霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第七章 玉返志(たまかへし)〔一三四三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第52巻 真善美愛 卯の巻 篇:第2篇 文明盲者 よみ(新仮名遣い):ぶんめいもうじゃ
章:第7章 玉返志 よみ(新仮名遣い):たまかえし 通し章番号:1343
口述日:1923(大正12)年01月29日(旧12月13日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年1月28日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
小北山の受付には、文助爺さまが初、徳の両人に頭をかち割られ、それから発熱して床についてしまっていた。魔我彦やお寅も不在のため、にわかに人手不足となった。お菊は受付兼神殿係を兼務し、参詣してくる病人の祈願もなし、説教を聞かせるなど多忙を極めていた。
お菊はあまりの忙しさに思わず独り言に愚痴をいいながら、受付で眠り込んでしまった。そこへ六十ばかりの爺が十二三の娘を背中に背負い、トボトボとやってきた。爺の呼びかけでお菊は目を覚ました。爺は、孫がのどをつまらせたので、至急鎮魂をしてほしいと言う。
お菊は紫の袴を着け、祭壇の前に娘を置いて天津祝詞を奏上し、祈願をこらした。お菊は汗を流して一生懸命祈願したが、効果は現れず、娘はますます苦しむばかりである。
お千代は用の間に階段を降ってきてみると、怪しい爺が庭の隅に青い顔をしてしゃがんでいる。神殿を見ると、お菊が一生懸命に祈願をこらしている。お千代は、受付が空いているのでしばらく代理を務めていた。
そこへ、坂道を登って息をはずませながら、イクとサールがやってきた。二人は、お千代との問答から初稚姫がここに来ていることを知った。お千代にあしらわれた二人は、ともかくお宮を巡拝することにした。
庭の隅に座っている爺は、二人を見るとビリビリふるえだした。爺は、孫に鎮魂させるためにやってきただけだと言い訳した。
お菊は祈願すればするほど娘は苦しみ悶えだす。娘は息が詰まった風になったので、受付にいたお千代は驚いて側に寄ってみれば、娘の尻に大きな狸の尾が見えた。お千代はこれは化け物に違いないと、外へ飛び出すと、イクとサールを手招きした。二人は巡拝を一度打ち切って、戻ってきた。
受付の横にいた怪しい爺はいつのまにか姿を消し、妙齢の美人が座っている。イクとサールはどこかで見た女だと思いながら、お千代について神殿に進み、祝詞を奏上した。
お千代は娘の背中を天の数歌を歌ってポンポンと二つ叩いた。くわっと音がして飛び出したのは、直径一寸ばかりの水晶玉だった。娘と受付にいた女はたちまち古狸となり、逃げて行った。
お千代とお菊は、イクとサールから水晶玉の由来を聞き、狸の祈祷をさせられたのだと知って笑い転げた。四人は真心をこめて一生懸命に感謝祈願の祝詞を奏上した。
イクとサールは水晶玉を一度狸に取られた話でお菊とお千代からからかわれた。受付にて湯にのどを潤すと、二人は各神社を参拝し始めた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-11-07 17:56:10 OBC :rm5207
愛善世界社版:91頁 八幡書店版:第9輯 412頁 修補版: 校定版:95頁 普及版:41頁 初版: ページ備考:
001 小北山(こぎたやま)受付(うけつけ)には、002文助(ぶんすけ)(ぢい)さまが(はつ)003(とく)両人(りやうにん)にしたたか(あたま)をかち()られ、004それから発熱(はつねつ)して(とこ)につき、005時々(ときどき)囈言(うはごと)()ひ、006大勢(おほぜい)信者(しんじや)役員(やくゐん)(あたま)(なや)ましてゐる。007そして魔我彦(まがひこ)不在(ふざい)なり、008(はつ)009(とく)両人(りやうにん)遁走(とんそう)し、010(にはか)運用(うんよう)機関(きくわん)(ほとん)停止(ていし)(やく)()うた。011(きく)勝気(かちき)(をんな)とて、012受付(うけつけ)(けん)神殿係(しんでんがかり)兼務(けんむ)し、013参詣(さんけい)して()病人(びやうにん)祈願(きぐわん)をなし、014(あるひ)説教(せつけう)()かせ、015(また)受付(うけつけ)(あら)はれて、016()(まは)るばかりの多忙(たばう)(きは)めて()つた。017(きく)はホツと()(あま)し、018(からだ)(なは)のやうになつて、019チツとばかり愚痴(ぐち)()した。
020お菊『あああ、021受付(うけつけ)()(やく)(なん)でもないものだ、022(あそ)半分(はんぶん)何時(いつ)文助(ぶんすけ)さまが()()いてゐる。023(これ)(よう)がなくて(ひま)(つぶ)しにやつてゐるのだらうと(おも)うて()つたが、024中々(なかなか)自分(じぶん)がやつて()ると(いそが)しいものだ。025鎮魂(ちんこん)もしてやらねばならず、026()祈願(きぐわん)もせなならず、027ホンにホンに文助(ぶんすけ)さまも()苦労(くらう)だつたなア。028何卒(どうぞ)(はや)(なほ)つてくれれば()いに、029これ(だけ)そこら(ぢう)(うつく)しい(はな)()いてるのに、030(はな)()みに()(こと)出来(でき)やしない。031そこへ(また)初稚姫(はつわかひめ)(さま)()()しになつたものだから、032松姫(まつひめ)さまは(いそが)しいのでチツとも手伝(てつだ)うては(くだ)さらず、033千代(ちよ)さまもお(みや)のお給仕(きふじ)やなんかで(いそが)しいさうだし、034本当(ほんたう)(いや)になつちまつた。035せめて魔我(まが)さまなつと(かへ)つてくればよいのに、036()()かぬ(やつ)だな。037万公(まんこう)さまも万公(まんこう)さまだ、038何処(どこ)一体(いつたい)彷徨(うろつ)いてるのだらう。039(かへ)つて()りや()いに、040そしたら(また)()れたやうな(かほ)をして、041退屈(たいくつ)ざましに(なぶ)つてやるのだけれどなア。042あああ仕方(しかた)がないワ、043何程(なにほど)きばつた(ところ)で、044先繰(せんぐ)先繰(せんぐ)(ばば)045(かか)がやつて()るのだから、046(きく)さまもやり()れない。047(ひと)つここらで昼寝(ひるね)でもやつたらうかなア。048(この)()(みじか)()(なが)いのに、049()ぶつたくて仕様(しやう)がないワ。050椿(つばき)(はな)でさへも居睡(ゐねむ)つて、051ボトリボトリと(くび)()かして溜池(ためいけ)(ふな)(おびや)かし、052水面(すいめん)真赤(まつか)()めてゐる。053(わし)だつて生物(いきもの)だから、054チツとは休養(きうやう)もせなくちや(かな)ふまい』
055独言(ひとりごと)()ひながら、056グツと(ねむ)つて(しま)つた。057そこへ、058六十(ろくじふ)(ばか)りの(おやぢ)十二三(じふにさん)(むすめ)背中(せなか)()ひ、059トボトボとやつて()た。
060(おやぢ)『ハイ、061御免(ごめん)なさいませ、062(わたし)はつひ近在(きんざい)首陀(しゆだ)(ござ)いますが、063(むすめ)(のど)(たひ)(ほね)(なに)かを()てまして、064(くる)しみ(もだ)え、065(いき)()れさうになつて()ります。066何卒(どうぞ)(かみ)(さま)()神徳(しんとく)()つて(いただ)くことは出来(でき)ますまいかなア』
067 居眠(ゐねむ)つてゐたお(きく)はフツと()をさまし、
068お菊『ウニヤ ウニヤ ウニヤ ウニヤ、069ようお()でなさいませ、070随分(ずいぶん)()(なが)いこつて(ござ)いますな。071モウ何時(なんどき)ですか』
072(おやぢ)『まだ()(どき)(ござ)います。073至急(しきふ)()(ねが)(いた)したい(こと)(ござ)いますので、074世話(せわ)(あづ)かりたいと(おも)(まゐ)りました。075(これ)(わたくし)(まご)(ござ)いますが、076(のど)(なん)だか()ちまして、077(こま)りますので鎮魂(ちんこん)とやらをして(もら)(わけ)には()きませぬだらうかな』
078お菊『ヘー、079(よろ)しい、080(しか)住所(ぢゆうしよ)姓名(せいめい)(うかが)ひます』
081(おやぢ)『ハイ、082住所(ぢゆうしよ)姓名(せいめい)(あと)から申上(まをしあ)げます。083(この)(とほ)孫娘(まごむすめ)危急(ききふ)存亡(そんばう)場合(ばあひ)(ござ)いますから、084(はや)()祈願(きぐわん)をして(いただ)きたいもので(ござ)います』
085お菊『それなら特別(とくべつ)(もつ)て、086(さき)にする手続(てつづき)(あと)にし、087(ねが)(いた)しませう。088(しか)しながら(この)()()()きませぬと、089(ねが)(わけ)には(まゐ)りませぬワ』
090(おやぢ)『それは御尤(ごもつと)もで(ござ)います。091(むすめ)()滝野(たきの)(まを)します』
092お菊『ハイ(よろ)しい、093サア此方(こちら)()れて()なさい。094大神(おほかみ)(さま)(ねが)へば直様(すぐさま)(たす)けて(くだ)さいます。095サ、096(ぢい)さま、097(あが)りなさい』
098(おやぢ)(はなは)(まを)()ねますが、099(この)(とほ)草鞋(わらぢ)をはいて()りますから、100(あし)(よご)れて()ります。101何卒(どうぞ)(むすめ)だけ()げて(くだ)さいませ』
102背中(せなか)から(おろ)した。103(むすめ)(ころ)げるやうにして、104(きく)(ねが)祭壇(さいだん)(まへ)()つた。105(きく)(むらさき)(はかま)()け、106(しろ)着物(きもの)(うへ)格衣(かくい)羽織(はお)つて中啓(ちうけい)()ち、107(うやうや)しく天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、108祈願(きぐわん)()らした。109(きく)熱湯(ねつたう)(あせ)(なが)しての一生(いつしやう)懸命(けんめい)祈願(きぐわん)容易(ようい)(かう)(あら)はれず、110(むすめ)益々(ますます)(くる)しみ(もだ)えるばかりである。111千代(ちよ)(よう)のすきまに階段(かいだん)(くだ)つて受付(うけつけ)()()ると、112(あや)しい(ぢい)(には)(すみ)(あを)(かほ)してしやがんでゐる。113神殿(しんでん)()れば、114(きく)一生(いつしやう)懸命(けんめい)祈願(きぐわん)()らしてゐた。115千代(ちよ)(これ)()て、
116お千代受付(うけつけ)はサツパリ空屋(あきや)だ。117どれ(しばら)(わたし)代理(だいり)(つと)めておかうか』
118()ひながら、119受付(うけつけ)にチヨコナンと(すわ)つてみた。120そこへ坂路(さかみち)(のぼ)つて、121(いき)をスースー(はづ)ませながら二人(ふたり)(をとこ)がやつて()た。122これはイク、123サールの両人(りやうにん)である。
124イク『御免(ごめん)なさい、125(わたくし)(ほこら)(もり)のイク、126サールといふ(もの)(ござ)います。127もしや初稚姫(はつわかひめ)(さま)はスマートといふ(いぬ)()れてお立寄(たちより)になつては()りませぬか』
128お千代『それはようお()でなさいました。129マア()一服(いつぷく)なさいませ。130夜前(やぜん)からお()えになつて()りますが、131(かあ)さまと(なん)だか()(はなし)がはづんで()ります。132(いづ)()があきましたら()()らせ(いた)しますから、133(この)境内(けいだい)のお宮様(みやさま)一遍(いつぺん)134()巡拝(じゆんぱい)なさいませ』
135イク『イヤ有難(ありがた)う、136()(かく)参拝(さんぱい)さして(いただ)きませう。137オイ、138サール、139まだ十二三(じふにさん)らしいが随分(ずいぶん)しつかりしたものだね。140小北山(こぎたやま)はこんな(ちひ)さい子供(こども)受付(うけつけ)出来(でき)るのだから、141(たい)したものだよ。142イルやハルの(やつ)143(えら)さうに受付面(うけつけづら)(さら)しよつて(さけ)ばかり(くら)ひ、144筆先(ふでさき)だとかいつて(かみ)ばかり使(つか)ひよつて、145()()れるのばかりを()つてゐるサボ先生(せんせい)とはえらい(ちがひ)だなア』
146サール本当(ほんたう)感心(かんしん)だ。147コレ受付(うけつけ)さま、148(まへ)さまの()(なん)()ひますか』
149お千代(わたし)()(たづ)ねて(なん)となさるのですか。150(べつ)(よう)がないぢやありませぬか』
151サール『イヤもう(おそ)()りました、152それならモウお(うかが)(いた)しませぬワ』
153イク『ハハハハ、154サール、155とうと、156やられよつたな。157(はぢ)()れよ』
158サール貴様(きさま)なんだ、159肝腎(かんじん)水晶玉(すいしやうだま)(いぬ)にとられたぢやないか。160(いぬ)かと(おも)へばド(たぬき)につままれよつて、161スコタンを()はされ、162おまけに悪口(あくこう)雑言(ざふごん)()びせかけられ、163よい(はぢ)をさらしたぢやないか、164(えら)さうに()ふまいぞ』
165イク『そりやお(たがひ)さまだ、166こんな(ところ)()て、167そんな馬鹿(ばか)(こと)()(やつ)があるかい』
168お千代(なん)とマアお(まへ)さま(たち)は、169どこともなしに空気(くうき)のぬけた(つら)をしてますね。170(いま)()きますれば(たま)()られたとか仰有(おつしや)いましたが、171本当(ほんたう)にラムネの玉落(たまおち)みたいなお(かた)ですねえ、172ホホホ』
173イク『ヤ、174此奴(こいつ)(おそ)()ります、175(めん)176小手(こて)177(どう)といかれてけつかる。178ヤアこはいこはい、179サ、180サール()かう』
181サール『オイ一寸(ちよつと)()て、182(この)(ぢい)さまは、183(あや)しいぢやないか。184(おれ)(たち)(かほ)()るとビリビリ(ふる)うてゐるぞ』
185イク『ホンにけつ(たい)(ぢい)さまだなア。186オイ(ぢい)さま、187(まへ)一体(いつたい)何処(どこ)から(まゐ)つたのだい』
188(おやぢ)何卒(どうぞ)189そんな(こと)()つて(くだ)さるな。190(まご)大変(たいへん)病気(びやうき)にかかつて(くる)しんで()るので、191(いま)ここへ(ねが)つて(もら)ひに()たのだよ。192病気(びやうき)にさはるから、193(まへ)さまは(はや)くお(みや)さまへ(まゐ)つて()なさい』
194イク『オイ、195サール、196()(かく)(かみ)(さま)()挨拶(あいさつ)肝腎(かんじん)だ、197(まゐ)らう』
198()ひながら、199受付(うけつけ)()つて沢山(たくさん)(みや)一々(いちいち)巡拝(じゆんぱい)(はじ)めた。200(きく)一生(いつしやう)懸命(けんめい)(たの)んでゐる。201(むすめ)次第(しだい)(くる)しみ(もだ)えだし、202(のど)につまつた(たひ)(ほね)はますます(ふか)くおち()んだものか、203(いき)(ほとん)どつまり、204無我(むが)夢中(むちう)になつて(くう)(つか)()した。205千代(ちよ)吃驚(びつくり)して、206(そば)へよつて()れば、207(おほ)きな(たぬき)()(むすめ)(しり)からみえてゐる。208此奴(こいつ)化物(ばけもの)相違(さうゐ)ないと、209早速(さつそく)(そと)飛出(とびだ)し、210イク、211サールの両人(りやうにん)を「(はや)(はや)く」と手招(てまね)きした。212両人(りやうにん)何事(なにごと)急用(きふよう)出来(でき)たらしいと、213巡拝(じゆんぱい)(なかば)にして打切(うちき)り、214(あと)から(をが)(こと)とし、215スタスタと(かへ)つて()た。216(いま)まで受付(うけつけ)(よこ)(ふる)うてゐた(おやじ)姿(すがた)何時(いつ)しか()えて、217妙齢(めうれい)美人(びじん)(すわ)つてゐる。218二人(ふたり)はどつかで()(こと)のある(をんな)だと(おも)ひながら、219千代(ちよ)()いて神殿(しんでん)(すす)み、220祝詞(のりと)奏上(そうじやう)した。221(むすめ)益々(ますます)(くる)しみ()した。222千代(ちよ)(むすめ)背中(せなか)を、223(あま)数歌(かずうた)(うた)うてポンポンと(ふた)(たた)いた拍子(ひやうし)に、224クワツと(おと)がして飛出(とびだ)したのは(たひ)(ほね)でもなく、225直径(ちよくけい)一寸(いつすん)(ばか)りの水晶玉(すいしやうだま)であつた。226一同(いちどう)はアツと(おどろ)()もなく、227(むすめ)(たちま)古狸(ふるだぬき)となり、228受付(うけつけ)()つた(をんな)(また)(おな)じく大狸(おほだぬき)となつて、229一生(いつしやう)懸命(けんめい)山越(やまご)しに姿(すがた)(かく)して(しま)つた。
230イク『ヤア畜生(ちくしやう)231ザマを()い、232ウマク(おれ)をチヨロまかして、233水晶玉(すいしやうだま)(ぬす)みよつて、234神罰(しんばつ)(あた)つて(のど)につまり、235仕方(しかた)がないものだから、236こんな(ところ)()けて(たす)けて(もら)ひに()よつたのだな。237ヤア今度(こんど)(しつ)かり()()けなくちやならないぞ。238ヤア(むすめ)さま、239貴女(あなた)のお(かげ)(たから)(もと)(かへ)りました、240有難(ありがた)(ござ)います。241イク()にも()(れい)(まを)します』
242千代(ちよ)貴方(あなた)243(たぬき)()親類(しんるゐ)(ござ)いますか、244どうして(また)あの(たま)()られたのです?』
245イク『イヤ、246(はな)(まを)せば(はづ)かしう(ござ)いますが、247(この)(たま)()()つた由来(ゆらい)から、248()られた因縁(いんねん)(まを)()げねばお(うたが)ひが()れますまい。249それでは逐一(ちくいち)申上(まをしあ)げます』
250(たぬき)(だま)されて水晶玉(すいしやうだま)()られた顛末(てんまつ)詳細(しやうさい)物語(ものがた)つた。251千代(ちよ)とお(きく)()けて(わら)つた。
252お菊『アレマア、253馬鹿(ばか)らしい、254(たぬき)()祈祷(きたう)(たの)まれたのだワ。255(なん)だか(みみ)(うご)くと(おも)うて()つたのよ。256千代(ちよ)さまのお(かげ)で、257(たぬき)(たす)かり、258(わたし)(たす)かりましたワ。259モウ(この)(うへ)(いの)りをしようものなら、260(いき)()れる(ところ)でしたワ』
261サール『オイ、262イク、263貴様(きさま)()たしておくと、264どうも剣呑(けんのん)だ、265今度(こんど)(おれ)()つて()くから此方(こちら)(わた)せ』
266イク『メメ滅相(めつさう)な、267(おれ)()つて()つたら()いぢやないか。268貴様(きさま)(やう)(あわ)(もの)()たしておくと()()でならぬワ。269マア子供(こども)大人(おとな)一任(いちにん)した(はう)安全(あんぜん)だよ』
270サール『ヘン、271仰有(おつしや)いますワイ。272何卒(どうぞ)(たぬき)()られぬ(やう)(しつ)かり()監督(かんとく)(ねが)ひますよ。273(なに)()もあれ、274神前(しんぜん)()(れい)(まを)しませう』
275()(にん)横縦陣(わうじうぢん)(つく)り、276赤心(まごころ)()めて一生(いつしやう)懸命(けんめい)感謝(かんしや)祈願(きぐわん)()奏上(そうじやう)した。
277イク『妖怪(えうくわい)(だま)()られた宝玉(はうぎよく)
278(かみ)(めぐみ)(わが)()(かへ)れり』
279サール『イクの(やつ)まぬけた(つら)をしてる(ゆゑ)
280(たぬき)(やつ)眉毛(まゆげ)よまれし』
281イク『馬鹿(ばか)()ふな貴様(きさま)曲津(まがつ)につままれて
282(くび)つり(をんな)見違(みちが)へた(ゆゑ)よ』
283サール『横面(よこづら)(たぬき)(やつ)(なぐ)られて
284田圃(たんぼ)()ちし可笑(をか)しき(やつ)かな』
285イク『イクらでも(ひと)悪口(わるくち)つくがよい
286善言(ぜんげん)美詞(びし)(みち)(わす)れて』
287サール『馬鹿(ばか)()ふな(おれ)睾丸(きんたま)(にぎ)らうと
288(おも)うて(あたま)(なぐ)られた(くせ)に』
289イク『(なぐ)りたる(をとこ)(また)(なぐ)られて
290サールの馬鹿(ばか)がベソをかくなり』
291サール『(その)(やう)()らず(ぐち)をば(たた)くなら
292水晶玉(すいしやうだま)をこつちへ(わた)せよ』
293イク『水晶(すいしやう)(みたま)なればこそ水晶(すいしやう)
294(たま)守護(しゆご)をさせられてゐる』
295サール『玉脱(たまぬ)けの間抜(まぬけ)(をとこ)水晶(すいしやう)
296(たま)(いだ)いて(つみ)(つく)るな』
297イク『この(たま)小北(こぎた)(やま)皇神(すめかみ)
298(まも)りと二人(ふたり)(めぐみ)にかへれり。
299さりながらサール(こころ)()(なほ)
300(まへ)(つみ)(たま)(けが)せば。
301(よご)れなば(また)この(たま)()げて()かむ
302サールの(たま)をまたも(きら)ひて』
303千代(ちよ)水晶(すいしやう)(みづ)御霊(みたま)何神(なにがみ)
304(いただ)きましたか()かまほしさよ』
305イク『この(たま)()出神(でのかみ)(たまもの)
306いや永久(とこしへ)(はな)されぬ(たま)
307千代(ちよ)(はな)せとは(たれ)()はねど油断(ゆだん)から
308(たぬき)(やつ)()られ(たま)ふな』
309イク『これは(また)(おも)ひもよらぬお言葉(ことば)
310万劫(まんごふ)末代(まつだい)(はな)しは(いた)さぬ』
311(きく)玉脱(たまぬ)けのやうな(つら)した二人(ふたり)(をとこ)
312この行先(ゆくさき)(あん)じられける。
313初稚姫(はつわかひめ)(かみ)(みこと)(この)二人(ふたり)
314(きら)(たま)ふも(うべ)よとぞ(おも)ふ。
315どことなく(むし)()かないスタイルだ
316バラモン(ぐん)()つた(ひと)だらう』
317イク『(をんな)にも似合(にあ)はずよくもベラベラと
318大人(おとな)なぶりの骨嬲(ほねなぶ)りするよ』
319サール『(われ)とても(をとこ)(うま)れた(うへ)からは
320(をんな)()けて()れるものかい。
321乙女子(をとめご)よがんぜなしとて(あま)りだよ
322荒男(あらをとこ)をば嘲弄(てうろう)するとは』
323(きく)嘲弄(てうろう)する(こころ)微塵(みぢん)もなけれども
324(なん)とはなしに可笑(をか)しくぞなる』
325千代(ちよ)『お(きく)さま(わたし)二人(ふたり)(かほ)をみて
326空気(くうき)ぬけ野郎(やらう)(おも)ひましたよ。
327(たぬき)(たま)()られてメソメソと
328吠面(ほえづら)かわく(をとこ)なりせば』
329サール『これ(ほど)(くち)達者(たつしや)乙女子(をとめご)
330()るとは()らず(たづ)()しよな』
331イク『この乙女(をとめ)一筋縄(ひとすぢなは)では()かぬらし
332侠客育(けふかくそだ)ちの生地(きぢ)()えてる』
333千代(ちよ)松彦(まつひこ)松姫(まつひめ)さまを(おや)()
334千代(ちよ)(かた)()らぬ馬鹿者(ばかもの)
335イク『これはしたり松彦(まつひこ)さまの嬢様(ぢやうさま)
336()らぬ(こと)とて()無礼(ぶれい)しました』
337千代(ちよ)『あやまれば(べつ)(とが)めはせぬ(ほど)
338これからキツト(つつ)しむがよい』
339イク『(たぬき)には大馬鹿(おほばか)にされ(ふくろ)には
340(わら)はれ(また)馬鹿(ばか)をみるかな』
341サール『アハハハハ(あき)れて(もの)()はれない
342彼方(あなた)此方(こなた)化物(ばけもの)()る。
343この(をんな)眉毛(まゆげ)(つば)をつけてみよ
344キツト尻尾(しつぽ)がついて()らうぞ』
345千代(ちよ)面白(おもしろ)(たぬき)のやうな(つら)をして
346つままれるのは当然(あたりまへ)ぞや』
347サール『どこまでも二人(ふたり)乙女(をとめ)馬鹿(ばか)にされ
348どこで(をとこ)(かほ)()たうか』
349イク『(なに)よりも水晶玉(すいしやうだま)()()らば
350(なん)()はれても辛抱(しんぼう)せうかい。
351(この)(やう)なお転婆娘(てんばむすめ)があればこそ
352尻尾(しつぽ)()した化狸(ばけたぬき)野郎(やらう)
353千代(ちよ)さまお(まへ)のお(かげ)宝玉(はうぎよく)
354(かへ)つたのだから(をが)みますぞや』
355千代(ちよ)『お(きく)さまこんな腰抜男(こしぬけをとこ)()
356(たま)(あた)へた(かみ)何神(なにがみ)
357(きく)義理(ぎり)天上(てんじやう)()出神(でのかみ)(かく)だらう
358(たま)調(しら)べず(わた)(かみ)なら。
359真正(しんせい)()出神(でのかみ)(この)(やう)
360頓馬(とんま)(をとこ)(わた)(はず)なし』
361(たがひ)揶揄(からか)ひながら、362受付(うけつけ)(あつ)まつて白湯(さゆ)(のど)(うる)ほし、363それより二人(ふたり)(かく)神社(じんじや)参拝(さんぱい)(はじ)めた。
364大正一二・一・二九 旧一一・一二・一三 松村真澄録)

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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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