霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二章 馬上歌(ばじやうか)〔一一二七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第42巻 舎身活躍 巳の巻 篇:第1篇 波瀾重畳 よみ(新仮名遣い):はらんちょうじょう
章:第2章 馬上歌 よみ(新仮名遣い):ばじょうか 通し章番号:1127
口述日:1922(大正11)年11月14日(旧09月26日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年7月1日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
高照山の岩窟を後にして、セーラン王の一行はイルナの都に向かって馬を進める。途上、セーラン王は馬上にてこれまでの経緯の述懐し、自分の罪を懺悔し神の教えと誠に基づいた国づくりへの決意を歌った。
ヤスダラ姫は、神の清めによって自分を覆っていた恋の執着の雲もすっかり払われたことを歌い、イルナの都の立て直しへの決意を明かした。
竜雲も馬上にてこれまでの自身の経緯の述懐を歌った。竜雲は急坂を急ぎ行く一行に休息を提案し、王たちもこの言葉に従いしばし息を休めることになった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-12-19 12:01:51 文字数:3737 OBC :rm4202
愛善世界社版:23頁 八幡書店版:第7輯 651頁 修補版: 校定版:23頁 普及版:6頁 初版: ページ備考:
001神(かみ)の御稜威(みいづ)も高照山(たかてるやま)の
002厳(いづ)の岩窟(いはや)を後(あと)にして
003入那(いるな)の都(みやこ)の刹帝利(せつていり)
004セーラン王(わう)の一行(いつかう)は
005栗毛(くりげ)の駒(こま)に跨(またが)りて
006狼(おほかみ)吼(ほ)える山路(やまみち)を
007岩(いは)の根(ね)木(き)の根(ね)ふみさくみ
008凩(こがらし)荒(すさ)ぶ野路(のぢ)を越(こ)え
009蹄(ひづめ)の音(おと)も勇(いさ)ましく
010音(おと)に名高(なだか)き照山(てるやま)の
011峠(たうげ)の麓(ふもと)に到着(たうちやく)し
012馬上(ばじやう)豊(ゆたか)に歌(うた)ひつつ
013都(みやこ)をさして進(すす)みゆく。
014 セーラン王(わう)は馬上(ばじやう)静(しづか)に歌(うた)ふ。
015セーラン王『父(ちち)の命(みこと)の後(あと)をつぎ
016心(こころ)の暗(くら)き吾(わが)身魂(みたま)
017入那(いるな)の国(くに)の王(わう)となり
018徳望(とくばう)欠(か)けたる所(ところ)より
019部下(ぶか)の統率(とうそつ)誤(あやま)りつ
020遂(つひ)には右守(うもり)の司(かみ)をして
021邪神(じやしん)の群(むれ)におとしける
022われは尊(たふと)きバラモンの
023神(かみ)の教(をしへ)を受(う)けつぎて
024朝(あさ)な夕(ゆふ)な国民(くにたみ)に
025誠(まこと)の模範(もはん)を示(しめ)すべき
026尊(たふと)き職(しよく)に在(あ)りながら
027神(かみ)の恵(めぐみ)を軽(かろ)んじつ
028知(し)らず識(し)らずに慢心(まんしん)の
029雲立昇(くもたちのぼ)り村肝(むらきも)の
030心(こころ)は暗(やみ)に迷(まよ)ひけり
031あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
032御霊(みたま)幸(さち)はへましまして
033心(こころ)に千花(ちばな)百花(ももばな)の
034香(かを)る時(とき)こそ北光(きたてる)の
035神(かみ)の恵(めぐみ)に助(たす)けられ
036水(みづ)も漏(も)らさぬ御教(みをしへ)に
037漸(やうや)く晴(は)れし胸(むね)の闇(やみ)
038空(そら)に日月(じつげつ)輝(かがや)きて
039晴(は)れわたりたる胸(むね)の空(そら)
040秋野(あきの)を飾(かざ)る黄金(わうごん)の
041姫(ひめの)命(みこと)の功績(いさをし)は
042清照姫(きよてるひめ)と輝(かがや)きぬ
043神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
044善神(ぜんしん)邪神(じやしん)を立別(たてわ)ける
045尊(たふと)き稜威(いづ)の御(おん)教(をしへ)
046悟(さと)りし上(うへ)はセーランの
047神(かみ)の司(つかさ)も潔(いさぎよ)く
048前非(ぜんぴ)を悔(く)いて天地(あめつち)に
049誠(まこと)一(ひと)つの三五(あななひ)の
050善言(ぜんげん)美行(びかう)を励(はげ)みつつ
051神(かみ)の司(つかさ)の天職(てんしよく)を
052完全(うまら)に委曲(つばら)に顕現(けんげん)し
053此(この)世(よ)の鑑(かがみ)となりぬべし
054ヤスダラ姫(ひめ)よ竜雲(りううん)よ
055神(かみ)は汝(なんぢ)と倶(とも)にあり
056神(かみ)の大道(おほぢ)に任(まか)す身(み)は
057如何(いか)に大黒主(おほくろぬし)の神(かみ)
058神変(しんぺん)不思議(ふしぎ)の神力(しんりき)を
059現(あら)はし来(きた)り入那城(いるなじやう)
060蹂躙(じうりん)せむといらつとも
061何(なに)か恐(おそ)れむ敷島(しきしま)の
062大和心(やまとごころ)のある限(かぎ)り
063必(かなら)ず神(かみ)は吾々(われわれ)を
064安(やす)きに救(すく)ひ給(たま)ふべし
065人(ひと)は神(かみ)の子(こ)神(かみ)の宮(みや)
066天地(てんち)を開(ひら)く経綸(けいりん)に
067仕(つか)ふる身(み)ぞと知(し)る上(うへ)は
068骨(ほね)を粉(こな)にし身(み)を砕(くだ)き
069神(かみ)の御(おん)為(ため)世(よ)の為(ため)に
070互(たがひ)に心(こころ)を合(あは)せあひ
071力(ちから)を一(ひと)つに固(かた)めつつ
072大慈(だいじ)大悲(だいひ)の神恩(しんおん)に
073酬(むく)いまつれよ諸共(もろとも)に
074照山峠(てるやまたうげ)の坂路(さかみち)は
075いかに峻(さか)しくあるとても
076心(こころ)の駒(こま)の脚並(あしな)みの
077揃(そろ)ひし上(うへ)は光栄(くわうえい)の
078遂(つひ)には都(みやこ)に進(すす)む如(ごと)
079如何(いか)なる事(こと)も成(な)りとげむ
080進(すす)めよ進(すす)めいざ進(すす)め
081誠(まこと)の道(みち)を踏(ふ)みしめて
082勝利(しようり)の都(みやこ)に逸早(いちはや)く
083進(すす)めよ進(すす)めいざ進(すす)め
084神(かみ)の教(をしへ)を力(ちから)とし
085誠(まこと)の道(みち)を杖(つゑ)として
086心(こころ)の駒(こま)の勇(いさ)ましく
087上(のぼ)りつ下(くだ)りつ村肝(むらきも)の
088心(こころ)は最早(もはや)秋(あき)の空(そら)
089恩頼(みたまのふゆ)は目(ま)のあたり
090輝(かがや)き初(そ)めて春(はる)の野(の)の
091百花(ももばな)千花(ちばな)咲(さ)き出(い)づる
092嬉(うれ)しき思(おも)ひに充(み)たされぬ
093誠(まこと)の道(みち)に進(すす)む身(み)は
094いかなる曲(まが)も夏草(なつぐさ)の
095上(うへ)に滴(したた)る露(つゆ)の玉(たま)
096朝日(あさひ)に消(き)ゆる其(その)如(ごと)く
097亡(ほろ)び失(う)せむは目(ま)のあたり
098勇(いさ)めよ勇(いさ)め諸共(もろとも)に
099前途(ぜんと)多望(たばう)の神司(かむづかさ)
100身(み)の行末(ゆくすゑ)ぞ頼(たの)もしき
101あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
102御霊(みたま)幸(さち)はへましませよ』
103 ヤスダラ姫(ひめ)はセーラン王(わう)の後(あと)について、104声(こゑ)も静(しづ)かに馬上(ばじやう)ながら歌(うた)ひ進(すす)む。
105ヤスダラ姫『入那(いるな)の国(くに)の刹帝利(せつていり)
106セーラン王(わう)の家筋(いへすぢ)に
107生(うま)れ合(あ)ひたる吾(われ)こそは
108親(おや)と親(おや)との許嫁(いひなづけ)
109セーラン王(わう)の妃(ひ)となりて
110入那(いるな)の国(くに)を永久(とこしへ)に
111守(まも)らむものと朝夕(あさゆふ)に
112神(かみ)に願(ねが)ひを掛巻(かけまく)も
113畏(かしこ)き神(かみ)の御心(みこころ)に
114反(そむ)きしものかゆくりなく
115テルマン国(ごく)に追(お)ひやられ
116素性(すじやう)卑(いや)しき毘舎(びしや)の家(いへ)
117シヤールの妻(つま)となり下(さが)り
118面白(おもしろ)からぬ月日(つきひ)をば
119歎(なげ)きかこちつ暮(くら)しける
120時(とき)こそあれや青天(せいてん)の
121霹靂(へきれき)胸(むね)をとどろかす
122惨状(さんじやう)吾(わが)身(み)に迫(せま)りけり
123梵天(ぼんてん)帝釈(たいしやく)自在天(じざいてん)
124神(かみ)は此(この)世(よ)にまさずやと
125吾(わが)身(み)の不運(ふうん)を歎(かこ)つ折(をり)
126忠義(ちうぎ)に篤(あつ)きリーダーが
127雨風(あめかぜ)烈(はげ)しき真夜中(まよなか)に
128吾(わが)とらはれし牢屋(ひとや)をば
129忠義(ちうぎ)の槌(つち)を打振(うちふ)りて
130砕(くだ)き毀(こぼ)ちて救(すく)ひ出(だ)し
131暗(やみ)に紛(まぎ)れて荒野原(あらのはら)
132スタスタ進(すす)み来(きた)る折(をり)
133右守(うもり)の司(かみ)の捕手(とりて)等(ら)に
134前後(ぜんご)左右(さいう)を取(と)りまかれ
135蓮(はちす)の川(かは)の此方(こなた)にて
136いかがはせむと悩(なや)む折(をり)
137竜雲司(りううんつかさ)に助(たす)けられ
138又(また)もやここに高照(たかてる)の
139深山(みやま)の奥(おく)の岩窟(がんくつ)に
140危(あやふ)き身(み)をば救(すく)はれて
141北光神(きたてるがみ)の御教(みをしへ)を
142朝(あさ)な夕(ゆふ)なにかかぶりつ
143曇(くも)りし胸(むね)も晴(は)れ渡(わた)り
144迷(まよ)ひの雲(くも)は払拭(ふつしき)し
145真如(しんによ)の月日(つきひ)は心天(しんてん)に
146強(つよ)く輝(かがや)き給(たま)ひけり
147あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
148悪魔(あくま)のしげき世(よ)の中(なか)に
149かくも仁慈(じんじ)に富(と)み給(たま)ふ
150誠(まこと)の神(かみ)もいますかと
151感謝(かんしや)の涙(なみだ)川(かは)となり
152沈(しづ)みし胸(むね)も浮(う)き立(た)ちて
153救(すく)ひの舟(ふね)に棹(さを)をさし
154天国(てんごく)浄土(じやうど)の楽園(らくゑん)に
155逍遥(せうえう)しける折(をり)もあれ
156思(おも)ひがけなき刹帝利(せつていり)
157セーラン王(わう)の一行(いつかう)が
158尋(たづ)ね来(き)ませる嬉(うれ)しさよ
159絶(た)えて久(ひさ)しき二柱(ふたはしら)
160巡(めぐ)り会(あ)ひたる睦(むつ)び言(ごと)
161かはす間(ま)もなく北光(きたてる)の
162神(かみ)の司(つかさ)におごそかに
163教(をし)へられたる神嘉言(かむよごと)
164うなじに分(わ)けて両人(りやうにん)は
165感謝(かんしや)の涙(なみだ)払(はら)ひつつ
166駒(こま)に跨(またが)り岩窟(いはやど)を
167名残(なごり)を惜(をし)みふり返(かへ)り
168馬上(ばじやう)ゆたかに嵐(あらし)吹(ふ)く
169野路(のぢ)を踏(ふ)み越(こ)えやうやうに
170照山峠(てるやまたうげ)に来(き)て見(み)れば
171木々(きぎ)の梢(こずゑ)の紅葉(もみぢば)は
172いつしか散(ち)りて淋(さび)しげに
173尾(を)の上(へ)をわたる秋(あき)の風(かぜ)
174淋(さび)しき山路(やまぢ)も何(なん)となく
175君(きみ)に従(したが)ひ登(のぼ)る身(み)は
176春(はる)めき渡(わた)り村肝(むらきも)の
177心(こころ)は映(は)ゆる春心地(はるごこち)
178神(かみ)の教(をしへ)に導(みちび)かれ
179進(すす)む吾(われ)こそ楽(たの)しけれ
180入那(いるな)の都(みやこ)に到(いた)りなば
181右守(うもり)の司(かみ)の御子(みこ)とます
182サマリー姫(ひめ)はさぞやさぞ
183吾(わが)身(み)の姿(すがた)を打眺(うちなが)め
184心(こころ)を悩(なや)ませ給(たま)ふべし
185あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
186如何(いか)なる事(こと)も天地(あめつち)の
187神(かみ)の御旨(みむね)に従(したが)ひて
188恋(こひ)の執着(しふちやく)秋(あき)の野(の)の
189木(こ)の葉(は)の風(かぜ)に散(ち)る如(ごと)く
190サラリと清(きよ)め睦(むつま)じく
191姉妹(あねいもうと)と手(て)を握(と)つて
192誠(まこと)一(ひと)つを立(た)て通(とほ)し
193三五教(あななひけう)の神力(しんりき)を
194現(あら)はしまつり入那国(いるなこく)
195都(みやこ)の花(はな)と謳(うた)はれて
196誉(ほま)れを千代(ちよ)に伝(つた)ふべし
197あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
198大地(だいち)の竜(りう)と名(な)を負(お)ひし
199清(きよ)き白馬(はくば)に跨(またが)りつ
200誠(まこと)を明(あ)かし奉(たてまつ)る
201セーラン王(わう)よ聞(きこ)し召(め)せ
202妾(わらは)を包(つつ)みし恋(こひ)の雲(くも)
203瑞(みづ)の御霊(みたま)の吹(ふ)き送(おく)る
204科戸(しなど)の風(かぜ)に払(はら)はれて
205塵(ちり)もとめなくなりにける
206あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
207吾(われ)等(ら)の身魂(みたま)に皇神(すめかみ)は
208清(きよ)く涼(すず)しく宿(やど)りまし
209汚(けが)れ果(は)てたる吾(わが)身(み)をば
210雄々(をを)しく照(て)らさせ給(たま)ひけり
211進(すす)めよ進(すす)めいざ進(すす)め
212誠(まこと)の道(みち)を只管(ひたすら)に
213心(こころ)の限(かぎ)り進(すす)みゆけ
214勝利(しようり)の都(みやこ)も近(ちか)づきぬ
215あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
216御霊(みたま)幸(さち)はへましませよ
217朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
218月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
219仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
220誠(まこと)一(ひと)つは世(よ)を救(すく)ふ
221誠(まこと)の道(みち)を踏(ふ)みしめて
222玉(たま)の御柱(みはしら)立直(たてなほ)し
223天地(てんち)の花(はな)と謳(うた)はれて
224豊(ゆた)けき誠(まこと)の実(みの)りをば
225枝(えだ)もたわわに結(むす)びつつ
226今迄(いままで)もつれし心(こころ)をば
227ときさばき行(ゆ)く奇魂(くしみたま)
228曽富戸(そほど)の神(かみ)の幸(さきは)ひに
229進(すす)むわれこそ雄々(をを)しけれ
230あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
231御霊(みたま)幸(さち)はへましませよ』
232 道(みち)は益々(ますます)急坂(きふはん)となり、233鞍上(あんじやう)最(もつと)も注意(ちゆうい)を要(えう)すべき難路(なんろ)につき当(あた)つた。234されど何(いづ)れも乗馬(じやうば)の達人(たつじん)、235鞍上(あんじやう)人(ひと)なく、236鞍下(あんげ)馬(うま)なき有様(ありさま)にて、237悠々(いういう)として凩(こがらし)に面(おもて)を吹(ふ)かれながら英気(えいき)に充(み)ち、238一行(いつかう)は単縦陣(たんじうぢん)を張(は)りつつ登(のぼ)るのであつた。239竜雲(りううん)は馬上(ばじやう)豊(ゆた)かに歌(うた)ひ始(はじ)めた。
240竜雲『ハイハイハイハイ馬(うま)の奴(やつ)
241照山峠(てるやまたうげ)の急坂(きふはん)だ
242気(き)を付(つ)け遊(あそ)ばせ栗毛(くりげ)さま
243顛倒(てんたう)致(いた)しちや堪(たま)らない
244ハイハイドウドウ ハイドウドウ
245人世(じんせ)の旅(たび)は急坂(きふはん)を
246登(のぼ)るが如(ごと)しと聞(き)くからは
247有為(うゐ)転変(てんぺん)の世(よ)のさまを
248思(おも)ひ浮(うか)べてハイハイハイ
249ゆかしさ胸(むね)に充(み)ちわきぬ
250月(つき)の御国(みくに)の首陀(しゆだ)の家(や)に
251臍(へそ)の緒(を)おとした竜雲(りううん)も
252天馬(てんば)が空(くう)をかけるよな
253思(おも)はぬ欲望(よくばう)に駆使(くし)されて
254波間(なみま)に浮(うか)ぶシロの島(しま)
255神地(かうぢ)の都(みやこ)の神司(かむづかさ)
256ハイハイ手綱(たづな)をしめ直(なほ)し
257しつかりせなくちや危(あぶ)ないぞ
258サガレン王(わう)を放逐(ほうちく)し
259折柄(をりから)起(おこ)る風雲(ふううん)に
260乗(じやう)じて天(てん)へ舞(ま)ひ昇(のぼ)り
261心猿(しんゑん)意馬(いば)は忽(たちま)ちに
262狂(くる)ひ出(いだ)してハイハイハイ
263悪虐(あくぎやく)無道(ぶだう)の張本(ちやうほん)と
264なりすましたる恐(おそ)ろしさ
265心(こころ)に潜(ひそ)む鬼(おに)大蛇(をろち)
266醜神(しこがみ)どもの勢(いきほひ)は
267鬣(たてがみ)振(ふ)り立(た)て急坂(きふはん)を
268越(こ)え行(ゆ)く駒(こま)のその如(ごと)く
269とめどもなくに味噌汁(みそしる)が
270ステツペンへと飛上(とびあが)り
271意気(いき)揚々(やうやう)と雲(くも)の上(うへ)
272ハイハイハイハイドウドウドウ
273天(あめ)の下(した)をば睥睨(へいげい)し
274俺(おれ)程(ほど)運(うん)のよい者(もの)が
275三千(さんぜん)世界(せかい)にあらうかと
276笑壺(ゑつぼ)に入(い)りし折(をり)もあれ
277運命(うんめい)つきて北光(きたてる)の
278神(かみ)の司(つかさ)に荒肝(あらぎも)を
279拉(ひ)しがれ忽(たちま)ち谷底(たにそこ)へ
280顛落(てんらく)したるあさましさ
281オツトドツコイ馬(うま)の奴(やつ)
282道(みち)にさやりし岩角(いはかど)に
283躓(つまづ)きやがつた確(しつか)りせい
284膝(ひざ)を摧(くぢ)いちや堪(たま)らない
285お前(まへ)は俺(おれ)の助(たす)け舟(ぶね)
286神(かみ)の光(ひかり)に照(て)らされて
287改心(かいしん)致(いた)した其(その)おかげ
288七千(しちせん)余国(よこく)の月(つき)の国(くに)
289何(なん)の障(さはり)も荒野原(あらのはら)
290巡(めぐ)りて進(すす)む神(かみ)の道(みち)
291ハイハイハイハイ シーシーシー
292セーラン王(わう)に従(したが)ひて
293誠(まこと)の道(みち)に入那城(いるなじやう)
294四方(よも)に輝(かがや)く黄金姫(わうごんひめ)
295身魂(みたま)も清照姫(きよてるひめ)命(みこと)
296あれます聖地(せいち)へ進(すす)み行(ゆ)く
297吾(わが)身(み)の上(うへ)ぞ楽(たの)しけれ
298あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
299神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
300善(ぜん)をば助(たす)け悪神(あくがみ)を
301誠(まこと)の道(みち)にまつろはせ
302救(すく)はせ給(たま)ふ三五(あななひ)の
303神(かみ)こそ誠(まこと)の世(よ)の柱(はしら)
304心(こころ)ねぢけた竜雲(りううん)も
305心(こころ)の駒(こま)を立直(たてなほ)し
306教(をしへ)も清(きよ)く照山(てるやま)の
307さしもに嶮(けは)しき坂路(さかみち)を
308栗毛(くりげ)の駒(こま)に助(たす)けられ
309正(ただ)しき人(ひと)に従(したが)ひて
310旗鼓(きこ)堂々(だうだう)と登(のぼ)りゆく
311ハイハイハイハイハイドウドウ
312馬(うま)の合(あ)うたる人(ひと)ばかり
313一緒(いつしよ)にゆくのが同道々(どうだうだう)
314いよいよ面白(おもしろ)なつて来(き)た
315最早(もはや)絶頂(ぜつちやう)も近(ちか)づいた
316峠(たうげ)の上(うへ)で鹿毛(かげ)さまよ
317お前(まへ)も一服(いつぷく)するがよい
318重(おも)い男(をとこ)を背(せな)に乗(の)せ
319登(のぼ)る貴様(きさま)もえらかろが
320乗(の)つてる俺(おれ)も楽(らく)でない
321さはさりながら苦(くるし)みの
322後(あと)にはキツト楽(らく)がくる
323あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
324人馬(じんば)諸共(もろとも)神(かみ)の山(やま)
325登(のぼ)りつめたる暁(あかつき)は
326四方(よも)を見(み)はらす世界晴(せかいばれ)
327晴(は)れて嬉(うれ)しき胸(むね)の暗(やみ)
328忽(たちま)ち開(ひら)く天国(てんごく)の
329清(きよ)き涼(すず)しき花園(はなぞの)に
330進(すす)むわれこそ楽(たの)しけれ
331あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
332最早(もはや)峠(たうげ)に着(つ)きました
333王(わう)様(さま)一服(いつぷく)致(いた)しませう
334ヤスダラ姫(ひめ)様(さま)、テームスよ
335レーブよ、カルよ、一休(ひとやす)み
336四足(よつあし)泡(あわ)を吹(ふ)き出(だ)した
337これから先(さき)は下(くだ)り坂(ざか)
338世(よ)の立替(たてかへ)が始(はじ)まつて
339上(のぼ)る身魂(みたま)や下(くだ)る魂(たま)
340行合(ゆきあ)ひかち合(あ)ひ騒(さわ)がしく
341入那(いるな)の都(みやこ)の大空(おほぞら)に
342一悶錯(ひともんさく)の起(おこ)る前(まへ)
343縺(もつ)れ果(は)てたる小田巻(をだまき)の
344いとやすやすと治(をさ)めませ
345あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
346御霊(みたま)幸(さち)はへましませよ』
347と歌(うた)ひ了(をは)り、348馬(うま)をヒラリと飛(と)び下(お)り、349傍(かたはら)の巌(いはほ)に腰(こし)を打(うち)かけ、350息(いき)を休(やす)むるのであつた。351セーラン王(わう)其(その)他(た)も竜雲(りううん)の言葉(ことば)に従(したが)ひ、352馬背(ばはい)を飛(と)び降(お)り、353人馬(じんば)共(とも)に、354暫(しば)し息(いき)を休(やす)むることとなつた。
355(大正一一・一一・一四 旧九・二六 松村真澄録)
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