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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第42巻(巳の巻)
序文に代へて
総説に代へて
第1篇 波瀾重畳
第1章 北光照暗
第2章 馬上歌
第3章 山嵐
第4章 下り坂
第2篇 恋海慕湖
第5章 恋の罠
第6章 野人の夢
第7章 女武者
第8章 乱舌
第9章 狐狸窟
第3篇 意変心外
第10章 墓場の怪
第11章 河底の怪
第12章 心の色々
第13章 揶揄
第14章 吃驚
第4篇 怨月恨霜
第15章 帰城
第16章 失恋会議
第17章 酒月
第18章 酊苑
第19章 野襲
第5篇 出風陣雅
第20章 入那立
第21章 応酬歌
第22章 別離の歌
第23章 竜山別
第24章 出陣歌
第25章 惜別歌
第26章 宣直歌
余白歌
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霊界物語
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舎身活躍(第37~48巻)
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第42巻(巳の巻)
> 第2篇 恋海慕湖 > 第8章 乱舌
<<< 女武者
(B)
(N)
狐狸窟 >>>
第八章
乱舌
(
らんぜつ
)
〔一一三三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第42巻 舎身活躍 巳の巻
篇:
第2篇 恋海慕湖
よみ(新仮名遣い):
れんかいぼこ
章:
第8章 乱舌
よみ(新仮名遣い):
らんぜつ
通し章番号:
1133
口述日:
1922(大正11)年11月15日(旧09月27日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年7月1日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
セーリス姫は、カールチンの王位簒奪計画を防ぐためとは言いながら、心にそぐわないユーフテスに色目を使って仲を偽ってきたことに心を痛め、二弦琴を弾きながら歌っている。
そこへユーフテスがそっとやってきた。ユーフテスは、清照姫の計略が当たり、カールチンが大黒主の援軍を断って返したことを報告にやってきた。
セーリス姫は自分の心を押さえてあくまでユーフテスに気がある風を装っている。ユーフテスは、これまで自分はセーリス姫にだまされているのではないかという疑いの心があったが、セーリス姫の真心がわかったと言って感動を露わにした。
ユーフテスが有頂天になっていると、扉の外からセーリス姫が呼びかけた。ユーフテスは、自分が今ここでセーリス姫と話をしているのに、不審を抱いた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-12-22 15:38:29
OBC :
rm4208
愛善世界社版:
106頁
八幡書店版:
第7輯 680頁
修補版:
校定版:
110頁
普及版:
42頁
初版:
ページ備考:
001
(セーリス姫)
『
凩
(
こがらし
)
荒
(
すさ
)
ぶ
秋
(
あき
)
の
空
(
そら
)
002
妻
(
つま
)
恋
(
こ
)
ふ
鹿
(
しか
)
の
鳴
(
な
)
く
声
(
こゑ
)
も
003
細
(
ほそ
)
りて
早
(
はや
)
くも
冬
(
ふゆ
)
の
空
(
そら
)
004
冷
(
つめ
)
たき
風
(
かぜ
)
は
窓
(
まど
)
を
吹
(
ふ
)
き
005
錦
(
にしき
)
飾
(
かざ
)
りし
野
(
の
)
も
山
(
やま
)
も
006
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
の
衣
(
きぬ
)
を
脱
(
ぬ
)
ぎすてて
007
漸
(
やうや
)
く
裸
(
はだか
)
となりにける
008
時
(
とき
)
しもあれやユーフテス
009
わが
身
(
み
)
を
思
(
おも
)
ふ
恋衣
(
こひぎぬ
)
は
010
いよいよ
厚
(
あつ
)
く
重
(
かさ
)
なりて
011
百度
(
ひやくど
)
以上
(
いじやう
)
の
上
(
のぼ
)
せ
方
(
かた
)
012
冬
(
ふゆ
)
と
夏
(
なつ
)
とを
間違
(
まちが
)
へて
013
猛
(
たけ
)
り
狂
(
くる
)
ふぞ
浅猿
(
あさま
)
しき
014
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
にありながら
015
右守司
(
うもりつかさ
)
に
比
(
くら
)
ぶれば
016
稍
(
やや
)
正直
(
しやうぢき
)
な
男
(
をとこ
)
をば
017
詐
(
いつは
)
り
操
(
あやつ
)
る
吾
(
わが
)
心
(
こころ
)
018
げに
恥
(
はづ
)
かしく
思
(
おも
)
へども
019
セーラン
王
(
わう
)
や
国
(
くに
)
の
為
(
ため
)
020
仮令
(
たとへ
)
地獄
(
ぢごく
)
に
堕
(
お
)
つるとも
021
騙
(
だま
)
さにやならぬ
此
(
この
)
場合
(
ばあひ
)
022
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
もセーリスが
023
心
(
こころ
)
を
諾
(
うべな
)
ひ
遊
(
あそ
)
ばして
024
曲行
(
まがおこな
)
ひを
惟神
(
かむながら
)
025
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し
026
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
されて
此
(
この
)
度
(
たび
)
の
027
イルナの
国
(
くに
)
の
大変
(
たいへん
)
を
028
未発
(
みはつ
)
に
防
(
ふせ
)
がせ
給
(
たま
)
へかし
029
騙
(
だま
)
され
切
(
き
)
つたユーフテス
030
さぞ
今頃
(
いまごろ
)
は
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
ち
031
舌
(
した
)
をかみ
切
(
き
)
り
腮
(
あご
)
をうち
032
苦
(
くる
)
しい
身
(
み
)
をも
打忘
(
うちわす
)
れ
033
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
事
(
こと
)
を
一心
(
いつしん
)
に
034
思
(
おも
)
ひこらしてスタスタと
035
家路
(
いへぢ
)
を
出
(
い
)
でて
大道
(
だいだう
)
を
036
急
(
いそ
)
ぎて
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
るらむ
037
又
(
また
)
もや
大道
(
だいだう
)
に
顛倒
(
てんたふ
)
し
038
大
(
おほ
)
きな
怪我
(
けが
)
のなき
様
(
やう
)
に
039
梵天
(
ぼんてん
)
帝釈
(
たいしやく
)
自在天
(
じざいてん
)
040
厚
(
あつ
)
く
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
へかし
041
ユーフもヤツパリ
天地
(
あめつち
)
の
042
神
(
かみ
)
の
御水火
(
みいき
)
に
生
(
うま
)
れたる
043
神
(
かみ
)
の
御子
(
みこ
)
なり
神
(
かみ
)
の
宮
(
みや
)
044
妾
(
わらは
)
も
憎
(
にく
)
しと
思
(
おも
)
はねど
045
セーラン
王
(
わう
)
の
御
(
おん
)
為
(
ため
)
に
046
忠義
(
ちうぎ
)
の
犠牲
(
ぎせい
)
と
心得
(
こころえ
)
て
047
心
(
こころ
)
にもなき
詐
(
いつは
)
りを
048
図々
(
づうづう
)
しくも
白昼
(
はくちう
)
に
049
振舞
(
ふるま
)
ひ
来
(
きた
)
るぞ
悲
(
かな
)
しけれ
050
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
よ
百神
(
ももがみ
)
よ
051
セーリス
姫
(
ひめ
)
の
罪業
(
ざいごふ
)
を
052
咎
(
とが
)
め
給
(
たま
)
はず
速
(
すみや
)
かに
053
許
(
ゆる
)
させ
給
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
054
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
にねぎ
奉
(
まつ
)
る』
055
と
二絃琴
(
にげんきん
)
に
合
(
あ
)
はして
淑
(
しと
)
やかに
歌
(
うた
)
つてゐるのは、
056
歌
(
うた
)
の
文句
(
もんく
)
に
現
(
あら
)
はれたセーリス
姫
(
ひめ
)
である。
057
廊下
(
らうか
)
に
足音
(
あしおと
)
を
忍
(
しの
)
ばせながら、
058
あたりを
窺
(
うかが
)
ひ、
059
ソツと
這入
(
はい
)
つて
来
(
き
)
たのはユーフテスである。
060
痩犬
(
やせいぬ
)
が
臭
(
くさ
)
い
乞食
(
こじき
)
の
飯
(
めし
)
を
嗅
(
か
)
ぎつけたやうなスタイルで、
061
負傷
(
ふしやう
)
した
舌
(
した
)
を
五分
(
ごぶ
)
ばかりニヨツと
出
(
だ
)
し、
062
下唇
(
したくちびる
)
の
上
(
うへ
)
に
大切
(
だいじ
)
さうにチヤンと
載
(
の
)
せ、
063
腰
(
こし
)
と
首
(
くび
)
と
互
(
たがひ
)
ちがひに
振
(
ふ
)
りながら、
064
少
(
すこ
)
しく
屈
(
かが
)
んで、
065
左右
(
さいう
)
の
手
(
て
)
を
妙
(
めう
)
な
恰好
(
かつかう
)
にパツと
広
(
ひろ
)
げ、
066
掌
(
てのひら
)
を
上向
(
うへむ
)
けにして、
067
乞食
(
こじき
)
が
物
(
もの
)
を
貰
(
もら
)
ふ
様
(
やう
)
な
手
(
て
)
つき
可笑
(
をか
)
しく、
068
ユーフテス
『モシ…………モシ…………
姫
(
ひめ
)
さま』
069
と
言
(
い
)
ひ
憎
(
にく
)
さうに
口
(
くち
)
を
切
(
き
)
つた。
070
セーリス
姫
(
ひめ
)
は……あゝ
又
(
また
)
嫌
(
いや
)
な
男
(
をとこ
)
がやつて
来
(
き
)
た、
071
暫
(
しばら
)
く
虫
(
むし
)
を
抑
(
おさ
)
へて、
072
一活動
(
ひとくわつどう
)
やらねばならぬ、
073
何
(
なに
)
ほど
嫌
(
いや
)
でも
嫌
(
いや
)
さうな
顔
(
かほ
)
は
出来
(
でき
)
ない。
074
「いやなお
客
(
きやく
)
に
笑
(
わら
)
うて
見
(
み
)
せて、
075
ソツと
泣
(
な
)
き
出
(
だ
)
す
好
(
す
)
きの
膝
(
ひざ
)
」といふ
事
(
こと
)
もある。
076
ここは
遺憾
(
ゐかん
)
なく
愛嬌
(
あいけう
)
を
振
(
ふ
)
りまくのが
孫呉
(
そんご
)
の
兵法
(
へいはふ
)
だ…………と
敏
(
さと
)
くも
心
(
こころ
)
に
決
(
けつ
)
し、
077
笑
(
ゑみ
)
を
十二分
(
じふにぶん
)
に
湛
(
たた
)
へて、
078
セーリス姫
『ユーフテス
様
(
さま
)
、
079
御
(
お
)
怪我
(
けが
)
は
如何
(
どう
)
で
御座
(
ござ
)
いますか、
080
御
(
ご
)
用心
(
ようじん
)
して
下
(
くだ
)
さいませや。
081
あたえ
心配
(
しんぱい
)
致
(
いた
)
しまして、
082
昨夜
(
ゆふべ
)
も
碌
(
ろく
)
に
寝
(
ね
)
なかつたのですよ。
083
貴郎
(
あなた
)
が
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
生存
(
せいぞん
)
して
居
(
ゐ
)
られなかつたら、
084
あたえも
最早
(
もはや
)
社会
(
しやくわい
)
に
生存
(
せいぞん
)
の
希望
(
きばう
)
はありませぬワ。
085
ねえ
貴郎
(
あなた
)
、
086
可愛
(
かあい
)
いものでせう、
087
オホヽヽヽおゝ
恥
(
はづか
)
し………』
088
ユーフテスは
之
(
これ
)
を
聞
(
き
)
いて
頭
(
あたま
)
のぎりぎりまでザクザクさせ、
089
自由
(
じいう
)
のきかぬ
舌
(
した
)
の
側面
(
そくめん
)
から
止
(
と
)
め
度
(
ど
)
もなく
涎
(
よだれ
)
を
迸出
(
へいしゆつ
)
しながら、
090
慌
(
あわ
)
てて
袂
(
たもと
)
で
拭
(
ふ
)
き
取
(
と
)
り、
091
ユーフテス
『(
言
(
い
)
ひにくさうに
言
(
い
)
ふ)お
姫
(
ひめ
)
さま………
有難
(
ありがた
)
う………お
蔭
(
かげ
)
様
(
さま
)
で………
大
(
たい
)
した
事
(
こと
)
は………ありませぬから、
092
マア、
093
安心
(
あんしん
)
して
下
(
くだ
)
さい………
至極
(
しごく
)
………
健全
(
けんぜん
)
です。
094
昨日
(
さくじつ
)
は
大変
(
たいへん
)
に
痛
(
いた
)
みましたが、
095
今日
(
こんにち
)
はお
蔭
(
かげ
)
で
大
(
だい
)
ウヅキがとまり、
096
気分
(
きぶん
)
も
余程
(
よほど
)
よくなりました』
097
セーリス姫
『
本当
(
ほんたう
)
にそれ
聞
(
き
)
いて、
098
あてえ
嬉
(
うれ
)
しいワ。
099
そらさうでせうよ、
100
終日
(
しうじつ
)
終夜
(
しゆうや
)
、
101
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
に
御
(
ご
)
祈願
(
きぐわん
)
をこらしてゐたのだもの、
102
貴郎
(
あなた
)
の
為
(
ため
)
なら、
103
仮令
(
たとへ
)
あたえの
命
(
いのち
)
がなくなつても、
104
チツとも
惜
(
を
)
しくないワネエ』
105
ユーフテス
『そりや………
有難
(
ありがた
)
いなア………お
姫
(
ひめ
)
さまの………
御
(
ご
)
精神
(
せいしん
)
が………そこまで………
熱誠
(
ねつせい
)
だとは………
夢
(
ゆめ
)
にも
思
(
おも
)
はなかつたですよ。
106
始
(
はじ
)
めの
内
(
うち
)
は
何
(
なに
)
か、
107
気
(
き
)
をひかれてゐるのぢやなからうかと、
108
疑
(
うたが
)
つてゐましたが………ヤツパリ
疑
(
うたが
)
ふのは………
私
(
わたし
)
の
心
(
こころ
)
が
汚
(
きたな
)
いからでした………どうぞ、
109
お
姫
(
ひめ
)
さま、
110
こんなつまらぬ
男
(
をとこ
)
でも、
111
ここまでも
解
(
と
)
け
合
(
あ
)
うたのですから、
112
どうぞ
末永
(
すえなが
)
う
可愛
(
かあい
)
がつて
下
(
くだ
)
さい………
其
(
その
)
代
(
かは
)
りに、
113
貴女
(
あなた
)
の
為
(
ため
)
ならば
鬼
(
おに
)
の
巣窟
(
さうくつ
)
へでも、
114
獅子
(
しし
)
狼
(
おほかみ
)
の
岩窟
(
いはや
)
へでも、
115
飛込
(
とびこ
)
めと
仰有
(
おつしや
)
れば
飛込
(
とびこ
)
みます。
116
猛獣
(
まうじう
)
の
棲処
(
すみか
)
は
愚
(
おろ
)
か、
117
猛火
(
まうくわ
)
の
中
(
なか
)
でも
水底
(
みなそこ
)
へでも、
118
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
ならば………いやお
頼
(
たの
)
みならば………
何
(
なん
)
でも
忠実
(
ちうじつ
)
に
御用
(
ごよう
)
を
承
(
うけたま
)
はりますワ』
119
セーリス姫
『オホヽヽ、
120
貴郎
(
あなた
)
そんな
叮嚀
(
ていねい
)
な
事
(
こと
)
いつて
下
(
くだ
)
さると、
121
あたえ、
122
何
(
なん
)
だか
他人
(
たにん
)
行儀
(
ぎやうぎ
)
のやうになつて
気
(
き
)
が
術
(
じゆつ
)
なうてなりませぬワ。
123
どうぞこれから、
124
そんな
虚偽
(
きよぎ
)
の
辞令
(
じれい
)
は
抜
(
ぬ
)
きにして、
125
あたえを
女房
(
にようばう
)
扱
(
あつか
)
ひに
呼
(
よ
)
んで
下
(
くだ
)
さいねえ。
126
そしておくれやしたら、
127
あたえ、
128
何
(
なん
)
ぼ
嬉
(
うれ
)
しいか
知
(
し
)
れませぬワ。
129
オホヽヽ』
130
ユーフテス
『
時
(
とき
)
にお
姫
(
ひめ
)
さま、
131
否
(
いな
)
セーリス
姫
(
ひめ
)
、
132
喜
(
よろこ
)
べ、
133
偉
(
えら
)
い
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
たぞ。
134
天
(
てん
)
が
地
(
ち
)
になり、
135
地
(
ち
)
が
天
(
てん
)
になる………と
云
(
い
)
ふ
大事変
(
だいじへん
)
だ。
136
それもヤツパリ
智謀
(
ちぼう
)
絶倫
(
ぜつりん
)
のユーフテスとセーリス
姫
(
ひめ
)
との
方寸
(
はうすん
)
から
捻
(
ひね
)
りだした
結果
(
けつくわ
)
だから、
137
剛勢
(
がうせい
)
なものだよ、
138
オツホヽヽ。
139
アイタヽヽ、
140
余
(
あま
)
り
笑
(
わら
)
ふと、
141
ヤツパリ
舌
(
した
)
が
痛
(
いた
)
いワイ。
142
アーン』
143
セーリス姫
『
大変
(
たいへん
)
とは
何
(
なん
)
ですか。
144
早
(
はや
)
う
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいな。
145
あたえ、
146
気
(
き
)
にかかつて
仕様
(
しやう
)
がありませぬワ。
147
吉
(
きち
)
か
凶
(
きよう
)
か、
148
善
(
ぜん
)
か
悪
(
あく
)
か、
149
サ
早
(
はや
)
う
聞
(
き
)
かして
頂戴
(
ちやうだい
)
』
150
と、
151
目
(
め
)
を
細
(
ほそ
)
うし
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
け
腮
(
あご
)
を
前
(
まへ
)
へ
突
(
つ
)
き
出
(
だ
)
し、
152
舌
(
した
)
を
右
(
みぎ
)
の
唇
(
くちびる
)
の
縫目
(
ぬひめ
)
へニユツと
出
(
だ
)
し、
153
色目
(
いろめ
)
を
使
(
つか
)
つて
見
(
み
)
せた。
154
ユーフテスは
益々
(
ますます
)
得意
(
とくい
)
になり、
155
十分
(
じふぶん
)
に
手柄話
(
てがらばなし
)
を
針小
(
しんせう
)
棒大
(
ぼうだい
)
にやつて
見
(
み
)
たいのは
山々
(
やまやま
)
だが、
156
思
(
おも
)
ふ
様
(
やう
)
に
舌
(
した
)
が
命令
(
めいれい
)
を
聞
(
き
)
かぬので、
157
もどかしがり、
158
目
(
め
)
をしばしばさせながら、
159
ユーフテス
『
天地
(
てんち
)
が
変
(
かは
)
るといふのは………それ、
160
お
前
(
まへ
)
の
心配
(
しんぱい
)
してゐた、
161
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
派遣
(
はけん
)
遊
(
あそ
)
ばす、
162
五百騎
(
ごひやくき
)
を
ぼつ
返
(
かへ
)
す
様
(
やう
)
になつたのだ』
163
セーリス姫
『エヽいよいよ
決行
(
けつかう
)
されましたかなア。
164
さぞ
清照姫
(
きよてるひめ
)
さまも
喜
(
よろこ
)
ばれる
事
(
こと
)
でせう、
165
清照姫
(
きよてるひめ
)
さまはヤツパリ
偉
(
えら
)
いですなア』
166
ユーフテス
『そらさうですとも、
167
セーリス
姫
(
ひめ
)
さまの………ドツコイ、
168
お
前
(
まへ
)
の
贋
(
にせ
)
の
姉
(
あね
)
になるといふ
腕前
(
うでまへ
)
だからなア、
169
偉
(
えら
)
いと
云
(
い
)
へば
偉
(
えら
)
いものだが、
170
併
(
しか
)
しながら
其
(
その
)
八九分
(
はちくぶ
)
迄
(
まで
)
の
功績
(
こうせき
)
は、
171
ヤツパリ、
172
ユーフテスとセーリス
姫
(
ひめ
)
にあるのだからなア。
173
何程
(
なにほど
)
智慧
(
ちゑ
)
があつても、
174
器量
(
きりやう
)
がよくても、
175
一人
(
ひとり
)
で
芝居
(
しばゐ
)
は
出来
(
でき
)
ないから、
176
吾々
(
われわれ
)
夫婦
(
ふうふ
)
は
千
(
せん
)
両
(
りやう
)
役者
(
やくしや
)
と
云
(
い
)
つても………
過言
(
くわごん
)
ではあるまい。
177
アーン』
178
セーリス姫
『オホヽヽ、
179
正式
(
せいしき
)
結婚
(
けつこん
)
もせない
内
(
うち
)
から、
180
夫婦
(
ふうふ
)
なんて
言
(
い
)
ふものぢやありませぬよ。
181
もしも
口
(
くち
)
さがなき
京童
(
きやうわらべ
)
の
耳
(
みみ
)
へでも
這入
(
はい
)
らうものなら、
182
ユーフテスの
夫婦
(
ふうふ
)
は
自由
(
じいう
)
結婚
(
けつこん
)
をやつたとか、
183
セーリス
姫
(
ひめ
)
はお
転婆
(
てんば
)
の
標本
(
へうほん
)
だとか、
184
新
(
あたら
)
しい
女
(
をんな
)
だとか
言
(
い
)
はれちや、
185
互
(
たがひ
)
の
迷惑
(
めいわく
)
ですからなア』
186
ユーフテス
『それなら
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つたらいいのだ。
187
夫婦
(
ふうふ
)
と
言
(
い
)
はれても、
188
余
(
あま
)
り
気
(
き
)
が
悪
(
わる
)
くなる
問題
(
もんだい
)
ぢやあるまい。
189
アーン』
190
セーリス姫
『そらさうですとも、
191
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く、
192
互
(
たがひ
)
に
夫
(
をつと
)
よ
妻
(
つま
)
よと
意茶
(
いちや
)
ついて
暮
(
くら
)
したいのは
山々
(
やまやま
)
ですワ。
193
余
(
あま
)
り
嬉
(
うれ
)
しうて、
194
一寸
(
ちよつと
)
すねて
見
(
み
)
たのですよ。
195
オホヽヽ』
196
ユーフテス
『エヽ
肚
(
はら
)
の
悪
(
わる
)
い
女
(
をんな
)
だなア。
197
さう
夫
(
をつと
)
をジラすものぢやないワ』
198
セーリス姫
『
夫
(
をつと
)
でも
男
(
をとこ
)
でも、
199
オツトセーでも、
200
ナツトセーでも
良
(
い
)
いぢやありませぬか。
201
本当
(
ほんたう
)
の
私
(
わたし
)
のオツトセーになるのは、
202
此
(
この
)
広
(
ひろ
)
い
世界
(
せかい
)
に
貴郎
(
あなた
)
丈
(
だけ
)
ですワネエ。
203
なつと
千匹
(
せんびき
)
に
夫
(
をつと
)
一匹
(
いつぴき
)
と
云
(
い
)
ひまして、
204
択捉島
(
えとろふじま
)
あたり
沢山
(
たくさん
)
に
棲息
(
せいそく
)
してゐる
膃肭臍
(
おつとせい
)
も、
205
真実
(
しんじつ
)
は
千匹
(
せんびき
)
の
中
(
なか
)
で
真
(
しん
)
のオツトセーは
只
(
ただ
)
の
一匹
(
いつぴき
)
より
居
(
ゐ
)
ないさうです。
206
九百
(
きうひやく
)
九十九
(
きうじふきう
)
匹
(
ひき
)
迄
(
まで
)
は
皆
(
みな
)
なつとせい
ださうですからな。
207
アホツホヽヽ』
208
ユーフテス
『なつとせい………なんて、
209
そんな
事
(
こと
)
は
初耳
(
はつみみ
)
だがなア、
210
オツトセーと
なつとせい
と
何処
(
どこ
)
で
区別
(
くべつ
)
がつくのだらうかな』
211
セーリス姫
『そりや
確
(
たしか
)
に
区別
(
くべつ
)
がありますワ。
212
ナツトセーといふのは、
213
人間
(
にんげん
)
でいへば
やくざ
男
(
をとこ
)
の
事
(
こと
)
ですよ。
214
婿
(
むこ
)
えらみをした
結果
(
けつくわ
)
、
215
どれを
見
(
み
)
ても
帯
(
おび
)
には
短
(
みじか
)
し
襷
(
たすき
)
に
長
(
なが
)
し、
216
意中
(
いちう
)
の
夫
(
をつと
)
が
見
(
み
)
つからない、
217
さうかうする
内
(
うち
)
に
月日
(
つきひ
)
の
駒
(
こま
)
は
矢
(
や
)
の
如
(
ごと
)
く
進
(
すす
)
み、
218
綻
(
ほころ
)
びかけた
桜
(
さくら
)
の
花
(
はな
)
は、
219
グヅグヅしてゐると
既
(
すで
)
に
梢
(
こずゑ
)
を
去
(
さ
)
らむとするやうになつて
来
(
く
)
る。
220
そこで
慌
(
あわ
)
てて
背
(
せ
)
となる
人
(
ひと
)
を
俄
(
にはか
)
にきめます。
221
其
(
その
)
時
(
とき
)
にどれを
見
(
み
)
ても、
222
甲
(
かふ
)
乙
(
おつ
)
丙
(
へい
)
丁
(
てい
)
の
区別
(
くべつ
)
がつかぬ、
223
併
(
しか
)
し
此
(
この
)
男
(
をとこ
)
は
鼻
(
はな
)
が
高
(
たか
)
いとか、
224
口元
(
くちもと
)
がしまつてるとか、
225
目
(
め
)
が
涼
(
すず
)
しいとか、
226
一
(
ひと
)
つの
気
(
き
)
に
入
(
い
)
る
点
(
てん
)
を
掴
(
つか
)
まへ
出
(
だ
)
し、
227
コレナツと
夫
(
をつと
)
にしようか………と
云
(
い
)
つて、
228
女
(
をんな
)
の
方
(
はう
)
からきめるのが、
229
所謂
(
いはゆる
)
ナツトセーですワ。
230
オツホヽヽ』
231
ユーフテス
『さうすると、
232
俺
(
おれ
)
はナツトセーの
方
(
はう
)
かなア。
233
それを
聞
(
き
)
くと
余
(
あま
)
り
有難
(
ありがた
)
くもないやうだ。
234
アーンアーン』
235
セーリス姫
『
貴郎
(
あなた
)
はオツトセーですよ。
236
毛
(
け
)
の
皮
(
かは
)
は
柔
(
やはら
)
かいし、
237
皮
(
かは
)
むいて
首巻
(
くびまき
)
にしたつて
大変
(
たいへん
)
な
高貴
(
かうき
)
なものなり、
238
皮
(
かは
)
になつても、
239
女
(
をんな
)
の
首
(
くび
)
丈
(
だけ
)
はきつと、
240
ホコホコするといふ
大事
(
だいじ
)
の
大事
(
だいじ
)
のオツトセーですワ。
241
どの
男
(
をとこ
)
を
婿
(
むこ
)
に
持
(
も
)
たうかと、
242
あたえも
永
(
なが
)
らく
調
(
しら
)
べてゐましたが、
243
あなたのやうな
色
(
いろ
)
の
白
(
しろ
)
い、
244
目
(
め
)
のパツチリとした、
245
鼻筋
(
はなすぢ
)
の
通
(
とほ
)
つた、
246
口元
(
くちもと
)
のリリしい、
247
カイゼル
髯
(
ひげ
)
の
生
(
は
)
えた、
248
背
(
せ
)
のスラリと
高
(
たか
)
い、
249
肌
(
はだ
)
の
柔
(
やはら
)
かい、
250
しかも
智謀
(
ちぼう
)
絶倫
(
ぜつりん
)
と
来
(
き
)
てゐるのだから、
251
オツトマカセに
喰
(
くは
)
へ
込
(
こ
)
んだのだから、
252
オツト
待
(
ま
)
つてましたといふ
具合
(
ぐあひ
)
に、
253
猫
(
ねこ
)
のやうに
喉
(
のど
)
をゴロゴロならして
飛付
(
とびつ
)
いたのですもの、
254
真
(
しん
)
の
誠
(
まこと
)
のオツトセーですワ。
255
オホヽヽ』
256
ユーフテス
『アハヽヽ、
257
アハヽ、
258
アイタヽヽ、
259
何
(
なん
)
だか
笑
(
わら
)
ふと
舌
(
した
)
が
痛
(
いた
)
い、
260
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
だ。
261
有難
(
ありがた
)
いなア』
262
セーリス姫
『コレ
丈
(
だけ
)
恋慕
(
こひした
)
うてゐる
女房
(
にようばう
)
ですもの、
263
あなただつて、
264
何
(
なに
)
もかも
腹蔵
(
ふくざう
)
なく
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さいますわねえ。
265
夫婦
(
ふうふ
)
の
間
(
あひだ
)
といふものは、
266
本当
(
ほんたう
)
に
親
(
した
)
しいもので、
267
生
(
う
)
んでくれた
親
(
おや
)
にも
見
(
み
)
せない
所
(
ところ
)
まで
見
(
み
)
せたり、
268
話
(
はな
)
さない
事
(
こと
)
まで
話
(
はな
)
すのですもの。
269
夫婦
(
ふうふ
)
は
家庭
(
かてい
)
の
日月
(
じつげつ
)
天地
(
てんち
)
の
花
(
はな
)
ですワ』
270
ユーフテス
『
俺
(
おれ
)
はお
前
(
まへ
)
の
事
(
こと
)
なら、
271
何
(
なん
)
でも
皆
(
みな
)
秘密
(
ひみつ
)
を
明
(
あ
)
かしてやる
覚悟
(
かくご
)
だ。
272
時
(
とき
)
に
何
(
なん
)
だよ………
五百騎
(
ごひやくき
)
を
差止
(
さしと
)
めたばかりでなく、
273
テーナ
姫
(
ひめ
)
さまが
三百
(
さんびやく
)
余
(
よ
)
騎
(
き
)
の
強者
(
つはもの
)
を
皆
(
みな
)
引率
(
いんそつ
)
して、
274
ハルナの
国
(
くに
)
まで
行
(
い
)
つて
了
(
しま
)
つたのだから、
275
カールチンの
部下
(
ぶか
)
は
最早
(
もはや
)
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
つてゐないのだ。
276
もう
斯
(
か
)
うなつちや、
277
何程
(
なにほど
)
謀叛
(
むほん
)
を
企
(
たく
)
まうたつて、
278
駄目
(
だめ
)
だからなア。
279
後
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
つてる
奴
(
やつ
)
ア、
280
目
(
め
)
ツかちや、
281
跛
(
びつこ
)
や
聾
(
つんぼ
)
、
282
間
(
ま
)
しやくに
合
(
あ
)
はぬ
奴
(
やつ
)
ばかりウヨウヨしてるのだ。
283
屈強
(
くつきやう
)
盛
(
ざか
)
りの
豪傑
(
がうけつ
)
連
(
れん
)
は、
284
皆
(
みな
)
テーナ
姫
(
ひめ
)
に
従軍
(
じゆうぐん
)
したのだから、
285
之
(
これ
)
を
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く、
286
清照
(
きよてる
)
さまに………
報告
(
はうこく
)
して
喜
(
よろこ
)
ばしたいものだ。
287
アーン』
288
セーリス姫
『ホヽヽ、
289
そんな
事
(
こと
)
ですかい。
290
それなら
夜前
(
やぜん
)
私
(
わたし
)
の
許
(
もと
)
へチヤンと
無言
(
むげん
)
霊話
(
れいわ
)
がかかりましたワ。
291
清照姫
(
きよてるひめ
)
様
(
さま
)
も
既
(
すで
)
に
既
(
すで
)
に
御存
(
ごぞん
)
じですよ。
292
そんな
遅
(
おそ
)
い
報告
(
はうこく
)
は
駄目
(
だめ
)
です。
293
モチツト
早
(
はや
)
く
報告
(
はうこく
)
して
貰
(
もら
)
はぬと、
294
女房
(
にようばう
)
のあてえが
清照姫
(
きよてるひめ
)
様
(
さま
)
へ
申上
(
まをしあ
)
げて
手柄
(
てがら
)
にする
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
かぬぢやありませぬか』
295
ユーフテス
『
何分
(
なにぶん
)
舌
(
した
)
を
怪我
(
けが
)
したものだから、
296
舌
(
した
)
が
遅
(
おく
)
れたのだよ。
297
それは
惜
(
を
)
しい
事
(
こと
)
を
した
ものだ。
298
ウツフヽヽヽ、
299
此奴
(
こいつ
)
ア
一
(
ひと
)
つガツカリ
した
』
300
セーリス姫
『オツホヽヽヽ
時
(
とき
)
に
右守
(
うもり
)
は
如何
(
どう
)
して
居
(
を
)
られますか、
301
随分
(
ずゐぶん
)
御
(
ご
)
機嫌
(
きげん
)
が
良
(
よ
)
いでせうなア』
302
ユーフテスは
最前
(
さいぜん
)
から
余
(
あま
)
り
舌
(
した
)
を
無暗
(
むやみ
)
に
使
(
つか
)
つたので、
303
チツとばかり
腫
(
は
)
れて
来
(
き
)
たと
見
(
み
)
え、
304
ユーフテス
『アヽヽ』
305
と
言
(
い
)
ひながら、
306
手
(
て
)
を
拡
(
ひろ
)
げて
不恰好
(
ぶかつかう
)
な
仕方
(
しかた
)
をして
見
(
み
)
せて
居
(
ゐ
)
る。
307
セーリス姫
『オホヽヽまるで
蟷螂
(
かまきり
)
が
踊
(
をど
)
つとる
様
(
やう
)
だワ。
308
モウ
一
(
ひと
)
つ
違
(
ちが
)
うたら
米搗
(
こめつき
)
バツタの
手踊
(
てをどり
)
みたやうですワ。
309
あたえ、
310
そんなスタイル
見
(
み
)
るの、
311
嫌
(
いや
)
になつたワ。
312
オツホヽヽヽ』
313
ユーフテス
『アーンアーンアーン、
314
ウーウーウー、
315
シシ
舌
(
した
)
が、
316
オオ
思
(
おも
)
ふよに、
317
きけなくなつた』
318
セーリス
姫
(
ひめ
)
は
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
み、
319
鎮魂
(
ちんこん
)
の
姿勢
(
しせい
)
を
取
(
と
)
り、
320
心
(
こころ
)
静
(
しづ
)
かにユーフテスの
舌
(
した
)
に
向
(
むか
)
つて、
321
セーリス姫
『
一
(
ひと
)
二
(
ふた
)
三
(
み
)
四
(
よ
)
五
(
いつ
)
六
(
むゆ
)
七
(
なな
)
八
(
や
)
九
(
ここの
)
十
(
たり
)
百
(
もも
)
千
(
ち
)
万
(
よろづ
)
』
322
と
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
三四回
(
さんしくわい
)
繰返
(
くりかへ
)
し
祈願
(
きぐわん
)
をこらした。
323
不思議
(
ふしぎ
)
やユーフテスの
舌
(
した
)
は
其
(
その
)
場
(
ば
)
で
腫
(
はれ
)
が
引
(
ひ
)
き、
324
痛
(
いた
)
みもとまり、
325
又
(
また
)
もや
水車
(
みづぐるま
)
の
如
(
ごと
)
く
運転
(
うんてん
)
し
始
(
はじ
)
めた。
326
ユーフテス
『ヤア
有難
(
ありがた
)
う、
327
不思議
(
ふしぎ
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
で
輪転機
(
りんてんき
)
の
破損
(
はそん
)
が
全部
(
ぜんぶ
)
修繕
(
しうぜん
)
したと
見
(
み
)
え、
328
運転
(
うんてん
)
が
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
になつて
来
(
き
)
ました。
329
サア
是
(
これ
)
から
三寸
(
さんずん
)
の
舌鋒
(
ぜつぽう
)
を
縦横
(
じうわう
)
無尽
(
むじん
)
にふりまはし、
330
懸河
(
けんが
)
の
弁舌
(
べんぜつ
)
滔々
(
たうたう
)
と
神算
(
しんさん
)
秘策
(
ひさく
)
を
陳述
(
ちんじゆつ
)
する
事
(
こと
)
としよう。
331
女房
(
にようばう
)
喜
(
よろこ
)
べ、
332
天
(
あま
)
の
瓊矛
(
ぬぼこ
)
は
恢復
(
くわいふく
)
したぞや、
333
アハヽヽヽ』
334
セーリス姫
『オホヽヽヽあの
元気
(
げんき
)
な
事
(
こと
)
、
335
わたしも
之
(
これ
)
で
一安心
(
ひとあんしん
)
しま
した
。
336
イヒヽヽ』
337
かく
云
(
い
)
ふ
所
(
ところ
)
へやさしい
女
(
をんな
)
の
声
(
こゑ
)
で、
338
襖
(
ふすま
)
の
外
(
そと
)
から、
339
別のセーリス姫
『モシモシ、
340
ユーフテス
様
(
さま
)
、
341
あてえはセーリスで
厶
(
ござ
)
います、
342
どうぞ
開
(
あ
)
けて
下
(
くだ
)
さいな』
343
ユーフテス
『ハテ
合点
(
がてん
)
が
行
(
ゆ
)
かぬ
様
(
やう
)
になつて
来
(
き
)
たワイ。
344
俺
(
おれ
)
が
今
(
いま
)
セーリス
姫
(
ひめ
)
と
話
(
はなし
)
をしてゐるに、
345
なアんだ。
346
又
(
また
)
チツトも
違
(
ちが
)
はぬ
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
しよつて………ユーフテスさま、
347
開
(
あ
)
けて
下
(
くだ
)
さい………と
吐
(
ぬか
)
しよる、
348
ウーン、
349
此奴
(
こいつ
)
はチツト
変
(
へん
)
だぞ』
350
と
首
(
くび
)
をかたげ、
351
眉毛
(
まゆげ
)
に
唾
(
つば
)
をぬりつけ
始
(
はじ
)
めた。
352
セーリス『オホヽヽ』
353
襖
(
ふすま
)
の
外
(
そと
)
から、
354
同
(
おな
)
じ
声色
(
こわいろ
)
で、
355
別のセーリス姫
『オホヽヽ』
356
(
大正一一・一一・一五
旧九・二七
松村真澄
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