霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一九章 玉野(たまの)の神丘(みをか)〔一八八七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第74巻 天祥地瑞 丑の巻 篇:第2篇 真鶴新国 よみ(新仮名遣い):まなづるしんこく
章:第19章 玉野の神丘 よみ(新仮名遣い):たまののみおか 通し章番号:1887
口述日:1933(昭和8)年10月27日(旧09月9日) 口述場所:水明閣 筆録者:林弥生 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年1月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
一行は、玉野の森の白砂の上を馬に乗って、ようやく玉野比女の館のある丘に着いた。
玉野丘と言われる平坦な高台の聖地である。
顕津男の神が丘のふもとから見上げると、丘の上には紅・白・紫・黄・青の五色の幔幕が張りまわされており、尊い神がご降臨されている様子であった。
顕津男の神は、なるほど、それで玉野比女が出迎えに来られなかったのか、と歌を歌う。後から来た生代比女は、どうやら主の神がご降臨されているらしい、と顕津男の神に歌いかける。後から来た神々は、丘の厳かな様子にいっせいに馬を下りた。
従者神たちが述懐歌を歌っていると、玉野比女が大麻を手に悠然として現れた。玉野比女は、顕津男の神を待ちかねて老いてしまったこと、今まさに主の神がご降臨されて、顕津男の神をお待ちになっていることを告げる。
玉野比女と生代比女は対面する。玉野比女は、生代比女が自分の代わりに御子を身ごもったのは、神の神言によってであったと述懐し、ともに神国を作ろうと呼びかける。
玉野比女に仕える本津真言の神・待合比古の神は、瑞の御霊来着の喜びを歌う。
一方、顕津男の神の従者神たちは、主の神のご降臨をかしこみ、丘のふもとで神言を奏上していた。一行は、大神のご降臨とは知らずに馬で聖地を汚してしまったことを悔い、いったん森の入り口まで戻った。そして清水に身を清めてから徒歩で戻ってくると、もうあくる日の夕方になっていた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:0000-00-00 00:00:00 文字数:3737 OBC :rm7419
愛善世界社版: 八幡書店版:第13輯 242頁 修補版: 校定版:305頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 白梅(しらうめ)の薫(かを)る玉野(たまの)の森(もり)の白砂(はくしや)を、002馬(こま)の蹄(ひづめ)に踏(ふ)みなづみながら、003老松(らうしよう)の蔭(かげ)を潜(くぐ)りて、004漸(やうや)く玉野(たまの)比女(ひめ)の神(かみ)の鎮(しづ)まり給(たま)ふ聖所(すがど)に着(つ)き給(たま)ふ。
005 この丘(をか)は、006玉野丘(たまのをか)と称(しよう)し、007南北(なんぼく)一(いち)里(り)、008東西(とうざい)二(に)里(り)にわたる平坦(へいたん)の高地(かうち)にして、009白銀(しろがね)の砂(すな)は、010天津(あまつ)日(ひ)に照(て)りかがよひ、011神苑(みその)を包(つつ)める常磐樹(ときはぎ)は蜿蜒(ゑんえん)として枝(えだ)を交(まじ)へ、012紫微(しび)天界(てんかい)の粋(すゐ)を集(あつ)めたるばかり思(おも)はるる聖所(すがど)なりける。
013 顕津男(あきつを)の神(かみ)は、014山(やま)の麓(ふもと)に駒(こま)乗(の)り降(お)り給(たま)ひ、015丘(をか)の上(うへ)をふりさけ見給(みたま)ふに、016紅(あか)、017白(しろ)、018紫(むらさき)、019黄(き)、020青(あを)の五色(ごしき)の幔幕(まんまく)を張(は)り廻(まは)され、021何事(なにごと)か尊(たふと)き神(かみ)の御(ご)降臨(かうりん)ありし様子(やうす)なり。022茲(ここ)に顕津男(あきつを)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
023『国土(くに)生(う)むと駒(こま)に跨(またが)り来(き)て見(み)れば
024箒目(ははきめ)正(ただ)しく清(きよ)められあり
025何神(なにがみ)の天降(あも)りますかは知(し)らねども
026いと尊(たふと)くぞ思(おも)はれにける
027玉野(たまの)比女(ひめ)わが出(い)で立(た)ちをよそにして
028出迎(でむか)へまさぬは訳(わけ)あるらしも
029ともかくも謹(つつし)みいやまひこの丘(をか)を
030心(こころ)清(きよ)めて登(のぼ)り見(み)むかな』
031 斯(か)く歌(うた)ひ給(たま)ふ折(をり)しも、032駒(こま)を早(はや)めて入(い)り来(きた)りし生代(いくよ)比女(ひめ)の神(かみ)は、033ひらりと駒(こま)を飛(と)び降(お)り、034御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
035『瑞御霊(みづみたま)早(はや)くも此処(ここ)に来(き)ませるよ
036吾(われ)は急(いそ)ぎて後(あと)追(お)ひまつりぬ
037この聖所(すがど)主(ス)の大神(おほかみ)の天降(あも)りますか
038いと厳(おごそ)かに思(おも)はるるなり
039神生(かみう)みの神業(みわざ)に仕(つか)へし吾(われ)にして
040岐美(きみ)に後(おく)れむ事(こと)をはぢけり
041主(ス)の神(かみ)の天降(あも)りますにや吹(ふ)く風(かぜ)も
042かをり妙(たへ)なり白梅(しらうめ)の丘(をか)に
043いざさらば前(さき)に立(た)ちませわれこそは
044御後(みあと)に従(したが)ひ御山(みやま)に登(のぼ)らむ』
045 斯(か)く歌(うた)ひ給(たま)ふ折(をり)しも、046遠見男(とほみを)の神(かみ)一行(いつかう)其(その)他(た)の神々(かみがみ)は、047漸(やうや)く駆(か)けつけ給(たま)ひ、048一斉(いつせい)に駒(こま)を飛(と)び降(お)り、049老松(らうしよう)の枝(えだ)に手綱(たづな)を結(むす)びつけ、050息(いき)を休(やす)ませながら、051遠見男(とほみを)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
052『道(みち)遠(とほ)み白駒(しろこま)かけて漸(やうや)くに
053岐美(きみ)の在所(ありか)をさぐり来(き)にけり
054何神(なにがみ)の天降(あも)りますにやこの聖所(すがど)
055空(そら)吹(ふ)く風(かぜ)も妙(たへ)にかをれり
056真鶴(まなづる)の国(くに)の真秀良場(まほらば)この聖所(すがど)は
057国土生(くにう)み給(たま)ふにふさはしきかも
058此処(ここ)にして国(くに)の御柱(みはしら)たて給(たま)ひ
059真鶴国(まなづるくに)を治(をさ)め給(たま)ふか
060この丘(をか)に繁(しげ)れる常磐(ときは)の松並木(まつなみき)
061すぐれて太(ふと)く栄(さか)えけるかも
062松毎(まつごと)に千歳(ちとせ)の鶴(つる)の巣(す)ぐひたる
063この清丘(すがをか)は神(かみ)の御舎(みあらか)
064主(ス)の神(かみ)の天降(あも)りましたる心地(ここち)して
065登(のぼ)りなづみぬこの清丘(すがをか)を』
066 圓屋(まるや)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
067『如何(いか)ならむ尊(たふと)き神(かみ)の天降(あも)りますか
068わが足(あし)さへも縮(ちぢ)まりにけり
069稜威(いづ)高(たか)き神(かみ)の鎮(しづ)まる神(かみ)の丘(をか)を
070わけは知(し)らねど吾(われ)は畏(かしこ)みぬ
071吹(ふ)く風(かぜ)も穏(おだや)かにしてわが面(おも)を
072清(すが)しく照(て)らす木洩陽(こもれび)のかげ』
073 斯(か)く歌(うた)ひ給(たま)ふ折(をり)しも、074玉野(たまの)比女(ひめ)の神(かみ)は大麻(おほぬさ)を手(て)にしながら、075悠然(いうぜん)として現(あらは)れ給(たま)ひ、076御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
077『岐美(きみ)待(ま)ちて気永(けなが)くなりし玉野(たまの)比女(ひめ)
078常磐(ときは)の松(まつ)と共(とも)に老(お)いぬる
079神生(かみう)みの神業(みわざ)に仕(つか)ふと永年(ながとせ)を
080岐美(きみ)待(ま)ちかねて老(お)いにけらしな
081幾万(いくまん)里(り)の荒野(あらの)をわたり訪(と)ひ来(き)ます
082岐美(きみ)の真心(まごころ)嬉(うれ)しかりける
083幾度(いくたび)か指折(ゆびを)り数(かぞ)へよき月日(つきひ)
084待(ま)つ甲斐(かひ)ありて岐美(きみ)に逢(あ)ふかも
085主(ス)の神(かみ)はいと厳(おごそ)かに天降(あも)りまし
086奥殿(おくでん)深(ふか)く臨(のぞ)ませ給(たま)へり
087いざさらば顕津男(あきつを)の神(かみ)登(のぼ)りませ
088われは御前(みまへ)にたちて仕(つか)へむ』
089 顕津男(あきつを)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
090『千万(せんまん)里(り)の大野(おほの)をわたり公許(きみがり)に
091今日(けふ)は漸(やうや)く訪(たづ)ね来(き)つるも
092苔(こけ)むして神(かみ)さびたてる老松(らうしよう)の
093かげをし見(み)れば公(きみ)の偲(しの)ばゆ
094姫小松(ひめこまつ)はや老松(らうしよう)と栄(さか)ゆまで
095待(ま)たせる公(きみ)をいとしみ思(おも)ふ
096かくならば神生(かみう)み為(な)さむ詮(すべ)もなし
097心(こころ)を合(あは)せて国土(くに)を生(う)まむか
098生代(いくよ)比女(ひめ)吾(われ)を迎(むか)へて貴(うづ)の御子(みこ)
099孕(はら)ませ給(たま)へり公(きみ)に代(かは)りて』
100 生代(いくよ)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
101『音(おと)に聞(き)く玉野(たまの)の比女(ひめ)の御姿(みすがた)の
102尊(たふと)さ清(すが)しさ畏(かしこ)みまつる
103真鶴(まなづる)の山(やま)の精(せい)より生(あ)れ出(い)でで
104吾(われ)御子生(みこう)みの業(わざ)に仕(つか)へし』
105 玉野(たまの)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
106『愛(あい)らしき生代(いくよ)の比女(ひめ)の心(こころ)かな
107心(こころ)安(やす)かれ吾(われ)も祝(いは)はむ
108神業(かむわざ)を果(はた)し給(たま)ひし生代(いくよ)比女(ひめ)
109神(かみ)の神言(みこと)を尊(たふと)しと思(おも)ふ
110今(いま)よりは御腹(みはら)の御子(みこ)を育(はごく)みて
111ともに神国(みくに)を造(つく)らむと思(おも)ふ』
112 生代(いくよ)比女(ひめ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
113『有難(ありがた)し玉野(たまの)の比女(ひめ)の御(おん)言葉(ことば)
114いくよの末(すゑ)まで忘(わす)れざるべし
115国魂(くにたま)の神(かみ)を孕(はら)みし吾(われ)にして
116公(きみ)の言葉(ことば)を有難(ありがた)く思(おも)ふ』
117 顕津男(あきつを)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
118『けなげなる玉野(たまの)の比女(ひめ)の言葉(ことば)かな
119我(われ)はいふべき言(こと)の葉(は)も無(な)し
120ともかくも玉野(たまの)の比女(ひめ)に従(したが)ひて
121この清丘(すがをか)に進(すす)み登(のぼ)らむ』
122 玉野(たまの)比女(ひめ)の神(かみ)の御供(みとも)に仕(つか)へまつり、123此処(ここ)に現(あらは)れ給(たま)ふ本津(もとつ)真言(まこと)の神(かみ)は、124御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
125『吾(われ)こそはウ声(ごゑ)に生(あ)れし本津(もとつ)真言(まこと)の神(かみ)よ
126今日(けふ)嬉(うれ)しくも岐美(きみ)を迎(むか)へし
127比女神(ひめがみ)の待(ま)ちに待(ま)たせる瑞御霊(みづみたま)
128迎(むか)ふる今日(けふ)ぞ嬉(うれ)しかりけり
129はろばろと荒野(あらの)をわたり海(うみ)を越(こ)え
130来(き)ませる岐美(きみ)を尊(たふと)く思(おも)ふ
131主(ス)の神(かみ)の天降(あも)りましける聖所(すがどこ)に
132着(つ)かせる岐美(きみ)は雄々(をを)しき神(かみ)はも
133真鶴(まなづる)の国(くに)のひらけし始(はじ)めより
134かかる目出度(めでた)き例(ためし)はあらじ
135主(ス)の神(かみ)は天降(あも)りましまし瑞御霊(みづみたま)
136此処(ここ)に現(あ)れます今日(けふ)ぞ目出度(めでた)き
137玉野(たまの)比女(ひめ)は岐美(きみ)迎(むか)へむとおぼせども
138大神(おほかみ)のみそば離(はな)れかねつつ
139はろばろと岐美(きみ)の出(い)でまし出迎(でむか)への
140後(おく)れし罪(つみ)を許(ゆる)させ給(たま)へ
141玉野(たまの)比女(ひめ)神(かみ)に代(かは)りて今(いま)此処(ここ)に
142ことわけのぶる本津(もとつ)真言(まこと)の神(かみ)よ』
143 待合(まちあはせ)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
144『朝(あさ)まけて主(ス)の大神(おほかみ)は降(くだ)りまし
145瑞(みづ)の御霊(みたま)は今(いま)現(あ)れましぬ
146愛善(あいぜん)の紫微(しび)天界(てんかい)の真秀良場(まほらば)に
147今日(けふ)は嬉(うれ)しも神々(かみがみ)迎(むか)へて
148いざさらば玉野(たまの)の比女(ひめ)の導(みちび)きに
149登(のぼ)らせ給(たま)へこの清丘(すがをか)へ』
150 顕津男(あきつを)の神(かみ)は、
151『有難(ありがた)し三柱神(みはしらがみ)の出(い)で迎(むか)へ
152厚(あつ)き心(こころ)を我(われ)は嬉(うれ)しむ』
153と歌(うた)ひ給(たま)ひつつ、154しづしづと緩勾配(くわんこうばい)の丘道(をかみち)を登(のぼ)らせ給(たま)へば、155遠見男(とほみを)の神(かみ)以下(いか)の神々(かみがみ)は、156主(ス)の神(かみ)の御(ご)降臨(かうりん)と聞(き)きて畏(かしこ)み、157山(やま)の登(のぼ)り口(くち)に両掌(りやうて)を合(あは)せ神言(かみごと)を奏上(そうじやう)しながら、158時(とき)の到(いた)るを待(ま)たせ給(たま)ひける。
159 遠見男(とほみを)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
160『思(おも)ひきや瑞(みづ)の御霊(みたま)に仕(つか)へ来(き)て
161主(ス)の大神(おほかみ)の天降(あも)りにあふとは
162主(ス)の神(かみ)の天降(あも)り給(たま)ひしこの国(くに)は
163いやますますに栄(さか)えますらむ
164鬱蒼(うつさう)と天(てん)を封(ふう)じてそそり立(た)つ
165常磐樹(ときはぎ)の森(もり)によき事(こと)を聞(き)くも
166かくならば吾(われ)等(ら)は謹(つつし)み畏(かしこ)みて
167主(ス)の大神(おほかみ)に清(きよ)く祈(いの)らむ』
168 圓屋(まるや)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
169『老松(らうしよう)の四方(よも)をかしこみしこの森(もり)に
170かかる目出度(めでた)さ思(おも)はざりけり
171主(ス)の神(かみ)の天降(あも)り給(たま)ひしこの丘(をか)に
172紫(むらさき)の雲(くも)棚引(たなび)きにけり
173五色(いついろ)の幕(まく)を清(すが)しく張(は)り廻(まは)し
174主(ス)の大神(おほかみ)を斎(いつ)きたるらし
175この幕(まく)を越(こ)ゆる術(すべ)なきわが御魂(みたま)
176まだ晴(は)れやらぬ心(こころ)の曇(くも)りに
177智慧(ちゑ)証覚(しようかく)未(いま)だ足(た)らねば主(ス)の神(かみ)に
178まみえむ術(すべ)の無(な)きが悲(かな)しき
179久方(ひさかた)の天(あめ)より降(くだ)りし主(ス)の神(かみ)の
180功(いさを)を拝(をが)む丘(をか)の麓(ふもと)に』
181 多々久美(たたくみ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
182『智慧(ちゑ)証覚(しようかく)よし劣(おと)るとも真心(まごころ)の
183光(ひかり)しあらばのぼり得(う)べけむ
184よしやよしわが真心(まごころ)は足(た)らずとも
185神国(みくに)を思(おも)ふ心(こころ)は尊(たふと)し
186さりながら瑞(みづ)の御霊(みたま)の大神(おほかみ)の
187御許(みゆる)しなくばのぼる道(みち)なし
188玉野(たまの)比女(ひめ)瑞(みづ)の御霊(みたま)と生代(いくよ)比女(ひめ)に
189生言霊(いくことたま)をのべて帰(かへ)らせり
190神々(かみがみ)に一言(ひとこと)だにもかけまさず
191帰(かへ)り給(たま)ひし事(こと)のうたてさ
192真心(まごころ)の光(ひかり)は未(いま)だこの丘(をか)に
193のぼらむ力(ちから)無(な)きぞうたてき』
194 宇礼志穂(うれしほ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
195『うれしくもこの清丘(すがをか)の麓(ふもと)まで
196御供(みとも)に仕(つか)へしわが幸(さち)を思(おも)ふ
197言霊(ことたま)の澄(す)みきりあへぬ吾(われ)にして
198これの聖所(すがど)に来(きた)りしを喜(よろこ)ぶ
199老松(らうしよう)のかげに心(こころ)を清(きよ)めつつ
200この真清水(ましみづ)にうつしてや見(み)む
201あちこちに魂(たま)を洗(あら)へと真清水(ましみづ)は
202湧(わ)き出(い)でにける神(かみ)の功(いさを)に
203幾何(いくばく)の御手洗(みたらし)池(いけ)のある中(なか)を
204ただによぎりし事(こと)のくやしさ
205わが来(きた)る右(みぎ)りと左(ひだり)に湧(わ)き出(い)でし
206清水(しみづ)は魂(たま)を洗(あら)ふ真清水(ましみづ)』
207 美波志(みはし)比古(ひこ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
208『宇礼志穂(うれしほ)の神(かみ)の言霊(ことたま)に照(て)らされて
209われ恥(は)づかしくなりにけらしな
210身(み)を浄(きよ)め魂(たま)を洗(あら)ひて進(すす)むべき
211真清水(ましみづ)の池(いけ)通(とほ)り来(こ)しかも
212黙々(もくもく)と神(かみ)は教(をしへ)を垂(た)れ給(たま)ひ
213魂(たま)も洗(あら)へと清水(しみづ)湧(わ)かせり
214瑞御霊(みづみたま)御供(みとも)に仕(つか)へてしらずしらず
215わが魂線(たましひ)は傲(たか)ぶりにけむ』
216 産玉(うぶだま)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
217『幾百(いくひやく)と限(かぎ)りもしらぬ玉野池(たまのいけ)の
218かたへをただに通(とほ)りしを悔(く)ゆ
219この森(もり)のあらむ限(かぎ)りの真清水(ましみづ)の
220池(いけ)を求(もと)めて魂(たま)洗(あら)はばや
221取返(とりかへ)しならぬ過(あやま)ち為(な)しにけり
222この御手洗(みたらし)を軽(かろ)く見(み)なしつ
223自(おのづか)ら森(もり)の樹蔭(こかげ)に湧(わ)きし水(みづ)と
224軽(かろ)く思(おも)ひしことを今(いま)悔(く)ゆ』
225 魂機張(たまきはる)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
226『たまきはる生命(いのち)の清水(しみづ)を見(み)ながらに
227掬(すく)はむ道(みち)を忘(わす)れゐたりき
228行(ゆ)く先(さき)をただ急(いそ)ぎつつ目(め)の下(した)の
229清水(しみづ)をよそにわが来(き)つるかも
230主(ス)の神(かみ)の天降(あも)りましたるこの森(もり)は
231清(きよ)き御魂(みたま)の進(すす)むべきのみ
232玉野森(たまのもり)馬蹄(ばてい)にけがせしわが罪(つみ)を
233許(ゆる)させ給(たま)へ主(ス)の大御神(おほみかみ)』
234 結比合(むすびあはせ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
235『いざさらば元来(もとき)し道(みち)に引返(ひきかへ)し
236駒(こま)を止(とど)めて徒歩(かち)歩(ある)きせむ
237主(ス)の神(かみ)の今日(けふ)のよき日(ひ)に天降(あも)りますを
238知(し)らず進(すす)みし迂濶(うくわつ)さを悔(く)ゆ』
239 美味素(うましもと)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
240『常磐樹(ときはぎ)の松(まつ)に清(すが)しく鳴(な)く鶴(つる)は
241吾(われ)をいましむ神声(みこゑ)なりけり
242愚(おろか)しき吾(われ)と思(おも)へば恥(は)づかしく
243瑞(みづ)の御霊(みたま)にまみえむ術(すべ)なし
244瑞御霊(みづみたま)生代(いくよ)の比女(ひめ)は吾(われ)を後(あと)に
245かけ出(い)でましし御心(みこころ)悟(さと)りぬ
246今(いま)となり瑞(みづ)の御霊(みたま)の御心(みこころ)を
247思(おも)ひはかりて恥(は)づかしくなりぬ
248何時(いつ)の間(ま)にかわが魂線(たましひ)は傲(たか)ぶりて
249禊(みそぎ)の業(わざ)を忘(わす)れゐたるよ
250主(ス)の神(かみ)の天降(あも)りましたるこの森(もり)を
251馬(うま)の蹄(ひづめ)にけがせし悲(かな)しさ』
252 真言厳(まこといづ)の神(かみ)は御歌(みうた)詠(よ)ませ給(たま)ふ。
253『今(いま)となりて吾(われ)恥(は)づかしくなりにけり
254真言(まこと)いづみの禊(みそぎ)忘(わす)れて
255いざさらば神々(かみがみ)たちよ駒(こま)並(な)めて
256元来(もとき)し道(みち)に引返(ひきかへ)し見(み)む
257この森(もり)の外(そと)に抜(ぬ)け出(い)で数多(かずおほ)き
258泉(いづみ)に御魂(みたま)洗(あら)ひて進(すす)まむ』
259 斯(か)く神々(かみがみ)は、260馬(うま)の蹄(ひづめ)に知(し)らず知(し)らず聖所(すがど)を汚(けが)せし事(こと)を悔(く)い、261一目散(いちもくさん)に元来(もとき)し道(みち)に引返(ひきかへ)し、262駒(こま)を玉野(たまの)の森(もり)の入口(いりぐち)遠(とほ)く繋(つな)ぎ置(お)き、263各(おの)も各(おの)も真清水(ましみづ)に身(み)を清(きよ)め心(こころ)を浄(きよ)め、264天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し、265再(ふたた)び主(ス)の神(かみ)の天降(あも)ります丘(をか)を指(さ)して、266真砂(まさご)に足(あし)を踏(ふ)みなづみつつ、267其(その)翌(あく)る日(ひ)の黄昏(たそが)るる頃(ころ)、268辛(から)うじて丘(をか)の麓(ふもと)に着(つ)き給(たま)ひける。
269(昭和八・一〇・二七 旧九・九 於水明閣 林弥生謹録)
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