に金が掘り出せなかったことが判明し、元市親子の信用を失って修行場を断られてしまった。
多田琴は中村へ帰って、四五人と共にさかんに鎮魂や帰神の修行をやっていた。自分は自宅で自修をすることになった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-10-19 14:35:06
OBC :
rm3708
愛善世界社版:
103頁
八幡書店版:
第7輯 68頁
修補版:
校定版:
108頁
普及版:
49頁
初版:
ページ備考:
001
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りで
自宅
(
じたく
)
へ
帰
(
かへ
)
り、
002
心
(
こころ
)
もユツタリと
宵
(
よひ
)
の
口
(
くち
)
から
眠
(
ねむ
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
003
俄
(
にはか
)
に『オイオイ』と
自分
(
じぶん
)
の
体
(
からだ
)
を
揺
(
ゆ
)
り
起
(
おこ
)
すものがある。
004
吃驚
(
びつくり
)
して
目
(
め
)
を
醒
(
さ
)
まして
見
(
み
)
れば
誰
(
たれ
)
も
居
(
ゐ
)
ない。
005
只
(
ただ
)
老母
(
らうぼ
)
や
母
(
はは
)
や
妹
(
いもうと
)
が、
006
未
(
ま
)
だ
宵
(
よひ
)
の
口
(
くち
)
とて
眠
(
ねむ
)
りもせず、
007
行灯
(
あんど
)
の
側
(
そば
)
で
小説本
(
せうせつぼん
)
を
見
(
み
)
たり、
008
絵
(
ゑ
)
を
広
(
ひろ
)
げて
見
(
み
)
たりして
居
(
ゐ
)
るのみであつた。
009
俄
(
にはか
)
に
自分
(
じぶん
)
の
体
(
からだ
)
は
器械
(
きかい
)
の
如
(
ごと
)
く
自動
(
じどう
)
的
(
てき
)
に
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り、
010
自然
(
しぜん
)
に
歩
(
あゆ
)
み
出
(
だ
)
した。
011
霊
(
れい
)
に
憑依
(
ひようい
)
された
肉体
(
にくたい
)
は
自分
(
じぶん
)
の
意思
(
いし
)
では
如何
(
いかん
)
ともする
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬ。
012
体
(
からだ
)
の
動
(
うご
)
くままに
任
(
まか
)
して
居
(
ゐ
)
ると、
013
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
産土
(
うぶすな
)
の
社
(
やしろ
)
の
傍
(
そば
)
の
殿山
(
とのやま
)
と
云
(
い
)
ふ、
014
小
(
ちひ
)
さい
丘
(
をか
)
の
山
(
やま
)
に
導
(
みちび
)
かれて
居
(
ゐ
)
る。
015
臍
(
へそ
)
の
下
(
した
)
あたりから、
016
円
(
まる
)
い
塊
(
かたまり
)
がゴロゴロと
音
(
おと
)
をさして、
017
喉
(
のど
)
の
近辺
(
きんぺん
)
まで
舞
(
ま
)
ひ
上
(
あが
)
つて
来
(
き
)
たと
思
(
おも
)
ふ
刹那
(
せつな
)
、
018
『
大霜
(
おほしも
)
天狗
(
てんぐ
)
……』
019
と
呶鳴
(
どな
)
り
立
(
た
)
てた。
020
自分
(
じぶん
)
は、
021
喜楽
(
きらく
)
『モシ
大霜
(
おほしも
)
さま、
022
懸
(
かか
)
つて
下
(
くだ
)
さるのは
結構
(
けつこう
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
023
さう
苦
(
くる
)
しめられては
堪
(
たま
)
りませぬ。
024
もつと
楽
(
らく
)
に
懸
(
かか
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
025
大霜
(
おほしも
)
『
楽
(
らく
)
に
懸
(
かか
)
つてやり
度
(
た
)
いのは
神
(
かみ
)
も
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
だ。
026
神
(
かみ
)
だつて
苦
(
くる
)
しいのだ。
027
其
(
その
)
方
(
はう
)
はまだ
疑心
(
うたがひごころ
)
がとれぬから、
028
それで
苦
(
くる
)
しまねばならぬ。
029
早
(
はや
)
く
改心
(
かいしん
)
を
致
(
いた
)
して、
030
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御用
(
ごよう
)
にたたねばなるまいぞ。
031
高熊山
(
たかくまやま
)
の
修業
(
しうげふ
)
の
事
(
こと
)
は
覚
(
おぼ
)
えて
居
(
を
)
るか』
032
喜楽
(
きらく
)
『あんまり
苦
(
くる
)
しうて、
033
今
(
いま
)
の
処
(
ところ
)
では
全然
(
すつくり
)
忘
(
わす
)
れて
了
(
しま
)
ひました。
034
何
(
なん
)
だか
頭
(
あたま
)
がボーツとして、
035
分
(
わか
)
らぬ
様
(
やう
)
になつて
来
(
き
)
ました。
036
又
(
また
)
ボツボツと
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
すだらうと
思
(
おも
)
ふて
居
(
ゐ
)
ます』
037
大霜
(
おほしも
)
『これから
元市
(
もといち
)
に
申
(
まを
)
した
金
(
かね
)
の
所在
(
ありか
)
を、
038
其
(
その
)
方
(
はう
)
に
知
(
し
)
らすによつて、
039
鶴嘴
(
つるばし
)
や
鋤鏈
(
じよれん
)
を
用意
(
ようい
)
し、
040
畚
(
ふご
)
を
一荷
(
いつか
)
もつて
奥山
(
おくやま
)
[
※
現・亀岡市東別院町大野奥山のことか?
]
に
行
(
ゆ
)
け。
041
そこになつたら
又
(
また
)
此
(
この
)
方
(
はう
)
が
知
(
し
)
らしてやるから……』
042
喜楽
(
きらく
)
『
奥山
(
おくやま
)
の
様
(
やう
)
な
処
(
ところ
)
へ
一人
(
ひとり
)
行
(
ゆ
)
くのは
困
(
こま
)
ります。
043
宇一
(
ういち
)
でも
連
(
つ
)
れて
行
(
ゆ
)
きませうか』
044
大霜
(
おほしも
)
『
馬鹿
(
ばか
)
をいふな。
045
あんな
欲
(
よく
)
どしい
奴
(
やつ
)
を
連
(
つ
)
れて
行
(
ゆ
)
かうものなら、
046
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御用
(
ごよう
)
どころか、
047
みんな
自分
(
じぶん
)
の
所有
(
もの
)
にして
了
(
しま
)
ふ。
048
其
(
その
)
方
(
はう
)
一人
(
ひとり
)
、
049
神
(
かみ
)
がついて
居
(
を
)
るから
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つて
用意
(
ようい
)
をせい。
050
お
前
(
まへ
)
もやつぱり
金
(
かね
)
は
要
(
い
)
るだらう』
051
喜楽
(
きらく
)
『
私
(
わたし
)
はもう
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
道
(
みち
)
へ
這入
(
はい
)
つたのですから、
052
金
(
かね
)
の
欲望
(
よくばう
)
はありませぬ。
053
金
(
かね
)
の
事
(
こと
)
聞
(
き
)
いてもゾツと
致
(
いた
)
します』
054
大霜
(
おほしも
)
『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな。
055
此
(
この
)
時節
(
じせつ
)
に
金
(
かね
)
がなくて
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
が
拡
(
ひろ
)
まるか。
056
家
(
いへ
)
一
(
ひと
)
つ
建
(
た
)
てるにも
金
(
かね
)
が
要
(
い
)
るぢやないか、
057
布教
(
ふけう
)
に
歩
(
ある
)
いても
旅費
(
りよひ
)
が
要
(
い
)
る。
058
又
(
また
)
肉体
(
にくたい
)
も
食
(
く
)
はねばならず、
059
着物
(
きもの
)
も
着
(
き
)
なくてはならぬぢやないか。
060
金
(
かね
)
に
離
(
はな
)
れて
如何
(
どう
)
して
神
(
かみ
)
のお
道
(
みち
)
が
拡
(
ひろ
)
まるか』
061
喜楽
(
きらく
)
『それもさうです。
062
然
(
しか
)
し
重
(
おも
)
たいものを
沢山
(
たくさん
)
に
持
(
も
)
つて
帰
(
かへ
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は、
063
暗
(
くら
)
がりの
山道
(
やまみち
)
、
064
困
(
こま
)
るぢやありませぬか』
065
大霜
(
おほしも
)
『
俺
(
おれ
)
が
天狗
(
てんぐ
)
の
正体
(
しやうたい
)
を
現
(
あら
)
はして、
066
重
(
おも
)
たければ
俺
(
おれ
)
が
担
(
かつ
)
いで
帰
(
かへ
)
つてやる』
067
と
自分
(
じぶん
)
の
口
(
くち
)
から
云
(
い
)
つたり、
068
答
(
こた
)
へたり、
069
自問
(
じもん
)
自答
(
じたふ
)
をする
事
(
こと
)
稍
(
やや
)
暫
(
しば
)
らくであつた。
070
斯
(
か
)
う
聞
(
き
)
くと、
071
矢張
(
やはり
)
金
(
かね
)
が
無
(
な
)
ければならぬ
様
(
やう
)
な
心持
(
こころもち
)
になり、
072
宇一
(
ういち
)
の
来
(
こ
)
ぬ
中
(
うち
)
に
掘出
(
ほりだ
)
して
来
(
こ
)
うと
思
(
おも
)
ひ、
073
土
(
つち
)
運
(
はこ
)
びの
小
(
ちひ
)
さい
畚
(
ふご
)
を
携
(
たづさ
)
へ、
074
椋
(
むく
)
の
杖
(
つゑ
)
、
075
鶴嘴
(
つるばし
)
に
鋤鏈
(
じよれん
)
、
076
畚
(
ふご
)
に
小判
(
こばん
)
一杯
(
いつぱい
)
担
(
にな
)
うて
帰
(
かへ
)
る
様
(
やう
)
な
心持
(
こころもち
)
で、
077
宮垣内
(
みやがいち
)
の
伏屋
(
ふせや
)
をソツと
抜
(
ぬ
)
け
出
(
だ
)
し、
078
前条
(
まへんでう
)
から
愛宕山
(
あたごさん
)
麓
(
ろく
)
、
079
姥
(
うば
)
の
懐
(
ふところ
)
、
080
虎池
(
とらいけ
)
、
081
新池
(
しんいけ
)
、
082
芝ケ原
(
しばがはら
)
、
083
砂止
(
すなどめ
)
と
段々
(
だんだん
)
進
(
すす
)
んで、
084
高熊山
(
たかくまやま
)
の
修業場
(
しうげふば
)
を
右手
(
めて
)
に
眺
(
なが
)
め、
085
猪熊峠
(
いのくまたうげ
)
をドンドン
登
(
のぼ
)
り、
086
危険
(
きけん
)
極
(
きは
)
まる
打
(
う
)
チ
越
(
こし
)
と
云
(
い
)
ふ
坂
(
さか
)
を
上
(
のぼ
)
り、
087
算盤岩
(
そろばんいは
)
を
渡
(
わた
)
り、
088
再
(
ふたた
)
び
馬
(
うま
)
の
背
(
せ
)
の
険
(
けん
)
を
経
(
へ
)
て、
089
奥山
(
おくやま
)
の
玉子
(
たまこ
)
ケ
原
(
はら
)
と
云
(
い
)
ふ
谷間
(
たにま
)
へ
進
(
すす
)
んで
行
(
い
)
つた。
090
そつと
空畚
(
からふご
)
を
卸
(
おろ
)
し、
091
山
(
やま
)
に
腰掛
(
こしか
)
け
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
め、
092
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
始
(
はじ
)
めた。
093
何
(
なん
)
だか
知
(
し
)
らぬが
其辺
(
そこら
)
ぢうが
真黒気
(
まつくろけ
)
になつて
来
(
き
)
た。
094
谷
(
たに
)
の
下
(
した
)
の
方
(
はう
)
から
灰色
(
はひいろ
)
の
雲
(
くも
)
の
様
(
やう
)
なものが、
095
チクチクと
此方
(
こつち
)
へ
向
(
むか
)
ふて
押寄
(
おしよ
)
せて
来
(
く
)
る
様
(
やう
)
な
気分
(
きぶん
)
がして、
096
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
手
(
て
)
も
足
(
あし
)
も
震
(
ふる
)
ふて
居
(
ゐ
)
る。
097
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
へぬ
淋
(
さび
)
しい
様
(
やう
)
な
情
(
なさけ
)
ない
様
(
やう
)
な
気分
(
きぶん
)
になり、
098
仮令
(
たとへ
)
一億
(
いちおく
)
円
(
ゑん
)
の
金
(
かね
)
があつても
掘
(
ほ
)
り
度
(
た
)
くもなし、
099
欲
(
ほ
)
しくもない。
100
それよりも
早
(
はや
)
く、
101
自分
(
じぶん
)
の
宅
(
たく
)
に
帰
(
かへ
)
り
度
(
た
)
いと
云
(
い
)
ふ
弱
(
よわ
)
い
気分
(
きぶん
)
が
襲
(
おそ
)
ふて
来
(
き
)
た。
102
幸
(
さいは
)
ひに
東
(
ひがし
)
の
空
(
そら
)
から、
103
春
(
はる
)
の
朧月
(
おぼろづき
)
が
痩
(
やせ
)
た
顔
(
かほ
)
して
昇
(
のぼ
)
つて
来
(
き
)
た。
104
心
(
こころ
)
の
勢
(
せい
)
か、
105
其辺
(
そこら
)
あたりに
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
へぬ
淋
(
さび
)
しい、
106
人
(
ひと
)
とも
虫
(
むし
)
とも
獣
(
けだもの
)
とも
見当
(
けんたう
)
のつかぬ
様
(
やう
)
な、
107
悲
(
かな
)
しい
嫌
(
いや
)
らしい
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
る。
108
臍
(
へそ
)
の
下
(
した
)
から
又
(
また
)
もや
三
(
みつ
)
つの
塊
(
かたまり
)
がグレグレグレと
動
(
うご
)
き
出
(
だ
)
し、
109
咽喉元
(
のどもと
)
へ
舞
(
ま
)
ひ
上
(
あが
)
る。
110
又
(
また
)
神懸
(
かむがか
)
りだなと
思
(
おも
)
ふて
居
(
ゐ
)
ると、
111
大霜天狗
『
俺
(
おれ
)
は
大霜
(
おほしも
)
だ、
112
サア
此
(
この
)
下
(
した
)
に
小判
(
こばん
)
がいけてある。
113
此処
(
ここ
)
を
掘
(
ほ
)
れ、
114
鶴嘴
(
とんが
)
を
持
(
も
)
て!』
115
と
呶鳴
(
どな
)
り
出
(
だ
)
した。
116
喜楽
(
きらく
)
は
命
(
めい
)
のまにまに
鶴嘴
(
つるばし
)
の
柄
(
え
)
を
握
(
にぎ
)
ると、
117
両
(
りやう
)
の
手
(
て
)
は
鶴嘴
(
つるばし
)
の
柄
(
え
)
に
食
(
く
)
ひついた
様
(
やう
)
に
離
(
はな
)
れず、
118
器械
(
きかい
)
的
(
てき
)
に
鶴嘴
(
つるばし
)
は、
119
カチンカチンと
動
(
うご
)
き
出
(
だ
)
した。
120
何程
(
なにほど
)
体
(
からだ
)
がえらいから
一休
(
ひとやす
)
みしようと
思
(
おも
)
ふても、
121
鶴嘴
(
つるばし
)
の
柄
(
え
)
が
手
(
て
)
に
着
(
つ
)
いて
離
(
はな
)
れず、
122
勝手
(
かつて
)
に
鶴嘴
(
つるばし
)
は
堅
(
かた
)
い
土
(
つち
)
をコツンコツンとこつき
出
(
だ
)
す。
123
殆
(
ほとん
)
ど
二
(
に
)
時間
(
じかん
)
ばかり
土
(
つち
)
をこついては
鋤鏈
(
じよれん
)
でかき
分
(
わ
)
けさせられ、
124
又
(
また
)
鶴嘴
(
つるばし
)
で
土
(
つち
)
をつつきては
鋤鏈
(
じよれん
)
で
掻
(
か
)
き
分
(
わ
)
け、
125
又
(
また
)
鶴嘴
(
つるばし
)
で
土
(
つち
)
を
掘
(
ほ
)
り
二
(
に
)
尺
(
しやく
)
ばかりの
深
(
ふか
)
さに
四
(
よん
)
尺
(
しやく
)
四方
(
しはう
)
程
(
ほど
)
掘
(
ほ
)
らされて
了
(
しま
)
ふた。
126
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
から、
127
大霜
(
おほしも
)
『
大分
(
だいぶん
)
お
前
(
まへ
)
も
草臥
(
くたぶ
)
れただらう。
128
神
(
かみ
)
も
余程
(
よほど
)
疲
(
つか
)
れたから
一寸
(
ちよつと
)
一服
(
いつぷく
)
致
(
いた
)
す』
129
と
云
(
い
)
ふと
共
(
とも
)
に、
130
引着
(
ひつつ
)
いて
居
(
ゐ
)
た
鋤鏈
(
じよれん
)
は
手
(
て
)
から
離
(
はな
)
れた。
131
殆
(
ほとん
)
ど
十
(
じつ
)
分間
(
ぷんかん
)
ばかり
腰
(
こし
)
を
打
(
う
)
ちかけ
掘
(
ほ
)
つた
穴
(
あな
)
を
眺
(
なが
)
め、
132
(喜楽)
『こんな
処
(
ところ
)
何時迄
(
いつまで
)
掘
(
ほ
)
つた
処
(
ところ
)
で
何
(
なに
)
が
出
(
で
)
てくるもんか』
133
と
心
(
こころ
)
に
思
(
おも
)
はれて
仕方
(
しかた
)
がなかつた。
134
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
から、
135
大霜
(
おほしも
)
『オイ、
136
喜楽
(
きらく
)
、
137
貴様
(
きさま
)
はまだ
疑
(
うたが
)
ふて
居
(
を
)
るな。
138
此処
(
ここ
)
に
金
(
かね
)
が
無
(
な
)
いと
思
(
おも
)
ふか、
139
神
(
かみ
)
があると
申
(
まを
)
したら
確
(
たしか
)
にある。
140
もう
一息
(
ひといき
)
の
辛抱
(
しんばう
)
だ。
141
さうならば
貴様
(
きさま
)
の
疑
(
うたがひ
)
もとけるだらう。
142
金光
(
きんくわう
)
燦然
(
さんぜん
)
として
目
(
め
)
も
眩
(
まばゆ
)
きばかりの、
143
大判
(
おほばん
)
小判
(
こばん
)
が
無尽蔵
(
むじんざう
)
に
現
(
あら
)
はれて
来
(
く
)
るぞ。
144
貴様
(
きさま
)
はまだ
銀貨
(
ぎんくわ
)
や
銅貨
(
どうくわ
)
は
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
るが、
145
金
(
きん
)
は
見
(
み
)
た
事
(
こと
)
はあるまい。
146
ビツクリ
致
(
いた
)
さぬ
様
(
やう
)
に、
147
先
(
さき
)
に
気
(
き
)
をつけておく。
148
シツカリ
腹帯
(
はらおび
)
をしめてかかるんだぞ。
149
嫌
(
いや
)
さうにすると
神
(
かみ
)
が
懲戒
(
みせしめ
)
を
致
(
いた
)
すぞよ。
150
又
(
また
)
喉
(
のど
)
をつめようか』
151
喜楽
(
きらく
)
『いやとも
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
つてるのぢやありませぬ。
152
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
云
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
りしとるぢやありませぬか』
153
大霜
(
おほしも
)
『
随分
(
ずいぶん
)
楽
(
たの
)
しみぢやらうなア。
154
何程
(
なにほど
)
貴様
(
きさま
)
は
金
(
かね
)
は
要
(
い
)
らぬと
ヘラズ
口
(
ぐち
)
を
叩
(
たた
)
いても、
155
其
(
その
)
金
(
きん
)
が
隠
(
かく
)
してあると
思
(
おも
)
へば、
156
やつぱり
心
(
こころ
)
がいそいそするだらう。
157
此
(
この
)
金
(
かね
)
がありさへすれば、
158
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
苦労
(
くらう
)
も
要
(
い
)
らず
結構
(
けつこう
)
に
渡
(
わた
)
られるのだ。
159
貴様
(
きさま
)
は
余程
(
よほど
)
果報者
(
くわほうもの
)
だ。
160
サア
早
(
はや
)
く
鶴嘴
(
つるばし
)
を
持
(
も
)
て!』
161
と
云
(
い
)
ふかと
見
(
み
)
れば、
162
自分
(
じぶん
)
の
体
(
からだ
)
は
器械
(
きかい
)
的
(
てき
)
にポイと
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り、
163
矢庭
(
やには
)
に
鶴嘴
(
つるばし
)
を
握
(
にぎ
)
り、
164
カチンカチンと
大地
(
だいち
)
をつつき
出
(
だ
)
した。
165
掘
(
ほ
)
つても
掘
(
ほ
)
つても
天然
(
てんねん
)
の
岩
(
いは
)
ばかり
二
(
に
)
尺
(
しやく
)
ほど
下
(
した
)
に
並
(
なら
)
んでゐる。
166
又
(
また
)
一
(
いち
)
時間
(
じかん
)
程
(
ほど
)
掘
(
ほ
)
らされたが、
167
今度
(
こんど
)
は
一寸
(
ちよつと
)
も
掘
(
ほ
)
れない。
168
鶴嘴
(
つるばし
)
の
先
(
さき
)
は
坊主
(
ばうず
)
になつて
了
(
しま
)
ひ、
169
一寸
(
ちよつと
)
も
利
(
き
)
かなくなつて
了
(
しま
)
つた。
170
喜楽
(
きらく
)
『こんな
岩
(
いは
)
ばかり、
171
何時迄
(
いつまで
)
こついて
居
(
を
)
つても
駄目
(
だめ
)
でせう。
172
誰
(
たれ
)
かが
埋
(
い
)
けたのなら
岩蓋
(
いはぶた
)
が
出
(
で
)
なければならぬ。
173
此奴
(
こいつ
)
ア
天然
(
てんねん
)
の
岩
(
いは
)
に
違
(
ちが
)
ひありませぬ。
174
チツと
処
(
ところ
)
が
間違
(
まちが
)
ふて
居
(
を
)
るのぢやありませぬか、
175
もう
欲
(
よく
)
にも
徳
(
とく
)
にも
此
(
この
)
上
(
うへ
)
働
(
はたら
)
く
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬわ』
176
大霜
(
おほしも
)
『アハヽヽヽ、
177
腰抜
(
こしぬ
)
けだな。
178
そんな
弱
(
よわ
)
い
事
(
こと
)
で
如何
(
どう
)
して
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御用
(
ごよう
)
が
出来
(
でき
)
るか。
179
地球
(
ちきう
)
の
中心
(
ちうしん
)
迄
(
まで
)
打
(
ぶ
)
ち
抜
(
ぬ
)
く
丈
(
だけ
)
の
決心
(
けつしん
)
がなければ、
180
三間
(
さんげん
)
や
五間
(
ごけん
)
掘
(
ほ
)
つては
小判
(
こばん
)
の
処
(
ところ
)
へは
届
(
とど
)
かぬぞ』
181
喜楽
(
きらく
)
『
天狗
(
てんぐ
)
サン、
182
お
前
(
まへ
)
サン
俺
(
わし
)
を
騙
(
だま
)
したのだなア。
183
あんまり
殺生
(
せつしやう
)
ぢやありませぬか。
184
金
(
かね
)
を
欲
(
ほ
)
しがつて
居
(
ゐ
)
る
元市
(
もといち
)
には
掘
(
ほ
)
らさずに、
185
金
(
かね
)
なんか
要
(
い
)
らぬと
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
る
私
(
わたし
)
を、
186
此
(
こ
)
んな
処
(
ところ
)
へ
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
て
騙
(
だま
)
すとはあんまりです。
187
サアもう
私
(
わたし
)
の
肉体
(
にくたい
)
には
置
(
お
)
きませぬ。
188
早
(
はや
)
く
出
(
で
)
て
下
(
くだ
)
さい』
189
大霜
(
おほしも
)
『
何程
(
なにほど
)
出
(
で
)
えと
云
(
い
)
つても、
190
お
前
(
まへ
)
の
生命
(
いのち
)
のある
限
(
かぎ
)
り
出
(
で
)
る
事
(
こと
)
はならぬわい。
191
本当
(
ほんたう
)
は
嘘
(
うそ
)
だ、
192
お
前
(
まへ
)
の
心
(
こころ
)
をためしたのだ。
193
こんな
処
(
ところ
)
へ
金
(
かね
)
があつて
堪
(
たま
)
るかい。
194
アハヽヽヽ』
195
喜楽
(
きらく
)
『こりや、
196
ど
狸
(
たぬき
)
!
人
(
ひと
)
の
体
(
からだ
)
へ
這入
(
はい
)
りやがつて、
197
馬鹿
(
ばか
)
に
さらす
も
程
(
ほど
)
がある。
198
もう
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふても
俺
(
おれ
)
の
体
(
からだ
)
にはおいてやらぬぞ』
199
大霜
(
おほしも
)
『
貴様
(
きさま
)
はまだ
金
(
かね
)
が
欲
(
ほ
)
しいのか』
200
喜楽
(
きらく
)
『
俺
(
おれ
)
は
一寸
(
ちよつと
)
も
欲
(
ほ
)
しくないわい。
201
天狗
(
てんぐ
)
の
奴
(
やつ
)
が
欲
(
ほ
)
しいものだから
俺
(
おれ
)
を
使
(
つか
)
ひやがつて、
202
あてが
外
(
はづ
)
れたのだらう。
203
あんまり
馬鹿
(
ばか
)
にすな、
204
サア
去
(
い
)
にくされ』
205
と
腹
(
はら
)
から
胸
(
むね
)
を
握
(
にぎ
)
り
拳
(
こぶし
)
で
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
叩
(
たた
)
いて
見
(
み
)
た。
206
それきり
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
の
塊
(
かたまり
)
も
舞
(
ま
)
ひ
上
(
あが
)
つて
来
(
こ
)
ず、
207
仏
(
ぶつ
)
が
法
(
ほふ
)
とも
云
(
い
)
はなくなつた。
208
斯
(
か
)
うなると
俄
(
にはか
)
に
淋
(
さび
)
しくなつて
堪
(
たま
)
らない。
209
折角
(
せつかく
)
此処迄
(
ここまで
)
来
(
き
)
て、
210
空畚
(
からふご
)
を
担
(
かつ
)
いで
帰
(
かへ
)
るのも
態
(
ざま
)
が
悪
(
わる
)
いと、
211
月夜
(
つきよ
)
の
事
(
こと
)
で
露
(
つゆ
)
をおびて
光
(
ひか
)
つて
居
(
ゐ
)
る
紫躑躅
(
むらさきつつじ
)
や
赤躑躅
(
あかつつじ
)
を、
212
ポキポキ
折
(
お
)
つて
一荷
(
いつか
)
の
花
(
はな
)
の
荷
(
に
)
を
拵
(
こしら
)
へ、
213
そこへ
鶴嘴
(
つるばし
)
や
鋤鏈
(
じよれん
)
を
隠
(
かく
)
し、
214
朧月夜
(
おぼろづきよ
)
を
ぼやい
たり、
215
びくついたりし
乍
(
なが
)
ら、
216
漸
(
やうや
)
くにして
砂止
(
すなどめ
)
迄
(
まで
)
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
217
其処
(
そこ
)
にはハツキリ
分
(
わか
)
らぬが
二
(
ふた
)
つの
黒
(
くろ
)
い
影
(
かげ
)
が
腰
(
こし
)
をかけて、
218
煙管
(
きせる
)
煙草
(
たばこ
)
をスパスパやつて
居
(
ゐ
)
る。
219
喜楽
(
きらく
)
は
心
(
こころ
)
の
裡
(
うち
)
で、
220
(喜楽)
『ハテナ、
221
今頃
(
いまごろ
)
にあんな
処
(
ところ
)
に
男
(
をとこ
)
が
煙草
(
たばこ
)
を
吸
(
す
)
ふて
居
(
ゐ
)
やがる。
222
ヒヨツとしたら
泥坊
(
どろばう
)
かも
知
(
し
)
れぬぞ。
223
もし
泥坊
(
どろばう
)
だつたら、
224
折角
(
せつかく
)
掘
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
した
小判
(
こばん
)
を
皆
(
みな
)
盗
(
と
)
られて
了
(
しま
)
ひ、
225
生命
(
いのち
)
まで
奪
(
と
)
られて
了
(
しま
)
ふかも
知
(
し
)
れぬ。
226
マア、
227
金
(
かね
)
が
無
(
な
)
うてよかつた。
228
もし
泥坊
(
どろばう
)
が
何
(
なに
)
か
渡
(
わた
)
せと
云
(
い
)
つたら、
229
此
(
この
)
花
(
はな
)
をつき
出
(
だ
)
してやつたら
吃驚
(
びつくり
)
するだらう』
230
と
思
(
おも
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
231
怕々
(
こはごは
)
一筋道
(
ひとすぢみち
)
を
黒
(
くろ
)
い
影
(
かげ
)
の
処
(
ところ
)
迄
(
まで
)
やつて
来
(
く
)
ると、
232
斎藤元市
『ヤア、
233
大先生
(
だいせんせい
)
、
234
お
目出度
(
めでた
)
う!
之
(
これ
)
から
私
(
わたし
)
が
担
(
かつ
)
いであげます。
235
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
大霜
(
おほしも
)
さまがきつう
止
(
と
)
められましたから、
236
お
供
(
とも
)
はしませんでしたが、
237
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
掘
(
ほ
)
つて
厶
(
ござ
)
つた
時
(
とき
)
、
238
一丁
(
いつちやう
)
程
(
ほど
)
側
(
わき
)
から
見張
(
みは
)
りをして
居
(
を
)
りました。
239
大分
(
だいぶ
)
沢山
(
たくさん
)
掘
(
ほ
)
れましたやらうなア。
240
サア
私
(
わたし
)
が
之
(
これ
)
から
担
(
かつ
)
いであげませう。
241
何分
(
なにぶん
)
黄金
(
わうごん
)
といふものは
嵩
(
かさ
)
の
割合
(
わりあひ
)
に
重
(
おも
)
いもんだから……』
242
と
欣々
(
いそいそ
)
として
噪
(
はしや
)
いでゐる。
243
喜楽
(
きらく
)
『いいえ、
244
そんなに
重
(
おも
)
いものぢやありませぬ。
245
空畚
(
からふご
)
と
同
(
おな
)
じですから、
246
此
(
この
)
儘
(
まま
)
私
(
わたし
)
が
担
(
かつ
)
いで
参
(
まゐ
)
ります。
247
薩張
(
さつぱ
)
り
駄目
(
だめ
)
でした』
248
元市
(
もといち
)
『
駄目
(
だめ
)
でしたやらう。
249
それはその
筈
(
はず
)
ぢや。
250
此処
(
ここ
)
はマア
駄目
(
だめ
)
にして、
251
此
(
この
)
儘
(
まま
)
私
(
わたし
)
の
家
(
うち
)
へ
帰
(
かへ
)
つたら
如何
(
どう
)
ですか』
252
喜楽
(
きらく
)
『
元市
(
もといち
)
サン、
253
みんな
空畚
(
からふご
)
で
躑躅
(
つつじ
)
の
花
(
はな
)
ばつかりです』
254
元市
(
もといち
)
『
上
(
うは
)
かはは
躑躅
(
つつじ
)
でも
宜
(
よ
)
いぢやないか、
255
どれ
私
(
わたし
)
が
担
(
かつ
)
ぎます』
256
と
無理
(
むり
)
に
棒
(
ぼう
)
をひつたくつて
肩
(
かた
)
に
担
(
かつ
)
ぎ、
257
元市
(
もといち
)
『あゝ
割
(
わり
)
とは
軽
(
かる
)
い、
258
これでも
一万
(
いちまん
)
円
(
ゑん
)
位
(
ぐらゐ
)
はあるだらう。
259
空畚
(
からふご
)
にしては
大変
(
たいへん
)
重
(
おも
)
いから……』
260
喜楽
(
きらく
)
『
重
(
おも
)
いのは
鶴嘴
(
つるばし
)
の
目方
(
めかた
)
ぢや』
261
元市
(
もといち
)
『マア
結構
(
けつこう
)
々々
(
けつこう
)
、
262
仮令
(
たとへ
)
少々
(
せうせう
)
でも
資本
(
もとで
)
さへあればよい。
263
サア
之
(
これ
)
から
八十
(
はちじふ
)
万
(
まん
)
円
(
ゑん
)
儲
(
まう
)
けて、
264
天狗
(
てんぐ
)
さまの
公園
(
こうゑん
)
にかからう』
265
と
欣々
(
いそいそ
)
として
吾
(
わが
)
家
(
や
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
266
それから
後
(
あと
)
は
元市
(
もといち
)
親子
(
おやこ
)
の
信用
(
しんよう
)
を
失
(
うしな
)
ひ、
267
遂
(
つひ
)
には
修行場
(
しうぎやうば
)
まで
断
(
ことわ
)
られて
了
(
しま
)
つた。
268
不得已
(
やむをえず
)
、
269
自分
(
じぶん
)
は
自宅
(
じたく
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
自修
(
じしう
)
する
事
(
こと
)
となつた。
270
多田
(
ただ
)
琴
(
こと
)
は
中村
(
なかむら
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
奥山川
(
おくやまがは
)
の
水
(
みづ
)
に
浸
(
ひた
)
り
御禊
(
みそぎ
)
し
乍
(
なが
)
ら、
271
盛
(
さかん
)
に
鎮魂
(
ちんこん
)
や
帰神
(
きしん
)
の
修業
(
しうげふ
)
を
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
と
共
(
とも
)
にやつて
居
(
ゐ
)
た。
272
(
大正一一・一〇・九
旧八・一九
北村隆光
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 五万円
(B)
(N)
牛の糞 >>>
霊界物語
>
舎身活躍(第37~48巻)
>
第37巻(子の巻)
> 第2篇 青垣山内 > 第8章 梟の宵企
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第8章 梟の宵企|第37巻|舎身活躍|霊界物語|/rm3708】
合言葉「みろく」を入力して下さい→