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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第37巻(子の巻)
序
総説
第1篇 安閑喜楽
第1章 富士山
第2章 葱節
第3章 破軍星
第4章 素破抜
第5章 松の下
第6章 手料理
第2篇 青垣山内
第7章 五万円
第8章 梟の宵企
第9章 牛の糞
第10章 矢田の滝
第11章 松の嵐
第12章 邪神憑
第3篇 阪丹珍聞
第13章 煙の都
第14章 夜の山路
第15章 盲目鳥
第16章 四郎狸
第17章 狐の尾
第18章 奥野操
第19章 逆襲
第20章 仁志東
第4篇 山青水清
第21章 参綾
第22章 大僧坊
第23章 海老坂
第24章 神助
第25章 妖魅来
霊の礎(九)
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舎身活躍(第37~48巻)
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第37巻(子の巻)
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<<< 夜の山路
(B)
(N)
四郎狸 >>>
第一五章
盲目鳥
(
めくらどり
)
〔一〇二七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第37巻 舎身活躍 子の巻
篇:
第3篇 阪丹珍聞
よみ(新仮名遣い):
はんたんちんぶん
章:
第15章 盲目鳥
よみ(新仮名遣い):
めくらどり
通し章番号:
1027
口述日:
1922(大正11)年10月10日(旧08月20日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年3月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
田植えの時期で参詣人もまばらな折から、身なりいやしい一人の婦人が、両眼のあたりを包帯して杖をついてやってきた。来意を聞けば、眼病を直してほしいとのことであった。
夫に死に別れて墓参りをしていたところ、墓から立ち出た怪しい影に驚いて眼病を患い、赤子も乳がとぼしいばかりに十日ほど前に死に別れたのだと語った。
喜楽は、大阪からの帰りに六地蔵で遭遇した怪しい女はこの夫人であったことを悟り、また自分の影に驚いて眼病になったと思うと神様に対して申し訳ない気持ちになった。
直ちに井戸端で禊をなし、祈願をこらしたところ、石田小末というその女の眼病はたちまち治ってしまった。
石田小末はこれより幽斎を修行し大いに神術の発達を得た。高等眷属の神霊が懸って幽界の有様を表示したが、百日ほどして、大阪の姉の家に行くといって喜楽に別れを告げたままになってしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-10-23 11:33:56
OBC :
rm3715
愛善世界社版:
187頁
八幡書店版:
第7輯 101頁
修補版:
校定版:
195頁
普及版:
92頁
初版:
ページ備考:
001
五月雨
(
さみだれ
)
の
空
(
そら
)
低
(
ひく
)
うして、
002
四辺
(
しへん
)
の
山
(
やま
)
は
雲
(
くも
)
に
包
(
つつ
)
まれ、
003
杜鵑
(
ほととぎす
)
の
鳴
(
な
)
く
声
(
こゑ
)
遠近
(
をちこち
)
に
聞
(
きこ
)
える、
004
穴太
(
あなを
)
宮内垣
(
みやがいち
)
の
賤
(
しづ
)
が
伏家
(
ふせや
)
も、
005
今
(
いま
)
は
犬
(
いぬ
)
の
手
(
て
)
も
人
(
ひと
)
の
手
(
て
)
と
称
(
しよう
)
する
田植
(
たうゑ
)
の
最中
(
さいちう
)
、
006
片時
(
かたとき
)
を
争
(
あらそ
)
ふ
農家
(
のうか
)
の
激戦
(
げきせん
)
場裡
(
ぢやうり
)
で、
007
遠近
(
ゑんきん
)
の
人々
(
ひとびと
)
は
植付
(
うえつけ
)
、
008
麦刈
(
むぎかり
)
などに
忙殺
(
ぼうさつ
)
されて、
009
教
(
をしへ
)
の
門
(
もん
)
を
潜
(
くぐ
)
る
人々
(
ひとびと
)
の
足
(
あし
)
も
杜絶
(
とだ
)
えた
折柄
(
をりから
)
、
010
身
(
み
)
なり
賤
(
いや
)
しい
一人
(
ひとり
)
の
婦人
(
ふじん
)
、
011
両眼
(
りやうがん
)
のあたりを
白
(
しろ
)
き
布
(
ぬの
)
にて
繃帯
(
はうたい
)
し
乍
(
なが
)
ら、
012
杖
(
つゑ
)
を
力
(
ちから
)
に、
013
婦人(小末)
『
先生
(
せんせい
)
はお
在宅
(
うち
)
ですか?』
014
と
尋
(
たづ
)
ねて
来
(
き
)
た。
015
婆
(
ば
)
アサンが
案内
(
あんない
)
とみえて、
016
一人
(
ひとり
)
付
(
つ
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
017
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
参拝者
(
さんぱいしや
)
がないので、
018
神殿
(
しんでん
)
に
於
(
おい
)
て
心
(
こころ
)
ゆく
迄
(
まで
)
、
019
幽斎
(
いうさい
)
の
修行
(
しうぎやう
)
にひたつて
居
(
ゐ
)
た
喜楽
(
きらく
)
は、
020
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
いて、
021
喜楽
『マアマア』
022
と
狭
(
せま
)
い
座敷
(
ざしき
)
へ
通
(
とほ
)
し、
023
来意
(
らいい
)
を
問
(
と
)
へば、
024
眼病
(
がんびやう
)
を
治
(
なを
)
して
欲
(
ほ
)
しいので、
025
はるばる
参拝
(
さんぱい
)
したとの
事
(
こと
)
であつた。
026
どことなく
何時
(
いつ
)
かは
見
(
み
)
たことのある
様
(
やう
)
な
女
(
をんな
)
と、
027
訝
(
いぶ
)
かり
乍
(
なが
)
ら
住所
(
ぢうしよ
)
姓名
(
せいめい
)
や、
028
来歴
(
らいれき
)
を
問
(
と
)
うて
見
(
み
)
た。
029
女
(
をんな
)
は
恥
(
はづ
)
かしげに
顔
(
かほ
)
を
赤
(
あか
)
らめ、
030
稍
(
やや
)
俯
(
うつ
)
むき
気味
(
ぎみ
)
になつて
語
(
かた
)
る。
031
婦人(小末)
『
私
(
わたし
)
は
西別院
(
にしべつゐん
)
村
(
むら
)
の
小末
(
こすゑ
)
と
申
(
まを
)
す
者
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
います。
032
見
(
み
)
るかげもなき
貧乏人
(
びんばふにん
)
で、
033
屋根
(
やね
)
はもり、
034
壁
(
かべ
)
はおち、
035
明日
(
あす
)
の
糧
(
かて
)
を
貯
(
たくは
)
ふるの
余裕
(
よゆう
)
もなき
貧
(
まづ
)
しい
暮
(
くら
)
しの
中
(
なか
)
に、
036
私
(
わたし
)
の
夫
(
をつと
)
は
長
(
なが
)
の
病
(
やまひ
)
になやまされ、
037
私
(
わたし
)
は
産婦
(
さんぷ
)
の
重
(
おも
)
き
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
、
038
働
(
はたら
)
きすることさへも
叶
(
かな
)
はねば、
039
朝夕
(
あさゆふ
)
の
糊口
(
ここう
)
に
差支
(
さしつか
)
へ、
040
銭
(
ぜに
)
となるべき
物
(
もの
)
は
売
(
う
)
り
払
(
はら
)
ひ、
041
質
(
しち
)
におき
尽
(
つ
)
くして、
042
今
(
いま
)
は
最早
(
もはや
)
何
(
なに
)
もなき
極貧
(
ごくひん
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
、
043
医薬
(
いやく
)
の
手
(
て
)
だてさへなく、
044
夫
(
をつと
)
は
無残
(
むざん
)
にも
死
(
し
)
を
待
(
ま
)
つより
仕方
(
しかた
)
のない
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
となりました。
045
草根
(
さうこん
)
木皮
(
ぼくひ
)
を
食
(
く
)
ひ、
046
一
(
いち
)
時
(
じ
)
の
命
(
いのち
)
をつないで
居
(
を
)
りましたが、
047
何
(
なん
)
の
因果
(
いんぐわ
)
か、
048
夫婦
(
ふうふ
)
の
体
(
からだ
)
は
水腫
(
みづば
)
れを
起
(
おこ
)
し、
049
夫
(
をつと
)
は
遂
(
つひ
)
に
幽界
(
あのよ
)
の
人
(
ひと
)
となつて
了
(
しま
)
ひました。
050
取
(
と
)
りのこされた
私
(
わたし
)
は、
051
まだ
出産後
(
しゆつさんご
)
僅
(
わづか
)
に
一週日
(
いつしうにち
)
、
052
血
(
ち
)
の
若
(
わか
)
い
身
(
み
)
で、
053
赤児
(
あかご
)
をかかへて、
054
形
(
かたち
)
許
(
ばか
)
りの
弔
(
とむら
)
ひをすませ、
055
さむしい
日
(
ひ
)
をおくる
内
(
うち
)
にも、
056
村
(
むら
)
の
人
(
ひと
)
達
(
たち
)
の
無情
(
むじやう
)
さ、
057
米屋
(
こめや
)
は
米代
(
こめだい
)
を
払
(
はら
)
へとせめてくる、
058
醤油屋
(
しやうゆや
)
は
醤油代
(
しやうゆだい
)
を
渡
(
わた
)
せときびしい
催促
(
さいそく
)
に、
059
如何
(
どう
)
することも
出来
(
でき
)
ませず、
060
一層
(
いつそう
)
の
事
(
こと
)
私
(
わたし
)
も
夫
(
をつと
)
の
後
(
あと
)
を
逐
(
お
)
ふて
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
暇
(
いとま
)
乞
(
ご
)
ひをせうかと
思案
(
しあん
)
に
沈
(
しづ
)
み
乍
(
なが
)
ら、
061
五
(
いつ
)
つになつた
先妻
(
せんさい
)
の
子
(
こ
)
や、
062
一人
(
ひとり
)
の
赤子
(
あかご
)
の
愛
(
あい
)
にひかれて、
063
死
(
し
)
ぬことも
出来
(
でき
)
ず、
064
心
(
こころ
)
弱
(
よわ
)
いは
女
(
をんな
)
の
常
(
つね
)
とて、
065
何
(
なに
)
の
考
(
かんが
)
へもなきまま、
066
大阪
(
おほさか
)
に
嫁入
(
よめい
)
つて
居
(
を
)
る
姉
(
あね
)
を
便
(
たよ
)
つて
一
(
いち
)
時
(
じ
)
の
急場
(
きふば
)
をのがれやうと、
067
去
(
さ
)
る
日
(
ひ
)
の
夜中頃
(
よなかごろ
)
、
068
赤子
(
あかご
)
を
背
(
せ
)
に
五
(
いつ
)
つの
子
(
こ
)
の
手
(
て
)
を
曳
(
ひ
)
いて、
069
吾
(
わが
)
家
(
や
)
を
後
(
あと
)
に
山路
(
やまみち
)
を
辿
(
たど
)
り、
070
出
(
で
)
て
行
(
ゆ
)
きました、
071
其
(
その
)
途中
(
とちう
)
、
072
亡夫
(
ぼうふ
)
を
葬
(
ほうむ
)
つた
墓
(
はか
)
が
御座
(
ござ
)
いますので、
073
暇乞
(
いとまごひ
)
の
為
(
ため
)
に
立寄
(
たちよ
)
り
水
(
みづ
)
を
供
(
そな
)
へ、
074
幸
(
さいは
)
ひ
傍
(
かたはら
)
に
人影
(
ひとかげ
)
もなければ、
075
心
(
こころ
)
の
行
(
ゆ
)
く
丈
(
だけ
)
愚痴
(
ぐち
)
の
繰言
(
くりごと
)
をくり
返
(
かへ
)
し、
076
心
(
こころ
)
を
残
(
のこ
)
して
墓場
(
はかば
)
を
立去
(
たちさ
)
る、
077
時
(
とき
)
しも
夫
(
をつと
)
の
墓
(
はか
)
の
畔
(
ほとり
)
から
現
(
あら
)
はれ
出
(
い
)
でたる
怪
(
あや
)
しき
物
(
もの
)
かげに、
078
思
(
おも
)
はず
知
(
し
)
らず
母子
(
おやこ
)
は
声
(
こゑ
)
を
揃
(
そろ
)
へて
泣
(
な
)
き
叫
(
さけ
)
びました。
079
不思議
(
ふしぎ
)
にも
其
(
その
)
怪
(
あや
)
しの
人影
(
ひとかげ
)
は、
080
夫
(
をつと
)
の
亡霊
(
ばうれい
)
であつたか、
081
何
(
なん
)
だか
分
(
わか
)
らぬことを
大声
(
おほごゑ
)
に
叫
(
さけ
)
び
乍
(
なが
)
ら、
082
吾
(
わが
)
家
(
や
)
の
方
(
はう
)
へ
走
(
は
)
せ
行
(
ゆ
)
きました。
083
そこで
私
(
わたし
)
の
思
(
おも
)
ひますには、
084
墳土
(
はかつち
)
まだ
乾
(
かわ
)
かず、
085
五十
(
ごじふ
)
日
(
にち
)
もすまぬのに
夫
(
をつと
)
の
墓
(
はか
)
の
土地
(
とち
)
を
離
(
はな
)
れむとしたのは
誠
(
まこと
)
にすまぬことであつた。
086
夫
(
をつと
)
の
霊
(
れい
)
は
私
(
わたし
)
等
(
ら
)
の
大阪
(
おほさか
)
へ
行
(
ゆ
)
くのを
嫌
(
きら
)
うて
居
(
ゐ
)
るのであらうと
心
(
こころ
)
を
取直
(
とりなほ
)
し、
087
力
(
ちから
)
なげに
再
(
ふたたび
)
吾
(
わが
)
家
(
や
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
ました。
088
其
(
その
)
時
(
とき
)
の
驚
(
おどろ
)
きが
災禍
(
わざわい
)
となり、
089
遂
(
つひ
)
に
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
く
両眼
(
りやうがん
)
を
失
(
うしな
)
ひ、
090
其
(
その
)
上
(
うへ
)
昼夜
(
ちうや
)
疼痛
(
とうつう
)
に
苦
(
くる
)
しむこと
限
(
かぎ
)
りなく、
091
一人
(
ひとり
)
の
赤子
(
あかご
)
も
亦
(
また
)
十日
(
とをか
)
以前
(
いぜん
)
に、
092
乳
(
ちち
)
のとぼしい
勢
(
せい
)
か
身体
(
からだ
)
が
痩衰
(
やせおとろ
)
へて、
093
亡
(
な
)
き
人
(
ひと
)
の
数
(
かず
)
に
入
(
い
)
りました。
094
先妻
(
せんさい
)
の
子
(
こ
)
は
私
(
わたし
)
が
盲
(
めくら
)
になつたので
親類
(
しんるゐ
)
が
預
(
あづか
)
つてくれました。
095
私
(
わたし
)
は
最早
(
もはや
)
夫
(
をつと
)
や
子
(
こ
)
に
別
(
わか
)
れ、
096
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
生
(
い
)
きて
何
(
なん
)
の
望
(
のぞ
)
みもありませぬから、
097
せめては
夫
(
をつと
)
や
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
の
霊
(
れい
)
を
弔
(
とむら
)
うて、
098
善根
(
ぜんこん
)
を
尽
(
つ
)
くすより
途
(
みち
)
は
御座
(
ござ
)
りませぬが、
099
何
(
なに
)
をいうても
盲目
(
めくら
)
の
不自由
(
ふじゆう
)
な
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
、
100
どうぞお
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さいませ』
101
と
涙
(
なみだ
)
を
流
(
なが
)
して
泣
(
な
)
き
叫
(
さけ
)
ぶ。
102
此
(
この
)
物語
(
ものがたり
)
の
始終
(
しじう
)
を
聞
(
き
)
いた
喜楽
(
きらく
)
の
心
(
こころ
)
は、
103
一節
(
ひとぶし
)
一節
(
ひとぶし
)
胸
(
むね
)
に
釘
(
くぎ
)
鎹
(
かすがひ
)
を
打
(
う
)
たるる
如
(
ごと
)
くであつた。
104
あゝ
心
(
こころ
)
に
当
(
あた
)
るは
過
(
す
)
ぎにし
春
(
はる
)
の
月
(
つき
)
の
夜半
(
よは
)
の
出来事
(
できごと
)
、
105
大阪
(
おほさか
)
より
帰
(
かへ
)
りの
途次
(
とじ
)
、
106
眠
(
ねむ
)
けにたへずして、
107
とある
墓場
(
はかば
)
に
石枕
(
いはまくら
)
、
108
計
(
はか
)
らず
会
(
くわい
)
せし
妖怪
(
えうくわい
)
変化
(
へんげ
)
と
疑
(
うたが
)
うた
影
(
かげ
)
は、
109
正
(
まさ
)
しく
此
(
この
)
婦人
(
ふじん
)
であつたか、
110
逐一
(
ちくいち
)
事情
(
じじやう
)
をきくにつけ、
111
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
にも
此
(
この
)
女
(
をんな
)
が
眼病
(
がんびやう
)
にかかつた
原因
(
げんいん
)
は、
112
自分
(
じぶん
)
が
突然
(
とつぜん
)
墓
(
はか
)
から
逃出
(
にげだ
)
した
其
(
その
)
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て、
113
亡
(
な
)
き
夫
(
をつと
)
の
幽霊
(
いうれい
)
と
誤解
(
ごかい
)
し、
114
驚愕
(
きやうがく
)
の
余
(
あま
)
り、
115
若血
(
わかち
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
とて
逆上
(
ぎやくじやう
)
して
目
(
め
)
にあがつて、
116
こんな
不具者
(
ふぐしや
)
となつたのであるか、
117
吁
(
ああ
)
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
だ。
118
何
(
なん
)
とかして
生命
(
いのち
)
に
代
(
か
)
へても
此
(
この
)
眼病
(
がんびやう
)
を
直
(
なほ
)
してやらなくては、
119
神
(
かみ
)
さまに
対
(
たい
)
して
済
(
す
)
まない。
120
又
(
また
)
自分
(
じぶん
)
の
責任
(
せきにん
)
がすまぬと、
121
直
(
ただち
)
に
荒菰
(
あらごも
)
を
大地
(
だいち
)
に
布
(
し
)
き、
122
井戸端
(
ゐどばた
)
に
端坐
(
たんざ
)
して、
123
頭
(
あたま
)
からザブザブと
水
(
みづ
)
ごりを
取
(
と
)
り、
124
拍手
(
はくしゆ
)
再拝
(
さいはい
)
祈願
(
きぐわん
)
の
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
125
一心
(
いつしん
)
不乱
(
ふらん
)
に
勤行
(
ごんぎやう
)
した。
126
其
(
その
)
至誠
(
しせい
)
に
畏
(
かしこ
)
くも
神明
(
しんめい
)
感
(
かん
)
じさせ
玉
(
たま
)
ひけむ、
127
今
(
いま
)
まで
苦痛
(
くつう
)
に
悩
(
なや
)
みし
両眼
(
りやうがん
)
の
痛
(
いた
)
みは
忘
(
わす
)
れた
様
(
やう
)
に
鎮静
(
ちんせい
)
し、
128
あたりをじつと
見
(
み
)
まはし
乍
(
なが
)
ら、
129
思
(
おも
)
ひがけなき
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
光明
(
くわうみやう
)
に
飛
(
と
)
び
立
(
た
)
つ
許
(
ばか
)
り
打喜
(
うちよろこ
)
び、
130
小末
『
先生
(
せんせい
)
お
蔭
(
かげ
)
で
目
(
め
)
があきました。
131
アヽ
勿体
(
もつたい
)
ない
辱
(
かたじけ
)
ない!』
132
と
伏
(
ふ
)
し
拝
(
をが
)
む。
133
此
(
この
)
場
(
ば
)
の
奇瑞
(
きずゐ
)
に
祈願者
(
きぐわんしや
)
の
喜楽
(
きらく
)
も
打驚
(
うちおどろ
)
き、
134
即時
(
そくじ
)
の
霊験
(
れいけん
)
と、
135
又
(
また
)
不思議
(
ふしぎ
)
の
邂逅
(
かいこう
)
に、
136
神界
(
しんかい
)
の
深甚
(
しんじん
)
微妙
(
びめう
)
なる
御
(
ご
)
経綸
(
けいりん
)
に
敬服
(
けいふく
)
したのである。
137
此
(
この
)
女
(
をんな
)
は
石田
(
いしだ
)
小末
(
こすゑ
)
といふ。
138
これより
幽斎
(
いうさい
)
を
日夜
(
にちや
)
に
修業
(
しうげふ
)
し、
139
神術
(
かむわざ
)
大
(
おほ
)
いに
発達
(
はつたつ
)
し、
140
遂
(
つひ
)
に
小松林
(
こまつばやし
)
、
141
松岡
(
まつをか
)
などの
高等
(
かうとう
)
眷族
(
けんぞく
)
の
神霊
(
しんれい
)
懸
(
かか
)
らせ
玉
(
たま
)
ひて、
142
いろいろ
幽界
(
いうかい
)
の
有様
(
ありさま
)
を
表示
(
へうじ
)
し、
143
其
(
その
)
後
(
ご
)
百余
(
ひやくよ
)
日
(
にち
)
の
後
(
のち
)
再
(
ふたた
)
び
大阪
(
おほさか
)
の
姉
(
あね
)
の
家
(
うち
)
に
行
(
ゆ
)
かむと、
144
喜楽
(
きらく
)
に
別
(
わか
)
れを
告
(
つ
)
げて
出
(
で
)
て
行
(
い
)
つた
儘
(
まま
)
である。
145
大本
(
おほもと
)
の
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
伝
(
つた
)
へむと
146
山路
(
やまぢ
)
遥
(
はるか
)
に
越
(
こ
)
ゆる
津
(
つ
)
の
国
(
くに
)
。
147
浪速江
(
なにはえ
)
のよしも
悪
(
あし
)
きも
神術
(
かむわざ
)
と
148
知
(
し
)
らずに
下
(
くだ
)
る
淀
(
よど
)
の
流
(
なが
)
れを。
149
千早
(
ちはや
)
ぶる
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
畏
(
かしこ
)
みて
150
駒
(
こま
)
立
(
た
)
て
直
(
なほ
)
し
元
(
もと
)
の
丹波
(
たんば
)
へ。
151
足曳
(
あしびき
)
の
山路
(
やまぢ
)
を
夜半
(
よは
)
に
辿
(
たど
)
る
身
(
み
)
は
152
御空
(
みそら
)
の
月
(
つき
)
ぞ
力
(
ちから
)
なりけり。
153
ゆくりなく
巡
(
めぐ
)
り
会
(
あ
)
ひたる
嬉
(
うれ
)
しさに
154
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
悟
(
さと
)
りぬ。
155
惟神
(
かむながら
)
神
(
かみ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
幸
(
さち
)
はひて
156
此
(
この
)
物語
(
ものがたり
)
世
(
よ
)
にてらしませ。
157
(
大正一一・一〇・一〇
旧八・二〇
松村真澄
録)
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(B)
(N)
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