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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第52巻(卯の巻)
序文
総説代用
第1篇 鶴首専念
第1章 真と偽
第2章 哀別の歌
第3章 楽屋内
第4章 俄狂言
第5章 森の怪
第6章 梟の笑
第2篇 文明盲者
第7章 玉返志
第8章 巡拝
第9章 黄泉帰
第10章 霊界土産
第11章 千代の菊
第3篇 衡平無死
第12章 盲縞
第13章 黒長姫
第14章 天賊
第15章 千引岩
第16章 水車
第17章 飴屋
第4篇 怪妖蟠離
第18章 臭風
第19章 屁口垂
第20章 険学
第21章 狸妻
第22章 空走
第5篇 洗判無料
第23章 盲動
第24章 応対盗
第25章 恋愛観
第26章 姑根性
第27章 胎蔵
余白歌
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第52巻(卯の巻)
> 第1篇 鶴首専念 > 第4章 俄狂言
<<< 楽屋内
(B)
(N)
森の怪 >>>
第四章
俄
(
にはか
)
狂言
(
きやうげん
)
〔一三四〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第52巻 真善美愛 卯の巻
篇:
第1篇 鶴首専念
よみ(新仮名遣い):
かくしゅせんねん
章:
第4章 俄狂言
よみ(新仮名遣い):
にわかきょうげん
通し章番号:
1340
口述日:
1923(大正12)年01月29日(旧12月13日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年1月28日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
半時ばかりすると、初稚姫がスマートを伴い、宣伝歌を歌いながら降ってくる姿が木の間から見えだした。二人は互いに注意しながら身ぶり足ぶりなどして三番叟の下稽古をやっている。
初稚姫は、イクとサールが道連れを望んで待ち構えていることを見抜いており、自分の神業には供は許されないと宣伝歌に歌いこんで二人に言い聞かせた。
二人はこの歌を聞いて失望落胆の色を表したが、サールは気を取り直して口拍子をとって歌いだした。イクも引き出されて歌いながら踊りだした。両人は谷道をふさぎ、御供を従えて行くも神の恵みだと歌って踊り狂った。
スマートは顔を塗った二人を不審を抱いたが、イクとサールだとわかると、尾を振りながら二人の間に分け入って吠えたてた。イクとサールはそれを合図に三番叟を舞い終えた。
イクとサールは改めて初稚姫にお供を申し出たが、初稚姫は自分は一人旅を命じられており、またイクとサールは珍彦の配下とて勝手に連れて行くわけにはいかないと説き諭した。
イクとサールは目配せすると、懐に用意していた腰帯を樫の木の梢にかけて、あごを吊ってしまった。スマートはこれをみて驚き、二人を助けるように初稚姫を促す。初稚姫は手早く二人の体を抱えて持ち上げ、救い下ろした。
初稚姫は二人の熱烈なる願いを聞くわけにゆかず、しばし涙に暮れて考えていた。両人がやや正気になったのを幸い、初稚姫はたちまち神に祈ってその身を大熊と変じた。スマートは唐獅子となって二人に向かって目を怒らし、唸って見せた。
二人は驚いて両手を合わせ、一言も発せずその場にうつむいて震えている。初稚姫は元の姿に戻り、スマートは巨大な獅子と化し、姫を背に乗せて荒野ケ原を一目散に進んで行く。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-10-07 18:40:51
OBC :
rm5204
愛善世界社版:
49頁
八幡書店版:
第9輯 397頁
修補版:
校定版:
52頁
普及版:
23頁
初版:
ページ備考:
001
イク、
002
サールの
両人
(
りやうにん
)
は、
003
三番叟
(
さんばそう
)
の
準備
(
じゆんび
)
を
整
(
ととの
)
へて、
004
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
来
(
きた
)
るを
今
(
いま
)
やおそしと
待
(
ま
)
ち
構
(
かま
)
へて
居
(
ゐ
)
た。
005
半時
(
はんとき
)
許
(
ばか
)
り
経
(
た
)
つて、
006
初稚姫
(
はつわかひめ
)
はスマートを
伴
(
ともな
)
ひ、
007
声
(
こゑ
)
爽
(
さはや
)
かに
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひながら
降
(
くだ
)
り
来
(
く
)
る
姿
(
すがた
)
が、
008
木
(
こ
)
の
間
(
ま
)
をもれてちらりちらりと
見
(
み
)
え
出
(
だ
)
した。
009
二人
(
ふたり
)
は「サアこれからが
性念場
(
しやうねんば
)
だ、
010
ぬかつてはならぬ」と
互
(
たがひ
)
に
注意
(
ちゆうい
)
しながら、
011
身振
(
みぶり
)
足振
(
あしぶり
)
などして
三番叟
(
さんばさう
)
の
下稽古
(
したげいこ
)
をやつて
居
(
ゐ
)
る。
012
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
声
(
こゑ
)
淑
(
しとや
)
かに
歌
(
うた
)
ふ。
013
初稚姫
『
産土山
(
うぶすなやま
)
の
聖場
(
せいぢやう
)
を
014
後
(
あと
)
に
眺
(
なが
)
めて
大神
(
おほかみ
)
の
015
任
(
ま
)
けのまにまに
進
(
すす
)
み
往
(
ゆ
)
く
016
吾
(
われ
)
は
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
司
(
つかさ
)
017
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
に
立寄
(
たちよ
)
りて
018
醜
(
しこ
)
の
魔神
(
まがみ
)
につかれたる
019
高姫司
(
たかひめつかさ
)
を
初
(
はじ
)
めとし
020
妖幻坊
(
えうげんばう
)
の
曲津
(
まがつ
)
神
(
かみ
)
は
021
父
(
ちち
)
の
命
(
みこと
)
と
偽
(
いつは
)
りて
022
あらゆる
曲
(
まが
)
を
遂行
(
すゐかう
)
し
023
珍
(
うづ
)
の
聖場
(
せいぢやう
)
を
蹂躙
(
じうりん
)
し
024
曲津
(
まがつ
)
の
棲家
(
すみか
)
を
作
(
つく
)
らむと
025
企
(
たく
)
み
居
(
ゐ
)
たりし
忌々
(
ゆゆ
)
しさよ
026
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
に
守
(
まも
)
られて
027
妾
(
わらは
)
は
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
に
入
(
い
)
り
028
神
(
かみ
)
の
依
(
よ
)
さしの
神業
(
かむわざ
)
に
029
心
(
こころ
)
を
尽
(
つく
)
し
身
(
み
)
を
尽
(
つく
)
し
030
曲
(
まが
)
の
身霊
(
みたま
)
を
言向
(
ことむ
)
けて
031
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
に
救
(
すく
)
はむと
032
思
(
おも
)
ひし
事
(
こと
)
も
水
(
みづ
)
の
泡
(
あわ
)
033
今
(
いま
)
はあへなくなりにけり
034
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
035
前途
(
ぜんと
)
の
幸
(
さち
)
を
祈
(
いの
)
りつつ
036
珍彦
(
うづひこ
)
夫婦
(
ふうふ
)
や
楓姫
(
かへでひめ
)
037
百
(
もも
)
の
司
(
つかさ
)
や
信徒
(
まめひと
)
に
038
惜
(
を
)
しき
袂
(
たもと
)
をわかちつつ
039
神
(
かみ
)
のたまひしスマートを
040
長途
(
ちやうと
)
の
旅
(
たび
)
の
力
(
ちから
)
とし
041
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
を
杖
(
つゑ
)
として
042
漸
(
やうや
)
く
此処
(
ここ
)
に
進
(
すす
)
み
来
(
き
)
ぬ
043
谷
(
たに
)
の
流
(
なが
)
れは
淙々
(
そうそう
)
と
044
自然
(
しぜん
)
の
音楽
(
おんがく
)
奏
(
そう
)
しつつ
045
木々
(
きぎ
)
の
若芽
(
わかめ
)
は
春風
(
はるかぜ
)
に
046
そよぎて
自然
(
しぜん
)
の
舞踏
(
ぶたふ
)
なし
047
人跡
(
じんせき
)
稀
(
まれ
)
なる
谷間
(
たにあひ
)
も
048
さも
賑
(
にぎは
)
しき
鳥
(
とり
)
の
声
(
こゑ
)
049
緑
(
みどり
)
紅
(
くれなゐ
)
青
(
あを
)
黄色
(
きいろ
)
050
其
(
その
)
外
(
ほか
)
百
(
もも
)
の
花
(
はな
)
の
香
(
か
)
は
051
妾
(
わらは
)
が
眼
(
まなこ
)
を
慰
(
なぐさ
)
めつ
052
実
(
げ
)
にも
長閑
(
のどか
)
な
春
(
はる
)
の
空
(
そら
)
053
ホーホケキヨーの
鶯
(
うぐひす
)
の
054
其
(
その
)
鳴
(
な
)
き
声
(
ごゑ
)
に
何
(
なん
)
となく
055
神
(
かみ
)
の
救
(
すく
)
ひの
御声
(
みこゑ
)
あり
056
妾
(
わらは
)
は
素
(
もと
)
より
一人旅
(
ひとりたび
)
057
教
(
をしへ
)
の
司
(
つかさ
)
を
伴
(
ともな
)
ひて
058
長途
(
ちやうと
)
の
旅
(
たび
)
は
許
(
ゆる
)
されず
059
又
(
また
)
吾
(
われ
)
とても
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
060
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
身
(
み
)
に
供人
(
ともびと
)
を
061
携
(
たづさ
)
へ
行
(
ゆ
)
かむすべもなし
062
如何
(
いか
)
なる
曲
(
まが
)
の
来
(
きた
)
るとも
063
絶対
(
ぜつたい
)
無限
(
むげん
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
064
御稜威
(
みいづ
)
に
守
(
まも
)
られ
行
(
ゆ
)
く
上
(
うへ
)
は
065
怖
(
おそ
)
るるものは
世
(
よ
)
にあらじ
066
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
067
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
の
有難
(
ありがた
)
さ
068
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
069
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
070
醜
(
しこ
)
の
曲津
(
まがつ
)
は
猛
(
たけ
)
ぶとも
071
思
(
おも
)
ひ
定
(
さだ
)
めし
一人旅
(
ひとりたび
)
072
如何
(
いか
)
でか
供
(
とも
)
を
許
(
ゆる
)
さむや
073
さはさりながら
山口
(
やまぐち
)
の
074
樫
(
かし
)
の
根元
(
ねもと
)
にイク、サール
075
目
(
め
)
も
白黒
(
しろくろ
)
と
顔
(
かほ
)
を
塗
(
ぬ
)
り
076
吾
(
われ
)
に
従
(
したが
)
ひ
進
(
すす
)
まむと
077
手具脛
(
てぐすね
)
ひいて
待
(
ま
)
ち
居
(
ゐ
)
たる
078
其
(
その
)
赤心
(
まごころ
)
は
嘉
(
よみ
)
すれど
079
神
(
かみ
)
の
許
(
ゆる
)
さぬ
道連
(
みちづ
)
れを
080
如何
(
いか
)
でか
妾
(
わらは
)
が
許
(
ゆる
)
し
得
(
え
)
む
081
ああ、イク、サール
両人
(
りやうにん
)
よ
082
妾
(
わらは
)
が
心
(
こころ
)
を
推
(
お
)
し
量
(
はか
)
り
083
斯
(
か
)
かる
望
(
のぞ
)
みを
打
(
う
)
ち
捨
(
す
)
てて
084
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
聖場
(
せいぢやう
)
に
085
帰
(
かへ
)
りて
神
(
かみ
)
に
仕
(
つか
)
へませ
086
神
(
かみ
)
は
汝
(
なんぢ
)
と
倶
(
とも
)
にあり
087
たとへ
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
に
従
(
したが
)
ひて
088
いづくの
果
(
はて
)
に
来
(
きた
)
るとも
089
神
(
かみ
)
の
許
(
ゆる
)
しのなき
上
(
うへ
)
は
090
如何
(
いか
)
でか
望
(
のぞ
)
みの
達
(
たつ
)
すべき
091
諦
(
あきら
)
めたまへ
二柱
(
ふたはしら
)
092
初稚姫
(
はつわかひめ
)
が
慎
(
つつし
)
みて
093
心
(
こころ
)
の
丈
(
たけ
)
を
隈
(
くま
)
もなく
094
汝
(
な
)
が
身
(
み
)
の
前
(
まへ
)
に
打
(
う
)
ち
明
(
あか
)
し
095
その
赤心
(
まごころ
)
の
厚
(
あつ
)
きをば
096
謹
(
つつし
)
み
感謝
(
かんしや
)
し
奉
(
たてまつ
)
る
097
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
098
御霊
(
みたま
)
幸倍
(
さちはへ
)
ましませよ』
099
と
歌
(
うた
)
ひながら
急坂
(
きふはん
)
を
下
(
くだ
)
り、
100
一歩
(
ひとあし
)
々々
(
ひとあし
)
近
(
ちか
)
づき
来
(
きた
)
る。
101
二人
(
ふたり
)
は
此
(
この
)
歌
(
うた
)
を
聞
(
き
)
いて
失望
(
しつばう
)
落胆
(
らくたん
)
の
色
(
いろ
)
を
現
(
あら
)
はしながら、
102
イク『オイ、
103
色
(
いろ
)
の
黒
(
くろ
)
き
尉殿
(
じやうどの
)
、
104
あの
歌
(
うた
)
を
聞
(
き
)
いたか、
105
遉
(
さすが
)
は
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
だ、
106
ちやんと
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
が
顔
(
かほ
)
に
白
(
しろ
)
いものや
黒
(
くろ
)
いものまで
附
(
つ
)
けて、
107
此処
(
ここ
)
に
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
る
事
(
こと
)
まで
御存
(
ごぞん
)
じと
見
(
み
)
えて、
108
「
目
(
め
)
を
白黒
(
しろくろ
)
、
109
顔
(
かほ
)
を
塗
(
ぬ
)
り
立
(
た
)
てて」と
仰有
(
おつしや
)
つたぢやないか。
110
こいつは
駄目
(
だめ
)
かも
知
(
し
)
れぬぞ』
111
サール『イヤ、
112
色
(
いろ
)
の
白
(
しろ
)
き
尉殿
(
じやうどの
)
、
113
必
(
かなら
)
ず
必
(
かなら
)
ず
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
召
(
め
)
さるな』
114
と
云
(
い
)
ひながら
片手
(
かたて
)
に
扇
(
あふぎ
)
を
持
(
も
)
ち、
115
片手
(
かたて
)
に
梢
(
こずゑ
)
を
携
(
たづさ
)
へ、
116
妙
(
めう
)
な
腰付
(
こしつき
)
をして
足拍子
(
あしびやうし
)
を
揃
(
そろ
)
へ、
117
サールは、
118
サール
『トートータラリ、
119
トータラリ、
120
タラリーリ、
121
トータラリヤー、
122
タラリ、
123
トータラリ、
124
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも、
125
オンハ、
126
カッタカタ、
127
エンヤハ、
128
オイ、
129
カッタカタ』
130
と
口拍子
(
くちびやうし
)
を
取
(
と
)
りながら
歌
(
うた
)
ひだした。
131
イクも
亦
(
また
)
引
(
ひ
)
き
出
(
だ
)
されて
真白
(
まつしろ
)
の
顔
(
かほ
)
をさらしながら、
132
イク『
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも、
133
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも』
134
サール『
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
御
(
おん
)
供
(
とも
)
に
135
エンヤ、
136
カッタカタ
137
オンハ、
138
カッタカタ
139
仕
(
つか
)
へまつらで
置
(
お
)
くべきか
140
抑々
(
そもそも
)
三五
(
あななひ
)
の
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
は
141
敵
(
てき
)
でも
餓鬼
(
がき
)
でも
虫族
(
むしけら
)
でも
142
助
(
たす
)
くるー
道
(
みち
)
なりー
助
(
たす
)
くるー
道
(
みち
)
なり』
143
イク『かるが
故
(
ゆゑ
)
に
144
如何
(
いか
)
に
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
神
(
かみ
)
なりとて
145
此
(
この
)
色
(
いろ
)
の
白
(
しろ
)
き
尉殿
(
じやうどの
)
や
146
まつた この
色
(
いろ
)
の
黒
(
くろ
)
き
尉殿
(
じやうどの
)
が
147
赤心
(
まごころ
)
こめて
願
(
ね
)
ぎまつる
148
ハルナの
都
(
みやこ
)
の
御
(
おん
)
供
(
とも
)
を
149
許
(
ゆる
)
させたまはぬ
150
事
(
こと
)
やあるべき。
151
如何
(
いか
)
に
色
(
いろ
)
の
黒
(
くろ
)
き
尉殿
(
じやうどの
)
、
152
ここは
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
、
153
天津
(
あまつ
)
乙女
(
をとめ
)
の
舞
(
まひ
)
を
奏
(
かな
)
でて
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
御心
(
みこころ
)
を
和
(
やは
)
らげ、
154
許
(
ゆる
)
され
難
(
がた
)
き
御
(
おん
)
供
(
とも
)
に、
155
たつて
仕
(
つか
)
へまつらうでは
厶
(
ござ
)
らぬか』
156
サール『されば
候
(
さふらふ
)
、
157
天津
(
あまつ
)
乙女
(
をとめ
)
の
舞
(
まひ
)
、
158
速
(
すみやか
)
に
御
(
おん
)
舞
(
ま
)
ひ
候
(
さふら
)
へ、
159
かく
舞
(
ま
)
ふ
時
(
とき
)
は
天女
(
てんによ
)
に
等
(
ひと
)
しき
初稚姫
(
はつわかひめ
)
、
160
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
の
元
(
もと
)
の
屋敷
(
やしき
)
に
御
(
おん
)
直
(
なほ
)
り
候
(
さふら
)
ふべし。
161
オンハ、
162
カッタカタ、
163
エンハ、
164
カッタカタ、
165
カッタリコ カッタリコ、
166
カッタ カッタ カッタリコ、
167
エンヤ、
168
オンハ、
169
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
り
給
(
たま
)
ひし
神直日
(
かむなほひ
)
の
神
(
かみ
)
、
170
御心
(
みこころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
の
神
(
かみ
)
、
171
唯
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は、
172
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞
(
き
)
き
直
(
なほ
)
し、
173
如何
(
いか
)
なる
事
(
こと
)
も
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
し
給
(
たま
)
ふ、
174
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
御使
(
みつかひ
)
と、
175
現
(
あら
)
はれ
給
(
たま
)
ふ
初稚姫
(
はつわかひめ
)
、
176
世人
(
よびと
)
を
救
(
すく
)
ふ
宣伝使
(
せんでんし
)
と、
177
現
(
あら
)
はれ
給
(
たま
)
ふ
御
(
おん
)
身
(
み
)
なれば、
178
如何
(
いか
)
でか
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
熱心
(
ねつしん
)
なる
願
(
ねがひ
)
を
許
(
ゆる
)
し
給
(
たま
)
はざる
事
(
こと
)
のあるべき。
179
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも、
180
四辺
(
あたり
)
に
響
(
ひび
)
く
滝
(
たき
)
の
水
(
みづ
)
、
181
抑
(
そもそも
)
これの
滝水
(
たきみづ
)
は、
182
産土山
(
うぶすなやま
)
の
山麓
(
さんろく
)
より
落
(
お
)
ち
来
(
きた
)
る
恵
(
めぐみ
)
の
露
(
つゆ
)
の
暫
(
しば
)
し
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
の
下潜
(
したくぐ
)
りつつ、
183
河鹿
(
かじか
)
の
河
(
かは
)
に
流
(
なが
)
れ
来
(
き
)
て、
184
此処
(
ここ
)
に
滝
(
たき
)
とぞなりにける。
185
抑
(
そもそも
)
これの
流
(
なが
)
れは、
186
産土山
(
うぶすなやま
)
に
湧
(
わ
)
き
出
(
い
)
でし
時
(
とき
)
は、
187
僅
(
わづ
)
かの
露
(
つゆ
)
にてありしもの、
188
流
(
なが
)
れ
流
(
なが
)
れて
谷々
(
たにだに
)
の、
189
小川
(
をがは
)
の
水
(
みづ
)
を
一
(
ひと
)
つになし、
190
斯
(
か
)
くも
目出度
(
めでた
)
く
麗
(
うるは
)
しき
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
滝
(
たき
)
とぞなりにける』
191
イク『
初稚姫
(
はつわかひめ
)
もその
如
(
ごと
)
く、
192
産土山
(
うぶすなやま
)
を
出
(
い
)
で
給
(
たま
)
ひし
時
(
とき
)
こそ、
193
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
の
露
(
つゆ
)
に
等
(
ひと
)
しき
御
(
おん
)
出立
(
いでた
)
ち、
194
繊弱
(
かよわ
)
き
乙女
(
をとめ
)
の
旅衣
(
たびごろも
)
、
195
語
(
かた
)
らふ
友
(
とも
)
もなかりしに、
196
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
のあら
尊
(
たふと
)
、
197
畜生
(
ちくしやう
)
の
身
(
み
)
をもつて、
198
其
(
その
)
御
(
おん
)
供
(
とも
)
に
仕
(
つか
)
へまつりたる、
199
スマートを
添
(
そ
)
へ
茲
(
ここ
)
に
征途
(
せいと
)
に
上
(
のぼ
)
らせ
給
(
たま
)
ふ、
200
其
(
その
)
有様
(
ありさま
)
を
譬
(
たと
)
ふれば、
201
この
滝水
(
たきみづ
)
の
次第
(
しだい
)
々々
(
しだい
)
に、
202
行
(
ゆ
)
くに
随
(
したが
)
ひ
水量
(
みづかさ
)
増
(
まさ
)
り、
203
小川
(
をがは
)
を
合
(
あは
)
せて
太
(
ふと
)
り
行
(
ゆ
)
く
如
(
ごと
)
く、
204
御供
(
みとも
)
の
神
(
かみ
)
を
数多
(
あまた
)
従
(
したが
)
へ、
205
出
(
い
)
でますべきは
天地
(
てんち
)
の
道理
(
だうり
)
ならめ、
206
あら
有難
(
ありがた
)
や
尊
(
たふと
)
しやな、
207
今
(
いま
)
や
吾
(
わが
)
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
に
御姿
(
みすがた
)
を
現
(
あら
)
はし
給
(
たま
)
ひし
初稚姫
(
はつわかひめ
)
、
208
御供
(
みとも
)
に
仕
(
つか
)
へさしてたび
給
(
たま
)
へ、
209
色
(
いろ
)
の
白
(
しろ
)
き
尉殿
(
じやうどの
)
と
黒
(
くろ
)
き
尉殿
(
じやうどの
)
が、
210
黒白
(
あやめ
)
も
分
(
わか
)
ぬ
闇
(
やみ
)
の
世
(
よ
)
の
救
(
すく
)
ひのために、
211
天地
(
あめつち
)
の
神
(
かみ
)
に
誓
(
ちか
)
ひまつりて、
212
姫
(
ひめ
)
が
御前
(
みまへ
)
に
願
(
ね
)
ぎまつる。
213
オンハ、
214
カッタカタ、
215
エンハ、
216
カッタカタ、
217
カッタ カッタ カッタリコ、
218
カッタリ カッタリ カッタリコ、
219
エンヤ、
220
オンハ』
221
と
両人
(
りやうにん
)
は
谷道
(
たにみち
)
を
塞
(
ふさ
)
ぎ、
222
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
踊
(
をど
)
り
狂
(
くる
)
ふ。
223
遉
(
さすが
)
の
初稚姫
(
はつわかひめ
)
も
二人
(
ふたり
)
の
理詰
(
りづめ
)
に
答
(
こた
)
ふる
言葉
(
ことば
)
もなく、
224
少時
(
しばし
)
茫然
(
ばうぜん
)
として
二人
(
ふたり
)
の
舞
(
まひ
)
を
眺
(
なが
)
め
居
(
ゐ
)
たりき。
225
スマートは
二人
(
ふたり
)
の
顔
(
かほ
)
の
変
(
かは
)
つたのに
不審
(
ふしん
)
を
抱
(
いだ
)
き、
226
首
(
くび
)
を
傾
(
かた
)
げて
考
(
かんが
)
へて
居
(
ゐ
)
たが、
227
やつとの
事
(
こと
)
でイク、
228
サールの
両人
(
りやうにん
)
の
戯
(
たはむ
)
れなる
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
り、
229
二人
(
ふたり
)
の
中
(
なか
)
に
分
(
わ
)
け
行
(
い
)
つて、
230
尾
(
を
)
を
掉
(
ふ
)
りながら、
231
ワンワンワンと
二声
(
ふたこゑ
)
三声
(
みこゑ
)
吠
(
ほ
)
え
猛
(
たけ
)
るや、
232
イク、
233
サールの
両人
(
りやうにん
)
は、
234
やつとの
事
(
こと
)
で
三番叟
(
さんばそう
)
を
舞
(
ま
)
ひ
納
(
をさ
)
めた。
235
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
茲
(
ここ
)
を
先途
(
せんど
)
と
踊
(
をど
)
り
狂
(
くる
)
うたのだから、
236
ビツシヨリ
汗
(
あせ
)
に
濡
(
ぬ
)
れ、
237
何
(
なん
)
とも
形容
(
けいよう
)
の
出来
(
でき
)
ぬ
化物面
(
ばけものづら
)
になつて
仕舞
(
しま
)
つた。
238
初稚姫
『ホホホホホ、
239
貴方
(
あなた
)
はイク、
240
サールの
司
(
つかさ
)
ぢやありませぬか。
241
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
に
斯様
(
かやう
)
な
所
(
ところ
)
にお
出
(
いで
)
になつたのです。
242
珍彦
(
うづひこ
)
さまが
嘸
(
さぞ
)
心配
(
しんぱい
)
をしてゐらつしやるでせう。
243
サア
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つて
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御用
(
ごよう
)
をして
下
(
くだ
)
さい。
244
さうして
又
(
また
)
其
(
その
)
顔
(
かほ
)
はどうなさつたのですか。
245
本当
(
ほんたう
)
にみつともない、
246
お
化
(
ばけ
)
のやうですわ。
247
三番叟
(
さんばさう
)
が
済
(
す
)
みましたら、
248
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
谷川
(
たにがは
)
でお
顔
(
かほ
)
をお
洗
(
あら
)
ひなさいませ。
249
どこの
方
(
かた
)
が
通
(
とほ
)
られるか
知
(
し
)
れませぬよ。
250
旅
(
たび
)
のお
方
(
かた
)
が
貴方
(
あなた
)
等
(
がた
)
のお
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
たら、
251
キツト
吃驚
(
びつくり
)
せられますからなア』
252
イク『イヤモウ
大変
(
たいへん
)
な
目出度
(
めでた
)
い
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いました。
253
貴女
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
旅行
(
りよかう
)
について、
254
天
(
てん
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
が
吾々
(
われわれ
)
にお
供
(
とも
)
をせいと
仰有
(
おつしや
)
つての
事
(
こと
)
か、
255
思
(
おも
)
はず
知
(
し
)
らず
此処
(
ここ
)
まで
体
(
からだ
)
が
宙
(
ちう
)
に
飛
(
と
)
んで
参
(
まゐ
)
りまして、
256
生
(
うま
)
れてから
初
(
はじ
)
めての
三番叟
(
さんばさう
)
を
踏
(
ふ
)
まされました。
257
何卒
(
なにとぞ
)
惟神
(
かむながら
)
と
思召
(
おぼしめ
)
して、
258
何処
(
どこ
)
までもお
供
(
とも
)
にお
連
(
つ
)
れ
下
(
くだ
)
さいますやう、
259
偏
(
ひとへ
)
にお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
します』
260
サール『どうぞ、
261
私
(
わたし
)
もイクの
申
(
まを
)
した
通
(
とほ
)
り、
262
是非
(
ぜひ
)
ともお
供
(
とも
)
をさして
頂
(
いただ
)
きたう
存
(
ぞん
)
じます』
263
初稚姫
『
折角
(
せつかく
)
の
思召
(
おぼしめし
)
を
無
(
む
)
にするのも
苦
(
くる
)
しう
厶
(
ござ
)
いますが、
264
最前
(
さいぜん
)
申
(
まを
)
した
通
(
とほ
)
り、
265
妾
(
わらは
)
は
供
(
とも
)
は
許
(
ゆる
)
されないのですから、
266
どうぞそれだけは
堪
(
こら
)
へて
頂
(
いただ
)
きたう
存
(
ぞん
)
じます』
267
イク『そこを、
268
たつてお
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
したいと
存
(
ぞん
)
じ、
269
合
(
あは
)
す
顔
(
かほ
)
が
厶
(
ござ
)
いませぬので、
270
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
白
(
しろ
)
く
黒
(
くろ
)
く
塗
(
ぬ
)
りまして、
271
お
願
(
ねが
)
ひ
申
(
まを
)
したので
厶
(
ござ
)
います。
272
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
つても
私
(
わたくし
)
はお
供
(
とも
)
を
致
(
いた
)
します。
273
珍彦
(
うづひこ
)
様
(
さま
)
に
許
(
ゆる
)
しも
受
(
う
)
けず、
274
勝手
(
かつて
)
に
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
して
来
(
き
)
たので
厶
(
ござ
)
いますから、
275
此
(
この
)
儘
(
まま
)
帰
(
かへ
)
る
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
276
吾々
(
われわれ
)
を
助
(
たす
)
けると
思
(
おも
)
うて
何卒
(
どうぞ
)
お
許
(
ゆる
)
しを
願
(
ねが
)
ひます。
277
何程
(
なにほど
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
道
(
みち
)
だと
申
(
まを
)
しても、
278
特別
(
とくべつ
)
のお
取扱
(
とりあつか
)
ひ
破格
(
はかく
)
の
思召
(
おぼしめし
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
厶
(
ござ
)
いませう。
279
其処
(
そこ
)
は
神直日
(
かむなほひ
)
、
280
大直日
(
おほなほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
しまして、
281
お
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さるが
人
(
ひと
)
を
助
(
たす
)
ける
宣伝使
(
せんでんし
)
の
役
(
やく
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか』
282
初稚姫
『
本当
(
ほんたう
)
に
困
(
こま
)
りましたなア。
283
併
(
しか
)
しながら、
284
貴方
(
あなた
)
は
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
の
神司
(
かむつかさ
)
珍彦
(
うづひこ
)
様
(
さま
)
の
支配
(
しはい
)
を
受
(
う
)
けねばならぬお
方
(
かた
)
故
(
ゆゑ
)
、
285
私
(
わたし
)
が
勝手
(
かつて
)
につれて
参
(
まゐ
)
る
訳
(
わけ
)
には
参
(
まゐ
)
りませぬ。
286
そんな
無理
(
むり
)
を
仰有
(
おつしや
)
らずに、
287
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
288
それが
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
する
第一
(
だいいち
)
の
務
(
つと
)
めで
厶
(
ござ
)
いますからなア』
289
イク『アヽ
是
(
これ
)
程
(
ほど
)
頼
(
たの
)
んでも
聞
(
き
)
いて
下
(
くだ
)
さらねば、
290
最早
(
もはや
)
是非
(
ぜひ
)
がない。
291
オイ、
292
サール、
293
愈
(
いよいよ
)
決死隊
(
けつしたい
)
だ』
294
と
目配
(
めくば
)
せする。
295
茲
(
ここ
)
に
両人
(
りやうにん
)
は
懐
(
ふところ
)
に
用意
(
ようい
)
して
置
(
お
)
いた
腰帯
(
こしおび
)
を
樫
(
かし
)
の
木
(
き
)
の
梢
(
こずゑ
)
にパツと
手早
(
てばや
)
く
引
(
ひ
)
つかけ、
296
顎
(
あご
)
を
吊
(
つ
)
つてプリンプリンと
三番叟
(
さんばさう
)
の
舞
(
まひ
)
は、
297
忽
(
たちま
)
ち
住吉踊
(
すみよしをど
)
りの
人形
(
にんぎやう
)
とヘグレて
仕舞
(
しま
)
つた。
298
スマートは
此
(
この
)
体
(
てい
)
を
見
(
み
)
て
驚
(
おどろ
)
き、
299
ワンワンと
吠立
(
ほえた
)
て、
300
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
身
(
み
)
の
廻
(
まは
)
りをウロウロしながら
袖
(
そで
)
をくはへて「
早
(
はや
)
く
両人
(
りやうにん
)
を
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さい」と、
301
口
(
くち
)
には
云
(
い
)
はねど
其
(
その
)
形容
(
けいよう
)
に
現
(
あら
)
はし、
302
悲
(
かな
)
しき
声
(
こゑ
)
を
絞
(
しぼ
)
つて
啼
(
な
)
く。
303
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
手早
(
てばや
)
くブラ
下
(
さが
)
つた
体
(
からだ
)
をグツと
抱
(
かか
)
へ、
304
五寸
(
ごすん
)
ばかり
持
(
も
)
ちあげて
二人
(
ふたり
)
とも
救
(
すく
)
ひ
下
(
おろ
)
した。
305
二人
(
ふたり
)
は
気
(
き
)
が
遠
(
とほ
)
くなつて
呆然
(
ばうぜん
)
として
居
(
ゐ
)
る。
306
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
二人
(
ふたり
)
の
熱烈
(
ねつれつ
)
なる
願
(
ねが
)
ひを
聞
(
き
)
く
訳
(
わけ
)
にもゆかず、
307
断
(
ことわ
)
る
訳
(
わけ
)
にもゆかず、
308
暫
(
しば
)
し
涙
(
なみだ
)
に
暮
(
く
)
れて
考
(
かんが
)
へて
居
(
ゐ
)
たが、
309
やや
両人
(
りやうにん
)
が
正気
(
しやうき
)
になつたのを
幸
(
さいは
)
ひ、
310
忽
(
たちま
)
ち
神
(
かみ
)
に
祈
(
いの
)
り、
311
身
(
み
)
を
変
(
へん
)
じて
大熊
(
おほくま
)
となり、
312
スマートは
唐獅子
(
からじし
)
となり、
313
目
(
め
)
を
怒
(
いか
)
らし
足掻
(
あがき
)
をしながら、
314
ウーウーと
二人
(
ふたり
)
に
唸
(
うな
)
つて
見
(
み
)
せた。
315
二人
(
ふたり
)
は
吃驚
(
びつくり
)
して
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
せ
一言
(
ひとこと
)
も
発
(
はつ
)
し
得
(
え
)
ず、
316
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
俯向
(
うつむ
)
いて
慄
(
ふる
)
うて
居
(
ゐ
)
る。
317
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
再
(
ふたた
)
び
元
(
もと
)
の
姿
(
すがた
)
となり、
318
スマートは
巨大
(
きよだい
)
なる
獅子
(
しし
)
と
化
(
くわ
)
し、
319
初稚姫
(
はつわかひめ
)
を
背
(
せ
)
に
乗
(
の
)
せて
荒野
(
あらの
)
ケ
原
(
はら
)
を
一目散
(
いちもくさん
)
に
進
(
すす
)
み
往
(
ゆ
)
く。
320
(
大正一二・一・二九
旧一一・一二・一三
加藤明子
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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(N)
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