霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 盲縞(めくらじま)〔一三四八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第52巻 真善美愛 卯の巻 篇:第3篇 衡平無死 よみ(新仮名遣い):こうへいむし
章:第12章 盲縞 よみ(新仮名遣い):めくらじま 通し章番号:1348
口述日:1923(大正12)年02月09日(旧12月24日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年1月28日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
灰色の暮色に包まれた野も山も静かでさびしい。文助の精霊は、山と山とにはさまれた枯草のぼうぼうと生え茂る細い谷道を、杖を力にとぼとぼと登って行った。
文助はほろ酔い機嫌で鼻歌を歌いながら、ボンヤリとした目の光をたよりに、当てもなく歩いていた。すると傍らの草むらから、盲を狙う強盗という若い男が現れて、文助を止めて持ち物を渡すように迫った。
文助は少しも恐れることなく、男の心は脅威を感じ、戦慄していると見抜いた。男は文助に、にわかに強盗がいやになったから、自分を連れて行ってくれるように頼んだ。文助が断ると、男は文助が世間の人間を誤った信仰に導いて地獄に落としていたことを責めはじめた。
男は、実は自分は地獄から文助を迎えに来た者だと答えた。文助はそんなはずはない、自分は天国に籍があることを前回の幽界旅行で確かめてあるのだ、と先に進んで行く。男は大声に笑って文助の地獄行きを叫んでいる。
文助が振り返ると、若い男は赤らが顔に耳まで裂けた大きな口を開けている。文助は惟神霊幸倍坐世を幾回も繰り返しながら、山と山の間の谷道を一目散に進んで行った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-11-23 15:51:29 文字数:2230 OBC :rm5212
愛善世界社版:171頁 八幡書店版:第9輯 439頁 修補版: 校定版:179頁 普及版:72頁 初版: ページ備考:
001 灰白(くわいはく)の暮色(ぼしよく)に包(つつ)まれた野(の)も山(やま)も凡(すべ)ては静(しづ)かで淋(さび)しい。002山(やま)と山(やま)とに挟(はさ)まれた枯草(かれくさ)のぼうぼうと生(は)え茂(しげ)る細(ほそ)い谷路(たにみち)を、003杖(つゑ)を力(ちから)にトボトボと爪先上(つまさきあ)がりに登(のぼ)り行(ゆ)く一人(ひとり)の盲者(まうじや)がある。004これは小北山(こぎたやま)の受付(うけつけ)にゐた文助(ぶんすけ)の精霊(せいれい)であることはいふまでもない。005文助(ぶんすけ)は微酔(ほろよ)ひ機嫌(きげん)で鼻歌(はなうた)を唄(うた)ひながら、006ボンヤリとした目(め)の光(ひかり)を頼(たよ)りに、007どこを当(あて)ともなく歩(ある)いてゐたのである。008傍(かたはら)の叢(くさむら)にガサガサと音(おと)がしたので、009ハテ何者(なにもの)が飛出(とびだ)すのかと立止(たちど)まつて考(かんが)へてゐた。010疎(うと)い目(め)からよくよくすかして見(み)れば、011労働服(らうどうふく)を着(つ)けた十七八(じふしちはつ)歳(さい)の色(いろ)の黒(くろ)い青年(せいねん)であつた。
012文助(ぶんすけ)『コレお若(わか)い衆(しう)、013どうやら日(ひ)も暮(く)れかかつたさうだが、014お前(まへ)さま一人(ひとり)こんな処(ところ)で何(なに)をして厶(ござ)るのだい』
015青年(せいねん)『俺(おれ)は泥棒(どろばう)をやつてゐるのだ。016此(この)街道(かいだう)は目(め)の悪(わる)い奴(やつ)ばかりが通過(つうくわ)する処(ところ)だから、017俺(おれ)の様(やう)な甲斐性(かひしやう)のない泥棒(どろばう)は、018盲(めくら)でないと性(しやう)に合(あ)はぬから、019待(ま)つてゐたのだ』
020文助『ハハハハ、021私(わし)のやうなスカンピンの盲(めくら)に相手(あひて)になつた所(ところ)で、022何(なに)があるものか。023それよりも巨万(きよまん)の金(かね)を有(もつ)て居(ゐ)る盲(めくら)は世界(せかい)に何程(なにほど)あるか知(し)れぬぢやないか。024総理(そうり)大臣(だいじん)でも、025博士(はかせ)でも、026富豪(ふうがう)でも、027大寺(おほでら)の和尚(おせう)でも皆(みな)盲(めくら)だ。028お前(まへ)は黒(くろ)い着物(きもの)を着(き)て居(ゐ)ると思(おも)へば、029盲縞(めくらじま)の被衣(はつぴ)を着(き)たりパツチをはいてるぢやないか、030さうすると矢張(やつぱ)りお前(まへ)も盲(めくら)だな』
031青年『盲(めくら)にも色々(いろいろ)あつて、032其(その)盲(めくら)が又(また)盲(めくら)を騙(だま)す力(ちから)のある奴(やつ)だから、033俺(おれ)たちの盲(めくら)には手(て)に合(あ)はぬのぢや。034お前(まへ)も随分(ずいぶん)世界(せかい)の人間(にんげん)を盲(めくら)にして来(き)た男(をとこ)だが、035世間(せけん)の盲(めくら)に比(くら)べて見(み)ると余程(よほど)くみし易(やす)いとみたから、036ここに待(ま)ち構(かま)へてゐたのだ。037サ、038持物(もちもの)一切(いつさい)を渡(わた)して貰(もら)はうかい』
039文助『ハハハハ、040盲(めくら)滅法界(めつぽふかい)な事(こと)を言(い)ふ奴(やつ)だなア。041斯(か)うみえても、042此(この)文助(ぶんすけ)は心(こころ)の眼(め)が光(ひか)つてゐるぞ。043世間(せけん)の盲(めくら)は肉眼(にくがん)は開(あ)いて居(を)つても心(こころ)の眼(め)は咫尺(しせき)暗澹(あんたん)だが、044此(この)文助(ぶんすけ)は貴様(きさま)の腹(はら)の底(そこ)まで鏡(かがみ)に照(て)らした如(ごと)く分(わか)つてゐるのだ。045無理(むり)無体(むたい)に虚勢(きよせい)を張(は)つて恐喝(きようかつ)しようとしても、046お前(まへ)の心(こころ)は既(すで)に非常(ひじやう)なる脅威(けふゐ)を感(かん)じ、047戦慄(せんりつ)してるぢやないか、048そんなことで盲(めくら)を脅(おびや)かさうなんて、049チツと過分(くわぶん)ぢやないか』
050青年『何(なん)だか、051お前(まへ)に会(あ)うてから、052俺(おれ)も泥棒(どろばう)が厭(いや)になつた。053何卒(どうぞ)、054何処(どこ)へ行(ゆ)くのか知(し)らぬが連(つ)れて行(い)て貰(もら)へまいかな』
055文助『貴様(きさま)の様(やう)な奴(やつ)を道連(みちづ)れにしようものなら、056チツとも安心(あんしん)するこたア出来(でき)やしない。057送(おく)り狼(おほかみ)と道連(みちづ)れのやうなものだ、058何時(いつ)スキがあつたら咬(か)み殺(ころ)すか分(わか)つたものぢやない、059マア御免(ごめん)蒙(かうむ)つとこうかい。060ああ惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)』
061青年『オイ盲爺(めくらぢい)さま、062お前(まへ)は世間(せけん)の人間(にんげん)を盲(めくら)にして、063毎日(まいにち)日日(ひにち)地獄界(ぢごくかい)へ案内(あんない)してゐた癖(くせ)に、064俺(おれ)一人(ひとり)の盲(めくら)を捨(す)てると云(い)ふ事(こと)があるか』
065文助『馬鹿(ばか)を申(まを)せ、066俺(おれ)は皆(みな)人間(にんげん)の霊(れい)を高天原(たかあまはら)へ導(みちび)いてゐたのだ。067それだから此(この)間(あひだ)も一寸(ちよつと)気絶(きぜつ)した時(とき)に天国(てんごく)を覗(のぞ)いて来(き)たのだ。068俺(おれ)の導(みちび)いた連中(れんちう)は皆(みな)高天原(たかあまはら)に安住(あんぢゆう)してゐるのだぞ』
069青年『お前(まへ)、070高天原(たかあまはら)へ行(い)つた時(とき)に其(その)弟子(でし)に、071一人(ひとり)でも出会(であ)つたか、072滅多(めつた)に出会(であ)はせまい、073何奴(どいつ)も此奴(こいつ)も地獄(ぢごく)へ墜(お)ちてるのだからな。074神(かみ)の取次(とりつぎ)皆(みな)盲(めくら)ばかり、075その又(また)盲(めくら)が暗雲(やみくも)で、076世界(せかい)の盲(めくら)の手(て)を引(ひ)いて、077インフエルノ(地獄界(ぢごくかい))の底(そこ)へと連(つ)れまゐる……といふのはお前(まへ)の事(こと)だよ』
078文助『エ、079そんなこたア聞(き)く耳(みみ)持(も)たぬワイ。080何(なん)なと勝手(かつて)にほざいておけ、081ゴマの蠅(はへ)奴(め)が』
082青年『ヨーシ俺(おれ)も天下(てんか)の青年(せいねん)だ。083青年(せいねん)重(かさ)ねて来(きた)らず、084一日(いちじつ)再(ふたたび)晨(あした)なり難(がた)しといふ事(こと)を知(し)つてゐるか、085俺(おれ)は斯(か)う労働服(らうどうふく)を着(き)てゐるやうに見(み)えても赤裸(まつぱだか)だぞ。086それだから青年(せいねん)重(かさ)ねて着足(きた)らずといふのだ。087貴様(きさま)の上着(うはぎ)を一(いち)枚(まい)所望(しよまう)するから、088キツパリと俺(おれ)に渡(わた)せ、089裸(はだか)で道中(だうちう)はならぬからのう』
090文助『丸(まる)で三途(せうづ)の川(かは)の脱衣婆(だついばば)のやうな事(こと)をぬかす奴(やつ)だな。091エエ仕方(しかた)がない、092そんなら一(いち)枚(まい)恵(めぐ)んでやろ。093どうせ此(この)先(さき)で婆(ばば)アに取(と)られるのだから……』
094青年『オイ爺(おやじ)、095お前(まへ)は今(いま)幽界(いうかい)旅行(りよかう)をしてゐるといふ事(こと)を知(し)つてゐるのか』
096文助『きまつた事(こと)だ。097一度(いちど)経験(けいけん)がある。098何時(いつ)の間(ま)にやら体(からだ)がこんな所(ところ)へ来(き)てるのだから、099夢(ゆめ)でなければ幽界(いうかい)旅行(りよかう)だ。100夢(ゆめ)であらうが、101幽界(いうかい)旅行(りよかう)であらうが、102どちらもユーメ旅行(りよかう)だ。103貴様(きさま)は此処(ここ)を現界(げんかい)と思(おも)つてるのか、104オイ黒助(くろすけ)』
105青年『コリヤ黒助(くろすけ)とは何(なん)だ。106これでも中(なか)には赤(あか)い血(ち)が通(かよ)つてるぞ』
107文助『エー、108邪魔(じやま)臭(くさ)い、109羽織(はおり)を一(いち)枚(まい)やつたら、110エエカゲンに帰(かへ)つたらどうだ。111これから長旅(ながたび)をせにやならぬのに、112貴様(きさま)の様(やう)な奴(やつ)がついてゐるとザマが悪(わる)いワ』
113青年『ハハア、114ヤツパリ貴様(きさま)は偽善者(ぎぜんしや)だな。115餓鬼(がき)虫(むし)ケラまで助(たす)けるのが神(かみ)の道(みち)だと、116小北山(こぎたやま)で吐(ほざ)いて居(を)つたが、117とうと、118正体(しやうたい)を現(あら)はしよつたな。119気(き)の毒(どく)ながら、120何(ど)うしてもインフエルノ行(ゆ)きの代物(しろもの)だ、121エツヘヘヘヘ、122実(じつ)は地獄界(ぢごくかい)から貴様(きさま)を迎(むか)へに来(き)たのだぞ』
123文助『ヘン、124何(なに)を吐(ぬか)しよるのだ、125そんな事(こと)に驚(おどろ)く俺(おれ)かい。126俺(おれ)は前回(ぜんくわい)に於(おい)て、127正(まさ)に天国(てんごく)に籍(せき)のある事(こと)をチヤンとつきとめておいたのだ。128そんな事(こと)を云(い)つて強迫(きやうはく)しても、129ゴマの蠅(はへ)の如(ごと)き者(もの)の慣用(くわんよう)手段(しゆだん)に乗(の)るやうなチヤーチヤーぢやないぞ。130勿体(もつたい)なくも大国治立(おほくにはるたちの)尊(みこと)様(さま)の教(をしへ)を伝達(でんたつ)するグレーテスト(最(もつと)も偉大(ゐだい)な)プロバガンディストだ。131燕雀(えんじやく)何(なん)ぞ大鵬(たいほう)の志(こころざし)を知(し)らむや、132そこのけツ』
133と杖(つゑ)を以(もつ)て四辺(あたり)の芝草(しばくさ)をメツタ矢鱈(やたら)にしばき倒(たふ)しながら、134トントンと登(のぼ)り行(ゆ)く。135青年(せいねん)は後姿(うしろすがた)を見送(みおく)つて、
136青年『アハハハハハ阿呆(あはう)阿呆(あはう)、137イヒヒヒヒヒインフエルノ行(ゆ)きの文助(ぶんすけ)爺(おやぢ)、138ウフフフフフうろたへ者(もの)の盲爺(めくらおやぢ)、139エヘヘヘヘヘエクスタシーを知(し)らぬ盲爺(めくらおやぢ)、140オホホホホホお気(き)の毒(どく)さま、141今度(こんど)は地獄(ぢごく)の定紋付(ぢやうもんつき)だ。142お前(まへ)の背中(せなか)を見(み)い、143オツホホホホホ』
144と大声(おほごゑ)に笑(わら)ふ。145文助(ぶんすけ)は後(あと)振返(ふりかへ)つて其(その)青年(せいねん)を見(み)ると、146赤(あか)ら顔(がほ)に耳(みみ)までさけた大(おほ)きな口(くち)をあけ、147舌(した)を五寸(ごすん)ばかりはみ出(だ)して、148厭(いや)らしい面(つら)して腮(あご)をしやくつてゐる。149文助(ぶんすけ)は惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)と幾回(いくくわい)となく繰返(くりかへ)しながら、150山(やま)と山(やま)との谷道(たにみち)を一目散(いちもくさん)に進(すす)んで行(ゆ)く。
151(大正一二・二・九 旧一一・一二・二四 松村真澄録)
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