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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第42巻(巳の巻)
序文に代へて
総説に代へて
第1篇 波瀾重畳
第1章 北光照暗
第2章 馬上歌
第3章 山嵐
第4章 下り坂
第2篇 恋海慕湖
第5章 恋の罠
第6章 野人の夢
第7章 女武者
第8章 乱舌
第9章 狐狸窟
第3篇 意変心外
第10章 墓場の怪
第11章 河底の怪
第12章 心の色々
第13章 揶揄
第14章 吃驚
第4篇 怨月恨霜
第15章 帰城
第16章 失恋会議
第17章 酒月
第18章 酊苑
第19章 野襲
第5篇 出風陣雅
第20章 入那立
第21章 応酬歌
第22章 別離の歌
第23章 竜山別
第24章 出陣歌
第25章 惜別歌
第26章 宣直歌
余白歌
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霊界物語
>
舎身活躍(第37~48巻)
>
第42巻(巳の巻)
> 第3篇 意変心外 > 第12章 心の色々
<<< 河底の怪
(B)
(N)
揶揄 >>>
第一二章
心
(
こころ
)
の
色々
(
いろいろ
)
〔一一三七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第42巻 舎身活躍 巳の巻
篇:
第3篇 意変心外
よみ(新仮名遣い):
いへんしんがい
章:
第12章 心の色々
よみ(新仮名遣い):
こころのいろいろ
通し章番号:
1137
口述日:
1922(大正11)年11月16日(旧09月28日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年7月1日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
カールチン館の奥の間では、ハルマン、サマリー姫、カールチンがひそびそ話にふけっている。ハルマン、サマリー姫はカールチンのこの頃の挙動を心配してそれとなく注意を促した。
二人はカールチンがこの頃考えを変えて、ヤスダラ姫をひいきするのでカールチンに考えを問うた。カールチンは、セーラン王の妃はあくまでサマリー姫だと明言した。
そして、ヤスダラ姫は自分の女房になるのだ、セーラン王が自分に位を譲ることを約束したのだと二人に明し、自分は将来の刹帝利だと威張り散らした。
そこへ青い顔をしてユーフテスがやってきて、二人の美人が自分を責めると意味のわからないことを口走り、カールチンに城内は妖怪変化の巣窟になってしまったとまくしたてた。
カールチンはユーフテスの報告を一笑に付し、自分の天眼力にかかれば妖怪などすぐさま退治してやると気を吐いた。
サマリー姫も、これ以上カールチンを刺激しないように静かに退場した。ハルマンとユーフテスも帰ると、カールチンはまた身なりを整え、裏門からこっそり一人で城内を指して進んで行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-12-24 14:34:16
OBC :
rm4212
愛善世界社版:
153頁
八幡書店版:
第7輯 697頁
修補版:
校定版:
157頁
普及版:
63頁
初版:
ページ備考:
001
カールチンの
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
にはハルマン、
002
サマリー
姫
(
ひめ
)
と
主人
(
しゆじん
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
鼎坐
(
かなへざ
)
となりて、
003
ヒソビソ
話
(
ばなし
)
に
夜
(
よ
)
の
明
(
あ
)
くるのも
知
(
し
)
らず、
004
耽
(
ふけ
)
つてゐる。
005
ハルマン
『
旦那
(
だんな
)
さま、
006
貴方
(
あなた
)
はお
昼前
(
ひるまへ
)
から、
007
館
(
やかた
)
をソツとお
立出
(
たちい
)
でになり、
008
お
帰
(
かへ
)
りが
夜
(
よ
)
になつてもないので、
009
若
(
も
)
しや
御
(
ご
)
城内
(
じやうない
)
で、
010
お
酒
(
さけ
)
でもおすごし
遊
(
あそ
)
ばし、
011
クダを
巻
(
ま
)
いて
皆
(
みな
)
の
者
(
もの
)
を、
012
いつものやうに
困
(
こま
)
らせて
厶
(
ござ
)
るのではあるまいかと
心配
(
しんぱい
)
でならず、
013
ソツと
城内
(
じやうない
)
を
窺
(
うかが
)
うて
見
(
み
)
た
所
(
ところ
)
が、
014
門番
(
もんばん
)
の
話
(
はなし
)
にも、
015
今日
(
けふ
)
は
右守
(
うもり
)
さまのお
姿
(
すがた
)
は
見
(
み
)
なかつたと
言
(
い
)
ひ、
016
女中
(
ぢよちう
)
共
(
ども
)
に
聞
(
き
)
いて
見
(
み
)
ても、
017
お
越
(
こ
)
しがないと
言
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
ましたので、
018
そこら
中
(
ぢう
)
を
捜
(
さが
)
しまはつて
居
(
を
)
りました
所
(
ところ
)
、
019
入那川
(
いるながは
)
の
水面
(
すゐめん
)
に
怪
(
あや
)
しい
音
(
おと
)
がするので、
020
ハテ
不思議
(
ふしぎ
)
と
立止
(
たちど
)
まり
様子
(
やうす
)
を
考
(
かんが
)
へてゐると、
021
大
(
おほ
)
きな
狐
(
きつね
)
がノソノソと
橋
(
はし
)
を
渡
(
わた
)
つて
北
(
きた
)
の
方
(
はう
)
へ
行
(
ゆ
)
く。
022
此奴
(
こいつ
)
ア
変
(
へん
)
だと
水面
(
すゐめん
)
を
眺
(
なが
)
めてると、
023
パツと
浮上
(
うきあが
)
つた
黒
(
くろ
)
い
影
(
かげ
)
、
024
命
(
いのち
)
カラガラ
飛込
(
とびこ
)
んで
救
(
すく
)
ひ
上
(
あ
)
げ、
025
よくよく
見
(
み
)
れば
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
026
取止
(
とりと
)
めもないことを
仰有
(
おつしや
)
つて、
027
本当
(
ほんたう
)
に
此
(
この
)
ハルマンも
如何
(
どう
)
なる
事
(
こと
)
かと
気
(
き
)
を
揉
(
も
)
みました。
028
奥様
(
おくさま
)
の
御
(
ご
)
不在中
(
ふざいちう
)
に、
029
若
(
も
)
しもの
事
(
こと
)
があつたら、
030
此
(
この
)
ハルマンは
申訳
(
まをしわけ
)
がありませぬからなア、
031
マアマア
結構
(
けつこう
)
で
厶
(
ござ
)
いました』
032
サマリー姫
『お
父
(
とう
)
さま、
033
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
はお
母
(
か
)
アさまの
不在中
(
ふざいちゆう
)
ですから、
034
何卒
(
なにとぞ
)
どつこへも
行
(
ゆ
)
かずに
内
(
うち
)
に
居
(
を
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
035
心配
(
しんぱい
)
でなりませぬ。
036
もし
御
(
ご
)
登城
(
とじやう
)
遊
(
あそ
)
ばすなら、
037
何時
(
いつ
)
ものやうに
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
の
家来
(
けらい
)
を
伴
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
038
苟
(
いやし
)
くも
右守司
(
うもりのかみ
)
の
職掌
(
しよくしやう
)
でありながら、
039
一人
(
ひとり
)
歩
(
ある
)
きをなさるとは、
040
余
(
あま
)
り
軽々
(
かるがる
)
しいではありませぬか』
041
カールチン
『ナアニ、
042
一人
(
ひとり
)
歩
(
ある
)
くのにも、
043
之
(
これ
)
には
言
(
い
)
ふに
云
(
い
)
はれぬ
秘密
(
ひみつ
)
があるのだ。
044
俺
(
おれ
)
の
神謀
(
しんぼう
)
鬼策
(
きさく
)
は
女童
(
をんなわらべ
)
の
知
(
し
)
る
所
(
ところ
)
でない。
045
マア
俺
(
おれ
)
のする
様
(
やう
)
に
任
(
まか
)
しておいたが
宜
(
よ
)
からうぞ』
046
ハルマン
『
日中
(
につちう
)
ならばソリヤお
一人
(
ひとり
)
でも
宜
(
よろ
)
しからうが、
047
今夜
(
こんや
)
の
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
があつては
大変
(
たいへん
)
ですから、
048
何卒
(
どうぞ
)
日
(
ひ
)
の
暮
(
く
)
れない
内
(
うち
)
に
之
(
これ
)
からお
帰
(
かへ
)
り
遊
(
あそ
)
ばす
様
(
やう
)
に
願
(
ねが
)
ひます。
049
若
(
わか
)
い
男
(
をとこ
)
が
恋女
(
こひをんな
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
ふ
様
(
やう
)
に、
050
夜分
(
やぶん
)
にコソコソと
一人
(
ひとり
)
歩
(
ある
)
きするのは、
051
何卒
(
どうぞ
)
心得
(
こころえ
)
て
下
(
くだ
)
さいませ。
052
姫
(
ひめ
)
さまも
大変
(
たいへん
)
に
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
遊
(
あそ
)
ばしますから……』
053
カールチン
『イヤ
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は、
054
お
前
(
まへ
)
の
知
(
し
)
つてる
通
(
とほ
)
り、
055
女房
(
にようばう
)
が
出陣
(
しゆつぢん
)
をしたのだから、
056
先
(
ま
)
づ
第一
(
だいいち
)
に
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
に
御
(
ご
)
祈願
(
きぐわん
)
を
凝
(
こ
)
らし、
057
御
(
ご
)
先祖
(
せんぞ
)
の
墓
(
はか
)
へも
参
(
まゐ
)
り、
058
女房
(
にようばう
)
の
武勇
(
ぶゆう
)
を
発揮
(
はつき
)
するやう
祈
(
いの
)
つて
居
(
を
)
つたのだ。
059
そした
所
(
ところ
)
が、
060
御
(
ご
)
先祖
(
せんぞ
)
様
(
さま
)
の
石塔
(
せきたふ
)
の
後
(
うしろ
)
から、
061
テーナ
姫
(
ひめ
)
の
顔
(
かほ
)
其
(
その
)
儘
(
まま
)
の
怪物
(
くわいぶつ
)
が
現
(
あら
)
はれ、
062
恨
(
うら
)
めしの
冷飯
(
ひやめし
)
の……と
吐
(
ほざ
)
きやがつて、
063
怪体
(
けつたい
)
な
手付
(
てつき
)
を
致
(
いた
)
し、
064
終焉
(
をはり
)
の
果
(
はて
)
にや、
065
毬
(
まり
)
のやうな
目
(
め
)
を
剥
(
む
)
きよつた。
066
そこへ
又
(
また
)
一人
(
ひとり
)
の
化物
(
ばけもの
)
がやつて
来
(
き
)
て、
067
傘
(
からかさ
)
のやうな
目玉
(
めだま
)
を
剥
(
む
)
きよつたものだから、
068
流石
(
さすが
)
の
俺
(
おれ
)
も
一寸
(
ちよつと
)
おつたまげて、
069
わが
家
(
や
)
を
指
(
さ
)
して
逃帰
(
にげかへ
)
る
途中
(
とちう
)
、
070
誤
(
あやま
)
つて
入那川
(
いるながは
)
へ
陥没
(
かんぼつ
)
したのだ。
071
そこを
貴様
(
きさま
)
が
折
(
をり
)
よく
通
(
とほ
)
つて
助
(
たす
)
けてくれたのだ、
072
マア
有難
(
ありがた
)
い、
073
御
(
お
)
礼
(
れい
)
を
申
(
まを
)
さねばなるまい。
074
併
(
しか
)
しながら、
075
エー……ン、
076
彼奴
(
あいつ
)
の
命
(
いのち
)
は
如何
(
どう
)
なつたか
知
(
し
)
らぬてな』
077
ハルマン
『
彼奴
(
あいつ
)
の
命
(
いのち
)
も
此奴
(
こいつ
)
の
命
(
いのち
)
もあつたものですか。
078
貴方
(
あなた
)
は
大変
(
たいへん
)
に、
079
ヤスダラ ヤスダラと
仰有
(
おつしや
)
いましたが、
080
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
に
対
(
たい
)
し、
081
何
(
なに
)
かお
考
(
かんが
)
へがあるのですか』
082
カールチン
『
何
(
なに
)
、
083
別
(
べつ
)
に
之
(
これ
)
といふ
考
(
かんが
)
へもあるのぢやない、
084
彼奴
(
あいつ
)
の
生死
(
せいし
)
に
就
(
つ
)
いて、
085
少
(
すこ
)
しばかり
気
(
き
)
にかかつてならないのだ』
086
サマリー姫
『
私
(
わたし
)
もヤスダラ
姫
(
ひめ
)
さまの
事
(
こと
)
が
気
(
き
)
に
係
(
かか
)
つてならないのですよ。
087
噂
(
うはさ
)
に
聞
(
き
)
けば、
088
テルマン
国
(
ごく
)
からお
帰
(
かへ
)
りになつたといふ
事
(
こと
)
、
089
若
(
も
)
しや
王
(
わう
)
様
(
さま
)
と
御
(
ご
)
夫婦
(
ふうふ
)
にでもなられようものなら、
090
私
(
わたし
)
は
如何
(
どう
)
しようかと、
091
そればかりが
心配
(
しんぱい
)
でなりませぬワ』
092
カールチン
『コリヤ
娘
(
むすめ
)
、
093
そんな
心配
(
しんぱい
)
は
少
(
すこ
)
しも
要
(
い
)
らない。
094
お
前
(
まへ
)
はどこまでもセーラン
王
(
わう
)
の
妃
(
きさき
)
だ。
095
俺
(
おれ
)
がキツと
保証
(
ほしよう
)
して
添
(
そ
)
はしてやるから
安心
(
あんしん
)
せい。
096
併
(
しか
)
しながら、
097
若
(
も
)
しも
俺
(
おれ
)
の
女房
(
にようばう
)
が、
098
今度
(
こんど
)
の
戦
(
たたか
)
ひで
命
(
いのち
)
を
奪
(
と
)
られるやうな
事
(
こと
)
があつたら、
099
お
前
(
まへ
)
何
(
なん
)
と
思
(
おも
)
ふか』
100
サマリー姫
『それは
申
(
まを
)
すまでもなく、
101
悲
(
かな
)
しう
厶
(
ござ
)
います。
102
お
父
(
とう
)
さまも
矢張
(
やつぱ
)
り
悲
(
かな
)
しいでせう』
103
カールチン
『そりや
俺
(
おれ
)
だつて、
104
悲
(
かな
)
しい……のは
当
(
あた
)
り
前
(
まへ
)
だ。
105
併
(
しか
)
しながらウーン……』
106
サマリー姫
『お
父
(
とう
)
さま、
107
其
(
その
)
後
(
あと
)
を
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
108
如何
(
どう
)
なさると
仰有
(
おつしや
)
るのですか』
109
カールチン
『マア
刹那心
(
せつなしん
)
を
楽
(
たの
)
しむのだな。
110
其
(
その
)
時
(
とき
)
や
其
(
その
)
時
(
とき
)
の
又
(
また
)
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
くだらうから』
111
ハルマン
『モシ
姫
(
ひめ
)
さま、
112
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな、
113
旦那
(
だんな
)
さまの
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
には、
114
行先
(
ゆくさき
)
の
事
(
こと
)
までチヤンと
成案
(
せいあん
)
があるのですから……それはそれは
抜目
(
ぬけめ
)
のない
旦那
(
だんな
)
さまですから、
115
流石
(
さすが
)
は
貴女
(
あなた
)
のお
父
(
とう
)
さまだけあつて、
116
よく
注意
(
ちうい
)
の
行届
(
ゆきとど
)
いたものです。
117
ヤスダラ
山
(
やま
)
の
春風
(
はるかぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いて、
118
此
(
この
)
お
館
(
やかた
)
は
軈
(
やが
)
て
百花
(
ひやくくわ
)
爛漫
(
らんまん
)
、
119
天国
(
てんごく
)
の
花園
(
はなぞの
)
と
変
(
かは
)
るかも
知
(
し
)
れませぬ』
120
サマリー姫
『お
父
(
とう
)
さま、
121
貴方
(
あなた
)
は
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
、
122
大変
(
たいへん
)
にヤスダラ
姫
(
ひめ
)
さまを
御
(
ご
)
贔屓
(
ひいき
)
遊
(
あそ
)
ばすさうですが、
123
ヨモヤ、
124
セーラン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
妃
(
きさき
)
になさる
御
(
お
)
考
(
かんが
)
へぢやありますまいな。
125
さうなりや、
126
私
(
わたし
)
はどうしたら
良
(
い
)
いのですか』
127
カールチン
『すべて
人間
(
にんげん
)
は、
128
何事
(
なにごと
)
も
十分
(
じふぶん
)
といふ
事
(
こと
)
はいかぬものだ。
129
恋
(
こひ
)
を
得
(
え
)
むと
欲
(
ほつ
)
すれば
位
(
くらゐ
)
を
捨
(
す
)
てなくてはならず、
130
位
(
くらゐ
)
を
得
(
え
)
むと
欲
(
ほつ
)
すれば
恋
(
こひ
)
そのものを
放擲
(
はうてき
)
せなくてはならぬ。
131
両方
(
りやうはう
)
良
(
よ
)
いのは
頬被
(
ほほかぶ
)
りと○○だけだ。
132
それさへお
前
(
まへ
)
に
合点
(
がてん
)
が
行
(
ゆ
)
けば、
133
お
前
(
まへ
)
の
恋
(
こひ
)
は
永遠
(
ゑいゑん
)
に
継続
(
けいぞく
)
させてやるが、
134
どうだ、
135
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
からお
前
(
まへ
)
に
相談
(
さうだん
)
しようと
思
(
おも
)
うてゐたが、
136
丁度
(
ちやうど
)
今日
(
けふ
)
は
好
(
よ
)
い
機会
(
きくわい
)
だから
聞
(
き
)
いて
見
(
み
)
るのだ』
137
サマリー姫
『
妙
(
めう
)
なことを
仰有
(
おつしや
)
います。
138
私
(
わたし
)
はイルナの
国
(
くに
)
では
最高級
(
さいかうきふ
)
のセーラン
王
(
わう
)
の
妃
(
きさき
)
、
139
又
(
また
)
国内
(
こくない
)
第一
(
だいいち
)
の
立派
(
りつぱ
)
な
夫
(
をつと
)
に
恋
(
こひ
)
してゐるのです。
140
それをどちらか
捨
(
す
)
てねばならぬとは、
141
ヤツパリさうすると、
142
貴方
(
あなた
)
は
王
(
わう
)
様
(
さま
)
を
退隠
(
たいいん
)
させ、
143
自分
(
じぶん
)
が
年来
(
ねんらい
)
の
野心
(
やしん
)
を
遂
(
と
)
げるといふ、
144
面白
(
おもしろ
)
からぬ
御
(
お
)
考
(
かんが
)
へでせう』
145
カールチン
『イヤ、
146
俺
(
おれ
)
の
方
(
はう
)
から
無理
(
むり
)
に
迫
(
せま
)
るのぢやない。
147
今
(
いま
)
までは
武力
(
ぶりよく
)
に
訴
(
うつた
)
へてでも
目的
(
もくてき
)
を
達
(
たつ
)
しようと
思
(
おも
)
つてゐたのだが、
148
お
前
(
まへ
)
の
知
(
し
)
つてゐる
通
(
とほ
)
り、
149
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
の
応援軍
(
おうゑんぐん
)
迄
(
まで
)
お
断
(
ことわ
)
り
申
(
まを
)
し、
150
部下
(
ぶか
)
の
武士
(
ぶし
)
迄
(
まで
)
残
(
のこ
)
らず
遠征
(
ゑんせい
)
の
途
(
と
)
に
上
(
のぼ
)
らせた
位
(
くらゐ
)
だから、
151
何事
(
なにごと
)
も
円満
(
ゑんまん
)
解決
(
かいけつ
)
のつく
見込
(
みこみ
)
が
十分
(
じふぶん
)
立
(
た
)
つてゐるのだ。
152
王
(
わう
)
様
(
さま
)
の
口
(
くち
)
から
仰有
(
おつしや
)
つたのだから、
153
お
前
(
まへ
)
が
何程
(
なにほど
)
頑張
(
ぐわんば
)
つた
所
(
ところ
)
で、
154
王
(
わう
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
決心
(
けつしん
)
は
動
(
うご
)
かす
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
まい。
155
さうだから、
156
位
(
くらゐ
)
をすてて
恋
(
こひ
)
を
選
(
えら
)
めといつたのだ。
157
お
前
(
まへ
)
の
夫
(
をつと
)
が
刹帝利
(
せつていり
)
になるのも、
158
親
(
おや
)
がなるのも、
159
お
前
(
まへ
)
としては
別
(
べつ
)
に
差支
(
さしつかへ
)
がないぢやないか。
160
チツとは
親
(
おや
)
の
養育
(
やういく
)
の
恩
(
おん
)
も
考
(
かんが
)
へて
呉
(
く
)
れたらどうだ』
161
サマリー姫
『オホヽヽヽ、
162
何
(
なん
)
とマア
虫
(
むし
)
のよいお
考
(
かんが
)
へですこと。
163
あの
王
(
わう
)
様
(
さま
)
に
限
(
かぎ
)
つて、
164
そんなこと
仰有
(
おつしや
)
る
筈
(
はず
)
がありませぬワ。
165
そりや
貴方
(
あなた
)
の
独合点
(
ひとりがてん
)
でせう。
166
さうでなくば、
167
城内
(
じやうない
)
の
悪者
(
わるもの
)
共
(
ども
)
にチヨロまかされ、
168
油断
(
ゆだん
)
をさされて
厶
(
ござ
)
るのでせう。
169
あゝ
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
をなさいましたなア。
170
あゝ
併
(
しか
)
しながら、
171
これで
安心
(
あんしん
)
しました。
172
貴方
(
あなた
)
に
軍隊
(
ぐんたい
)
を
抱
(
かか
)
へさしておくと、
173
勢
(
いきほひ
)
に
任
(
まか
)
せて
脱線
(
だつせん
)
をなさるから
気
(
き
)
が
気
(
き
)
でありませなんだ。
174
これで
王
(
わう
)
様
(
さま
)
、
175
一安心
(
ひとあんしん
)
なさりませう。
176
キツと
貴方
(
あなた
)
は
翼
(
つばさ
)
剥
(
は
)
がれた
鳥
(
とり
)
のやうなものだから、
177
叛逆人
(
はんぎやくにん
)
として
入那
(
いるな
)
の
牢獄
(
らうごく
)
にブチ
込
(
こ
)
まれるにきまつてゐます。
178
それは
私
(
わたし
)
が
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
でなりませぬ。
179
併
(
しか
)
しながら
海山
(
うみやま
)
の
養育
(
やういく
)
の
恩
(
おん
)
に
酬
(
むく
)
ゆる
為
(
ため
)
、
180
命
(
いのち
)
に
代
(
か
)
へてでも
貴方
(
あなた
)
を
助
(
たす
)
ける
様
(
やう
)
に
王
(
わう
)
様
(
さま
)
へ
願
(
ねが
)
ひますから、
181
どうぞ
之
(
これ
)
からは、
182
悪
(
わる
)
い
考
(
かんが
)
へを
出
(
だ
)
さないやうにして
下
(
くだ
)
さい。
183
そしてヤスダラ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
に、
184
どうぞ
接近
(
せつきん
)
しないやうに
心得
(
こころえ
)
て
下
(
くだ
)
さい。
185
頼
(
たの
)
みますから………』
186
カールチン
『
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は、
187
何
(
なに
)
もかもブチあけて
言
(
い
)
ふが、
188
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
は
最早
(
もはや
)
俺
(
おれ
)
の
女房
(
にようばう
)
だ。
189
いろいろと
悪魔
(
あくま
)
が
邪魔
(
じやま
)
をしやがつて、
190
恋
(
こひ
)
の
妨害
(
ばうがい
)
を
致
(
いた
)
しよる、
191
お
前
(
まへ
)
がゴテゴテいふのも、
192
決
(
けつ
)
してお
前
(
まへ
)
の
本心
(
ほんしん
)
からではあるまい。
193
副守
(
ふくしゆ
)
の
奴
(
やつ
)
、
194
お
前
(
まへ
)
の
口
(
くち
)
を
借
(
か
)
つて、
195
俺
(
おれ
)
の
金剛心
(
こんがうしん
)
を
鈍
(
にぶ
)
らさうとかかつて
居
(
ゐ
)
るだらう。
196
モウ
斯
(
か
)
うなつては
俺
(
おれ
)
も
命
(
いのち
)
がけだ。
197
誰
(
たれ
)
が
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
198
梃子
(
てこ
)
でも
棒
(
ぼう
)
でも
動
(
うご
)
くやうなチヨロい
決心
(
けつしん
)
ぢやないから、
199
モウ
下
(
くだ
)
らぬ
意見
(
いけん
)
は
止
(
や
)
めてくれ。
200
ハルマン、
201
貴様
(
きさま
)
も
俺
(
おれ
)
が
出世
(
しゆつせ
)
をすれば
一緒
(
いつしよ
)
について
昇
(
のぼ
)
るのだから、
202
邪魔
(
じやま
)
を
致
(
いた
)
しては
後日
(
ごじつ
)
の
為
(
ため
)
にならないぞ、
203
よいか。
204
賢明
(
けんめい
)
な
主人
(
しゆじん
)
の
本心
(
ほんしん
)
がチツとは
分
(
わか
)
つたか』
205
ハルマン
『ハイ、
206
分
(
わか
)
つたでもなし、
207
分
(
わか
)
らぬでもありませぬ。
208
併
(
しか
)
しながら、
209
国家
(
こくか
)
の
為
(
ため
)
に
自重
(
じちよう
)
せなくてはならない
大切
(
たいせつ
)
な
御
(
お
)
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
、
210
今後
(
こんご
)
は
私
(
わたし
)
がどこへお
出
(
い
)
でになるにも、
211
お
供
(
とも
)
を
致
(
いた
)
しますから、
212
どうぞお
一人
(
ひとり
)
で
館
(
やかた
)
を
出
(
で
)
ないやうに
願
(
ねが
)
ひます』
213
カールチン
『エヽ
小
(
こ
)
ざかしし、
214
ツベコベと
主人
(
しゆじん
)
の
行動
(
かうどう
)
に
就
(
つい
)
て
干渉
(
かんせう
)
するのか。
215
今日
(
こんにち
)
限
(
かぎ
)
りグヅグヅぬかすと、
216
暇
(
いとま
)
を
遣
(
つか
)
はすから、
217
トツトと
出
(
で
)
て
行
(
ゆ
)
け。
218
サマリー
姫
(
ひめ
)
、
219
其方
(
そなた
)
も、
220
俺
(
おれ
)
のする
事
(
こと
)
に
喙
(
くちばし
)
を
入
(
い
)
れるのならば、
221
最早
(
もはや
)
了簡
(
れうけん
)
は
致
(
いた
)
さぬぞ。
222
何
(
なん
)
だ
偉
(
えら
)
さうに、
223
夫
(
をつと
)
に
嫌
(
きら
)
はれて、
224
のめのめと
親
(
おや
)
の
内
(
うち
)
へ
逃帰
(
にげかへ
)
り、
225
世話
(
せわ
)
になつてゐながら、
226
何時
(
いつ
)
までも
親
(
おや
)
に
対
(
たい
)
し、
227
主人
(
しゆじん
)
気取
(
きど
)
りで
居
(
ゐ
)
るとは
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
だ。
228
いゝ
加減
(
かげん
)
に
慢心
(
まんしん
)
しておくがよからうぞ。
229
最早
(
もはや
)
俺
(
おれ
)
は
入那
(
いるな
)
の
国
(
くに
)
の
刹帝利
(
せつていり
)
だ。
230
国中
(
くにぢう
)
に
於
(
おい
)
て
俺
(
おれ
)
に
一口
(
ひとくち
)
でも
逆
(
さか
)
らふ
者
(
もの
)
があつたら、
231
忽
(
たちま
)
ち
追放
(
つゐはう
)
だから、
232
さう
思
(
おも
)
へ。
233
エーン』
234
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
慌
(
あわただ
)
しくやつて
来
(
き
)
たのは
例
(
れい
)
のユーフテスであつた。
235
三
(
さん
)
人
(
にん
)
はユーフテスの
落着
(
おちつ
)
かぬ
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て、
236
稍
(
やや
)
怪
(
あや
)
しみながら、
237
ハルマンは
膝
(
ひざ
)
を
立
(
た
)
て
直
(
なほ
)
し、
238
ハルマン
『ヤア
其方
(
そなた
)
はユーフテス
殿
(
どの
)
、
239
いつもに
変
(
かは
)
る
今日
(
けふ
)
の
御
(
ご
)
様子
(
やうす
)
、
240
何
(
なに
)
か
城内
(
じやうない
)
に
変
(
かは
)
つたことが
起
(
おこ
)
つたのぢやありませぬか』
241
と
言葉
(
ことば
)
せはしく
問
(
と
)
ひかける。
242
ユーフテスは
真青
(
まつさを
)
な
顔
(
かほ
)
をしながら、
243
ユーフテス
『
城内
(
じやうない
)
には
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
が
突発
(
とつぱつ
)
しましたぞ。
244
グヅグヅしてゐると、
245
何時
(
いつ
)
目玉
(
めだま
)
が
飛出
(
とびで
)
るか、
246
尾
(
を
)
が
下
(
さが
)
るか
知
(
し
)
れませぬ、
247
気
(
き
)
をつけなさいませ。
248
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
も
御
(
ご
)
注意
(
ちうい
)
をなさらぬと、
249
馬鹿
(
ばか
)
を
見
(
み
)
られちやお
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
だと
思
(
おも
)
つて
御
(
ご
)
注進
(
ちゆうしん
)
に
参
(
まゐ
)
りました。
250
私
(
わたし
)
は
大変
(
たいへん
)
にやられて
来
(
き
)
ました。
251
前車
(
ぜんしや
)
の
覆
(
くつが
)
へるは
後車
(
こうしや
)
の
戒
(
いまし
)
め、
252
私
(
わたし
)
のやうな
失敗
(
しつぱい
)
を
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
にさしちや
申訳
(
まをしわけ
)
がないと
思
(
おも
)
ひ、
253
忠義
(
ちうぎ
)
の
心
(
こころ
)
抑
(
おさ
)
へ
難
(
がた
)
く
取
(
と
)
る
物
(
もの
)
も
取敢
(
とりあへ
)
ず、
254
痛
(
いた
)
い
足
(
あし
)
を
引摺
(
ひきず
)
つて
参
(
まゐ
)
つたので
厶
(
ござ
)
います』
255
ハルマン
『テンと
貴方
(
あなた
)
のお
言葉
(
ことば
)
は
要領
(
えうりやう
)
を
得
(
え
)
ぬぢやありませぬか。
256
その
頬
(
ほほ
)
べたは
如何
(
どう
)
なさいました。
257
紫色
(
むらさきいろ
)
に
腫
(
は
)
れ
上
(
あが
)
つてるぢやありませぬか』
258
ユーフテス
『
天下
(
てんか
)
無双
(
むさう
)
の
美人
(
びじん
)
が
両
(
りやう
)
ホウから
私
(
わたし
)
の
両
(
りやう
)
ホホを、
259
可愛
(
かあい
)
さ
余
(
あま
)
つて
憎
(
にく
)
らしいと
云
(
い
)
つて、
260
抓
(
つめ
)
りよつたのです。
261
ズイ
分
(
ぶん
)
痛
(
いた
)
い
同情
(
どうじやう
)
に
預
(
あづ
)
かつて
来
(
き
)
ました。
262
モシ
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
263
何卒
(
どうぞ
)
ここ
四五
(
しご
)
日
(
にち
)
は
登城
(
とじやう
)
なさらぬやうに
心得
(
こころえ
)
て
下
(
くだ
)
さい。
264
又
(
また
)
頬
(
ほほ
)
ベタを
抓
(
つめ
)
られちや
堪
(
たま
)
りませぬからなア』
265
カールチン
『
美人
(
びじん
)
に
頬
(
ほほ
)
を
抓
(
つめ
)
られたのを、
266
お
自慢
(
じまん
)
で
俺
(
おれ
)
に
見
(
み
)
せに
来
(
き
)
たのだろ。
267
随分
(
ずゐぶん
)
気分
(
きぶん
)
がよかつたらうのう』
268
ユーフテス
『ハイ、
269
宜
(
よ
)
かつたり、
270
悪
(
わる
)
かつたり、
271
嬉
(
うれ
)
しかつたり、
272
怖
(
こは
)
かつたり、
273
つまり
喜怒
(
きど
)
哀楽
(
あいらく
)
愛憎欲
(
あいぞうよく
)
の
七情
(
しちじやう
)
が
遺憾
(
ゐかん
)
なく
発露
(
はつろ
)
致
(
いた
)
しました。
274
立派
(
りつぱ
)
なセーリス
姫
(
ひめ
)
だと
思
(
おも
)
へば、
275
其奴
(
そいつ
)
が
大
(
おほ
)
きな
白狐
(
びやくこ
)
になつてノソノソと
歩
(
ある
)
き
出
(
だ
)
す。
276
一人
(
ひとり
)
は
本当
(
ほんたう
)
のセーリス
姫
(
ひめ
)
だと
思
(
おも
)
へば、
277
其奴
(
そいつ
)
が
又
(
また
)
目
(
め
)
がつり
上
(
あが
)
り
口
(
くち
)
が
尖
(
とが
)
り、
278
忽
(
たちま
)
ち
狐
(
きつね
)
の
御
(
ご
)
面相
(
めんそう
)
になつて
了
(
しま
)
ふ。
279
イヤもう
入那
(
いるな
)
の
城内
(
じやうない
)
は、
280
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
はサーパリ
妖怪
(
えうくわい
)
変化窟
(
へんげくつ
)
となつて
了
(
しま
)
ひました。
281
何
(
なん
)
とかして
本当
(
ほんたう
)
のセーリス
姫
(
ひめ
)
を
発見
(
はつけん
)
しなくてはなりませぬ。
282
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
も
今
(
いま
)
お
出
(
い
)
でになつたら、
283
キツと
私
(
わたし
)
の
二
(
に
)
の
舞
(
まひ
)
をやつて
馬鹿
(
ばか
)
を
見
(
み
)
せられるに
違
(
ちが
)
ひありませぬ。
284
さうだから
四五
(
しご
)
日
(
にち
)
は
御
(
お
)
見合
(
みあは
)
せを
願
(
ねが
)
ひたいと
言
(
い
)
つてるのですよ』
285
カールチン
『アハヽヽヽ
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い、
286
狐
(
きつね
)
でも
狸
(
たぬき
)
でも
何
(
なん
)
でも
構
(
かま
)
はぬ。
287
そこを
看破
(
かんぱ
)
するのが
天眼通
(
てんがんつう
)
力
(
りき
)
だ。
288
貴様
(
きさま
)
は
恋
(
こひ
)
の
為
(
ため
)
に
眼
(
め
)
がくらんでゐるから、
289
そんな
目
(
め
)
に
遇
(
あ
)
ふのだ。
290
そこは
流石
(
さすが
)
のカールチンさまだ。
291
城内
(
じやうない
)
の
妖怪
(
えうくわい
)
を
残
(
のこ
)
らず
看破
(
かんぱ
)
して、
292
至治
(
しち
)
泰平
(
たいへい
)
の
天国
(
てんごく
)
を
築
(
きづ
)
き
上
(
あ
)
げるのが
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
役
(
やく
)
だから、
293
先
(
ま
)
づ
黙
(
だま
)
つて
俺
(
おれ
)
の
御
(
お
)
手際
(
てぎは
)
を
見
(
み
)
てゐるがよからう。
294
ハルマン、
295
貴様
(
きさま
)
も
今
(
いま
)
が
思案
(
しあん
)
のし
時
(
どき
)
だ。
296
ここで
改心
(
かいしん
)
致
(
いた
)
し、
297
主人
(
しゆじん
)
の
自由
(
じいう
)
行動
(
かうどう
)
を
妨
(
さまた
)
げないといふ
誓
(
ちか
)
ひを
立
(
た
)
てるなら、
298
従前
(
じゆうぜん
)
の
通
(
とほ
)
り、
299
家来
(
けらい
)
に
使
(
つか
)
つてやらう。
300
オイ、
301
娘
(
むすめ
)
、
302
貴様
(
きさま
)
もその
通
(
とほ
)
りだ。
303
今日
(
こんにち
)
の
場合
(
ばあひ
)
、
304
神力
(
しんりき
)
無双
(
むさう
)
、
305
旭日
(
きよくじつ
)
昇天
(
しようてん
)
の
御
(
ご
)
威勢
(
ゐせい
)
高
(
たか
)
き
俺
(
おれ
)
に
向
(
むか
)
つて、
306
ツベコベ
横槍
(
よこやり
)
を
入
(
い
)
れると、
307
親子
(
おやこ
)
の
縁
(
えん
)
も
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
りだ。
308
どうだ、
309
分
(
わか
)
つたか、
310
エーン』
311
ハルマンはヤツと
胸
(
むね
)
を
撫
(
な
)
で
下
(
おろ
)
し、
312
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
されちや
大変
(
たいへん
)
と、
313
ワザとに
嬉
(
うれ
)
しさうな
顔
(
かほ
)
をして、
314
ハルマン
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
いました。
315
今後
(
こんご
)
は
決
(
けつ
)
して
何
(
なに
)
も
申
(
まを
)
しませぬ。
316
絶対
(
ぜつたい
)
服従
(
ふくじゆう
)
を
誓
(
ちか
)
ひますから、
317
どうぞ
末永
(
すえなが
)
く
可愛
(
かあい
)
がつて
使
(
つか
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
318
カールチン
『ウン、
319
ヨシヨシ、
320
それさへ
慎
(
つつし
)
まば、
321
俺
(
おれ
)
だつて
貴様
(
きさま
)
に
暇
(
ひま
)
をやりたいことはないのだ』
322
ハルマン『
時
(
とき
)
にユーフテスさま、
323
実際
(
じつさい
)
そんな
不思議
(
ふしぎ
)
が
城内
(
じやうない
)
に
突発
(
とつぱつ
)
してるのか、
324
チツと
合点
(
がてん
)
が
行
(
ゆ
)
かぬぢやないか』
325
ユーフテス
『ウン、
326
本当
(
ほんたう
)
に
不可思議
(
ふかしぎ
)
千万
(
せんばん
)
だ』
327
サマリー『それなら、
328
カールチン
殿
(
どの
)
、
329
暫
(
しばら
)
く
妾
(
わたし
)
は
沈黙
(
ちんもく
)
して、
330
時
(
とき
)
の
移
(
うつ
)
るを
待
(
ま
)
つであらう、
331
さらば』
332
と
言
(
い
)
ひ
棄
(
す
)
て、
333
裾
(
すそ
)
をゾロリゾロリと
引摺
(
ひきず
)
りながら、
334
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
335
ハルマンも、
336
ユーフテスも
続
(
つづ
)
いて、
337
自分
(
じぶん
)
の
家路
(
いへぢ
)
へ
指
(
さ
)
して
一先
(
ひとま
)
づ
立帰
(
たちかへ
)
る
事
(
こと
)
となつた。
338
カールチンは、
339
カールチン
『ヤレヤレ
邪魔物
(
じやまもの
)
が
払
(
はら
)
はれた』
340
と
打喜
(
うちよろこ
)
び、
341
化粧室
(
けしやうしつ
)
に
入
(
い
)
つて、
342
いろいろと
顔
(
かほ
)
の
整理
(
せいり
)
を
終
(
をは
)
り、
343
美
(
うる
)
はしき
衣服
(
いふく
)
を
身
(
み
)
に
纒
(
まと
)
ひ、
344
裏門
(
うらもん
)
よりニコニコとして、
345
城内
(
じやうない
)
指
(
さ
)
して
又
(
また
)
もや
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
くのであつた。
346
(
大正一一・一一・一六
旧九・二八
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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(B)
(N)
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