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月鏡
序
凡例
250 女の型
251 日本人目覚めよ
252 親作子作
253 無二の真理教
254 謝恩と犠牲心
255 現代の日本人
256 霊止と人間
257 仏教の女性観
258 日本人と悲劇
259 海岸線と山岳
260 書画をかく秘訣
261 四日月を三日月と見る二日酔
262 不毛の地
263 歴史談片
264 エルバンド式とモールバンド式
265 大黒主と八岐大蛇
266 島根県
267 誕生の種々
268 犠牲
269 三菩薩
270 懺悔
271 神の作品
272 舎身活躍
273 万機公論に決すべし
274 知識を世界に求む
275 克く忠克く孝
276 無作の詩
277 魂の大きさ
278 過去の失敗
279 捨てる事は正しく掴む事
280 人間と現世
281 安全な代物
282 人の面貌
283 堪忍
284 信教の自由
285 信仰に苔が生えた
286 意志想念の儘なる天地
287 謝恩の生活
288 広大無辺の御神徳
289 宗教団と其教祖
290 忘れると云ふ事
291 日本人の抱擁性
292 至誠と徹底
293 慧春尼
294 社会学の距離説
295 神と倶にある人
296 夏
297 惟神の心
298 悪魔の世界
299 人間と云ふ問題
300 学問も必要
301 有難き現界
302 梅で開いて松でをさめる
303 地租委譲問題
304 不戦条約
305 細矛千足の国
306 短い言語
307 言霊奏上について
308 性慾の問題
309 秘密
310 学と神力の力競べ
311 軍備撤廃問題
312 偽善者
313 宗教より芸術へ
314 年を若くする事
315 精力と精液
316 最後の真理
317 上になりたい人
318 壇訓(扶乩)について
319 エト読込の歌
320 動物愛護について
321 易
322 軍縮問題
323 小さい事
324 善言美詞は対者による
325 淋しいといふこと
326 空相と実相
327 刑法改正問題
328 二大祖神
329 三摩地
330 普通選挙
331 当相即道
332 玉
333 宗教即芸術
334 大本格言
335 大画揮毫について
336 霊的神業
337 模型を歩む
338 宗教の母
339 神功皇后様と現はれる
340 国栖を集めよ
341 系といふ文字
342 天帯
343 ガンヂー
344 大乗教と小乗教
345 支那道院奉唱呪文略解
346 日本は世界の胞胎
347 無題(俚謡)
348 角帽の階級打破
349 何よりも楽しみ
350 碁盤を買うた
351 探湯の釜
352 輪廻転生
353 音頭と言霊
354 ミロクの世と物質文明
355 宗祖と其死
356 仏典に就て
357 霊媒
358 心霊現象と兇党界
359 霊肉脱離
360 物語拝読について
361 北山の火竜
362 准宣伝使
363 鈿女物語
364 嗚呼既成宗教
365 キリストの再来
366 日月模様の浴衣
367 松と雑木
368 春日の鹿の由来
369 細胞
370 釈迦と提婆
371 主人の居間
372 嘘談家協会
373 三日で読め
374 家を建つる場所
375 ひきとふく
376 虻になつて
377 私は眼が悪い
378 命令を肯く木石
379 偉人千家尊愛
380 義経と蒙古
381 信濃国皆神山
382 樹木や石は天気を知る
383 三子の命名
384 河童
385 月欲しい
386 百年の生命
387 浄瑠璃
388 人間と動物
389 愛の独占
390 紅葉に楓
391 樹木の育て方
392 蟇目の法
393 隻履の達磨
394 辻説法
395 心配は毒
396 小供になって寝る
397 年をほかした
398 大本と言ふ文字
399 食用動物
400 呉の海
401 アテナの神
402 黄教紅教
403 老年と身躾み
404 自然に描ける絵
405 睡眠と食事
406 絵について
407 竜は耳が聞えぬ
408 人神
409 お給仕について
410 五百津御統丸の珠
411 素尊御陵
412 熊山にお供して
413 噴火口と蓮華台
414 お友達が欲しい
415 久方の空
416 ミロクの礼拝
417 再び日本刀に就て
418 美しい人
419 天狗
420 胆力養成家
421 聖壇
422 再び素尊御陵について
423 梅花と其実
424 身魂の因縁
425 日本人の寿命
426 躓く石
427 同殿同床の儀
428 和歌について
429 結び昆布(結婚婦)
430 頭槌石槌
431 姓名
432 不知火
433 人に化けた狸
434 襟首
435 打算から
436 四十八の夜中
437 人魂
438 蕁麻疹の薬
439 茄子
440 婦人病
441 万病の妙薬
442 たむしの薬
443 便所の臭気どめ
444 痔の治療法
445 血止めの法について
446 脾肝の虫の薬
447 肺病について
448 再び血止めの法について
449 腋臭の根治法
450 中風、百日咳、喘息
451 肉食
452 太平柿の歌
453 ピアノ式按摩
454 咳の妙薬
455 病気の薬
456 食ひ合せについて
457 眼瞼に入った塵
458 小判の効能
459 田虫の妙薬
460 臭気どめ其他
461 十和田湖の神秘
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三鏡
>
月鏡
> 412 熊山にお供して
<<< 素尊御陵
(B)
(N)
噴火口と蓮華台 >>>
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熊山
(
くまやま
)
にお
伴
(
とも
)
して
インフォメーション
鏡:
月鏡
題名:
熊山にお供して
よみ:
著者:
出口王仁三郎
神の国掲載号:
1930(昭和5)年06月号
八幡書店版:
135頁
愛善世界社版:
著作集:
第五版:
221頁
第三版:
221頁
全集:
593頁
初版:
187頁
概要:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2018-06-30 11:01:37
OBC :
kg412
001
加藤
(
かとう
)
明子
(
はるこ
)
002
「
私
(
わたし
)
もいづれ
行
(
ゆ
)
く」とのお
言葉
(
ことば
)
が
事実
(
じじつ
)
となつて、
003
昭和
(
せうわ
)
五年
(
ごねん
)
五月
(
ごぐわつ
)
十七日
(
じふしちにち
)
の
午後
(
ごご
)
、
004
私
(
わたし
)
は
聖師様
(
せいしさま
)
随員
(
ずいゐん
)
北村
(
きたむら
)
隆光
(
たかてる
)
氏
(
し
)
より
左
(
さ
)
の
招電
(
せうでん
)
を
受
(
う
)
け
取
(
と
)
りました。
005
セイシサマ一九ヒゴ五ジヲカヤマニオタチヨリスグコイ、
006
007
発信局
(
はつしんきよく
)
は
福岡
(
ふくをか
)
、
008
さては
愈々
(
いよいよ
)
問題
(
もんだい
)
の
熊山
(
くまやま
)
御登山
(
ごとざん
)
と
気
(
き
)
も
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
ち、
009
いそいそ
岡山
(
おかやま
)
へと
志
(
こころざ
)
す。
010
十九日
(
じふくにち
)
は
払暁
(
ふつげう
)
より
空
(
そら
)
いと
曇
(
くも
)
りて
天日
(
てんじつ
)
を
見
(
み
)
ず、
011
お
着
(
つ
)
きの
五時
(
ごじ
)
細雨
(
さいう
)
頻
(
しきり
)
に
臻
(
いた
)
つて
暗
(
くら
)
い
天候
(
てんこう
)
であつた。
012
着岡
(
ちやくかう
)
された
聖師様
(
せいしさま
)
はステーシヨンにて
新聞
(
しんぶん
)
記者
(
きしや
)
の
問
(
とひ
)
に
答
(
こた
)
へて
013
「
晴天
(
せいてん
)
であつたら
登山
(
とざん
)
するし、
014
天候
(
てんこう
)
が
今日
(
こんにち
)
の
如
(
ごと
)
く
悪
(
わる
)
ければ
止
(
や
)
めて
亀岡
(
かめをか
)
へ
直行
(
ちよくかう
)
する
積
(
つも
)
りです」
015
と
申
(
まを
)
されてゐた。
016
そして
又
(
また
)
小
(
ちひ
)
さな
声
(
こゑ
)
で「
熊山
(
くまやま
)
登山
(
とざん
)
はまだ
一年
(
いちねん
)
ばかり
早
(
はや
)
い」と
呟
(
つぶや
)
いて
居
(
を
)
られたので、
017
側聞
(
そくぶん
)
して
此度
(
このたび
)
は
或
(
あるひ
)
は
駄目
(
だめ
)
になるかも
知
(
し
)
れないと、
018
晴
(
は
)
れぬ
思
(
おも
)
ひで
一夜
(
いちや
)
を
過
(
すご
)
した。
019
追々
(
おひおひ
)
集
(
あつ
)
まる
人々
(
ひとびと
)
の
中
(
なか
)
には
遠
(
とほ
)
く
東京
(
とうきやう
)
より
態々
(
わざわざ
)
馳
(
は
)
せ
参
(
さん
)
じた
人
(
ひと
)
もあつた。
020
県下
(
けんか
)
の
新聞
(
しんぶん
)
は
申
(
まを
)
す
迄
(
まで
)
もなく、
021
大朝
(
だいてう
)
大毎
(
だいまい
)
二大
(
にだい
)
新聞
(
しんぶん
)
が
前々
(
まへまへ
)
より
可成
(
かなり
)
書
(
か
)
き
立
(
た
)
て、
022
又
(
また
)
新調
(
しんてう
)
の
駕篭
(
かご
)
、
023
揃
(
そろ
)
ひの
法被
(
はつぴ
)
がこれも
可
(
か
)
なり
長
(
なが
)
い
間
(
あひだ
)
待
(
ま
)
ち
詫
(
わ
)
びてゐるので、
024
どうか
晴天
(
せいてん
)
にし
度
(
た
)
いものと
願
(
ねが
)
つた。
025
「
駄目
(
だめ
)
でせうか」
026
「この
有様
(
ありさま
)
ではね」
027
浮
(
う
)
かぬ
顔
(
かほ
)
をして
皆
(
みな
)
がかう
語
(
かた
)
り
合
(
あ
)
つてゐる。
028
雨
(
あめ
)
は
益々
(
ますます
)
降
(
ふ
)
りしきる。
029
抑々
(
そもそも
)
此度
(
このたび
)
九州
(
きうしう
)
へ
御旅立
(
おたびだち
)
のみぎり、
030
帰途
(
きと
)
は
必
(
かなら
)
ず
熊山
(
くまやま
)
へ
登
(
のぼ
)
るのだと
申
(
まを
)
されてゐたのを、
031
急
(
きふ
)
に
変更
(
へんかう
)
され「かかる
重大
(
ぢうだい
)
なる
神事
(
しんじ
)
を
他
(
た
)
の
帰
(
かへ
)
りがけの
序
(
ついで
)
に
遂行
(
すゐかう
)
するのはよくない
事
(
こと
)
である。
032
帰
(
かへ
)
つて
出直
(
でなほ
)
してゆく」と
申
(
まを
)
し
出
(
だ
)
されたのであつた、
033
だが──
私
(
わたし
)
は
心
(
こころ
)
ひそかにこの
度
(
たび
)
の
御登山
(
ごとざん
)
を
神剣
(
しんけん
)
御発動
(
ごはつどう
)
の
神事
(
しんじ
)
、……
034
バイブルの
所謂
(
いはゆる
)
「
大
(
だい
)
なるミカエル
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
れり」に
相当
(
さうたう
)
する
重大事
(
ぢゆうだいじ
)
と
考
(
かんが
)
へて
居
(
ゐ
)
たので、
035
九州
(
きうしう
)
お
出
(
で
)
ましは
当然
(
たうぜん
)
なくてはならぬ、
036
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
中
(
ちう
)
の「
筑紫
(
つくし
)
の
日向
(
ひむか
)
の
橘
(
たちばな
)
の
小戸
(
をど
)
の
阿波岐原
(
あはぎがはら
)
に
御穢
(
みそぎ
)
祓
(
はら
)
ひ
給
(
たま
)
ふ」といふ
祓戸
(
はらひど
)
行事
(
ぎやうじ
)
にかなはせんが
為
(
た
)
めであつて、
037
きつと
御登山
(
ごとざん
)
になるに
違
(
ちが
)
ひないと
独
(
ひと
)
り
決
(
ぎ
)
めにして
居
(
ゐ
)
た。
038
北村
(
きたむら
)
随行
(
ずゐかう
)
に
会
(
あ
)
つて
聞
(
き
)
いて
見
(
み
)
ると「
岡山
(
おかやま
)
お
立寄
(
たちよ
)
りの
事
(
こと
)
は
全然
(
ぜんぜん
)
予定
(
よてい
)
されて
居
(
ゐ
)
なかつた、
039
福岡
(
ふくをか
)
で
突如
(
とつじよ
)
として
命
(
めい
)
が
下
(
くだ
)
つたので
驚
(
おどろ
)
いた」との
事
(
こと
)
、
040
しかし
神界
(
しんかい
)
では
既定
(
きてい
)
のプログラムであつたに
相違
(
さうゐ
)
あるまい。
041
岡山
(
おかやま
)
に
着
(
つ
)
いて
見
(
み
)
ると、
042
熊本県
(
くまもとけん
)
小国
(
をぐに
)
支部
(
しぶ
)
の
高野
(
たかの
)
円太
(
ゑんた
)
氏
(
し
)
が、
043
ヒヨツクリ
顔
(
かほ
)
を
出
(
だ
)
し「
聖師様
(
せいしさま
)
がついて
来
(
こ
)
なはれ」と
仰有
(
おつしや
)
つたので
随行
(
ずゐかう
)
して
来
(
き
)
ましたといふ。
044
これも
恐
(
おそ
)
らく
祓戸
(
はらひど
)
の
神様
(
かみさま
)
を
御同行
(
ごどうかう
)
になつた
型
(
かた
)
であらう、
045
背
(
せ
)
の
高
(
たか
)
い
高野
(
たかの
)
さんの
後
(
あと
)
からついて
行
(
ゆ
)
くと、
046
何
(
なん
)
だか
大幣
(
おほぬさ
)
が
歩
(
ある
)
いて
居
(
ゐ
)
るやうな
気
(
き
)
がしてをかしかつた。
047
北村
(
きたむら
)
氏
(
し
)
の
話
(
はなし
)
によれば、
048
二十日間
(
はつかかん
)
の
御旅行中
(
ごりよかうちう
)
、
049
短冊
(
たんざく
)
一枚
(
いちまい
)
も
書
(
か
)
かれなかつた、
050
未曽有
(
みぞう
)
の
事
(
こと
)
であると。
051
さもありなん、
052
祓戸
(
はらひど
)
行事
(
ぎやうじ
)
の
真最中
(
まつさいちう
)
であつたから
従
(
したが
)
つて
今日
(
こんにち
)
の
雨
(
あめ
)
も
土地
(
とち
)
に
対
(
たい
)
する
御禊
(
みそぎ
)
に
相違
(
さうゐ
)
ないと
高
(
たか
)
をくくつて
寝
(
しん
)
につく。
053
明
(
あ
)
くれば
二十日
(
はつか
)
。
054
午前
(
ごぜん
)
三時
(
さんじ
)
より
四時
(
よじ
)
に
亘
(
わた
)
つて
篠
(
しの
)
つくばかりの
大雨
(
おほあめ
)
、
055
五時
(
ごじ
)
頃
(
ごろ
)
より
雨
(
あめ
)
は
上
(
あが
)
りたれ
共
(
ども
)
、
056
暗雲
(
あんうん
)
低迷
(
ていめい
)
して
晴間
(
はれま
)
も
見
(
み
)
えない。
057
御出発
(
ごしゆつぱつ
)
は
八時
(
はちじ
)
十五分
(
じふごふん
)
といふに……と
皆
(
みな
)
が
顔
(
かほ
)
を
見合
(
みあは
)
せて、
058
心
(
こころ
)
もとなさを
交換
(
かうくわん
)
して
居
(
ゐ
)
るのみである。
059
然
(
しか
)
るに
御起床
(
ごきしやう
)
の
頃
(
ころ
)
より
一天
(
いつてん
)
俄
(
にはか
)
に
晴
(
は
)
れ
初
(
はじ
)
めて、
060
またたくうちに
全
(
まつた
)
くの
好天気
(
かうてんき
)
になつて
仕舞
(
しま
)
つた。
061
一同
(
いちどう
)
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
つてお
伴
(
とも
)
する。
062
九時
(
くじ
)
三十分
(
さんじつぷん
)
満富駅
(
まんとみえき
)
着
(
ちやく
)
、
063
片尾
(
かたを
)
邸
(
てい
)
に
御少憩
(
ごせうけい
)
の
後
(
のち
)
十時
(
じふじ
)
半
(
はん
)
と
言
(
い
)
ふに
出発
(
しゆつぱつ
)
、
064
五十町
(
ごじふちやう
)
の
道
(
みち
)
を
突破
(
とつぱ
)
して
先頭
(
せんとう
)
は
早
(
はや
)
くも
十一時
(
じふいちじ
)
半
(
はん
)
頂上
(
ちやうじやう
)
に
着
(
つ
)
き、
065
社務所
(
しやむしよ
)
に
少憩
(
せうけい
)
、
066
一同
(
いちどう
)
待
(
ま
)
ち
合
(
あは
)
して
零時
(
れいじ
)
半
(
はん
)
愈々
(
いよいよ
)
祭典
(
さいてん
)
の
式
(
しき
)
が
初
(
はじ
)
まる。
067
嗚呼
(
ああ
)
この
光景
(
くわうけい
)
、
068
またとない
偉大
(
ゐだい
)
なる
神事
(
しんじ
)
が
今
(
いま
)
将
(
まさ
)
に
行
(
おこな
)
はれんとして
居
(
ゐ
)
るのである。
069
古今
(
ここん
)
東西
(
とうざい
)
、
070
世界
(
せかい
)
の
人類
(
じんるゐ
)
が
抑々
(
そもそも
)
何十万年
(
なんじふまんねん
)
待
(
ま
)
ち
焦
(
こが
)
れた
事
(
こと
)
の
実現
(
じつげん
)
であらう。
071
私
(
わたし
)
は
身体中
(
からだぢう
)
を
耳
(
みみ
)
にして
聖師様
(
せいしさま
)
の
御
(
お
)
あげなさる
御祭文
(
ごさいぶん
)
を
拝聴
(
はいちやう
)
せうとあせつた。
072
「これの
戒壇
(
かいだん
)
に
永久
(
とことは
)
に
鎮
(
しづ
)
まり
給
(
たま
)
ふ
掛
(
か
)
けまくも
綾
(
あや
)
に
畏
(
かしこ
)
き
主
(
す
)
の
大御神
(
おほみかみ
)
の
珍
(
うづ
)
の
大前
(
おほまへ
)
に
謹
(
つつし
)
み
敬
(
いやま
)
ひ
畏
(
かしこ
)
み
畏
(
かしこ
)
みも
申
(
まを
)
さく」と、
073
玲瓏
(
れいろう
)
玉
(
たま
)
を
転
(
ころ
)
ばす
如
(
ごと
)
き
御声
(
おこゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
074
私
(
わたし
)
は
心臓
(
しんざう
)
の
血
(
ち
)
が
音
(
おと
)
を
立
(
た
)
てて
高鳴
(
たかな
)
るのを
明
(
あきら
)
かに
意識
(
いしき
)
した。
075
些
(
すこ
)
し
声
(
こゑ
)
をおとされて
何
(
なに
)
か
又
(
また
)
奏上
(
そうじやう
)
されたやうであつたが
聞
(
き
)
き
取
(
と
)
れなかつた。
076
悲
(
かな
)
しい
哉
(
かな
)
霊覚
(
れいかく
)
のない
私
(
わたし
)
には、
077
この
時
(
とき
)
に
如何
(
いか
)
に
荘厳
(
さうごん
)
なる
光景
(
くわうけい
)
が
眼前
(
がんぜん
)
に
展開
(
てんかい
)
したのか、
078
少
(
すこ
)
しも
知
(
し
)
る
由
(
よし
)
がない。
079
唯
(
ただ
)
私
(
わたし
)
の
想像力
(
さうざうりよく
)
は、
080
そこに
神代
(
かみよ
)
の
儘
(
まま
)
の
御英姿
(
ごえいし
)
をもつて、
081
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神様
(
おほかみさま
)
が
矗乎
(
すつく
)
と
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
られ
剣
(
けん
)
を
按
(
あん
)
じて
微笑
(
びせう
)
したまふ
光景
(
くわうけい
)
を
造
(
つく
)
り
上
(
あ
)
げて
仕舞
(
しま
)
つたのである。
082
やがて
大本
(
おほもと
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
せらるるに
相
(
あい
)
和
(
わ
)
して、
083
九天
(
きうてん
)
にも
通
(
つう
)
ぜよとばかり
奏
(
そう
)
する
祝詞
(
のりと
)
の
声
(
こゑ
)
は
天地
(
てんち
)
を
震撼
(
しんかん
)
していと
勇
(
いさ
)
ましく
響
(
ひび
)
き
渡
(
わた
)
つた。
084
五月
(
ごぐわつ
)
の
空
(
そら
)
隈
(
くま
)
なく
晴
(
は
)
れて
蒸
(
む
)
せかへるやうな
青葉
(
あをば
)
若葉
(
わかば
)
の
匂
(
にほ
)
ひ、
085
伽陵頻迦
(
がりようびんが
)
の
声
(
こゑ
)
頻
(
しき
)
りに
聞
(
きこ
)
えて
此
(
こ
)
の
世
(
よ
)
ながらの
天国
(
てんごく
)
のさま。
086
ボツと
上気
(
じやうき
)
して
汗
(
あせ
)
ばみたまふ
師
(
し
)
の
御前
(
みまへ
)
に
手拭
(
てぬぐひ
)
を
捧
(
ささ
)
げて「お
目出度
(
めでた
)
う
御座
(
ござ
)
います」と
申上
(
まをしあ
)
げると「ええ」と
答
(
こた
)
へて
頻
(
しき
)
りに
汗
(
あせ
)
をぬぐうて
居
(
を
)
られる。
087
卯月
(
うづき
)
八日
(
やうか
)
のお
釈迦様
(
しやかさま
)
といふお
姿
(
すがた
)
。
088
お
供
(
そな
)
への
小餅
(
こもち
)
を
一々
(
いちいち
)
別
(
わ
)
けて
下
(
くだ
)
さつて
式
(
しき
)
は
終
(
をは
)
つた。
089
午後
(
ごご
)
一時
(
いちじ
)
行廚
(
かうちう
)
[
※
「行廚」(こうちゅう)とは弁当のこと。
]
を
食
(
しよく
)
し、
090
熊山
(
くまやま
)
神社
(
じんじや
)
に
参拝
(
さんぱい
)
、
091
亀石
(
かめいし
)
、
092
新池
(
しんいけ
)
などを
見
(
み
)
られ
終
(
をは
)
つて
熊山
(
くまやま
)
神社
(
じんじや
)
及
(
および
)
四五
(
しご
)
の
戒壇
(
かいだん
)
を
巡拝
(
じゆんぱい
)
され、
093
四時
(
よじ
)
半
(
はん
)
再
(
ふたた
)
び
片尾
(
かたを
)
邸
(
てい
)
に
入
(
い
)
られ
少憩
(
せうけい
)
の
後
(
のち
)
、
094
別院
(
べつゐん
)
の
敷地
(
しきち
)
たるべき
向山
(
むかふやま
)
を
検分
(
けんぶん
)
され、
095
七時
(
しちじ
)
二十四分
(
にじふよんぷん
)
発
(
はつ
)
にて
岡山
(
おかやま
)
に
引
(
ひ
)
き
返
(
かへ
)
し
一泊
(
いつぱく
)
せられた。
096
道々
(
みちみち
)
承
(
うけたま
)
はつた
事
(
こと
)
どもを
左
(
さ
)
に……
097
あの
戒壇
(
かいだん
)
といふのは
日本
(
にほん
)
五戒壇
(
ごかいだん
)
の
一
(
ひと
)
つと
言
(
い
)
ふのであるが、
098
約
(
やく
)
千年
(
せんねん
)
位
(
ぐらゐ
)
を
経過
(
けいくわ
)
して
居
(
ゐ
)
るであらう、
099
尊
(
たふと
)
い
聖跡
(
せいせき
)
の
上
(
うへ
)
に
建
(
た
)
てたものである。
100
経
(
きやう
)
の
森
(
もり
)
と
今
(
いま
)
一
(
ひと
)
つの
崩
(
くづ
)
れたる
大戒壇
(
だいかいだん
)
とは
共
(
とも
)
に
其下
(
そのした
)
に
素尊
(
すそん
)
の
御髪
(
おぐし
)
等
(
とう
)
を
埋
(
うづ
)
めてあるのである。
101
櫛稲田姫
(
くしなだひめ
)
の
陵
(
りよう
)
も
同
(
おな
)
じく
三
(
みつ
)
つに
別
(
わか
)
れて
居
(
ゐ
)
て、
102
小
(
ちひ
)
さな
戒壇
(
かいだん
)
と
言
(
い
)
ふのがそれである。
103
戒壇
(
かいだん
)
の
斯
(
か
)
くの
如
(
ごと
)
く
崩壊
(
ほうくわい
)
して
居
(
ゐ
)
ると
言
(
い
)
ふのは、
104
仏法
(
ぶつぽふ
)
の
戒律
(
かいりつ
)
が
無惨
(
むざん
)
に
破
(
やぶ
)
れて
仕舞
(
しま
)
つて
居
(
ゐ
)
る
事
(
こと
)
を
象徴
(
しやうちよう
)
してゐる。
105
熊山
(
くまやま
)
は
実
(
じつ
)
に
霊地
(
れいち
)
である。
106
名
(
な
)
が
高熊山
(
たかくまやま
)
に
似通
(
にかよ
)
つて
居
(
ゐ
)
るし、
107
此
(
この
)
山
(
やま
)
はここら
辺
(
あた
)
りの
群山
(
ぐんざん
)
を
圧
(
あつ
)
して
高
(
たか
)
いから
其
(
その
)
意味
(
いみ
)
に
於
(
お
)
ける
高熊山
(
たかくまやま
)
である。
108
全山
(
ぜんざん
)
三
(
みつ
)
つ
葉
(
ば
)
躑躅
(
つつじ
)
が
生茂
(
おひしげ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのも
面白
(
おもしろ
)
い。
109
四国
(
しこく
)
の
屋島
(
やしま
)
、
110
五剣山
(
ごけんざん
)
なども
指呼
(
しこ
)
の
間
(
あひだ
)
にあり、
111
伯耆
(
ほうき
)
の
大山
(
だいせん
)
も
見
(
み
)
えると
言
(
い
)
ふではないか、
112
此処
(
ここ
)
は
将来
(
しやうらい
)
修行場
(
しうぎやうば
)
にするとよいと
思
(
おも
)
ふ。
113
私
(
わたし
)
は
駕篭
(
かご
)
であつたから
楽
(
らく
)
な
筈
(
はず
)
であるが、
114
急坂
(
きふはん
)
を
舁
(
か
)
つぎ
上
(
あ
)
げられたのだから
可
(
か
)
なり
えら
かつた。
115
諸子
(
みんな
)
は
徒歩
(
とほ
)
だから
一層
(
いつそう
)
えらかつたであらう、
116
今日
(
けふ
)
、
117
駕篭
(
かご
)
をかいで
呉
(
く
)
れた
人達
(
ひとたち
)
が
着
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
たあの
法被
(
はつぴ
)
、
118
あれがよい、
119
ああいふ
姿
(
すがた
)
で
登山
(
とざん
)
して
戒壇
(
かいだん
)
を
巡拝
(
じゆんぱい
)
して
歩
(
ある
)
くと
可
(
か
)
なりの
行
(
ぎやう
)
が
出来
(
でき
)
る、
120
崩
(
くづ
)
れた
戒壇
(
かいだん
)
は
積
(
つ
)
み
直
(
なほ
)
さねばなるまい、
121
亀石
(
かめいし
)
は
別
(
べつ
)
に
大
(
たい
)
したものでも
無
(
な
)
い、
122
新池
(
しんいけ
)
には
白竜
(
はくりう
)
が
住
(
す
)
んでゐて、
123
赤
(
あか
)
と
青
(
あを
)
との
綺麗
(
きれい
)
な
玉
(
たま
)
をもつて
居
(
ゐ
)
る、
124
青
(
あを
)
の
方
(
はう
)
は
翡翠
(
ひすゐ
)
の
如
(
ごと
)
く、
125
赤
(
あか
)
の
方
(
はう
)
は
紅玉
(
こうぎよく
)
のやうな
色
(
いろ
)
をしてゐる。
126
弘法大師
(
こうぱうたいし
)
が
熊山
(
ここ
)
に
霊場
(
れいぢやう
)
を
置
(
お
)
かうとしたのをやめて
高野山
(
かうやさん
)
にしたといふが、
127
それは
其
(
その
)
地形
(
ちけい
)
が
蓮華台
(
れんげだい
)
をして
居
(
ゐ
)
ないからである。
128
向山
(
むかふやま
)
の
方
(
はう
)
は
蓮華台
(
れんげだい
)
をして
其
(
その
)
地
(
ち
)
が
綾部
(
あやべ
)
によく
似
(
に
)
よつてゐる
云々
(
うんぬん
)
129
まだ
他
(
ほか
)
にも
承
(
うけたま
)
はつた
事
(
こと
)
がありますけれど、
130
それは
実際
(
じつさい
)
が
物語
(
ものがた
)
つて
呉
(
く
)
れると
存
(
ぞん
)
じます。
131
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も、
132
遂
(
つい
)
に
昭和
(
せうわ
)
五年
(
ごねん
)
五月
(
ごぐわつ
)
二十日
(
はつか
)
、
133
旧歴
(
きうれき
)
四月
(
しぐわつ
)
二十二日
(
にじふににち
)
といふ
日
(
ひ
)
をもつて、
134
神素盞嗚尊
(
かんすさのをのみこと
)
の
永久
(
えいきう
)
に
鎮
(
しづ
)
まり
給
(
たま
)
ひし
御陵
(
ごりよう
)
の
前
(
まへ
)
に
立
(
た
)
たれたのである。
135
復活
(
ふつくわつ
)
!
神剣
(
しんけん
)
の
発動
(
はつどう
)
!かういふ
叫声
(
けうせい
)
が
胸底
(
きようてい
)
から
湧出
(
ゆうしゆつ
)
して
来
(
く
)
る。
136
日本
(
にほん
)
も
世界
(
せかい
)
も
大本
(
おほもと
)
もいよいよ
多事
(
たじ
)
となつて
来
(
き
)
さうな
気
(
き
)
がしてならぬ。
137
近頃
(
ちかごろ
)
のお
歌日記
(
うたにつき
)
の
中
(
なか
)
から
138
そろそろと
世
(
よ
)
の
大峠
(
おほたうげ
)
見
(
み
)
え
初
(
そ
)
めて
139
立
(
た
)
ち
騒
(
さわ
)
ぐなりしこのたぶれが
140
と
言
(
い
)
ふのを
見出
(
みいだ
)
して
私
(
わたし
)
の
想像
(
さうざう
)
も
満更
(
まんざら
)
根底
(
こんてい
)
がないものでもないと
思
(
おも
)
ふやうになりました。
141
学術上
(
がくじゆつじやう
)
この
戒壇
(
かいだん
)
は
日本
(
にほん
)
五戒壇
(
ごかいだん
)
の
一
(
ひとつ
)
と
称
(
しよう
)
せられ、
142
大和
(
やまと
)
の
唐招提寺
(
たうしようていじ
)
、
143
比叡山
(
ひえいざん
)
、
144
下野
(
しもつけ
)
の
薬師寺
(
やくしじ
)
、
145
九州
(
きうしう
)
の
観音寺
(
くわんのんじ
)
と
共
(
とも
)
に
天下
(
てんか
)
に
有名
(
いうめい
)
なものださうで、
146
ただ
其
(
その
)
大
(
おほ
)
きさに
於
(
おい
)
て
他
(
た
)
の
四
(
よつ
)
つに
比
(
ひ
)
して
比較
(
ひかく
)
にならぬ
程
(
ほど
)
大
(
おほ
)
きなもので、
147
戒壇
(
かいだん
)
としても
普通
(
ふつう
)
のものでなく、
148
大乗
(
だいじよう
)
戒壇
(
かいだん
)
であらうと
考
(
かんが
)
へらるるのであるが、
149
沼田
(
ぬまた
)
頼輔
(
よりすけ
)
氏
(
し
)
や
上田
(
うへだ
)
三平
(
さんぺい
)
博士
(
はかせ
)
等
(
ら
)
も
何
(
なん
)
とも
見当
(
けんたう
)
がつかなかつたといふ
事
(
こと
)
である。
150
莫遮
(
さもあらばあれ
)
、
151
此度
(
このたび
)
の
御登山
(
ごとざん
)
によつて
総
(
すべ
)
てが
判明
(
はんめい
)
したのは
結構
(
けつこう
)
な
事
(
こと
)
でありました。
152
向山
(
むかふやま
)
は
本宮山
(
ほんぐうやま
)
といふよりも
寧
(
むし
)
ろ
神島
(
かみじま
)
にそつくりの
形
(
かたち
)
をしてゐて、
153
吉野川
(
よしのがは
)
[
※
吉井川のこと
]
が
其
(
その
)
麓
(
ふもと
)
を
流
(
なが
)
れて
居
(
ゐ
)
る
有様
(
ありさま
)
は
確
(
たしか
)
に
本宮山
(
ほんぐうやま
)
に
似
(
に
)
て
居
(
ゐ
)
ます。
154
「
今迄
(
いままで
)
に
大
(
たい
)
した
因縁
(
いんねん
)
の
地
(
ち
)
ではないが、
155
汚
(
けが
)
されて
居
(
ゐ
)
ないからよい」との
事
(
こと
)
でした。
156
そしてまた「
神様
(
かみさま
)
の
御気勘
(
ごきかん
)
に
叶
(
かな
)
つたと
見
(
み
)
えて、
157
今日
(
けふ
)
の
登山
(
とざん
)
を
無事
(
ぶじ
)
に
了
(
れう
)
する
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
た、
158
もしさうでなかつたらこの
好天気
(
かうてんき
)
にはならなかつたであらう」とつけ
加
(
くは
)
へられました。
159
このお
言葉
(
ことば
)
から
推
(
お
)
して
御神業
(
ごしんげふ
)
は
一年
(
いちねん
)
あまり
進展
(
しんてん
)
したと
考
(
かんが
)
へてさしつかへあるまいと
思
(
おも
)
ひます。
160
此
(
この
)
秋
(
あき
)
頃
(
ごろ
)
よりはエンヤラ
巻
(
ま
)
いたの
掛
(
か
)
け
声
(
ごゑ
)
が
熊山
(
くまやま
)
にも
向山
(
むかふやま
)
にも
盛
(
さかん
)
に
起
(
おこ
)
る
事
(
こと
)
でせうし、
161
又
(
また
)
私
(
わたし
)
達
(
たち
)
も
大急行
(
だいきふかう
)
で
身魂
(
みたま
)
研
(
みが
)
きにかからねばならないやうな
気
(
き
)
が
致
(
いた
)
します。
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