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霊界物語
天祥地瑞(第73~81巻)
第76巻(卯の巻)
序文
総説
日本所伝の天地開闢説
支那の開闢説
波斯の宇宙創造説
希臘の天地開闢説
エヂプトの開闢説
メキシコナフア族の天地創造説
マヤ族の万物創造説
北欧に於ける宇宙創造説
太平洋西北岸創造説
英領北亜米利加創造説
亜弗利加神話
ヘブライ天地創造説
パレスチン創造説
ミクロネシヤ創造説
インドネシヤ創造説
第1篇 春風駘蕩
第1章 高宮参拝
第2章 魔の渓流
第3章 行進歌
第4章 怪しの巌山
第5章 露の宿
第2篇 晩春の神庭
第6章 報告祭
第7章 外苑の逍遥
第8章 善言美霊
第3篇 孤軍奮闘
第9章 闇の河畔
第10章 二本松の蔭
第11章 栄城の山彦
第12章 山上の祈り
第13章 朝駒の別れ
第14章 磐楠舟
第15章 御舟巌
余白歌
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第76巻(卯の巻)
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(B)
(N)
太平洋西北岸創造説 >>>
北欧
(
ほくおう
)
に
於
(
お
)
ける
宇宙
(
うちう
)
創造
(
さうざう
)
説
(
せつ
)
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯の巻
篇:
前付
よみ(新仮名遣い):
章:
北欧に於ける宇宙創造説
よみ(新仮名遣い):
ほくおうにおけるうちゅうそうぞう
通し章番号:
口述日:
1933(昭和8)年12月07日(旧10月20日)
口述場所:
水明閣
筆録者:
内崎照代
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1934(昭和9)年3月23日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm760010
愛善世界社版:
八幡書店版:
第13輯 450頁
修補版:
校定版:
62頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
太初
(
はじめ
)
は
空
(
くう
)
の
空
(
くう
)
であつた。
002
そこには
眼
(
め
)
にふれるものが
何
(
なに
)
も
無
(
な
)
かつた。
003
無限
(
むげん
)
に
広
(
ひろ
)
がつてゐる
虚無
(
きよむ
)
には、
004
ただ「ギンヌンガ・ギャップ」と
言
(
い
)
ふ
深淵
(
しんえん
)
があるだけであつた。
005
「ギンヌンガ・ギャップ」とは「
顎
(
あご
)
を
開
(
ひら
)
いた
決裂
(
さけめ
)
」といふ
意味
(
いみ
)
である。
006
この
深淵
(
しんえん
)
は
永久
(
えいきう
)
の
常闇
(
とこやみ
)
の
中
(
うち
)
にひたすら
広
(
ひろ
)
がりに
広
(
ひろ
)
がつて
居
(
ゐ
)
たので、
007
その
大
(
おほ
)
きさも
深
(
ふか
)
さも
到底
(
たうてい
)
測
(
はか
)
り
知
(
し
)
られる
限
(
かぎ
)
りではなかつた。
008
茫々
(
ばうばう
)
たる「ギンヌンガ・ギャップ」の
深淵
(
しんえん
)
の
北
(
きた
)
の
果
(
はて
)
と
南
(
みなみ
)
の
果
(
はて
)
とに、
009
二
(
ふた
)
つの
世界
(
せかい
)
ならぬ
世界
(
せかい
)
があつた。
010
北
(
きた
)
の
果
(
はて
)
にある
世界
(
せかい
)
を「ニフルハイム」と
呼
(
よ
)
び、
011
南
(
みなみ
)
の
果
(
はて
)
にある
世界
(
せかい
)
を「ムスベルハイム」と
呼
(
よ
)
ぶ。
012
「ニフルハイム」は
極寒
(
ごくかん
)
の
世界
(
せかい
)
である、
013
暗黒
(
あんこく
)
の
世界
(
せかい
)
である。
014
そこには
物凄
(
ものすご
)
い
霧
(
きり
)
と
暗
(
やみ
)
とが
永久
(
えいきう
)
に
総
(
すべ
)
てを
閉
(
と
)
ぢこめて
居
(
ゐ
)
る。
015
この
世界
(
せかい
)
のただ
中
(
なか
)
に、
016
いつまでも
尽
(
つ
)
きる
事
(
こと
)
のない
泉
(
いづみ
)
が
湧
(
わ
)
いてゐる。
017
泉
(
いづみ
)
は「フフエルゲルミル」と
呼
(
よ
)
ばれた。
018
泉
(
いづみ
)
からは
氷
(
こほり
)
のやうに
冷
(
つめ
)
たい
水
(
みづ
)
が
滾々
(
こんこん
)
と
迸
(
ほとばし
)
り
出
(
い
)
で、
019
十二
(
じふに
)
の
河
(
かは
)
となつて
流
(
なが
)
れ
出
(
で
)
てゐる。
020
流
(
なが
)
れ
流
(
なが
)
れて
行
(
ゆ
)
くうちに「ギンヌンガ・ギャップ」から
吹
(
ふ
)
いて
来
(
く
)
る
剣
(
つるぎ
)
のやうな
疾風
(
しつぷう
)
に
触
(
ふ
)
れて、
021
山
(
やま
)
なす
氷
(
こほり
)
の
塊
(
かたまり
)
となり、
022
氷
(
こほり
)
の
塊
(
かたまり
)
は
悠々
(
いういう
)
と
転
(
ころ
)
がりつづけて、
023
はては「ギンヌンガ・ギャップ」の
底知
(
そこし
)
れぬ
深淵
(
しんえん
)
に
雷
(
かみなり
)
のやうな
響
(
ひびき
)
を
立
(
た
)
てて
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
むのであつた。
024
「ムスベルハイム」は
極熱
(
ごくねつ
)
の
世界
(
せかい
)
である。
025
火
(
ひ
)
と
光熱
(
くわうねつ
)
との
世界
(
せかい
)
である。
026
この
世界
(
せかい
)
のただ
中
(
なか
)
に「スルトル」と
呼
(
よ
)
ばれる
絶大
(
ぜつだい
)
の
巨人
(
きよじん
)
が
坐
(
すわ
)
り
込
(
こ
)
んで
極熱界
(
ごくねつかい
)
の
四辺
(
あたり
)
を
守
(
まも
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
027
「スルトル」の
手
(
て
)
には
火焔
(
くわえん
)
の
剣
(
つるぎ
)
がしかと
握
(
にぎ
)
られてゐる。
028
巨人
(
きよじん
)
は
絶
(
た
)
えず
凄
(
すさ
)
まじい
勢
(
いきほひ
)
で
剣
(
つるぎ
)
を
振
(
ふ
)
りまはす。
029
ふりまはす
度
(
たび
)
に
剣
(
つるぎ
)
の
刃
(
は
)
から
切尖
(
きつさき
)
から
閃々
(
せんせん
)
たる
火花
(
ひばな
)
が
雨
(
あめ
)
のやうに
降
(
ふ
)
りこぼれて、
030
深淵
(
しんえん
)
の
底
(
そこ
)
に
横
(
よこた
)
はつてゐる
氷
(
こほり
)
の
塊
(
かたまり
)
の
上
(
うへ
)
に
落
(
お
)
ちる
途端
(
とたん
)
に、
031
耳
(
みみ
)
を
聾
(
ろう
)
する
様
(
やう
)
な
音
(
おと
)
がして
濛々
(
もうもう
)
たる
蒸気
(
じようき
)
が
数知
(
かずし
)
れぬ
雲
(
くも
)
となつて
高
(
たか
)
く
高
(
たか
)
く
舞
(
ま
)
ひ
上
(
のぼ
)
るのであつた。
032
勢
(
いきほ
)
ひ
盛
(
さか
)
んに
立
(
た
)
ち
上
(
のぼ
)
つた
蒸気
(
じようき
)
の
雲
(
くも
)
が、
033
氷寒
(
ひようかん
)
世界
(
せかい
)
の「ニフルハイム」から
吹
(
ふ
)
きすさんで
来
(
く
)
る
冷
(
つめ
)
たい
風
(
かぜ
)
に
凍
(
こほ
)
つて、
034
宇宙
(
うちう
)
に
堅
(
かた
)
くかたまつた
時
(
とき
)
、
035
それで
測
(
はか
)
り
知
(
し
)
られぬ
大
(
おほ
)
きな
魔物
(
まもの
)
として
活
(
い
)
きて
動
(
うご
)
くやうになつた
巨魔
(
きよま
)
の
名
(
な
)
を、
036
「イミル」
若
(
もし
)
くは「オルケルミル」といふ。
037
「
沸
(
わ
)
きかへる
塊
(
かたまり
)
」といふ
意義
(
いぎ
)
である。
038
凝固
(
こりかた
)
まつた
氷
(
こほり
)
の
魔
(
ま
)
であるから
時
(
とき
)
として「リムツルス」(
氷霜
(
ひようさう
)
の
巨人
(
きよじん
)
の
意
(
い
)
)と
呼
(
よ
)
ばれることもある。
039
古
(
こ
)
「エッダ」の
詩篇
(
しへん
)
は、
040
この
氷
(
こほり
)
の
巨魔
(
きよま
)
を
歌
(
うた
)
つて、
041
古
(
ふる
)
き
昔
(
むかし
)
042
イミルが
住
(
す
)
みし
頃
(
ころ
)
には
043
砂
(
すな
)
なく
海
(
うみ
)
なく
044
涼
(
すず
)
しき
波
(
なみ
)
もなかりき
045
大地
(
だいち
)
も
見出
(
みいだ
)
されず
046
はた
天空
(
てんくう
)
もあらず
047
すべては
一
(
ひと
)
つの
混沌
(
こんとん
)
にして
048
いづこにも
草
(
くさ
)
を
生
(
しやう
)
ぜざりき
049
と
言
(
い
)
つてゐる。
050
茫々
(
ばうばう
)
たる
虚無
(
きよむ
)
の
中
(
なか
)
に
生
(
うま
)
れ
出
(
で
)
た
氷
(
こほり
)
の
魔
(
ま
)
「イミル」は、
051
食物
(
しよくもつ
)
を
探
(
さが
)
しもとめて
闇
(
やみ
)
の
中
(
なか
)
をうごめき
廻
(
まは
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
052
そのうちに「アウヅムブラ」といふ
絶大
(
ぜつだい
)
な
牡牛
(
めうし
)
を
見出
(
みいだ
)
した。
053
「アウヅムブラ」とは(
飼育
(
しいく
)
するもの)といふ
意義
(
いぎ
)
である。
054
この
牛
(
うし
)
も
濛々
(
もうもう
)
たる
蒸気
(
じようき
)
の
雲
(
くも
)
が
冷
(
ひ
)
えて
凍
(
こほ
)
つて
生
(
うま
)
れ
出
(
で
)
たものであつた。
055
「イミル」は
喜
(
よろこ
)
んで
牡牛
(
めうし
)
の
側
(
そば
)
に
駈
(
か
)
けよつて
行
(
い
)
つて
見
(
み
)
ると、
056
大
(
おほ
)
きな
乳母
(
ちち
)
から
雪
(
ゆき
)
のやうに
白
(
しろ
)
い
乳母
(
ちち
)
が
四
(
よ
)
つの
川
(
かは
)
となつて
滾々
(
こんこん
)
と
流
(
なが
)
れ
出
(
で
)
てゐる。
057
「イミル」は
日毎
(
ひごと
)
その
乳汁
(
ちち
)
を
飲
(
の
)
んで
命
(
いのち
)
をつなぐことにした。
058
絶大
(
ぜつだい
)
なる
牡牛
(
めうし
)
「アウヅムブラ」も
生
(
い
)
きて
居
(
ゐ
)
る
以上
(
いじやう
)
、
059
何
(
なに
)
かを
食
(
た
)
べてその
命
(
いのち
)
をささへなくてはならぬ。
060
「アウヅムブラ」は
大
(
おほ
)
きなそして
粗
(
あら
)
くて
堅
(
かた
)
い
舌
(
した
)
を
出
(
だ
)
しては
氷
(
こほり
)
の
塊
(
かたまり
)
に
凍
(
こほ
)
りついてゐる
塩
(
しほ
)
を
嘗
(
な
)
めて
居
(
ゐ
)
た。
061
昼
(
ひる
)
となく
夜
(
よる
)
となく
嘗
(
な
)
めつづけてゐるうちに、
062
氷
(
こほり
)
の
塊
(
かたまり
)
の
中
(
なか
)
から
男
(
をとこ
)
の
頭髪
(
とうはつ
)
が
現
(
あらは
)
れて、
063
それから
全身
(
ぜんしん
)
が
現
(
あらは
)
れ
出
(
で
)
た。
064
氷
(
こほり
)
の
塊
(
かたまり
)
の
中
(
なか
)
から
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
して
来
(
き
)
たのは「ブリ」といふ
神
(
かみ
)
であつた。
065
体
(
からだ
)
が
大
(
おほ
)
きくて
力
(
ちから
)
が
強
(
つよ
)
くて、
066
容貌
(
ようばう
)
の
麗
(
うるは
)
しい
神
(
かみ
)
であつた。
067
そして
間
(
ま
)
もなく「ボル」といふ
男
(
をとこ
)
の
子
(
こ
)
を
生
(
う
)
んだ。
068
かうして
神々
(
かみがみ
)
が
生
(
うま
)
れ
出
(
で
)
るやうになると、
069
巨魔
(
きよま
)
「イミル」も
巨人
(
きよじん
)
どもを
産
(
う
)
み
出
(
だ
)
すやうになつた。
070
ある
日
(
ひ
)
、
071
「イミル」は
乳汁
(
ちち
)
に
飽
(
あ
)
いて、
072
うたた
寝
(
ね
)
をしてゐるうちに、
073
体中
(
からだぢう
)
に
汗
(
あせ
)
をかいた……と
思
(
おも
)
ふと、
074
左
(
ひだり
)
の
腋
(
わき
)
の
下
(
した
)
から
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
と
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
とが
生
(
うま
)
れ、
075
足
(
あし
)
から
六
(
むつ
)
つの
頭
(
あたま
)
を
持
(
も
)
つた
男
(
をとこ
)
が
生
(
うま
)
れた。
076
六頭
(
ろくとう
)
の
怪魔
(
くわいま
)
は「ベルゲルミル」と
呼
(
よ
)
ばれた。
077
神々
(
かみがみ
)
の
永久
(
えいきう
)
の
敵
(
てき
)
となつた「
霜
(
しも
)
の
巨人
(
きよじん
)
」どもは、
078
みなその
子孫
(
しそん
)
である。
079
神々
(
かみがみ
)
と
巨人共
(
きよじんども
)
が
現
(
あらは
)
れると、
080
その
間
(
あひだ
)
に
激
(
はげ
)
しい
戦
(
たたかひ
)
が
始
(
はじ
)
まつた。
081
神々
(
かみがみ
)
は
善
(
よ
)
きもの
義
(
ただ
)
しきものの
力
(
ちから
)
として、
082
巨人
(
きよじん
)
どもは
悪
(
あ
)
しきもの
邪
(
よこしま
)
なものの
力
(
ちから
)
として、
083
どうしても
仲
(
なか
)
よく
暮
(
くら
)
して
行
(
ゆ
)
くことが
出来
(
でき
)
なかつたのである。
084
しかしいつまでもいつまでも
闘
(
たたか
)
つてゐるうちに、
085
双方
(
さうはう
)
もやや
争
(
あらそひ
)
に
飽
(
あ
)
いて、
086
「ボル」
神
(
がみ
)
が「ボルトルン」(
悪
(
あく
)
の
荊
(
いばら
)
)の
娘
(
むすめ
)
「ベストラ」を
娶
(
めと
)
る
事
(
こと
)
になつて、
087
「オーディン」「フィリ」「フエ」といふ
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
神
(
かみ
)
をまうけた。
088
其
(
そ
)
の
中
(
なか
)
の「オーディン」こそ、
089
ゆくゆく
神々
(
かみがみ
)
の
王者
(
わうじや
)
となつて、
090
あらゆる
世界
(
せかい
)
を
支配
(
しはい
)
すべき
運命
(
うんめい
)
を
持
(
も
)
つた
最
(
もつと
)
も
高
(
たか
)
く
最
(
もつと
)
も
偉
(
えら
)
い
神
(
かみ
)
である。
091
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
神々
(
かみがみ
)
が
生
(
うま
)
れると、
092
すぐに
父
(
ちち
)
の「ボル」
神
(
がみ
)
を
援
(
たす
)
けて、
093
また
巨人
(
きよじん
)
どもと
烈
(
はげ
)
しい
戦
(
たたかひ
)
を
開
(
ひら
)
いた。
094
巨人族
(
きよじんぞく
)
の
頭領
(
とうりやう
)
である「イミル」は
血
(
ち
)
みどろになつて
荒
(
あ
)
れまはつたが、
095
たうとう
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
神
(
かみ
)
に
斬
(
き
)
りさいなまれて、
096
凄
(
すさま
)
じい
叫
(
さけ
)
び
声
(
ごゑ
)
とともに、
097
丘
(
をか
)
を
覆
(
くつがへ
)
すやうにどつと
倒
(
たふ
)
れた。
098
と
見
(
み
)
ると、
099
傷口
(
きずぐち
)
から
紅
(
くれなゐ
)
の
血
(
ち
)
が
潮
(
うしほ
)
のやうに
噴
(
ふ
)
き
出
(
だ
)
して、
100
大
(
おほ
)
きな
河
(
かは
)
となり、
101
はてはあたりに
恐
(
おそ
)
ろしい
血
(
ち
)
の
洪水
(
こうずゐ
)
を
惹
(
ひ
)
き
起
(
おこ
)
した。
102
首領
(
かしら
)
の
敢
(
あへ
)
ない
最後
(
さいご
)
に
気
(
き
)
ぬけがしてゐた
巨人
(
きよじん
)
どもは、
103
驚
(
おどろ
)
き
騒
(
さわ
)
いで、
104
あちらこちらに
逃
(
に
)
げまどつてゐたが、
105
たうとう
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず
滔々
(
たうたう
)
たる
血
(
ち
)
の
流
(
なが
)
れに
押
(
お
)
し
流
(
なが
)
されて、
106
苦
(
くる
)
しみもがきながら
溺
(
おぼ
)
れ
死
(
し
)
んでしまつた。
107
ただ「ベルゲルミル」といふ
六頭
(
ろくとう
)
の
巨人
(
きよじん
)
だけは、
108
おのが
妻
(
つま
)
と
一
(
いつ
)
しよに
一艘
(
いつそう
)
の
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
り
込
(
こ
)
んで、
109
血
(
ち
)
の
海
(
うみ
)
の
上
(
うへ
)
を
漕
(
こ
)
いで
漕
(
こ
)
いで
世界
(
せかい
)
の
果
(
は
)
ての
果
(
は
)
てまで
逃
(
に
)
げて
行
(
い
)
つてしまつた。
110
「ベルゲルミル」
夫婦
(
ふうふ
)
が
落
(
お
)
ちて
行
(
い
)
つた
世界
(
せかい
)
は「ヨッツンハイム」と
呼
(
よ
)
ばれる。
111
二人
(
ふたり
)
はこの
世界
(
せかい
)
に
住
(
す
)
み
留
(
とどま
)
つて、
112
新
(
あたら
)
しい「
霜
(
しも
)
の
巨人
(
きよじん
)
」どもを
生
(
う
)
んだ。
113
『わたしたちが、
114
こんな
寒
(
さむ
)
いわびしい
世界
(
せかい
)
に
住
(
す
)
むやうになつたのも、
115
全
(
まつた
)
く
神々
(
かみがみ
)
のせゐだ。
116
思
(
おも
)
へば
憎
(
にく
)
い
奴
(
やつ
)
等
(
ら
)
ではある』
117
「ベルゲルミル」
夫婦
(
ふうふ
)
は、
118
いつも
口癖
(
くちぐせ
)
のやうに、
119
かう
話
(
はな
)
しあふのであつた。
120
だから「
霜
(
しも
)
の
巨人
(
きよじん
)
」どもも、
121
両親
(
りやうしん
)
の
恨
(
うらみ
)
をうけついで、
122
神々
(
かみがみ
)
を
目
(
め
)
の
敵
(
かたき
)
のやうに
思
(
おも
)
ひなし、
123
折
(
をり
)
さへあると
自分
(
じぶん
)
の
世界
(
せかい
)
から
脱
(
ぬ
)
け
出
(
だ
)
して
神々
(
かみがみ
)
のゐるところに
襲
(
おそ
)
ひかかるやうになつた。
124
天地
(
てんち
)
万物
(
ばんぶつ
)
の
創成
(
さうせい
)
125
神々
(
かみがみ
)
は、
126
その
強敵
(
きやうてき
)
である
巨人
(
きよじん
)
どもにうち
勝
(
か
)
つことが
出来
(
でき
)
たので、
127
茫々
(
ばうばう
)
たる
虚無
(
きよむ
)
の
空際
(
そらぎは
)
を
普
(
あまね
)
く
見渡
(
みわた
)
して、
128
確
(
たし
)
かな、
129
そして
住
(
す
)
みよい
世界
(
せかい
)
を
造
(
つく
)
らうと
決心
(
けつしん
)
した。
130
「オーディン」は「フィリ」と「フェ」とに
対
(
むか
)
つて、
131
『わしたちは、
132
先
(
ま
)
づしつかりした、
133
形
(
かたち
)
のある
世界
(
せかい
)
を
造
(
つく
)
らなくてはならぬ。
134
それには
巨魔
(
きよま
)
「イミル」の
体
(
からだ
)
を
使
(
つか
)
ふのが
一番
(
いちばん
)
いいと
思
(
おも
)
ふ』
135
と
言
(
い
)
つた。
136
「フィリ」と「フェ」とはすぐにそれに
同意
(
どうい
)
した。
137
そこで
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
神
(
かみ
)
は「イミル」の
大
(
おほ
)
きな
体
(
からだ
)
を「ギンヌンガ・ギャップ」のただなかに
引
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
つて
来
(
き
)
て、
138
体
(
からだ
)
の
肉
(
にく
)
で
大地
(
だいち
)
をつくり、
139
流
(
なが
)
れほとばしる
血
(
ち
)
で
海
(
うみ
)
をつくり、
140
大
(
おほ
)
きな
骨
(
ほね
)
で
山
(
やま
)
や
丘
(
をか
)
をつくり、
141
顎
(
あご
)
や
歯
(
は
)
や
砕
(
くだ
)
けた
骨
(
ほね
)
で
大石
(
おほいし
)
小石
(
こいし
)
をつくり、
142
髪
(
かみ
)
の
毛
(
け
)
で
樹
(
き
)
や
草
(
くさ
)
をつくつた。
143
神々
(
かみがみ
)
は
大地
(
だいち
)
を
宇宙
(
うちう
)
の
真中
(
まんなか
)
に
据
(
す
)
ゑた。
144
そしてそのまはりに、
145
隈
(
くま
)
なく「イミル」の
睫毛
(
まつげ
)
を
植
(
う
)
ゑて
堅固
(
けんご
)
の
砦
(
とりで
)
とし、
146
またそのまはりに
海
(
うみ
)
をひきはへて、
147
二重
(
にぢう
)
の
砦
(
とりで
)
とした。
148
『
大地
(
だいち
)
はゆくゆく
人間
(
にんげん
)
といふものの
住居
(
すまゐ
)
となすはずぢや。
149
だから
出来
(
でき
)
るだけ
守備
(
まもり
)
を
固
(
かた
)
くして、
150
巨人
(
きよじん
)
どもの
災
(
わざはひ
)
から
免
(
のが
)
れるやうにしてやらなくてはならぬ』
151
「オーディン」はかう
言
(
い
)
つて「フィリ」と「フェ」とを
顧
(
かへり
)
みて、
152
快
(
こころよ
)
げに
微笑
(
ほほゑ
)
んだ。
153
それから「イミル」の
大
(
おほ
)
きな
頭蓋骨
(
づがいこつ
)
を
大地
(
だいち
)
の
遥
(
はる
)
か
上
(
うへ
)
に
投
(
な
)
げあげて、
154
円
(
まる
)
い
天空
(
てんくう
)
をこしらへ、
155
頭脳
(
づなう
)
をそこに
撒
(
ま
)
きちらして、
156
羊
(
ひつじ
)
の
毛
(
け
)
の
様
(
やう
)
な
雲
(
くも
)
をこしらへた。
157
投
(
な
)
げ
上
(
あ
)
げただけでは、
158
天空
(
てんくう
)
が
墜
(
お
)
ちて
来
(
く
)
る
心配
(
しんぱい
)
がある。
159
そこで
神々
(
かみがみ
)
は、
160
力
(
ちから
)
の
強
(
つよ
)
い
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
侏儒
(
こびと
)
を
世界
(
せかい
)
の
四隅
(
よすみ
)
に
送
(
おく
)
つて、
161
その
肩
(
かた
)
で
天空
(
てんくう
)
を
支
(
ささ
)
へさせることにした。
162
東
(
ひがし
)
の
隅
(
すみ
)
を
支
(
ささ
)
へる
侏儒
(
こびと
)
は「アウストリ」と
呼
(
よ
)
ばれ、
163
西
(
にし
)
の
隅
(
すみ
)
を
支
(
ささ
)
へる
侏儒
(
こびと
)
は「ウエストリ」と
呼
(
よ
)
ばれ、
164
南
(
みなみ
)
の
隅
(
すみ
)
を
支
(
ささ
)
へる
侏儒
(
こびと
)
は「スードリ」と
呼
(
よ
)
ばれ、
165
北
(
きた
)
の
隅
(
すみ
)
を
支
(
ささ
)
へる
侏儒
(
こびと
)
は「ノルドリ」と
呼
(
よ
)
ばれた。
166
英語
(
えいご
)
で
東西
(
とうざい
)
南北
(
なんぼく
)
をそれぞれEast,West,South,Northといふのは、
167
これが
為
(
た
)
めである。
168
たしかな、
169
形
(
かたち
)
ある
世界
(
せかい
)
が、
170
かうして
出来上
(
できあが
)
つた。
171
しかしまだ
光
(
ひかり
)
がない。
172
光
(
ひかり
)
がなくてはありとある
世界
(
せかい
)
は、
173
恐
(
おそ
)
ろしい
常暗
(
とこやみ
)
に
閉
(
とざ
)
されてゐなくてはならぬ。
174
そこで
神々
(
かみがみ
)
は、
175
極熱
(
ごくねつ
)
世界
(
せかい
)
「ムスベルハイム」から
迸
(
ほとばし
)
り
出
(
で
)
る
数知
(
かずし
)
れぬ
火花
(
ひばな
)
を
採
(
と
)
りあつめて、
176
広々
(
ひろびろ
)
とした
空
(
そら
)
に
撒
(
ま
)
きちらした。
177
火花
(
ひばな
)
は
大空
(
たいくう
)
に
燦
(
かがや
)
きわたつて、
178
世界
(
せかい
)
を
明
(
あか
)
るくするやうになつた。
179
人
(
ひと
)
の
子
(
こ
)
が
星
(
ほし
)
と
呼
(
よ
)
んでゐるのがこれである。
180
それから
神々
(
かみがみ
)
は「ムスベルハイム」から
閃
(
ひらめ
)
き
出
(
だ
)
した
最
(
もつと
)
も
大
(
おほ
)
きな
二
(
ふた
)
つの
火花
(
ひばな
)
を
天空
(
てんくう
)
に
投
(
な
)
げ
上
(
あ
)
げた。
181
人間
(
にんげん
)
が
太陽
(
たいやう
)
と
呼
(
よ
)
び、
182
月
(
つき
)
と
呼
(
よ
)
んでゐるのが、
183
それである。
184
神々
(
かみがみ
)
は
太陽
(
たいやう
)
と
月
(
つき
)
とのために、
185
美
(
うつく
)
しい
黄金
(
こがね
)
の
車
(
くるま
)
をつくつた。
186
そして
太陽
(
たいやう
)
をのせた
車
(
くるま
)
に「アルファクル」(
朝
(
あさ
)
はやく
目
(
め
)
を
覚
(
さ
)
ますものといふ
意味
(
いみ
)
)といふ
馬
(
うま
)
と、
187
「アルスフィン」(
迅
(
はや
)
く
行
(
ゆ
)
くものの
義
(
ぎ
)
)といふ
馬
(
うま
)
をつなぎ、
188
月
(
つき
)
をのせた
車
(
くるま
)
に「アルスフィデル」(
全
(
まつた
)
く
速
(
すみや
)
かなるものの
義
(
ぎ
)
)といふ
馬
(
うま
)
をつないだ。
189
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
は
蒼白
(
あをじろ
)
くて
冷
(
つめ
)
たいが、
190
太陽
(
たいやう
)
の
光
(
ひかり
)
はあらゆるものを
焼
(
や
)
きつくすやうに
熱
(
あつ
)
い。
191
だから
神々
(
かみがみ
)
は、
192
太陽
(
たいやう
)
の
車
(
くるま
)
をひく
馬
(
うま
)
のために、
193
二
(
ふた
)
つの
革袋
(
かはぶくろ
)
に
冷
(
つめ
)
たい
空気
(
くうき
)
をつめて、
194
その
肩
(
かた
)
に
結
(
むす
)
びつけ、
195
また「スファリン」(
冷
(
ひや
)
すものの
義
(
ぎ
)
)といふ
楯
(
たて
)
をつくつて、
196
車
(
くるま
)
の
前部
(
ぜんぶ
)
にかけることにした。
197
楯
(
たて
)
が
太陽
(
たいやう
)
の
光線
(
ひかり
)
をさへぎつてくれなければ、
198
馬
(
うま
)
は
見
(
み
)
る
見
(
み
)
る
焼
(
や
)
け
爛
(
ただ
)
れて、
199
はては
燃滓
(
もえかす
)
となつて、
200
大地
(
だいち
)
に
墜
(
お
)
ちてゆくにちがひない。
201
かうして
太陽
(
たいやう
)
と
月
(
つき
)
とは、
202
もう
動
(
うご
)
き
出
(
だ
)
すばかりになつたが、
203
馬
(
うま
)
を
導
(
みちび
)
いてくれるものがないと、
204
日毎
(
ひごと
)
正
(
ただ
)
しい
道
(
みち
)
を
往来
(
ゆきき
)
することが
出来
(
でき
)
ぬ。
205
『
誰
(
たれ
)
に
馬
(
うま
)
を
駆
(
か
)
らせる
事
(
こと
)
にしよう。
206
うつかりしたものにこの
役
(
やく
)
を
任
(
まか
)
せると、
207
大変
(
たいへん
)
なことになつてしまふのだから』
208
神々
(
かみがみ
)
はかういつて、
209
普
(
あまね
)
く
世界
(
せかい
)
を
見
(
み
)
わたすと、
210
「ムンディルファリ」といふ
巨人
(
きよじん
)
の
子
(
こ
)
たちに
目
(
め
)
がついた。
211
「ムンディルファリ」は、
212
それが
誇
(
ほこ
)
らしくてたまらなくて、
213
男
(
をとこ
)
の
子
(
こ
)
に「マニ」といふ
名
(
な
)
をつけ、
214
女
(
をんな
)
の
子
(
こ
)
に「リル」といふ
名
(
な
)
をつけた。
215
「マニ」は「
月
(
つき
)
」のことであり「リル」は「
太陽
(
たいやう
)
」のことである。
216
神々
(
かみがみ
)
は、
217
この
二人
(
ふたり
)
に
太陽
(
たいやう
)
と
月
(
つき
)
との
馬
(
うま
)
を
導
(
みちび
)
かせ
様
(
やう
)
と
決心
(
けつしん
)
した。
218
そこで
巨人
(
きよじん
)
「ムンディルファリ」に
相談
(
さうだん
)
して
二人
(
ふたり
)
を
貰
(
もら
)
ひ
受
(
う
)
けて、
219
これを
天空
(
てんくう
)
に
送
(
おく
)
つた。
220
『そなたたちは
空
(
そら
)
にのぼつて、
221
太陽
(
たいやう
)
と
月
(
つき
)
とに
正
(
ただ
)
しい
道
(
みち
)
を
往来
(
ゆきき
)
さしてもらひたい。
222
少
(
すこ
)
しでも
道
(
みち
)
をあやまると
大変
(
たいへん
)
なことになるのだから、
223
よく
気
(
き
)
をつけるやうに』
224
神々
(
かみがみ
)
からかういひつかつた
二人
(
ふたり
)
は、
225
天空
(
てんくう
)
に
昇
(
のぼ
)
つて
行
(
い
)
つて、
226
「リル」が
太陽
(
たいやう
)
の
道
(
みち
)
しるべをつとめ、
227
「マニ」が
月
(
つき
)
の
道
(
みち
)
しるべをつとめることになつた。
228
次
(
つぎ
)
に
神々
(
かみがみ
)
は、
229
巨人
(
きよじん
)
の
世界
(
せかい
)
「ヨッツンハイム」から「ノルフィ」といふ
巨人
(
きよじん
)
の
娘
(
むすめ
)
「ノット」(
夜
(
よる
)
といふ
義
(
ぎ
)
)を
呼
(
よ
)
びよせて、
230
「
夜
(
よる
)
の
車
(
くるま
)
」を
掌
(
つかさど
)
らせることにした。
231
「
夜
(
よる
)
の
車
(
くるま
)
」は
闇
(
やみ
)
の
色
(
いろ
)
をしてゐる。
232
そしてそれを
牽
(
ひ
)
く
馬
(
うま
)
も
墨
(
すみ
)
のやうな
黒毛
(
くろげ
)
である。
233
黒面
(
こくめん
)
の「ノット」が
静
(
しづ
)
かに
鞭
(
むち
)
を
振
(
ふ
)
ると、
234
黒毛
(
くろげ
)
の
馬
(
うま
)
は
長
(
なが
)
い
長
(
なが
)
い
鬣
(
たてがみ
)
を
揺
(
ゆる
)
がせて、
235
除
(
おもむ
)
ろに「
夜
(
よる
)
の
車
(
くるま
)
」をきしらせ
始
(
はじ
)
める。
236
揺
(
ゆ
)
れ
動
(
うご
)
く
鬣
(
たてがみ
)
からは、
237
霜
(
しも
)
と
霜
(
しも
)
とがふりこぼれて、
238
音
(
おと
)
もなく
大地
(
だいち
)
に
墜
(
お
)
ちる。
239
かうして
人間界
(
にんげんかい
)
に
夜
(
よる
)
が
来
(
く
)
るのであつた。
240
夜
(
よる
)
の
乙女
(
おとめ
)
「ノット」は「デリング」(
曙
(
あけぼの
)
を
意味
(
いみ
)
す)といふ
神
(
かみ
)
と
結婚
(
けつこん
)
して、
241
「ダグ」(
昼
(
ひる
)
を
意味
(
いみ
)
す)といふ
光
(
ひか
)
り
輝
(
かがや
)
く
美
(
うつく
)
しい
男
(
をとこ
)
の
子
(
こ
)
を
産
(
う
)
んだ。
242
神々
(
かみがみ
)
は「ダグ」の
輝
(
かがや
)
かしい
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
ると、
243
これを
呼
(
よ
)
び
出
(
だ
)
して「
昼
(
ひる
)
の
車
(
くるま
)
」を
掌
(
つかさど
)
らせることにした。
244
「
昼
(
ひる
)
の
車
(
くるま
)
」は
華
(
はな
)
やかに
燦
(
かがや
)
き
渡
(
わた
)
つてゐる。
245
そしてそれを
牽
(
ひ
)
く
馬
(
うま
)
もまぶしい
様
(
やう
)
に
光
(
ひか
)
る
白毛
(
しろげ
)
である。
246
白面
(
はくめん
)
の「ダグ」が
静
(
しづ
)
かに
鞭
(
むち
)
をふると、
247
白毛
(
しろげ
)
の
馬
(
うま
)
はきらめく
鬣
(
たてがみ
)
を
揺
(
ゆる
)
がせて、
248
徐
(
おもむ
)
ろに「
昼
(
ひる
)
の
車
(
くるま
)
」をきしらせ
始
(
はじ
)
める。
249
揺
(
ゆ
)
れ
動
(
うご
)
く
鬣
(
たてがみ
)
からは、
250
光
(
ひかり
)
がさつと
閃
(
ひらめ
)
き
出
(
だ
)
して、
251
あらゆる
世界
(
せかい
)
に
明
(
あか
)
るさと
喜
(
よろこ
)
びとを
漲
(
みなぎ
)
らす。
252
かうして
人間界
(
にんげんかい
)
に
昼
(
ひる
)
が
来
(
く
)
るのであつた。
253
しかし
善
(
よ
)
きもの
義
(
ただ
)
しきものには、
254
いつも
悪
(
あ
)
しきもの
邪
(
よこしま
)
なものがつきまとふ。
255
人間界
(
にんげんかい
)
に
光
(
ひかり
)
を
与
(
あた
)
へる
太陽
(
たいやう
)
と
月
(
つき
)
とにも、
256
恐
(
おそ
)
ろしい
敵
(
てき
)
があつた。
257
それは
猛々
(
たけだけ
)
しい
二匹
(
にひき
)
の
狼
(
おほかみ
)
であつた。
258
狼
(
おほかみ
)
の
一
(
ひと
)
つは「スコル」と
呼
(
よ
)
ばれ、
259
他
(
た
)
の
一
(
ひと
)
つは「ハーチ」と
呼
(
よ
)
ばれた。
260
「スコル」は「
反抗
(
はんかう
)
」といふ
意
(
い
)
であり、
261
「ハーチ」は「
憎悪
(
ぞうを
)
」といふ
意味
(
いみ
)
である。
262
『
追
(
お
)
つかけろ
追
(
お
)
つかけろ。
263
どこまでも
追
(
お
)
つかけて、
264
太陽
(
たいやう
)
と
月
(
つき
)
とを
呑
(
の
)
んでしまはなくてはならぬ。
265
あらゆる
世界
(
せかい
)
が
再
(
ふたた
)
び
永久
(
えいきう
)
の
闇
(
やみ
)
につつまれてしまふやうに』
266
二匹
(
にひき
)
の
狼
(
おほかみ
)
はかう
叫
(
さけ
)
んで、
267
凄
(
すさま
)
じい
勢
(
いきほひ
)
で
絶
(
た
)
えず
太陽
(
たいやう
)
と
月
(
つき
)
とを
追
(
お
)
つかける。
268
太陽
(
たいやう
)
や「
月
(
つき
)
の
車
(
くるま
)
」をひく
馬
(
うま
)
は、
269
それに
脅
(
おび
)
えて
懸命
(
けんめい
)
に
駈
(
か
)
け
出
(
だ
)
すのであるが、
270
ときどき
狼
(
おほかみ
)
に
追
(
お
)
ひつかれて、
271
大
(
おほ
)
きな
口
(
くち
)
の
中
(
なか
)
に
嚥
(
の
)
みこまれかける。
272
人
(
ひと
)
の
子
(
こ
)
が
日蝕
(
につしよく
)
といひ
月触
(
げつしよく
)
といふ
現象
(
げんしやう
)
はかうして
起
(
おこ
)
るのである。
273
人
(
ひと
)
の
子
(
こ
)
は
世界
(
せかい
)
が
急
(
きふ
)
に
暗
(
くら
)
くなりかけるのに
驚
(
おどろ
)
き
怖
(
おそ
)
れて、
274
一斉
(
いちせい
)
にあらん
限
(
かぎ
)
りの
音
(
おと
)
を
立
(
た
)
てたり
叫
(
さけ
)
んだりする。
275
と、
276
流石
(
さすが
)
の
狼
(
おほかみ
)
もびつくりして、
277
嚥
(
の
)
みかけてゐた
太陽
(
たいやう
)
や
月
(
つき
)
を
吐
(
は
)
き
出
(
だ
)
してしまふ。
278
「
月
(
つき
)
の
車
(
くるま
)
」を
司
(
つかさど
)
る「マニ」は、
279
神々
(
かみがみ
)
の
言
(
い
)
ひつけによつて
大空
(
おほぞら
)
に
昇
(
のぼ
)
つて
行
(
い
)
つたときに、
280
二人
(
ふたり
)
の
子供
(
こども
)
を
大地
(
だいち
)
に
残
(
のこ
)
しておいた。
281
子供
(
こども
)
の
名
(
な
)
は「ヒウキ」といひ「ビル」といつた。
282
「ヒウキ」は「
次第
(
しだい
)
に
大
(
おほ
)
きくなるもの」といふ
意味
(
いみ
)
であり、
283
「ビル」は「
次第
(
しだい
)
に
細
(
ほそ
)
くなるもの」といふ
意味
(
いみ
)
である。
284
「マニ」は
子供
(
こども
)
のことが
気
(
き
)
になるので、
285
ある
時
(
とき
)
天界
(
てんかい
)
から
遥
(
はる
)
か
下
(
した
)
なる
大地
(
だいち
)
を
眺
(
なが
)
めおろして
見
(
み
)
た。
286
と、
287
二人
(
ふたり
)
の
子供
(
こども
)
は、
288
意地
(
いぢ
)
の
悪
(
わる
)
い
男
(
をとこ
)
に
使
(
つか
)
ひ
廻
(
まは
)
されて、
289
夜
(
よ
)
もすがら
水
(
みづ
)
を
運
(
はこ
)
んでゐるのであつた。
290
「マニ」はすつかり
怒
(
おこ
)
り
出
(
だ
)
して、
291
『あんなひどい
男
(
をとこ
)
のそばに、
292
大事
(
だいじ
)
な
子供
(
こども
)
を
置
(
お
)
いておくわけにいかぬ。
293
ここに
呼
(
よ
)
びよせることにしよう』
294
といつて、
295
二人
(
ふたり
)
を
大空
(
おほぞら
)
に
呼
(
よ
)
びよせた。
296
かうして
月
(
つき
)
は
夜
(
よ
)
ごとに
大
(
おほ
)
きくなつたり、
297
細
(
ほそ
)
くなつたりするやうになつた。
298
神々
(
かみがみ
)
は、
299
太陽
(
たいやう
)
と
月
(
つき
)
と「
昼
(
ひる
)
」と「
夜
(
よる
)
」に
言
(
い
)
ひつけて、
300
一
(
いち
)
年
(
ねん
)
の
月日
(
つきひ
)
の
進
(
すす
)
みかたの
印
(
しるし
)
をつけさせることにしたばかりでなく、
301
さらにまた「
夕方
(
ゆふがた
)
」「
真夜中
(
まよなか
)
」「
朝
(
あさ
)
」「
午前
(
ごぜん
)
」「
正午
(
しやうご
)
」「
午後
(
ごご
)
」にも、
302
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
と
力
(
ちから
)
を
合
(
あは
)
せて、
303
同
(
おな
)
じやうな
務
(
つとめ
)
を
尽
(
つく
)
すように
命
(
めい
)
じた。
304
昔
(
むかし
)
の
北欧
(
ほくおう
)
では、
305
一
(
いち
)
年
(
ねん
)
は
夏
(
なつ
)
と
冬
(
ふゆ
)
との
二
(
ふた
)
つに
分
(
わか
)
れてゐるだけであつた。
306
「
夏
(
なつ
)
」は
優
(
やさ
)
しくおとなしい
男
(
をとこ
)
で、
307
あらゆるものから
愛
(
あい
)
せられてゐたが、
308
「
冬
(
ふゆ
)
」は
気
(
き
)
が
荒
(
あら
)
くて、
309
意地
(
いぢ
)
が
悪
(
わる
)
くて、
310
すべてのものから
憎
(
にく
)
まれた。
311
北欧
(
ほくおう
)
の
冬
(
ふゆ
)
はひどく
寒
(
さむ
)
い。
312
そして
身
(
み
)
を
切
(
き
)
るやうな
風
(
かぜ
)
が、
313
絶
(
た
)
えず
吹
(
ふ
)
きすさぶのであつた。
314
「フリースフェルグル」(
屍
(
しかばね
)
をのむものの
義
(
ぎ
)
)といふ
巨人
(
きよじん
)
がゐて、
315
鷲
(
わし
)
の
羽衣
(
はごろも
)
を
纒
(
まと
)
うて、
316
天界
(
てんかい
)
の
北
(
きた
)
の
果
(
は
)
ての
果
(
は
)
てに
坐
(
すわ
)
りこんでゐる。
317
この
巨人
(
きよじん
)
が
羽衣
(
はごろも
)
の
翼
(
つばさ
)
をひろげて、
318
はたはたと
煽
(
あふ
)
ると、
319
剣
(
つるぎ
)
のやうな
寒風
(
かんぷう
)
がさつと
吹
(
ふ
)
き
出
(
だ
)
して、
320
容赦
(
ようしや
)
なく
大地
(
だいち
)
の
面
(
おも
)
を
荒
(
あ
)
れまはつては、
321
あらゆるものを
枯
(
か
)
れ
凋
(
しぼ
)
ませるのであつた。
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