霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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エヂプトの開闢(かいびやく)説(せつ)

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯の巻 篇:前付 よみ(新仮名遣い):
章:エヂプトの開闢説 よみ(新仮名遣い):えじぷとのかいびゃくせつ 通し章番号:
口述日:1933(昭和8)年12月06日(旧10月19日) 口述場所:水明閣 筆録者:谷前清子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1934(昭和9)年3月23日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]: 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:0000-00-00 00:00:00 文字数:3892 OBC :rm760007
愛善世界社版: 八幡書店版:第13輯 438頁 修補版: 校定版:39頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 世界(せかい)の初(はじめ)には地(ち)も海(うみ)も空(そら)も無(な)く、002ただどろどろした水(みづ)のやうなものが果(はて)もなく広(ひろ)がつてゐた。003その名(な)を「ヌウ」といつて其(その)中(なか)に一(ひと)つの神(かみ)があつた。004この神(かみ)は「ヌウ」と共(とも)に始(はじ)まり「ヌウ」の中(なか)に宿(やど)つてはゐるが、005まだ形(かたち)も無(な)ければ働(はたら)きもなく、006後(あと)にはこの美(うる)はしい天(てん)と地(ち)を生(う)み出(だ)すやうな何(なん)のしるしも見(み)せなかつた。
007 そのうちに時(とき)が来(き)て、008神(かみ)のうちに自分(じぶん)の名(な)を名乗(なの)りたいと言(い)ふ心(こころ)が起(おこ)つて来(き)た。
009『わが名(な)は夜明(よあ)けには「ケベラ」、010日中(につちう)には「ラア」、011夕刻(ゆうこく)は「ツーム」である』
012 かう言(い)ふと、013先(ま)づキラキラした卵(たまご)の姿(すがた)となつて水(みづ)の上(うへ)へ浮(うか)んで来(き)た。014そして種々(しゆじゆ)の神々(かみがみ)や男(をとこ)や女(をんな)や動物(どうぶつ)や植物(しよくぶつ)が次(つ)ぎ次(つ)ぎにこの神(かみ)によつて創造(さうざう)された。
015 「ケベラ」は始(はじ)めにその気高(けだか)い姿(すがた)を以(もつ)て「ヌウ」の全面(ぜんめん)をおほうてゐたが、016自分(じぶん)の住(す)むべき場所(ばしよ)がきまらなかつたので、017その浮(うか)んでゐる水(みづ)を分(わ)けて天(てん)と地(ち)を造(つく)らうと思(おも)つた。018そこで神(かみ)は先(ま)づ風(かぜ)の神(かみ)「シユウ」と雨(あめ)の女神(めがみ)「テフヌウト」を造(つく)り、019次(つぎ)に地(ち)の神(かみ)「セブ」と大空(おほぞら)の女神(めがみ)「ヌウト」を造(つく)つた。
020 「シユウ」は神(かみ)の命(めい)によつて「ヌウト」を高(たか)く天上(てんじやう)にさし上(あ)げた。021そこで「ヌウト」は地(ち)の神(かみ)「セブ」が長(なが)くなつて寝(ね)てゐる上(うへ)に弓形(ゆみがた)にのりかかつて、022手足(てあし)の指先(ゆびさき)を西(にし)と東(ひがし)の地平線(ちへいせん)にすれすれにして自分(じぶん)の身(み)を支(ささ)へることになつた。023かうしてこの女神(めがみ)の胴(どう)や手足(てあし)の上(うへ)についてゐる無数(むすう)の星(ほし)が、024暗(くら)い中(なか)からキラキラと光(ひかり)を放(はな)つやうになつた。025けれどもこの天地(てんち)には、026まだ昼(ひる)と夜(よる)との区別(くべつ)が無(な)かつた。027そのうちに「シユウ」と「テフヌウト」の後(うしろ)にかくれてゐた「ヌウ」の目(め)が、028次第(しだい)に水(みづ)の面(おも)から登(のぼ)つて大空(おほぞら)に達(たつ)したので、029天地(てんち)は始(はじ)めてその光(ひかり)に照(て)らされるやうになつた。
030 その時(とき)から「ヌウ」の目(め)は日毎(ひごと)に空(そら)を横(よこ)ぎつて地上(ちじやう)の総(すべ)てのものを見下(みおろ)し、031そこに光(ひかり)と熱(ねつ)とを与(あた)へるやうになつた。032次(つぎ)に神(かみ)は夜(よる)を照(て)らすために、033モウ一(ひと)つの目(め)を天上(てんじやう)に送(おく)り、034また涙(なみだ)を地上(ちじやう)に落(おと)して多(おほ)くの男(をとこ)と女(をんな)を造(つく)つた。035その後(ご)地上(ちじやう)の人間(にんげん)を守(まも)らせるために多(おほ)くの神々(かみがみ)を造(つく)つた。036「オシリス」「イシス」「セット」「ネブチス」「ホルス」なぞはその重(おも)なるもので「シユウ」「テフヌウト」「セブ」「ヌウト」の諸神(しよしん)と共(とも)に、037後(のち)に「ヘリオボリス」の重(おも)なる神々(かみがみ)として祀(まつ)らるるものである。038神(かみ)はまた地上(ちじやう)の人間(にんげん)のために禽獣(きんじう)草木(さうもく)を造(つく)つて、039この世界(せかい)を種々(しゆじゆ)の生物(せいぶつ)で充(みた)した。
040 エヂプトの神話(しんわ)には猶(なほ)いくつかの天地(てんち)創造説(さうざうせつ)が伝(つた)へられてゐるが、041以上(いじやう)述(の)べたのが一番(いちばん)まとまつた代表(だいへう)的(てき)な説(せつ)である。042此(こ)の神話(しんわ)によつても窺(うかが)はれるやうに、043エヂプト神話(しんわ)の中心(ちうしん)は、044いはゆる太陽(たいやう)神話(しんわ)で、045エヂプト人(じん)が最上(さいじやう)の神(かみ)として崇(あが)めるのは太陽神(たいやうしん)「ラー」であつた。
046 エヂプト人(じん)の信仰(しんかう)によると「ラー」は毎朝(まいあさ)東(ひがし)の空(そら)に現(あら)はれ、047日(ひ)の船(ふね)にのつて天上(てんじやう)を横(よこ)ぎるものと考(かんが)へられてゐた。048この旅行(りよかう)の間(あひだ)に「ラー」は絶(た)えず地上(ちじやう)の人間(にんげん)を見下(みおろ)して、049その行為(かうゐ)の善悪(ぜんあく)を見分(みわ)け、050また彼(かれ)等(ら)に光(ひかり)と熱(ねつ)とを与(あた)へるのである。051夕方(ゆふがた)には西方(せいはう)の山(やま)の後(うしろ)へはいつて、052そこから暗黒(あんこく)な下界(げかい)へ沈(しづ)んで行(ゆ)く。053そして夜(よる)の間(あひだ)は地(ち)の底(そこ)を流(なが)れる大河(おほかは)の荒浪(あらなみ)を分(わ)け、054その道(みち)をさへぎる種々(しゆじゆ)の敵(てき)と戦(たたか)つて正(ただ)しい人間(にんげん)の霊魂(れいこん)を船(ふね)の中(なか)へ救(すく)ひ上(あ)げながら、055暁方(あけがた)には再(ふたた)び東(ひがし)の空(そら)に現(あら)はれる。
056 「ラー」は元来(ぐわんらい)北方(ほくぱう)の神(かみ)で、057その崇拝(すうはい)の中心(ちうしん)は「ニイル」河(がは)の下流(かりう)地方(ちはう)にある「ヘリオボリス」であつたが、058南北(なんぼく)統一後(とういつご)、059そこから次第(しだい)にエヂプトの全国(ぜんこく)に拡(ひろ)がつて行(い)つた。060そして後(のち)に上(かみ)エヂプトの「テーベ」が勢力(せいりよく)を得(う)るやうになつてからは、061其(その)地方(ちはう)の主神(スしん)たる「アメン」と結合(けつがふ)して「アメン・ラー」として崇拝(すうはい)された。
062 「ラー」は普通(ふつう)に人間(にんげん)の姿(すがた)であらはされてゐるが、063時(とき)によると鷹(たか)の頭(あたま)をつけた人間(にんげん)の姿(すがた)にあらはされる事(こと)もある。064つまりエヂプトでは古(ふる)くから鷹(たか)を以(もつ)て太陽(たいやう)を表(あら)はす習慣(しふくわん)があつたからで、065その他(た)の諸国(しよこく)でも鷲(わし)や鷹(たか)なぞの鳥類(てうるゐ)を太陽(たいやう)の象徴(しやうちよう)とすることは一般(いつぱん)に行(おこな)はれた風(ふう)である。
066 「アメン」はまた「アモン」とも言(い)ひ、067本来(ほんらい)「カルナツク」の地方神(ちはうしん)で、068その名称(めいしよう)の起源(きげん)は明瞭(めいれう)ではないが、069一説(いつせつ)には「隠(かく)れたるもの」と言(い)ふ意味(いみ)だとも言(い)はれてゐる。
070 この神(かみ)の像(ざう)は或(あるひ)は王座(わうざ)によつた人間(にんげん)の姿(すがた)、071或(あるひ)は人身(じんしん)蛙首(あしゆ)、072或(あるひ)は人身(じんしん)蛇首(だしゆ)、073或(あるひ)は猿(さる)、074或(あるひ)は獅子(しし)、075或(あるひ)は人身(じんしん)羊首(やうしゆ)の姿(すがた)であらはされてゐるが、076中(なか)でも頭上(づじやう)に赤(あか)と青(あを)のだんだらに染(そ)め分(わ)けた一対(いつつゐ)の長(なが)い羽飾(はねかざり)をいただき、077頤髯(あごひげ)を垂(た)らした人間(にんげん)の姿(すがた)をしてゐる像(ざう)が最(もつと)も多(おほ)い。078後(のち)に太陽神(たいやうしん)「ラー」と融合(ゆうがふ)してからは、079後者(こうしや)の属性(ぞくせい)をとつて人身(じんしん)鷹首(ようしゆ)の姿(すがた)にあらはされるやうになつた。
080 「アメン」の崇拝(すうはい)の中心(ちうしん)は「ニイル」河谷(かこく)の「テーベ」で、081第十二(だいじふに)王朝(わうてう)の時(とき)までは単(たん)にこの地方(ちはう)の神(かみ)たるに過(す)ぎなかつたが、082この王朝(わうてう)が「テーベ」から起(おこ)つてエヂプトを統一(とういつ)するに及(およ)んで、083その崇拝(すうはい)は速(すみや)かにエヂプトの全土(ぜんど)に拡(ひろ)がり、084多(おほ)くの地方神(ちはうしん)の属性(ぞくせい)をその一身(いつしん)に集(あつ)め、085遂(つひ)には「アメン・ラー」の名(な)をもつて「神々(かみがみ)の王(わう)」と讃(たた)へられるやうになつた。086「アメン」はまた「地上(ちじやう)の王(わう)の王(わう)」として歴代(れきだい)の王(わう)はこの神(かみ)の化身(けしん)と考(かんが)へられ、087またその皇后(くわうごう)はこの神(かみ)の司祭(しさい)として神(かみ)の胤(たね)を宿(やど)すものと信(しん)ぜられてゐた。088「アメン」の配偶(はいぐう)を「ムウト」と言(い)ひ「神々(かみがみ)の女王(ぢよわう)」として地上(ちじやう)の万物(ばんぶつ)を生(う)む「一切(いつさい)の母(はは)」と考(かんが)へられてゐた。
089 この女神(めがみ)は通例(つうれい)南北(なんぼく)両(りやう)エヂプトの王冠(わうくわん)を戴(いただ)き、090手(て)に笏(しやく)をとつた姿(すがた)で表(あら)はされてゐるが、091時(とき)には母性(ぼせい)の表象(へうしやう)たる兀鷹(はげたか)、092若(も)しくは獅子(しし)の姿(すがた)であらはされることもあつた。
093 「アメン」と「ムウト」の間(あひだ)に生(うま)れた神(かみ)を「コンスウ」と言(い)ひ、094月(つき)の神(かみ)で、095農作物(のうさくもつ)または家畜(かちく)の守護者(しゆごしや)とされ、096また若(わか)い男女(だんぢよ)の心(こころ)に愛(あい)を吹(ふ)き込(こ)む神(かみ)として崇拝(すうはい)された。
097 エヂプトの神々(かみがみ)のうちで一番(いちばん)広(ひろ)く崇拝(すうはい)されたのは「オシリス」であつた。098「オシリス」は本来(ほんらい)北方(ほくぱう)の神(かみ)であるが、099南北(なんぼく)統一後(とういつご)、100その信仰(しんかう)は一般(いつぱん)に盛(さか)んになつた。101この神(かみ)は地上(ちじやう)の人類(じんるゐ)に種々(しゆじゆ)な生活(せいくわつ)の道(みち)を伝(つた)へ同胞(どうはう)のやうに相愛(あひあい)して、102平和(へいわ)に此(こ)の世(よ)を送(おく)らせるために人間(にんげん)の形(かたち)で天(てん)から下(くだ)された神(かみ)であつた。103併(しか)しその同胞(どうはう)の神(かみ)に「セット」亦(また)の名(な)を「チフォン」と言(い)ふ悪神(あくがみ)があつて、104秘密(ひみつ)な計略(けいりやく)を設(まう)けて人知(ひとし)れず「オシリス」を殺(ころ)してしまつた。105そこで「オシリス」の妻(つま)の「イシス」はその夫(をつと)の遺骸(ゐがい)をたづねて諸国(しよこく)をさまよつた末(すゑ)、106やうやう見付(みつ)け出(だ)して一旦(いつたん)は蘇生(そせい)させたが、107「セット」に見付(みつ)けられて再(ふたた)びその生命(せいめい)を奪(うば)はれて了(しま)つた。108「オシリス」の遺子(ゐし)「ホルス」は母(はは)の「イシス」の手(て)で養育(やういく)され、109成長(せいちやう)の後(のち)「チフォン」討伐(たうばつ)の軍(ぐん)を起(おこ)し、110激戦(げきせん)の後(のち)その敵(てき)を破(やぶ)つて父(ちち)の王位(わうゐ)を回復(くわいふく)した。111この物語(ものがたり)は後世(こうせい)エヂプト人(じん)の間(あひだ)に広(ひろ)く伝誦(でんしよう)された伝説(でんせつ)の一(ひと)つである。
112 「オシリス」はその生前(せいぜん)に受(う)けた苦難(くなん)のために、113死後(しご)は下界(げかい)に下(くだ)つて死者(ししや)の裁判官(さいばんくわん)となつた。114彼(かれ)は地下(ちか)の世界(せかい)に住(す)んで、115毎夜(まいよ)「ラー」の船(ふね)と共(とも)に暗黒(あんこく)の谷(たに)に下(くだ)つて行(ゆ)く無数(むすう)の霊魂(れいこん)に、116それぞれの審判(しんぱん)を与(あた)へるのである。
117 「オシリス」についで崇(あが)められる神(かみ)に「トート」がある。118「トート」は智慧(ちゑ)の神(かみ)で下界(げかい)の法廷(はふてい)では「オシリス」の傍(かたはら)に立(た)つて人間(にんげん)の心(こころ)の目方(めかた)を計(はか)る秤(はかり)をながめながら、119手(て)に紙(かみ)と筆(ふで)を以(もつ)て控(ひか)へてゐる。120この理由(りゆう)から「トート」は神(かみ)の書記(しよき)と呼(よ)ばれてゐる。121この神(かみ)の像(ざう)は鶴(つる)の首(くび)を持(も)つた人間(にんげん)の姿(すがた)に描(ゑが)かれてゐる。122そしてその頭(あたま)の周囲(しうゐ)に新月(しんげつ)の形(かたち)をした後光(ごくわう)がついてゐるのは、123時(とき)を定(さだ)める神(かみ)とされてゐたことを示(しめ)すものである。
124 此(この)他(ほか)の神々(かみがみ)には「イシス」の妹(いもうと)の「ネブチス」「オシリス」と「イシス」の子(こ)の「アヌビス」それから前(まへ)に述(の)べた「オシリス」の弟(おとうと)の「セット」なぞがある。125「ネブチス」は死(し)の神(かみ)で、126「アヌビス」は墓場(はかば)の守神(まもりがみ)で、127「セット」は総(すべ)ての害悪(がいあく)の源(みなもと)で人類(じんるゐ)の敵(てき)と考(かんが)へられてゐた。
128 エヂプト人(じん)は、129神々(かみがみ)は地上(ちじやう)に下(くだ)つて常(つね)に人間(にんげん)の行為(かうゐ)を監視(かんし)するものだと信(しん)じてゐた。130そしてさう言(い)ふ場合(ばあひ)には神々(かみがみ)はいろいろな動物(どうぶつ)の姿(すがた)になつてゐると信(しん)じてゐたので、131自然(しぜん)に色々(いろいろ)な動物(どうぶつ)を神(かみ)の化身(けしん)として崇拝(すうはい)するやうになつた。132例之(たとへば)エヂプト産(さん)の大甲虫(だいかふちう)を「ケベル」「ラー」の化身(けしん)と信(しん)じ、133山犬(やまいぬ)を「アヌビス」の化身(けしん)とし、134鶴(つる)を「トート」の化身(けしん)として崇拝(すうはい)した。135そしてかう言(い)ふ神(かみ)の動物(どうぶつ)を殺(ころ)したものは、136たとへ過失(くわしつ)にしても、137死(し)を以(もつ)てその罪(つみ)を償(あがな)はなければならぬものとされてゐた。
138 中(なか)にもエヂプト人(じん)の最(もつと)も崇拝(すうはい)した動物(どうぶつ)は下界(げかい)の神(かみ)「オシリス」の化身(けしん)として尊敬(そんけい)された牡牛(をうし)であつた。139後(のち)に「オシリス」の神殿(しんでん)に仕(つか)へる神官(しんくわん)は一定(いつてい)の特徴(とくちよう)を持(も)つた牡牛(おうし)を選(えら)んで神獣(しんじう)とし、140これを「アビス・ブル」と言(い)つて崇拝(すうはい)した。141「アビス」は全身(ぜんしん)が漆(うるし)のやうに黒(くろ)く額(ひたひ)に三角形(さんかくけい)の白(しろ)い斑点(はんてん)があつて、142背中(せなか)の毛(け)は鷲(わし)の羽(はね)をひろげたやうな形(かたち)になつてゐる。143その上(うへ)右(みぎ)の側腹(わきばら)には三日月(みかづき)形(がた)の白(しろ)い斑点(はんてん)と、144咽(のど)の下(した)に大甲虫(だいかふちう)のやうなしるしがあつた。145かう言(い)ふ特徴(とくちよう)のある牛(うし)が見付(みつ)かると、146エヂプト全国(ぜんこく)は煮(に)え返(かへ)るばかりの騒(さわ)ぎをして、147その吉兆(きちてう)を祝(いは)ふのであつた。148そしてこの神獣(しんじう)が母(はは)の乳(ちち)から離(はな)れるのを待(ま)つて、149祭司(さいし)等(たち)はこれを「ニイル」河(がは)の岸(きし)に運(はこ)び、150美(うつく)しく飾(かざ)りたてた船(ふね)にのせて「メンフィス」へ迎(むか)へ、151そこに立派(りつぱ)な神殿(しんでん)を建(た)てて安置(あんち)した。152「アビス」は一生(いつしやう)の間(あひだ)この神殿(しんでん)の中(なか)で人々(ひとびと)の奉仕(ほうし)を受(う)け、153毎年(まいねん)の誕生日(たんじやうび)には盛(さか)んな祭典(さいてん)が行(おこな)はれた。
154 「アビス」がその神殿(しんでん)で命(いのち)を終(をは)ると、155エヂプト全国(ぜんこく)は哀悼(あいたう)の意(い)を表(へう)して、156第二(だいに)の「アビス」が発見(はつけん)されるまで喪(も)を続(つづ)けるのであつた。157「アビス」の遺骸(ゐがい)はミイラとして葬(はうむ)らるるのであるが、158その葬(はうむ)つた場所(ばしよ)は深(ふか)く秘(ひ)して何人(なんぴと)にも知(し)らせないやうにした。159近年(きんねん)この墓地(ぼち)が発掘(はつくつ)されて始(はじ)めて其(そ)の秘密(ひみつ)が発(あば)かれたが、160これらの墓(はか)は地下(ちか)の岩(いは)を掘(ほ)つて造(つく)つた広大(くわうだい)な岩屋(いはや)のうちに在(あ)つて、161通路(つうろ)の両側(りやうがは)には無数(むすう)の部屋(へや)が設(まう)けられ、162各(おのおの)の部屋(へや)に巨大(きよだい)な石(いし)の柩(ひつぎ)が安置(あんち)されてゐた。
163 鳥(とり)の中(なか)では鷹(たか)と鶴(つる)が最(もつと)も神聖(しんせい)なものであつた。164雪(ゆき)のやうな羽(はね)と真黒(まつくろ)な尾(を)を持(も)つた鶴(つる)は「トート」の神禽(しんきん)とされ、165鷹(たか)は「ホルス」の表象(へうしやう)として崇拝(すうはい)されたのである。
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