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霊界物語
天祥地瑞(第73~81巻)
第76巻(卯の巻)
序文
総説
日本所伝の天地開闢説
支那の開闢説
波斯の宇宙創造説
希臘の天地開闢説
エヂプトの開闢説
メキシコナフア族の天地創造説
マヤ族の万物創造説
北欧に於ける宇宙創造説
太平洋西北岸創造説
英領北亜米利加創造説
亜弗利加神話
ヘブライ天地創造説
パレスチン創造説
ミクロネシヤ創造説
インドネシヤ創造説
第1篇 春風駘蕩
第1章 高宮参拝
第2章 魔の渓流
第3章 行進歌
第4章 怪しの巌山
第5章 露の宿
第2篇 晩春の神庭
第6章 報告祭
第7章 外苑の逍遥
第8章 善言美霊
第3篇 孤軍奮闘
第9章 闇の河畔
第10章 二本松の蔭
第11章 栄城の山彦
第12章 山上の祈り
第13章 朝駒の別れ
第14章 磐楠舟
第15章 御舟巌
余白歌
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(B)
(N)
エヂプトの開闢説 >>>
希臘
(
ギリシヤ
)
の
天地
(
てんち
)
開闢
(
かいびやく
)
説
(
せつ
)
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯の巻
篇:
前付
よみ(新仮名遣い):
章:
希臘の天地開闢説
よみ(新仮名遣い):
ぎりしゃのてんちかいびゃくせつ
通し章番号:
口述日:
1933(昭和8)年12月06日(旧10月19日)
口述場所:
水明閣
筆録者:
森良仁
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1934(昭和9)年3月23日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm760006
愛善世界社版:
八幡書店版:
第13輯 430頁
修補版:
校定版:
25頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
ギリシヤの
天地
(
てんち
)
開闢説
(
かいびやくせつ
)
は
古来
(
こらい
)
種々
(
しゆじゆ
)
の
伝承
(
でんしよう
)
があつて、
002
人々
(
ひとびと
)
によつて
区々
(
くく
)
である。
003
併
(
しか
)
し
大体
(
だいたい
)
から
言
(
い
)
へばユダヤの
神話
(
しんわ
)
にある
如
(
ごと
)
き
世界
(
せかい
)
創造説
(
さうざうせつ
)
ではなく、
004
支那
(
しな
)
の
神話
(
しんわ
)
に
見
(
み
)
ゆる
如
(
ごと
)
き
天地
(
てんち
)
開闢説
(
かいびやくせつ
)
である。
005
即
(
すなは
)
ち
此
(
こ
)
の
世界
(
せかい
)
は
造
(
つく
)
られたものでなく、
006
幾万
(
いくまん
)
年
(
ねん
)
の
世代
(
せだい
)
の
変化
(
へんくわ
)
を
経
(
へ
)
て、
007
次第
(
しだい
)
に
現在
(
げんざい
)
の
状態
(
じやうたい
)
になつたものである。
008
従
(
したが
)
つて
神々
(
かみがみ
)
も
世界
(
せかい
)
よりさきに
存在
(
そんざい
)
したのではなくて、
009
神々
(
かみがみ
)
自身
(
じしん
)
も
亦
(
また
)
此
(
こ
)
の
世界
(
せかい
)
と
言
(
い
)
ふ
一家族
(
いつかぞく
)
のうちに
生
(
うま
)
れて
来
(
き
)
たものである。
010
天地
(
てんち
)
開闢
(
かいびやく
)
の
神話
(
しんわ
)
は、
011
それを
語
(
かた
)
り
伝
(
つた
)
へた
詩人
(
しじん
)
によつて
区々
(
くく
)
である。
012
ホメロスによれば、
013
口
(
くち
)
で
尾
(
を
)
をくはへた
蛇
(
へび
)
のやうに
海
(
うみ
)
と
陸
(
りく
)
とを
取
(
と
)
りまいてゐる
広大
(
くわうだい
)
無辺
(
むへん
)
の
大河
(
たいが
)
オケアノスが
万物
(
ばんぶつ
)
の
本源
(
ほんげん
)
で、
014
また
総
(
すべ
)
ての
神々
(
かみがみ
)
の
父
(
ちち
)
であつた。
015
また
他
(
た
)
の
伝説
(
でんせつ
)
によると、
016
「
夜
(
よる
)
」と「
闇
(
やみ
)
」が
世界
(
せかい
)
の
根源
(
こんげん
)
で、
017
そのうちから
光
(
ひかり
)
が
生
(
うま
)
れたといつてゐる。
018
更
(
さら
)
に
詩人
(
しじん
)
オルフェウスが
伝
(
つた
)
へたと
言
(
い
)
はれてゐる
説
(
せつ
)
によると、
019
世界
(
せかい
)
の
始
(
はじ
)
めには
無始
(
むし
)
無終
(
むしう
)
の「
時
(
クロノス
)
」があつて、
020
これから「カオス」と
言
(
い
)
ふ
底
(
そこ
)
なしの
淵
(
ふち
)
が
生
(
うま
)
れ、
021
其
(
そ
)
の
深淵
(
しんえん
)
の
中
(
なか
)
で「
夜
(
よる
)
」と「
霧
(
きり
)
」と「
精気
(
アイテル
)
」が
育
(
はぐ
)
くまれた。
022
その
中
(
うち
)
に「
時
(
クロノス
)
」は「
霧
(
きり
)
」を
動
(
うご
)
かして
中心
(
ちうしん
)
なる「
精気
(
アイテル
)
」のまはりを、
023
独楽
(
こま
)
のやうに
廻転
(
くわいてん
)
させたので、
024
世界
(
せかい
)
は
大
(
おほ
)
きな
卵
(
たまご
)
のやうな
塊団
(
かたまり
)
になり、
025
それがまた
廻転
(
くわいてん
)
の
速力
(
そくりよく
)
でまづ
二
(
ふた
)
つに
割
(
わ
)
れて、
026
一
(
ひと
)
つは
昇
(
のぼ
)
つて
天
(
てん
)
となり、
027
一
(
ひと
)
つは
降
(
くだ
)
つて
地
(
ち
)
と
成
(
な
)
つた。
028
そして
其
(
その
)
卵
(
たまご
)
の
中
(
なか
)
からは「
愛
(
エロス
)
」をはじめ、
029
いろいろな
不思議
(
ふしぎ
)
なものが
生
(
うま
)
れたと
言
(
い
)
ふのである。
030
併
(
しか
)
し
世界
(
せかい
)
と
神々
(
かみがみ
)
の
起源
(
きげん
)
を
述
(
の
)
べたものの
中
(
うち
)
で、
031
一番
(
いちばん
)
纒
(
まと
)
まつてゐるのはヘシオドスの「テオゴニヤ」(
神統記
(
しんとうき
)
)であつた。
032
「テオゴニヤ」によると、
033
万物
(
ばんぶつ
)
の
始
(
はじ
)
めには「カオス」があつた。
034
次
(
つぎ
)
に
広
(
ひろ
)
い
胸
(
むね
)
を
持
(
も
)
つた「ガイヤ」(
地
(
ち
)
)と
地
(
ち
)
の
底
(
そこ
)
なる
暗黒
(
あんこく
)
の「タルタロス」と
不死
(
ふし
)
の
神々
(
かみがみ
)
の
中
(
うち
)
で
一番
(
いちばん
)
美
(
うつく
)
しいエロス(
愛
(
あい
)
)が
出来
(
でき
)
た。
035
「カオス」は(
口
(
くち
)
をあいた
場所
(
ばしよ
)
)といふ
意味
(
いみ
)
で、
036
其
(
その
)
内部
(
ないぶ
)
は
真黒
(
まつくろ
)
な
霧
(
きり
)
で
満
(
みた
)
されてゐた。
037
「カオス」の
次
(
つぎ
)
には
地
(
ち
)
が
出来
(
でき
)
て、
038
雪
(
ゆき
)
をいただくオリムポスの
絶頂
(
ぜつちやう
)
に
住
(
す
)
むべき
神々
(
かみがみ
)
の
安全
(
あんぜん
)
な
座位
(
ざゐ
)
となつた。
039
けれどもまだ
空
(
そら
)
も
海
(
うみ
)
も
山々
(
やまやま
)
もなければ、
040
昼
(
ひる
)
や
夜
(
よる
)
もなかつた。
041
堅
(
かた
)
い
地
(
ち
)
の
外
(
ほか
)
には
何物
(
なにもの
)
もなかつた。
042
その
次
(
つぎ
)
に
現
(
あら
)
はれたのが「エロス」であつた。
043
エロスは
男性
(
だんせい
)
と
女性
(
ぢよせい
)
とを
結
(
むす
)
びつけて
新
(
あた
)
らしい
世代
(
せだい
)
を
生
(
う
)
み
出
(
い
)
ださせる
愛
(
あい
)
の
力
(
ちから
)
であつた。
044
次
(
つぎ
)
に「カオス」からは、
045
地下
(
ちか
)
の
闇
(
やみ
)
なる「エレボス」と
遠
(
とほ
)
い
日没
(
にちぼつ
)
の
国
(
くに
)
に
住
(
す
)
んでゐる
地上
(
ちじやう
)
の
闇
(
やみ
)
なる「
夜
(
ニツクス
)
」が
生
(
うま
)
れた。
046
「エロス」は「
夜
(
ニツクス
)
」と「エレボス」とを
結
(
むす
)
び
付
(
つ
)
けて
其
(
その
)
間
(
あひだ
)
に
二人
(
ふたり
)
の
子
(
こ
)
を
生
(
う
)
ませた。
047
天
(
てん
)
の
光
(
ひかり
)
なる「
精気
(
アイテル
)
」と
地
(
ち
)
の
光
(
ひかり
)
なる「
昼
(
ヘメラ
)
」である。
048
次
(
つぎ
)
に「ガイヤ」
即
(
すなは
)
ち
母
(
はは
)
なる
地
(
ち
)
は「エロス」と
接触
(
せつしよく
)
して「ウラノス」(
星
(
ほし
)
の
多
(
おほ
)
い
天
(
てん
)
)と
広大
(
くわうだい
)
な
山々
(
やまやま
)
と「ボントス」(
荒
(
あら
)
い
海
(
うみ
)
)を
生
(
う
)
む。
049
「ウラノス」と「ガイヤ」(
天
(
てん
)
と
地
(
ち
)
)はこの
世界
(
せかい
)
の
最初
(
さいしよ
)
の
主宰者
(
しゆさいしや
)
として、
050
次
(
つぎ
)
の
世代
(
せだい
)
の
神々
(
かみがみ
)
の
父母
(
ふぼ
)
となつた。
051
ヘシオドスの
記事
(
きじ
)
は
斯
(
か
)
くの
如
(
ごと
)
き
幼稚
(
えうち
)
なものであるが、
052
併
(
しか
)
しギリシヤの
開闢
(
かいびやく
)
神話
(
しんわ
)
の
中
(
なか
)
では、
053
これらが
代表
(
だいへう
)
的
(
てき
)
なものである。
054
勿論
(
もちろん
)
この
開闢説
(
かいびやくせつ
)
の
中
(
なか
)
に、
055
どれほど
深
(
ふか
)
い
哲学
(
てつがく
)
的
(
てき
)
思想
(
しさう
)
の
芽
(
め
)
が
包
(
つつ
)
まれてゐるかは、
056
問題
(
もんだい
)
ではないのである。
057
神々
(
かみがみ
)
の
世代
(
せだい
)
058
ギリシヤの
神話
(
しんわ
)
は、
059
この
世界
(
せかい
)
を
支配
(
しはい
)
する
神々
(
かみがみ
)
の
世代
(
せだい
)
をほぼ
三
(
み
)
つに
分
(
わか
)
つてゐる。
060
天地
(
てんち
)
万物
(
ばんぶつ
)
が
生
(
しやう
)
じて、
061
第一
(
だいいち
)
に
此
(
こ
)
の
世界
(
せかい
)
の
主宰者
(
しゆさいしや
)
となつた
神
(
かみ
)
は「ウラノス」と「ガイヤ」であつたが、
062
それに
就
(
つい
)
て「クロノス」と「レア」の
治世
(
ちせい
)
が
永
(
なが
)
い
間
(
あひだ
)
続
(
つづ
)
いた
後
(
のち
)
、
063
最後
(
さいご
)
に「ゼウス」と「ヘラ」が
此
(
こ
)
の
天地
(
てんち
)
の
主宰者
(
しゆさいしや
)
となつた。
064
「ウラノス」と「ガイヤ」の
系統
(
けいとう
)
には「チタン」と「キクローベ」と「ケンチマネ」と
言
(
い
)
ふ
三
(
み
)
つの
神族
(
しんぞく
)
があつた。
065
このうち「チタン」
族
(
ぞく
)
は
後
(
のち
)
の
神族
(
しんぞく
)
の
敵
(
てき
)
となつて、
066
この
世界
(
せかい
)
に
大動乱
(
だいどうらん
)
を
起
(
おこ
)
したもので、
067
ギリシヤの
神代史
(
じんだいし
)
の
中
(
うち
)
で、
068
いつも
争闘
(
さうとう
)
の
渦中
(
くわちう
)
に
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
んで、
069
増悪
(
ぞうを
)
と
争闘
(
さうとう
)
とを
煽
(
あふ
)
るものはこの
一族
(
いちぞく
)
であつた。
070
神話
(
しんわ
)
学者
(
がくしや
)
の
間
(
あひだ
)
には、
071
火山
(
くわざん
)
の
爆発
(
ばくはつ
)
とか、
072
地震
(
ぢしん
)
とか
言
(
い
)
ふ
地球
(
ちきう
)
上
(
じやう
)
の
大変動
(
だいへんどう
)
を
人格化
(
じんかくくわ
)
したものと
解釈
(
かいしやく
)
されてゐる。
073
「ホメロス」の
詩
(
し
)
に
現
(
あら
)
はれる「チタン」
族
(
ぞく
)
は「イアベトス」と「クロノス」の
二
(
ふた
)
つだけであるが、
074
ヘシオドスは
十三
(
じふさん
)
の「チタン」
族
(
ぞく
)
の
名
(
な
)
を
挙
(
あ
)
げてゐる。
075
即
(
すなは
)
ち「オケアノス」と「テチス」「ヒペリオス」と「テイヤ」「コイオス」と「フオイベ」「クレイオス」と「エウリビヤ」と「イヤベトス」「テミス」と「ムネモシネ」「クロノス」と「レア」である。
076
次
(
つぎ
)
に「キクローベ」
族
(
ぞく
)
は
雙眼
(
せきがん
)
の
大怪物
(
だいくわいぶつ
)
で、
077
その
名
(
な
)
を「プロンテス」「ステロペス」「アルゲス」と
言
(
い
)
ひ、
078
雷鳴
(
らいめい
)
と
電光
(
でんくわう
)
と
落雷
(
らくらい
)
の
人格化
(
じんかくくわ
)
であつた。
079
最後
(
さいご
)
に「ケンチマネ」
族
(
ぞく
)
は、
080
百本
(
ひやつぽん
)
の
手
(
て
)
を
持
(
も
)
つた
怪物
(
くわいぶつ
)
で、
081
「プリアレオス」「ギエス」「コツトス」と
言
(
い
)
ひ、
082
大地
(
だいち
)
を
震
(
ふる
)
はす
海
(
うみ
)
の
激動
(
げきどう
)
や
怒号
(
どがう
)
や、
083
山
(
やま
)
のやうな
波濤
(
はたう
)
の
恐怖
(
きようふ
)
を
人格化
(
じんかくくわ
)
したものである。
084
「ウラノス」は
此
(
こ
)
の
三神族
(
さんしんぞく
)
のうち、
085
後
(
あと
)
の
二族
(
にぞく
)
を
怖
(
おそ
)
ろしいものに
思
(
おも
)
つて、
086
生
(
うま
)
れると
直
(
す
)
ぐ
母
(
はは
)
なる
大地
(
だいち
)
の
底
(
そこ
)
の「タルタロス」へ
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
んで、
087
そこへ
封
(
ふう
)
じ
込
(
こ
)
めて
了
(
しま
)
つた。
088
母
(
はは
)
の「ガイヤ」は、
089
この
無情
(
むじやう
)
な
行動
(
かうどう
)
を
深
(
ふか
)
く
憤
(
いきどほ
)
つて、
090
「ウラノス」に
対
(
たい
)
して
復讐
(
ふくしゆう
)
を
企
(
くはだ
)
て、
091
「チタン」
族
(
ぞく
)
の
助
(
たす
)
けを
求
(
もと
)
めたが、
092
「クロノス」の
外
(
ほか
)
は、
093
たれも
母
(
はは
)
に
味方
(
みかた
)
をするものはなかつた。
094
「ガイヤ」はそこで、
095
「クロノス」に
一
(
ひと
)
つの
鋭利
(
えいり
)
な
鎌
(
かま
)
を
与
(
あた
)
へて、
096
「ウラノス」を
待
(
ま
)
ち
伏
(
ぶ
)
せに
襲
(
おそ
)
つて
深傷
(
ふかで
)
を
負
(
お
)
はせた。
097
そのとき「ウラノス」の
体
(
たい
)
から
流
(
なが
)
れた
血
(
ち
)
は
化生
(
くわせい
)
して、
098
蛇
(
へび
)
の
髪
(
かみ
)
をもつた
復讐
(
ふくしゆう
)
の
三女神
(
さんめがみ
)
「エリニエス」や
新
(
あたら
)
しい
大怪物
(
だいくわいぶつ
)
巨人族
(
きよじんぞく
)
となり、
099
また
海
(
うみ
)
に
落
(
お
)
ちたものは、
100
美
(
び
)
の
女神
(
めがみ
)
「アフロヂテ」となつた。
101
「ウラノス」に
就
(
つい
)
ては、
102
これ
以上
(
いじやう
)
に
何事
(
なにごと
)
も
伝
(
つた
)
はつてゐない。
103
ギリシヤ
人
(
じん
)
は「ウラノス」を
神
(
かみ
)
に
祓
(
まつ
)
らなかつた、
104
従
(
したが
)
つてギリシヤ
神話
(
しんわ
)
に
於
(
お
)
ける「ウラノス」の
地位
(
ちゐ
)
は、
105
只
(
ただ
)
自然界
(
しぜんかい
)
の
基本
(
きほん
)
的
(
てき
)
な
力
(
ちから
)
を
代表
(
だいへう
)
する
神々
(
かみがみ
)
の
父
(
ちち
)
と
言
(
い
)
ふだけに
過
(
す
)
ぎなかつた。
106
かうして「ウラノス」の
時代
(
じだい
)
は
過
(
す
)
ぎて
新
(
あたら
)
しい「クロノス」の
世
(
よ
)
となつたが、
107
「クロノス」は
父
(
ちち
)
に
取
(
と
)
つて
代
(
かは
)
つたといふ
事情
(
じじやう
)
があるので、
108
父
(
ちち
)
の
祟
(
たた
)
りだけでも
永続
(
えいぞく
)
しないやうな
運命
(
うんめい
)
を
帯
(
お
)
びてゐた。
109
一方
(
いつぱう
)
ではまた「ウラノス」の
系統
(
けいとう
)
を
引
(
ひ
)
いた
神々
(
かみがみ
)
から、
110
自然
(
しぜん
)
と「クロノス」とは
異系
(
いけい
)
の
多
(
おほ
)
くの
神々
(
かみがみ
)
が
生
(
うま
)
れた。
111
「オケアノス」と「テチス」の
間
(
あひだ
)
には
無数
(
むすう
)
の
河神
(
かしん
)
や
泉
(
いづみ
)
と
森
(
もり
)
の
少女
(
せうぢよ
)
「ニムフェ」が
生
(
うま
)
れ、
112
続
(
つづ
)
いて
海
(
うみ
)
の「ニムフェ」だの
海
(
うみ
)
や
陸
(
りく
)
の
色々
(
いろいろ
)
な
怪物
(
くわいぶつ
)
が
出来
(
でき
)
た。
113
「ヒベリオン」と「テイヤ」とは「
日
(
ひ
)
」と「
月
(
つき
)
」と「
暁
(
あかつき
)
」の
両親
(
りやうしん
)
となり、
114
暁
(
あかつき
)
の
女神
(
めがみ
)
は
色々
(
いろいろ
)
な「
風
(
かぜ
)
」と「
暁
(
あけ
)
の
明星
(
みやうじやう
)
」の
母
(
はは
)
となつた。
115
また「イヤベトス」の
子
(
こ
)
には
広大
(
くわうだい
)
無辺
(
むへん
)
の
天
(
てん
)
を
支
(
ささ
)
へてゐる「アトラス」と
人間
(
にんげん
)
の
創造
(
さうざう
)
に
力
(
ちから
)
を
尽
(
つく
)
した「プロメテウス」「エピメテウス」の
兄弟
(
きやうだい
)
があつた。
116
「クロノス」は
妹
(
いもうと
)
の「レア」と
共
(
とも
)
に
天地
(
てんち
)
を
支配
(
しはい
)
して、
117
その
間
(
あひだ
)
に「ヘスチヤ」「デメテル」「ヘラ」の
三女神
(
さんめがみ
)
と「ハデス」「ポサイドン」「ゼウス」の
三男神
(
さんをがみ
)
を
生
(
う
)
んだ。
118
「クロノス」の
治世
(
ちせい
)
は
此
(
こ
)
の
天地
(
てんち
)
が
未
(
いま
)
だ
罪
(
つみ
)
と
汚
(
けが
)
れを
知
(
し
)
らなかつた、
119
いはゆる
黄金
(
わうごん
)
時代
(
じだい
)
で、
120
疾病
(
しつぺい
)
も
知
(
し
)
らず、
121
老
(
お
)
いると
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
もなく、
122
野山
(
のやま
)
には
種々
(
しゆじゆ
)
の
果実
(
このみ
)
が、
123
一面
(
いちめん
)
に
実
(
みの
)
つてゐるから、
124
働
(
はたら
)
いて
食
(
く
)
ふと
言
(
い
)
ふ
心配
(
しんぱい
)
もなく、
125
天地間
(
てんちかん
)
の
万物
(
ばんぶつ
)
が
無限
(
むげん
)
の
幸福
(
かうふく
)
と
快楽
(
くわいらく
)
とを
味
(
あぢ
)
はつて
居
(
ゐ
)
た
時代
(
じだい
)
だと
伝
(
つた
)
へられる。
126
この
黄金
(
わうごん
)
時代
(
じだい
)
は
久
(
ひさ
)
しい
間
(
あひだ
)
続
(
つづ
)
いたが、
127
その
間
(
あひだ
)
に「クロノス」は
自分
(
じぶん
)
が
生
(
う
)
んだ
子
(
こ
)
が、
128
いつか
自分
(
じぶん
)
に
代
(
かは
)
つてこの
天地
(
てんち
)
の
主宰者
(
しゆさいしや
)
になると
言
(
い
)
ふことを
知
(
し
)
つてゐたので、
129
子供
(
こども
)
が
生
(
うま
)
れるや
否
(
いな
)
や、
130
みんな
呑
(
の
)
んで
了
(
しま
)
つたが、
131
併
(
しか
)
し
最後
(
さいご
)
に「ゼウス」の
生
(
うま
)
れる
時
(
とき
)
は、
132
母
(
はは
)
の「レア」は「クレテ」の
嶋
(
しま
)
へ
行
(
い
)
つて
生
(
うま
)
れた
赤子
(
あかご
)
を
一
(
ひと
)
つの
洞窟
(
どうくつ
)
の
中
(
なか
)
へ
隠
(
かく
)
し、
133
大
(
おほ
)
きな
石
(
いし
)
を
産衣
(
うぶぎ
)
の
中
(
なか
)
へ
包
(
つつ
)
んで「クロノス」へ
渡
(
わた
)
したので、
134
「クロノス」は
気
(
き
)
がつかずに
一口
(
ひとくち
)
にそれを
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
んで
了
(
しま
)
つた。
135
かうして
危
(
あやふ
)
い
命
(
いのち
)
を
助
(
たす
)
けられた「ゼウス」は、
136
クレテ
島
(
じま
)
に「ニムフェ」らに
保護
(
ほご
)
されて、
137
「アマルテイヤ」と
言
(
い
)
ふ
山羊
(
やぎ
)
の
乳
(
ちち
)
でそだてられたが、
138
「ニムフェ」らは
赤児
(
あかご
)
が
泣
(
な
)
く
度
(
たび
)
に
鐘
(
かね
)
や
太鼓
(
たいこ
)
を
鳴
(
な
)
らし、
139
軍
(
いくさ
)
のまねごとをして
泣
(
な
)
き
声
(
ごゑ
)
を「クロノス」の
耳
(
みみ
)
に
入
(
い
)
れないやうにしたと
伝
(
つた
)
へられる。
140
そのうちに「ゼウス」は
生長
(
せいちやう
)
すると、
141
先
(
ま
)
づ
祖母
(
そぼ
)
の「ガイヤ」の
助
(
たす
)
けをかりて「クロノス」の
口
(
くち
)
から
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
んだ
同胞
(
はらから
)
らを
吐
(
は
)
き
出
(
だ
)
させた。
142
その
時
(
とき
)
第一
(
だいいち
)
に
出
(
で
)
たのは「ゼウス」の
身代
(
みがは
)
りになつた
大石
(
おほいし
)
で、
143
これは
後
(
のち
)
に
神託
(
しんたく
)
で
有名
(
いうめい
)
になつた「デルフォイ」の
神殿
(
しんでん
)
に
保存
(
ほぞん
)
された。
144
それから、
145
順々
(
じゆんじゆん
)
にほかの
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
同胞
(
はらから
)
らが
吐
(
は
)
き
出
(
だ
)
されて、
146
母
(
はは
)
の「レア」の
手
(
て
)
へ
戻
(
もど
)
された。
147
そこで
天上界
(
てんじやうかい
)
に
第二
(
だいに
)
の
革命
(
かくめい
)
が
起
(
おこ
)
つた。
148
「ゼウス」はその
同胞
(
はらから
)
の
神々
(
かみがみ
)
と
倶
(
とも
)
に「オリムポス」の
山上
(
さんじやう
)
へ
立籠
(
たてこも
)
ると、
149
多
(
おほ
)
くの「チタン」
族
(
ぞく
)
は「クロノス」を
助
(
たす
)
けて「オトリス」の
山
(
やま
)
に
拠
(
よ
)
つて
十
(
じふ
)
年
(
ねん
)
の
間
(
あひだ
)
戦争
(
せんさう
)
を
続
(
つづ
)
けた。
150
この
戦争
(
せんさう
)
は
自然力
(
しぜんりよく
)
の
全部
(
ぜんぶ
)
を
闘争
(
とうさう
)
の
渦中
(
くわちう
)
に
捲
(
ま
)
き
込
(
こ
)
んで、
151
この
世界
(
せかい
)
の
存在
(
そんざい
)
をも
脅
(
おびや
)
かしたほどに
猛烈
(
まうれつ
)
なものであつた。
152
同時
(
どうじ
)
に
他
(
た
)
の
一方
(
いつぱう
)
では、
153
神
(
かみ
)
と
悪魔
(
あくま
)
、
154
正義
(
せいぎ
)
と
暴力
(
ばうりよく
)
との
戦
(
たたか
)
ひであつた。
155
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
に「チタン」
族
(
ぞく
)
のうちでも「テミス」と「ムネモシネ」(
公正
(
こうせい
)
と
記憶
(
きおく
)
)とは、
156
暴力
(
ばうりよく
)
の
味方
(
みかた
)
になることを
避
(
さ
)
けて、
157
智力
(
ちりよく
)
と
秩序
(
ちつじよ
)
の
代表
(
だいへう
)
たる「ゼウス」の
味方
(
みかた
)
につき、
158
また「プロメテウス」(
先見
(
せんけん
)
)も
終局
(
しうきよく
)
の
勝利
(
しようり
)
が「ゼウス」にあることを
予知
(
よち
)
して「オリムポス」に
走
(
はし
)
つた。
159
戦争
(
せんさう
)
は
殆
(
ほと
)
んど
果
(
はて
)
しが
付
(
つ
)
かなかつた。
160
「ゼウス」は
終
(
つひ
)
に「チタン」
族
(
ぞく
)
の
暴力
(
ばうりよく
)
を
征服
(
せいふく
)
するには、
161
他
(
た
)
の
暴力
(
ばうりよく
)
を
借
(
か
)
るほかはないと
悟
(
さと
)
つた。
162
そこで「ゼウス」は
再
(
ふたた
)
び
祖母
(
そぼ
)
「ガイヤ」の
力
(
ちから
)
を
借
(
か
)
りて、
163
「ウラノス」が
地底
(
ちそこ
)
の「タルタロス」へ
封
(
ふう
)
じ
込
(
こ
)
めて
置
(
お
)
いた「キクローベ」や「ケンチマネ」の
一族
(
いちぞく
)
を
解放
(
かいはう
)
して
味方
(
みかた
)
につけ、
164
「キクローベ」の
手
(
て
)
から
雷電
(
らいでん
)
を
譲
(
ゆづ
)
り
受
(
う
)
けて、
165
先頭
(
せんとう
)
に
立
(
た
)
つて
敵
(
てき
)
に
向
(
むか
)
ふと、
166
三箇
(
さんこ
)
の「ケンチマネ」は
三百本
(
さんびやつぽん
)
の
手
(
て
)
で
岩
(
いは
)
をつかんでは
敵
(
てき
)
に
向
(
むか
)
つて
雨霰
(
あめあられ
)
と
投
(
な
)
げつけた。
167
その
時
(
とき
)
「オリムポス」の
山上
(
さんじやう
)
から
投
(
な
)
げかける
雷電
(
らいでん
)
のために、
168
周囲
(
しうゐ
)
の
地
(
ち
)
は
焼
(
や
)
けただれ、
169
河海
(
かかい
)
の
水
(
みづ
)
は
沸騰
(
ふつとう
)
して、
170
火
(
ひ
)
の
如
(
ごと
)
き
霧
(
きり
)
は「オトリス」の
山
(
やま
)
を
包
(
つつ
)
み、
171
「チタン」
族
(
ぞく
)
は
絶
(
た
)
えず
閃
(
ひら
)
めく
電光
(
でんくわう
)
のために
悉
(
ことごと
)
くその
視力
(
しりよく
)
を
失
(
うしな
)
つた。
172
同時
(
どうじ
)
に「ケンチマネ」は
地
(
ち
)
と
海
(
うみ
)
を
震
(
ふる
)
はして
突進
(
とつしん
)
したので、
173
さすがに
勇猛
(
ゆうまう
)
な「チタン」
族
(
ぞく
)
も、
174
電光
(
でんくわう
)
に
焼
(
や
)
かれ
岩
(
いは
)
の
下
(
した
)
に
埋
(
うづ
)
められて、
175
たうとう「ゼウス」の
軍
(
ぐん
)
に
降服
(
かうふく
)
して
了
(
しま
)
つた。
176
そこで「ゼウス」は「ケンチマネ」に
命
(
めい
)
じて、
177
「クロノス」を
始
(
はじ
)
め
自分
(
じぶん
)
に
刃向
(
はむか
)
つた「チタン」
族
(
ぞく
)
を、
178
「タルタロス」の
底
(
そこ
)
へ
幽閉
(
いうへい
)
し、
179
「ケンチマネ」をして
監視
(
かんし
)
させた。
180
神々
(
かみがみ
)
と「チタン」
族
(
ぞく
)
との
戦闘
(
せんとう
)
の
神話
(
しんわ
)
は、
181
世界
(
せかい
)
の
起原
(
きげん
)
に
関
(
くわん
)
するギリシヤの
神話
(
しんわ
)
の
中
(
うち
)
でも、
182
恐
(
おそ
)
らく
最古
(
さいこ
)
の
伝説
(
でんせつ
)
に
関
(
くわん
)
するものである。
183
この
戦闘
(
せんとう
)
の
舞台
(
ぶたい
)
となつた「テツサリヤ」の
地勢
(
ちせい
)
を
見
(
み
)
れば
何人
(
なんぴと
)
にも
想像
(
さうざう
)
されることではあるが、
184
そこには
自然
(
しぜん
)
の
激変
(
げきへん
)
の
跡
(
あと
)
が
著
(
いちじる
)
しく
残
(
のこ
)
つてゐる。
185
「テツサリヤ」の
平原
(
へいげん
)
そのものが、
186
あの
山壁
(
さんぺき
)
を
裂
(
さ
)
いて「テンペ」の
大谿谷
(
だいけいこく
)
を
作
(
つく
)
り
出
(
だ
)
した
大地震
(
だいぢしん
)
の
産物
(
さんぶつ
)
であつた。
187
そして「オリムポス」
山
(
さん
)
と「オトリス」
山
(
さん
)
とは
丁度
(
ちやうど
)
この
大谿谷
(
だいけいこく
)
を
挟
(
はさ
)
んで
相対峙
(
あひたいじ
)
する
大城壁
(
だいじやうへき
)
のやうな
形勢
(
けいせい
)
をして、
188
その
間
(
あひだ
)
の
谿谷
(
けいこく
)
には
処々
(
しよしよ
)
に
巨大
(
きよだい
)
な
漂石
(
へうせき
)
が「ゼウス」
族
(
ぞく
)
と「チタン」
族
(
ぞく
)
の
間
(
あひだ
)
に
投
(
な
)
げかはされた
巌石
(
がんせき
)
のやうに
捲
(
ま
)
き
散
(
ち
)
らされて
居
(
ゐ
)
るのである。
189
「クロノス」の
黄金
(
わうごん
)
時代
(
じだい
)
は、
190
かうして
永久
(
えいきう
)
に
過
(
す
)
ぎ
去
(
さ
)
つた。
191
「クロノス」の
神話
(
しんわ
)
については、
192
互
(
たがひ
)
に
矛盾
(
むじゆん
)
した
二
(
ふた
)
つの
性質
(
せいしつ
)
が
賦与
(
ふよ
)
されてゐる。
193
一方
(
いつぱう
)
では、
194
この
時代
(
じだい
)
を
地上
(
ちじやう
)
には
永久
(
えいきう
)
の
春
(
はる
)
が
続
(
つづ
)
いて
人間
(
にんげん
)
が
無限
(
むげん
)
の
幸福
(
かうふく
)
を
享楽
(
きやうらく
)
した
黄金
(
わうごん
)
時代
(
じだい
)
だと
説
(
と
)
くとともに、
195
他
(
た
)
の
一方
(
いつぱう
)
では、
196
その
治世
(
ちせい
)
が
既
(
すで
)
に
父
(
ちち
)
の「ウラノス」に
対
(
たい
)
する
反逆
(
はんぎやく
)
に
始
(
はじ
)
まつたやうに、
197
この
治世
(
ちせい
)
を
通
(
つう
)
じて
権謀
(
けんぼう
)
術数
(
じゆつすう
)
によつて
支配
(
しはい
)
された
時代
(
じだい
)
のやうにも
説
(
と
)
いてゐる。
198
この
第二
(
だいに
)
の
伝説
(
でんせつ
)
によると、
199
「クロノス」は
結局
(
けつきよく
)
正義
(
せいぎ
)
の
代表者
(
だいへうしや
)
たる「ゼウス」に
対
(
たい
)
して、
200
邪曲
(
じやきよく
)
の
代表者
(
だいへうしや
)
と
見
(
み
)
られるのである。
201
併
(
しか
)
しさう
言
(
い
)
ふ
道徳
(
だうとく
)
的
(
てき
)
の
矛盾
(
むじゆん
)
を
除外
(
ぢよぐわい
)
して
見
(
み
)
れば、
202
この
時代
(
じだい
)
は、
203
後
(
のち
)
の
天地
(
てんち
)
万物
(
ばんぶつ
)
の
秩序
(
ちつじよ
)
が
次第
(
しだい
)
に
整
(
ととの
)
つて
来
(
き
)
た
時代
(
じだい
)
であつた。
204
「ゼウス」は
終
(
つひ
)
にその
強敵
(
きやうてき
)
「チタン」
族
(
ぞく
)
を
征服
(
せいふく
)
したけれども、
205
「ゼウス」の
主権
(
しゆけん
)
はまだ
本当
(
ほんたう
)
に
安定
(
あんてい
)
する
所
(
ところ
)
までは
行
(
い
)
かなかつた。
206
「ガイヤ」は
一旦
(
いつたん
)
は
孫
(
まご
)
の「ゼウス」を
助
(
たす
)
けて「クロノス」と「チタン」
族
(
ぞく
)
を
征服
(
せいふく
)
させたけれども、
207
いよいよ「ゼウス」が
勝
(
か
)
つて
見
(
み
)
ると、
208
さすがに
自分
(
じぶん
)
の
生
(
う
)
んだ「チタン」
族
(
ぞく
)
の
没落
(
ぼつらく
)
を
憐
(
あはれ
)
むやうな
心持
(
こころもち
)
も
出
(
で
)
て、
209
「ゼウス」に
対
(
たい
)
してまたまた
陰謀
(
いんぼう
)
を
企
(
くはだ
)
てるやうになつた。
210
「ガイヤ」には、
211
「チタン」
族
(
ぞく
)
のほかに「チフオイオス」といふ
子
(
こ
)
があつた。
212
「チフオイオス」は
同胞
(
どうはう
)
の「チタン」
族
(
ぞく
)
よりは
一層
(
いつそう
)
恐
(
おそ
)
ろしい
怪物
(
くわいぶつ
)
で、
213
どうしても
全能
(
ぜんのう
)
の「ゼウス」に
反抗
(
はんかう
)
すべき
運命
(
うんめい
)
を
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
214
この「チフオイオス」は
一百
(
いつぴやく
)
の
蛇
(
へび
)
の
頭
(
あたま
)
と
火
(
ひ
)
の
如
(
ごと
)
く
暉
(
かがや
)
く
目
(
め
)
と
真黒
(
まつくろ
)
な
舌
(
した
)
を
持
(
も
)
ち、
215
其
(
その
)
一百
(
いつぴやく
)
の
口
(
くち
)
からは
同時
(
どうじ
)
に
蛇
(
へび
)
、
216
牡牛
(
をうし
)
や
獅子
(
しし
)
や
犬
(
いぬ
)
や
其
(
その
)
他
(
た
)
あらゆるものの
声
(
こゑ
)
を
立
(
た
)
てて
咆吼
(
ほうこう
)
するのであつた。
217
この
怪物
(
くわいぶつ
)
が
母
(
はは
)
の「ガイヤ」の
命
(
めい
)
を
受
(
う
)
けて「ゼウス」に
向
(
むか
)
つて
戦
(
たたか
)
ひを
挑
(
いど
)
んで
来
(
き
)
たが、
218
「ゼウス」は
直
(
す
)
ぐにその
雷電
(
らいでん
)
をあびせかけて
打
(
う
)
ち
倒
(
たふ
)
し、
219
「チタン」らと
一緒
(
いつしよ
)
に「タルタロス」の
底
(
そこ
)
へ
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
んで
了
(
しま
)
つた。
220
併
(
しか
)
しこの
戦争
(
せんさう
)
で
天
(
てん
)
も
地
(
ち
)
もその
為
(
ため
)
震撼
(
しんかん
)
して「タルタロス」の
底
(
そこ
)
までも
響
(
ひび
)
き
渡
(
わた
)
つた。
221
そして「ゼウス」の
雷光
(
らいくわ
)
に
包
(
つつ
)
まれながらも、
222
その
怪物
(
くわいぶつ
)
の
吐
(
は
)
き
出
(
だ
)
す
息
(
いき
)
がかかつた
地
(
ち
)
は、
223
まるで
白蝋
(
はくらふ
)
かなにかのやうに、
224
どろどろに
鎔
(
と
)
けたと
伝
(
つた
)
へられてゐる。
225
この
怪物
(
くわいぶつ
)
は
今
(
いま
)
もなほ「タルタロス」の
底
(
そこ
)
で、
226
折々
(
をりをり
)
恐
(
おそ
)
ろしい
唸
(
うな
)
り
声
(
ごゑ
)
や
泣
(
な
)
き
声
(
ごゑ
)
を
立
(
た
)
てる、
227
その
度
(
たび
)
に
噴火山
(
ふんくわざん
)
の
口
(
くち
)
から
怖
(
おそ
)
ろしい
火
(
ひ
)
の
舌
(
した
)
を
吐
(
は
)
き、
228
或
(
あるひ
)
は
恐
(
おそ
)
ろしい
熱風
(
ねつぷう
)
を
起
(
おこ
)
して、
229
地上
(
ちじやう
)
の
草木
(
くさき
)
を
焼
(
や
)
き
払
(
はら
)
ふのである。
230
「チフオイオス」は
猛烈
(
まうれつ
)
な
旋風
(
せんぷう
)
の
人格化
(
じんかくくわ
)
であつた。
231
「チフオイオス」の
反乱
(
はんらん
)
に
続
(
つづ
)
いて
巨人族
(
きよじんぞく
)
の
反乱
(
はんらん
)
があつた。
232
巨人族
(
きよじんぞく
)
と
言
(
い
)
ふのは、
233
「ウラノス」の
血
(
ち
)
から
生
(
うま
)
れた
巨大
(
きよだい
)
な
怪物
(
くわいぶつ
)
である。
234
伝説
(
でんせつ
)
によると、
235
キラキラした
鎧
(
よろひ
)
を
着
(
き
)
て
手
(
て
)
に
長槍
(
ながやり
)
を
持
(
も
)
つた
魁偉
(
くわいゐ
)
な
巨人
(
きよじん
)
であつた。
236
巨人族
(
きよじんぞく
)
の
中
(
なか
)
でも、
237
特
(
とく
)
に
雄強
(
ゆうきやう
)
なものは「アルキオネス」「パラス」「エンケラドス」
及
(
およ
)
び
火
(
ひ
)
の
王
(
わう
)
「ボルフィリオン」であつた。
238
この
巨人族
(
きよじんぞく
)
との
戦
(
たたか
)
ひでは、
239
「オリムポス」
諸神
(
しよしん
)
の
中
(
うち
)
でも、
240
「ヘラ」と「アテーネ」の
二女神
(
にぢよしん
)
が
首功
(
しゆこう
)
を
立
(
た
)
て、
241
また「ゼウス」の
血
(
ち
)
を
受
(
う
)
けた
英雄
(
えいゆう
)
「ヘラクレス」がその
強弓
(
がうきう
)
をひいて
敵
(
てき
)
をなやましたと
言
(
い
)
ふことになつてゐる。
242
この
巨人族
(
きよじんぞく
)
は
自然界
(
しぜんかい
)
の
勢力
(
せいりよく
)
の
人格化
(
じんかくくわ
)
であつた。
243
「チタン」
族
(
ぞく
)
とは
違
(
ちが
)
つて、
244
俗間
(
ぞくかん
)
の
信仰
(
しんかう
)
に
根拠
(
こんきよ
)
を
持
(
も
)
つた
妖魔
(
えうま
)
であつた。
245
従
(
したが
)
つて
巨人族
(
きよじんぞく
)
は「チタン」
族
(
ぞく
)
や「キクローベ」や「チフォイオス」よりは
一層
(
いつそう
)
人間
(
にんげん
)
に
近
(
ちか
)
く、
246
古
(
ふる
)
い
彫刻
(
てうこく
)
では
獣
(
けもの
)
の
皮
(
かは
)
を
着
(
き
)
て
岩
(
いは
)
や
根棒
(
こんぼう
)
を
武器
(
ぶき
)
とする
蛮族
(
ばんぞく
)
の
姿
(
すがた
)
であらはされてゐるが、
247
後
(
のち
)
には
胴
(
どう
)
から
下
(
した
)
は
人間
(
にんげん
)
の
形体
(
けいたい
)
を
失
(
うしな
)
つて、
248
脚
(
あし
)
のかはりに
頭
(
あたま
)
をもつた
二匹
(
にひき
)
の
蛇
(
へび
)
をつけるやうになつた。
249
巨人族
(
きよじんぞく
)
は
恐
(
おそ
)
らくある
地方
(
ちはう
)
に
特有
(
とくいう
)
な
俗間
(
ぞくかん
)
信仰
(
しんかう
)
から
出
(
で
)
て
一般
(
いつぱん
)
の
神話
(
しんわ
)
の
領域
(
りやうゐき
)
に
侵入
(
しんにふ
)
して
行
(
い
)
つたものらしく、
250
その
性質
(
せいしつ
)
には、
251
有史前
(
いうしぜん
)
の
獰猛
(
だうまう
)
な
蛮族
(
ばんぞく
)
を
暗示
(
あんじ
)
するところがある。
252
人間
(
にんげん
)
と
同様
(
どうやう
)
に
土
(
つち
)
から
生
(
うま
)
れたといふ
形容詞
(
けいようし
)
をつけられてゐるのも、
253
その
一
(
ひと
)
つの
証拠
(
しようこ
)
である。
254
とにかくこの
巨人族
(
きよじんぞく
)
も、
255
他
(
た
)
の
二族
(
にぞく
)
と
同様
(
どうやう
)
に「ゼウス」の
為
(
ため
)
に
全
(
まつた
)
く
征服
(
せいふく
)
されて「タルタロス」の
底
(
そこ
)
へ
全
(
まつた
)
く
葬
(
はうむ
)
られて
了
(
しま
)
つた。
256
そこで
天地
(
てんち
)
の
秩序
(
ちつじよ
)
が
始
(
はじ
)
めて
定
(
さだ
)
まり、
257
「ゼウス」は「クロノス」に
代
(
かは
)
つて
天地
(
てんち
)
の
主宰者
(
しゆさいしや
)
となつた。
258
この
時
(
とき
)
「ゼウス」は
神々
(
かみがみ
)
の
会議
(
くわいぎ
)
を
開
(
ひら
)
いて、
259
それぞれにその
支配
(
しはい
)
を
定
(
さだ
)
めた。
260
「ポサイドン」「オケアノス」に
代
(
かは
)
つて
海
(
うみ
)
を
支配
(
しはい
)
し、
261
「ハデス」は
暗黒
(
あんこく
)
な
地下
(
ちか
)
の
世界
(
せかい
)
と「タルタロス」の
王
(
わう
)
となり、
262
「ヘラ」は「ゼウス」の
妃
(
ひ
)
として「オリムポス」の
女王
(
ぢよわう
)
となつた。
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