霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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波斯(ペルシヤ)の宇宙(うちう)創造(さうざう)説(せつ)

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯の巻 篇:前付 よみ(新仮名遣い):
章:波斯の宇宙創造説 よみ(新仮名遣い):ぺるしゃのうちゅうそうぞうせつ 通し章番号:
口述日:1933(昭和8)年12月05日(旧10月18日) 口述場所:水明閣 筆録者:内崎照代 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年3月23日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]: 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:0000-00-00 00:00:00 文字数:5254 OBC :rm760005
愛善世界社版: 八幡書店版:第13輯 422頁 修補版: 校定版:10頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 世界(せかい)の初(はじ)めにアフラ・マズダと言(い)ふ尊(たふと)い神(かみ)とアングラ・マイニウと言(い)ふ邪悪(じやあく)な精霊(せいれい)とがあつた。002アフラ・マズダは限(かぎ)りなき光明(くわうみやう)の世界(せかい)に住(す)んで居(を)り、003アングラ・マイニウは涯(はて)もない暗黒(あんこく)の深淵(しんえん)に住(す)んでゐた。004そして其(そ)の光明(くわうみやう)の世界(せかい)と暗黒(あんこく)の深淵(しんえん)との間(あひだ)は、005何一(なにひと)つも存在(そんざい)しない空(くう)の空(くう)であつた。
006 アフラ・マズダは種々(しゆじゆ)の生物(せいぶつ)を造(つく)り出(だ)した。007併(しか)し始(はじ)めは目(め)に見(み)える形(かたち)を持(も)つてゐなかつた。008この尊(たふと)い神(かみ)は、009自分(じぶん)が造(つく)り出(だ)した総(すべ)ての生物(せいぶつ)を、010三千(さんぜん)年(ねん)の間(あひだ)考(かんが)へることも無(な)ければ、011動(うご)くことも無(な)い無形(むけい)の霊(れい)の姿(すがた)にして置(お)かうと思(おも)つたのであつた。012邪悪(じやあく)なアングラ・マイニウはアフラ・マズダが色々(いろいろ)な生物(せいぶつ)を造(つく)り出(だ)したと言(い)ふことを聞(き)き込(こ)むと、
013『何(なに)を小癪(こしやく)な、014おれがアフラ・マズダの世界(せかい)に行(い)つて何(なに)もかも叩(たた)きつぶしてやる』
015と言(い)つて暗黒(あんこく)の深淵(しんえん)から脱(ぬ)け出(だ)して光明(くわうみやう)の世界(せかい)にやつて来(き)た。016併(しか)しいよいよアフラ・マズダの所(ところ)に来(き)て見(み)ると、017威儀(ゐぎ)堂々(だうだう)として力(ちから)が強(つよ)く徳(とく)が高(たか)かつたので、
018『これは驚(おどろ)いた、019とてもおれなんか敵(かな)ひさうにない』
020と始(はじ)めの凄(すさま)じい勢(いきほ)ひはどこへやら、021這々(はふばふ)の体(てい)でもとの暗黒(あんこく)世界(せかい)に逃(に)げ帰(かへ)つた。022そして、
023『アフラ・マズダがあんなに偉(えら)くては、024おれ一人(ひとり)の力(ちから)では何(ど)うする事(こと)も出来(でき)ぬ。025よし、026おれを助(たす)けてくれるものを造(つく)ることにしよう』
027と言(い)つて数々(かずかず)の悪魔(あくま)をこしらへた。
028 アフラ・マズダは早(はや)くも光明(くわうみやう)世界(せかい)からそれを見(み)てとつて、
029『今(いま)のうちに何(なん)とか片(かた)を付(つ)けて置(お)かねばならぬ』
030と思(おも)つた。031そこでわざわざ暗黒(あんこく)世界(せかい)に降(くだ)つて行(い)つてアングラ・マイニウに会(あ)つて、
032『お前(まへ)や、033お前(まへ)がこしらへた生物(せいぶつ)は寿命(じゆみやう)に定(き)まりがあるだろう』
034と言(い)つた。
035 アングラ・マイニウは口惜(くや)しさうな顔(かほ)をして、
036『さうだよ、037それがどうしたと言(い)ふのかね』
038と言(い)つた。
039『どうぢや、040わしが造(つく)り出(だ)した総(すべ)ての生物(せいぶつ)を助(たす)け讃(たた)へて呉(く)れないか、041さうしたら、042お前(まへ)にも、043お前(まへ)のこしらへた生物(せいぶつ)にも、044不滅(ふめつ)の命(いのち)を与(あた)へることにしてやるが……』
045とアフラ・マズダが温順(おとな)しく相談(さうだん)を持(も)ちかけると、046アングラ・マイニウは凄(すさ)まじい声(こゑ)で唸(うな)り出(だ)して、
047『それは御免(ごめん)を蒙(かう)むらうかい。048わしはお前(まへ)のこしらへた生物(せいぶつ)を助(たす)けたり讃(たた)へたりすることは出来(でき)ぬ。049わしは彼(かれ)等(ら)を滅(ほろ)ぼして了(しま)ふか、050それともお前(まへ)の許(もと)を離(はな)れて、051わしの心(こころ)に靡(なび)くやうにするつもりだ』
052とどこまでも挑(いど)みかかつた。053併(しか)しアフラ・マズダは落(お)ちついた様子(やうす)で、
054『それでは、055わしたちはめいめい自分(じぶん)の好(す)きなやうにするより外(ほか)は無(な)い、056わしたちはお互(たがひ)に争(あらそ)ひ合(あ)ふまでぢや。057併(しか)しいつまで争(あらそ)つてゐても仕方(しかた)がない。058どうぢや、059争(あらそ)ひの期限(きげん)をきめようではないか』
060と言(い)つた。061よからうとアングラ・マイニウが応(おう)じた。
062『では其(その)期限(きげん)を九千(きうせん)年(ねん)としようではないか』
063とアフラ・マズダが言(い)つた。064よかろうと又(また)アングラ・マイニウが答(こた)へた。
065 アングラ・マイニウは九千(きうせん)年(ねん)を過(す)ぎても自分(じぶん)の勢力(せいりよく)がまだ続(つづ)くものと思(おも)つて、066ウカと斯(こ)んな約束(やくそく)をしてしまつたのだが、067尊(たふと)い神(かみ)にはチヤンと未来(みらい)の見透(みとほ)しが付(つ)いてゐるのであつた。068始(はじ)めの三千(さんぜん)年(ねん)の間(あひだ)はアフラ・マズダの思(おも)ふことが何(なん)でも叶(かな)ふのであつて、069邪悪(じやあく)の霊(れい)はこれを妨(さまた)ぐることが出来(でき)ぬ。070次(つぎ)の三千(さんぜん)年(ねん)の間(あひだ)は二人(ふたり)の思(おも)ふことが互(たがひ)にかち合(あ)つて、071どちらもうまく行(い)かぬ。072そして最後(さいご)の三千(さんぜん)年(ねん)の間(あひだ)に、073邪霊(じやれい)アングラ・マイニウは全然(ぜんぜん)アフラ・マズダに征服(せいふく)されてしまふのを看破(みやぶ)つてゐるのは尊(たふと)い神(かみ)だけであつた。
074 始(はじ)めの三千(さんぜん)年(ねん)が間(あひだ)はアフラ・マズダが拵(こしら)へた生物(せいぶつ)は、075何(なん)の害(がい)も受(う)けないで、076無形(むけい)の霊(れい)潜(ひそ)める力(ちから)として生(い)き続(つづ)けた。077その時期(じき)がをはるとアフラ・マズダは形(かたち)のある種々(しゆじゆ)の物(もの)を造(つく)り始(はじ)めた。078彼(かれ)は先(ま)づ天空(てんくう)を造(つく)り、079次(つぎ)に星(ほし)を造(つく)つた。080星(ほし)の数(かず)は六百(ろくぴやく)四十八(よんじうはち)万(まん)に及(およ)んだ。081アフラ・マズダは、082それらの星(ほし)を夫(そ)れ夫(ぞ)れ大空(おほぞら)の四方(しはう)に配(くば)つて、083四(よ)人(にん)の首領(しゆりやう)に司配(しはい)させることにした。084東(ひがし)の方(はう)の首領(しゆりやう)はチシュトリアと呼(よ)ばれ、085西(にし)の方(はう)の首領(しゆりやう)はサタヴェースと呼(よ)ばれ、086南(みなみ)の方(はう)の首領(しゆりやう)はヴァナンドと呼(よ)ばれ、087北(きた)の方(はう)の首領(しゆりやう)はハブトーク・リングと呼(よ)ばれる。088星(ほし)くづが出来上(できあが)ると、089アフラ・マズダは次(つぎ)に月(つき)を拵(こしら)へて、090それから太陽(たいやう)を拵(こしら)へた。
091 その間(あひだ)邪霊(じやれい)アングラ・マイニウは昏々(こんこん)として眠(ねむ)り続(つづ)けて居(ゐ)た。092ジャヒと呼(よ)ばれた女性(ぢよせい)の悪魔(あくま)がそれを見(み)て、
093『どうも仕方(しかた)が無(な)いナア。094アフラ・マズダはどしどし色々(いろいろ)の物(もの)を造(つく)り出(だ)してゐるのに、095うちの首領(かしら)は暢気(のんき)に眠(ねむ)りこけてゐる』
096と頻(しき)りに気(き)を揉(も)んでゐたが、097たうとうたまり兼(かね)てアングラ・マイニウの側(そば)に駈(か)けつけて、
098『お首領(かしら)お起(お)き下(くだ)さい、099わたしたちは、100この世界(せかい)に騒動(さうだう)を起(おこ)さうではありませんか』
101と叫(さけ)んだ。
102 併(しか)しアングラ・マイニウは内心(ないしん)アフラ・マズダが恐(こは)いので、103女魔(によま)の呼(よ)ぶ声(こゑ)に目(め)を覚(さ)ましても依然(いぜん)眠(ねむ)つたふりをして居(ゐ)た。104ジャヒは気(き)を苛(いら)つて、
105『お首領(かしら)、106早(はや)く起(お)きて下(くだ)さい。107アフラ・マズダが勝手(かつて)なことをして居(ゐ)ますよ。108早(はや)く邪魔(じやま)をしてやりませう』
109と叫(さけ)んだ。110そして女魔(によま)が三度(さんど)叫(さけ)ぶと、111三度目(さんどめ)にアングラ・マイニウがむつくと起(お)き上(あが)つた。112そしてジャヒの頭(あたま)に接吻(せつぷん)をしながら、
113『そなたは、114わしに、115何(なに)か望(のぞ)むことがあるのかね』
116と尋(たづ)ねた。
117『エエさうですよ、118若(わか)い男(をとこ)の姿(すがた)が見(み)たいのですよ』
119と女魔(によま)が答(こた)へた。120と、121其(そ)の言葉(ことば)が終(をは)るか終(をは)らないうちに、122魔王(まわう)アングラ・マイニウの姿(すがた)は十五(じふご)歳(さい)位(くらゐ)の男(をとこ)に変(へん)じた。123女魔(によま)は大(おほい)に喜(よろこ)んで、
124『サア、125直(す)ぐに天界(てんかい)に行(い)つてアフラ・マズダの仕事(しごと)の邪魔(じやま)をしてやりませう』
126と言(い)つた。
127『よし、128承知(しようち)ぢや』
129 アングラ・マイニウは斯(か)う叫(さけ)んで、130数多(あまた)の悪魔(あくま)どもを引(ひ)き連(つ)れて、131まつしぐらに天界(てんかい)目(め)ざして駈(か)け出(だ)した。132彼(かれ)は天空(てんくう)を見(み)ると、
133『ほう、134おれの知(し)らぬ間(ま)に変(へん)なものが出来(でき)たな』
135と言(い)つて蛇(へび)のやうにそこに躍(をど)り込(こ)んで行(い)つた。136空(そら)は狼(おほかみ)に襲(おそ)はれた羊(ひつじ)のやうに、137顫(ふる)ひ戦(をのの)いた。138勢(いきほ)ひに乗(の)つたアングラ・マイニウは、139アフラ・マズダが造(つく)り出(だ)した総(すべ)てのものに飛(と)びついて行(い)つて、140片端(かたつぱし)からそれを傷(きず)つけ汚(けが)した。141見(み)る間(ま)に世界(せかい)が暗黒(あんこく)になつた。
142『ウマイウマイ、143今度(こんど)は斯(か)うしてくれるぞ』
144とアングラ・マイニウは数多(あまた)の惑星(わくせい)を拵(こしら)へてアフラ・マズダの任命(にんめい)した星座(せいざ)の首領(しゆりやう)たちに対抗(たいかう)させた。145惑星(わくせい)は凄(すさ)まじい勢(いきほ)ひで、146神(かみ)が造(つく)つた星(ほし)くづにぶつつかつて行(い)つたので、147満天(まんてん)の星(ほし)どもは駭(おどろ)き畏(おそ)れて、148右往(うわう)左往(さわう)に逃(に)げ惑(まど)うた。149アフラ・マズダに率(ひき)ゐられた天使(てんし)の群(むれ)アメシヤ、150スペンタやヤザタたちは天下(てんか)の一大事(いちだいじ)と、151必死(ひつし)となつて邪霊(じやれい)に率(ひき)ゐられた悪魔(あくま)の群(むれ)と戦(たたか)つた。152そして大小(たいせう)の悪魔(あくま)どもを引(ひ)つ掴(つか)んでは、153天界(てんかい)から暗黒(あんこく)の深淵(しんえん)へと投(な)げ落(おと)し続(つづ)けた。
154 全世界(ぜんせかい)を揺(ゆ)り動(うご)かすほどの激(はげ)しい戦(たたか)ひが昼(ひる)を九日(ここのか)、155夜(よる)を九夜(ここのや)行(おこな)はれた。156さうしてゐるうちに大空(たいくう)に堅固(けんご)な塁壁(とりで)が築(きづ)き上(あ)げられたので、157さすがの悪魔軍(あくまぐん)も最早(もはや)手(て)の出(だ)し様(やう)がなくなつて、158スゴスゴ暗黒(あんこく)世界(せかい)に引返(ひきかへ)して了(しま)つた。
159 戦(たたか)ひが止(や)むとアフラ・マズダは復(また)創造(さうざう)の仕事(しごと)を続(つづ)けた。160尊(たふと)い神(かみ)は、161今度(こんど)は数多(あまた)の水(みづ)の流(なが)れを拵(こしら)へた。162是(これ)等(ら)の流(なが)れは一所(ひとところ)に集(あつ)まつてヴールカシヤ(広大(くわうだい)なる深淵(わたつみ))と言(い)ふ海(うみ)となる。163ヴールカシヤ海(かい)はアルブールズ山(さん)の南(みなみ)の果(はて)に当(あた)つて大地(だいち)の三分(さんぶん)の一(いち)を占(し)めてゐる。164それは一千(いつせん)の湖(みづうみ)の水(みづ)を含(ふく)んでゐると信(しん)じられた。
165 世界(せかい)の所在(あらゆる)水(みづ)はアルドヴイ、166スーラー、167アナーヒタ(潤(うるほ)ひて強(つよ)く且(か)つ汚(けが)れ無(な)きものの義(ぎ))といふ泉(いづみ)から流(なが)れ出(で)る、168その流(なが)れ出(で)た水(みづ)は数多(あまた)の河(かは)となつて大地(だいち)をうるほすのであつた。
169 邪霊(じやれい)アングラ・マイニウは是(これ)を見(み)ると、170復(また)むらむらと悪気(わるぎ)を起(おこ)して、171旱魃(かんばつ)の悪魔(あくま)アバオシヤを呼(よ)び出(だ)して、
172『お前(まへ)、173天界(てんかい)に上(のぼ)つて、174水(みづ)の流(なが)れの邪魔(じやま)をしてやれ』
175と言(い)ひつけた。176アバオシヤは直(す)ぐに天界(てんかい)に上(のぼ)つて行(い)つた。177そして夏(なつ)の間(あひだ)大地(だいち)に水(みづ)を恵(めぐ)むことを司(つかさ)どつてゐるチシュトリアの所(ところ)に来(き)て、178流(なが)れを堰(せ)き止(と)めようとして、179二人(ふたり)の間(あひだ)に烈(はげ)しい争(あらそ)ひが起(おこ)つたが、180たうとうアバオシヤの力(ちから)が尽(つ)きて天界(てんかい)から投(ほう)り出(だ)された。
181 アフラ・マズダは更(さら)に創造(さうざう)の仕事(しごと)を続(つづ)けて、182今度(こんど)は新(あら)たに大地(だいち)を造(つく)ることにした。183尊(たふと)い神(かみ)は先(ま)づチシュトリアに言(い)ひ付(つ)けて、184古(ふる)い大地(だいち)の上(うへ)に大雨(おほあめ)を降(ふ)らせた。185忽(たちま)ち大地(だいち)は一面(いちめん)の水(みづ)となつて、186邪悪(じやあく)な生物(せいぶつ)の毒(どく)をすつかり洗(あら)ひ浄(きよ)めた。187水(みづ)が減(ひ)くにつれて三十三(さんじふさん)種(しゆ)の陸地(りくち)が造(つく)られた。188尊(たふと)い神(かみ)はこれを七(なな)つの部分(ぶぶん)に分(わ)けることにした。189それを見(み)た邪霊(じやれい)アングラ・マイニウは、
190『アフラ・マズダ奴(め)、191色々(いろいろ)の物(もの)を造(つく)り出(だ)すな、192癪(しやく)にさはる奴(やつ)だ、193一(ひと)つ邪魔(じやま)をしてやらう』
194と言(い)つて、195大地(だいち)の腹(はら)の奥(おく)に潜(もぐ)り込(こ)んだかと思(おも)ふと、196内側(うちがは)から激(はげ)しく之(これ)を揺(ゆ)り動(うご)かしたので、197今(いま)まで平坦(へいたん)であつた大地(だいち)の所々(ところどころ)に大(おほ)きな山(やま)が出来(でき)た。198真先(まつさき)に出来上(できあが)つたのが、199アルブールズ山(さん)であつた。200この山(やま)が現(あら)はれると、201大地(だいち)の所々(ところどころ)がそれにつれてムクムクと動(うご)き出(だ)して、202さながら大(おほ)きな樹(き)のやうに雲(くも)を貫(つらぬ)くほど聳(そび)え立(た)つた。
203 次(つぎ)にアフラ・マズダは種々(しゆじゆ)の草木(くさき)を拵(こしら)へることにした。204天使(てんし)の群(むれ)アメシヤ、205スペンタの一人(ひとり)である、206アメレタートが尊(たふと)い神(かみ)の仰(おほ)せを受(う)けて、207ありとある植物(しよくぶつ)を細(こま)かに搗(つ)き砕(くだ)いて、208それを水(みづ)に溶(と)かすと、209狼星(らうせい)がその水(みづ)を普(あまね)く大地(だいち)に撒(ま)き散(ち)らしたので、210やがて人間(にんげん)の頭(あたま)に髪(かみ)の毛(け)が生(は)えるやうに到(いた)る所(ところ)に草木(くさき)が芽(め)を出(だ)した。211その中(なか)の一万(いちまん)の草木(くさき)は、212邪霊(じやれい)アングラ・マイニウが生物(せいぶつ)を苦(くる)しめるために造(つく)り出(だ)した一万(いちまん)の病気(びやうき)も逐(お)ひ退(の)けるに足(た)る力(ちから)を持(も)つてゐた。
213 大海(たいかい)ヴールカシヤのただ中(なか)には特(とく)に『あらゆる種(たね)を含(ふく)む樹(き)』が生(は)え出(だ)した。214大地(だいち)に現(あら)はれた総(すべ)ての草木(くさき)が、215いつまでも絶(た)え果(は)てないやうにと言(い)ふアフラ・マズダの有難(ありがた)い考(かんが)へからである。216それから又(また)『あらゆる種(たね)を含(ふく)む樹(き)』の側(そば)に尊(たふと)い神(かみ)はガオケレナ(牛角(ぎうかく)の義(ぎ))と言(い)ふ植物(しよくぶつ)を生(お)ひ出(い)でしめた。217この植物(しよくぶつ)はあらゆる草木(さうもく)の首領(かしら)で、218これを口(くち)にするものは悉(ことごと)く不滅(ふめつ)の命(いのち)を得(う)るのであつた。219尊(たふと)い神(かみ)は宇宙(うちう)をいつまでも生々(いきいき)とさせて置(お)かうと思(おも)つて、220此(こ)の霊樹(れいじゆ)を造(つく)り出(だ)したのであつた。
221 之(これ)を見(み)て邪霊(じやれい)アングラ・マイニウは甚(いた)く機嫌(きげん)を悪(わる)くして、
222『アフラ・マズダの奴(やつ)、223ほんたうに癪(しやく)にさはる事(こと)ばかりしでかすな。224よし、225おれがあの樹(き)を枯(か)らしてやるぞ』
226と言(い)つてヴールカシヤ海(かい)の水底(みなそこ)深(ふか)く一匹(いつぴき)の魔(ま)の蜥蜴(とかげ)を造(つく)り出(だ)した。
227 蜥蜴(とかげ)はガオケレナの根(ね)を咬(か)んで、228いつかはそれを枯(か)らさうとしてゐたのを、229尊(たふと)い神(かみ)は早(はや)くもそれを悟(さと)つて、230カルと言(い)ふ魚(うを)を十尾(じつぴ)拵(こしら)へて魔(ま)の蜥蜴(とかげ)に当(あた)らせることにした。231十尾(じつぴ)のカル魚(ぎよ)は、232交(かは)る交(がは)る蜥蜴(とかげ)の側(そば)を泳(およ)ぎ廻(まは)つて、233ガオケレナの根(ね)の咬(か)まうとすると直(す)ぐに飛(と)びかかつて行(ゆ)くのであつた。
234 次(つぎ)にアフラ・マズダは火(ひ)を拵(こしら)へて世界(せかい)を喜(よろこ)ばした。235良(よ)いものの現(あら)はれるのが大嫌(だいきら)ひの邪霊(じやれい)アングラ・マイニウは復(また)ひどく腹(はら)を立(た)てて、
236『アフラ・マズダの奴(やつ)、237また変(へん)なものを造(つく)つたな。238よし、239今度(こんど)だつて邪魔(じやま)をしないでは置(お)かないぞ』
240と言(い)つて火(ひ)が燃(も)える時(とき)には、241いつも厭(いや)な煙(けむり)が出(で)るやうにした。
242 次(つぎ)にアフラ・マズダは種々(しゆじゆ)の動物(どうぶつ)を造(つく)ることにした。243尊(たふと)い神(かみ)は素晴(すば)らしく強(つよ)くて美(うつく)しい一頭(いつとう)の牛(うし)を拵(こしら)へた。244この牛(うし)には総(すべ)ての動物(どうぶつ)の種(たね)が含(ふく)まれてあつた。245邪霊(じやれい)アングラ・マイニウは、246それを見(み)ると目(め)の色(いろ)を変(か)へて、
247『また厭(いや)なものを造(つく)りをつたな、248こりや依然(ぢつと)としては居(ゐ)られないぞ』
249と直(すぐ)にこの牛(うし)の側(そば)にノコノコやつて来(き)た。250アフラ・マズダは彼(かれ)の姿(すがた)を見(み)ると、
251『あの男(をとこ)、252またわしの仕事(しごと)の邪魔(じやま)をしに来(き)たな』
253と思(おも)つて、254大急(おほいそ)ぎでビーナークと言(い)ふ霊妙(れいめう)な果実(くわじつ)を摺(す)り潰(つぶ)して牛(うし)に食(た)べさせた。255果実(くわじつ)の不可思議(ふかしぎ)な力(ちから)によつてアングラ・マイニウの邪悪(じやあく)な災(わざはひ)を防(ふせ)がうとしたのである。256併(しか)しアングラ・マイニウが牛(うし)の側(そば)にやつて来(き)て、257凄(すご)い目(め)でじつと見据(みす)ゑて居(を)ると、258牛(うし)はやがて病(やまひ)に罹(かか)つて次第(しだい)に痩(や)せ衰(おとろ)へて、259遂(つひ)に最後(さいご)の息(いき)を引(ひ)き取(と)つて終(しま)つた。260と思(おも)ふと、261牛(うし)の霊魂(れいこん)ゲーウシュ・ウルヴァンが、262その体(からだ)からスルスルと脱(ぬ)け出(だ)して、263アフラ・マズダの許(もと)にやつて来(き)た。264そして一千(いつせん)の人間(にんげん)が一度(いちど)に叫(さけ)び出(だ)したやうな大(おほ)きな声(こゑ)で、
265『邪悪(じやあく)なアングラ・マイニウが勝手(かつて)なことをしてゐるのに、266あなたはどうしてぢつとして居(ゐ)られるのです。267いつぞやあなたは、268偉(えら)い男(をとこ)を拵(こしら)へて、269すべてのものを保護(ほご)させてやると仰(おほ)せられたが、270その男(をとこ)はどこに居(を)るのです。271今(いま)のやうにアングラ・マイニウが悪(わる)いことをしてゐては、272わたしは種々(しゆじゆ)の動物(どうぶつ)を養(やしな)ひ育(そだ)てて行(ゆ)くことは出来(でき)ませぬ』
273と言(い)つた。
274 これを聞(き)くとアフラ・マズダは眉(まゆ)をひそめて、
275『わしは確(たしか)に偉(えら)い男(をとこ)を拵(こしら)へてやると言(い)つたが、276まだ時(とき)が来(こ)ないのぢや』
277と答(こた)へた。278併(しか)し牛(うし)の霊魂(れいこん)は、279この答(こたへ)に満足(まんぞく)することが出来(でき)なかつたので、280星(ほし)の世界(せかい)に歩(ある)いて行(い)つて、281先(さき)のやうに大(おほ)きな声(こゑ)で叫(さけ)び続(つづ)けた。
282 余(あま)りにその声(こゑ)が大(おほ)きいので、283月(つき)や太陽(たいやう)のゐる所(ところ)までガンガン鳴(な)り響(ひび)いた。284さうして居(ゐ)る間(うち)にたうとう時機(じき)が来(き)たので、285アフラ・マズダは牛(うし)の霊魂(れいこん)に対(むか)つて、
286『モウ安心(あんしん)するがよい、287ゾロアステルと言(い)ふ偉(えら)い予言者(よげんしや)を、288この世(よ)に送(おく)り出(だ)すことにしたから』
289と言(い)ふと、290ゲーウシュ・ウルヴァンはやつと安心(あんしん)して、291ありとある動物(どうぶつ)を養(やしな)ひ育(そだ)てて行(ゆ)くやうになつた。
292 暫(しばら)くすると、293死(し)んだ牛(うし)の体(からだ)から五十五(ごじふご)種(しゆ)の穀物(こくもつ)と十二種(じふにしゆ)の薬草(やくさう)が生(は)え出(だ)した。294アフラ・マズダがそれを月(つき)の許(もと)に送(おく)ると、295月(つき)はおのが光(ひかり)でその種(たね)を浄(きよ)めた。296その種子(たね)から一匹(いつぴき)の牡牛(をうし)と一匹(いつぴき)の牝牛(めうし)とが生(うま)れ、297それから二百(にひやく)八十二(はちじふに)種(しゆ)の動物(どうぶつ)が生(うま)れた。298アフラ・マズダは獣(けだもの)を大地(だいち)に棲(す)ませ、299鳥(とり)を空中(くうちう)に棲(す)ませ、300魚(うを)を水中(すゐちう)に棲(す)ませることにした。301此(かく)の如(ごと)くにして、302尊(たふと)い神(かみ)アフラ・マズダは邪霊(じやれい)アングラ・マイニウに度々(たびたび)仕事(しごと)の邪魔(じやま)をされながら、303たうとう宇宙(うちう)創造(さうざう)の大事業(だいじげふ)を完成(くわんせい)した。
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