霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二〇章 険学(けんがく)〔一三五六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第52巻 真善美愛 卯の巻 篇:第4篇 怪妖蟠離 よみ(新仮名遣い):かいようばんり
章:第20章 険学 よみ(新仮名遣い):けんがく 通し章番号:1356
口述日:1923(大正12)年02月09日(旧12月24日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年1月28日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
四人は、妖幻坊の高宮彦の巨大な姿にうち驚き、心に深く神を念じて助けを祈っていた。妖幻坊の高宮彦は四人の素性を並べ立て、ひとつ風が吹けばまた悪道へ逆転するだろうと嘲笑した。
ガリヤはやっきになって、自分の信仰の堅固なことをまくしたて、高宮彦を妖怪変化と疑い、どうやって短期間にここに立派な城郭を建てたのか説明を迫った。
高宮彦は、自分は元は三五教の宣伝使・時置師の杢助だったが、思うところあって斎苑の館を脱退し、ここに君臨しているのだと明かした。そして四人に、ここに休息して実地を見学するよう勧めた。
一同は高宮彦の案に賛成したが、ガリヤは心の内ではうまくだまされたように装って帰順させるか退治しなくてはならない、と考えていた。
妖幻坊は、自分の娘・初稚姫が逗留しているから、会ってくれるように頼んだ。そして、四人の中に初稚姫の婿候補がいるかのように発言し、四人の気を引こうとした。ガリヤは相変わらず高宮彦を警戒していたが、他の三人は、自分こそ初稚姫の婿候補ではないかと騙されてしまった。
美しい城内の庭園をよこぎり、豪華な門をいくつもくぐって玄関口に着いた。七宝で飾られた椅子やテーブルが並べられ、八人の美しい美女が四人の手を一本ずつ取り、居間へ導いた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-12-17 15:58:21 文字数:2879 OBC :rm5220
愛善世界社版:243頁 八幡書店版:第9輯 466頁 修補版: 校定版:252頁 普及版:107頁 初版: ページ備考:
001 四(よ)人(にん)は妖幻坊(えうげんばう)の変化(へんげ)なる高宮彦(たかみやひこ)の巨大(きよだい)な姿(すがた)に内心(ないしん)打驚(うちおどろ)きながら、002心(こころ)に深(ふか)く神(かみ)を念(ねん)じ、003吾(わが)身(み)に危害(きがい)の加(くは)へらるる事(こと)あらば、004速(すみやか)に助(たす)け給(たま)へと祈(いの)つてゐた。005妖幻坊(えうげんばう)はカラカラと打笑(うちわら)ひ、
006妖幻坊『其(その)方(はう)はハルナの都(みやこ)の大黒主(おほくろぬし)が部下(ぶか)、007ランチ、008片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)の側(そば)近(ちか)く仕(つか)へて居(を)つたガリヤ、009ケースであらうがな。010そして二人(ふたり)は初公(はつこう)、011徳公(とくこう)の両人(りやうにん)、012随分(ずいぶん)貴様(きさま)も悪事(あくじ)にかけては抜目(ぬけめ)のない代物(しろもの)だ。013今(いま)は殊勝(しゆしよう)らしく三五(あななひ)の教(をしへ)に帰順(きじゆん)してゐるが、014一(ひと)つ風(かぜ)が吹(ふ)けば、015又(また)もや悪道(あくだう)へ逆転(ぎやくてん)致(いた)す代物(しろもの)だらう。016ても扨(さ)ても意気地(いくぢ)のないヘゲタレ男(をとこ)だなあ、017アハハハハ』
018と嘲弄(てうろう)されてガリヤは躍起(やくき)となり、019両手(りやうて)の拳(こぶし)を握(にぎ)り、020歯(は)ぎしりをしながら、
021ガリヤ『拙者(せつしや)は如何(いか)にもバラモン軍(ぐん)に仕(つか)へて居(を)つたガリヤである。022併(しか)しながら決(けつ)して変心(へんしん)致(いた)す様(やう)な意気地(いくぢ)なしでは厶(ござ)らぬぞ。023誠(まこと)の道(みち)を悟(さと)つた上(うへ)は、024将軍(しやうぐん)よりも城主(じやうしゆ)よりも尊(たふと)いのは宣伝使(せんでんし)だ。025堂々(だうだう)たる大黒主(おほくろぬし)が三軍(さんぐん)を叱咤(しつた)し、026生殺(せいさつ)与奪(よだつ)の権(けん)を握(にぎ)つて世界(せかい)を睥睨(へいげい)し、027ハルナの都(みやこ)に金殿(きんでん)玉楼(ぎよくろう)を構(かま)へ、028城寨(じやうさい)を築(きづ)いて、029堅牢(けんらう)無比(むひ)の鉄壁(てつぺき)と構(かま)へてゐるなれども、030拙者(せつしや)は左様(さやう)なものが何(なん)になるか。031天(てん)に聳(そび)ゆる天主閣(てんしゆかく)や隅櫓(すみやぐら)、032まつた、033大理石(だいりせき)を以(もつ)て畳(たた)み上(あ)げられた王宮(わうきう)、034左様(さやう)なものは今(いま)にメチヤ メチヤになつて了(しま)ふであらう。035そして其(その)跡(あと)は満目(まんもく)荒涼(くわうりやう)たる雑草(ざつさう)の野辺(のべ)と変(へん)じ、036八重葎(やへむぐら)の軒(のき)に茂(しげ)るに任(まか)すのみ、037果敢(はか)なき運命(うんめい)に陥(おちい)るは目(ま)のあたりだ。038其(その)如(ごと)く此(この)高宮城(たかみやじやう)も、039やがては凋落(てうらく)の運命(うんめい)に陥(おちい)るであらう。040高宮彦(たかみやひこ)が何(なん)だ。041曲輪城(まがわじやう)の城主(じやうしゆ)が何(なに)偉(えら)い。042愛善(あいぜん)の徳(とく)と信真(しんしん)の光(ひかり)によつて、043永久(えいきう)不滅(ふめつ)の生命力(せいめいりよく)を有(いう)する信仰(しんかう)其(その)ものより外(ほか)には、044世(よ)の中(なか)に決(けつ)して尊(たふと)きものはない筈(はず)だ。045世(よ)の中(なか)の利巧(りかう)な愚物(ぐぶつ)や俗漢(ぞくかん)が、046畢生(ひつせい)の事業(じげふ)とか、047政権(せいけん)とか、048利益(りえき)とか、049株式(かぶしき)だとか云(い)つてゐるやうな、050十(じふ)年(ねん)もたたずに亡(ほろ)びて了(しま)ふやうなものが何(なん)になるか。051吾々(われわれ)は此(この)真理(しんり)を悟(さと)つたが故(ゆゑ)に、052バラモンの軍籍(ぐんせき)をすてて、053永久(えいきう)不滅(ふめつ)の生命(せいめい)に入(い)るべく信仰(しんかう)の道(みち)を辿(たど)つたのだ。054何(なん)だ高宮彦(たかみやひこ)、055吾々(われわれ)元(もと)バラモン軍(ぐん)の営所(えいしよ)を何時(いつ)の間(ま)にか修繕(しうぜん)致(いた)し、056黙(だま)つて占領(せんりやう)致(いた)すとは不都合(ふつがふ)ぢやないか。057サア、058誰(たれ)にこたへて、059斯様(かやう)な立派(りつぱ)な城廓(じやうくわく)を造(つく)つたのだ。060返答(へんたふ)聞(き)かして貰(もら)はうかい』
061と何時(いつ)の間(ま)にやら恐怖心(きようふしん)は何処(どこ)へか行(い)つて、062腕(うで)を打(う)ち振(ふ)り、063勇気(ゆうき)百倍(ひやくばい)して無性(むしやう)矢鱈(やたら)に喋(しやべ)り出(だ)した。064妖幻坊(えうげんばう)は大口(おほぐち)をあけて高笑(たかわら)ひ、
065妖幻坊『アツハハハハ、066叩(たた)くな叩(たた)くな、067へらず口(ぐち)を叩(たた)いてそれが何(なん)になる。068末(すゑ)の百(ひやく)より今(いま)の五十(ごじふ)、069人間(にんげん)は太(ふと)く短(みじか)く暮(くら)せば可(い)いのだ。070コリヤ其(その)方(はう)共(ども)、071吾(わが)城内(じやうない)に来(きた)つて其(その)荘厳(さうごん)に打(う)たれ、072且(かつ)物質(ぶつしつ)的(てき)方面(はうめん)の如何(いか)に荘厳(さうごん)優美(いうび)にして且(かつ)華美(くわび)なるかを、073チツとは研究(けんきう)したがよからうぞ。074何事(なにごと)も見学(けんがく)の為(ため)だ。075どうだ、076城主(じやうしゆ)が直接(ちよくせつ)に許(ゆる)すといふのだから大丈夫(だいぢやうぶ)だらう』
077ガリヤ『ヤア、078高宮彦(たかみやひこ)とやら、079僅(わづ)か三四(さんし)ケ月(げつ)の間(あひだ)に、080斯様(かやう)な立派(りつぱ)な普請(ふしん)をなさるとは、081ガリヤに取(と)つては不審(ふしん)千万(せんばん)、082合点(がてん)が参(まゐ)らぬで厶(ござ)る。083そして此(この)浮木(うきき)の森(もり)は妖怪(えうくわい)変化(へんげ)出没(しゆつぼつ)し、084行人(かうじん)を苦(くる)しむるや実(じつ)に名状(めいじやう)す可(べか)らざる魔窟(まくつ)である。085斯様(かやう)な処(ところ)に城廓(じやうくわく)を構(かま)へるやうな奴(やつ)は、086只(ただ)の狸(たぬき)ぢやあるまい、087気(き)の利(き)いた化物(ばけもの)はすつ込(こ)む時分(じぶん)だ、088サ、089どいたりどいたり』
090妖幻坊『アハハハハ、091お疑(うたがひ)は御尤(ごもつと)も千万(せんばん)、092拙者(せつしや)は決(けつ)して怪(あや)しき者(もの)では厶(ござ)らぬ。093元(もと)は拙者(せつしや)も三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)なりしが、094思(おも)ふ仔細(しさい)あつて、095斎苑(いそ)の館(やかた)を脱退(だつたい)し、096吾(わが)名(な)を高宮彦(たかみやひこ)と改(あらた)めて、097ここに君臨(くんりん)致(いた)したものだ。098其(その)方(はう)も三五(あななひ)の道(みち)に帰順(きじゆん)した以上(いじやう)は、099一度(いちど)ここへ参拝(さんぱい)致(いた)さねばなるまい。100実(じつ)の所(ところ)は、101某(それがし)は初稚姫(はつわかひめ)の父親(てておや)なる時置師(ときおかし)の杢助(もくすけ)だ。102どうぢや、103一度(いちど)休息(きうそく)して行(ゆ)く気(き)はないか』
104ガリヤ『どうも合点(がつてん)の行(ゆ)かぬ事(こと)になつて来(き)た。105ああ併(しか)しながら此(この)浮木(うきき)の森(もり)は吾々(われわれ)が稍(やや)暫(しば)し住(す)みなれて、106地理(ちり)もよく知(し)り居(を)れば、107有為(うゐ)天変(てんぺん)の世(よ)の有様(ありさま)を目撃(もくげき)するも亦(また)一興(いつきよう)、108然(しか)らば御免(ごめん)を蒙(かうむ)つて拝見(はいけん)さして頂(いただ)かうかな。109各(おのおの)方(がた)如何(いかが)で厶(ござ)るかな』
110とガリヤは三(さん)人(にん)に問(と)ひかけた。111三(さん)人(にん)は無言(むごん)のまま首(くび)を下(さ)げて賛成(さんせい)の意(い)を表(へう)した。
112ガリヤ『然(しか)らば高宮彦(たかみやひこ)殿(どの)、113ガリヤ以下(いか)一同(いちどう)、114御(お)世話(せわ)になりませう』
115と口(くち)ではキツパリ言(い)ひ放(はな)つたものの、116心(こころ)の中(うち)で思(おも)ふやう、117此奴(こいつ)アどうしても妖怪(ばけもの)の親玉(おやだま)に相違(さうゐ)ない。118此方(こちら)の方(はう)から甘(うま)く騙(だま)されたやうな風(ふう)を装(よそほ)ひ、119スツカリ様子(やうす)を考(かんが)へた上(うへ)、120三五教(あななひけう)の神力(しんりき)に帰順(きじゆん)させるか、121但(ただし)は根底(こんてい)から打(う)ち亡(ほろ)ぼしてやるか二(ふた)つに一(ひと)つの思案(しあん)だ。122これも何(なに)かの神(かみ)様(さま)のお仕組(しぐみ)だらう……と心(こころ)にうなづきながら、123さあらぬ体(てい)にて妖幻坊(えうげんばう)の言葉(ことば)に従(したが)ふ事(こと)となつた。124妖幻坊(えうげんばう)は俄(にはか)に顔色(かほいろ)を和(やは)らげ、125言葉(ことば)も叮嚀(ていねい)に、
126妖幻坊『イヤ各(おのおの)方(がた)、127それでこそ三五(あななひ)のピユリタンで厶(ござ)る。128拙者(せつしや)の娘(むすめ)初稚姫(はつわかひめ)も奥(おく)に控(ひか)へ居(を)れば、129一度(いちど)は会(あ)つてやつて下(くだ)さい。130親(おや)の口(くち)から褒(ほ)めるぢやないが、131実(じつ)に天稟(てんりん)の美貌(びばう)だ。132こんな武骨(ぶこつ)な男(をとこ)に、133なぜあんな娘(むすめ)が出来(でき)たかと思(おも)へば実(じつ)に不思議(ふしぎ)だ。134之(これ)も要(えう)するに天(てん)の配剤(はいざい)でせう、135アハハハハ』
136ガリヤ『何(なん)と仰有(おつしや)います、137有名(いうめい)な初稚姫(はつわかひめ)様(さま)がお出(いで)になつて居(を)りますか。138ソリヤ一度(いちど)ガリヤも是非(ぜひ)お目(め)にかかりたいもので厶(ござ)います』
139 ケースは、
140ケース『まだ独身(どくしん)でゐられますかな』
141妖幻坊『ハイ、142独身者(どくしんしや)で厶(ござ)いますよ。143どうか適当(てきたう)な夫(をつと)があれば、144持(も)たせたきものと、145親心(おやごころ)で朝(あさ)な夕(ゆふ)なに祈(いの)つて居(を)りました。146どうやらここに初稚姫(はつわかひめ)の夫(をつと)として恥(はづ)かしからぬ御(お)方(かた)が、147たつた一人(ひとり)交(まじ)つて厶(ござ)るやうだ。148イヤ是(これ)も天(てん)の時節(じせつ)が来(き)たので厶(ござ)らう、149アハハハハ』
150 ガリヤは何(なに)、151此(この)妖怪(ばけもの)奴(め)、152其(その)手(て)は喰(く)はぬぞ……と腹(はら)の中(なか)できめてゐたが、153ケース他(ほか)二人(ふたり)はスツカリ降参(まゐ)つて了(しま)ひ、154そして此(この)中(なか)に初稚姫(はつわかひめ)の婿(むこ)となるべき者(もの)があると云(い)つたのは誰(たれ)であらうか、155ヒヨツトしたら俺(おれ)であるまいかなどと、156互(たがひ)にニコニコしながら跟(つ)いて行(ゆ)く。
157ケース『エーもし城主(じやうしゆ)様(さま)、158初稚姫(はつわかひめ)様(さま)の夫(をつと)になるやうな男(をとこ)は、159ケースの眼(め)からは、160生憎(あいにく)此処(ここ)には居(を)らないぢやありませぬか。161何(いづ)れもへボクチヤ男(をとこ)ばかりですからな。162此(この)中(なか)に一人(ひとり)は、163それでも可成(かな)り及第(きふだい)する奴(やつ)があるかも知(し)れませぬな』
164妖幻坊『どうか其(その)方(かた)を養子(やうし)となし、165ここの城主(じやうしゆ)になつて貰(もら)ひたいものだ』
166ケース『成程(なるほど)、167実(じつ)に立派(りつぱ)なお屋敷(やしき)で厶(ござ)いますな。168私(わたし)が将軍(しやうぐん)の副官(ふくくわん)をして居(を)つた時(とき)にや、169半永久(はんえいきう)的(てき)の建物(たてもの)で、170見(み)る影(かげ)もなき粗末(そまつ)至極(しごく)な陣営(ぢんえい)でしたが、171貴方(あなた)の御(ご)神力(しんりき)は偉(えら)いものです。172少時(しばし)の間(ま)に斯様(かやう)な事(こと)にならうとは、173此(この)ケース、174実(じつ)に夢(ゆめ)にも思(おも)ひませぬでした。175実(じつ)に立派(りつぱ)なもので厶(ござ)いますワ。176私(わたし)此(この)様(やう)な親(おや)が持(も)ちたいもので厶(ござ)います、177オホホホホ』
178妖幻坊『サ、179私(わたし)のやうな男(をとこ)にでも、180子(こ)になつてくれる人(ひと)がありませうかな。181初稚姫(はつわかひめ)が見(み)たら、182さぞ此(この)四(よ)人(にん)の中(うち)の一人(ひとり)に目(め)をつけて喜(よろこ)ぶ事(こと)でせうよ』
183ケース『そして貴方(あなた)のお目(め)に止(と)まつた男(をとこ)といふのは誰(たれ)で厶(ござ)いますか。184ガ印(じるし)ですか、185但(ただし)はハかトかケか、186どちらで厶(ござ)いませうな』
187妖幻坊『ケのつくお方(かた)でせう』
188 ガリヤは、
189ガリヤ『ハハハハ、190ケのつく、191獣(けもの)先生(せんせい)にはよい対象(たいしやう)だ、192ハハハハ、193ヤツパリ霊相応(みたまさうおう)かな』
194と呟(つぶや)いた。195されど妖幻坊(えうげんばう)も他(た)の連中(れんぢう)も、196一生(いつしやう)懸命(けんめい)に話(はなし)に実(み)が入(い)つて、197ガリヤの囁(ささや)きに気(き)が付(つ)かなんだ。
198 漸(やうや)くにして菫(すみれ)、199蒲公英(たんぽぽ)、200紫雲英(げんげ)などの美(うつく)しく咲(さ)きみちた城内(じやうない)の広庭(ひろには)をよぎりながら、201金色(きんしよく)燦爛(さんらん)たる隔(へだ)ての門(もん)を幾(いく)つともなく潜(くぐ)つて玄関口(げんくわんぐち)についた。202ここには七宝(しつぱう)をもつて飾(かざ)られたる卓子(テーブル)や椅子(いす)が並(なら)べられ、203大(おほ)きな瓶(かめ)に芳香(はうかう)馥郁(ふくいく)として咲(さ)きみちたる白梅(しらうめ)の花(はな)が活(い)けられてあつた。204妖幻坊(えうげんばう)の高宮彦(たかみやひこ)は先(さき)に立(た)つて、205玄関(げんくわん)を上(のぼ)り行(ゆ)く。206八(はち)人(にん)の美(うつく)しい美女(びぢよ)は満面(まんめん)に笑(ゑみ)を湛(たた)へて、207四(よ)人(にん)の手(て)を一本(いつぽん)づつ取(と)り、208各(おのおの)居間(ゐま)へ導(みちび)いて行(ゆ)く。
209(大正一二・二・九 旧一一・一二・二四 松村真澄録)
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