霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一五章 盲目鳥(めくらどり)〔一〇二七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第37巻 舎身活躍 子の巻 篇:第3篇 阪丹珍聞 よみ(新仮名遣い):はんたんちんぶん
章:第15章 盲目鳥 よみ(新仮名遣い):めくらどり 通し章番号:1027
口述日:1922(大正11)年10月10日(旧08月20日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年3月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
田植えの時期で参詣人もまばらな折から、身なりいやしい一人の婦人が、両眼のあたりを包帯して杖をついてやってきた。来意を聞けば、眼病を直してほしいとのことであった。
夫に死に別れて墓参りをしていたところ、墓から立ち出た怪しい影に驚いて眼病を患い、赤子も乳がとぼしいばかりに十日ほど前に死に別れたのだと語った。
喜楽は、大阪からの帰りに六地蔵で遭遇した怪しい女はこの夫人であったことを悟り、また自分の影に驚いて眼病になったと思うと神様に対して申し訳ない気持ちになった。
直ちに井戸端で禊をなし、祈願をこらしたところ、石田小末というその女の眼病はたちまち治ってしまった。
石田小末はこれより幽斎を修行し大いに神術の発達を得た。高等眷属の神霊が懸って幽界の有様を表示したが、百日ほどして、大阪の姉の家に行くといって喜楽に別れを告げたままになってしまった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-10-23 11:33:56 文字数:2153 OBC :rm3715
愛善世界社版:187頁 八幡書店版:第7輯 101頁 修補版: 校定版:195頁 普及版:92頁 初版: ページ備考:
001 五月雨(さみだれ)の空(そら)低(ひく)うして、002四辺(しへん)の山(やま)は雲(くも)に包(つつ)まれ、003杜鵑(ほととぎす)の鳴(な)く声(こゑ)遠近(をちこち)に聞(きこ)える、004穴太(あなを)宮内垣(みやがいち)の賤(しづ)が伏家(ふせや)も、005今(いま)は犬(いぬ)の手(て)も人(ひと)の手(て)と称(しよう)する田植(たうゑ)の最中(さいちう)、006片時(かたとき)を争(あらそ)ふ農家(のうか)の激戦(げきせん)場裡(ぢやうり)で、007遠近(ゑんきん)の人々(ひとびと)は植付(うえつけ)、008麦刈(むぎかり)などに忙殺(ぼうさつ)されて、009教(をしへ)の門(もん)を潜(くぐ)る人々(ひとびと)の足(あし)も杜絶(とだ)えた折柄(をりから)、010身(み)なり賤(いや)しい一人(ひとり)の婦人(ふじん)、011両眼(りやうがん)のあたりを白(しろ)き布(ぬの)にて繃帯(はうたい)し乍(なが)ら、012杖(つゑ)を力(ちから)に、
013婦人(小末)『先生(せんせい)はお在宅(うち)ですか?』
014と尋(たづ)ねて来(き)た。015婆(ば)アサンが案内(あんない)とみえて、016一人(ひとり)付(つ)いて居(ゐ)る。017此(この)頃(ごろ)は参拝者(さんぱいしや)がないので、018神殿(しんでん)に於(おい)て心(こころ)ゆく迄(まで)、019幽斎(いうさい)の修行(しうぎやう)にひたつて居(ゐ)た喜楽(きらく)は、020此(この)声(こゑ)を聞(き)いて、
021喜楽『マアマア』
022と狭(せま)い座敷(ざしき)へ通(とほ)し、023来意(らいい)を問(と)へば、024眼病(がんびやう)を治(なを)して欲(ほ)しいので、025はるばる参拝(さんぱい)したとの事(こと)であつた。026どことなく何時(いつ)かは見(み)たことのある様(やう)な女(をんな)と、027訝(いぶ)かり乍(なが)ら住所(ぢうしよ)姓名(せいめい)や、028来歴(らいれき)を問(と)うて見(み)た。029女(をんな)は恥(はづ)かしげに顔(かほ)を赤(あか)らめ、030稍(やや)俯(うつ)むき気味(ぎみ)になつて語(かた)る。
031婦人(小末)『私(わたし)は西別院(にしべつゐん)村(むら)の小末(こすゑ)と申(まを)す者(もの)で御座(ござ)います。032見(み)るかげもなき貧乏人(びんばふにん)で、033屋根(やね)はもり、034壁(かべ)はおち、035明日(あす)の糧(かて)を貯(たくは)ふるの余裕(よゆう)もなき貧(まづ)しい暮(くら)しの中(なか)に、036私(わたし)の夫(をつと)は長(なが)の病(やまひ)になやまされ、037私(わたし)は産婦(さんぷ)の重(おも)き身(み)の上(うへ)、038働(はたら)きすることさへも叶(かな)はねば、039朝夕(あさゆふ)の糊口(ここう)に差支(さしつか)へ、040銭(ぜに)となるべき物(もの)は売(う)り払(はら)ひ、041質(しち)におき尽(つ)くして、042今(いま)は最早(もはや)何(なに)もなき極貧(ごくひん)の身(み)の上(うへ)、043医薬(いやく)の手(て)だてさへなく、044夫(をつと)は無残(むざん)にも死(し)を待(ま)つより仕方(しかた)のない身(み)の上(うへ)となりました。045草根(さうこん)木皮(ぼくひ)を食(く)ひ、046一(いち)時(じ)の命(いのち)をつないで居(を)りましたが、047何(なん)の因果(いんぐわ)か、048夫婦(ふうふ)の体(からだ)は水腫(みづば)れを起(おこ)し、049夫(をつと)は遂(つひ)に幽界(あのよ)の人(ひと)となつて了(しま)ひました。050取(と)りのこされた私(わたし)は、051まだ出産後(しゆつさんご)僅(わづか)に一週日(いつしうにち)、052血(ち)の若(わか)い身(み)で、053赤児(あかご)をかかへて、054形(かたち)許(ばか)りの弔(とむら)ひをすませ、055さむしい日(ひ)をおくる内(うち)にも、056村(むら)の人(ひと)達(たち)の無情(むじやう)さ、057米屋(こめや)は米代(こめだい)を払(はら)へとせめてくる、058醤油屋(しやうゆや)は醤油代(しやうゆだい)を渡(わた)せときびしい催促(さいそく)に、059如何(どう)することも出来(でき)ませず、060一層(いつそう)の事(こと)私(わたし)も夫(をつと)の後(あと)を逐(お)ふて此(この)世(よ)の暇(いとま)乞(ご)ひをせうかと思案(しあん)に沈(しづ)み乍(なが)ら、061五(いつ)つになつた先妻(せんさい)の子(こ)や、062一人(ひとり)の赤子(あかご)の愛(あい)にひかれて、063死(し)ぬことも出来(でき)ず、064心(こころ)弱(よわ)いは女(をんな)の常(つね)とて、065何(なに)の考(かんが)へもなきまま、066大阪(おほさか)に嫁入(よめい)つて居(を)る姉(あね)を便(たよ)つて一(いち)時(じ)の急場(きふば)をのがれやうと、067去(さ)る日(ひ)の夜中頃(よなかごろ)、068赤子(あかご)を背(せ)に五(いつ)つの子(こ)の手(て)を曳(ひ)いて、069吾(わが)家(や)を後(あと)に山路(やまみち)を辿(たど)り、070出(で)て行(ゆ)きました、071其(その)途中(とちう)、072亡夫(ぼうふ)を葬(ほうむ)つた墓(はか)が御座(ござ)いますので、073暇乞(いとまごひ)の為(ため)に立寄(たちよ)り水(みづ)を供(そな)へ、074幸(さいは)ひ傍(かたはら)に人影(ひとかげ)もなければ、075心(こころ)の行(ゆ)く丈(だけ)愚痴(ぐち)の繰言(くりごと)をくり返(かへ)し、076心(こころ)を残(のこ)して墓場(はかば)を立去(たちさ)る、077時(とき)しも夫(をつと)の墓(はか)の畔(ほとり)から現(あら)はれ出(い)でたる怪(あや)しき物(もの)かげに、078思(おも)はず知(し)らず母子(おやこ)は声(こゑ)を揃(そろ)へて泣(な)き叫(さけ)びました。079不思議(ふしぎ)にも其(その)怪(あや)しの人影(ひとかげ)は、080夫(をつと)の亡霊(ばうれい)であつたか、081何(なん)だか分(わか)らぬことを大声(おほごゑ)に叫(さけ)び乍(なが)ら、082吾(わが)家(や)の方(はう)へ走(は)せ行(ゆ)きました。083そこで私(わたし)の思(おも)ひますには、084墳土(はかつち)まだ乾(かわ)かず、085五十(ごじふ)日(にち)もすまぬのに夫(をつと)の墓(はか)の土地(とち)を離(はな)れむとしたのは誠(まこと)にすまぬことであつた。086夫(をつと)の霊(れい)は私(わたし)等(ら)の大阪(おほさか)へ行(ゆ)くのを嫌(きら)うて居(ゐ)るのであらうと心(こころ)を取直(とりなほ)し、087力(ちから)なげに再(ふたたび)吾(わが)家(や)へ帰(かへ)つて来(き)ました。088其(その)時(とき)の驚(おどろ)きが災禍(わざわい)となり、089遂(つひ)に斯(かく)の如(ごと)く両眼(りやうがん)を失(うしな)ひ、090其(その)上(うへ)昼夜(ちうや)疼痛(とうつう)に苦(くる)しむこと限(かぎ)りなく、091一人(ひとり)の赤子(あかご)も亦(また)十日(とをか)以前(いぜん)に、092乳(ちち)のとぼしい勢(せい)か身体(からだ)が痩衰(やせおとろ)へて、093亡(な)き人(ひと)の数(かず)に入(い)りました。094先妻(せんさい)の子(こ)は私(わたし)が盲(めくら)になつたので親類(しんるゐ)が預(あづか)つてくれました。095私(わたし)は最早(もはや)夫(をつと)や子(こ)に別(わか)れ、096此(この)世(よ)に生(い)きて何(なん)の望(のぞ)みもありませぬから、097せめては夫(をつと)や吾(わが)子(こ)の霊(れい)を弔(とむら)うて、098善根(ぜんこん)を尽(つ)くすより途(みち)は御座(ござ)りませぬが、099何(なに)をいうても盲目(めくら)の不自由(ふじゆう)な身(み)の上(うへ)、100どうぞお助(たす)け下(くだ)さいませ』
101と涙(なみだ)を流(なが)して泣(な)き叫(さけ)ぶ。102此(この)物語(ものがたり)の始終(しじう)を聞(き)いた喜楽(きらく)の心(こころ)は、103一節(ひとぶし)一節(ひとぶし)胸(むね)に釘(くぎ)鎹(かすがひ)を打(う)たるる如(ごと)くであつた。104あゝ心(こころ)に当(あた)るは過(す)ぎにし春(はる)の月(つき)の夜半(よは)の出来事(できごと)、105大阪(おほさか)より帰(かへ)りの途次(とじ)、106眠(ねむ)けにたへずして、107とある墓場(はかば)に石枕(いはまくら)、108計(はか)らず会(くわい)せし妖怪(えうくわい)変化(へんげ)と疑(うたが)うた影(かげ)は、109正(まさ)しく此(この)婦人(ふじん)であつたか、110逐一(ちくいち)事情(じじやう)をきくにつけ、111気(き)の毒(どく)にも此(この)女(をんな)が眼病(がんびやう)にかかつた原因(げんいん)は、112自分(じぶん)が突然(とつぜん)墓(はか)から逃出(にげだ)した其(その)姿(すがた)を見(み)て、113亡(な)き夫(をつと)の幽霊(いうれい)と誤解(ごかい)し、114驚愕(きやうがく)の余(あま)り、115若血(わかち)の身(み)の上(うへ)とて逆上(ぎやくじやう)して目(め)にあがつて、116こんな不具者(ふぐしや)となつたのであるか、117吁(ああ)気(き)の毒(どく)だ。118何(なん)とかして生命(いのち)に代(か)へても此(この)眼病(がんびやう)を直(なほ)してやらなくては、119神(かみ)さまに対(たい)して済(す)まない。120又(また)自分(じぶん)の責任(せきにん)がすまぬと、121直(ただち)に荒菰(あらごも)を大地(だいち)に布(し)き、122井戸端(ゐどばた)に端坐(たんざ)して、123頭(あたま)からザブザブと水(みづ)ごりを取(と)り、124拍手(はくしゆ)再拝(さいはい)祈願(きぐわん)の祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し、125一心(いつしん)不乱(ふらん)に勤行(ごんぎやう)した。126其(その)至誠(しせい)に畏(かしこ)くも神明(しんめい)感(かん)じさせ玉(たま)ひけむ、127今(いま)まで苦痛(くつう)に悩(なや)みし両眼(りやうがん)の痛(いた)みは忘(わす)れた様(やう)に鎮静(ちんせい)し、128あたりをじつと見(み)まはし乍(なが)ら、129思(おも)ひがけなき此(この)世(よ)の光明(くわうみやう)に飛(と)び立(た)つ許(ばか)り打喜(うちよろこ)び、
130小末『先生(せんせい)お蔭(かげ)で目(め)があきました。131アヽ勿体(もつたい)ない辱(かたじけ)ない!』
132と伏(ふ)し拝(をが)む。133此(この)場(ば)の奇瑞(きずゐ)に祈願者(きぐわんしや)の喜楽(きらく)も打驚(うちおどろ)き、134即時(そくじ)の霊験(れいけん)と、135又(また)不思議(ふしぎ)の邂逅(かいこう)に、136神界(しんかい)の深甚(しんじん)微妙(びめう)なる御(ご)経綸(けいりん)に敬服(けいふく)したのである。
137 此(この)女(をんな)は石田(いしだ)小末(こすゑ)といふ。138これより幽斎(いうさい)を日夜(にちや)に修業(しうげふ)し、139神術(かむわざ)大(おほ)いに発達(はつたつ)し、140遂(つひ)に小松林(こまつばやし)、141松岡(まつをか)などの高等(かうとう)眷族(けんぞく)の神霊(しんれい)懸(かか)らせ玉(たま)ひて、142いろいろ幽界(いうかい)の有様(ありさま)を表示(へうじ)し、143其(その)後(ご)百余(ひやくよ)日(にち)の後(のち)再(ふたた)び大阪(おほさか)の姉(あね)の家(うち)に行(ゆ)かむと、144喜楽(きらく)に別(わか)れを告(つ)げて出(で)て行(い)つた儘(まま)である。
145大本(おほもと)の神(かみ)の教(をしへ)を伝(つた)へむと
146山路(やまぢ)遥(はるか)に越(こ)ゆる津(つ)の国(くに)。
147浪速江(なにはえ)のよしも悪(あし)きも神術(かむわざ)と
148知(し)らずに下(くだ)る淀(よど)の流(なが)れを。
149千早(ちはや)ぶる神(かみ)の教(をしへ)を畏(かしこ)みて
150駒(こま)立(た)て直(なほ)し元(もと)の丹波(たんば)へ。
151足曳(あしびき)の山路(やまぢ)を夜半(よは)に辿(たど)る身(み)は
152御空(みそら)の月(つき)ぞ力(ちから)なりけり。
153ゆくりなく巡(めぐ)り会(あ)ひたる嬉(うれ)しさに
154誠(まこと)の神(かみ)の恵(めぐみ)悟(さと)りぬ。
155惟神(かむながら)神(かみ)の御霊(みたま)の幸(さち)はひて
156此(この)物語(ものがたり)世(よ)にてらしませ。
157(大正一一・一〇・一〇 旧八・二〇 松村真澄録)
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