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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第52巻(卯の巻)
序文
総説代用
第1篇 鶴首専念
第1章 真と偽
第2章 哀別の歌
第3章 楽屋内
第4章 俄狂言
第5章 森の怪
第6章 梟の笑
第2篇 文明盲者
第7章 玉返志
第8章 巡拝
第9章 黄泉帰
第10章 霊界土産
第11章 千代の菊
第3篇 衡平無死
第12章 盲縞
第13章 黒長姫
第14章 天賊
第15章 千引岩
第16章 水車
第17章 飴屋
第4篇 怪妖蟠離
第18章 臭風
第19章 屁口垂
第20章 険学
第21章 狸妻
第22章 空走
第5篇 洗判無料
第23章 盲動
第24章 応対盗
第25章 恋愛観
第26章 姑根性
第27章 胎蔵
余白歌
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<<< 恋愛観
(B)
(N)
胎蔵 >>>
第二六章
姑根性
(
しうとめこんじやう
)
〔一三六二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第52巻 真善美愛 卯の巻
篇:
第5篇 洗判無料
よみ(新仮名遣い):
せんばんむりょう
章:
第26章 姑根性
よみ(新仮名遣い):
しゅうとめこんじょう
通し章番号:
1362
口述日:
1923(大正12)年02月10日(旧12月25日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年1月28日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
次に文助の娘・お年とその弟が呼び出された。守衛たちは、二人は本来天国に行くところを親の罪によってこれまで中有界で修業をしていただけだ、と告げた。そして審判の必要はないと言い渡すと、門内から天男天女を呼び出した。姉弟は、霊光に包まれると、天人たちと共に光となって立ち去った。
次にひどい悋気の姑婆・お照がやってきた。お照は息子の嫁にずいぶんひどい仕打ちをしたが、それはすべて自分が正しかったと守衛たちの前で弁解した。守衛たちは、お照は地獄行きだと叱りつけて門をくぐらせたが、お照は、嫁の悪事をうったえるのだと息巻いている。
次に腕に入墨をした荒くれ男が引き出された。鳶の弁造と名乗る侠客は、守衛に促されて善悪の秤の上に乗せられた。秤は天国も地獄も指さずに水平になった。守衛は、口は悪いが比較的善人だと弁造を評した。
守衛は、弁造は今の状態では天国へも地獄へもいけないから、中有界でしばらく修業するように言いつけた。弁造は、侠客渡世の自分は地獄行きのはずだが、と冴えない顔をして中有界の荒野へ進んで行った。
それからも、たくさんの精霊が一々姓名を尋ねられ、記憶を繰られ、天国・地獄・中有界とそれぞれ主とするところの愛によって裁かれて行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-12-23 17:59:59
OBC :
rm5226
愛善世界社版:
303頁
八幡書店版:
第9輯 488頁
修補版:
校定版:
311頁
普及版:
137頁
初版:
ページ備考:
001
次
(
つぎ
)
に
呼
(
よ
)
び
出
(
だ
)
されたのはお
年
(
とし
)
であつた。
002
赤
(
あか
)
『お
前
(
まへ
)
は
文助
(
ぶんすけ
)
の
娘
(
むすめ
)
お
年
(
とし
)
であつたなア』
003
お年
『ハイ、
004
左様
(
さやう
)
で
厶
(
ござ
)
います』
005
赤の守衛
『いつ
霊界
(
れいかい
)
へ
来
(
き
)
たのか』
006
お年
『ハイ、
007
三
(
みつ
)
つの
年
(
とし
)
に
現界
(
げんかい
)
を
去
(
さ
)
り、
008
八衢
(
やちまた
)
の
世界
(
せかい
)
に
於
(
おい
)
て
今日
(
けふ
)
まで
成長
(
せいちやう
)
して
参
(
まゐ
)
りました』
009
赤の守衛
『
其処
(
そこ
)
に
居
(
を
)
るのはお
前
(
まへ
)
の
弟
(
おとうと
)
か』
010
お年
『
左様
(
さやう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
011
両人
(
りやうにん
)
とも
萱野
(
かやの
)
ケ
原
(
はら
)
で
淋
(
さび
)
しい
生活
(
せいくわつ
)
を
続
(
つづ
)
けて
居
(
を
)
りました』
012
赤の守衛
『お
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
姉弟
(
きやうだい
)
は
親
(
おや
)
の
罪
(
つみ
)
によつて、
013
天国
(
てんごく
)
に
往
(
ゆ
)
くべき
所
(
ところ
)
を
長
(
なが
)
らく
修業
(
しゆげふ
)
を
致
(
いた
)
したのだから、
014
これから
直
(
すぐ
)
に
天国
(
てんごく
)
にやつてやらう。
015
最早
(
もはや
)
審判廷
(
しんぱんてい
)
に
往
(
ゆ
)
く
必要
(
ひつえう
)
もない。
016
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
るがよい』
017
と
云
(
い
)
ひ
放
(
はな
)
ち
白
(
しろ
)
に
目配
(
めくば
)
せした。
018
白
(
しろ
)
は
直
(
ただち
)
に
門内
(
もんない
)
に
駆
(
か
)
け
込
(
こ
)
んだ。
019
暫
(
しばら
)
くして
得
(
え
)
も
云
(
い
)
はれぬ
麗
(
うるは
)
しい
天男
(
てんなん
)
天女
(
てんによ
)
が、
020
琵琶
(
びは
)
や
胡弓
(
こきう
)
や
縦笛
(
たてぶえ
)
等
(
など
)
をもつて、
021
どこからともなく
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
022
両人
(
りやうにん
)
に
麗
(
うるは
)
しき
衣類
(
いるゐ
)
を
与
(
あた
)
へ、
023
不思議
(
ふしぎ
)
なる
霊光
(
れいくわう
)
に
二人
(
ふたり
)
をパツと
包
(
つつ
)
み、
024
微妙
(
びめう
)
の
音楽
(
おんがく
)
を
奏
(
そう
)
しながら
東
(
ひがし
)
をさして
雲
(
くも
)
に
乗
(
の
)
り、
025
光
(
ひかり
)
となつて
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
つて
仕舞
(
しま
)
つた。
026
二人
(
ふたり
)
の
守衛
(
しゆゑい
)
は
其
(
その
)
姿
(
すがた
)
を
見送
(
みおく
)
つて
合掌
(
がつしやう
)
し、
027
喜
(
よろこ
)
びの
色
(
いろ
)
を
顔
(
かほ
)
に
浮
(
うか
)
べて
居
(
ゐ
)
る。
028
赤
(
あか
)
『いつもかふいふ
精霊
(
せいれい
)
ばかりがやつて
来
(
く
)
ると
気分
(
きぶん
)
がよいのだがなア。
029
高姫
(
たかひめ
)
のやうな
死損
(
しにぞこな
)
ひの
阿婆摺
(
あばず
)
れ
女
(
をんな
)
がやつて
来
(
き
)
ては、
030
サツパリ
関所守
(
せきしよもり
)
も
手古摺
(
てこず
)
らざるを
得
(
え
)
ないワ。
031
それに
又
(
また
)
お
艶
(
つや
)
に
呆助
(
はうすけ
)
、
032
極端
(
きよくたん
)
のデレ
助
(
すけ
)
だから
恋
(
こひ
)
の
奴
(
やつこ
)
となり
果
(
は
)
て、
033
正邪
(
せいじや
)
理非
(
りひ
)
の
弁別
(
べんべつ
)
も
殆
(
ほとん
)
どつかない
迄
(
まで
)
に
恋愛
(
れんあい
)
に
心酔
(
しんすゐ
)
して
居
(
ゐ
)
るのだから、
034
伊吹戸主
(
いぶきどぬしの
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
もさぞお
困
(
こま
)
りなさる
事
(
こと
)
だらうなア』
035
白の守衛
『
本当
(
ほんたう
)
に
困
(
こま
)
つたものですなア。
036
サアこれから
又
(
また
)
、
037
ボツボツ
調
(
しら
)
べねばなりますまい』
038
と
云
(
い
)
ひながら、
039
白
(
しろ
)
は
一番
(
いちばん
)
近
(
ちか
)
くに
居
(
を
)
つた
婆
(
ばば
)
の
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
いて
赤
(
あか
)
の
前
(
まへ
)
に
立
(
た
)
たせた。
040
赤の守衛
『お
前
(
まへ
)
は
柊
(
ひひらぎ
)
村
(
むら
)
のお
照
(
てる
)
ぢやないか、
041
どうして
此処
(
ここ
)
へ
来
(
き
)
たのだ』
042
お照
『ハイよう
聞
(
き
)
いて
下
(
くだ
)
さいませ。
043
私
(
わたし
)
には
天
(
てん
)
にも
地
(
ち
)
にも
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
の
息子
(
むすこ
)
が
厶
(
ござ
)
います。
044
その
息子
(
むすこ
)
は
孝助
(
かうすけ
)
と
云
(
い
)
うて、
045
ほんとうに
孝行
(
かうかう
)
して
呉
(
く
)
れました。
046
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
夫
(
をつと
)
に
離
(
はな
)
れ、
047
長
(
なが
)
い
間
(
あひだ
)
後家
(
ごけ
)
を
立
(
た
)
て
通
(
とほ
)
し、
048
這
(
は
)
へば
立
(
た
)
て、
049
立
(
た
)
てば
歩
(
あゆ
)
めと
親心
(
おやごころ
)
、
050
寝
(
ね
)
ても
起
(
お
)
きても
忘
(
わす
)
れた
暇
(
ひま
)
はなく、
051
一
(
ひと
)
つ
咳
(
せき
)
をしても
肺病
(
はいびやう
)
になつたのぢやないかと
思
(
おも
)
ひ、
052
寝息
(
ねいき
)
が
荒
(
あら
)
くても
心臓病
(
しんざうびやう
)
ぢやないかと、
053
それはそれはえらい
心配
(
しんぱい
)
して
漸
(
やうや
)
く
成人
(
せいじん
)
させ、
054
優
(
やさ
)
しい
女房
(
にようばう
)
をもたせて
老後
(
らうご
)
を
楽
(
たの
)
しまうと
思
(
おも
)
うて
居
(
ゐ
)
ました。
055
処
(
ところ
)
が、
056
私
(
わたし
)
の
姪
(
めい
)
にあたるものにお
清
(
きよ
)
と
云
(
い
)
ふ
娘
(
むすめ
)
がありましたので、
057
それと
娶
(
めあ
)
はせました
所
(
ところ
)
、
058
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
の
間
(
あひだ
)
は
夫婦
(
ふうふ
)
共
(
とも
)
大切
(
たいせつ
)
にして
呉
(
く
)
れましたが、
059
それから
後
(
のち
)
と
云
(
い
)
ふものは
孝助
(
かうすけ
)
の
心
(
こころ
)
がすつかり
変
(
かは
)
り、
060
一
(
いち
)
にもお
清
(
きよ
)
、
061
二
(
に
)
にもお
清
(
きよ
)
と
申
(
まを
)
して、
062
お
母
(
かあ
)
さま
其処
(
そこ
)
に
居
(
を
)
るかとも
云
(
い
)
うて
呉
(
く
)
れませぬ。
063
そして
夜
(
よる
)
になるとこの
老人
(
らうじん
)
を
別
(
べつ
)
に
寝
(
ね
)
かせ、
064
自分
(
じぶん
)
等
(
ら
)
二人
(
ふたり
)
が
抱
(
だ
)
き
合
(
あ
)
つてグツスリ
寝
(
ね
)
て
居
(
ゐ
)
るぢやありませぬか。
065
自分
(
じぶん
)
の
大事
(
だいじ
)
の
息子
(
むすこ
)
をお
清
(
きよ
)
に
取
(
と
)
られる
位
(
くらゐ
)
なら、
066
女房
(
にようばう
)
に
貰
(
もら
)
ふぢやなかつたにと
悔
(
くや
)
んでも
最早
(
もはや
)
追付
(
おつつ
)
きませぬ。
067
そこで
息子
(
むすこ
)
の
孝助
(
かうすけ
)
に、
068
親
(
おや
)
の
気
(
き
)
に
入
(
い
)
らぬ
女房
(
にようばう
)
はトツトと
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
せと
申
(
まを
)
した
所
(
ところ
)
、
069
孝助
(
かうすけ
)
の
云
(
い
)
ひますのには「
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
は
親
(
おや
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
何
(
なん
)
でも
聞
(
き
)
きましたが、
070
お
清
(
きよ
)
は
私
(
わたし
)
の
女房
(
にようばう
)
でお
前
(
まへ
)
さまの
女房
(
にようばう
)
ぢやないから
構
(
かま
)
はいでもよろしい。
071
老
(
お
)
いては
子
(
こ
)
に
従
(
したが
)
へと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
がある。
072
お
前
(
まへ
)
はおとなしうして
遊
(
あそ
)
んで
居
(
を
)
れば、
073
私
(
わたし
)
等
(
ら
)
夫婦
(
ふうふ
)
が
働
(
はたら
)
いてお
前
(
まへ
)
さまを
養
(
やしな
)
ひます」と
云
(
い
)
うて
憎
(
にく
)
い
憎
(
にく
)
い
嫁
(
よめ
)
を
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
さうとも
申
(
まを
)
しませぬ。
074
私
(
わたし
)
が
懐
(
ふところ
)
に
抱
(
だ
)
いて
育
(
そだ
)
てた
孝助
(
かうすけ
)
をお
清
(
きよ
)
に
自由
(
じいう
)
にされて、
075
どうして
私
(
わたし
)
の
顔
(
かほ
)
が
立
(
た
)
ちますか。
076
御
(
ご
)
推量
(
すゐりやう
)
なさつて
下
(
くだ
)
さいませ、
077
アンアンアン』
078
赤の守衛
『ハテ、
079
困
(
こま
)
つたものだなア』
080
お照
『
本当
(
ほんたう
)
に
困
(
こま
)
つたもので
厶
(
ござ
)
いませう。
081
併
(
しか
)
しながら
私
(
わたし
)
の
息子
(
むすこ
)
に
限
(
かぎ
)
つて、
082
あんな
不孝
(
ふかう
)
な
者
(
もの
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませなんだが、
083
何分
(
なにぶん
)
嫁
(
よめ
)
が
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
084
何彼
(
なにか
)
と
悪
(
わる
)
い
知恵
(
ちゑ
)
をつけますので、
085
一人
(
ひとり
)
しかないこの
親
(
おや
)
に
不孝
(
ふかう
)
を
致
(
いた
)
します。
086
それが
残念
(
ざんねん
)
さに
裏
(
うら
)
の
柿
(
かき
)
の
木
(
き
)
で
首
(
くび
)
を
吊
(
つ
)
つてやりました。
087
さうした
所
(
ところ
)
、
088
死
(
し
)
にまんが
悪
(
わる
)
いと
見
(
み
)
えて、
089
矢張
(
やつぱ
)
りこんな
所
(
ところ
)
へ
迷
(
まよ
)
うて
参
(
まゐ
)
りました。
090
死
(
し
)
にたうても
死
(
し
)
なれもせず、
091
本当
(
ほんたう
)
に
因果
(
いんぐわ
)
な
婆
(
ばば
)
で
厶
(
ござ
)
います、
092
オンオンオン』
093
赤の守衛
『お
前
(
まへ
)
の
息子
(
むすこ
)
夫婦
(
ふうふ
)
が
不孝
(
ふかう
)
したと
云
(
い
)
ふのは、
094
一体
(
いつたい
)
何
(
ど
)
ういふ
事
(
こと
)
をしたのだ』
095
お照
『ハイ、
096
親
(
おや
)
の
気
(
き
)
に
入
(
い
)
らぬ
事
(
こと
)
ばかり
致
(
いた
)
します。
097
お
清
(
きよ
)
が
来
(
き
)
てからと
云
(
い
)
ふものは、
098
些
(
ちつと
)
も
私
(
わたし
)
と
寝
(
ね
)
て
呉
(
く
)
れませぬ。
099
それが
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つて
耐
(
たま
)
りませぬ。
100
親
(
おや
)
の
気
(
き
)
に
入
(
い
)
らぬ
事
(
こと
)
をするのは
不孝
(
ふかう
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか』
101
赤の守衛
『そりや
夫婦
(
ふうふ
)
同衾
(
どうきん
)
するのは
当然
(
あたりまへ
)
ぢやないか。
102
何
(
なん
)
でそれが
不孝
(
ふかう
)
に
当
(
あた
)
るのぢや。
103
お
前
(
まへ
)
は
姑根性
(
しうとめこんじやう
)
を
起
(
おこ
)
して
法界
(
ほふかい
)
悋気
(
りんき
)
をして
居
(
ゐ
)
るのだらう』
104
お照
『
滅相
(
めつさう
)
な、
105
なんでそんな
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
しませう。
106
私
(
わたし
)
は
孝助
(
かうすけ
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
案
(
あん
)
じ、
107
夜分
(
やぶん
)
も
寝
(
ね
)
ずに
孝助
(
かうすけ
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
考
(
かんが
)
へて
居
(
を
)
りますれば、
108
お
清
(
きよ
)
の
奴
(
やつ
)
、
109
大事
(
だいじ
)
の
大事
(
だいじ
)
の
息子
(
むすこ
)
をハアハア
云
(
い
)
ふ
目
(
め
)
に
遇
(
あ
)
はせ、
110
虐待
(
いぢ
)
めて
泣
(
な
)
かしますので
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つて
耐
(
たま
)
りませぬ。
111
どうしてあんな
事
(
こと
)
を
親
(
おや
)
が
見
(
み
)
て
居
(
を
)
られませうか、
112
御
(
ご
)
推量
(
すゐりやう
)
下
(
くだ
)
さいませ。
113
私
(
わたし
)
のやうな
不仕合
(
ふしあは
)
せなものはありませぬ。
114
夫
(
をつと
)
には
早
(
はや
)
く
別
(
わか
)
れ、
115
一人
(
ひとり
)
の
子
(
こ
)
に
粗末
(
そまつ
)
にされ、
116
嫁
(
よめ
)
には
情
(
つれ
)
なく
当
(
あた
)
られ、
117
どうして
生
(
い
)
きて
居
(
ゐ
)
られませうかいなア、
118
アンアンアン』
119
赤
(
あか
)
の
守衛
(
しゆゑい
)
は
口
(
くち
)
をへの
字
(
じ
)
に
結
(
むす
)
んだきり、
120
横
(
よこ
)
に
長
(
なが
)
い
帳面
(
ちやうめん
)
を
開
(
ひら
)
いて
見
(
み
)
てニタリと
笑
(
わら
)
ひ、
121
赤の守衛
『これこれお
照
(
てる
)
、
122
お
前
(
まへ
)
は
随分
(
ずいぶん
)
嫁
(
よめ
)
をイヂつたなア』
123
お照
『ハイ、
124
イヂりました。
125
向
(
むか
)
ふの
出
(
で
)
やうが
出
(
で
)
やうで
厶
(
ござ
)
いますもの、
126
姑婆
(
しうとめばば
)
の
針
(
はり
)
いぢりと
申
(
まを
)
して、
127
あまり
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つと、
128
木綿針
(
もめんばり
)
で
嫁
(
よめ
)
の
尻
(
しり
)
をチヨイチヨイと
突
(
つ
)
いてやりました。
129
併
(
しか
)
し、
130
これは
姑
(
しうとめ
)
の
針
(
はり
)
いぢりと
昔
(
むかし
)
から
諺
(
ことわざ
)
にも
残
(
のこ
)
つて
居
(
ゐ
)
る
所
(
ところ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
131
些
(
ちつ
)
と
痛
(
いた
)
い
目
(
め
)
に
遇
(
あ
)
はして
躾
(
しつけ
)
をせねば
家
(
いへ
)
のためになりませぬから』
132
赤の守衛
『その
方
(
はう
)
は
随分
(
ずいぶん
)
悪党
(
あくたう
)
な
婆
(
ばば
)
だ。
133
息子
(
むすこ
)
が
女房
(
にようばう
)
と
親密
(
しんみつ
)
に
暮
(
くら
)
して
居
(
ゐ
)
るのが
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つと
見
(
み
)
えるな』
134
お照
『
些
(
ちつ
)
とは
腹
(
はら
)
も
立
(
た
)
ちませうかい。
135
お
前
(
まへ
)
さまだつて
姑
(
しうと
)
の
身分
(
みぶん
)
になつて
御覧
(
ごらん
)
なさい。
136
お
前
(
まへ
)
さまは
役人
(
やくにん
)
とみえるが、
137
チツとは
老人
(
らうじん
)
の
贔屓
(
ひいき
)
もして、
138
嫁
(
よめ
)
を
叱
(
しか
)
つて
下
(
くだ
)
さつたら
好
(
よ
)
かりさうなものだがなア』
139
赤の守衛
『
嫁
(
よめ
)
には
些
(
ちつと
)
も
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
はない、
140
お
前
(
まへ
)
と
息子
(
むすこ
)
が
悪
(
わる
)
い、
141
これから
一
(
ひと
)
つ
成敗
(
せいばい
)
をしてやらう』
142
お照
『
滅相
(
めつさう
)
な、
143
私
(
わたし
)
の
息子
(
むすこ
)
に
限
(
かぎ
)
つて
悪
(
わる
)
いことは
塵
(
ちり
)
程
(
ほど
)
も
致
(
いた
)
した
覚
(
おぼ
)
えは
厶
(
ござ
)
りませぬ。
144
又
(
また
)
このお
照
(
てる
)
も、
145
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
から
貞節
(
ていせつ
)
を
守
(
まも
)
り、
146
夫
(
をつと
)
の
目
(
め
)
を
盗
(
ぬす
)
んで
男
(
をとこ
)
を
拵
(
こしら
)
へたやうな
事
(
こと
)
もなし、
147
よく
調
(
しら
)
べて
下
(
くだ
)
さいませ』
148
赤の守衛
『お
前
(
まへ
)
はお
清
(
きよ
)
が
朝寝
(
あさね
)
をしたと
申
(
まを
)
して、
149
お
清
(
きよ
)
を
庭
(
には
)
の
土間
(
どま
)
に
坐
(
すわ
)
らせ、
150
戸棚
(
とだな
)
からありたけの
瀬戸物
(
せともの
)
を
出
(
だ
)
し、
151
一口
(
ひとくち
)
小言
(
こごと
)
を
云
(
い
)
つては
庭
(
には
)
に
打
(
う
)
ちつけ、
152
又
(
また
)
一言
(
ひとこと
)
云
(
い
)
つては
打
(
う
)
ちつけ、
153
終
(
つひ
)
には
土瓶
(
どびん
)
、
154
燗徳利
(
かんどくり
)
、
155
火鉢
(
ひばち
)
迄
(
まで
)
なげつけてメチヤ メチヤに
毀
(
こは
)
したぢやないか。
156
お
清
(
きよ
)
が
土間
(
どま
)
に
頭
(
あたま
)
を
下
(
さ
)
げて
謝
(
あやま
)
つて
居
(
ゐ
)
るのに、
157
なぜ
左様
(
さやう
)
な
乱暴
(
らんばう
)
を
致
(
いた
)
したか』
158
お照
『ハイ、
159
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
自分
(
じぶん
)
の
家
(
いへ
)
の
宝
(
たから
)
ですから
割
(
わ
)
りたくはありませぬ。
160
初
(
はじ
)
めの
間
(
あひだ
)
は
欠
(
か
)
けた
茶碗
(
ちやわん
)
や、
161
ニウ
の
入
(
い
)
つた
手塩皿
(
てしほざら
)
を
投
(
な
)
げつけたのです。
162
その
時
(
とき
)
気
(
き
)
の
利
(
き
)
いた
嫁
(
よめ
)
なら
私
(
わたし
)
の
手
(
て
)
に
取
(
と
)
りついて「お
母
(
かあ
)
さま
待
(
ま
)
つて
下
(
くだ
)
さい」と
泣
(
な
)
いて
留
(
と
)
める
所
(
ところ
)
ですのに、
163
あのお
清
(
きよ
)
は
家
(
うち
)
を
思
(
おも
)
はぬ
馬鹿
(
ばか
)
な
女
(
をんな
)
ですから
一
(
ひと
)
つも
留
(
と
)
めはせず、
164
謝
(
あやま
)
つてばかり
居
(
ゐ
)
るので、
165
惜
(
を
)
しいて
叶
(
かな
)
はぬあの
瀬戸物
(
せともの
)
を、
166
つひ
行
(
ゆ
)
きがかり
上
(
じやう
)
、
167
壊
(
こは
)
して
仕舞
(
しま
)
つたのです。
168
本当
(
ほんたう
)
に
惜
(
を
)
しい
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いました。
169
決
(
けつ
)
してこの
婆
(
ばば
)
が
壊
(
こは
)
したのぢやありませぬ、
170
お
清
(
きよ
)
の
奴
(
やつ
)
がむかつかしたのが
原動力
(
げんどうりよく
)
となつて、
171
つひあんな
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
たので
厶
(
ござ
)
います。
172
本当
(
ほんたう
)
に
心得
(
こころえ
)
の
悪
(
わる
)
い
女
(
をんな
)
で
厶
(
ござ
)
います。
173
私
(
わたし
)
を
諫
(
いさ
)
める
事
(
こと
)
はしないで、
174
おしまひには、
175
錦手
(
にしきで
)
の
立派
(
りつぱ
)
な
鉢
(
はち
)
まで
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
て、
176
お
母
(
かあ
)
さま、
177
序
(
ついで
)
にこれも
割
(
わ
)
つて
呉
(
く
)
れと
申
(
まを
)
しますので、
178
エ、
179
割
(
わ
)
つてやらうかと
思
(
おも
)
ひましたが、
180
余
(
あま
)
り
惜
(
を
)
しいので
上等品
(
じやうとうひん
)
だけは
残
(
のこ
)
して
置
(
お
)
きました。
181
そして
首
(
くび
)
を
吊
(
つ
)
る
時
(
とき
)
に
考
(
かんが
)
へたのは、
182
こんな
瀬戸物
(
せともの
)
やお
金
(
かね
)
まで
残
(
のこ
)
して
死
(
し
)
んでも、
183
皆
(
みな
)
あんな
憎
(
にく
)
らしい
嫁
(
よめ
)
のものになるのが
惜
(
を
)
しいから、
184
紙幣
(
しへい
)
は
皆
(
みな
)
燃
(
も
)
やして
仕舞
(
しま
)
ひ、
185
瀬戸物
(
せともの
)
は
皆
(
みな
)
割
(
わ
)
つて
了
(
しま
)
つてやらうと
思
(
おも
)
ひましたが、
186
何
(
なん
)
としても
可愛
(
かあい
)
い
孝助
(
かうすけ
)
が、
187
困
(
こま
)
るだらうと
思
(
おも
)
うて、
188
割
(
わ
)
らずと
置
(
お
)
きました。
189
お
金
(
かね
)
も
臍繰
(
へそくり
)
が
五百
(
ごひやく
)
両
(
りやう
)
ばかりありましたが、
190
この
金
(
かね
)
には
書
(
か
)
き
残
(
のこ
)
して
置
(
お
)
きました。
191
「このお
金
(
かね
)
は
孝助
(
かうすけ
)
が
使
(
つか
)
ふべきもの、
192
お
清
(
きよ
)
は
手
(
て
)
を
触
(
ふ
)
れる
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ない、
193
これをお
清
(
きよ
)
が
使
(
つか
)
ふと
化
(
ば
)
けて
出
(
で
)
る」と
書
(
か
)
いておきましたから、
194
何
(
なん
)
ぼ
悪党
(
あくたう
)
な
嫁
(
よめ
)
でも、
195
こればかりはよう
使
(
つか
)
ひきりますまい、
196
オンオンオン』
197
赤の守衛
『
何
(
なん
)
とまア、
198
業
(
ごふ
)
の
深
(
ふか
)
い
婆
(
ばば
)
だなア。
199
貴様
(
きさま
)
のやうな
悪垂
(
あくた
)
れ
婆
(
ばば
)
はキツと
地獄行
(
ぢごくゆ
)
きだらう。
200
さア、
201
キリキリとこの
門
(
もん
)
を
潜
(
くぐ
)
れ』
202
お照
『お
前
(
まへ
)
さまの
様
(
やう
)
な
没分暁漢
(
わからずや
)
に
云
(
い
)
つた
所
(
ところ
)
で、
203
老人
(
らうじん
)
の
精神
(
せいしん
)
は
分
(
わか
)
りますまい。
204
さア、
205
これから
出
(
で
)
る
所
(
ところ
)
へ
出
(
で
)
て、
206
嫁
(
よめ
)
の
悪事
(
あくじ
)
を
訴
(
うつた
)
へ
仇
(
あだ
)
を
討
(
う
)
たねば
置
(
お
)
きませぬわいなア、
207
南無
(
なむ
)
阿弥陀仏
(
あみだぶつ
)
南無
(
なむ
)
阿弥陀仏
(
あみだぶつ
)
、
208
ああ
腰
(
こし
)
の
痛
(
いた
)
い
事
(
こと
)
だ。
209
ここは
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふお
役所
(
やくしよ
)
だか
知
(
し
)
らないが、
210
こんな
若
(
わか
)
いお
役人
(
やくにん
)
が
何
(
なに
)
を
知
(
し
)
るものか、
211
一
(
いち
)
日
(
にち
)
でも
先
(
さき
)
に
生
(
うま
)
れたら
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
のお
師匠
(
ししやう
)
さまだ。
212
どれどれ ちと
分
(
わか
)
る
人
(
ひと
)
に
会
(
あ
)
うて、
213
この
訳
(
わけ
)
を
聞
(
き
)
いて
貰
(
もら
)
はう。
214
これ
赤白
(
あかしろ
)
の
若
(
わか
)
い
衆
(
しう
)
、
215
偉
(
えら
)
いお
邪魔
(
じやま
)
を
致
(
いた
)
しました。
216
皆
(
みな
)
さま、
217
お
先
(
さき
)
イ、
218
左様
(
さやう
)
なら』
219
と
藜
(
あかざ
)
の
杖
(
つゑ
)
をついて
海老
(
えび
)
のやうに
腰
(
こし
)
を
曲
(
ま
)
げ、
220
禿
(
は
)
げた
頭
(
あたま
)
にお
定目
(
ぢやうもく
)
ばかりの
髪
(
かみ
)
を
後
(
うしろ
)
に
束
(
たば
)
ね、
221
エチエチと
門内
(
もんない
)
さして
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
222
次
(
つぎ
)
に
引
(
ひ
)
き
出
(
だ
)
されたのは、
223
腕
(
うで
)
に
入墨
(
いれずみ
)
をした
荒
(
あら
)
くれ
男
(
をとこ
)
であつた。
224
赤の守衛
『
其
(
その
)
方
(
はう
)
のネームは
何
(
なん
)
と
申
(
まを
)
すか』
225
男(弁造)
『ハイ
俺
(
わつちや
)
ア、
226
鳶
(
とび
)
の
弁造
(
べんざう
)
と
云
(
い
)
つて
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
些
(
ちつと
)
は
男
(
をとこ
)
を
売
(
う
)
つたものでござんす。
227
如何
(
いか
)
なる
揉
(
も
)
め
事
(
ごと
)
が
起
(
おこ
)
つても、
228
此
(
この
)
弁造
(
べんざう
)
さまが
真裸
(
まつぱだか
)
となり、
229
捻鉢巻
(
ねじはちまき
)
をグツと
締
(
し
)
め「まつたまつた」とやつたが
最後
(
さいご
)
、
230
鶴
(
つる
)
の
一声
(
ひとこゑ
)
、
231
何
(
なん
)
でも
彼
(
か
)
でも
水
(
みづ
)
をうつた
如
(
ごと
)
く、
232
一度
(
いちど
)
に
納
(
をさ
)
まると
云
(
い
)
ふ
男達
(
をとこだて
)
でござんす。
233
一体
(
いつたい
)
此処
(
ここ
)
は
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
所
(
ところ
)
で
厶
(
ござ
)
んすか。
234
ヘン、
235
お
前
(
まへ
)
さま
等
(
ら
)
にメモアルを
調
(
しら
)
べらるると
云
(
い
)
ふのは
根
(
ね
)
つから
葉
(
は
)
つから
腑
(
ふ
)
に
落
(
お
)
ちませぬワイ』
236
赤の守衛
『
此処
(
ここ
)
は
八衢
(
やちまた
)
の
関所
(
せきしよ
)
だ。
237
随分
(
ずいぶん
)
お
前
(
まへ
)
も
現世
(
げんせ
)
に
於
(
おい
)
て
乱暴
(
らんばう
)
な
事
(
こと
)
をやつて
来
(
き
)
た
奴
(
やつ
)
だから、
238
この
衡
(
はかり
)
にかかれ。
239
さうして
地獄行
(
ぢごくゆ
)
きの
方
(
はう
)
が
下
(
さが
)
れば
地獄行
(
ぢごくゆ
)
き、
240
天国行
(
てんごくゆ
)
きの
方
(
はう
)
が
下
(
さが
)
れば
天国
(
てんごく
)
にやつてやらう』
241
弁造
『ヤア、
242
有難
(
ありが
)
テエ、
243
地獄
(
ぢごく
)
の
釜
(
かま
)
のどん
底
(
ぞこ
)
でもビクとも
致
(
いた
)
さぬ
某
(
それがし
)
、
244
根
(
ね
)
が
侠客
(
けふかく
)
渡世
(
とせい
)
兼
(
けん
)
鳶
(
とび
)
の
親分
(
おやぶん
)
だから、
245
地獄行
(
ぢごくゆ
)
きが
俺
(
わつち
)
の
性
(
しやう
)
に
合
(
あ
)
つて
居
(
ゐ
)
るでせう。
246
どうか
衡
(
はかり
)
なんか
面倒
(
めんだう
)
くせえ
事
(
こと
)
をせずに、
247
すぐ
地獄
(
ぢごく
)
にやつて
下
(
くだ
)
せえな、
248
天国
(
てんごく
)
なんか
性
(
しやう
)
に
合
(
あ
)
はない、
249
地獄
(
ぢごく
)
には
定
(
さだ
)
めし
喧嘩
(
けんくわ
)
もあるであらう、
250
又
(
また
)
火事
(
くわじ
)
もあるであらう。
251
其
(
その
)
時
(
とき
)
は
鳶
(
とび
)
の
弁造
(
べんざう
)
が
真裸
(
まつぱだか
)
となつて
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
み
仲裁
(
ちうさい
)
をし、
252
甘
(
うま
)
い
酒
(
さけ
)
でも
飲
(
の
)
むに
便利
(
べんり
)
がいい。
253
喧嘩鳶
(
けんくわとび
)
の、
254
グヅ
鳶
(
とび
)
の、
255
グレン
鳶
(
とび
)
と
云
(
い
)
はれて
来
(
き
)
た、
256
チヤキ チヤキの
兄
(
あに
)
イだ』
257
と
胡坐
(
あぐら
)
をかき、
258
侠客
(
けふかく
)
気分
(
きぶん
)
を
極端
(
きよくたん
)
に
発揮
(
はつき
)
して
居
(
ゐ
)
る。
259
赤の守衛
『
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
霊界
(
れいかい
)
の
規則
(
きそく
)
だから、
260
この
衡
(
はかり
)
に
乗
(
の
)
つて
呉
(
く
)
れ、
261
サア
早
(
はや
)
く』
262
とせき
立
(
た
)
てる。
263
弁造
『よし、
264
幡随院
(
ばんずいゐん
)
長兵衛
(
ちやうべゑ
)
は
柳
(
やなぎ
)
の
爼
(
まないた
)
の
上
(
うへ
)
に
坐
(
すわ
)
つて、
265
白鞘組
(
しらさやぐみ
)
から
生
(
い
)
きながら
料理
(
れうり
)
をされた
例
(
ためし
)
もある。
266
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
其
(
その
)
幡随院
(
ばんずいゐん
)
を
理想
(
りさう
)
とするものだ。
267
何
(
なん
)
でも
構
(
かま
)
はぬ
乗
(
の
)
つてやらう。
268
些
(
ちつ
)
と
位
(
ぐらゐ
)
好
(
よ
)
い
事
(
こと
)
があつても、
269
決
(
けつ
)
して
天国
(
てんごく
)
へやつてはいけないぞ』
270
と
業託
(
ごふたく
)
を
云
(
い
)
ひながら
衡
(
はかり
)
にかかつた。
271
衡
(
はかり
)
は
両方
(
りやうはう
)
、
272
水平
(
すいへい
)
になつて、
273
地獄
(
ぢごく
)
の
方
(
はう
)
も
指
(
さ
)
さず、
274
天国
(
てんごく
)
の
方
(
はう
)
も
指
(
さ
)
さず、
275
じつとして
居
(
ゐ
)
る。
276
赤の守衛
『ハハこいつは
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
善人
(
ぜんにん
)
だ。
277
口
(
くち
)
で
悪垂
(
あくた
)
れを
吐
(
ほざ
)
くが、
278
善
(
ぜん
)
が
半分
(
はんぶん
)
、
279
悪
(
あく
)
が
半分
(
はんぶん
)
、
280
マアマアこれなら
今日
(
こんにち
)
の
娑婆
(
しやば
)
では
上等
(
じやうとう
)
の
部
(
ぶ
)
だ。
281
オイ
弁造
(
べんざう
)
、
282
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
ながら
其
(
その
)
方
(
はう
)
の
望
(
のぞ
)
む
地獄
(
ぢごく
)
にやる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬ。
283
さりとて
天国
(
てんごく
)
にもやられず
八衢
(
やちまた
)
人足
(
にんそく
)
だ。
284
まづ
暫
(
しば
)
し
中有界
(
ちううかい
)
で
修業
(
しゆげふ
)
を
致
(
いた
)
したがよからう。
285
決
(
けつ
)
して
地獄行
(
ぢごくゆ
)
きなどを
望
(
のぞ
)
むぢやないぞ。
286
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
審判
(
しんぱん
)
の
必要
(
ひつえう
)
がない。
287
これから
西北
(
せいほく
)
の
方
(
はう
)
をさして
勝手
(
かつて
)
に
行
(
ゆ
)
け。
288
又
(
また
)
其
(
その
)
方
(
はう
)
相当
(
さうたう
)
の
相棒
(
あいぼう
)
が
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
るであらう』
289
弁造
(
べんざう
)
は
梟鳥
(
ふくろどり
)
が
夜食
(
やしよく
)
に
外
(
はづ
)
れたやうな
詰
(
つま
)
らぬ
顔
(
かほ
)
をして、
290
弁造
『エエ
中有界
(
ちううかい
)
なんて
気
(
き
)
がきかない、
291
なぜ
俺
(
おれ
)
を
地獄
(
ぢごく
)
にやらないのかなア』
292
と
呟
(
つぶや
)
きながらノソリノソリと
両腕
(
りやううで
)
を
振
(
ふ
)
り
荒野
(
あらの
)
をさして
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
293
それから
沢山
(
たくさん
)
の
精霊
(
せいれい
)
は
一々
(
いちいち
)
ネームを
訊
(
たづ
)
ねられ、
294
メモアルを
繰
(
く
)
られ、
295
或
(
あるひ
)
は
天国
(
てんごく
)
へ、
296
或
(
あるひ
)
は
中有界
(
ちううかい
)
へ、
297
又
(
また
)
は
地獄
(
ぢごく
)
へと
各
(
おのおの
)
其
(
その
)
所主
(
しよしゆ
)
の
愛
(
あい
)
に
依
(
よ
)
つて
審
(
さば
)
かれて
行
(
ゆ
)
く。
298
(
大正一二・二・一〇
旧一一・一二・二五
加藤明子
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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