霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第六章 梟(ふくろ)の笑(わらひ)〔一三四二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第52巻 真善美愛 卯の巻 篇:第1篇 鶴首専念 よみ(新仮名遣い):かくしゅせんねん
章:第6章 梟の笑 よみ(新仮名遣い):ふくろのわらい 通し章番号:1342
口述日:1923(大正12)年01月29日(旧12月13日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年1月28日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
二人が進んで行くと、道の傍らの木の下に一人の美人が黒犬を連れて首をうなだれ、何か思案に沈んでいる。二人が女の挙動を伺っていると、女はたちまち木に細帯を投げかけ、首を吊った。
二人は木の下にかけつけて助け下ろした。女は気が付いて、自分は死ぬのが目的だったのになぜ助けた、と二人に喰ってかかった。女はひとしきり二人を罵倒すると、突然イクの横面を張り飛ばした。
イクがよろめいて田んぼの中に倒れると、女の連れていた黒犬が懐の水晶玉をくわえて駆け出した。女はその様子を見て手を打って笑い、自分たちは昨夜、山口の森で二人を脅そうとした怪物であり、水晶玉を奪うために計略をしかけたのだ、と言うと、大狸の正体を表し、逃げて行った。
サールはイクを助け起こし、ともかくも小北山の聖場に参拝しようと、トボトボと力なく進んで行く。傍らの枝には梟がとまり、神宝をあっさり取られた二人に鳴き立てている。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-10-18 06:45:42 文字数:4064 OBC :rm5206
愛善世界社版:75頁 八幡書店版:第9輯 406頁 修補版: 校定版:79頁 普及版:35頁 初版: ページ備考:
001サール『初稚姫(はつわかひめ)に従(したが)ひて
002ハルナの都(みやこ)に進(すす)まむと
003イクと二人(ふたり)が云(い)ひ合(あは)せ
004一足先(ひとあしさき)に失敬(しつけい)して
005河鹿(かじか)峠(たうげ)の上(のぼ)り口(くち)
006樫(かし)の大木(おほき)の麓(ふもと)にて
007神算(しんさん)鬼謀(きぼう)を廻(めぐ)らしつ
008否応(いやおう)云(い)はさず御(おん)供(とも)の
009許(ゆる)しを受(う)けむと三番叟(さんばそう)
010折角(せつかく)企(たく)んだ芸当(げいたう)も
011忽(たちま)ち画餅(ぐわへい)となりぬれば
012最後(さいご)の手段(しゆだん)と首(くび)を吊(つ)り
013初稚姫(はつわかひめ)を驚(おどろ)かし
014有無(うむ)を云(い)はせず御(おん)供(とも)に
015仕(つか)へむものと思(おも)ひしが
016これも矢張(やつぱり)当(あて)はづれ
017忽(たちま)ち熊(くま)と変化(へんげ)して
018睨(にら)み給(たま)ひし怖(おそ)ろしさ
019魂(たましひ)奪(うば)はれ魄(はく)消(き)えて
020絶(た)え入(い)るばかり戦(をのの)けど
021弱味(よわみ)をみせては叶(かな)はじと
022吾(われ)と心(こころ)を励(はげ)まして
023御後(みあと)を慕(した)ひすたすたと
024曲神(まがみ)の集(つど)ふ山口(やまぐち)の
025森(もり)の手前(てまへ)にかかる折(をり)
026夜(よ)はずつぽりと暮(く)れ果(は)てて
027黒白(あやめ)も分(わ)かずなりにけり
028忽(たちま)ち見(み)ゆる大火光(だいくわくわう)
029これぞ全(まつた)く大神(おほかみ)の
030吾(われ)等(ら)を守(まも)りたまへるかと
031喜(よろこ)び勇(いさ)み近(ちか)づけば
032形相(ぎやうさう)実(げ)にも凄(すさま)じき
033二(ふた)つの鬼(おに)が立(た)つて居(ゐ)る
034これぞ全(まつた)く姫(ひめ)様(さま)が
035吾(われ)等(ら)を嚇(おど)して帰(かへ)さむと
036企(たく)み給(たま)ひし業(わざ)ならむ
037素性(すじやう)の分(わか)つた化物(ばけもの)に
038如何(いか)でか怖(おそ)れ縮(ちぢ)まむや
039二人(ふたり)は傍(そば)にかけよつて
040平気(へいき)の平左(へいざ)でかけあへば
041初稚姫(はつわかひめ)に非(あら)ずして
042正体(えたい)の知(し)れぬ妖魅界(えうみかい)
043意想外(いさうぐわい)なる古狸(ふるだぬき)
044蜈蚣(むかで)の奴(やつ)がやつて来(き)て
045吾(われ)等(ら)二人(ふたり)を刺(さ)し殺(ころ)し
046悩(なや)めむとして待(ま)ち居(ゐ)たる
047危(あやふ)き所(ところ)をあら尊(たふと)
048天(てん)を照(て)らして降(くだ)りくる
049光(ひかり)眩(まばゆ)き大火光(だいくわくわう)
050吾(われ)等(ら)が前(まへ)に現(あら)はれて
051四辺(あたり)隈(くま)なく伊照(いて)らせば
052遉(さすが)の魔神(まがみ)も戦慄(せんりつ)し
053雲(くも)を霞(かすみ)と逃(に)げて行(ゆ)く
054火団(くわだん)は忽(たちま)ち縮小(しゆくせう)し
055一寸(いつすん)ばかりの玉(たま)となり
056清(きよ)き光(ひかり)を現(あら)はして
057吾(われ)等(ら)を守(まも)りたまひけり
058ああ有難(ありがた)や尊(たふと)やと
059感謝(かんしや)の言葉(ことば)捧(ささ)げつつ
060知(し)らず知(し)らずに眠(ねむ)りけり
061烏(からす)の声(こゑ)に驚(おどろ)きて
062眼(まなこ)をさまし眺(なが)むれば
063水晶玉(すいしやうだま)が唯(ただ)一個(ひとつ)
064二人(ふたり)の間(あひだ)に置(お)いてある
065これぞ全(まつた)く皇神(すめかみ)の
066闇夜(やみよ)を照(て)らす御(おん)宝(たから)
067吾(われ)等(ら)二人(ふたり)が赤心(まごころ)に
068感(かん)じて天(てん)より宝玉(はうぎよく)を
069下(くだ)させ給(たま)ひしものなりと
070押(お)し戴(いただ)いて懐(ふところ)に
071いと叮嚀(ていねい)に納(をさ)めつつ
072勇気(ゆうき)は頓(とみ)に加(くは)はりて
073百草(ももくさ)萠(も)ゆる春(はる)の野(の)を
074心(こころ)いそいそ進(すす)み往(ゆ)く
075ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
076斯(か)くも尊(たふと)き御(おん)守(まも)り
077吾(われ)等(ら)に下(くだ)らせ給(たま)ふ上(うへ)は
078如何(いか)でか曲(まが)を怖(おそ)るべき
079闇夜(やみよ)を照(て)らす宝玉(はうぎよく)の
080光(ひかり)と共(とも)に何処(どこ)までも
081初稚姫(はつわかひめ)の後(あと)追(お)うて
082御供(みとも)に仕(つか)へ奉(まつ)らねば
083男(をとこ)の顔(かほ)が立(た)つまいぞ
084イクの司(つかさ)よ気(き)をつけて
085サールの後(あと)について来(こ)い
086野中(のなか)の森(もり)も近(ちか)づいた
087それから先(さき)は小北山(こぎたやま)
088珍(うづ)の聖場(せいぢやう)がありと聞(き)く
089もしや初稚姫(はつわかひめ)様(さま)は
090其(その)聖場(せいぢやう)に道寄(みちよ)りを
091なさつて厶(ござ)るぢやあるまいか
092吾々(われわれ)二人(ふたり)は兎(と)も角(かく)も
093小北(こぎた)の山(やま)に参詣(まゐまう)で
094神(かみ)に願(ねがひ)をかけまくも
095畏(かしこ)き所在(ありか)を探(たづ)ねだし
096初心(しよしん)を貫徹(くわんてつ)せにやならぬ
097ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
098三五教(あななひけう)の大御神(おほみかみ)
099何卒(なにとぞ)吾(われ)等(ら)両人(りやうにん)が
100此(この)願望(ぐわんまう)を逸早(いちはや)く
101許(ゆる)させたまへと願(ね)ぎまつる』
102と歌(うた)ひつつ行(ゆ)く。
103イク『朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
104月(つき)は盈(み)つとも落(お)つるとも
105海(うみ)はあせなむ世(よ)ありとも
106大和(やまと)男子(をのこ)の益良夫(ますらを)が
107一旦(いつたん)思(おも)ひ立(た)ちし事(こと)
108通(とほ)さにやおかぬ弓張(ゆみはり)の
109月(つき)に誓(ちか)ひて突(つ)き貫(ぬ)かむ
110初稚姫(はつわかひめ)はスマートを
111伴(ともな)ひ一人(ひとり)出(い)でませど
112妖幻坊(えうげんばう)の曲津見(まがつみ)や
113高姫司(たかひめつかさ)がいろいろと
114姿(すがた)を変(へん)じ待(ま)ち構(かま)へ
115もしも艱(なや)ませまつりなば
116大神業(だいしんげふ)は如何(いか)にして
117完成(くわんせい)すべき道(みち)やある
118神(かみ)の司(つかさ)は綺羅星(きらぼし)の
119如(ごと)くに数多(あまた)ましませど
120此(この)姫君(ひめぎみ)に勝(まさ)りたる
121神(かみ)の司(つかさ)は稀(まれ)なれば
122吾(われ)等(ら)はたとへ死(し)すとても
123初稚姫(はつわかひめ)の御(おん)前(まへ)を
124助(たす)け守(まも)らにや居(を)らうまい
125身(み)も魂(たましひ)も打(う)ち捨(す)てて
126神(かみ)に仕(つか)ふる吾々(われわれ)は
127如何(いか)なる敵(てき)も怖(おそ)れむや
128野(の)は青々(あをあを)と生(お)ひ茂(しげ)り
129風(かぜ)暖(あたた)かく薫(かを)りつつ
130蝶(てふ)舞(ま)ひ遊(あそ)ぶ野辺(のべ)の花(はな)
131菫(すみれ)、蒲公英(たんぽぽ)、紫雲英(げんげばな)
132咲(さ)き誇(ほこ)りたる道(みち)の上(うへ)
133其(その)中心(ちうしん)を進(すす)み往(ゆ)く
134吾(われ)等(ら)は天国(てんごく)浄土(じやうど)をば
135旅行(りよかう)なしつる心地(ここち)なり
136ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
137初稚姫(はつわかひめ)の御(おん)上(うへ)を
138守(まも)らせたまへ大御神(おほみかみ)
139珍(うづ)の御前(みまへ)に願(ね)ぎまつる』
140と歌(うた)ひつつ道(みち)を急(いそ)ぎ行(ゆ)く。
141 道(みち)の片方(かたへ)の榛(はり)の木(き)の下(もと)に、142一人(ひとり)の美人(びじん)が黒(くろ)い犬(いぬ)をつれて首(くび)をうなだれ、143真青(まつさを)な顔(かほ)をして何(なに)か思案(しあん)に沈(しづ)む風情(ふぜい)であつた。144イク、145サールの両人(りやうにん)は十間(じつけん)ばかり道(みち)を隔(へだ)てた田(た)の向(むか)ふに女(をんな)の立(た)つて居(ゐ)るのを眺(なが)め、146つと立留(たちど)まり、
147イク『オイ、148サール、149あの女(をんな)は初稚姫(はつわかひめ)様(さま)によく似(に)て居(ゐ)るぢやないか。150そしてスマートによく似(に)た犬(いぬ)まで傍(そば)について居(ゐ)る。151一(ひと)つお尋(たづ)ねして見(み)ようぢやないか』
152サール『ウン、153一寸(ちよつと)見(み)た所(ところ)ではよく似(に)て厶(ござ)るやうだが、154些(すこ)し顔(かほ)が長(なが)いなり、155背(せ)が高過(たかす)ぎるぢやないか。156そしてあの犬(いぬ)もスマートから見(み)れば、157どこともなしに容積(かさ)がないやうだ。158又(また)昨夜(ゆうべ)の曲神(まがかみ)奴(め)が第二(だいに)の作戦(さくせん)計画(けいくわく)を立(た)てよつて、159吾(われ)等(ら)を艱(なや)めようとして居(ゐ)るのかも知(し)れないぞ。160うつかり相手(あひて)になつては不利益(ふりえき)だから、161見(み)ぬ顔(かほ)して行(ゆ)かうぢやないか』
162イク『それもさうだが、163何(なん)だか心配(しんぱい)さうな顔(かほ)をして居(ゐ)るぞ。164彼処(あすこ)は川側(かはぶち)だから、165身投(みな)げでもする積(つも)りぢやなからうかな』
166サール『サア、167あの様子(やうす)では何(なん)とも判別(はんべつ)がつかないよ。168まア暫(しばら)く此処(ここ)で様子(やうす)を考(かんが)へようぢやないか』
169イク『ウン、170よからう』
171と、172二人(ふたり)は暫(しば)し女(をんな)の挙動(きよどう)を看守(みまも)つて居(ゐ)た。173忽(たちま)ち女(をんな)は榛(はり)の木(き)に細帯(ほそおび)を投(な)げかけ、174プリンプリンとぶら下(さが)つた。175傍(そば)に居(ゐ)た黒犬(くろいぬ)は悲鳴(ひめい)をあげ、176二人(ふたり)の方(はう)に向(むか)ひ、177前足(まへあし)で空(くう)をかきながら救(すく)ひを求(もと)むるものの如(ごと)くであつた。
178イク『オイ、179サール、180俺(おれ)達(たち)の後継(あとつぎ)が出来(でき)たぢやないか、181随分(ずいぶん)苦(くる)しさうにやつてけつかる。182何(なん)と無細工(ぶさいく)なものだなア、183あれを見(み)い、184洟(はな)を垂(た)らしよつて、185あの態(ざま)つたら見(み)られたものぢやない。186初稚姫(はつわかひめ)様(さま)が吾(われ)等(ら)のブリブリして洟(はな)をたらした姿(すがた)を眺(なが)められた時(とき)にや、187何(なん)とした馬鹿(ばか)な奴(やつ)だ、188情(なさけ)ない男(をとこ)だとキツト思(おも)はれたに違(ちが)ひないぞ。189人(ひと)の姿(ふり)見(み)て吾(わが)姿(ふり)直(なほ)せと云(い)ふ事(こと)があるからなア』
190サール『オイ、191イク、192そんな気楽(きらく)な事(こと)を云(い)うて居(ゐ)る所(ところ)ぢやないよ。193人(ひと)の危難(きなん)を見(み)て批評(ひひやう)所(どころ)ぢやない。194グヅグヅして居(ゐ)ると絶命(ことき)れて了(しま)ふから、195サア貴様(きさま)と二人(ふたり)で助(たす)けてやらうぢやないか』
196イク『初稚姫(はつわかひめ)様(さま)は、197女(をんな)の身(み)として荒男(あらをとこ)の首吊(くびつ)り二人(ふたり)まで御(お)助(たす)けなさつたのだ、198高(たか)が女(をんな)の首吊(くびつ)り一人(ひとり)に男(をとこ)が二人(ふたり)まで行(ゆ)かなくても貴様(きさま)一人(ひとり)で結構(けつこう)ぢや。199俺(おれ)は此処(ここ)で水晶玉(すいしやうだま)の御(ご)守護(しゆご)をして居(ゐ)るから……汚(けが)れたものに触(さは)ると玉(たま)が汚(けが)れるからのう、200貴様(きさま)往(い)つて助(たす)けて来(こ)い』
201サール『何(なん)だか気分(きぶん)が悪(わる)くて仕方(しかた)がない、202イクよ、203せめて傍(そば)までついて来(き)て呉(く)れないか。204さうしたら俺(おれ)が一人(ひとり)で助(たす)けてやるから』
205イク『エエ意気地(いくぢ)のない男(をとこ)だなア、206サア行(ゆ)かう』
207とサールを促(うなが)し榛(はり)の木(き)の下(もと)に歩(あし)を急(いそ)いだ。208女(をんな)は真青(まつさを)になつて、209最早(もはや)手足(てあし)も動(うご)かず、210ブラリと吊柿(つるし)のやうに垂(さが)つて居(ゐ)る。211サールは、212手早(てばや)く女(をんな)を抱(いだ)き、
213サール『アヽ何(なん)と柄(がら)にも似合(にあ)はぬ重(おも)い女(をんな)だなア、214此奴(こいつ)ア化州(ばけしう)かも知(し)れぬぞ』
215と云(い)ひながら助(たす)け下(おろ)した。216女(をんな)は漸(やうや)くにして気(き)がついたらしく、217キヨロキヨロ其処辺(そこら)を見廻(みまは)し、
218女『ああお前(まへ)さまは何処(どこ)のお方(かた)か知(し)らぬが、219私(わし)が折角(せつかく)天国(てんごく)の旅(たび)をしかけて居(ゐ)る所(ところ)を、220殺生(せつしやう)な、221なぜ邪魔(じやま)をするのだい。222よい加減(かげん)に人(ひと)を助(たす)ける宣伝使(せんでんし)が悪戯(いたづら)をして置(お)きなさいよ』
223と礼(れい)を云(い)ふかと思(おも)へば、224反対(はんたい)に女(をんな)は仏頂面(ぶつちやうづら)をして怒(おこ)り出(だ)した。
225サール『オイ、226何処(どこ)の女(をんな)か知(し)らぬが、227命(いのち)を助(たす)けて貰(もら)うて不足(ふそく)を云(い)ふものが何処(どこ)にあるかい、228のうイク、229こんな事(こと)なら助(たす)けてやるぢやなかつたに、230チエー馬鹿(ばか)にしてけつかる。231ハハ此奴(こいつ)はキ印(じるし)だな』
232女『キ印(じるし)でも構(かま)うて下(くだ)さるな。233朋友(ともだち)でもなければ親類(しんるゐ)でもなし、234お前(まへ)さまに助(たす)けられる理由(りいう)が無(な)いぢやないか』
235サール『それだつて此(この)犬(いぬ)奴(め)、236一生(いつしやう)懸命(けんめい)俺(おれ)の方(はう)に向(む)いて救(すく)ひを求(もと)めたものだから、237忙(いそが)しい道中(だうちう)を繰合(くりあは)せて助(たす)けに来(き)てやつたのだ』
238女『ヘン阿呆(あはう)らしい、239犬(いぬ)が物(もの)言(い)ひますか。240お前(まへ)さまも見(み)た割(わ)りとは馬鹿(ばか)だな。241人(ひと)の目的(もくてき)の邪魔(じやま)をして置(お)きながら、242礼(れい)を云(い)へなどとは以(もつ)ての外(ほか)だ。243これ位(ぐらゐ)分(わか)らぬ馬鹿(ばか)野郎(やらう)が又(また)と世界(せかい)にあるだらうかなア、244私(わたし)は死(し)ぬのが目的(もくてき)だ。245その目的(もくてき)を妨害(ばうがい)して置(お)いて何(なん)だ、246お礼(れい)を云(い)ふの云(い)はぬのと……謝罪(あやま)りなさい、247怪(け)しからぬ人足(にんそく)だ』
248イク『こりや女(をんな)、249俺(おれ)達(たち)を馬鹿(ばか)だとは何(なん)だ。250余(あま)り口(くち)が過(す)ぎるぢやないか。251貴様(きさま)は死(し)ぬのが目的(もくてき)だと申(まを)したが、252死(し)んでどうする積(つも)りだ。253エーン、254何(なん)ぞいい目的(もくてき)があるのか』
255女『ヘン馬鹿(ばか)だなア、256お前(まへ)達(たち)に霊界(れいかい)の事(こと)が分(わか)つて耐(たま)らうかい。257馬鹿(ばか)と云(い)うたのは外(ほか)でもないが、258今(いま)の世(よ)の中(なか)は命(いのち)がけの事(こと)をして人(ひと)を助(たす)け、259さうして世界(せかい)の人間(にんげん)から褒(ほ)めて貰(もら)はうと考(かんが)へたり、260一口(ひとくち)の礼(れい)でも云(い)つて貰(もら)はうと考(かんが)へる奴(やつ)ばかりだ。261それだから馬鹿(ばか)と云(い)ふのだよ。262命(いのち)を助(たす)けてやつた女(をんな)に、263眉毛(まゆげ)を読(よ)まれ、264尻(しり)の毛(け)をぬかれ、265現(うつつ)をぬかし、266涎(よだれ)を繰(く)り、267終(しまひ)には先祖譲(せんぞゆづ)りの財産(ざいさん)迄(まで)すつかり取(と)られる馬鹿(ばか)の多(おほ)い世(よ)の中(なか)だよ。268貴様(きさま)達(たち)も俺(おれ)が女(をんな)だと思(おも)うて助(たす)けに来(き)たのだらう。269どうだ、270これから骨(ほね)を抜(ぬ)き取(と)り、271章魚(たこ)のやうにグニヤグニヤに蕩(とろ)かしてやらうか。272俺(おれ)の目(め)は千両目(せんりやうめ)と云(い)うて、273一瞥(いちべつ)よく城(しろ)を傾(かたむ)け、274山林(さんりん)を吹(ふ)き飛(と)ばす威力(ゐりよく)を持(も)つて居(ゐ)るのだぞ。275俺(おれ)のやうな者(もの)が娑婆(しやば)を離(はな)れて霊界(れいかい)に行(い)つたならば、276娑婆(しやば)の邪魔者(じやまもの)がなくなつて、277人民(じんみん)がどれ位(くらゐ)喜(よろこ)ぶか知(し)れないのだ。278また生(い)かしやがるものだから、279この涼(すず)しい目(め)をもつて腰抜(こしぬけ)野郎(やらう)を片(かた)つ端(ぱし)から骨(ほね)を抜(ぬ)き、280足腰(あしこし)の立(た)たぬやうに殺生(せつしやう)をしなくてはならぬワイ。281貴様(きさま)は一人(ひとり)を助(たす)けて大(おほ)きな害(がい)を世(よ)の中(なか)に拡(ひろ)げようとする頓馬(とんま)だから馬鹿(ばか)と云(い)つたのだ。282これ二人(ふたり)の馬鹿(ばか)野郎(やらう)、283分(わか)つたか。284分(わか)つたら犬蹲(いぬつくばひ)となつてお断(ことわ)りを申(まを)せ』
285サール『何(なん)とまア、286理窟(りくつ)と云(い)ふものは、287どんなにでもつくものだなア。288まるで高姫(たかひめ)や黒姫(くろひめ)のやうな事(こと)を吐(ぬか)すぢやないか、289のうイク』
290 イクは、
291イク『フン』
292と呆(あき)れ果(は)て、293女(をんな)の顔(かほ)を打(う)ち眺(なが)め、
294イク『こんな優(やさ)しい顔(かほ)をしながら、295どこを押(おさ)へたら、296あんな悪垂口(あくたれぐち)が出(で)るのだらうか』
297と頻(しき)りにみつめて居(ゐ)ると、298女(をんな)は、
299女『馬鹿(ばか)』
300と一声(いつせい)イクの横面(よこづら)を張(は)り倒(たふ)した。301イクはヨロヨロとよろめいて田圃(たんぼ)の中(なか)に倒(たふ)れた。302犬(いぬ)はイクの懐(ふところ)の水晶玉(すいしやうだま)をくはへるや否(いな)や、303一生(いつしやう)懸命(けんめい)に駆出(かけだ)した。304サールは、
305サール『こりや畜生(ちくしやう)待(ま)て』
306と叫(さけ)ぶのを見(み)て、307女(をんな)は手(て)を拍(う)つて笑(わら)ひ、
308女『ホホホホホ、309馬鹿(ばか)だな、310俺(おれ)は昨夜(さくや)山口(やまぐち)の森(もり)で貴様(きさま)を嚇(おど)さうとした怪物(くわいぶつ)だ。311貴様(きさま)に水晶玉(すいしやうだま)を持(も)たせて置(お)くと俺(おれ)達(たち)の邪魔(じやま)になるから、312計略(けいりやく)を以(もつ)て取(と)つてやつたのだ。313アバヨ、314イヒヒヒヒ』
315と白(しろ)い歯(は)を出(だ)し、316腮(あご)をしやくりながら大狸(おほだぬき)の正体(しやうたい)を現(あら)はし、317南(みなみ)をさして雲(くも)を霞(かすみ)と逃(に)げ出(だ)した。318サールはイクを抱起(だきおこ)し、319ブツブツ小言(こごと)を言(い)ひながら、320兎(と)も角(かく)も小北山(こぎたやま)の聖場(せいぢやう)に参拝(さんぱい)せむと、321間抜(まぬ)けた面(つら)をして力(ちから)なげにトボトボと進(すす)み行(ゆ)く。322傍(かたはら)の密樹(みつじゆ)の枝(えだ)に梟(ふくろ)がとまつて、
323『ホー、324ホー、325ホー助(すけ)、326ホー助(すけ)、327ころりと取(と)られたなア、328ホー、329ホー、330ホー助(すけ)、331アツポー アツポー』
332と啼(な)いて居(ゐ)る。
333(大正一二・一・二九 旧一一・一二・一三 加藤明子録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→