霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二五章 恋愛観(れんあいくわん)〔一三六一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第52巻 真善美愛 卯の巻 篇:第5篇 洗判無料 よみ(新仮名遣い):せんばんむりょう
章:第25章 恋愛観 よみ(新仮名遣い):れんあいかん 通し章番号:1361
口述日:1923(大正12)年02月10日(旧12月25日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年1月28日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
高姫は三人の悪人たちが絞られたのを見て痛快となり、ますます調子に乗って石の上に立ち上がり、大道演説を始め出した。
八衢の赤の守衛は、仕事の邪魔になると、高姫の演説をやめさせようと叱りつけた。高姫は自分は日の出神の生き宮だと赤の守衛を叱りかえした。
赤の守衛はとうとう高姫を縛って木に吊るしてしまった。しかし高姫は伊吹戸主を呼んで来いと怒鳴りたてる始末であった。口の減らない高姫に辟易した守衛たちは、門内に入れておとなしくさせることにした。高姫は得意げに大手を振って門の中に入って行った。
その後は、不倫心中をした男女がやってきて、赤と白の守衛の取り調べに対して、当世風の恋愛論を振りかざして、門内に入って行った。赤と白の守衛は現界の乱れを嘆いた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-12-22 19:03:14 文字数:4206 OBC :rm5225
愛善世界社版:292頁 八幡書店版:第9輯 484頁 修補版: 校定版:300頁 普及版:131頁 初版: ページ備考:
001 高姫(たかひめ)は敬介(けいすけ)、002狂介(きやうすけ)、003悪次郎(あくじらう)の三(さん)人(にん)が手厳(てきび)しくコミ割(わ)られたのを見(み)て痛快(つうくわい)措(お)く能(あた)はず、004益々(ますます)調子(てうし)にのつてロハ台(だい)の上(うへ)に登(のぼ)り、005又(また)もや大道(だいだう)演説(えんぜつ)を始(はじ)め出(だ)した。
006高姫『皆(みな)さま、007あれをお聞(き)きになりましたか。008泡沫(はうまつ)に等(ひと)しき権勢(けんせい)や、009地位(ちゐ)や、010財産(ざいさん)を振(ふ)りまはし、011社会(しやくわい)に於(おい)て乱暴(らんばう)狼藉(ろうぜき)を働(はたら)いた偽善者(ぎぜんしや)の末路(まつろ)は、012此(この)通(とほ)りで厶(ござ)りませうがな。013皆(みな)さまはここを現界(げんかい)と思(おも)うてゐますか。014ここは霊界(れいかい)の八衢(やちまた)、015善悪(ぜんあく)を調(しら)べる所(ところ)ですよ。016お前(まへ)さま等(たち)も常平生(つねへいぜい)から結構(けつこう)な日(ひ)の出神(でのかみ)が現(あら)はれてウラナイの道(みち)を開(ひら)き、017万民(ばんみん)を救(すく)ふべく朝(あさ)な夕(ゆふ)なに口(くち)を酸(す)うしてお導(みちび)き遊(あそ)ばしたのに……ヘン、018あの気違(きちが)ひが何(なに)を吐(ぬか)す、019冥土(めいど)があつて堪(たま)らうか、020地獄(ぢごく)極楽(ごくらく)は此(この)世(よ)に厶(ござ)る……等(など)と高(たか)を括(くく)つて厶(ござ)つたが、021今(いま)三(さん)人(にん)行(い)つた奴(やつ)の様(やう)に、022ここで十分(じふぶん)に膏(あぶら)を搾(しぼ)られ、023吠面(ほえづら)をかわかねばなりませぬぞや。024それだから現界(げんかい)に於(おい)て神(かみ)様(さま)のお話(はなし)をよく聞(き)きなされと云(い)つたのだ。025如何(どう)です、026之(これ)でもお前(まへ)さま等(たち)は此(この)高姫(たかひめ)の演説(えんぜつ)を聞(き)く気(き)はありませぬか。027義理(ぎり)天上(てんじやう)日(ひ)の出神(でのかみ)様(さま)は現界(げんかい)、028幽界(いうかい)、029神界(しんかい)の救主(すくひぬし)で厶(ござ)るぞや。030何程(なにほど)深(ふか)い罪(つみ)があらうとも、031此(この)方(はう)の云(い)ふ事(こと)さへ聞(き)けば、032神直日(かむなほひ)、033大直日(おほなほひ)に見直(みなほ)し聞直(ききなほ)して助(たす)けて上(あ)げるぞや』
034 赤(あか)の守衛(しゆゑい)は高姫(たかひめ)の手(て)をグツと握(にぎ)り、
035赤の守衛『こりや高姫(たかひめ)、036帰(かへ)れといつたら帰(かへ)らぬか。037大変(たいへん)邪魔(じやま)になる。038どうしても聞(き)かねば、039其(その)方(はう)を此(この)儘(まま)地獄(ぢごく)に堕(お)とすが宜(い)いか』
040高姫『ヘン、041よう仰有(おつしや)いますワイ。042何(なん)と云(い)つても神界(しんかい)、043現界(げんかい)、044幽界(いうかい)の救主(すくひぬし)なる義理(ぎり)天上(てんじやう)日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)で厶(ござ)りますぞや。045余(あま)り見違(みちが)ひをして貰(もら)ひますまいカイ。046これこれ皆(みな)さま、047何程(なにほど)怖(こは)い顔(かほ)して此(この)守衛(しゆゑい)が睨(にら)んだ処(ところ)で、048チツとも驚(おどろ)くに及(およ)びませぬよ。049然(しか)し此(この)高姫(たかひめ)の申(まを)す事(こと)が分(わか)らねば駄目(だめ)ですよ。050おい赤(あか)さま、051チツとお前(まへ)も高姫(たかひめ)の云(い)ふ事(こと)を真面目(まじめ)に聞(き)いたら如何(どう)だい』
052 赤(あか)の守衛(しゆゑい)は煩(うる)さくなつたと見(み)え、053高姫(たかひめ)の手(て)をグツと後(うしろ)へまはし、054傍(かたはら)の梧桐(あをぎり)の木(き)に縛(しば)りつけて了(しま)つた。055高姫(たかひめ)は尚(なほ)も屈(くつ)せず、056稍(やや)怒気(どき)を含(ふく)んだ声(こゑ)で、
057高姫『こりや、058罰当(ばちあた)り奴(め)、059三界(さんかい)の救主(すくひぬし)日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)を何(なん)と致(いた)すか。060物(もの)が分(わか)らぬにも程(ほど)があるぞよ。061もう斯(か)うなつて貴様(きさま)の様(やう)な蠅虫(はへむし)に話(はなし)をした処(ところ)が仕方(しかた)がない。062伊吹戸主(いぶきどぬし)を呼(よ)んで来(こ)い。063此(この)高姫(たかひめ)が噛(か)んで啣(くく)める様(やう)に誠(まこと)の道理(だうり)を聞(き)かしてやらう。064さうすればお前(まへ)も初(はじ)めて此(この)生宮(いきみや)の御(ご)神力(しんりき)が分(わか)り目(め)が覚(さ)めるだらう』
065赤の守衛『エー、066仕方(しかた)がない。067白(しろ)さま、068どうか暫(しばら)く門内(もんない)へ突(つ)つこんでおいて下(くだ)さい。069事務(じむ)の邪魔(じやま)になつて仕方(しかた)がありませぬから』
070高姫『オホホホホホ、071出来(でか)した出来(でか)した、072到頭(たうとう)往生(わうじやう)致(いた)したと見(み)え、073杢助(もくすけ)さまの厶(ござ)る門内(もんない)へ入(はい)れと云(い)ひよつたな。074ヤツパリ高姫(たかひめ)さまには敵(かな)ふまいがな、075オホホホホホ』
076白(しろ)『さア高姫(たかひめ)、077縛(いましめ)をほどいてやるから門内(もんない)へ這入(はい)れ』
078高姫『ハイ、079有難(ありがた)う。080順風(じゆんぷう)に帆(ほ)をかけた様(やう)なものだ。081之(これ)を思(おも)へば熱心(ねつしん)と云(い)ふものは偉(えら)いものだな』
082赤(あか)『エー、083グヅグヅ申(まを)さずとトツトと這入(はい)れ』
084高姫『ホホホホ、085這入(はい)りますわいな。086其(その)代(かは)り赤(あか)のお前(まへ)さま等(たち)の都合(つがふ)の悪(わる)い事(こと)が出(で)て来(く)るかも知(し)れませぬぞや。087勿体(もつたい)なくも日(ひ)の出神(でのかみ)の生宮(いきみや)を梧桐(あをぎり)に縛(しば)りつけた大悪(だいあく)は、088伊吹戸主(いぶきどぬし)に会(あ)うたら屹度(きつと)告(つ)げてやるから、089地獄行(ぢごくゆき)は覚悟(かくご)の前(まへ)だらう。090まア喜(よろこ)んで待(ま)つて居(ゐ)なさい。091あの、092まア心配(しんぱい)さうな顔(かほ)ワイノー』
093 白(しろ)は優(やさ)しい顔(かほ)に少(すこ)しく怒(いか)りを帯(お)び声(こゑ)を尖(とが)らして、
094白の守衛『こりや高姫(たかひめ)、095云(い)ふ事(こと)があれば後(あと)で云(い)へ。096さア早(はや)く這入(はい)らないか』
097高姫『ホホホホホ、098青瓢箪(あをぺうたん)に屁(へ)を嗅(か)がしたやうな営養(えいやう)不良(ふりやう)な顔(かほ)をして、099此(この)生宮(いきみや)様(さま)を「高姫(たかひめ)云(い)ひたい事(こと)があるなら後(あと)から云(い)へ」……何(なに)吐(ぬか)すのだ。100チツと身分(みぶん)を考(かんが)へたら如何(どう)だい、101オツホン』
102と女(をんな)に似合(にあ)はず大手(おほて)を振(ふ)り、103大股(おほまた)に歩(ある)いて門内(もんない)に姿(すがた)を隠(かく)した。
104 赤(あか)は男女(だんぢよ)連(づ)れの精霊(せいれい)を手招(てまね)きし住所(ぢゆうしよ)姓名(せいめい)を尋(たづ)ねかけた。
105赤の守衛『其(その)方(はう)は何(なん)と申(まを)す姓名(せいめい)か』
106女(おつや)『ハイ、107私(わたし)はおつやと申(まを)します』
108赤の守衛『其(その)方(はう)は何(なん)と申(まを)すか』
109男(呆助)『ハイ、110私(わたし)は呆助(はうすけ)と申(まを)します』
111赤の守衛『おつや、112其(その)方(はう)は夫(をつと)のある身(み)を以(もつ)て、113此(この)呆助(はうすけ)と私(ひそ)かに情(じやう)を通(つう)じ、114斯様(かやう)な処(ところ)へやつて来(き)たのだな』
115おつや『ハイ、116理想(りさう)の夫(をつと)がないものですから、117已(や)むを得(え)ずこんな破目(はめ)になつたのですよ。118今日(こんにち)の結婚(けつこん)問題(もんだい)は愛(あい)の結婚(けつこん)でなくて財産(ざいさん)結婚(けつこん)、119門閥(もんばつ)結婚(けつこん)、120強迫(きやうはく)結婚(けつこん)、121強姦(がうかん)結婚(けつこん)、122往生(わうじやう)づくめの無理(むり)無体(むたい)の結婚(けつこん)を強(し)ひる世(よ)の中(なか)ですから、123離婚(りこん)沙汰(ざた)が頻々(ひんぴん)として起(おこ)つてゐます。124恋愛(れんあい)を無視(むし)した因襲(いんしふ)的(てき)結婚法(けつこんはふ)は、125斯様(かやう)な問題(もんだい)を惹起(じやくき)する最(もつと)も重大(ぢうだい)なる原因(げんいん)の一(ひと)つとなるのです。126自分(じぶん)が好(す)いて自分(じぶん)が選(えら)んだ結婚(けつこん)関係(くわんけい)ならば、127それが仮令(たとへ)うまく行(ゆ)かなくても自分(じぶん)自身(じしん)に其(その)全責任(ぜんせきにん)があります。128出来得(できう)るだけの努力(どりよく)をして現在(げんざい)の結婚(けつこん)生活(せいくわつ)をもつともつと良(よ)きものにしなければなりませぬ。129最初(さいしよ)から自分(じぶん)以外(いぐわい)の者(もの)が取計(とりはか)らつた結婚(けつこん)と云(い)ふものは、130少(すこ)しも恋愛味(れんあいみ)が存在(そんざい)しませぬ。131何(いづ)れ合(あは)せものは離(はな)れものだと云(い)ふ流儀(りうぎ)ですから、132離婚(りこん)の不祥事(ふしやうじ)や、133他(た)に情夫(じやうふ)を拵(こしら)へて三角(さんかく)生活(せいくわつ)を送(おく)る様(やう)になるのは已(や)むを得(え)ませぬ。134皆(みな)社会(しやくわい)の制度(せいど)が悪(わる)いのだから、135自分(じぶん)の意思(いし)の合(あ)うたもの同志(どうし)が結婚(けつこん)を自由(じいう)にしたと云(い)つて、136お前(まへ)さま等(ら)にゴテゴテ言(い)はれて堪(たま)りますか。137女(をんな)は決(けつ)して男(をとこ)の玩弄物(おもちや)ぢやありませぬ。138ヤツパリ一人前(いちにんまへ)の人格者(じんかくしや)である以上(いじやう)は男子(だんし)の圧迫(あつぱく)や強圧(きやうあつ)は許(ゆる)しませぬ。139それだから無理(むり)結婚(けつこん)の夫(をつと)を捨(す)てて最愛(さいあい)の呆助(はうすけ)さまと隠(かく)れ忍(しの)んで、140耽美(たんび)生活(せいくわつ)を味(あぢ)はつてゐたのです。141之(これ)程(ほど)分(わか)り切(き)つた道理(だうり)を社会(しやくわい)の奴(やつ)は皆(みな)盲目(めくら)だから、142嫉妬(やきもち)半分(はんぶん)に、143あのおつやは不貞腐(ふてくさ)れだの、144ホームの破壊者(はくわいしや)だの、145阿婆摺(あばずれ)女(をんな)の張本(ちやうほん)等(など)と下(くだ)らぬ事(こと)を吐(ほざ)きやがるので煩(うる)さくて堪(たま)らず、146呆助(はうすけ)さまと相談(さうだん)の上(うへ)、147手(て)に手(て)を取(と)つてライオン川(がは)に投身(とうしん)し、148霊界(れいかい)に於(おい)て完全(くわんぜん)なるホームを作(つく)り恋愛味(れんあいみ)を味(あぢ)ははうと思(おも)つてやつて来(き)た賢明(けんめい)な新(あたら)しい女(をんな)ですよ。149コンモンセンスを欠(か)いた社会(しやくわい)の馬鹿(ばか)人間(にんげん)は、150トランセンデンタルな恋愛(れんあい)の権利(けんり)を解(かい)せない馬鹿者(ばかもの)ばかりですから、151サツパリ社会(しやくわい)が嫌(いや)になつて了(しま)つたのです。152想思(さうし)の男女(だんぢよ)をして自由(じいう)に結婚(けつこん)せしむるのがワイズ・ペアレントフツドでせう。153今日(こんにち)の親(おや)と云(い)ふものは吾(わが)子(こ)の恋愛(れんあい)までも抹殺(まつさつ)しようとするのだから堪(たま)らないですよ。154吾々(われわれ)はチヤスティティなラブを以(もつ)て人生(じんせい)の最大(さいだい)要件(えうけん)と認(みと)めてゐるのです。155イケ好(す)かない男子(だんし)と結婚(けつこん)する位(くらゐ)なら、156寧(むし)ろセリバシイ生活(せいくわつ)を送(おく)る方(はう)が何程(なにほど)ましだか知(し)れませぬわ。157お前(まへ)さまも、158未(ま)だ年(とし)がお若(わか)いが屹度(きつと)妻君(さいくん)があるでせう。159気(き)に入(い)つた妻君(さいくん)と添(そ)うてゐらつしやいますかな』
160赤の守衛『こりやこりや女(をんな)、161こんな処(ところ)で変愛論(れんあいろん)をふりかざす処(ところ)ぢやないぞ。162之(これ)から其(その)方(はう)の罪悪(ざいあく)を調(しら)べるのだ』
163おつや『高竹寺(かうちくじ)女学校(ぢよがくかう)の卒業生(そつげふせい)で、164天才(てんさい)の誉(ほまれ)をとつたおつやで厶(ござ)ります。165天才(てんさい)と秀才(しうさい)を兼(か)ねた新(あたら)しい女(をんな)だから、166到底(たうてい)お前(まへ)さまの頭(あたま)へは入(はい)りますまい。167ホーム・ウエーゼリ・ゼヤリーベの分(わか)らない、168世(よ)に遅(おく)れた人間(にんげん)にはテンで話(はなし)にはなりませぬワ。169ラブ・イズ・ベストを以(もつ)て吾々(われわれ)目覚(めざ)めた婦人(ふじん)は大理想(だいりさう)としてゐるのですよ。170何(なん)とまア気(き)の利(き)かない顔(かほ)して居(を)りますね、171ホホホホホ』
172赤の守衛『此(この)頃(ごろ)の女性(ぢよせい)には冥官(めいくわん)も実(じつ)に往生(わうじやう)だ。173何(なに)は兎(と)もあれ、174其(その)方(はう)のメモアルを調(しら)べてやるから此方(こちら)へ来(こ)い。175高等(かうとう)女学校(ぢよがくかう)を高竹寺(かうちくじ)女学校(ぢよがくかう)とは何(なに)を云(い)ふか』
176おつや『妾(わたし)の行状(ぎやうじやう)を調(しら)べるとは、177そいつは面白(おもしろ)い。178純潔(じゆんけつ)な婦人(ふじん)ですよ。179サンナム・ボーナムの行(おこな)ひを尽(つく)して来(き)た才媛(さいえん)ですから、180旧道徳(きうだうとく)の古(ふる)い頭(あたま)で御覧(ごらん)になれば罪悪(ざいあく)かは知(し)りませぬが、181恋(こひ)に目覚(めざ)めたニユー・スピリツトを有(いう)する妾(わたし)の主義(しゆぎ)は、182世(よ)に遅(おく)れた、183失敬(しつけい)ながらお前(まへ)さまでは分(わか)りますまい。184何(なん)と云(い)つても人間(にんげん)の世界(せかい)ではラ・ヴイ・セクシユエルと云(い)つて性的(せいてき)生活(せいくわつ)を以(もつ)て第一(だいいち)とするのですから、185此(この)位(くらゐ)最善(さいぜん)の方法(はうはふ)はありますまい。186無理解(むりかい)な親(おや)に虐(しひた)げられて、187良心(りやうしん)を枉(ま)げ結婚(けつこん)した夫婦(ふうふ)は、188云(い)はば罪悪(ざいあく)の最(さい)なるものと思(おも)ひます。189愛(あい)なき結婚(けつこん)を強(し)ひられて、190朝(あさ)から晩(ばん)まで、191夫婦(ふうふ)がアンタゴーニズムの悲劇(ひげき)を演(えん)じて居(ゐ)るよりも、192想思(さうし)の男女(だんぢよ)が互(たがひ)にホーリ・グレールを傾(かたむ)けて天国(てんごく)の法悦(ほふえつ)に酔(よ)ふのが最(もつと)も賢明(けんめい)な覚(さ)めた婦人(ふじん)のやり方(かた)です。193お前(まへ)さまは到底(たうてい)吾々(われわれ)を審判(しんぱん)するだけの権能(けんのう)はありませぬよ。194何卒(どうぞ)もう此(この)問題(もんだい)には此(この)上(うへ)クエーストして下(くだ)さるな』
195 赤(あか)はあまりの事(こと)に呆(あき)れ果(は)て、196呆助(はうすけ)の方(はう)に言葉(ことば)を向(む)けた。
197赤の守衛『おい呆助(はうすけ)、198お前(まへ)は此(この)おつやを真(しん)から愛(あい)してゐるのか』
199呆助『ハイ、200私(わたくし)はおつやの意見(いけん)に共鳴(きようめい)して居(を)ります。201よく考(かんが)へて御覧(ごらん)なさい。202恋愛(れんあい)と云(い)ふものは至高(しかう)至上(しじやう)のものでせう。203恋愛(れんあい)至上(しじやう)の思想(しさう)があつて茲(ここ)に初(はじ)めて一夫(いつぷ)一婦(いつぷ)の制度(せいど)に的確(てきかく)なる精神(せいしん)的(てき)、204道徳(だうとく)的(てき)、205合理(がふり)的(てき)基礎(きそ)を与(あた)ふる事(こと)が出来(でき)るのです。206それ以外(いぐわい)の一夫(いつぷ)一婦(いつぷ)論(ろん)は、207所謂(いはゆる)偽善説(ぎぜんせつ)に非(あら)ざれば、208単(たん)なる便宜(べんぎ)的(てき)、209因襲(いんしふ)的(てき)、210実理(じつり)的(てき)の御(ご)都合主義(つがふしゆぎ)か、211又(また)は形式(けいしき)主義(しゆぎ)たるものに過(す)ぎませぬ。212斯(かく)の如(ごと)きは少(すくな)くとも人間(にんげん)として第二義(だいにぎ)的(てき)の考察(かうさつ)として取扱(とりあつか)はるべき問題(もんだい)となると思(おも)ひます。213至上(しじやう)至高(しかう)の性的(せいてき)道徳(だうとく)としての恋愛(れんあい)は二(ふた)つの人格(じんかく)の全的(ぜんてき)結合(けつがふ)なるが故(ゆゑ)に、214そこに一夫(いつぷ)一婦(いつぷ)の原則(げんそく)が確認(かくにん)されたとすれば、215必然(ひつぜん)的(てき)に之(これ)と相即(さうそく)不離(ふり)の関係(くわんけい)をなして生(しやう)ずるものは所謂(いはゆる)貞操(ていさう)観念(くわんねん)でせう。216男女(だんぢよ)が互(たがひ)に貞操(ていさう)を厳守(げんしゆ)し格守(かくしゆ)する事(こと)によつてのみ、217此(この)一夫(いつぷ)一婦(いつぷ)が完全(くわんぜん)に実現(じつげん)せられ得(う)るものです。218故(ゆゑ)に貞操(ていさう)は恋愛(れんあい)の神聖(しんせい)なる擁護者(ようごしや)たると共(とも)に、219又(また)真(しん)の恋愛(れんあい)は必(かなら)ず貞操(ていさう)が伴(ともな)ふものです』
220赤の守衛『随分(ずいぶん)猛烈(まうれつ)な恋愛(れんあい)関係(くわんけい)だのう。221嫉妬(やきもち)や悋気(りんき)が随分(ずいぶん)花(はな)を咲(さ)かしただらうのう』
222呆助『世間(せけん)的(てき)物質(ぶつしつ)的(てき)の欲望(よくばう)に煩(わづら)はされてゐない純真(じゆんしん)の恋愛(れんあい)の場合(ばあひ)に於(おい)ては、223嫉妬(しつと)なるものは必(かなら)ずしも悪徳(あくとく)として非難(ひなん)せらるべきものでなく、224寧(むし)ろ双方(さうはう)の純潔(じゆんけつ)を保(たも)たむとする貞操(ていさう)観念(くわんねん)の副作用(ふくさよう)とも見(み)られるのです。225悋気(りんき)をせない女(をんな)は明(あきら)かに不貞(ふてい)の女(をんな)である場合(ばあひ)が最(もつと)も多(おほ)いものです。226それ故(ゆゑ)吾々(われわれ)は悋気(りんき)もしたり、227イチヤついてもみたり、228低気圧(ていきあつ)が両人(りやうにん)の間(あひだ)に起(おこ)つたりする事(こと)は、229幾度(いくたび)か出現(しゆつげん)しますが、230之(これ)が所謂(いはゆる)貞操(ていさう)観念(くわんねん)の濃厚(のうこう)なる証拠(しようこ)であらうと思(おも)ひます、231エヘヘヘヘヘ』
232赤の守衛『アーア、233サツパリ煙(けむり)に捲(ま)かれて了(しま)つた。234御(ご)両人(りやうにん)、235お目出度(めでた)う。236此(この)先(さき)はどうなるか知(し)りませぬが、237先(ま)づ伊吹戸主(いぶきどぬしの)神(かみ)様(さま)の前(まへ)で諄々(じゆんじゆん)と恋愛(れんあい)神聖論(しんせいろん)でもまくし立(た)てなさるが宜(よろ)しからう。238併(しか)しおつやの夫(をつと)は昨日(さくじつ)ここを通過(つうくわ)したから、239嘸(さぞ)今頃(いまごろ)は伊吹戸主(いぶきどぬしの)神(かみ)の前(まへ)でお前(まへ)等(ら)両人(りやうにん)の現界(げんかい)に於(お)ける一切(いつさい)の行動(かうどう)を陳述(ちんじゆつ)したであらう。240さア早(はや)く通(とほ)りなさい』
241おつや『ハイ、242下(くだ)らぬ事(こと)を申(まを)しまして誠(まこと)に済(す)みませぬ。243併(しか)しながら吾々(われわれ)両人(りやうにん)の結合力(けつがふりよく)は極(きは)めて硬固(かうこ)なもので厶(ござ)りますから、244仮令(たとへ)地獄(ぢごく)の底(そこ)へ落(おと)されても滅多(めつた)に分離(ぶんり)などは致(いた)しませぬワ』
245赤の守衛『エー、246八釜(やかま)しい。247そんな問題(もんだい)は審判廷(しんぱんてい)で喋々(てふてふ)とまくし立(た)てたが宜(よ)からう。248早(はや)く通(とほ)れ』
249と一喝(いつかつ)した。250二人(ふたり)は睦(むつま)じさうに手(て)を曳(ひ)きながら、251いそいそとして門(もん)を潜(くぐ)り入(い)る。
252白の守衛『何(なん)とまア脱線(だつせん)した女(をんな)が来(き)たものだなア。253赤(あか)さま、254之(これ)からチツと方針(はうしん)を変(か)へなくちやなりますまいぞや』
255赤の守衛『如何(いか)にも白(しろ)さま、256非常(ひじやう)に現界(げんかい)には魔風(まかぜ)恋風(こひかぜ)が吹(ふ)き荒(すさ)んでゐると見(み)えますな。257之(これ)では到底(たうてい)社会(しやくわい)の秩序(ちつじよ)は保(たも)たれますまい。258ああ困(こま)つた事(こと)だなア』
259(大正一二・二・一〇 旧一一・一二・二五 北村隆光録)
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