霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一六章 水車(みづぐるま)〔一三五二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第52巻 真善美愛 卯の巻 篇:第3篇 衡平無死 よみ(新仮名遣い):こうへいむし
章:第16章 水車 よみ(新仮名遣い):みずぐるま 通し章番号:1352
口述日:1923(大正12)年02月09日(旧12月24日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年1月28日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
文助は子供たちを連れて八衢の関所に進もうとしたが、どうしても子供たちの体は石のようになって動くことができなかった。これは、文助が一念悔悟の上は、大神から直接産土の神に命じられて各々霊の安住所へ導かれることになっていたからである。
文助はわが子の側にしばらくなりと居りたかったが、何者かに後ろから押されるようで、次第に子供たちから遠ざかって行き、親子は別れを告げた。
文助は西北に進んで行くと、水車小屋に突き当たった。何か食べ物を乞おうと門口に立つと、中で粉まみれで働いていたのは、自分の父母であった。父母は、自分たちは文助のために天国の団体から下ろされて、賠償的労働に従事しているのだと語った。
母は、文助は多くの人をウラナイ教の教理で地獄に迷わせた罪によって、自分自身も地獄の苦しみを受けなければならないところだった、それを黙って見て居られず、文助や、文助に迷わされた人たちの罪を軽くしたいと、神様にお願いしてここに水車小屋を建てて、我が身を搗き臼にひかれて穢れを落としながら、艱難苦労をしているのだと明かした。
文助は両親に向かって心の底から天津祝詞を奏上し、神に謝罪した。そして自分が水車の苦行をするから、両親やわが子を助けていただきたいと熱涙を流して祈願を凝らした。文助の両親はまた、吾が子や孫が天国に救われるように祈っている。
そこへ大火団が下り来て中から容色端麗なエンゼルが現れた。エンゼルは、文助の父母が子孫を思う真心が通じ、天国へ帰る時が来たと告げ、自分は三五教の初稚姫だと名乗った。そして文助にはまだ現界で為すべき仕事が残っているので、ここで別れて八衢の関所に行かねばならないと言い渡した。
初稚姫は文助の両親を引き連れ、三個の火団となって東南方の空に立ち去った。文助はその姿を見送りながら感謝の涙にくれた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-12-04 08:32:52 OBC :rm5216
愛善世界社版:203頁 八幡書店版:第9輯 451頁 修補版: 校定版:210頁 普及版:89頁 初版: ページ備考:
001 文助(ぶんすけ)(ひさ)(ぶり)()うた二人(ふたり)子供(こども)引連(ひきつ)れて、002八衢(やちまた)関所(せきしよ)(すす)まむとしたが、003()うしても二人(ふたり)子供(こども)(その)(とき)(かぎ)つて(からだ)磐石(ばんじやく)(ごと)くになり、004(うご)(こと)出来(でき)なかつた。005(これ)産土(うぶすな)(かみ)取計(とりはか)らひによつて、006かくなつたのである。007文助(ぶんすけ)一念(いちねん)悔悟(くわいご)(うへ)大神(おほかみ)より直接(ちよくせつ)産土神(うぶすながみ)(つた)へられ、008それより(おのおの)(みたま)安住所(あんぢうしよ)(みちび)かるる(こと)になつてゐるが(ゆゑ)である。009文助(ぶんすけ)(わが)()(そば)(しばら)くなりと()りたかつた。010されど何者(なにもの)にか(うしろ)より()さるる(やう)にあつて、011次第(しだい)々々(しだい)(とほ)ざかり()く。012(わづか)(あと)ふりかへつて(ここ)親子(おやこ)(さん)(にん)(かな)しき(わか)れを()げた。
013 文助(ぶんすけ)(ただ)一人(ひとり)014トボトボ(すすき)()にも()(おそ)れながら、015西北(せいほく)をさして機械(きかい)(てき)(すす)()くと、016ドンと行当(ゆきあた)つたのは水車(すいしや)小屋(ごや)であつた。017(にはか)空腹(くうふく)(かん)じたので、018水車(すいしや)小屋(ごや)立寄(たちよ)つて食物(しよくもつ)()はむと門口(かどぐち)(おとな)へば(あに)(はか)らむや、019自分(じぶん)生前(せいぜん)(つか)へて()実父母(じつふぼ)が、020(こな)まぶれになつて(はたら)いてゐた。021文助(ぶんすけ)(おどろ)いてよくよく(その)(かほ)をすかし()た。022老夫婦(らうふうふ)(また)文助(ぶんすけ)(かほ)(あな)のあく(ほど)(にら)んでゐる。023やや(しば)(たがひ)(くび)をかたげ沈黙(ちんもく)(まく)がおりた。024(この)二人(ふたり)冬助(とうすけ)025おくみと()文助(ぶんすけ)両親(りやうしん)である。026(じふ)(ねん)(ばか)(まへ)現界(げんかい)()つてここに第二(だいに)新生涯(しんしやうがい)()り、027水車(すいしや)小屋(ごや)(あるじ)となつてゐたのである。
028冬助(とうすけ)『お(まへ)(せがれ)文助(ぶんすけ)ぢやないか』
029文助『はい、030左様(さやう)(ござ)ります。031貴方(あなた)はお(とう)さま、032(かあ)さま、033どうしてマア、034こんな(ところ)斯様(かやう)(こと)をして()られますのか。035チツとも合点(がつてん)()きませぬ』
036冬助『ここはお(まへ)()では()()えるか()らぬが、037大変(たいへん)(ところ)だよ。038(まへ)(ため)吾々(われわれ)夫婦(ふうふ)天国(てんごく)団体(だんたい)から(おろ)されて、039賠償(ばいしやう)(てき)労働(らうどう)従事(じゆうじ)してるのだよ』
040文助『ここは水車(すいしや)小屋(ごや)では(ござ)りませぬか。041ヤツパリ霊界(れいかい)(おい)ても現界(げんかい)同様(どうやう)水車(すいしや)小屋(ごや)があるのですかな』
042おくみ『お(まへ)(わか)(とき)から随分(ずいぶん)()(つよ)いヤンチヤ(をとこ)(かみ)(さま)(こと)(すこ)しも(みみ)這入(はい)らず、043(その)天罰(てんばつ)到頭(たうとう)()()み、044種々(いろいろ)雑多(ざつた)()(つく)した揚句(あげく)045しよう(こと)なしに(かみ)(さま)(みち)信仰(しんかう)する(やう)になつたのだ。046(しか)しながら()()のくせは(ひやく)(まで)()つて、047()つて(うま)れた我情(がじやう)我慢(がまん)容易(ようい)(なほ)らず、048ウラナイ(けう)三五教(あななひけう)取次(とりつぎ)をして受付(うけつけ)頑張(ぐわんば)り、049いろいろと脱線(だつせん)(てき)教理(けうり)(つた)へたものだから、050(まへ)(ため)地獄(ぢごく)(まよ)うて()るものは何程(いくら)あるか()れぬ。051そして不思議(ふしぎ)(こと)には、052(まへ)(みちび)いた連中(れんぢう)(みな)(この)(みち)(とほ)るのだ。053(まへ)沢山(たくさん)人間(にんげん)地獄(ぢごく)(みちび)いた(とが)によつて、054地獄(ぢごく)(くる)しみを()けねばならぬ(ところ)だ。055それを(おや)として如何(どう)して(だま)つて()()(こと)出来(でき)ようか。056(おや)となり()(うま)れるのも(みな)(ふか)因縁(いんねん)があつての(こと)だ。057それ(ゆゑ)自分(じぶん)下層(かそう)天国(てんごく)天人(てんにん)団体(だんたい)(くは)へられ夫婦(ふうふ)(たの)しい生活(せいくわつ)(おく)つて()つたが、058(まへ)現界(げんかい)(おい)(かみ)(さま)のお(みち)邪魔(じやま)(いた)して()るがために、059大勢(おほぜい)(もの)地獄(ぢごく)()()き、060()(まご)(いた)るまで中有界(ちううかい)(まよ)うと()(こと)を、061エンゼルから()いたによつて、062せめては()(つみ)(かる)くしてやりたい、063(また)世間(せけん)人間(にんげん)一人(ひとり)でも(たす)けて(わが)子孫(しそん)(つみ)(かる)くしたいと(おも)うて、064(かみ)(さま)にお(ねが)(いた)し、065(この)荒野(あらの)(はら)中央(まんなか)水車(すいしや)小屋(ごや)()てて(この)(とほ)艱難(かんなん)苦労(くらう)をしてるのだ。066ここを(とほ)旅人(たびびと)大抵(たいてい)(にせ)宣伝使(せんでんし)(をしへ)によつて(まよ)うて()るものが(おほ)い。067自分(じぶん)息子(むすこ)(その)一人(ひとり)だから、068何卒(どうぞ)吾々(われわれ)夫婦(ふうふ)犠牲(ぎせい)になつて、069皆様(みなさま)(つみ)(あら)(きよ)め、070天国(てんごく)(のぼ)らし()いと(おも)(かみ)(さま)にお(ねが)ひすれば、071沢山(たくさん)亡者(まうじや)(つみ)(けが)(あか)(など)(われ)()夫婦(ふうふ)(からだ)堆高(うづたか)(あつ)まり(きた)り、072どうしても()ちないので、073夫婦(ふうふ)(たがひ)搗臼(つきうす)(なか)(からだ)(しづ)め、074地獄(ぢごく)以上(いじやう)(くるし)みをして皆様(みなさま)のために(みたま)(みが)いて()るのだ』
075とばかりワツと()()す。076文助(ぶんすけ)父母(ふぼ)(おん)何処(どこ)(まで)(かぎ)りなきを感謝(かんしや)し、077(ただ)両手(りやうて)(あは)して()きじやくりするのみであつた。
078 文助(ぶんすけ)水車(すいしや)小屋(ごや)(なか)(はい)つて()れば(おほ)きな(ふた)つのつぼがあつて、079そこには縦柱(たてばしら)(きね)二本(にほん)(たがひ)(うす)()いてゐる。080ここは両親(りやうしん)()はる()はる(うす)(なか)這入(はい)つて(この)柱杵(はしらぎね)(からだ)(あか)()(おと)される修行場(しうぎやうば)である。081(こめ)(むぎ)()水車(すゐしや)とは余程(よほど)(おもむき)(かは)つてゐる。082(しか)しながら、083トントンと臼搗(うすつ)きする(ごと)何処(どこ)ともなしに(しろ)(こな)()つて二人(ふたり)(からだ)(はひ)(かぶ)つた(やう)になつて()た。084文助(ぶんすけ)両親(りやうしん)()()(かたち)ばかりの(ちひ)さい居間(ゐま)()()め、085両親(りやうしん)(むか)つて(こころ)(そこ)から天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、086(かみ)謝罪(しやざい)した。087そして、
088文助自分(じぶん)両親(りやうしん)(かは)水車(すゐしや)苦業(くげふ)(いた)しますから、089両親(りやうしん)(わが)()(たす)けて(いただ)きたい』
090熱涙(ねつるゐ)(なが)して祈願(きぐわん)()らした。091両親(りやうしん)(また)一生(いつしやう)懸命(けんめい)に、
092両親吾々(われわれ)仮令(たとへ)如何(いか)なる苦労(くらう)(いた)しましても、093(すこ)しも(いと)ひませぬ。094何卒(なにとぞ)(わが)()文助(ぶんすけ)(まご)天国(てんごく)(すく)はれます(やう)に……』
095一心(いつしん)不乱(ふらん)(なみだ)(とも)(いの)つてゐる。096そこへ宙空(ちうくう)(てら)して(この)()(くだ)(きた)大火団(だいくわだん)があつた。097火団(くわだん)(たちま)五色(ごしき)(いろ)(へん)じ、098(その)(なか)より容色(ようしよく)端麗(たんれい)なる美人(びじん)(あら)はれた。099(これ)初稚姫(はつわかひめ)聖霊(せいれい)である。100親子(おやこ)はハツと(かうべ)()げ、
101冬助(いづ)れのエンゼルか(ぞん)じませぬが、102(この)(むさく)るしい冬助(とうすけ)(ところ)()降臨(かうりん)(くだ)さいまして有難(ありがた)(ござ)ります。103()いては如何(いか)なる御用(ごよう)(ござ)りますか、104(うけたま)はり()(ござ)ります』
105初稚姫(わらは)高天原(たかあまはら)霊国(れいごく)よりの(めい)によつて、106只今(ただいま)此処(ここ)(あら)はれたエンゼルで(ござ)ります。107冬助(とうすけ)108おくみの両人(りやうにん)世人(よびと)(おも)(わが)子孫(しそん)(おも)真心(まごころ)(てん)(つう)じ、109子孫(しそん)(つみ)(ゆる)され(いよいよ)もとの天国(てんごく)(かへ)らるる(こと)となりました。110さア()夫婦(ふうふ)殿(どの)111(わらは)()いてお()でなさいませ、112(わらは)三五教(あななひけう)初稚姫(はつわかひめ)(ござ)りますよ』
113おくみ『(なん)とも(まを)()げやうのない有難(ありがた)(こと)(ござ)ります。114(しか)しながら吾々(われわれ)夫婦(ふうふ)如何(いか)なる苦労(くらう)(いた)しましても(すこ)しも(いと)ひませぬ。115何卒(なにとぞ)(せがれ)文助(ぶんすけ)天国(てんごく)(すく)うて(くだ)されば、116吾々(われわれ)(すく)はれたよりも何程(なにほど)有難(ありがた)いか()りませぬ。117何卒(なにとぞ)(その)取計(とりはか)らひを(ねが)()(ぞん)じます』
118初稚姫(その)(ねがひ)(もつと)もなれども、119神界(しんかい)規則(きそく)(うご)かす(こと)出来(でき)ませぬ。120(この)文助(ぶんすけ)殿(どの)はまだ現界(げんかい)(おい)(つく)すべき仕事(しごと)(のこ)つて()りますれば、121(ふたた)八衢(やちまた)関所(せきしよ)まで(おく)り、122それより現界(げんかい)(かへ)さねばならぬ(こと)となつてゐます。123貴方(あなた)(がた)(さき)()つて天国(てんごく)生涯(しやうがい)(おく)り、124子孫(しそん)(のぼ)(きた)るをお()ちなさるが(よろ)しい』
125冬助(とうすけ)(しか)らば(おほ)せに(したが)ひ、126冬助(とうすけ)(とも)(つか)へませう』
127文助(ぶんすけ)有難(ありがた)(ござ)ります。128何分(なにぶん)両親(りやうしん)(よろ)しくお(ねが)ひします。129(わたし)両親(りやうしん)(なら)(この)水車(すいしや)小屋(ごや)修行(しうぎやう)をさして(いただ)きませう』
130初稚姫(かみ)言葉(ことば)二言(にごん)(ござ)らぬ。131貴方(あなた)八衢(やちまた)(むか)つてお(すす)みなさい。132冬助(とうすけ)殿(どの)133おくみ殿(どの)134さア(まゐ)りませう』
135()ふより(はや)(むらさき)(くも)(つつ)み、136三個(さんこ)火団(くわだん)となつて東南方(とうなんぱう)をさして、137宙空(ちうくう)(かす)めて立去(たちさ)(たま)うた。138文助(ぶんすけ)(この)姿(すがた)見送(みおく)つて両手(りやうて)(あは)せ、139感謝(かんしや)(なみだ)にうたれてゐる。
140大正一二・二・九 旧一一・一二・二四 北村隆光録)
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