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霊界物語
天祥地瑞（第73～81巻）
第76巻（卯の巻）
序文
総説
日本所伝の天地開闢説
支那の開闢説
波斯の宇宙創造説
希臘の天地開闢説
エヂプトの開闢説
メキシコナフア族の天地創造説
マヤ族の万物創造説
北欧に於ける宇宙創造説
太平洋西北岸創造説
英領北亜米利加創造説
亜弗利加神話
ヘブライ天地創造説
パレスチン創造説
ミクロネシヤ創造説
インドネシヤ創造説
第1篇 春風駘蕩
第1章 高宮参拝
第2章 魔の渓流
第3章 行進歌
第4章 怪しの巌山
第5章 露の宿
第2篇 晩春の神庭
第6章 報告祭
第7章 外苑の逍遥
第8章 善言美霊
第3篇 孤軍奮闘
第9章 闇の河畔
第10章 二本松の蔭
第11章 栄城の山彦
第12章 山上の祈り
第13章 朝駒の別れ
第14章 磐楠舟
第15章 御舟巌
余白歌
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霊界物語
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天祥地瑞（第73～81巻）
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第76巻（卯の巻）
> 第3篇 孤軍奮闘 > 第12章 山上の祈り
＜＜＜ 栄城の山彦
(B)
(N)
朝駒の別れ ＞＞＞
第一二章
山上
(
さんじやう
)
の
祈
(
いの
)
り〔一九二九〕
インフォメーション
著者：
出口王仁三郎
巻：
霊界物語 第76巻 天祥地瑞 卯の巻
篇：
第3篇 孤軍奮闘
よみ（新仮名遣い）：
こぐんふんとう
章：
第12章 山上の祈り
よみ（新仮名遣い）：
さんじょうのいのり
通し章番号：
1929
口述日：
1933（昭和8）年12月07日（旧10月20日）
口述場所：
水明閣
筆録者：
谷前清子
校正日：
校正場所：
初版発行日：
1934（昭和9）年3月23日
概要：
舞台：
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です（一部加筆訂正してあります）。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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：
暁を告げる山烏の声に、早朝目を覚ませば、栄城山の朝風は颯颯と吹き入り芳しく、大野が原に霧が棚引き日陽に映え、えもいわれぬ美しい景色であった。
比女はこの景色を歌に歌い、東に高照山、西に高地秀山を眺めては来し方を述懐し、顕津男の神への思いをつづった。
そのうちに、神々が迎えにやってきた。小夜更の神が奉った石楠花の花を見ても、顕津男の神への思慕を深くする比女であったが、神々の案内で、山頂の宮居の大前に上って行った。
栄城山の宮居の聖所に立った朝香比女は、顕津男の神自らが開いた宮居に感無量となり、声もさわやかに神言を奏上した。
比女の礼拝に聖所もいつになく晴れ渡り、その清清しさを栄城山の神々は述懐歌に歌い、一同は再びつづら折の山道を下って休憩所の八尋殿へと下っていった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
：
備考：
タグ：
データ凡例：
データ最終更新日：
OBC ：
rm7612
愛善世界社版：
八幡書店版：
第13輯 558頁
修補版：
校定版：
389頁
普及版：
初版：
ページ備考：
001
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
栄城山
(
さかきやま
)
の
中腹
(
ちうふく
)
に、
002
神々
(
かみがみ
)
の
心
(
こころ
)
により
新
(
あたら
)
しく
建
(
た
)
てられたる
八尋
(
やひろ
)
の
殿
(
との
)
に
旅
(
たび
)
の
疲
(
つか
)
れを
休
(
やす
)
めむと、
003
初夏
(
しよか
)
の
一夜
(
ひとよ
)
を
明
(
あか
)
し
給
(
たま
)
ひけるが、
004
暁
(
あかつき
)
を
告
(
つ
)
ぐる
山烏
(
やまがらす
)
の
声
(
こゑ
)
に
眼
(
め
)
を
醒
(
さ
)
まさせ
給
(
たま
)
ひ、
005
静
(
しづか
)
に
床
(
とこ
)
を
跳
(
は
)
ね
起
(
お
)
き
給
(
たま
)
ひて、
006
髪
(
かみ
)
のほつれをととのへ、
007
白
(
しろ
)
き
薄
(
うす
)
き
衣
(
きぬ
)
を
纒
(
まと
)
ひ
給
(
たま
)
ひつつ、
008
居間
(
ゐま
)
の
窓
(
まど
)
を
押
(
お
)
し
開
(
ひら
)
き
給
(
たま
)
へば、
009
栄城
(
さかき
)
の
山
(
やま
)
の
朝風
(
あさかぜ
)
は
颯々
(
さつさつ
)
として
芳
(
かむ
)
ばしく
吹
(
ふ
)
き
入
(
い
)
り、
010
展開
(
てんかい
)
せる
大野
(
おほの
)
の
原
(
はら
)
に
棚引
(
たなび
)
く
霧
(
きり
)
は、
011
陽光
(
ひかげ
)
に
映
(
えい
)
じて
得
(
え
)
も
言
(
い
)
はれぬばかりの
美
(
うるは
)
しき
眺
(
なが
)
めなりける。
012
伽陵
(
かりよう
)
頻迦
(
びんが
)
は
木
(
こ
)
の
間
(
ま
)
に
囀
(
さへづ
)
り、
013
真鶴
(
まなづる
)
は
松
(
まつ
)
の
茂
(
しげ
)
みに
暁
(
あかつき
)
を
歌
(
うた
)
ふ。
014
『
見渡
(
みわた
)
せば
遠
(
とほ
)
の
大野
(
おほの
)
に
霞
(
かすみ
)
立
(
た
)
ちて
015
そよ
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
も
初夏
(
しよか
)
を
匂
(
にほ
)
へり
016
栄城山
(
さかきやま
)
松
(
まつ
)
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
の
音
(
ね
)
も
冴
(
さ
)
えて
017
梢
(
こずゑ
)
にうたふ
真鶴
(
まなづる
)
愛
(
め
)
ぐしも
018
白梅
(
しらうめ
)
の
花
(
はな
)
はなけれど
鶯
(
うぐひす
)
の
019
声
(
こゑ
)
のさえたる
栄城山
(
さかきやま
)
はも
020
長旅
(
ながたび
)
の
疲
(
つか
)
れやすみて
吾
(
われ
)
は
今
(
いま
)
021
八尋
(
やひろ
)
の
殿
(
との
)
に
国土見
(
くにみ
)
するかも
022
常磐樹
(
ときはぎ
)
の
松
(
まつ
)
の
下
(
した
)
びに
咲
(
さ
)
き
匂
(
にほ
)
ふ
023
つつじの
花
(
はな
)
の
目出度
(
めでた
)
くもあるか
024
石南花
(
しやくなげ
)
の
花
(
はな
)
桃色
(
ももいろ
)
に
咲
(
さ
)
きにけり
025
小
(
ちひ
)
さき
鳥
(
とり
)
の
来
(
きた
)
りてあそべる
026
背
(
せ
)
の
岐美
(
きみ
)
の
御後
(
みあと
)
したひて
吾
(
われ
)
は
今
(
いま
)
027
栄城
(
さかき
)
の
山
(
やま
)
に
安居
(
やすゐ
)
するかも
028
百神
(
ももがみ
)
のあつき
心
(
こころ
)
にほだされて
029
栄城
(
さかき
)
の
山
(
やま
)
に
一夜
(
ひとよ
)
いねけり
030
その
昔
(
むかし
)
わが
背
(
せ
)
の
岐美
(
きみ
)
の
神言
(
かみごと
)
を
031
宣
(
の
)
らせたまひし
御山
(
みやま
)
恋
(
こひ
)
しも
032
東
(
ひむがし
)
の
空
(
そら
)
に
高照山
(
たかてるやま
)
霞
(
かす
)
み
033
西
(
にし
)
にそびゆる
高地秀
(
たかちほ
)
の
山
(
やま
)
034
高照山
(
たかてるやま
)
高地秀
(
たかちほ
)
の
山
(
やま
)
の
中
(
なか
)
にして
035
清
(
すが
)
しく
立
(
た
)
てる
栄城
(
さかき
)
の
山
(
やま
)
はも
036
栄城山
(
さかきやま
)
これの
聖所
(
すがど
)
に
岐美
(
きみ
)
まさば
037
吾
(
われ
)
はこの
天界
(
よ
)
に
思
(
おも
)
ひなけむを
038
ままならぬ
浮世
(
うきよ
)
なるかな
背
(
せ
)
の
岐美
(
きみ
)
は
039
万里
(
ばんり
)
の
外
(
そと
)
の
旅
(
たび
)
に
立
(
た
)
たせり
040
翼
(
つばさ
)
あらば
高照山
(
たかてるやま
)
を
飛
(
と
)
び
越
(
こ
)
えて
041
光明
(
ひかり
)
の
岐美
(
きみ
)
が
許
(
もと
)
に
行
(
ゆ
)
かむを
042
駿馬
(
はやこま
)
の
脚
(
あし
)
は
如何程
(
いかほど
)
速
(
はや
)
くとも
043
万里
(
ばんり
)
の
道
(
みち
)
ははろけかりけり
044
御樋代
(
みひしろ
)
の
神
(
かみ
)
と
生
(
うま
)
れて
斯
(
か
)
くの
如
(
ごと
)
045
苦
(
くる
)
しき
吾
(
われ
)
とは
思
(
おも
)
はざりけり
046
わが
思
(
おも
)
ひ
淡
(
あは
)
く
清
(
すが
)
しくあるなれば
047
かかる
悩
(
なや
)
みもあらざらましを
048
谷水
(
たにみづ
)
の
冷
(
つめ
)
たき
心
(
こころ
)
持
(
も
)
ちてわれ
049
この
天界
(
かみくに
)
に
住
(
す
)
み
度
(
た
)
くおもふ
050
さり
乍
(
なが
)
ら
如何
(
いかが
)
なしけむわが
思
(
おも
)
ひ
051
炎
(
ほのほ
)
となりて
胸
(
むね
)
を
焦
(
こ
)
がしつ
052
わが
胸
(
むね
)
の
炎
(
ほのほ
)
を
消
(
け
)
すは
瑞御霊
(
みづみたま
)
053
水
(
みづ
)
の
力
(
ちから
)
に
及
(
おぼ
)
ぶものなし
054
岐美
(
きみ
)
を
思
(
おも
)
ふあつき
心
(
こころ
)
に
焦
(
こ
)
がされて
055
はづかしきことを
忘
(
わす
)
れけるかな』
056
斯
(
か
)
く
一人
(
ひとり
)
歌
(
うた
)
はせ
給
(
たま
)
ふ
折
(
をり
)
しもあれ、
057
小夜更
(
さよふけ
)
の
神
(
かみ
)
は
紫
(
むらさき
)
、
058
紅
(
くれなゐ
)
のつつじ
及
(
およ
)
び
石南花
(
しやくなげ
)
の
花
(
はな
)
を
捧
(
ささ
)
げ
乍
(
なが
)
ら、
059
静々
(
しづしづ
)
比女神
(
ひめがみ
)
の
御殿
(
みとの
)
に
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
060
比女神
(
ひめがみ
)
に
捧
(
ささ
)
げむとして
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
061
『
栄城山
(
さかきやま
)
松
(
まつ
)
の
木蔭
(
こかげ
)
に
匂
(
にほ
)
ひたる
062
生命
(
いのち
)
の
花
(
はな
)
を
公
(
きみ
)
にまゐらす
063
小夜
(
さよ
)
更
(
ふ
)
けて
公
(
きみ
)
に
誓
(
ちか
)
ひし
丹
(
に
)
つつじや
064
桃色
(
ももいろ
)
石南花
(
しやくなげ
)
みそなはしませ』
065
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
小夜更
(
さよふけ
)
の
神
(
かみ
)
の
奉
(
たてまつ
)
るつつじ、
066
石南花
(
しやくなげ
)
の
花
(
はな
)
を
莞爾
(
くわんじ
)
として
受取
(
うけと
)
り
乍
(
なが
)
ら、
067
わが
唇
(
くちびる
)
に
花
(
はな
)
の
台
(
うてな
)
をあてさせ
給
(
たま
)
ひ、
068
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
069
『
芳
(
かむ
)
ばしき
紅
(
くれなゐ
)
の
花
(
はな
)
よ
紫
(
むらさき
)
よ
070
桃色
(
ももいろ
)
の
花
(
はな
)
よ
口
(
くち
)
づけて
見
(
み
)
む
071
この
花
(
はな
)
は
香
(
かを
)
り
妙
(
たへ
)
なり
背
(
せ
)
の
岐美
(
きみ
)
の
072
水火
(
いき
)
のまにまに
匂
(
にほ
)
ひつるかも
073
紅
(
くれなゐ
)
のつつじの
花
(
はな
)
の
心
(
こころ
)
もて
074
いつかは
岐美
(
きみ
)
に
見
(
まみ
)
えまつらむ
075
石南花
(
しやくなげ
)
の
花
(
はな
)
美
(
うる
)
はしく
桃色
(
ももいろ
)
に
076
香
(
かを
)
り
初
(
そ
)
めたり
吾
(
われ
)
にあらねど
077
桃色
(
ももいろ
)
の
花
(
はな
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
るにつけ
078
岐美
(
きみ
)
のつれなき
心
(
こころ
)
をおもふ
079
背
(
せ
)
の
岐美
(
きみ
)
をうらむらさきの
花
(
はな
)
つつじ
080
手折
(
たを
)
りし
小夜更
(
さよふけ
)
神
(
かみ
)
の
心
(
こころ
)
は』
081
斯
(
か
)
く
問
(
と
)
はせ
給
(
たま
)
へば、
082
小夜更
(
さよふけ
)
の
神
(
かみ
)
は
畏
(
かしこ
)
みながら
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
083
『
桃色
(
ももいろ
)
の
石南花
(
しやくなげ
)
の
花
(
はな
)
たてまつり
084
比女
(
ひめ
)
の
心
(
こころ
)
をそこなひしはや
085
石南花
(
しやくなげ
)
の
花
(
はな
)
美
(
うる
)
はしと
心
(
こころ
)
なく
086
奉
(
たてまつ
)
りたるあやまち
許
(
ゆる
)
せよ
087
紫
(
むらさき
)
の
花
(
はな
)
は
目出度
(
めでた
)
きしるしぞや
088
やがては
岐美
(
きみ
)
に
逢
(
あ
)
はむと
思
(
おも
)
ひて
089
いろいろの
花
(
はな
)
の
心
(
こころ
)
を
比女許
(
ひめがり
)
に
090
供
(
そな
)
へて
旅
(
たび
)
を
慰
(
なぐさ
)
めむと
思
(
も
)
ひしよ』
091
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
莞爾
(
くわんじ
)
として、
092
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
093
『
故
(
わけ
)
もなきわが
言
(
こと
)
の
葉
(
は
)
に
汝
(
な
)
が
神
(
かみ
)
の
094
心
(
こころ
)
悩
(
なや
)
ませしことを
悔
(
く
)
ゆるも
095
只
(
ただ
)
吾
(
われ
)
を
慰
(
なぐさ
)
むる
為
(
ため
)
の
花
(
はな
)
なりしを
096
深
(
ふか
)
く
思
(
おも
)
ひてあやまちしはや
097
紅
(
くれなゐ
)
の
花
(
はな
)
の
唇
(
くちびる
)
朝夕
(
あさゆふ
)
に
098
吸
(
す
)
ふ
蝶々
(
てふてふ
)
のうらめしきかも
099
いつの
日
(
ひ
)
か
紅
(
くれなゐ
)
の
唇
(
くち
)
まつぶさに
100
吸
(
す
)
はむと
思
(
も
)
へば
心
(
こころ
)
はろけし』
101
斯
(
か
)
く
歌
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ
折
(
をり
)
しも、
102
機造男
(
はたつくりを
)
の
神
(
かみ
)
は
恭
(
うやうや
)
しくこの
場
(
ば
)
に
現
(
あらは
)
れ
給
(
たま
)
ひ、
103
『
朝津日
(
あさつひ
)
は
昇
(
のぼ
)
り
給
(
たま
)
へりいざさらば
104
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
の
宮居
(
みやゐ
)
に
導
(
みちび
)
きまつらむ
105
長旅
(
ながたび
)
に
疲
(
つか
)
れましぬと
思
(
おも
)
ひつつ
106
朝
(
あした
)
の
居間
(
ゐま
)
をおどろかせつる
107
紫
(
むらさき
)
の
雲
(
くも
)
は
東
(
ひがし
)
の
大空
(
おほぞら
)
に
108
いや
棚引
(
たなび
)
きつ
陽
(
ひ
)
は
昇
(
のぼ
)
りたり
109
久方
(
ひさかた
)
の
御空
(
みそら
)
雲
(
くも
)
なく
晴
(
は
)
れにけり
110
栄城
(
さかき
)
の
山
(
やま
)
のいただき
清
(
すが
)
しく』
111
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
112
『
長旅
(
ながたび
)
の
疲
(
つか
)
れを
岐美
(
きみ
)
が
真心
(
まごころ
)
に
113
休
(
やす
)
らひにけり
一夜
(
ひとよ
)
ねむりて
114
眺
(
なが
)
めよき
八尋
(
やひろ
)
の
殿
(
との
)
に
導
(
みちび
)
かれ
115
朝
(
あした
)
の
景色
(
けしき
)
にとけ
入
(
い
)
りにけり
116
常磐樹
(
ときはぎ
)
の
松
(
まつ
)
の
下
(
した
)
びに
咲
(
さ
)
き
匂
(
にほ
)
ふ
117
つつじの
花
(
はな
)
にこころ
休
(
やす
)
めり
118
いざさらば
導
(
みちび
)
き
給
(
たま
)
へ
背
(
せ
)
の
岐美
(
きみ
)
の
119
祈
(
いの
)
りたまひし
聖所
(
すがど
)
をさして』
120
ここに
機造男
(
はたつくりを
)
の
神
(
かみ
)
は
諸神
(
しよしん
)
と
共
(
とも
)
に、
121
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
を
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
守
(
まも
)
りつつ、
122
頂上
(
ちやうじやう
)
の
宮居
(
みや
)
の
大前
(
おほまへ
)
さして
上
(
のぼ
)
らせ
給
(
たま
)
ひける。
123
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
宮居
(
みや
)
の
聖所
(
すがど
)
に
立
(
た
)
たせ
給
(
たま
)
ひ、
124
感慨
(
かんがい
)
無量
(
むりやう
)
の
面持
(
おももち
)
にて、
125
四方
(
よも
)
の
国形
(
くにがた
)
を
覧
(
みそなは
)
しながら
大前
(
おほまへ
)
に
拝跪
(
はいき
)
して、
126
神言
(
かみごと
)
を
御声
(
みこゑ
)
さわやかに
宣
(
の
)
らせ
給
(
たま
)
ふ。
127
『
掛巻
(
かけまく
)
も
綾
(
あや
)
に
尊
(
たふと
)
き
128
栄城山
(
さかきやま
)
の
上津
(
うはつ
)
岩根
(
いはね
)
に
129
宮柱
(
みやばしら
)
太
(
ふと
)
しく
建
(
た
)
てて
鎮
(
しづ
)
まりいます
130
主
(
ス
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
大前
(
おほまへ
)
に
131
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
謹
(
つつし
)
み
敬
(
ゐやま
)
ひ
132
祈願
(
こひのみ
)
奉
(
まつ
)
らく
133
そもそもこれの
大宮居
(
おほみや
)
は
134
顕津男
(
あきつを
)
の
神
(
かみ
)
御自
(
みみづか
)
ら
135
大峡
(
おほがひ
)
小峡
(
をがひ
)
の
木
(
き
)
を
伐
(
き
)
りて
136
百神
(
ももがみ
)
等
(
たち
)
を
率
(
ひき
)
ゐまし
137
開
(
ひら
)
き
給
(
たま
)
ひし
宮居
(
みや
)
にしあれば
138
吾
(
われ
)
は
一入
(
ひとしほ
)
尊
(
たふと
)
しも
139
いやなつかしもこの
宮居
(
みや
)
に
140
鎮
(
しづ
)
まりいます
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
141
深
(
ふか
)
き
恵
(
めぐ
)
みをかかぶりて
142
吾
(
わが
)
背
(
せ
)
の
岐美
(
きみ
)
の
出
(
い
)
でませる
143
西方
(
にしかた
)
の
国土
(
くに
)
に
恙
(
つつが
)
なく
144
進
(
すす
)
ませ
給
(
たま
)
へと
願
(
ね
)
ぎ
奉
(
まつ
)
る
145
八十
(
やそ
)
曲津
(
まが
)
神
(
かみ
)
は
猛
(
たけ
)
るとも
146
醜
(
しこ
)
の
醜女
(
しこめ
)
はさやるとも
147
荒野
(
あらの
)
に
風
(
かぜ
)
はすさぶとも
148
大蛇
(
をろち
)
は
道
(
みち
)
にさやるとも
149
神
(
かみ
)
の
御水火
(
みいき
)
に
生
(
あ
)
れませる
150
天
(
あめ
)
の
駿馬
(
はやこま
)
に
鞭
(
むち
)
うちて
151
安
(
やす
)
らに
平
(
たひら
)
に
岐美許
(
きみがり
)
に
152
進
(
すす
)
ませ
給
(
たま
)
ひて
詳細
(
まつぶさ
)
に
153
御子生
(
みこう
)
みの
神業
(
わざ
)
をねもごろに
154
仕
(
つか
)
へ
終
(
を
)
へしめ
給
(
たま
)
へかし
155
栄城
(
さかき
)
の
山
(
やま
)
の
松ケ枝
(
まつがえ
)
は
156
千代
(
ちよ
)
のみどりの
色
(
いろ
)
深
(
ふか
)
く
157
真鶴
(
まなづる
)
の
声
(
こゑ
)
は
弥清
(
いやきよ
)
く
158
伽陵
(
かりよう
)
頻迦
(
びんが
)
の
音
(
ね
)
も
冴
(
さ
)
えて
159
御空
(
みそら
)
はいよいよ
明
(
あきら
)
けく
160
国土
(
つち
)
の
上
(
うへ
)
まで
澄
(
す
)
みきらひ
161
四方
(
よも
)
にふさがる
雲霧
(
くもきり
)
は
162
あとなく
消
(
き
)
えてすくすくと
163
神
(
かみ
)
の
依
(
よ
)
さしの
神業
(
かむわざ
)
に
164
仕
(
つか
)
へ
奉
(
まつ
)
らせ
給
(
たま
)
へかしと
165
栄城
(
さかき
)
の
山
(
やま
)
の
山
(
やま
)
の
上
(
へ
)
に
166
畏
(
かしこ
)
み
畏
(
かしこ
)
み
願
(
ね
)
ぎ
奉
(
まつ
)
る。
167
見渡
(
みわた
)
せば
栄城
(
さかき
)
の
山
(
やま
)
は
雲
(
くも
)
の
上
(
へ
)
に
168
そびえ
立
(
た
)
ちつつ
常磐樹
(
ときはぎ
)
茂
(
しげ
)
れり
169
見
(
み
)
の
限
(
かぎ
)
り
四方
(
よも
)
は
霞
(
かす
)
めり
高地秀
(
たかちほ
)
の
170
山
(
やま
)
はいづくぞ
黒雲
(
くろくも
)
ふさがる
171
雲
(
くも
)
の
奥空
(
おくそら
)
のあなたに
高地秀
(
たかちほ
)
の
172
神山
(
みやま
)
は
高
(
たか
)
くそびえ
立
(
た
)
つらむ
173
栄城山
(
さかきやま
)
の
頂上
(
いただき
)
に
立
(
た
)
ちて
打
(
う
)
ち
仰
(
あふ
)
ぐ
174
御空
(
みそら
)
の
碧
(
あを
)
の
深
(
ふか
)
くもあるかな
175
ここに
来
(
き
)
てわが
背
(
せ
)
の
岐美
(
きみ
)
の
功績
(
いさをし
)
を
176
一入
(
ひとしほ
)
深
(
ふか
)
くさとらひにけり
177
皇神
(
すめかみ
)
の
厚
(
あつ
)
き
恵
(
めぐみ
)
をかかぶりて
178
又
(
また
)
もや
明日
(
あす
)
は
旅
(
たび
)
に
立
(
た
)
つべし』
179
機造男
(
はたつくりを
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
180
『
顕津男
(
あきつを
)
の
神
(
かみ
)
の
造
(
つく
)
りしこの
宮居
(
みや
)
は
181
むらさきの
雲
(
くも
)
いつも
包
(
つつ
)
めり
182
比女神
(
ひめがみ
)
の
登
(
のぼ
)
らせし
今日
(
けふ
)
は
殊更
(
ことさら
)
に
183
御空
(
みそら
)
あかるく
雲
(
くも
)
晴
(
は
)
れにけり
184
日並
(
けなら
)
べてこの
神山
(
かみやま
)
におはしませ
185
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なにつかへまつらむ
186
見渡
(
みわた
)
せば
四方
(
よも
)
の
国原
(
くにはら
)
未
(
ま
)
だ
稚
(
わか
)
く
187
湯気
(
ゆげ
)
もやもやと
立
(
た
)
ち
昇
(
のぼ
)
りつつ』
188
散花男
(
ちるはなを
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
189
『
久方
(
ひさかた
)
の
御空
(
みそら
)
は
晴
(
は
)
れぬ
山
(
やま
)
晴
(
は
)
れぬ
190
この
神山
(
かみやま
)
の
今日
(
けふ
)
のさやけさ
191
御樋代
(
みひしろ
)
の
比女神
(
ひめがみ
)
ここに
現
(
あ
)
れまして
192
神山
(
みやま
)
の
雲霧
(
くもきり
)
とほざかりけり
193
非時
(
ときじく
)
に
春
(
はる
)
をうたへる
鶯
(
うぐひす
)
の
194
声
(
こゑ
)
に
栄城
(
さかき
)
の
山
(
やま
)
は
生
(
い
)
きたり
195
家鶏鳥
(
かけどり
)
は
宮居
(
みや
)
の
面
(
おもて
)
に
時
(
とき
)
をうたひ
196
田鶴
(
たづ
)
は
千歳
(
ちとせ
)
を
寿
(
ほ
)
ぎて
鳴
(
な
)
くかも
197
風
(
かぜ
)
薫
(
かを
)
るこの
神山
(
かみやま
)
のいただきに
198
立
(
た
)
たせる
比女
(
ひめ
)
の
光
(
ひかり
)
さやけし』
199
中割男
(
なかさきを
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
200
『この
宮居
(
みや
)
に
吾
(
われ
)
は
仕
(
つか
)
へて
年月
(
としつき
)
を
201
経
(
へ
)
ぬれど
晴
(
は
)
れし
吉
(
よ
)
き
日
(
ひ
)
なかりき
202
今日
(
けふ
)
の
如
(
ごと
)
晴
(
は
)
れわたりたる
神山
(
かみやま
)
に
203
国形
(
くにがた
)
を
見
(
み
)
るたのしさを
思
(
おも
)
ふ
204
永久
(
とことは
)
に
栄城
(
さかき
)
の
山
(
やま
)
は
晴
(
は
)
れよかし
205
御樋代
(
みひしろ
)
神
(
がみ
)
ののぼりし
日
(
ひ
)
より
206
栄城山
(
さかきやま
)
溪間
(
たにま
)
に
棲
(
す
)
める
曲津見
(
まがつみ
)
も
207
今日
(
けふ
)
より
雲
(
くも
)
は
起
(
おこ
)
さざるらむ
208
比女神
(
ひめがみ
)
の
生言霊
(
いくことたま
)
のひびかひに
209
八十
(
やそ
)
の
曲津見
(
まがつみ
)
あとなく
消
(
き
)
えなむ
210
国土造
(
くにつく
)
り
国魂神
(
くにたまがみ
)
を
生
(
う
)
まします
211
御樋代
(
みひしろ
)
神
(
がみ
)
の
出
(
い
)
でまし
天晴
(
あは
)
れ
212
吾
(
われ
)
も
亦
(
また
)
比女神
(
ひめがみ
)
の
御供
(
みとも
)
に
仕
(
つか
)
へむと
213
思
(
おも
)
へどいかに
思召
(
おぼしめ
)
すらむ』
214
朝香
(
あさか
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
の
御歌
(
みうた
)
。
215
『
神々
(
かみがみ
)
の
厚
(
あつ
)
き
情
(
こころ
)
に
守
(
まも
)
られて
216
栄城
(
さかき
)
の
山
(
やま
)
の
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
にのぼりぬ
217
栄城山
(
さかきやま
)
今日
(
けふ
)
を
限
(
かぎ
)
りに
栄
(
さか
)
えかし
218
常磐
(
ときは
)
の
松
(
まつ
)
の
色
(
いろ
)
ふかみつつ
219
栄城山
(
さかきやま
)
廻
(
めぐ
)
らす
野辺
(
のべ
)
はかたらかに
220
いやかたまりて
国
(
くに
)
の
秀
(
ほ
)
見
(
み
)
ゆるも
221
あちこちと
国魂神
(
くにたまがみ
)
の
家
(
いへ
)
見
(
み
)
えつ
222
果
(
は
)
てなき
栄
(
さか
)
えを
思
(
おも
)
はしむるも』
223
小夜更
(
さよふけ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
224
『
晴
(
は
)
れ
渡
(
わた
)
る
今日
(
けふ
)
の
吉
(
よ
)
き
日
(
ひ
)
に
大宮居
(
おほみや
)
に
225
比女
(
ひめ
)
を
守
(
まも
)
りてわれは
詣
(
まう
)
でし
226
高地秀
(
たかちほ
)
の
山
(
やま
)
は
雲間
(
くもま
)
にかくれつつ
227
栄城
(
さかき
)
の
山
(
やま
)
は
陽炎
(
かげろふ
)
もゆるも
228
陽炎
(
かげろふ
)
のもえ
立
(
た
)
つ
尾根
(
をね
)
に
佇
(
たたず
)
みつ
229
大野
(
おほの
)
の
夏
(
なつ
)
を
見
(
み
)
るはたのしき
230
山
(
やま
)
も
野
(
の
)
も
緑
(
みどり
)
のころも
着飾
(
きかざ
)
りて
231
夏
(
なつ
)
の
女神
(
めがみ
)
をむかへゐるかも
232
栄城山
(
さかきやま
)
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
を
渡
(
わた
)
る
夏風
(
なつかぜ
)
は
233
爽
(
さはや
)
かにして
涼
(
すず
)
しくもあるか』
234
親幸男
(
ちかさちを
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
235
『はろばろと
来
(
き
)
ませる
比女神
(
ひめがみ
)
導
(
みちび
)
きて
236
晴
(
は
)
れたる
栄城
(
さかき
)
の
尾根
(
をね
)
にのぼりつ
237
大宮居
(
おほみや
)
の
聖所
(
すがど
)
に
立
(
た
)
ちて
比女神
(
ひめがみ
)
の
238
生言霊
(
いくことたま
)
をわれ
聞
(
き
)
きしはや
239
言霊
(
ことたま
)
の
水火
(
いき
)
より
生
(
あ
)
れし
天地
(
あめつち
)
に
240
言霊
(
ことたま
)
宣
(
の
)
らで
生
(
い
)
くるべきやは
241
いざさらば
神山
(
みやま
)
を
下
(
くだ
)
り
八尋殿
(
やひろどの
)
に
242
休
(
やす
)
ませ
給
(
たま
)
へ
御樋代
(
みひしろ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
よ』
243
神々
(
かみがみ
)
は
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
の
大宮居
(
おほみや
)
の
聖所
(
すがど
)
に
立
(
た
)
ちて、
244
各自
(
おのもおのも
)
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませつつ、
245
岩
(
いは
)
の
根
(
ね
)
木
(
き
)
の
根
(
ね
)
踏
(
ふ
)
みさくみ
乍
(
なが
)
ら、
246
右
(
みぎ
)
に
左
(
ひだ
)
りに
折
(
を
)
れつ
曲
(
まが
)
りつ、
247
九十九
(
つくも
)
折
(
をり
)
の
坂道
(
さかみち
)
を
比女神
(
ひめがみ
)
の
御憩所
(
みやすど
)
なる
八尋殿
(
やひろどの
)
さして
下
(
くだ
)
らせ
給
(
たま
)
ひける。
248
（
昭和八・一二・七
旧一〇・二〇
於水明閣
谷前清子
謹録）
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