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月鏡
序
凡例
250 女の型
251 日本人目覚めよ
252 親作子作
253 無二の真理教
254 謝恩と犠牲心
255 現代の日本人
256 霊止と人間
257 仏教の女性観
258 日本人と悲劇
259 海岸線と山岳
260 書画をかく秘訣
261 四日月を三日月と見る二日酔
262 不毛の地
263 歴史談片
264 エルバンド式とモールバンド式
265 大黒主と八岐大蛇
266 島根県
267 誕生の種々
268 犠牲
269 三菩薩
270 懺悔
271 神の作品
272 舎身活躍
273 万機公論に決すべし
274 知識を世界に求む
275 克く忠克く孝
276 無作の詩
277 魂の大きさ
278 過去の失敗
279 捨てる事は正しく掴む事
280 人間と現世
281 安全な代物
282 人の面貌
283 堪忍
284 信教の自由
285 信仰に苔が生えた
286 意志想念の儘なる天地
287 謝恩の生活
288 広大無辺の御神徳
289 宗教団と其教祖
290 忘れると云ふ事
291 日本人の抱擁性
292 至誠と徹底
293 慧春尼
294 社会学の距離説
295 神と倶にある人
296 夏
297 惟神の心
298 悪魔の世界
299 人間と云ふ問題
300 学問も必要
301 有難き現界
302 梅で開いて松でをさめる
303 地租委譲問題
304 不戦条約
305 細矛千足の国
306 短い言語
307 言霊奏上について
308 性慾の問題
309 秘密
310 学と神力の力競べ
311 軍備撤廃問題
312 偽善者
313 宗教より芸術へ
314 年を若くする事
315 精力と精液
316 最後の真理
317 上になりたい人
318 壇訓(扶乩)について
319 エト読込の歌
320 動物愛護について
321 易
322 軍縮問題
323 小さい事
324 善言美詞は対者による
325 淋しいといふこと
326 空相と実相
327 刑法改正問題
328 二大祖神
329 三摩地
330 普通選挙
331 当相即道
332 玉
333 宗教即芸術
334 大本格言
335 大画揮毫について
336 霊的神業
337 模型を歩む
338 宗教の母
339 神功皇后様と現はれる
340 国栖を集めよ
341 系といふ文字
342 天帯
343 ガンヂー
344 大乗教と小乗教
345 支那道院奉唱呪文略解
346 日本は世界の胞胎
347 無題(俚謡)
348 角帽の階級打破
349 何よりも楽しみ
350 碁盤を買うた
351 探湯の釜
352 輪廻転生
353 音頭と言霊
354 ミロクの世と物質文明
355 宗祖と其死
356 仏典に就て
357 霊媒
358 心霊現象と兇党界
359 霊肉脱離
360 物語拝読について
361 北山の火竜
362 准宣伝使
363 鈿女物語
364 嗚呼既成宗教
365 キリストの再来
366 日月模様の浴衣
367 松と雑木
368 春日の鹿の由来
369 細胞
370 釈迦と提婆
371 主人の居間
372 嘘談家協会
373 三日で読め
374 家を建つる場所
375 ひきとふく
376 虻になつて
377 私は眼が悪い
378 命令を肯く木石
379 偉人千家尊愛
380 義経と蒙古
381 信濃国皆神山
382 樹木や石は天気を知る
383 三子の命名
384 河童
385 月欲しい
386 百年の生命
387 浄瑠璃
388 人間と動物
389 愛の独占
390 紅葉に楓
391 樹木の育て方
392 蟇目の法
393 隻履の達磨
394 辻説法
395 心配は毒
396 小供になって寝る
397 年をほかした
398 大本と言ふ文字
399 食用動物
400 呉の海
401 アテナの神
402 黄教紅教
403 老年と身躾み
404 自然に描ける絵
405 睡眠と食事
406 絵について
407 竜は耳が聞えぬ
408 人神
409 お給仕について
410 五百津御統丸の珠
411 素尊御陵
412 熊山にお供して
413 噴火口と蓮華台
414 お友達が欲しい
415 久方の空
416 ミロクの礼拝
417 再び日本刀に就て
418 美しい人
419 天狗
420 胆力養成家
421 聖壇
422 再び素尊御陵について
423 梅花と其実
424 身魂の因縁
425 日本人の寿命
426 躓く石
427 同殿同床の儀
428 和歌について
429 結び昆布(結婚婦)
430 頭槌石槌
431 姓名
432 不知火
433 人に化けた狸
434 襟首
435 打算から
436 四十八の夜中
437 人魂
438 蕁麻疹の薬
439 茄子
440 婦人病
441 万病の妙薬
442 たむしの薬
443 便所の臭気どめ
444 痔の治療法
445 血止めの法について
446 脾肝の虫の薬
447 肺病について
448 再び血止めの法について
449 腋臭の根治法
450 中風、百日咳、喘息
451 肉食
452 太平柿の歌
453 ピアノ式按摩
454 咳の妙薬
455 病気の薬
456 食ひ合せについて
457 眼瞼に入った塵
458 小判の効能
459 田虫の妙薬
460 臭気どめ其他
461 十和田湖の神秘
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>
月鏡
> 370 釈迦と提婆
<<< 細胞
(B)
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主人の居間 >>>
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釈迦
(
しやか
)
と
提婆
(
だいば
)
インフォメーション
鏡:
月鏡
題名:
釈迦と提婆
よみ:
著者:
出口王仁三郎
神の国掲載号:
1929(昭和4)年03月号
八幡書店版:
339頁
愛善世界社版:
著作集:
第五版:
177頁
第三版:
177頁
全集:
566頁
初版:
147頁
概要:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
kg370
001
基督
(
キリスト
)
が
生前
(
せいぜん
)
余
(
あま
)
り
世間
(
せけん
)
に
歓待
(
くわんたい
)
されなかつた
如
(
や
)
うに、
002
釈迦
(
しやか
)
も
在世
(
ざいせ
)
当時
(
たうじ
)
は
極
(
きは
)
めて
惨
(
みぢ
)
めなものであつた。
003
支那
(
しな
)
の
孔子
(
こうし
)
が
春秋
(
しゆんじう
)
時代
(
じだい
)
に
於
(
おい
)
て、
004
孟子
(
もうし
)
が
戦国
(
せんごく
)
時代
(
じだい
)
に
於
(
おい
)
て
不遇
(
ふぐう
)
であつた
以上
(
いじやう
)
に
不遇
(
ふぐう
)
であつたらしい。
005
日本
(
にほん
)
では
日蓮
(
にちれん
)
、
006
親鸞
(
しんらん
)
、
007
乃至
(
ないし
)
道元
(
だうげん
)
などが
悲運
(
ひうん
)
に
終
(
をは
)
つた
如
(
ごと
)
くであつた。
008
春秋
(
しゆんじう
)
戦国
(
せんごく
)
が
楊墨
(
やうぼく
)
の
思想
(
しさう
)
に
抑圧
(
よくあつ
)
された
如
(
ごと
)
く、
009
平安朝
(
へいあんてう
)
が
天台
(
てんだい
)
や
真言
(
しんごん
)
に
魅
(
み
)
せられて
居
(
ゐ
)
たやうに、
010
釈迦
(
しやか
)
の
時代
(
じだい
)
もウバニシヤド
哲学
(
てつがく
)
の
分裂
(
ぶんれつ
)
、
011
所謂
(
いはゆる
)
九十六派
(
くじふろくは
)
の
哲学
(
てつがく
)
が、
012
各自
(
かくじ
)
に
鏑
(
しのぎ
)
を
削
(
けづ
)
つて
戦
(
たたか
)
つて
居
(
ゐ
)
た
暗黒
(
あんこく
)
時代
(
じだい
)
に、
013
新
(
あたら
)
しい
信仰
(
しんかう
)
の
燈明
(
とうみやう
)
を
掲
(
かか
)
げて
人心
(
じんしん
)
の
闇
(
やみ
)
を
照
(
て
)
らした
革命児
(
かくめいじ
)
が
生
(
うま
)
れて
来
(
き
)
たのは、
014
耆那教
(
じやいなけう
)
の
始祖
(
しそ
)
ジユナタブトラと
釈迦
(
しやか
)
であるが、
015
孰
(
いづ
)
れも
吠陀
(
ぼいだ
)
の
根本
(
こんぽん
)
精神
(
せいしん
)
を
失
(
うしな
)
つた、
016
婆羅門
(
ばらもん
)
の
死儀式
(
しぎしき
)
の
排斥者
(
はいせきしや
)
であつたのだ。
017
そしてジユナタブトラは、
018
理性
(
りせい
)
に
目覚
(
めざ
)
めた
極端
(
きよくたん
)
な
持戒者
(
ぢかいしや
)
で、
019
而
(
しか
)
も
新進
(
しんしん
)
宗教
(
しうけう
)
の
精彩
(
せいさい
)
を
放
(
はな
)
つてゐるのに
反
(
はん
)
し、
020
偏
(
へん
)
を
捨
(
す
)
てて
中
(
ちう
)
を
執
(
と
)
る、
021
所謂
(
いはゆる
)
中道
(
ちうだう
)
実相
(
じつさう
)
主義
(
しゆぎ
)
、
022
人間性
(
にんげんせい
)
を
失
(
うしな
)
はない
範囲
(
はんゐ
)
に
於
(
おい
)
て
精神
(
せいしん
)
の
向上
(
こうじやう
)
と
肉体
(
にくたい
)
の
発達
(
はつたつ
)
を
遂
(
と
)
げ、
023
且
(
か
)
つ
遂
(
と
)
げしめんと
力
(
つと
)
めたのは
釈迦
(
しやか
)
であつた。
024
そこで
持戒
(
ぢかい
)
を
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
生命
(
せいめい
)
として
居
(
ゐ
)
るジユナタブトラが、
025
生臭
(
なまぐさ
)
坊主
(
ばうず
)
として
釈迦
(
しやか
)
を
見
(
み
)
くびつたのも
当然
(
たうぜん
)
であらう。
026
勿論
(
もちろん
)
釈迦
(
しやか
)
は
余
(
あま
)
りに
人間的
(
にんげんてき
)
な
感情家
(
かんじやうか
)
であつたに
反
(
はん
)
し、
027
ジユナタブトラは
超人的
(
てうじんてき
)
であり、
028
自力的
(
じりきてき
)
であり
学究的
(
がくきうてき
)
であつたのだ。
029
茲
(
ここ
)
にこの
両極端
(
りやうきよくたん
)
を
調和
(
てうわ
)
して、
030
其処
(
そこ
)
に
新
(
あたら
)
しい
生命
(
せいめい
)
を
生
(
う
)
み
出
(
だ
)
さうとしたのは
提婆達多
(
だいばだつた
)
である。
031
提婆
(
だいば
)
は
釈迦
(
しやか
)
の
凡人
(
ぼんじん
)
主義
(
しゆぎ
)
、
032
人道
(
じんだう
)
主義
(
しゆぎ
)
は
首陀羅
(
プロレタリヤ
)
の
蹶起
(
けつき
)
に
疑倶
(
ぎぐ
)
不安
(
ふあん
)
の
淵
(
ふち
)
に
沈
(
しづ
)
んだ
王者
(
わうじや
)
貴族
(
きぞく
)
の
信頼
(
しんらい
)
を
得
(
う
)
るとしても、
033
永遠
(
ゑいゑん
)
の
勝利
(
しようり
)
は
民族性
(
みんぞくせい
)
に
徹底
(
てつてい
)
せるジユナタブトラに
帰
(
き
)
する、
034
少
(
すくな
)
くも
理性
(
りせい
)
と、
035
淫逸
(
いんいつ
)
と
相
(
あい
)
闘
(
たたか
)
つて
居
(
ゐ
)
る
印度
(
いんど
)
の
当時
(
たうじ
)
に
於
(
おい
)
ては、
036
さうでなければならぬと
信
(
しん
)
じて
居
(
ゐ
)
た。
037
さうして
提婆
(
だいば
)
は
心
(
こころ
)
に
期
(
き
)
した「
吾
(
われ
)
は
今
(
いま
)
如来
(
によらい
)
の
許
(
もと
)
に
到
(
いた
)
り
大衆
(
たいしう
)
を
求索
(
きうさく
)
すべし、
038
仏
(
ぶつ
)
若
(
も
)
し
許
(
ゆる
)
さば
吾
(
われ
)
将
(
まさ
)
に
意
(
い
)
に
従
(
したが
)
うて、
039
舎利弗
(
しやりほつ
)
等
(
ら
)
を
教詔
(
けうせう
)
勅使
(
ちよくし
)
すべし」と。
040
即
(
すなは
)
ち
伯父
(
をぢ
)
なる
釈迦
(
しやか
)
の
教壇
(
けうだん
)
に
至
(
いた
)
りて
曰
(
い
)
ふ「
願
(
ねが
)
はくは
如来
(
によらい
)
よ、
041
此
(
こ
)
の
大衆
(
たいしう
)
を
以
(
もつ
)
て
我
(
われ
)
に
附属
(
ふぞく
)
せよ、
042
吾
(
われ
)
将
(
まさ
)
に
種々
(
しゆじゆ
)
に
法
(
はふ
)
を
説
(
と
)
いて、
043
それを
調伏
(
てうふく
)
せしむべし」とて
教壇
(
けうだん
)
を
己
(
おの
)
れに
譲
(
ゆづ
)
り
引退
(
いんたい
)
せよと
迫
(
せま
)
つた。
044
釈迦
(
しやか
)
は
提婆
(
だいば
)
の
智慧
(
ちゑ
)
と
勇気
(
ゆうき
)
は
認
(
みと
)
めたけれども、
045
未
(
ま
)
だその
徳
(
とく
)
の
備
(
そな
)
はつて
居
(
ゐ
)
ないのを
見
(
み
)
て「
舎利弗
(
しやりほつ
)
等
(
ら
)
は
聡明
(
そうめい
)
大智
(
だいち
)
にして、
046
世
(
よ
)
の
信服
(
しんぷく
)
する
所
(
ところ
)
なるに、
047
吾
(
われ
)
は
猶
(
な
)
ほ
彼
(
かれ
)
に
大衆
(
たいしう
)
を
以
(
もつ
)
て
附属
(
ふぞく
)
せず、
048
况
(
いは
)
んや
汝
(
なんぢ
)
の
如
(
ごと
)
き
痴人
(
ちにん
)
の
唾
(
つば
)
を
喰
(
くら
)
ふものをや」ときめつけた。
049
然
(
しか
)
るに
年壮
(
ねんさう
)
気鋭
(
きえい
)
の
提婆
(
だいば
)
は
客気
(
かくき
)
に
任
(
まか
)
せて、
050
釈迦
(
しやか
)
の
弟子
(
でし
)
五百人
(
ごひやくにん
)
を
誘
(
さそ
)
ひ
去
(
さ
)
り、
051
盛
(
さか
)
んに
釈迦
(
しやか
)
の
攻撃
(
こうげき
)
を
試
(
こころ
)
み
出
(
だ
)
した。
052
本仏
(
ほんぶつ
)
、
053
新仏
(
しんぶつ
)
並
(
なら
)
び
立
(
た
)
つと
言
(
い
)
はれる
迄
(
まで
)
に
釈迦
(
しやか
)
に
対抗
(
たいかう
)
したけれども、
054
釈迦
(
しやか
)
は
提婆
(
だいば
)
を
愍
(
あはれ
)
む
為
(
た
)
めに、
055
好意
(
かうい
)
を
以
(
もつ
)
て
居
(
ゐ
)
た
舎利弗
(
しやりほつ
)
と
目蓮
(
もくれん
)
を
彼
(
かれ
)
の
教壇
(
けうだん
)
に
遣
(
つか
)
はしたのである。
056
然
(
しか
)
るに
釈迦
(
しやか
)
は
説法中
(
せつぽふちう
)
に、
057
瑞月
(
わたし
)
が
霊界
(
れいかい
)
物語
(
ものがたり
)
を
口述
(
こうじゆつ
)
する
時
(
とき
)
の
如
(
や
)
うに、
058
ゴロリと
寝転
(
ねころ
)
ぶ
癖
(
くせ
)
があつて、
059
疲
(
つか
)
れた
時
(
とき
)
には
弟子
(
でし
)
をして
代
(
かは
)
つて
説法
(
せつぽふ
)
せしめた。
060
それは
信者
(
しんじや
)
に
所謂
(
いはゆる
)
仏足頂礼
(
ぶつそくちやうらい
)
させる
為
(
ため
)
ばかりで
無
(
な
)
く、
061
年
(
とし
)
も
老
(
と
)
つて
居
(
ゐ
)
るなり、
062
疲労
(
ひらう
)
をしばし
休
(
やす
)
めんためである。
063
目蓮
(
もくれん
)
や、
064
舎利弗
(
しやりほつ
)
などの
弟子
(
でし
)
が
釈迦
(
しやか
)
の
言
(
い
)
つた
教理
(
けうり
)
を
詳論
(
しやうろん
)
細説
(
さいせつ
)
して、
065
女子
(
ぢよし
)
や
小児
(
せうに
)
にまで
解
(
わか
)
るやうに
説明
(
せつめい
)
した。
066
所
(
ところ
)
が
人間
(
にんげん
)
の
好
(
よ
)
い
提婆
(
だいば
)
が
又
(
また
)
釈迦
(
しやか
)
のその
態度
(
たいど
)
を
真似
(
まね
)
て、
067
自己
(
じこ
)
の
言
(
い
)
はんとする
所
(
ところ
)
を
大略
(
たいりやく
)
述
(
の
)
べて、
068
ゴロリと
釈迦
(
しやか
)
の
真似
(
まね
)
を
行
(
おこな
)
つた。
069
そして、
070
目蓮
(
もくれん
)
、
071
舎利弗
(
しやりほつ
)
に
代
(
かは
)
らせた。
072
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
釈迦
(
しやか
)
は
所謂
(
いはゆる
)
臥禅
(
ぐわぜん
)
をして
居
(
ゐ
)
たのだが、
073
磊落
(
らいらく
)
で
無邪気
(
むじやき
)
な
提婆
(
だいば
)
は
鼾
(
いびき
)
をかいて
寝込
(
ねこ
)
んで
了
(
しま
)
つた。
074
此
(
こ
)
の
光景
(
くわうけい
)
を
打
(
う
)
ち
眺
(
なが
)
めた
目蓮
(
もくれん
)
、
075
舎利弗
(
しやりほつ
)
は
時
(
とき
)
こそ
来
(
きた
)
れと、
076
口
(
くち
)
を
極
(
きは
)
めて
釈迦
(
しやか
)
の
功徳
(
くどく
)
を
賞讃
(
しやうさん
)
し
強調
(
きやうてう
)
すると
共
(
とも
)
に
提婆
(
だいば
)
を
根
(
ね
)
こそぎこき
下
(
お
)
ろしたので、
077
茲
(
ここ
)
に
又
(
また
)
浮
(
う
)
き
草
(
ぐさ
)
の
風
(
かぜ
)
に
従
(
したが
)
ふ
如
(
ごと
)
く、
078
提婆
(
だいば
)
に
奪
(
うば
)
はれた
五百人
(
ごひやくにん
)
の
弟子
(
でし
)
を、
079
易々
(
やすやす
)
と
釈迦
(
しやか
)
の
教壇
(
けうだん
)
へ
伴
(
つ
)
れ
帰
(
かへ
)
つた
為
(
ため
)
に、
080
忽
(
たちま
)
ち
死地
(
しち
)
に
陥
(
おちい
)
つた
提婆
(
だいば
)
は、
081
地団駄
(
ぢだんだ
)
踏
(
ふ
)
んで
憤
(
いきどほ
)
つた。
082
彼
(
かれ
)
は
自分
(
じぶん
)
が
釈迦
(
しやか
)
に
背
(
そむ
)
いたのは
釈迦
(
しやか
)
に
代
(
かは
)
つてジユナタブトラの、
083
耆那教
(
じやいなけう
)
を
打
(
う
)
ち
壊
(
こは
)
さなければ、
084
釈迦
(
しやか
)
の
前途
(
ぜんと
)
が
危
(
あやふ
)
いと
考
(
かんが
)
へたからだ。
085
吾
(
われ
)
は
反抗
(
はんかう
)
を
以
(
もつ
)
て
与
(
あた
)
へんとするを、
086
釈迦
(
しやか
)
は
忍辱
(
にんにく
)
を
以
(
もつ
)
て
奪
(
うば
)
はんとする。
087
吾
(
われ
)
は
自
(
みづか
)
らを
揣
(
し
)
らざるやも
知
(
し
)
れず、
088
されど
釈迦
(
しやか
)
は
来
(
きた
)
るべき
危険
(
きけん
)
を
覚
(
さと
)
らず、
089
五百人
(
ごひやくにん
)
の
弟子
(
でし
)
を
奪
(
うば
)
つたのも、
090
釈迦
(
しやか
)
を
救
(
すく
)
はんが
為
(
ため
)
であつた。
091
然
(
しか
)
るにも
拘
(
かか
)
はらず、
092
自分
(
じぶん
)
を
斯
(
こ
)
んな
酷
(
ひど
)
い
目
(
め
)
に
逢
(
あ
)
はさせるとは、
093
伯父
(
をぢ
)
とも
思
(
おも
)
へぬ
酷
(
ひど
)
い
行
(
や
)
り
方
(
かた
)
だと
深
(
ふか
)
く
恨
(
うら
)
んだ
結果
(
けつくわ
)
、
094
平素
(
へいそ
)
仲
(
なか
)
の
好
(
よ
)
かつた
阿闍世
(
あじやせ
)
を
煽動
(
せんどう
)
して、
095
其
(
その
)
父
(
ちち
)
毘牟婆舎羅
(
ひむばしやら
)
を
殺
(
ころ
)
して
王位
(
わうゐ
)
を
奪
(
うば
)
はしめ、
096
己
(
おのれ
)
も
亦
(
また
)
釈迦
(
しやか
)
を
殺
(
ころ
)
して
教団
(
けうだん
)
を
奪
(
うば
)
ひ、
097
相
(
あい
)
携
(
たづさ
)
へて
天下
(
てんか
)
の
政教
(
せいけう
)
を
擅
(
ほしいまま
)
にせんとしたが、
098
何処
(
どこ
)
までも
天真
(
てんしん
)
爛漫
(
らんまん
)
にして、
099
小児
(
せうに
)
の
如
(
や
)
うな
初心
(
うぶ
)
なる
提婆
(
だいば
)
は、
100
釈迦
(
しやか
)
を
猛象
(
まうざう
)
をして
牙
(
きば
)
にて
引
(
ひ
)
き
裂
(
さ
)
かしめようとしたり、
101
低
(
ひく
)
い
所
(
ところ
)
へ
突
(
つ
)
き
落
(
おと
)
すやうな
児戯
(
じぎ
)
に
類
(
るゐ
)
した
迫害
(
はくがい
)
を
試
(
こころ
)
みて、
102
老熟
(
らうじゆく
)
せる
釈迦
(
しやか
)
に、
103
却
(
かへ
)
つて
愚弄
(
ぐろう
)
されたので、
104
遂
(
つい
)
には
爪
(
つめ
)
の
間
(
あひだ
)
に
毒薬
(
どくやく
)
を
潜
(
ひそ
)
めて
釈迦
(
しやか
)
に
飛
(
と
)
び
付
(
つ
)
き、
105
引掻
(
ひつか
)
き
挘
(
むし
)
つて、
106
中毒
(
ちうどく
)
せしめんとした。
107
すると
陥穿
(
おとしあな
)
が
設
(
まう
)
けられてあつた
為
(
ため
)
に、
108
提婆
(
だいば
)
は
俄破
(
がば
)
と
地中
(
ちちう
)
に
落
(
お
)
ち
込
(
こ
)
んだ。
109
仏徒
(
ぶつと
)
はこの
出来事
(
できごと
)
をば、
110
大地
(
だいち
)
忽
(
たちま
)
ち
割
(
わ
)
れて
火
(
ひ
)
を
発
(
はつ
)
し、
111
提婆
(
だいば
)
は
仏罰
(
ぶつばつ
)
で
阿鼻
(
あび
)
地獄
(
ぢごく
)
へ
堕
(
お
)
ちたと
誇
(
ほこ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのである。
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