霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一八章 酊苑(ていゑん)〔一一四三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第42巻 舎身活躍 巳の巻 篇:第4篇 怨月恨霜 よみ(新仮名遣い):えんげつこんそう
章:第18章 酊苑 よみ(新仮名遣い):ていえん 通し章番号:1143
口述日:1922(大正11)年11月24日(旧10月6日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年7月1日
概要: 舞台:イルナ城(入那城、セーラン王の館) あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
カールチンの一党は王の居間に侵入し、大音声で怒鳴りつけた。黄金姫、清照姫、セール姫その他の近侍は武器を取って戦ったが、セーリス王たちは一人残らず打ち取られてしまった。
カールチンらは王たちの死骸をイルナ川に投げ込み、奥殿で勝利の酒宴を開いた。一同が先勝を誇りあっていると、サマリー姫、サモア姫、ハルマンがやってきた。
その場に出現したセールス王の幽霊によってカールチンたちが王を殺害したことを知ったサマリー姫とサモア姫は、カールチンに打ってかかった。
カールチンは娘のサマリー姫を切り殺した。しかし戦いの中、切られたはずのサマリー姫は元通りとなり、カールチンの部下たちを倒してしまった。
そこへ北光神が歌う宣伝歌が聞こえてきた。気が付けば、カールチン、ユーフテス、マンモスは城内の庭先の土の上に坐して幻覚を見せられていただけであった。門番のミル、ボルチーは酔いが覚めると、右守たちが庭土の上に泥酔していることを見つけて驚き、奥殿にかけいった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-12-27 15:29:08 文字数:3665 OBC :rm4218
愛善世界社版:212頁 八幡書店版:第7輯 718頁 修補版: 校定版:217頁 普及版:91頁 初版: ページ備考:
001 表門(おもてもん)の潜(くぐ)りの開(あ)いて居(ゐ)たのを幸(さいは)ひ、002カールチン、003ユーフテス、004マンモスの失恋党(しつれんたう)は十数(じふすう)人(にん)の部下(ぶか)と共(とも)に玄関(げんくわん)の戸(と)を蹴破(けやぶ)り、005大刀(だいとう)をズラリと引(ひ)き抜(ぬ)き、006セーラン王(わう)の居間(ゐま)に闖入(ちんにふ)し、007ヤスダラ姫(ひめ)を除(のぞ)くの外(ほか)、008王(わう)を初(はじ)め黄金姫(わうごんひめ)、009清照姫(きよてるひめ)、010セーリス姫(ひめ)其(その)他(た)の近侍(きんじ)共(ども)を手当(てあた)り次第(しだい)に斬(き)り捨(す)てむと、011王(わう)の居間(ゐま)近(ちか)く進(すす)み寄(よ)り、012カールチンは大音声(だいおんじやう)にて、
013カールチン『吾(われ)こそは、014右守(うもり)の司(かみ)、015カールチンで厶(ござ)る。016日頃(ひごろ)の目的(もくてき)を達(たつ)せむ為(ため)、017夜陰(やいん)に乗(じやう)じ、018右守(うもり)の司(かみ)、019御(おん)首(くび)頂戴(ちやうだい)せむ為(ため)立向(たちむか)ふたり。020最早(もはや)叶(かな)はぬ所(ところ)、021尋常(じんじやう)に割腹(かつぷく)あるか、022但(ただし)はカールチンが手(て)を下(くだ)さうか、023返答(へんたふ)承(うけたま)はらむ……黄金姫(わうごんひめ)、024清照姫(きよてるひめ)の魔神(まがみ)を使(つか)うてイルナ城(じやう)を攪乱(かくらん)し、025人(ひと)を迷(まよ)はす悪神(あくがみ)の張本(ちやうほん)、026最早(もはや)叶(かな)はぬ百年目(ひやくねんめ)、027覚悟(かくご)せよ』
028と呶鳴(どな)りつけた。029此(この)声(こゑ)に驚(おどろ)いて黄金姫(わうごんひめ)、030清照姫(きよてるひめ)、031セーリス姫(ひめ)其(その)他(た)の近侍(きんじ)は、032槍(やり)、033薙刀(なぎなた)を各自(かくじ)に引提(ひつさ)げ、
034『何(なに)猪口才(ちよこざい)な反逆人(はんぎやくにん)共(ども)、035この神譴(しんけん)を食(くら)へ』
036と云(い)ふより早(はや)く突(つ)いてかかる。037カールチン、038ユーフテスは「何(なに)猪口才(ちよこざい)な」と獅子(しし)奮迅(ふんじん)の勢(いきほひ)凄(すさま)じく、039松明(たいまつ)を打(う)ち振(ふ)り打(う)ち振(ふ)り斬(き)つてかかる。040一上(いちじやう)一下(いちげ)、041上段(じやうだん)下段(げだん)と火花(ひばな)を散(ち)らす其(その)凄(すさま)じさ。042漸(やうや)くにして王(わう)を始(はじ)め黄金姫(わうごんひめ)、043清照姫(きよてるひめ)、044ヤスダラ姫(ひめ)、045セーリス姫(ひめ)其(その)他(た)は一人(ひとり)も残(のこ)らず打(う)たれて仕舞(しま)つた。046カールチン一派(いつぱ)の持(も)てる刃(やいば)は、047或(あるひ)は折(を)れ或(あるひ)は鋸(のこぎり)の歯(は)の如(ごと)くになつて居(ゐ)た。048カールチンは死骸(しがい)を部下(ぶか)に命(めい)じ一々(いちいち)門外(もんぐわい)に持(も)ち運(はこ)ばしめ、049イルナ河(がは)の激流(げきりう)目蒐(めが)けてザンブとばかり水葬(すゐさう)をなし、050先(ま)づ凱旋(がいせん)の酒宴(しゆえん)を張(は)らむと再(ふたた)び奥殿(おくでん)に進(すす)み入(い)り、051酒(さけ)汲(く)み交(か)はし、052自慢話(じまんばなし)、053成功話(せいこうばなし)に時(とき)を移(うつ)し、054ゲラゲラと笑(わら)ふ其(その)高声(たかごゑ)は門外(もんぐわい)にまで響(ひび)き渡(わた)つて来(き)た。
055 正座(しやうざ)にはカールチン、056王者然(わうじやぜん)として脇息(きようそく)に凭(もた)れ、057酒倉(さかぐら)より秘蔵(ひざう)の美酒(びしゆ)を取(と)り出(だ)さしめ、058十五六(じふごろく)人(にん)の一隊(いつたい)は、059胡坐(あぐら)をかいて無礼講(ぶれいかう)の雑談(ざつだん)に耽(ふけ)る。
060ユーフテス『右守(うもり)さま、061いやいや刹帝利(せつていり)様(さま)、062随分(ずゐぶん)神変(しんぺん)不思議(ふしぎ)の御(ご)活動(くわつどう)を遊(あそ)ばしましたなア。063先(ま)づこれで一安心(ひとあんしん)でございます。064どうぞ今日(けふ)はお目出度(めでた)い日(ひ)だから、065十分(じふぶん)お過(すご)し下(くだ)さいませ。066このユーフテスも、067何(なん)だか気分(きぶん)がいそいそ致(いた)します』
068カールチン『何(なん)と云(い)つても智謀(ちぼう)絶倫(ぜつりん)の某(それがし)、069作戦(さくせん)計劃(けいくわく)に些(すこ)しの違算(ゐさん)もないのだから、070今日(けふ)の成功(せいこう)は前(まへ)以(もつ)て分(わか)つて居(ゐ)たのだ。071ハヽヽヽヽ、072此(この)カールチンに向(むか)つて、073夜叉(やしや)の如(ごと)く突(つつ)かけ来(きた)るヤスダラ姫(ひめ)、074こいつばかりは助(たす)けたいと何程(なにほど)焦(あせ)つたか知(し)れなかつたが、075扱(あしら)うて居(を)れば遂(つひ)には己(おのれ)の命(いのち)が危(あぶ)なくなつたものだから、076手練(しゆれん)の槍先(やりさき)、077ヤツとかけた一声(いつせい)に、078ヤスダラ姫(ひめ)の首(くび)は宙(ちう)に舞(ま)ひ上(あが)つた時(とき)の嬉(うれ)しさ惜(を)しさ、079こればかりは千載(せんざい)の恨事(こんじ)だよ、080エーン』
081ユーフテス『どうせこんな大望(たいもう)を遂行(すゐかう)せむとすれば、082多少(たせう)の犠牲(ぎせい)は払(はら)はなくてはなりますまい。083併(しか)しながら此(この)ユーフテスだつて、084セーリス姫(ひめ)をバラした時(とき)の残念(ざんねん)さ、085愉快(ゆくわい)さ、086何(なん)と云(い)つてよいか、087思(おも)へば思(おも)へば愛恋(あいれん)の涙(なみだ)が零(こぼ)れますわい、088アーン』
089 マンモスは早(はや)くも舌(した)を縺(もつ)らせながら、
090マンモス『エヘヽヽヽ、091誠(まこと)に掌中(しやうちう)の玉(たま)を無残(むざん)に砕(くだ)いた御(ご)両人(りやうにん)様(さま)、092お察(さつ)し申(まを)します。093サモア姫(ひめ)はお蔭様(かげさま)で此処(ここ)へ出(で)て来(こ)なんだものだから、094命(いのち)が助(たす)かつて居(を)ります。095それを思(おも)へば、096このマンモス位(くらゐ)幸福(かうふく)な者(もの)はありませぬなア』
097ユーフテス『ウフヽヽヽ、098何(なに)を云(い)ふのだ。099肱鉄(ひぢてつ)を喰(く)はされたサモア姫(ひめ)に、100まだヤツパリ執着心(しふちやくしん)をもつて居(ゐ)るのか、101困(こま)つた代物(しろもの)だなア。102貴様(きさま)のやうに不幸(ふかう)なものはない。103カールチン様(さま)もいや刹帝利(せつていり)様(さま)も、104このユー様(さま)も恋(こひ)の敵(かたき)、105肱鉄(ひぢてつ)をかました女(をんな)をバラしたのだから、106もはや執着心(しふちやくしん)はとつて仕舞(しま)つたのだから、107こんな幸福(かうふく)はない。108貴様(きさま)はまだサモアが此(この)世(よ)に残(のこ)つて居(ゐ)るのだから、109嘸(さぞ)気(き)の揉(も)める事(こと)だらう。110エヘヽヽヽ、111云(い)うと済(す)まぬが、112サモア姫(ひめ)は、113キツト俺(おれ)にホの字(じ)とレの字(じ)だ。114そんな事(こと)はチヤンと此(この)間(あひだ)面会(めんくわい)した時(とき)に黙契(もくけい)してあるのだ。115このユーさまに向(むか)つて放(はな)つた視線(しせん)は、116誠(まこと)に至誠(しせい)が籠(こも)つて居(ゐ)たよ。117俺(おれ)の目(め)が眩(まぶ)しい程(ほど)電波(でんぱ)を送(おく)つたのだ。118もうかうなつちや、119マンモス、120貴様(きさま)も好(よ)い加減(かげん)に見切(みき)つたら……いや断念(だんねん)したらよからうぞ』
121 かかる所(ところ)へ、122サマリー姫(ひめ)、123サモア姫(ひめ)、124ハルマンの三(さん)人(にん)慌(あわただ)しく入(い)り来(きた)り、125此(この)体(てい)を見(み)て、
126サマリー『お父(とう)様(さま)、127セーラン王(わう)様(さま)は定(さだ)めて御(ご)健全(けんぜん)にゐらせられませうなア』
128カールチン『ウン、129まアまア何処(どこ)かの国(くに)で御(ご)健全(けんぜん)であらうよ』
130サマリー姫『よもや、131貴方(あなた)は不軌(ふき)を謀(はか)つたのぢやありますまいな。132万々一(まんまんいち)左様(さやう)な事(こと)をなされたとすれば、133妾(わらは)はセーラン王(わう)の妃(きさき)、134王(わう)の仇(あだ)を討(う)たねばなりませぬ。135時(とき)あつて親子(おやこ)主従(しゆじゆう)斬(き)り合(あ)ひ争(あらそ)ふは武士(もののふ)の道(みち)、136其(その)覚悟(かくご)は十分(じふぶん)厶(ござ)りませうなア』
137カールチン『如何(いか)に夫(をつと)の為(ため)だとて、138親(おや)に刃向(はむか)ふ奴(やつ)が何処(どこ)にあるか。139不孝者(ふかうもの)奴(め)、140下(さが)り居(を)らう』
141と、142勝(か)ち誇(ほこ)りたる心(こころ)より叱(しか)りつけるやうに云(い)ひ放(はな)つた。
143 此(この)時(とき)茫然(ばうぜん)として煙(けむり)とも霧(きり)とも分(わか)らぬモヤモヤの中(なか)から、144白装束(しろしやうぞく)でパツと現(あら)はれたのは王(わう)の幽霊(いうれい)であつた。145王(わう)は幽(かす)かな声(こゑ)で、
146セーラン王『カールチンに夜襲(やしふ)せられ、147命(いのち)を取(と)られたワイ……汝(なんぢ)サマリー姫(ひめ)、148夫(をつと)を大事(だいじ)と思(おも)へば、149カールチンの命(いのち)を取(と)つて呉(く)れよ』
150サマリー姫『ヤア、151さては其(その)方(はう)カールチン、152王(わう)様(さま)を殺(ころ)したのだな。153もう此(この)上(うへ)は了簡(れうけん)致(いた)さぬ。154このサマリー姫(ひめ)が刃(やいば)の錆(さび)、155覚悟(かくご)めされ』
156と其所(そこ)に落(お)ちてあつた薙刀(なぎなた)を取(と)るより早(はや)く、157水車(みづぐるま)の如(ごと)く振(ふ)り廻(まは)し荒(あ)れ狂(くる)ふ。158カールチンも死物狂(しにものぐる)ひ、159大刀(だいたう)をスラリと引(ひ)き抜(ぬ)き、160サマリー姫(ひめ)に向(むか)つて斬(き)りつくれば、161無残(むざん)やサマリー姫(ひめ)は肩先(かたさき)を七八寸(しちはつすん)ばかり斬(き)り下(さ)げられ、162タヂタヂと七八歩(しちはつぽ)後(あと)しざりして打(う)ち倒(たふ)れ、163無念(むねん)の歯噛(はがみ)をなし、164其(その)場(ば)に息(いき)絶(た)えて了(しま)つた。
165カールチン『アハヽヽヽ、166女童(をんなわらべ)が大事(だいじ)の場所(ばしよ)へ出(で)しやばつて、167此(この)方(はう)の大望(たいまう)の邪魔(じやま)をなし、168天罰(てんばつ)忽(たちま)ち到(いた)つてこの惨(むご)い態(ざま)、169吾(わが)子(こ)ながらも愛想(あいさう)がつきたわい。170アハヽヽヽ』
171と豪傑(がうけつ)笑(わら)ひに紛(まぎ)らして居(を)れど、172何(なん)となく悲(かな)しみの籠(こも)つた声(こゑ)であつた。173サモア姫(ひめ)は又(また)もや薙刀(なぎなた)を小脇(こわき)に掻(か)い込(こ)み、
174サモア姫『姫(ひめ)様(さま)の敵(かたき)、175思(おも)ひ知(し)れよ』
176と云(い)ひも終(を)へず、177カールチンに斬(き)つてかかる、178カールチンはヒラリと体(たい)をかはし、179前後(ぜんご)左右(さいう)に飛(と)びまはり、
180カールチン『まづまづ待(ま)つた』
181と声(こゑ)を限(かぎ)りに制(せい)しつつ逃(に)げ廻(まは)る。182サモア姫(ひめ)は耳(みみ)にもかけず、183カールチン目蒐(めが)けて斬(き)りつくる。184遉(さすが)のカールチンも逃(に)げ場(ば)を失(うしな)ひ、185井戸(ゐど)の中(なか)にざんぶとばかり落(お)ち込(こ)んで了(しま)つた。186ユーフテス、187マンモスは、
188ユーフテス、マンモス『狼藉者(らうぜきもの)、189容赦(ようしや)はならぬ』
190と左右(さいう)よりサモア姫(ひめ)に向(むか)つて斬(き)つて掛(かか)る。191サモア姫(ひめ)のキツ先(さき)の冴(さ)えに二人(ふたり)は肝(きも)を潰(つぶ)し、192大地(だいち)に太刀(たち)を投(な)げ捨(す)て、193両手(りやうて)を合(あは)せて救(すく)ひを求(もと)むる腑甲斐(ふがひ)なさ。194ハルマンは井戸(ゐど)の底(そこ)に落(お)ち入(い)りたるカールチンを漸(やうや)くにして救(すく)ひ上(あ)げ、195サモア姫(ひめ)に向(むか)つて言葉(ことば)激(はげ)しく、
196ハルマン『暫(しばら)く待(ま)てエー』
197と一喝(いつかつ)した。198此(この)時(とき)カールチンに斬(き)り殺(ころ)されたサマリー姫(ひめ)は、199いつの間(ま)にか元(もと)の姿(すがた)となり、200又(また)もや薙刀(なぎなた)を水車(みづぐるま)の如(ごと)く振(ふ)り廻(まは)し、201カールチン目蒐(めが)けて斬(き)り付(つ)ける。202カールチンも、
203カールチン『もう此(この)上(うへ)は破(やぶ)れかぶれだ』
204と云(い)ひながら、205再(ふたた)び薙刀(なぎなた)を振(ふ)り翳(かざ)し、206カチンカチンと刀(かたな)を合(あは)せ、207火花(ひばな)を散(ち)らして戦(たたか)ふ。208十二三(じふにさん)人(にん)の従者(じゆうしや)は瞬(またた)く間(ひま)にサマリー姫(ひめ)、209サモア姫(ひめ)の薙刀(なぎなた)に斬(き)り倒(たふ)されて仕舞(しま)つた。210かかる所(ところ)へ何所(いづこ)ともなく宣伝歌(せんでんか)の声(こゑ)が聞(きこ)えて来(き)た。
211(北光神)『神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
212善(ぜん)と悪(あく)とを立別(たてわ)ける
213此(この)世(よ)を造(つく)りし神直日(かむなほひ)
214心(こころ)も広(ひろ)き大直日(おほなほひ)
215唯(ただ)何事(なにごと)も人(ひと)の世(よ)は
216直日(なほひ)に見直(みなほ)せ聞(き)き直(なほ)せ
217身(み)の過(あやま)ちは宣(の)り直(なほ)す
218誠(まこと)の神(かみ)の御(おん)教(をしへ)
219バラモン教(けう)の神館(かむやかた)
220イルナの城(しろ)の刹帝利(せつていり)
221夜陰(やいん)に乗(じやう)じて襲撃(しふげき)し
222打(う)ち亡(ほろ)ぼして其(その)後(のち)を
223掠奪(りやくだつ)せむと企(たく)みたる
224心(こころ)汚(きたな)きカールチン
225其(その)運命(うんめい)も月(つき)の国(くに)
226イルナの城(しろ)の庭先(にはさき)で
227血(ち)で血(ち)を洗(あら)ふ親(おや)と子(こ)の
228無残(むざん)至極(しごく)の活劇(くわつげき)は
229何(いづ)れも心(こころ)の迷(まよ)ひより
230突発(とつぱつ)したるものぞかし
231欲(よく)に心(こころ)の眩(くら)みたる
232右守(うもり)の司(かみ)よ、よつく聞(き)け
233天地(てんち)は神(かみ)の造(つく)らしし
234貴(うづ)の聖所(すがど)と聞(き)くからは
235仮令(たとへ)深山(みやま)の奥(おく)までも
236神(かみ)の在(いま)さぬ処(ところ)なし
237恋(こひ)と欲(よく)とに踏(ふ)み迷(まよ)ひ
238直日(なほひ)の魂(みたま)を曇(くも)らして
239自(みづか)ら地獄(ぢごく)に落(お)ちて往(ゆ)く
240其(その)惨状(さんじやう)を救(すく)はむと
241高照山(たかてるやま)を後(あと)にして
242漸(やうや)く此処(ここ)に北光(きたてる)の
243吾(われ)は目一(まひと)つ神司(かむづかさ)
244右守(うもり)の司(かみ)のカールチン
245恋(こひ)に迷(まよ)へるユーフテス
246マンモス諸共(もろとも)よつく聞(き)け
247朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
248月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
249仮令(たとへ)大地(だいち)は沈(しづ)むとも
250誠(まこと)一(ひと)つは世(よ)を救(すく)ふ
251誠(まこと)一(ひと)つの麻柱(あななひ)の
252道(みち)に外(はづ)れて世(よ)の中(なか)に
253どうして人(ひと)は立(た)つものか
254一日(ひとひ)も早(はや)く片時(かたとき)も
255悔(く)い改(あらた)めよ三人(みたり)共(とも)
256至仁(しじん)至愛(しあい)の大神(おほかみ)は
257汝(なんぢ)三人(みたり)の悪心(あくしん)を
258洗(あら)ひ清(きよ)めて天国(てんごく)へ
259救(すく)はむ為(ため)に朝夕(あさゆふ)に
260心(こころ)を配(くば)らせたまひつつ
261汝(な)が身辺(しんぺん)を守(まも)ります
262其(その)御心(みこころ)を知(し)らずして
263私欲(しよく)や恋(こひ)に踏(ふ)み迷(まよ)ひ
264根底(ねそこ)の国(くに)の門口(かどぐち)を
265朝(あさ)な夕(ゆふ)なに開(ひら)かむと
266焦(あ)せるは愚(おろか)の至(いた)りなり
267あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
268御霊(みたま)幸(さち)はへましまして
269此(この)三(さん)人(にん)の曲霊(まがたま)を
270洗(あら)ひ清(きよ)めて天地(あめつち)の
271神(かみ)より受(う)けし大本(おほもと)の
272厳(いづ)の御霊(みたま)となさしめよ
273あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
274御霊(みたま)幸(さち)はへましませよ』
275 此(この)声(こゑ)にカールチン、276ユーフテス、277マンモスはフト気(き)がつき見(み)れば、278サマリー姫(ひめ)もサモア姫(ひめ)も影(かげ)も形(かたち)もなく、279又(また)ハルマンの姿(すがた)もない。280月(つき)冴(さ)え渡(わた)る城内(じやうない)の庭先(にはさき)の土(つち)の上(うへ)に、281何(いづ)れもドツカと坐(ざ)して居(ゐ)た事(こと)が分(わか)つた。282かく幻覚(げんかく)を見(み)せられたのは、283全(まつた)く神(かみ)の御(ご)経綸(けいりん)であつて、284旭(あさひ)、285月日(つきひ)、286高倉(たかくら)明神(みやうじん)の活動(くわつどう)の結果(けつくわ)であつた。287併(しか)し酒(さけ)を飲(の)んだことだけは、288矢張(やはり)事実(じじつ)であつて、289何(いづ)れも目(め)はチラつき、290足腰(あしこし)も立(た)たないばかりに泥酔(でいすゐ)して居(ゐ)た。291さうかうする中(うち)、292東天(とうてん)紅(くれなゐ)を呈(てい)し、293夜(よ)はガラリと明(あ)け放(はな)れ、294煌々(くわうくわう)たる冬(ふゆ)の太陽(たいやう)は斜(ななめ)に下界(げかい)を照(て)らしたまうた。
295 門番(もんばん)のミル、296ボルチーは目(め)を醒(さ)まし、297庭先(にはさき)の土(つち)の上(うへ)に右守(うもり)の司(かみ)以下(いか)の泥酔(でいすゐ)して居(ゐ)るに打(う)ち驚(おどろ)き、298奥殿(おくでん)さして駆入(かけい)つた。
299(大正一一・一一・二四 旧一〇・六 加藤明子録)
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