霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は従来バージョンをお使い下さい| サブスクのお知らせ

第五章 (こひ)(わな)〔一一三〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第42巻 舎身活躍 巳の巻 篇:第2篇 恋海慕湖 よみ(新仮名遣い):れんかいぼこ
章:第5章 恋の罠 よみ(新仮名遣い):こいのわな 通し章番号:1130
口述日:1922(大正11)年11月14日(旧09月26日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年7月1日
概要: 舞台:イルナ城(入那城、セーラン王の館、イルナの都の神館) あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
イルナの都の神館の奥の間には、黄金姫、清照姫、セーリス姫の三人が鼎坐してひそびそ話にふけっている。右守のカールチンが計略に乗ってやってくるかどうかと女三人、雑談を交えている。
そこへびっこをひきながらカールチンがやってきた。カールチンは、ヤスダラ姫に化けた清照姫にでれた様子も隠さずに話しかける。
黄金姫はそっとその場をはずし、セーリス姫も退室しようとしたとき、転んで舌を切ったユーフテスがやってきた。ユーフテスはセーリス姫に介抱されて二人は退場する。
清照姫はカールチンに対して、セーラン王が退位してカールチンが王位に就いたら、自分を正妃にするようにと要求した。カールチンは自分にはテーナ姫という長年連れ添った女房があると難色を示した。
清照姫は、大黒主の前例を出してカールチンに選択を迫った。カールチンは清照姫を正妃とすることを承諾してしまった。
また清照姫は、大黒主の援軍を辞退してハルナの都に返し、逆にイルナ国から援軍を出すようにと進言した。カールチンはこれも承諾してしまい、ヤスダラ姫の館を後にした。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-12-21 13:49:23 OBC :rm4205
愛善世界社版:63頁 八幡書店版:第7輯 664頁 修補版: 校定版:67頁 普及版:21頁 初版: ページ備考:
001 イルナの(みやこ)神館(かむやかた)(おく)()には、002黄金姫(わうごんひめ)003清照姫(きよてるひめ)004セーリス(ひめ)(さん)(にん)鼎坐(ていざ)して、005ヒソビソ(ばなし)(ふけ)つてゐる。
006黄金姫『ユーフテスが(うま)使命(しめい)(はた)して(かへ)るだらうかなア。007カールチンの姿(すがた)()(まで)は、008(なん)とはなしに心許(こころもと)ない(かん)じが(いた)します。009清照姫(きよてるひめ)010大丈夫(だいぢやうぶ)だらうかなア』
011清照姫『お()アさま、012そんな()心配(しんぱい)()りませぬ、013キツと右守司(うもりのかみ)(ちう)()んでやつて()ますよ。014(まへ)(もつ)(あや)しき秋波(しうは)(わたし)(おく)つてゐましたもの、015メツタに(はづ)れつこありませぬワ、016オホヽヽ』
017黄金姫『さうだらうかな、018何時(いつ)そんな微細(びさい)(ところ)(まで)看破(かんぱ)しておいたのですか、019まだ一度(いちど)より()()ひになつてゐないぢやないか』
020清照姫一度(いちど)()うても二度(にど)()うても、021カールチンの(かほ)には変化(へんくわ)はありますまい。022どうも(あや)しい目付(めつき)でしたよ。023余程(よほど)いいデレ(すけ)ですわ、024オツホヽヽ』
025黄金姫油断(ゆだん)のならぬ(むすめ)だなア。026そんなことを()つて本当(ほんたう)にお(まへ)(はう)から何々(なになに)してるのではあるまいかな。027年頃(としごろ)(むすめ)()つと、028(おや)()()めますワイ。029オホヽヽヽ』
030()()して(わら)ふ。
031清照姫『お()アさま、032(わたし)だつて(をんな)ですワ、033異性(いせい)(にほ)ひを()いでみたい(やう)(こころ)もたまには……(おこ)りませぬワ、034オホヽヽ』
035セーリス姫(なん)とマア貴女(あなた)(がた)母子(おやこ)気楽(きらく)(かた)ですな、036(むすめ)母親(ははおや)(つか)まへて惚気(のろけ)るといふ(こと)がありますか、037前代(ぜんだい)未聞(みもん)ですワ。038清照姫(きよてるひめ)(さま)はさうすると、039(もら)()()えますなア』
040黄金姫『ハイお(さつ)しの(とほ)り、041竜宮(りうぐう)(ひと)(じま)(ひろ)うて()ましたお転婆娘(てんばむすめ)(ござ)いますよ。042(いま)こそ()うして宣伝使(せんでんし)になつて真面目(まじめ)(かほ)をして()りますが、043随分(ずゐぶん)(ひろ)つた時分(じぶん)は、044(この)(そだ)ての(おや)手古摺(てこず)らしたものですよ。045(へび)()ひたいの、046(かはづ)()ひたいのと(まを)しましてなア、047(まる)雉子(きじ)(やう)(むすめ)ですワ』
048清照姫雉子(きじ)だの、049友彦(ともひこ)だのと、050それ(だけ)()はぬやうにして(くだ)さい、051(かほ)(あか)うなりますワ』
052黄金姫(かほ)(あか)うなる(だけ)053まだどこか見込(みこみ)がありますなア。054(はは)もそれ()いてチツとばかり安心(あんしん)しましたよ。055カールチンも(さだ)めて、056(まへ)さまの口車(くちぐるま)にキツと()るでせう。057(はや)うやつて()ると面白(おもしろ)いのだがなア』
058セーリス『ユーフテスを使(つかひ)にやつたのですから、059キツと(すぐ)()えますよ。060あの(をとこ)中々(なかなか)抜目(ぬけめ)のない人物(じんぶつ)ですからなア』
061黄金(わうごん)『あなたもユーフテスさまに余程(よほど)執着(しふちやく)があると()えますな。062どうぞ本当(ほんたう)にならぬやうに(ねが)ひますよ。063様子(やうす)(かんが)へてると、064(なん)だか(あやし)くてたまりませぬワ』
065セーリス姫『あなたの慧眼(けいがん)にさへ(あや)しく()える(くらゐ)でなければ、066あの(をとこ)如何(どう)して(とりこ)になりませう。067(わたし)随分(ずゐぶん)(すご)(うで)()つて()りませうがなア。068(かみ)(さま)(なん)だかすまないやうな()(いた)しますけれど、069(これ)忠義(ちうぎ)(ため)だから、070(ゆる)して(くだ)さるでせう』
071清照(きよてる)『セーリス(ひめ)(さま)上手(じやうづ)行方(やりかた)には、072(わたし)感服(かんぷく)して()ります。073到底(たうてい)(わたし)なんぞは足許(あしもと)へも()れませぬ。074(つめ)(あか)でも(せん)じて(いただ)きたいものですな』
075 かく一生(いつしやう)懸命(けんめい)になつて馬鹿話(ばかばなし)(ふけ)つてゐる。076そこへチガチガと(びつこ)をひきながらやつて()たのは右守司(うもりのかみ)であつた。077セーリス(ひめ)(なん)とも()へぬ(やさ)しみを(おもて)(うか)べ、078(やさ)しい(こゑ)で、
079セーリス姫『アヽ貴方(あなた)右守司(うもりのかみ)(さま)080よう()(くだ)さいました。081大変(たいへん)()(まを)して()りましたよ』
082カールチン(うけたま)はれば、083ヤスダラ(ひめ)(さま)(すこ)しく()気分(きぶん)(わる)いとのこと、084(その)()経過(けいくわ)如何(いかが)(ござ)います』
085セーリス姫『ハイ有難(ありがた)う。086御覧(ごらん)(とほ)り、087(この)(やう)元気(げんき)にお()(あそ)ばしました。088貴方(あなた)がお()(くだ)さるに相違(さうゐ)ないと、089覚束(おぼつか)ながら独合点(ひとりがてん)して、090(ねえ)さまに申上(まをしあ)げた(ところ)091不思議(ふしぎ)なことには大病(たいびやう)はケロリと(わす)れた(やう)(かほ)をして、092ニコニコと(なに)(うれ)しいのか()りませぬが、093(いさ)んでゐらつしやるのですよ』
094カールチン『それは(なに)より結構(けつこう)でござる。095イヤ、096ヤスダラ(ひめ)(さま)097先日(せんじつ)(えら)()無礼(ぶれい)(いた)しました。098どうぞお心易(こころやす)()(ねがひ)(いた)します。099(すこ)しくおかげんが(わる)かつたさうですな』
100清照(きよてる)(ヤスダラ姫に化けている清照姫)『ハイ、101有難(ありがた)(ござ)います。102(なん)だか()りませぬが、103貴方(あなた)のことを一寸(ちよつと)(おも)ふと一寸(ちよつと)(わる)くなり、104ヤツと(おも)ふとヤツと(わる)くなり、105(あるひ)一寸(ちよつと)よくなつたり、106(また)大変(たいへん)によくなつたり(いた)しますのですよ。107(わたし)身魂(みたま)はどうやら貴方(あなた)身魂(みたま)()つてる(やう)心持(こころもち)(いた)します。108本当(ほんたう)(めう)塩梅(あんばい)ですワ』
109カールチン『ヒヨツとしたら、110前世(ぜんせ)(おい)身魂(みたま)夫婦(ふうふ)だつたかも(わか)りませぬな。111(わたし)(なん)だか貴女(あなた)のことを(おも)()すと、112()(へん)になつて(たま)りませぬワ。113エツヘヽヽヽ』
114セーリス『モシ右守(うもり)さま、115ハンケチをお使(つか)ひなさいませ、116(なん)だかおチヨボ(ぐち)(よこ)(はう)から、117瑠璃(るり)(たま)のやうな(もの)がしたたつてゐるぢやありませぬか』
118カールチン『これは(わたし)()つては非常(ひじやう)神聖(しんせい)にして(かつ)貴重(きちよう)(もの)ですよ。119(わたし)のヤスダラ(ひめ)さまに(たい)する(かく)しても(かく)しきれぬ(よろこ)びの(つゆ)ですからなア。120エヘヽヽヽ』
121()(ほそ)くし、122現在(げんざい)(その)()黄金姫(わうごんひめ)六ケ(むつか)しい(かほ)をして(ひか)へてゐるのも()がつかず、123清照姫(きよてるひめ)にのみ視線(しせん)集注(しふちう)してゐた。124黄金姫(わうごんひめ)右守司(うもりのかみ)視線(しせん)()けて(やうや)(つぎ)()姿(すがた)をかくし、125ヤツと(むね)()でおろした。
126セーリス姫『モシ(ねえ)さま、127(わたし)がここに()つても()邪魔(じやま)にはなりますまいかな』
128清照姫(あね)(ところ)(いもうと)()るのに、129(なに)邪魔(じやま)になりませう。130姉妹(きやうだい)同士(どうし)だから、131他人(たにん)()へないことでも、132()(ゆる)して(はな)せるぢやありませぬか』
133セーリス姫『さうですね。134さう()つて(くだ)されば、135(わたし)だつて(うれ)しいですワ。136(しか)貴女(あなた)137右守司(うもりのかみ)(さま)(なに)秘密(ひみつ)(はなし)がおありでせう。138一寸(ちよつと)()()かしませうか、139あの(すゐ)()かして別席(べつせき)(いた)しませうかなア』
140カールチン(けつ)して(けつ)してお気遣(きづか)(くだ)さいますな。141秘密(ひみつ)のあらう道理(だうり)はございませぬから、142(わたし)申上(まをしあ)げたい(こと)赤裸々(せきらら)申上(まをしあ)げますから、143ヤスダラ(ひめ)(さま)もどうぞ遠慮(ゑんりよ)なく()心中(しんちう)をお(はな)(くだ)さいませ』
144 清照姫(きよてるひめ)はワザとツーンとして、
145清照姫(わたし)(べつ)右守(うもり)さまに(なに)申上(まをしあ)げる(こと)(ござ)いませぬワ。146(をんな)()(もつ)(おく)さまのある()(かた)に、147内証話(ないしようばなし)をしては()みませぬからなア』
148 セーリス(ひめ)(おも)()りジラしてやらうと(おも)ひ、
149セーリス姫『さうだつて(ねえ)さま、150あなた(こころ)(くち)(ちが)つてゐるでせう。151(わたし)がゐますと(また)大病(たいびやう)(おこ)ると(たがひ)迷惑(めいわく)ですから、152(しば)らく御免(ごめん)(かうむ)ります』
153清照姫『ホヽヽ(うま)いこと仰有(おつしや)いますこと、154ユーフテスさまがあなたの居間(ゐま)()つてゐられるものだから、155()()でないのでせう』
156セーリス姫『あなただつて、157(わたし)がここにゐると()()ぢやありますまい。158(おも)へば(おな)女気(をんなぎ)の、159男恋(をとここひ)しき(あき)(そら)160(かほ)紅葉(もみぢ)唐紅(からくれなゐ)161とめてとまらぬ紅葉(もみぢば)の、162(いろ)……とか()ひましてなア、163()ふに()はれぬ、164(たれ)だつて秘密(ひみつ)はありますワ。165それなら(ねえ)さま、166一寸(ちよつと)()つて()ます。167どうぞシツポリとお(たの)しみ(あそ)ばせ。168なア右守(うもり)さま、169あまり()気分(きぶん)(わる)なる(はなし)ぢや御座(ござ)りますまい、170オホヽヽヽ』
171 カールチンは(はな)をビコつかせながら、
172カールチン左様(さやう)々々(さやう)173(きやく)白鷺(しらさぎ)174()つが美事(みごと)175(しばら)くユーフテスさまと、176郊外(かうぐわい)散歩(さんぽ)でもなさつたら面白(おもしろ)いでせう』
177セーリス姫右守(うもり)さまのイヤなこと、178そんな(すゐ)()かして(もら)はなくても(よろ)しいワ。179(なん)()つても自由(じいう)結婚(けつこん)流行(りうかう)する()(なか)ですもの、180そんな(こと)如才(じよさい)のある(わたし)ぢや御座(ござ)いませぬ。181なア(ねえ)さま、182(ふる)道徳(だうとく)(とら)はれてゐる連中(れんちう)(やう)に、183(わが)()一生(いつしやう)一代(いちだい)(くわん)する夫婦(ふうふ)問題(もんだい)まで、184無理解(むりかい)(おや)干渉(かんせふ)されちや(たま)りませぬからなア。185それなら右守(うもり)さま、186ユーフテス……イエイエ自分(じぶん)居間(ゐま)(しばら)(さが)りますから、187ゆつくりとお(はなし)(あそ)ばしませや。188そしてよい結果(けつくわ)(もたら)して、189(わたし)にお目出度(めでた)うといふ(やう)にして(くだ)さいませ』
190カールチン()(かく)191惟神(かむながら)ですからなア』
192 ()()(ところ)へユーフテスは(した)()り、193(あご)(あた)りまで(ふく)らせながら(はし)(きた)り、
194ユーフテス『あゝゝあなたは、195右守(うもり)さまでせう、196あゝ(あま)りぢや(ござ)いませぬか。197(ひと)をふみこかして(さき)()()るとは。198コヽコレ、199セーリス(ひめ)……どの、200こんな無情(むじやう)(ひと)は、201(すゑ)(おそ)ろしいから、202(ねえ)さまが(なん)仰有(おつしや)つても、203あんたが(みづ)()さねば……なりませぬぞや。204(きよ)……オツトドツコイ、205ヤスダラ(ひめ)(さま)にお()(どく)ですから』
206セーリス『ユーフテス(さま)207(その)(かほ)はどうなさいました。208チツと(へん)ぢやありませぬか』
209ユーフテス『ミヽ(みち)でぶつ(たふ)れ、210シヽ(した)をかんで、211コヽ(この)(とほ)り、212ハヽ()れました、213イヽ(いた)くて(たま)りませぬ』
214カールチン『コリヤ、215ユーフテス、216(なん)()無礼(ぶれい)なことを(まを)すか。217(おれ)が、218そして何時(いつ)貴様(きさま)()んだか』
219ユーフテス(まこと)にスヽ()みませなんだ。220セーリス(ひめ)は、221(わたし)予約済(よやくずみ)だから、222滅多(めつた)秋波(しうは)(おく)るやうなことはなさらぬでせうな。223(なん)だかチツと様子(やうす)(へん)だから……ワヽ(わたし)もキヽ()()めますワイ』
224カールチン『ワハヽヽヽ』
225清照(きよてる)『オホヽヽヽ』
226セーリス姫『マアいやなこと、227ユーフテスさま、228サア(わたし)居間(ゐま)へおいでなさいませ。229(わたし)介抱(かいほう)して(なほ)して()げませう、230(うれ)しいでせう』
231とワザとに意茶(いちや)ついて、232右守(うもり)(こひ)()きたてようとしてゐる。233ユーフテスはいい()になり、234(ひめ)(かた)(もた)れかかり、235ヒヨロリ ヒヨロリとこの()()つて、236セーリス(ひめ)居間(ゐま)(ともな)はれ()つてしまつた。
237 (あと)にカールチン、238清照姫(きよてるひめ)(たがひ)(かほ)見合(みあは)せ、239手持(てもち)無沙汰(ぶさた)様子(やうす)(だま)()んで(しま)つた。240カールチンは(ひめ)発言(はつげん)何時(いつ)(まで)()つても口切(くちき)りがないので、241とうとう(がふ)()やし、242矢庭(やには)飛付(とびつ)(やう)にして、243(かほ)をそむけながら、244清照姫(きよてるひめ)(やはら)かい()(いは)のやうな(かた)()でグツと(にぎ)つた。245清照姫(きよてるひめ)は、
246清照姫『エー』
247一声(ひとこゑ)ふりはなす途端(とたん)に、248ヒヨロ ヒヨロ ヒヨロとカールチンは一間(いつけん)ばかり、249(うしろ)尻餅(しりもち)をつき、
250カールチン『あゝコレコレ、251ヤスダラ(ひめ)殿(どの)252(をんな)()のあられもない、253そんな乱暴(らんばう)なことをするものぢやありませぬぞ』
254 清照姫(きよてるひめ)(はづ)かしさうな(ふう)をして、
255清照姫『それでも(はづ)かしうてたまりませぬワ、256モウこらへて(くだ)さいな、257(たの)みですから』
258カールチン『ワハヽヽヽ、259流石(さすが)(をんな)だなア、260そこが(たふと)(ところ)だ。261矢張(やつぱり)ウブなものだワイ。262(うま)れが(ちが)ふとどこともなしに(ゆか)しい(ところ)がおありなさる、263ウフヽヽヽ』
264()ひながら、265今度(こんど)(ひめ)背後(はいご)より両手(りやうて)をグツと(かた)にかけ、266()()めようとするのを、267清照姫(きよてるひめ)は、268カールチンの両腕(りやううで)をグツと()り、269ウンと(ちから)()れた拍子(ひやうし)(たい)をすくめた。270カールチンは負投(おひなげ)(くら)つて一間(いつけん)ばかり(むか)ふへ()び、271床柱(とこばしら)後頭部(こうとうぶ)をカチンと()ち、
272カールチン『アイタヽヽヽ、273コレコレ(ひめ)さま、274(なん)といふ手荒(てあら)いことをなさるのだ。275何時(いつ)()柔術(じうじゆつ)(おぼ)えましたかな、276天晴(あつぱれ)()手際(てぎは)だ。277ヤア感心(かんしん)々々(かんしん)
278清照姫(あま)無礼(ぶれい)(こと)をなさいますと、279(わたし)承知(しようち)(いた)しませぬぞや』
280カールチン(なん)(えら)いヒステリツクだなア。281如何(どう)したら()機嫌(きげん)がとれるかなア。282まてまて、283(ひめ)(こころ)奥底(おくそこ)測量(そくりやう)もせずに無暗(むやみ)相手(あひて)になつて、284はねるのは当然(たうぜん)だ。285惚切(ほれき)つた(をとこ)にからかはれると、286(かへつ)(うれ)(おどろ)きに肱鉄砲(ひぢてつぱう)をかまし、287(あと)から後悔(こうくわい)する(をんな)が、288間々(まま)あるものだ。289(ひめ)もヤツパリ(その)(でん)だなア』
290(おも)はず()らず小声(こごゑ)(ささや)く。291清照姫(きよてるひめ)可笑(をか)しさを(こら)へて、
292清照姫右守(うもり)さま、293(なん)仰有(おつしや)います。294(わたし)(けつ)してヒステリツクぢやありませぬよ。295(この)(とほ)り、296ビチビチ()えとるぢやありませぬか。297(なん)だか()らないが、298身魂(みたま)()はないと()えまして、299守護神(しゆごじん)(おこ)つて仕様(しやう)(ござ)いませぬワ。300チツと(この)守護神(しゆごじん)鎮魂(ちんこん)でもして帰順(きじゆん)するやうに()ひきかして(くだ)さいませな。301本当(ほんたう)(わたし)(こま)つちまひますワ』
302カールチン『あゝそれでよく(わか)りました。303さうすると貴女(あなた)肉体(にくたい)はカールチンに(たい)し、304(べつ)嫌忌(けんき)(じやう)をお()ちになつてるのぢやありませぬなア』
305清照姫『ハイ』
306カールチン本人(ほんにん)肉体(にくたい)さへ承知(しようち)なら、307守護神(しゆごじん)(くらゐ)308(なん)()つた(ところ)で、309(もの)(かず)でもありませぬワイ』
310()ひながら、311(また)もや(ひめ)()をグツと(にぎ)る。312清照姫(きよてるひめ)はワザと(こゑ)(とが)らし、
313清照姫(わらは)はヤスダラ(ひめ)(ふく)守護神(しゆごじん)314三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)清照姫(きよてるひめ)(ござ)るぞよ。315(なんぢ)(いやし)くも右守司(うもりのかみ)となり、316万民(ばんみん)(みちび)()でゐながら(その)(いや)しき振舞(ふるまひ)何事(なにごと)ぞや。317容赦(ようしや)(いた)さぬぞ。318(いま)(その)(はう)()げつけたのは、319(この)清照姫(きよてるひめ)(れい)がしたのぢや。320(けつ)してヤスダラ(ひめ)所為(しよゐ)ではない(ほど)に、321誤解(ごかい)をせぬやうにしたがよからう。322清照姫(きよてるひめ)最早(もはや)(この)肉体(にくたい)立去(たちさ)(ほど)に、323(あと)(その)(ほう)自由(じいう)(いた)したが()からうぞや。324ウンウン』
325ドスンと飛上(とびあが)り、326清照姫(きよてるひめ)おこりのおちたやうなケロリとした(かほ)をして、327カールチンの(かほ)打眺(うちなが)め、
328清照姫『ヤア貴方(あなた)(こひ)しい(した)はしい右守(うもり)さまで御座(ござ)いましたか、329()うマア()多忙(たばう)職務(しよくむ)をすてて、330(わたし)(ねがひ)(かな)へて()()(くだ)さいました、331あゝ(うれ)しう御座(ござ)います。332どうぞ不束(ふつつか)(わたし)333見捨(みすて)なく末永(すえなが)可愛(かあい)がつて(くだ)さいませ』
334右守(うもり)(ひざ)(かしら)をなげつけ、335(くび)左右(さいう)にふつて(うれ)(なき)真似(まね)をして()せる。336カールチンは(えつ)()り、
337カールチン『ウツフヽヽヽ、338イヤ(ひめ)339心配(しんぱい)なさるな。340其方(そち)(こと)なら、341如何(いか)なることでも(わが)(ちから)(かな)ふことならば、342(かな)へて(しん)ぜませう。343どうぞカールチンも(いま)(こころ)何時(いつ)(まで)(あい)して(くだ)さいや』
344となまめかしい(こゑ)で、345()(ほそ)くして(しやべ)()した。346どこともなく、347(をけ)()がゆるんだやうな言葉(ことば)(づか)ひである。
348清照姫『ハイ有難(ありがた)(ござ)います。349それなら(この)ヤスダラ(ひめ)(ねがひ)(なん)でも()いて(くだ)さいますか』
350カールチン(まを)すに(およ)ばず、351どんな(こと)でも()いて()げるから()つて()なさい』
352清照姫『それなら申上(まをしあ)げますが、353(けつ)してお(はら)()てて(くだ)さいますなや。354貴方(あなた)御存(ごぞん)じの(とほ)り、355セーラン(わう)(さま)(ここ)(いつ)(げつ)(のち)には万事(ばんじ)準備(じゆんび)(ととの)へて、356貴方(あなた)(さま)(あと)をお(ゆづ)(あそ)ばすことに内定(ないてい)して()りますのは(たしか)です。357さうすれば貴方(あなた)右守司(うもりのかみ)ではなくて、358入那(いるな)(みやこ)刹帝利(せつていり)(さま)359さう()出世(しゆつせ)(あそ)ばした(とき)は、360こんな(いや)しき(をんな)体面(たいめん)(かか)はると仰有(おつしや)つて、361キツと(わたし)をお()(あそ)ばすでせう。362貴方(あなた)本当(ほんたう)(わたし)(あい)して(くだ)さるのならば、363ここで(ひと)つどこまでも()てないと()書付(かきつけ)()いて(くだ)さいませぬか』
364カールチン如何(いか)なる難問題(なんもんだい)かと(おも)へば、365そんな(こと)か。366ヨシヨシ、367()いてやらう。368(なん)()けばいいのだなア』
369清照姫(わたし)要求(えうきう)到底(たうてい)貴方(あなた)には聞入(ききい)れられますまい。370いざと()場合(ばあひ)になれば、371キツと拒絶(きよぜつ)なさるにきまつて()りますワ』
372カールチン武士(ぶし)言葉(ことば)二言(にごん)はない。373(をんな)一人(ひとり)(くらゐ)(たぶ)かつて(なん)になるか。374(はや)(その)要求(えうきう)次第(しだい)細々(こまごま)()つて()なさい』
375清照姫貴方(あなた)刹帝利(せつていり)にお()(あそ)ばした(あかつき)は、376キツと(わたし)正妃(せいひ)にして(くだ)さるでせうなア』
377カールチン『ウーン、378そりや、379せぬでもないが、380(わたし)にはテーナ(ひめ)といふ女房(にようばう)があるぢやないか』
381清照姫(その)テーナさまは、382貴方(あなた)右守司(うもりのかみ)としての(おく)さまでせう。383(けつ)して刹帝利(せつていり)(おく)さまでは(ござ)いますまい。384刹帝利(せつていり)(おく)さまには(たれ)をお(えら)みですか。385ヤツパリ依然(いぜん)として(ふる)いのを()使用(しよう)(あそ)ばしますか。386それでは折角(せつかく)貴方(あなた)一切(いつさい)規則(きそく)革新(かくしん)しようとなさつても、387城内(じやうない)空気(くうき)(あたら)しくする(こと)出来(でき)ますまい。388()(かんが)へて御覧(ごらん)なさい。389バラモン(けう)大教主(だいけうしゆ)大黒主(おほくろぬし)神柱(かむばしら)は、390(なが)らく(とも)苦労(くらう)(あそ)ばした糟糠(さうかう)(つま)放逐(はうちく)し、391新規(しんき)()(なほ)しの(わか)(うる)はしい石生能(いその)(ひめ)(さま)正妃(せいひ)(あそ)ばしたぢや(ござ)いませぬか。392大黒主(おほくろぬし)(さま)でさへも(あそ)ばしたことを、393貴方(あなた)出来(でき)ない道理(だうり)はありますまい。394サア何卒(どうぞ)これからきめて(くだ)さい。395おイヤですかな。396おイヤならばお(いや)とキツパリ()つて(くだ)さい。397(わたし)にも(ひと)覚悟(かくご)がありますから』
398カールチン成程(なるほど)さう()けばそれも(もつと)もだ。399それなら貴女(あなた)正妃(せいひ)とすることを(かた)(やく)しませう』
400清照姫有難(ありがた)(ござ)います、401それなら今日(けふ)から(わたし)はあなた(さま)(まこと)(つま)ですなア』
402となまめかしい(こゑ)()し、403満面(まんめん)(ゑみ)(たた)へて(もた)れかかつた。404(その)しをらしさにカールチンは(ほね)(たま)()けた(ごと)くグニヤ グニヤとなつて(しま)ひ、405(かほ)相好(さうがう)(くづ)して平素(へいそ)のさがり()一入(ひとしほ)()げ、406(こゑ)調子(てうし)まで(くる)はしながら、
407カールチン『ウンウンよしよし、408(まへ)()ふことなら、409(いのち)でもやらう。410ホンに可愛(かあい)(やつ)だなア、411エヘヽヽヽ』
412清照姫『それなら(わたし)(ひと)つの(ねがひ)(ござ)います。413御存(ごぞん)じの(とほ)り、414最早(もはや)刹帝利(せつていり)授受(じゆじゆ)円満(ゑんまん)解決(かいけつ)曙光(しよくわう)(みと)めてゐるのですから、415大黒主(おほくろぬし)(さま)軍隊(ぐんたい)借用(しやくよう)するのはお()めになつたら如何(どう)ですか、416何程(なにほど)円満(ゑんまん)解決(かいけつ)とは()ひながら、417カールチンは刹帝利(せつていり)(くらゐ)(うば)はむ(ため)に、418大黒主(おほくろぬし)(さま)軍隊(ぐんたい)借用(しやくよう)して脅迫(けうはく)したといはれては末代(まつだい)までの不名誉(ふめいよ)419(また)国民(こくみん)一般(いつぱん)(たい)しても治政(ちせい)(じやう)大変(たいへん)障害(しやうがい)となるぢやありませぬか。420どうぞ(わたし)()(ねがひ)ですから、421(いち)()(はや)早馬使(はやうまづかひ)をハルナの(みやこ)にさし()け、422軍隊(ぐんたい)派遣(はけん)(ことわ)つて(くだ)さいませ。423大黒主(おほくろぬし)(さま)だつて、424近国(きんごく)動乱(どうらん)(おこ)つてゐるのですから、425大変(たいへん)()迷惑(めいわく)でせう。426一層(いつそう)(こと)427貴方(あなた)軍隊(ぐんたい)全部(ぜんぶ)応援(おうゑん)(ため)差向(さしむ)けになつたならば、428貴方(あなた)武勇(ぶゆう)天下(てんか)(とどろ)(また)大黒主(おほくろぬし)(さま)のお(おぼ)えはますます目出度(めでた)く、429(つひ)にはハルナの(みやこ)後継(あとつぎ)にお()りなさる端緒(たんちよ)(ひら)くといふものです。430これ(くらゐ)決断(けつだん)がなくては到底(たうてい)駄目(だめ)ですからなア』
431カールチン成程(なるほど)さう()けばさうだなア。432それなら一先(ひとま)(わが)(やかた)立帰(たちかへ)り、433早馬使(はやうまづかひ)(はし)らせて、434軍隊(ぐんたい)派遺(はけん)()辞退(じたい)申上(まをしあ)げ、435味方(みかた)勇士(ゆうし)をして、436(のこ)らず大黒主(おほくろぬし)(さま)(ため)応援(おうゑん)させよう。437ヤア、438ヤスダラ(ひめ)439(また)ゆつくりとお()にかからう。440キツと明日(あす)早朝(さうてう)から登城(とじやう)するから、441安心(あんしん)して()つてゐるがよい。442左守殿(さもりどの)へも其方(そち)から(よろ)しく()つて(くだ)さい。443(わたし)から()ふのは(なん)だか都合(つがふ)(わる)(やう)だから』
444清照姫(ちち)左守(さもり)最早(もはや)(わたし)(せつ)なる(こひ)看破(かんぱ)し、445夜前(やぜん)(きび)しく膝詰(ひざつめ)談判(だんぱん)(いた)しました(ゆゑ)446(いのち)をかけて、447いろいろと陳弁(ちんべん)しました(ところ)448ヤツと得心(とくしん)して()れまして……流石(さすが)(おれ)(むすめ)だ。449よい(ところ)()がついた、450(まへ)がさうなつてくれれば、451右守司(うもりのかみ)との暗闘(あんとう)もこれでサツパリ()けるだらう……と(よろこ)(いさ)んで(わか)れた(くらゐ)ですから、452(ちち)(はう)(けつ)して()心配(しんぱい)くださいますなや』
453カールチン『ヤスダラ(ひめ)殿(どの)454名残(なごり)()しいが、455明日(あす)(また)()にかからう』
456()ひながら、457(したた)(よだれ)をソツとたぐり、458イソイソとして(おの)(やかた)立帰(たちかへ)るのであつた。459(あと)清照姫(きよてるひめ)(かへ)()姿(すがた)を、460(くび)()ばして(なが)めてゐたが、461何時(いつ)()にやら(ひめ)(くび)()()(たて)(うご)き、462(あか)(した)まではみ()して()た。
463大正一一・一一・一四 旧九・二六 松村真澄録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki