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霊界物語
真善美愛(第49~60巻)
第52巻(卯の巻)
序文
総説代用
第1篇 鶴首専念
第1章 真と偽
第2章 哀別の歌
第3章 楽屋内
第4章 俄狂言
第5章 森の怪
第6章 梟の笑
第2篇 文明盲者
第7章 玉返志
第8章 巡拝
第9章 黄泉帰
第10章 霊界土産
第11章 千代の菊
第3篇 衡平無死
第12章 盲縞
第13章 黒長姫
第14章 天賊
第15章 千引岩
第16章 水車
第17章 飴屋
第4篇 怪妖蟠離
第18章 臭風
第19章 屁口垂
第20章 険学
第21章 狸妻
第22章 空走
第5篇 洗判無料
第23章 盲動
第24章 応対盗
第25章 恋愛観
第26章 姑根性
第27章 胎蔵
余白歌
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第52巻(卯の巻)
> 第4篇 怪妖蟠離 > 第22章 空走
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(B)
(N)
盲動 >>>
第二二章
空走
(
くうそう
)
〔一三五八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第52巻 真善美愛 卯の巻
篇:
第4篇 怪妖蟠離
よみ(新仮名遣い):
かいようばんり
章:
第22章 空走
よみ(新仮名遣い):
くうそう
通し章番号:
1358
口述日:
1923(大正12)年02月10日(旧12月25日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年1月28日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
ガリヤはサベル姫の口に血が付いているのを見てとり、耳に喰いつこうとしたときに腕をグッと握った。するとそれは毛だらけの古狸の手であった。ガリヤは前身の力をぐっと籠めて離さず、懐から取り出した細紐で四足を固くくくって天上裏に吊り下げてしまった。
狸の泣き叫ぶ声を聞いて、高宮彦と高宮姫が部屋にやってきた。ガリヤから化け狸の一件を聞いた高宮彦は、これは自分が手料理すると言ってしばられた狸を持ち去った。これはサベル姫に化けていた部下の幻相坊を助けるためであった。
高宮姫は、サベル姫が狸であったことを知らず、ガリヤの話に驚いていた。それからガリヤは、ケースと初公を助けようと密談の間の外にやってきて、壁に耳を当てて様子を探った。室内にいる初稚姫、宮野姫、ケース、初公は、たがいに取り合いに火花を散らしているようであった。
ケースと初公は、狸に化かされてすっかり現を抜かしている。ガリヤはたまらずドアをこじあけて部屋に押し入った。ケースと初は、狸に耳たぶをむしり取られて血みどろになって倒れている。ガリヤは二匹の狸を追いまわし、一匹を抑えたとたんに腕にかぶりつかれた。ガリヤが放したすきに二匹の狸は姿を隠してしまった。
しばらくすると、宣伝歌の声が涼しく聞こえてきた。猛犬の声もする。あたりを見れば、ガリヤは草ぼうぼうの萱野の真ん中に立っていた。ケース、初は血みどろになって呻いている。
宣伝歌の主は初稚姫であった。妖幻坊、幻魔坊、幻相坊らはスマートの勢いにたまらず、曲輪の術で高宮姫を雲に乗せて、東南の天を指して逃げ帰って行った。
竹藪のなかでは、ランチと片彦が蜘蛛の巣だらけになり青い顔をしてふるえていた。徳公は耳たぶをむしられて野原にのびていた。
ガリヤは初稚姫に助けてもらった感謝の意を述べた。ランチと片彦は、徳公を助けてやってきて、初稚姫に危難を救ってもらったことを涙と共に感謝した。
初稚姫は六人によくよく真理を説き諭した。六人は心を取り直し、祠の森を指して進んで行くことになった。初稚姫は六人を別れ、スマートを従え、宣伝歌を歌いながら西南指して進んで行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-12-19 22:00:46
OBC :
rm5222
愛善世界社版:
260頁
八幡書店版:
第9輯 473頁
修補版:
校定版:
269頁
普及版:
116頁
初版:
ページ備考:
001
ガリヤはサベル
姫
(
ひめ
)
の
口許
(
くちもと
)
に
赤
(
あか
)
い
生血
(
いきち
)
がついてゐるのを
見
(
み
)
て、
002
いよいよ
此奴
(
こいつ
)
ア
不思議
(
ふしぎ
)
な
奴
(
やつ
)
と
目
(
め
)
を
注
(
そそ
)
いだ。
003
サベルはガリヤに
睨
(
にら
)
みつけられ、
004
ビリビリと
身慄
(
みぶる
)
ひしながら、
005
俄
(
にはか
)
に
笑
(
わら
)
ひ
声
(
ごゑ
)
、
006
サベル姫
『ホホホホホ、
007
あのマア
男
(
をとこ
)
らしいお
顔
(
かほ
)
わいの、
008
なぜ
其
(
その
)
様
(
やう
)
に
私
(
わたし
)
を
睨
(
にら
)
ましやんすのですか』
009
ガリヤ
『お
前
(
まへ
)
の
口許
(
くちもと
)
に
赤
(
あか
)
い
血
(
ち
)
がついてるので、
010
不思議
(
ふしぎ
)
だと
思
(
おも
)
つて
覗
(
のぞ
)
いたのだ』
011
サベルは
驚
(
おどろ
)
いて、
012
小袖
(
こそで
)
の
袂
(
たもと
)
で
唇
(
くちびる
)
を
拭
(
ふ
)
き、
013
サベル姫
『これは
紅
(
べに
)
をつけましたの、
014
余
(
あま
)
り
慌
(
あわ
)
てたものですから、
015
つひ
流
(
なが
)
れまして、
016
無細工
(
ぶさいく
)
な
所
(
ところ
)
を、
017
貴方
(
あなた
)
に
見付
(
みつ
)
けられたのですよ。
018
どうです、
019
貴方
(
あなた
)
はお
厭
(
いや
)
ですか』
020
ガリヤ
『
厭
(
いや
)
でも
何
(
なん
)
でもありませぬが、
021
私
(
わたし
)
は
人
(
ひと
)
の
耳
(
みみ
)
にかぶりついたり、
022
○
玉
(
だま
)
にキツスするやうな
化女
(
ばけをんな
)
は
嫌
(
いや
)
ですよ。
023
徳
(
とく
)
は
何
(
ど
)
うなりましたか、
024
随分
(
ずいぶん
)
満足
(
まんぞく
)
して
居
(
ゐ
)
るでせうな』
025
サベル姫
『ハイ、
026
徳
(
とく
)
さまは
四
(
よ
)
人
(
にん
)
のお
方
(
かた
)
に
一任
(
いちにん
)
しておきました。
027
私
(
わたし
)
、
028
本当
(
ほんたう
)
にガの
字
(
じ
)
のついた
人
(
ひと
)
が
好
(
す
)
きでたまらないのですよ。
029
ねえ、
030
貴方
(
あなた
)
、
031
余
(
あま
)
り
憎
(
にく
)
うはありますまい』
032
と
云
(
い
)
ひながら、
033
ガリヤの
耳
(
みみ
)
に
喰
(
く
)
ひつかうとした。
034
ガリヤはサベルの
腕
(
うで
)
をグツと
握
(
にぎ
)
つてみれば、
035
象牙
(
ざうげ
)
細工
(
ざいく
)
のやうな
光
(
ひか
)
つた
腕
(
うで
)
と
見
(
み
)
えてゐたのは、
036
毛
(
け
)
だらけの
古狸
(
ふるだぬき
)
の
手
(
て
)
であつた。
037
ガリヤは
全身
(
ぜんしん
)
の
力
(
ちから
)
を
籠
(
こ
)
めてグツと
握
(
にぎ
)
り、
038
チツとも
放
(
はな
)
さぬ。
039
サベルは
忽
(
たちま
)
ち
正体
(
しやうたい
)
を
現
(
あら
)
はし、
040
古狸
(
ふるだぬき
)
となつてヂタバタ
体
(
からだ
)
をもがいてゐる。
041
ガリヤは
直
(
ただち
)
に
懐
(
ふところ
)
より
細紐
(
ほそひも
)
を
取出
(
とりだ
)
し、
042
四
(
よ
)
つ
足
(
あし
)
を
固
(
かた
)
く
括
(
くく
)
つて、
043
天井裏
(
てんじやううら
)
に
吊
(
つ
)
り
下
(
さ
)
げて
了
(
しま
)
つた。
044
そしてケース、
045
初
(
はつ
)
の
両人
(
りやうにん
)
を
此処
(
ここ
)
へ
引寄
(
ひきよ
)
せて、
046
目
(
め
)
を
醒
(
さ
)
ましてやらうとの
考
(
かんが
)
へであつた。
047
狸
(
たぬき
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
悲鳴
(
ひめい
)
をあげて
泣
(
な
)
き
叫
(
さけ
)
ぶ。
048
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
驚
(
おどろ
)
いてやつて
来
(
き
)
たのは、
049
妖幻坊
(
えうげんばう
)
と
高姫
(
たかひめ
)
の
二人
(
ふたり
)
であつた。
050
妖幻
(
えうげん
)
『ヤア、
051
ガリヤさま、
052
コリヤ
何
(
なん
)
ですか、
053
えらいものが
手
(
て
)
に
入
(
い
)
りましたな』
054
ガリヤ
『ハイ、
055
狸汁
(
たぬきじる
)
でも
拵
(
こしら
)
へて
一杯
(
いつぱい
)
やつたら、
056
随分
(
ずいぶん
)
甘
(
うま
)
いことでせう。
057
サベル
姫
(
ひめ
)
なんて、
058
うまく
化
(
ば
)
けよつて、
059
吾々
(
われわれ
)
の
耳
(
みみ
)
を
咬
(
か
)
み
取
(
と
)
らうと
致
(
いた
)
した
曲者
(
くせもの
)
ですよ。
060
ここに
沢山
(
たくさん
)
ゐる
美人
(
びじん
)
は
皆
(
みな
)
狸
(
たぬき
)
ばかりでせう。
061
どの
女
(
をんな
)
もどの
女
(
をんな
)
も、
062
一斉
(
いつせい
)
に
耳
(
みみ
)
が
動
(
うご
)
いてるぢやありませぬか。
063
ヤ、
064
お
前
(
まへ
)
さまも
耳
(
みみ
)
が
動
(
うご
)
きますね』
065
妖幻坊
『アハハハハ、
066
何分
(
なにぶん
)
空気
(
くうき
)
の
動揺
(
どうえう
)
が
烈
(
はげ
)
しい
所
(
ところ
)
ですから、
067
身体
(
しんたい
)
の
末端
(
まつたん
)
が
風
(
かぜ
)
に
揺
(
ゆ
)
られて
動
(
うご
)
くのでせう。
068
併
(
しか
)
しながら
此
(
この
)
狸
(
たぬき
)
は
私
(
わたし
)
が
手料理
(
てれうり
)
致
(
いた
)
しますから、
069
お
任
(
まか
)
せ
下
(
くだ
)
さい』
070
と
云
(
い
)
ひながら
狸
(
たぬき
)
を
下
(
さ
)
げて
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
に
行
(
ゆ
)
かうとする。
071
高宮姫
(
たかみやひめ
)
は
吃驚
(
びつくり
)
して、
072
一言
(
ひとこと
)
も
言
(
い
)
はず……あのサベル
姫
(
ひめ
)
が
狸
(
たぬき
)
であつたか、
073
何
(
なん
)
とマア
油断
(
ゆだん
)
のならぬものだなア……と
秘
(
ひそ
)
かに
舌
(
した
)
を
巻
(
ま
)
いてゐた。
074
高宮彦
(
たかみやひこ
)
は
無理
(
むり
)
無体
(
むたい
)
に
古狸
(
ふるだぬき
)
を
引抱
(
ひつかか
)
へ
自分
(
じぶん
)
の
居間
(
ゐま
)
に
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
した。
075
これは
綱
(
つな
)
を
解
(
ほど
)
いてやつて
自分
(
じぶん
)
の
家来
(
けらい
)
を
助
(
たす
)
ける
為
(
ため
)
である。
076
サベルに
化
(
ば
)
けてゐたのは
幻相坊
(
げんさうばう
)
であつた。
077
それからガリヤはケース、
078
初公
(
はつこう
)
の
密談
(
みつだん
)
の
居間
(
ゐま
)
へ
行
(
い
)
つて
様子
(
やうす
)
を
探
(
さぐ
)
らうと、
079
跫蛩音
(
あしおと
)
を
忍
(
しの
)
ばせ
壁
(
かべ
)
に
耳
(
みみ
)
を
当
(
あ
)
てて
聞
(
き
)
いてゐると、
080
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
男女
(
だんぢよ
)
が
金切声
(
かなきりごゑ
)
を
出
(
だ
)
して、
081
甘
(
あま
)
つたるい
言葉
(
ことば
)
つきで
何
(
なに
)
か
意茶
(
いちや
)
ついてゐるやうである。
082
室内
(
しつない
)
の
四
(
よ
)
人
(
にん
)
はガリヤが
外
(
そと
)
に
立
(
た
)
つて
様子
(
やうす
)
を
聞
(
き
)
いてることは
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らず、
083
現
(
うつつ
)
をぬかして、
084
女
(
をんな
)
の
取合
(
とりあひ
)
、
085
男
(
をとこ
)
の
取合
(
とりあひ
)
に
火花
(
ひばな
)
を
散
(
ち
)
らして
正
(
まさ
)
に
戦
(
たたか
)
ひ
酣
(
たけなは
)
なる
時
(
とき
)
であつた。
086
天下
(
てんか
)
分目
(
わけめ
)
の
関ケ原
(
せきがはら
)
、
087
天王山
(
てんのうざん
)
の
晴戦
(
はれいくさ
)
は
今
(
いま
)
や
瞬間
(
しゆんかん
)
に
迫
(
せま
)
れりといふ
調子
(
てうし
)
で、
088
あらゆるベストを
尽
(
つく
)
し、
089
夢中
(
むちう
)
になつてゐる。
090
初稚姫(実は古狸)
『
初稚姫
(
はつわかひめ
)
のあたえは、
091
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つてもケースさまが
好
(
す
)
きです。
092
そして
初
(
はつ
)
さまもヤツパリ
好
(
す
)
きですワ』
093
ケース
『エヘヘヘヘ、
094
オイ
初公
(
はつこう
)
、
095
どうだ、
096
ヤツパリ、
097
ケースのものだらう。
098
貴様
(
きさま
)
は
宮野姫
(
みやのひめ
)
で
辛抱
(
しんばう
)
せい』
099
初
『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな、
100
俺
(
おれ
)
は
初
(
はつ
)
から
初稚姫
(
はつわかひめ
)
さまにきめてあるのだ。
101
宮野姫
(
みやのひめ
)
さまはお
前
(
まへ
)
のものだよ』
102
ケース
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つてもケースの
妻
(
つま
)
は
初稚姫
(
はつわかひめ
)
さまだよ』
103
宮野姫(実は古狸)
『
私
(
わたし
)
は
誰
(
たれ
)
が
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
104
ケースさまが
好
(
す
)
きですよ。
105
そして
初
(
はつ
)
さまも、
106
ヤツパリ
好
(
す
)
きですワ、
107
宮野
(
みやの
)
は
二人
(
ふたり
)
を
夫
(
をつと
)
に
持
(
も
)
ちますワ』
108
初稚姫(実は古狸)
『
初稚
(
はつわか
)
も
二人
(
ふたり
)
とも
夫
(
をつと
)
に
持
(
も
)
ちますワ』
109
ケース
『
何
(
なん
)
と、
110
色男
(
いろをとこ
)
に
生
(
うま
)
れて
来
(
く
)
ると
苦
(
くる
)
しいものだなア。
111
何
(
なん
)
でこんな
良
(
よ
)
い
男
(
をとこ
)
に、
112
親
(
おや
)
の
奴
(
やつ
)
、
113
生
(
う
)
みやがつたのだらう。
114
チツと
子
(
こ
)
の
迷惑
(
めいわく
)
も
考
(
かんが
)
へて
製造
(
せいざう
)
すると
可
(
い
)
いのだけれどなア。
115
有難
(
ありがた
)
迷惑
(
めいわく
)
だ』
116
と
調子
(
てうし
)
に
乗
(
の
)
りケースは
自惚
(
うぬぼ
)
れてゐる。
117
ガリヤはたまらなくなつて、
118
無理
(
むり
)
にドアを
押
(
お
)
しあけ、
119
飛込
(
とびこ
)
んで
見
(
み
)
ると、
120
ケース、
121
初
(
はつ
)
の
両人
(
りやうにん
)
は、
122
古狸
(
ふるだぬき
)
に
耳
(
みみ
)
たぶをスツカリむしり
取
(
と
)
られ、
123
血
(
ち
)
みどろになつて
倒
(
たふ
)
れてゐる。
124
古狸
(
ふるだぬき
)
は
逃
(
に
)
げ
場
(
ば
)
を
失
(
うしな
)
ひ、
125
鼠
(
ねづみ
)
のやうに
室
(
へや
)
の
隅
(
すみ
)
をクルクルと
駆
(
か
)
け
廻
(
まは
)
る。
126
ガリヤは
漸
(
やうや
)
くにして
一匹
(
いつぴき
)
の
狸
(
たぬき
)
を
押
(
おさ
)
へた
一刹那
(
いつせつな
)
、
127
二
(
に
)
の
腕
(
うで
)
にかぶり
付
(
つ
)
かれ……「アイタタ」と
云
(
い
)
つて
放
(
はな
)
した
途端
(
とたん
)
に、
128
二匹
(
にひき
)
の
古狸
(
ふるだぬき
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
して
了
(
しま
)
つた。
129
暫
(
しばら
)
くすると
宣伝歌
(
せんでんか
)
の
声
(
こゑ
)
が
涼
(
すず
)
しく
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
130
『ウー ワンワン』
131
と
猛犬
(
まうけん
)
の
声
(
こゑ
)
。
132
四辺
(
あたり
)
を
見
(
み
)
れば、
133
ガリヤは
草
(
くさ
)
奔々
(
ばうばう
)
たる
萱野
(
かやの
)
の
真中
(
まんなか
)
に
立
(
た
)
つてゐた。
134
そして、
135
ケース、
136
初
(
はつ
)
の
両人
(
りやうにん
)
は
顔
(
かほ
)
一面
(
いちめん
)
泥
(
どろ
)
まぶれとなり、
137
耳
(
みみ
)
たぶを
半分
(
はんぶん
)
ばかり
咬
(
か
)
み
取
(
と
)
られ、
138
血
(
ち
)
みどろになつて
呻
(
うめ
)
いてゐる。
139
宣伝歌
(
せんでんか
)
の
主
(
ぬし
)
は
真
(
しん
)
の
初稚姫
(
はつわかひめ
)
であつた。
140
そして
愛犬
(
あいけん
)
スマートは
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
駆
(
か
)
け
廻
(
まは
)
り、
141
古狸
(
ふるだぬき
)
を
追
(
お
)
ひ
駆
(
か
)
け、
142
咬
(
か
)
み
殺
(
ころ
)
す
其
(
その
)
勢
(
いきほ
)
ひに、
143
流石
(
さすが
)
の
妖幻坊
(
えうげんばう
)
も
幻魔坊
(
げんまばう
)
、
144
幻相坊
(
げんさうばう
)
もゐたたまらず、
145
曲輪
(
まがわ
)
の
術
(
じゆつ
)
を
以
(
もつ
)
て、
146
高宮姫
(
たかみやひめ
)
を
雲
(
くも
)
に
乗
(
の
)
せ、
147
空中
(
くうちう
)
に
赤茶色
(
あかちやいろ
)
の
太
(
ふと
)
い
尾
(
を
)
をチラチラ
見
(
み
)
せながら、
148
東南
(
とうなん
)
の
天
(
てん
)
を
指
(
さ
)
して
帰
(
かへ
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
149
竹藪
(
たけやぶ
)
の
中
(
なか
)
には
蜘蛛
(
くも
)
の
巣
(
す
)
だらけになつて、
150
ランチ、
151
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
は
青
(
あを
)
い
面
(
つら
)
して
慄
(
ふる
)
うてゐた。
152
徳公
(
とくこう
)
は
耳
(
みみ
)
たぶを
むし
られ、
153
大
(
だい
)
の
字
(
じ
)
になつて、
154
シクシク
原
(
ばら
)
にふん
伸
(
の
)
びて
居
(
ゐ
)
た。
155
初稚姫
(
はつわかひめ
)
はガリヤに
向
(
むか
)
ひ、
156
初稚姫
『
貴方
(
あなた
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
ぢやありませぬか』
157
ガリヤ
『ヤ、
158
もう
面目
(
めんぼく
)
次第
(
しだい
)
も
厶
(
ござ
)
いませぬ。
159
狸
(
たぬき
)
の
巣窟
(
さうくつ
)
と
知
(
し
)
りながら、
160
一
(
ひと
)
つ
査
(
しら
)
べてやらうと
思
(
おも
)
ひ、
161
ここまでやつて
参
(
まゐ
)
り、
162
反対
(
あべこべ
)
にしてやられました。
163
貴女
(
あなた
)
は
真
(
しん
)
の
初稚姫
(
はつわかひめ
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いますか。
164
貴女
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
に
依
(
よ
)
りまして、
165
吾々
(
われわれ
)
一同
(
いちどう
)
の
目
(
め
)
が
醒
(
さ
)
めました。
166
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
います』
167
と
感謝
(
かんしや
)
してゐる。
168
そこへランチ、
169
片彦
(
かたひこ
)
両将軍
(
りやうしやうぐん
)
は
徳公
(
とくこう
)
を
助
(
たす
)
けて
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
170
初稚姫
(
はつわかひめ
)
の
前
(
まへ
)
に
危難
(
きなん
)
を
救
(
すく
)
はれしことを
涙
(
なみだ
)
と
共
(
とも
)
に
感謝
(
かんしや
)
し、
171
これより
心
(
こころ
)
を
取直
(
とりなほ
)
し、
172
祠
(
ほこら
)
の
森
(
もり
)
を
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
くこととなつた。
173
初稚姫
(
はつわかひめ
)
は
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
の
者
(
もの
)
によくよく
真理
(
しんり
)
を
説
(
と
)
き
諭
(
さと
)
し、
174
スマートを
従
(
したが
)
へて、
175
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひながら
西南
(
せいなん
)
を
指
(
さ
)
して
別
(
わか
)
れ
行
(
ゆ
)
く。
176
(
大正一二・二・一〇
旧一一・一二・二五
松村真澄
録)
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