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霊界物語
天祥地瑞(第73~81巻)
第76巻(卯の巻)
序文
総説
日本所伝の天地開闢説
支那の開闢説
波斯の宇宙創造説
希臘の天地開闢説
エヂプトの開闢説
メキシコナフア族の天地創造説
マヤ族の万物創造説
北欧に於ける宇宙創造説
太平洋西北岸創造説
英領北亜米利加創造説
亜弗利加神話
ヘブライ天地創造説
パレスチン創造説
ミクロネシヤ創造説
インドネシヤ創造説
第1篇 春風駘蕩
第1章 高宮参拝
第2章 魔の渓流
第3章 行進歌
第4章 怪しの巌山
第5章 露の宿
第2篇 晩春の神庭
第6章 報告祭
第7章 外苑の逍遥
第8章 善言美霊
第3篇 孤軍奮闘
第9章 闇の河畔
第10章 二本松の蔭
第11章 栄城の山彦
第12章 山上の祈り
第13章 朝駒の別れ
第14章 磐楠舟
第15章 御舟巌
余白歌
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(B)
(N)
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阿弗利加
(
アフリカ
)
神話
(
しんわ
)
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯の巻
篇:
前付
よみ(新仮名遣い):
章:
亜弗利加神話
よみ(新仮名遣い):
あふりかしんわ
通し章番号:
口述日:
1933(昭和8)年12月07日(旧10月20日)
口述場所:
水明閣
筆録者:
林弥生
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1934(昭和9)年3月23日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm760013
愛善世界社版:
八幡書店版:
第13輯 466頁
修補版:
校定版:
90頁
普及版:
初版:
ページ備考:
校定版・八幡版ともに目次「亜」、本文「阿」。
001
怠惰
(
たいだ
)
カメレオン
002
世界
(
せかい
)
の
初
(
はじ
)
めに、
003
ウンクルンクルといふ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が、
004
一匹
(
いつぴき
)
のカメレオンを
呼
(
よ
)
び
出
(
だ
)
して、
005
『
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが、
006
大地
(
だいち
)
に
降
(
くだ
)
つて
行
(
い
)
つて、
007
人間
(
にんげん
)
どもに、
008
「お
前
(
まへ
)
たちはいつまでも
死
(
し
)
ななくてよい」と、
009
さういつておくれ』
010
と
言
(
い
)
ひました。
011
カメレオンはすぐに
天界
(
てんかい
)
から
大地
(
だいち
)
をさして
出
(
で
)
かけてゆきました。
012
しかしちつとも
道
(
みち
)
を
急
(
いそ
)
がないで、
013
木
(
こ
)
の
実
(
み
)
を
摘
(
つま
)
んで
食
(
た
)
べたり、
014
樹
(
き
)
の
枝
(
えだ
)
に
登
(
のぼ
)
つて
虫
(
むし
)
を
探
(
さが
)
したりしてゐました。
015
その
中
(
うち
)
にお
腹
(
なか
)
が
一
(
いつ
)
ぱいになつて、
016
睡気
(
ねむけ
)
がさして
来
(
き
)
たので、
017
日
(
ひ
)
なたぼつこをしながら、
018
こくりこくりと
眠
(
ねむ
)
り
出
(
だ
)
しました。
019
そのうちにウンクルンクルの
気
(
き
)
が
変
(
かは
)
つて
来
(
き
)
ました。
020
ウンクルンクルは
一匹
(
いつぴき
)
の
蜥蜴
(
とかげ
)
を
呼
(
よ
)
び
出
(
だ
)
して、
021
『
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが、
022
大地
(
だいち
)
に
降
(
お
)
りて
行
(
い
)
つて、
023
人間
(
にんげん
)
どもに「お
前
(
まへ
)
たちは
何時
(
いつ
)
かは
死
(
し
)
ななくてはならぬ」と、
024
さういつておくれ』
025
と
言
(
い
)
ひました。
026
蜥蜴
(
とかげ
)
はすぐに
天界
(
てんかい
)
から
出
(
で
)
かけました。
027
そして、
028
ひたすら
路
(
みち
)
を
急
(
いそ
)
ぎましたので、
029
途中
(
とちう
)
でカメレオンを
追
(
お
)
ひ
越
(
こ
)
して、
030
真先
(
まつさき
)
に
大地
(
だいち
)
に
着
(
つ
)
きました。
031
そして
人間
(
にんげん
)
たちに
対
(
むか
)
つて、
032
『お
前
(
まへ
)
たちは、
033
何時
(
いつ
)
かは
死
(
し
)
ななくてはならぬ、
034
とウンクルンクルさまがさうおつしやつたよ』
035
といつて、
036
すぐさま
天界
(
てんかい
)
をさして
引
(
ひ
)
き
返
(
かへ
)
しました。
037
それから
暫
(
しばら
)
くたつて、
038
カメレオンがやつと
大地
(
だいち
)
に
着
(
つ
)
きました。
039
そして
人間
(
にんげん
)
たちに
対
(
むか
)
つて、
040
『お
前
(
まへ
)
たちは、
041
何時
(
いつ
)
までも
死
(
し
)
ななくてよいと、
042
ウンクルンクルさまが、
043
さうおつしやつたよ』
044
と
伝
(
つた
)
へました。
045
人間
(
にんげん
)
たちはそれを
聞
(
き
)
くと、
046
気色
(
けしき
)
ばんで、
047
『わたし
達
(
たち
)
は、
048
たつた
今
(
いま
)
蜥蜴
(
とかげ
)
の
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
いたところだよ。
049
わたし
達
(
たち
)
はいつか
死
(
し
)
ななくてはならぬと、
050
蜥蜴
(
とかげ
)
がさういつたよ。
051
お
前
(
まへ
)
のいふことなんか
当
(
あて
)
にならぬ』
052
と
叫
(
さけ
)
びました。
053
かうして
人間
(
にんげん
)
は
死
(
し
)
ななくてはならぬやうになりました。
054
(ズル族)
055
註
同一
(
どういつ
)
の
神話
(
しんわ
)
が、
056
ベチユアナ
族
(
ぞく
)
、
057
バロンガ
族
(
ぞく
)
、
058
バスト
族
(
ぞく
)
等
(
とう
)
の
間
(
あひだ
)
に
語
(
かた
)
られてゐます。
059
今日
(
こんにち
)
でもバロンガ
族
(
ぞく
)
は、
060
カメレオンの
怠惰
(
たいだ
)
が
死
(
し
)
を
齎
(
もたら
)
したとして、
061
之
(
これ
)
を
憎
(
にく
)
んでゐます。
062
子供
(
こども
)
などは、
063
カメレオンを
見
(
み
)
つけると、
064
その
口
(
くち
)
に
煙草
(
たばこ
)
をつめ
込
(
こ
)
んで、
065
苦
(
くる
)
しさに
青
(
あを
)
くなり
黒
(
くろ
)
くなりするのを
眺
(
なが
)
めて
喜
(
よろこ
)
んでゐます。
066
兎
(
うさぎ
)
の
粗忽
(
そこつ
)
067
あるとき
天界
(
てんかい
)
にゐる
月
(
つき
)
が、
068
一匹
(
いつぴき
)
の
兎
(
うさぎ
)
を
呼
(
よ
)
び
出
(
だ
)
して、
069
『お
前
(
まへ
)
、
070
これから
大地
(
だいち
)
に
降
(
くだ
)
つて
行
(
い
)
つて、
071
人間
(
にんげん
)
たちに「お
月様
(
つきさま
)
が
死
(
し
)
んでまた
生
(
い
)
き
返
(
かへ
)
るやうに
人間
(
にんげん
)
も
死
(
し
)
んでまた
生
(
い
)
き
返
(
かへ
)
るやうにしてやる」と
伝
(
つた
)
へておくれ』
072
といひつけました。
073
兎
(
うさぎ
)
はすぐに
天界
(
てんかい
)
から
大地
(
だいち
)
へ
降
(
くだ
)
つて
行
(
ゆ
)
きました。
074
そして
人間
(
にんげん
)
たちに
対
(
むか
)
つて、
075
『お
月
(
つき
)
さまが
死
(
し
)
んで
再
(
ふたた
)
び
生
(
い
)
き
返
(
かへ
)
ることがないやうに、
076
お
前
(
まへ
)
たちも
一旦
(
いつたん
)
死
(
し
)
んだら、
077
生
(
い
)
きかへることは
出来
(
でき
)
ないよ』
078
といひました。
079
兎
(
うさぎ
)
は
月
(
つき
)
がいつた
言葉
(
ことば
)
を
忘
(
わす
)
れて、
080
まるで
反対
(
はんたい
)
のことを
人間
(
にんげん
)
に
伝
(
つた
)
へたのでした。
081
しかし
兎
(
うさぎ
)
は、
082
大切
(
たいせつ
)
な
役目
(
やくめ
)
を
無事
(
ぶじ
)
に
済
(
す
)
ましたと
思
(
おも
)
つて、
083
得々
(
とくとく
)
として
天界
(
てんかい
)
に
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
ました。
084
月
(
つき
)
は
兎
(
うさぎ
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
ると、
085
すぐに、
086
『どうだね、
087
わしのいつた
通
(
とほ
)
りに
人間
(
にんげん
)
に
伝
(
つた
)
へて
来
(
き
)
たかね』
088
と
尋
(
たづ
)
ねました。
089
『ええ、
090
全
(
まつた
)
くお
言葉
(
ことば
)
の
通
(
とほ
)
りに
伝
(
つた
)
へてまゐりました』
091
と
兎
(
うさぎ
)
が
答
(
こた
)
へました。
092
『では、
093
お
前
(
まへ
)
のいつた
通
(
とほ
)
りを、
094
ここで
繰
(
く
)
り
返
(
かへ
)
して
見
(
み
)
るがいい』
095
と
月
(
つき
)
がいひました。
096
『はい、
097
お
月
(
つき
)
さまが
死
(
し
)
んで
再
(
ふたた
)
び
生
(
い
)
き
返
(
かへ
)
ることがないやうに、
098
お
前
(
まへ
)
たちも
一旦
(
いつたん
)
死
(
し
)
んだら
生
(
い
)
き
返
(
かへ
)
ることは
出来
(
でき
)
ないと、
099
かう
申
(
まを
)
し
伝
(
つた
)
へました』
100
と
兎
(
うさぎ
)
が
答
(
こた
)
へました。
101
これを
聞
(
き
)
くと
月
(
つき
)
は
大変
(
たいへん
)
怒
(
いか
)
つて、
102
いきなり
棒
(
ぼう
)
を
取
(
と
)
り
上
(
あ
)
げて、
103
兎
(
うさぎ
)
を
目
(
め
)
がけて
投
(
な
)
げつけました。
104
棒
(
ぼう
)
は
兎
(
うさぎ
)
の
唇
(
くちびる
)
に
当
(
あた
)
つて、
105
そこを
傷
(
きず
)
つけました。
106
兎
(
うさぎ
)
はあまりの
痛
(
いた
)
さに、
107
夢中
(
むちう
)
になつて
月
(
つき
)
に
飛
(
と
)
びかかるなり、
108
その
顔
(
かほ
)
をさんざんひつ
掻
(
か
)
きました。
109
かうして
兎
(
うさぎ
)
の
言伝
(
ことづて
)
の
間違
(
まちがひ
)
から、
110
人間
(
にんげん
)
は
死
(
し
)
ななくてはならぬやうになり、
111
かうして
兎
(
うさぎ
)
の
唇
(
くちびる
)
は
今日
(
こんにち
)
まで
裂
(
さ
)
けて
居
(
を
)
り、
112
又
(
また
)
かうして
月
(
つき
)
の
顔
(
かほ
)
は
今
(
いま
)
でも
傷
(
きず
)
だらけであります。
113
(ホッテントット族)
114
註これに
類似
(
るゐじ
)
した
神話
(
しんわ
)
が、
115
東部
(
とうぶ
)
亜弗利加
(
アフリカ
)
のマサイ
族
(
ぞく
)
の
間
(
あひだ
)
にも
存
(
そん
)
してゐます。
116
ナイテル・コプといふ
神
(
かみ
)
がレ・エヨといふ
男
(
をとこ
)
に「
子供
(
こども
)
が
死
(
し
)
んだら
空
(
そら
)
に
投
(
な
)
げ
上
(
あ
)
げて、
117
月
(
つき
)
のやうに
死
(
し
)
んでまた
生
(
い
)
き
返
(
かへ
)
れ」といへと
教
(
をし
)
へましたが、
118
死
(
し
)
んだのが
自分
(
じぶん
)
の
子
(
こ
)
でなかつたので、
119
神
(
かみ
)
に
教
(
をし
)
へられた
言葉
(
ことば
)
に
反対
(
はんたい
)
を
唱
(
とな
)
へました。
120
かうして
人間
(
にんげん
)
は
死
(
し
)
ぬやうになつたといふのであります。
121
月
(
つき
)
は
何故
(
なぜ
)
虧
(
か
)
けるか
122
ある
時
(
とき
)
太陽
(
たいやう
)
が
月
(
つき
)
に
対
(
たい
)
して
大変
(
たいへん
)
腹
(
はら
)
を
立
(
た
)
てました。
123
太陽
(
たいやう
)
は、
124
『
憎
(
にく
)
い
奴
(
やつ
)
、
125
ひどい
目
(
め
)
に
遭
(
あは
)
せてやるぞ』
126
といつて、
127
小刀
(
こがたな
)
をもつて
月
(
つき
)
のところに
行
(
ゆ
)
きました。
128
そして
月
(
つき
)
を
捕
(
とら
)
へて、
129
体
(
からだ
)
から
少
(
すこ
)
しばかり
肉
(
にく
)
を
切
(
き
)
り
落
(
おと
)
しました。
130
太陽
(
たいやう
)
は
毎日
(
まいにち
)
、
131
月
(
つき
)
のところにやつて
来
(
き
)
ては、
132
小刀
(
こがたな
)
で
少
(
すこ
)
しづつ
肉
(
にく
)
をそぎとります。
133
月
(
つき
)
の
体
(
からだ
)
はだんだんと
小
(
ちひ
)
さくなつて
行
(
ゆ
)
きました。
134
月
(
つき
)
は、
135
『これはどうもこまつたことになつた。
136
毎日
(
まいにち
)
肉
(
にく
)
を
切
(
き
)
りとられては、
137
今
(
いま
)
に
死
(
し
)
んでしまふだらう。
138
自分
(
じぶん
)
が
死
(
し
)
んだら、
139
子供
(
こども
)
を
養
(
やしな
)
つてやるものがなくなる。
140
どうにかして
生
(
い
)
きてゐたいものだ』
141
と
考
(
かんが
)
へ
悩
(
なや
)
みました。
142
で、
143
ある
日
(
ひ
)
太陽
(
たいやう
)
に
対
(
むか
)
つて、
144
『どうか、
145
今
(
いま
)
しばらく
肉
(
にく
)
を
切
(
き
)
り
落
(
おと
)
すことを
止
(
よ
)
しておくれ』
146
と
頼
(
たの
)
みました。
147
『なぜかね』
148
と
太陽
(
たいやう
)
が
尋
(
たづ
)
ねました。
149
『だつて、
150
わしの
体
(
からだ
)
はもうこんなに
小
(
ちひ
)
さくなつたらう。
151
この
上
(
うへ
)
肉
(
にく
)
を
切
(
き
)
りとられると、
152
死
(
し
)
んでしまふよ』
153
と
月
(
つき
)
が
悲
(
かな
)
しさうに
言
(
い
)
ひました。
154
『
死
(
し
)
んだつて、
155
おれはかまはないよ』
156
と
太陽
(
たいやう
)
がいひました。
157
『わしが
死
(
し
)
ぬと、
158
子供
(
こども
)
を
養
(
やしな
)
うてくれるものがゐなくなる。
159
それでは
余
(
あま
)
り
可哀
(
かあい
)
さうだから、
160
肉
(
にく
)
がついて
体
(
からだ
)
が
肥
(
ふと
)
るまで
待
(
ま
)
つておくれ』
161
と
月
(
つき
)
が
熱心
(
ねつしん
)
に
頼
(
たの
)
みました。
162
『なるほど、
163
それは
可哀
(
かあい
)
さうだ。
164
それなら、
165
お
前
(
まへ
)
が
肥
(
ふと
)
るまで
待
(
ま
)
つてやらう。
166
だが、
167
肉
(
にく
)
が
沢山
(
たくさん
)
ついたら、
168
また
切
(
き
)
り
落
(
おと
)
すんだよ』
169
太陽
(
たいやう
)
はかういつて
帰
(
かへ
)
つてゆきました。
170
かうして
太陽
(
たいやう
)
は
月
(
つき
)
の
体
(
からだ
)
が
大
(
おほ
)
きくなるのを
待
(
ま
)
つてはその
肉
(
にく
)
を
削
(
そ
)
ぎとるのでした。
171
だから
月
(
つき
)
はあんなに
大
(
おほ
)
きくなつたり
細
(
ほそ
)
くなつたりするのです。
172
太陽
(
たいやう
)
の
出現
(
しゆつげん
)
173
昔
(
むかし
)
あるところに
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
が
住
(
す
)
んでゐました。
174
その
男
(
をとこ
)
が
腕
(
うで
)
を
挙
(
あ
)
げると、
175
脇
(
わき
)
の下から
光
(
ひかり
)
がさしてあたりが
眩
(
まぶ
)
しい
程
(
ほど
)
明
(
あか
)
るくなるのでした。
176
人々
(
ひとびと
)
はそれを
大変
(
たいへん
)
不思議
(
ふしぎ
)
に
思
(
おも
)
つてゐました。
177
と、
178
ある
日
(
ひ
)
一人
(
ひとり
)
の
年
(
とし
)
をとつた
女
(
をんな
)
が、
179
他
(
た
)
の
人
(
ひと
)
たちに
対
(
むか
)
つて、
180
『
本当
(
ほんたう
)
にあの
男
(
をとこ
)
は
不思議
(
ふしぎ
)
な
男
(
をとこ
)
だね。
181
体
(
からだ
)
から
光
(
ひかり
)
が
出
(
で
)
るなんて、
182
今
(
いま
)
まで
聞
(
き
)
いたこともないよ。
183
あの
男
(
をとこ
)
を
空
(
そら
)
に
投
(
な
)
げようではないか。
184
さうしたらどこもかしこも
明
(
あか
)
るくなつて、
185
米
(
こめ
)
の
出来
(
でき
)
ばえもきつとよくなるに
違
(
ちが
)
ひないから』
186
といひました。
187
人々
(
ひとびと
)
は、
188
すぐに
年
(
とし
)
をとつた
女
(
をんな
)
の
話
(
はなし
)
に
同意
(
どうい
)
しました。
189
で、
190
男
(
をとこ
)
が
眠
(
ねむ
)
つてゐるときを
見
(
み
)
すまして、
191
足音
(
あしおと
)
をしのばせてその
側
(
そば
)
に
歩
(
あゆ
)
みよりました。
192
そしていきなり
男
(
をとこ
)
を
抱
(
だ
)
き
上
(
あ
)
げて、
193
みんな
力
(
ちから
)
を
合
(
あは
)
せて、
194
大空
(
おほぞら
)
目
(
め
)
がけて
投
(
な
)
げ
出
(
だ
)
しました。
195
男
(
をとこ
)
は、
196
「あつ」と
叫
(
さけ
)
んで
目
(
め
)
を
覚
(
さ
)
ましましたが、
197
もう
遅
(
おそ
)
い。
198
自分
(
じぶん
)
の
体
(
からだ
)
は
空
(
くう
)
をきつて、
199
どんどん
上
(
うへ
)
へ
飛
(
と
)
んでゆくのでした。
200
そしてたうとう
天上界
(
てんじやうかい
)
に
着
(
つ
)
いてしまひました。
201
仕方
(
しかた
)
がないので、
202
男
(
をとこ
)
はそのまま
天上界
(
てんじやうかい
)
に
住
(
す
)
むやうになりました。
203
と、
204
だんだん
時
(
とき
)
がたつにつれ、
205
男
(
をとこ
)
の
体
(
からだ
)
の
形
(
かたち
)
が
変
(
かは
)
つて
来
(
き
)
て、
206
おしまひには
真円
(
まんまる
)
くなりました。
207
それが
太陽
(
たいやう
)
であります。
208
かうして
人間
(
にんげん
)
の
住
(
す
)
む
世界
(
せかい
)
は、
209
太陽
(
たいやう
)
のお
蔭
(
かげ
)
でいつも
明
(
あか
)
るいやうになりました。
210
死
(
し
)
の
起原
(
きげん
)
211
あるとき、
212
月
(
つき
)
が
人間
(
にんげん
)
たちに
対
(
むか
)
つて、
213
『わしを
見
(
み
)
るがいい。
214
わしはときどき
体
(
からだ
)
が
段々
(
だんだん
)
と
痩
(
や
)
せ
衰
(
おとろ
)
へて
行
(
い
)
つて
死
(
し
)
にさうになるが、
215
やがてまた
肥
(
ふと
)
つて
来
(
く
)
るだらう。
216
その
通
(
とほ
)
りにお
前
(
まへ
)
たち
人間
(
にんげん
)
も、
217
何時
(
いつ
)
までも
生
(
い
)
きてゐるのぢや。
218
死
(
し
)
んだやうに
見
(
み
)
えるのは
眠
(
ねむ
)
つてゐるのぢや。
219
決
(
けつ
)
して
本当
(
ほんたう
)
に
命
(
いのち
)
がなくなつたのではない。
220
人間
(
にんげん
)
には
死
(
し
)
ぬといふことは
無
(
な
)
いものぢや』
221
といつた。
222
人間
(
にんげん
)
たちは
之
(
これ
)
を
聞
(
き
)
くと、
223
月
(
つき
)
の
言葉
(
ことば
)
を
信
(
しん
)
じて、
224
心
(
こころ
)
から
喜
(
よろこ
)
んだ。
225
が、
226
そこに
居合
(
ゐあは
)
せた
一匹
(
いつぴき
)
の
兎
(
うさぎ
)
がはたから
口
(
くち
)
を
出
(
だ
)
して、
227
『お
月
(
つき
)
さま、
228
あなたの
仰有
(
おつしや
)
ることは
間違
(
まちが
)
つてゐます』
229
といつた。
230
月
(
つき
)
は
驚
(
おどろ
)
いて、
231
『どうしてわしの
言
(
い
)
ふことが
間違
(
まちが
)
つてゐるのかね』
232
と
尋
(
たづ
)
ねた。
233
『だつて、
234
わたしのお
母
(
かあ
)
さんは
本当
(
ほんたう
)
に
死
(
し
)
んでしまつたんですもの』
235
と
兎
(
うさぎ
)
が
答
(
こた
)
へた。
236
月
(
つき
)
は
頭
(
あたま
)
をふつて、
237
『そんなことはない。
238
死
(
し
)
んでゐるのではない。
239
ただ
眠
(
ねむ
)
つてゐるのぢや。
240
今
(
いま
)
に
目
(
め
)
が
覚
(
さ
)
めるよ』
241
といひました。
242
『いいえ、
243
本当
(
ほんたう
)
に
死
(
し
)
んでしまつたんですよ。
244
眠
(
ねむ
)
つてゐるのではありませんよ』
245
と、
246
兎
(
うさぎ
)
はどこまでもいひ
張
(
は
)
つた。
247
月
(
つき
)
はたうとう
怒
(
おこ
)
り
出
(
だ
)
して、
248
『わしがこれほど
本当
(
ほんたう
)
のことをいつて
聞
(
き
)
かせてゐるのに、
249
お
前
(
まへ
)
はそれを
信
(
しん
)
じないんだな。
250
よし、
251
そんなに
死
(
し
)
にたけりや、
252
今後
(
こんご
)
はみんな
死
(
し
)
ぬやうにしてやらう』
253
といつて、
254
兎
(
うさぎ
)
の
口
(
くち
)
をひどく
擲
(
なぐ
)
りつけました。
255
それで
兎
(
うさぎ
)
は
今日
(
こんにち
)
まで
唇
(
くちびる
)
が
欠
(
か
)
けてゐます。
256
また
人間
(
にんげん
)
やその
他
(
た
)
の
生物
(
いきもの
)
もみんな
死
(
し
)
なねばならぬやうになりました。
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