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霊界物語
霊主体従(第1~12巻)
第11巻(戌の巻)
言霊反
凡例
信天翁(二)
総説歌
第1篇 長駆進撃
第1章 クス野ケ原
第2章 一目お化
第3章 死生観
第4章 梅の花
第5章 大風呂敷
第6章 奇の都
第7章 露の宿
第2篇 意気揚々
第8章 明志丸
第9章 虎猫
第10章 立聞
第11章 表教
第12章 松と梅
第13章 転腹
第14章 鏡丸
第3篇 言霊解
第15章 大気津姫の段(一)
第16章 大気津姫の段(二)
第17章 大気津姫の段(三)
第4篇 満目荒寥
第18章 琵琶の湖
第19章 汐干丸
第20章 醜の窟
第21章 俄改心
第22章 征矢の雨
第23章 保食神
第5篇 乾坤清明
第24章 顕国宮
第25章 巫の舞
第26章 橘の舞
第27章 太玉松
第28章 二夫婦
第29章 千秋楽
余白歌
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霊界物語
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(B)
(N)
大気津姫の段(三) >>>
第一六章
大気津
(
おほげつ
)
姫
(
ひめ
)
の
段
(
だん
)
(二)〔四八三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第11巻 霊主体従 戌の巻
篇:
第3篇 言霊解
よみ(新仮名遣い):
ことたまかい
章:
第16章 大気津姫の段(二)
よみ(新仮名遣い):
おおげつひめのだん(二)
通し章番号:
483
口述日:
1920(大正9)年01月16日(旧11月26日)
口述場所:
筆録者:
松村仙造[#講演筆録]
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年9月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
生存競争の悪風が窮まると、近年の欧州大戦のような惨状を表して、万民が苦しむことになる。吾が皇国にもその世界の悪風が迫りつつある。
今の惨状は、生活上の貧苦が根底にあるのである。この生活問題を改善するためには、大気津姫の改心を待たなければならない。
素尊が大気津姫を殺したのは、食制改革のためにやむを得ずそうしたのである。肉食尊重を改めて、皇祖の御遺訓に沿った美風良俗に帰らなければならない。肉食を廃して社会改良の第一義をしなければならないのである。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-06-11 18:19:50
OBC :
rm1116
愛善世界社版:
153頁
八幡書店版:
第2輯 568頁
修補版:
校定版:
154頁
普及版:
66頁
初版:
ページ備考:
初出
[?]
この文献の初出または底本となったと思われる文献です。
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:
神霊界
>
大正10年2月1日号(第134号)【出口王仁三郎執筆】
>
皇典と現代(五)
派生
[?]
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:
出口王仁三郎著作集 > 第二巻 変革と平和 > 第三部 『霊界物語』の思想 > 大気津姫の段
001
『
時
(
とき
)
に
速
(
はや
)
須佐之男
(
すさのをの
)
命
(
みこと
)
、
002
其
(
そ
)
の
態
(
さま
)
を
立伺
(
たちうかが
)
ひて、
003
穢汚
(
きたなき
)
もの
奉
(
たてまつ
)
るとおもほして、
004
乃
(
すなは
)
ち
其
(
そ
)
の
大気津
(
おほげつ
)
比売
(
ひめの
)
神
(
かみ
)
を
殺
(
ころ
)
したまひき』
005
鼻
(
はな
)
、
006
口
(
くち
)
、
007
尻
(
しり
)
なる
衣食住
(
いしよくぢゆう
)
の
非理
(
ひり
)
非道
(
ひだう
)
的
(
てき
)
に
進歩
(
しんぽ
)
発達
(
はつたつ
)
したる
為
(
ため
)
に、
008
生存
(
せいぞん
)
競争
(
きやうそう
)
の
悪風
(
あくふう
)
、
009
天下
(
てんか
)
に
吹
(
ふ
)
き
荒
(
すさ
)
み、
010
その
結果
(
けつくわ
)
は、
011
遂
(
つい
)
に
近来
(
きんらい
)
に
徴
(
ちよう
)
すれば、
012
欧洲
(
おうしう
)
大戦争
(
だいせんそう
)
の
如
(
ごと
)
き
惨状
(
さんじやう
)
を
招来
(
せうらい
)
し
万民
(
ばんみん
)
皆
(
みな
)
塗炭
(
とたん
)
に
苦
(
くる
)
しむの
現状
(
げんじやう
)
は、
013
所謂
(
いはゆる
)
『
穢汚
(
きたなき
)
もの
奉進
(
たてまつ
)
る』の
実例
(
じつれい
)
である。
014
試
(
こころ
)
みに
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よ。
015
天地
(
てんち
)
も
崩
(
くづ
)
るる
許
(
ばか
)
りの
大騒動
(
だいさうどう
)
、
016
大戦乱
(
だいせんらん
)
の
砲声
(
はうせい
)
殷々
(
ゐんゐん
)
たる
惨状
(
さんじやう
)
が
漸
(
やうや
)
く
鎮静
(
ちんせい
)
したかと
思
(
おも
)
へば、
017
忽
(
たちま
)
ち
世界
(
せかい
)
を
挙
(
あ
)
げて
囂々
(
がうがう
)
たる
社会
(
しやくわい
)
改造
(
かいざう
)
の
声
(
こゑ
)
と
化
(
くわ
)
し、
018
一瀉
(
いつしや
)
万里
(
ばんり
)
、
019
何
(
なん
)
の
国境
(
こくきやう
)
もなく、
020
雷電
(
らいでん
)
の
轟
(
とどろ
)
き
閃
(
ひらめ
)
くが
如
(
ごと
)
く、
021
今
(
いま
)
や
我
(
わが
)
皇国
(
くわうこく
)
にも
轟
(
とどろ
)
き
渡
(
わた
)
つて
来
(
き
)
たのである。
022
最近
(
さいきん
)
起
(
おこ
)
りつつある
生活
(
せいくわつ
)
問題
(
もんだい
)
も、
023
労働
(
らうどう
)
問題
(
もんだい
)
も、
024
思想
(
しさう
)
問題
(
もんだい
)
も、
025
要
(
えう
)
するに
生活難
(
せいくわつなん
)
の
響
(
ひび
)
きに
起因
(
きいん
)
するのである。
026
只
(
ただ
)
単
(
たん
)
なる
世界
(
せかい
)
の
思潮
(
してう
)
に
刺戟
(
しげき
)
せられた
一
(
いち
)
時
(
じ
)
的
(
てき
)
の
現象
(
げんしやう
)
であるかと
云
(
い
)
ふに、
027
決
(
けつ
)
してさうでない。
028
如何
(
いか
)
に
世界
(
せかい
)
的
(
てき
)
思想
(
しさう
)
であらうが、
029
如何
(
いか
)
に
好事者
(
かうずしや
)
の
巧妙
(
かうめう
)
なる
煽動
(
せんどう
)
、
030
乃至
(
ないし
)
教唆
(
けうさ
)
であらうが、
031
国民
(
こくみん
)
の
要求
(
えうきう
)
に
於
(
おい
)
て
痛切
(
つうせつ
)
に
感
(
かん
)
ずる
所
(
ところ
)
が
無
(
な
)
ければ、
032
決
(
けつ
)
して
共鳴
(
きようめい
)
するものではないのである。
033
故
(
ゆゑ
)
に
是
(
これ
)
を
一
(
いち
)
時
(
じ
)
的
(
てき
)
の
現象
(
げんしやう
)
位
(
くらゐ
)
に
思
(
おも
)
つて、
034
冷然
(
れいぜん
)
として
袖手
(
しうしゆ
)
傍観
(
ばうくわん
)
し、
035
為政者
(
ゐせいしや
)
や
学者
(
がくしや
)
たるものが、
036
何
(
なん
)
等
(
ら
)
の
反省
(
はんせい
)
もせず
且
(
かつ
)
又
(
また
)
其
(
そ
)
の
起
(
おこ
)
るべき
根本
(
こんぽん
)
の
原因
(
げんいん
)
を
究
(
きは
)
めずして、
037
狼狽
(
らうばい
)
の
余
(
あま
)
り、
038
急速
(
きふそく
)
に
之
(
これ
)
を
防止
(
ばうし
)
しようとして
徒
(
いたづら
)
に
圧迫
(
あつぱく
)
を
加
(
くは
)
へたりすると、
039
ますます
紛糾
(
ふんきう
)
して、
040
終
(
つひ
)
には
救
(
すく
)
ふ
可
(
べ
)
からざる
一大
(
いちだい
)
禍乱
(
くわらん
)
を
激発
(
げきはつ
)
せないとも
限
(
かぎ
)
らない。
041
これ
実
(
じつ
)
に
指導
(
しだう
)
の
任
(
にん
)
に
当
(
あた
)
れる
政治家
(
せいぢか
)
、
042
宗教家
(
しうけうか
)
、
043
教育家
(
けういくか
)
、
044
および
有志家
(
いうしか
)
の
考慮
(
かうりよ
)
し、
045
奮起
(
ふんき
)
し、
046
以
(
もつ
)
てその
大原因
(
だいげんいん
)
たる
大気津
(
おほげつ
)
姫
(
ひめ
)
から
根絶
(
こんぜつ
)
改良
(
かいりやう
)
せねばならぬのである。
047
大気津
(
おほげつ
)
姫
(
ひめ
)
を
殺
(
ころ
)
さむとする、
048
現代
(
げんだい
)
の
所謂
(
いはゆる
)
改造
(
かいざう
)
の
叫
(
さけ
)
びは、
049
何
(
なに
)
が
大原因
(
だいげんいん
)
となつて、
050
天下
(
てんか
)
の
人民
(
じんみん
)
の
多数者
(
たすうしや
)
が、
051
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
く
猛烈
(
まうれつ
)
に
共鳴
(
きようめい
)
心随
(
しんずゐ
)
するかと
謂
(
い
)
へば、
052
一
(
ひと
)
つに
鼻
(
はな
)
、
053
口
(
くち
)
および
尻
(
しり
)
なる
衣食住
(
いしよくぢゆう
)
の
生活
(
せいくわつ
)
問題
(
もんだい
)
に
帰
(
き
)
するのである。
054
人間
(
にんげん
)
の
苦
(
くる
)
しみの
最大
(
さいだい
)
なりとするものは
貧窮
(
ひんきう
)
である。
055
即
(
すなは
)
ち
衣食住
(
いしよくぢゆう
)
の
三類
(
さんるゐ
)
の
大欠乏
(
だいけつぼう
)
である。
056
日々
(
にちにち
)
の
新聞
(
しんぶん
)
を
見
(
み
)
ると、
057
貧苦
(
ひんく
)
の
為
(
ため
)
に
身
(
み
)
を
淵川
(
ふちかは
)
に
投
(
な
)
げたり、
058
首
(
くび
)
を
吊
(
つ
)
つたり、
059
鉄道
(
てつだう
)
往生
(
わうじやう
)
や
毒薬
(
どくやく
)
自殺
(
じさつ
)
をしたり、
060
発狂
(
はつきやう
)
したり
等
(
など
)
の
悲惨事
(
ひさんじ
)
は
日
(
ひ
)
に
月
(
つき
)
に
増加
(
ぞうか
)
して
居
(
ゐ
)
るのである。
061
之
(
これ
)
を
見
(
み
)
ても、
062
貧苦
(
ひんく
)
と
云
(
い
)
ふものは、
063
死
(
し
)
するよりも
辛
(
つら
)
い
苦
(
くる
)
しいといふことが
明
(
あきら
)
かである。
064
死
(
し
)
ぬよりつらい
処
(
ところ
)
の
貧苦
(
ひんく
)
を
免
(
まぬが
)
れんが
為
(
ため
)
に、
065
ここに
激烈
(
げきれつ
)
なる
生存
(
せいぞん
)
競争
(
きやうそう
)
が
起
(
おこ
)
つて
来
(
く
)
る。
066
其
(
そ
)
の
結果
(
けつくわ
)
は
優勝
(
いうしよう
)
劣敗
(
れつぱい
)
弱肉
(
じやくにく
)
強食
(
きやうしよく
)
と
云
(
い
)
ふ、
067
人生
(
じんせい
)
に
於
(
お
)
ける
惨澹
(
さんたん
)
たる
餓鬼道
(
がきだう
)
の
巷
(
ちまた
)
となつて
来
(
き
)
たのである。
068
体主
(
たいしゆ
)
霊従
(
れいじう
)
、
069
利己
(
りこ
)
主義
(
しゆぎ
)
の
結果
(
けつくわ
)
は、
070
徳義
(
とくぎ
)
もなければ、
071
信仰
(
しんかう
)
も
無
(
な
)
く、
072
節操
(
せつさう
)
も
無
(
な
)
く、
073
勝者
(
しようしや
)
たる
大気津
(
おほげつ
)
姫
(
ひめの
)
神
(
かみ
)
は
常
(
つね
)
に
意気
(
いき
)
傲然
(
がうぜん
)
として、
074
入
(
い
)
つては
大廈
(
たいか
)
高楼
(
かうろう
)
に
起伏
(
きふく
)
し、
075
出
(
いで
)
ては
即
(
すなは
)
ち
酒池
(
しゆち
)
肉林
(
にくりん
)
、
076
千金
(
せんきん
)
を
春宵
(
しゆんせう
)
に
散
(
さん
)
じて、
077
遊惰
(
いうだ
)
、
078
安逸
(
あんいつ
)
、
079
放縦
(
はうじう
)
を
之
(
こ
)
れ
事
(
こと
)
として、
080
天下
(
てんか
)
に
憚
(
はばか
)
らない。
081
一方
(
いつぱう
)
には
劣者
(
れつしや
)
たる
貧者
(
ひんじや
)
は、
082
営々
(
えいえい
)
として
喘
(
あへ
)
ぎ、
083
尚
(
な
)
ほ
且
(
か
)
つ
粗雑
(
そざつ
)
なる
食
(
しよく
)
に
甘
(
あま
)
んじ、
084
以
(
もつ
)
て
漸
(
やうや
)
くその
飢
(
う
)
ゑたる
口腹
(
こうふく
)
を
満
(
み
)
たすに
足
(
た
)
らず、
085
疲憊
(
ひはい
)
困倒
(
こんたう
)
して
九
(
く
)
尺
(
しやく
)
二間
(
にけん
)
の
陋屋
(
ろうをく
)
に
廃残
(
はいざん
)
の
体躯
(
たいく
)
を
横
(
よこた
)
へ、
086
空
(
むな
)
しく
愛妻
(
あいさい
)
愛児
(
あいじ
)
の
饑餓
(
きが
)
に
泣
(
な
)
くを
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
087
その
心情
(
しんじやう
)
は
富者
(
ふうしや
)
勝者
(
しようしや
)
の
到底
(
たうてい
)
夢裡
(
むり
)
にだも
窺知
(
きち
)
すべからざるの
惨状
(
さんじやう
)
である。
088
古諺
(
こげん
)
に
曰
(
いは
)
く、
089
『
小人
(
せうじん
)
窮
(
きう
)
して
乱
(
らん
)
を
為
(
な
)
す』と、
090
終
(
つひ
)
に
或
(
あるひ
)
は
非常識
(
ひじやうしき
)
となり、
091
軌道
(
きだう
)
を
逸
(
いつ
)
し、
092
身投
(
みな
)
げ、
093
首
(
くび
)
吊
(
つ
)
り、
094
または
監獄
(
かんごく
)
行
(
ゆ
)
きを
希望
(
きばう
)
するに
至
(
いた
)
るのである。
095
又
(
また
)
これが
群衆
(
ぐんしう
)
的
(
てき
)
の
行動
(
かうどう
)
となる
時
(
とき
)
は、
096
大正
(
たいしやう
)
七
(
しち
)
年
(
ねん
)
の
米騒動
(
こめさうだう
)
や、
097
進
(
すす
)
むでは
焼打
(
やきうち
)
暴動
(
ばうどう
)
ともなり、
098
同盟
(
どうめい
)
罷工
(
ひこう
)
や、
099
怠業
(
たいげふ
)
的
(
てき
)
行動
(
かうどう
)
ともなり、
100
日比谷
(
ひびや
)
運動
(
うんどう
)
や、
101
革新
(
かくしん
)
的
(
てき
)
気分
(
きぶん
)
ともなるのである。
102
故
(
ゆゑ
)
に
恐
(
おそ
)
るべきは、
103
この
結果
(
けつくわ
)
を
醸成
(
じやうせい
)
する
所
(
ところ
)
の
生活
(
せいくわつ
)
問題
(
もんだい
)
である。
104
之
(
これ
)
を
閑却
(
かんきやく
)
して、
105
思想
(
しさう
)
の
悪化
(
あくくわ
)
や
労資
(
らうし
)
の
衝突
(
しようとつ
)
を
防止
(
ばうし
)
せむとして、
106
如何
(
いか
)
に
政治家
(
せいぢか
)
や、
107
教育家
(
けういくか
)
や、
108
宗教家
(
しうけうか
)
が
力説
(
りきせつ
)
怒号
(
どがう
)
して
見
(
み
)
た
所
(
ところ
)
で
生命
(
せいめい
)
の
無
(
な
)
い
政治家
(
せいぢか
)
や、
109
宗教家
(
しうけうか
)
、
110
教育家
(
けういくか
)
の
力
(
ちから
)
では、
111
容易
(
ようい
)
にその
効果
(
かうくわ
)
の
現
(
あら
)
はるるものではない。
112
故
(
ゆゑ
)
に
大本
(
おほもと
)
は、
113
神示
(
しんじ
)
に
依
(
よ
)
りて
明治
(
めいぢ
)
二十五
(
にじふご
)
年
(
ねん
)
以来
(
いらい
)
、
114
是
(
これ
)
が
救済
(
きうさい
)
の
神法
(
しんぱふ
)
を、
115
天下
(
てんか
)
に
向
(
むか
)
つて
指導
(
しだう
)
しつつあるのである。
116
古来
(
こらい
)
名君
(
めいくん
)
と
仰
(
あふ
)
がれ、
117
賢相
(
けんしやう
)
と
謳
(
うた
)
はれた
人々
(
ひとびと
)
は
国民
(
こくみん
)
生活
(
せいくわつ
)
の
安定
(
あんてい
)
を
以
(
もつ
)
て、
118
先決
(
せんけつ
)
問題
(
もんだい
)
としたのである。
119
而
(
しか
)
して
一方
(
いつぱう
)
に
於
(
おい
)
ては、
120
宗教
(
しうけう
)
と
教育
(
けういく
)
の
権威
(
けんゐ
)
を
発揮
(
はつき
)
して
以
(
もつ
)
てその
無限
(
むげん
)
の
欲
(
よく
)
を
塞
(
ふさ
)
ぎ、
121
その
奢侈
(
しやし
)
を
矯
(
た
)
め、
122
公共心
(
こうきようしん
)
の
涵養
(
かんやう
)
に
務
(
つと
)
め、
123
貧富
(
ひんぷ
)
の
平均
(
へいきん
)
を
保
(
たも
)
つて
来
(
き
)
たのである。
124
既
(
すで
)
に
生活
(
せいくわつ
)
の
安定
(
あんてい
)
さへ
得
(
え
)
れば、
125
民
(
たみ
)
の
之
(
これ
)
に
従
(
したが
)
ふや
易
(
やす
)
しで、
126
喜
(
よろこ
)
びて
善
(
よき
)
に
向
(
むか
)
ふものである。
127
要
(
えう
)
するに、
128
現代
(
げんだい
)
の
生活
(
せいくわつ
)
問題
(
もんだい
)
を、
129
根本
(
こんぽん
)
的
(
てき
)
に
改善
(
かいぜん
)
せむとするには、
130
どうしても、
131
大気津
(
おほげつ
)
姫
(
ひめ
)
の
改心
(
かいしん
)
に
待
(
ま
)
たなければならぬのであります。
132
『
種々
(
くさぐさ
)
』と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は、
133
臭々
(
くさぐさ
)
の
意味
(
いみ
)
であつて、
134
現代
(
げんだい
)
の
如
(
ごと
)
く、
135
一
(
いち
)
も
二
(
に
)
も
無
(
な
)
く、
136
上下
(
しやうか
)
一般
(
いつぱん
)
に
四足
(
よつあし
)
動物
(
どうぶつ
)
を
屠殺
(
とさつ
)
しては
舌鼓
(
したつづみ
)
を
打
(
う
)
ち、
137
肉食
(
にくしよく
)
の
汚穢
(
をゑ
)
を
忌
(
い
)
み、
138
正食
(
せいしよく
)
のみを
摂
(
と
)
つて、
139
心身
(
しんしん
)
の
清浄
(
せいじやう
)
を
保
(
たも
)
つてゐる
我々
(
われわれ
)
大本人
(
おほもとじん
)
を
野蛮
(
やばん
)
人民
(
じんみん
)
と
嘲笑
(
てうせう
)
するに
立到
(
たちいた
)
つたのは、
140
心身
(
しんしん
)
上
(
じやう
)
に
及
(
およ
)
ぼす
影響
(
えいきやう
)
の
実
(
じつ
)
に
恐
(
おそ
)
るべきものがあるのである。
141
肉食
(
にくしよく
)
のみを
滋養物
(
じやうぶつ
)
として、
142
神国
(
しんこく
)
固有
(
こいう
)
の
穀菜
(
こくさい
)
を
度外
(
どぐわい
)
する
人間
(
にんげん
)
の
性情
(
せいじやう
)
は、
143
日
(
ひ
)
に
月
(
つき
)
に
惨酷性
(
ざんこくせい
)
を
帯
(
お
)
び
来
(
きた
)
り、
144
終
(
つひ
)
には
生物
(
せいぶつ
)
一般
(
いつぱん
)
に
対
(
たい
)
する
愛情
(
あいじやう
)
を
失
(
うしな
)
ひ、
145
利己
(
りこ
)
主義
(
しゆぎ
)
となり、
146
かつ
獣欲
(
じうよく
)
益々
(
ますます
)
旺盛
(
わうせい
)
となり、
147
不倫
(
ふりん
)
不道徳
(
ふだうとく
)
の
人非人
(
にんぴにん
)
となつて
了
(
しま
)
ふのである。
148
虎
(
とら
)
や
狼
(
おほかみ
)
や、
149
獅子
(
しし
)
なぞの
獰猛
(
だうまう
)
なるは
常
(
つね
)
に
動物
(
どうぶつ
)
を
常食
(
じやうしよく
)
とするからである。
150
牛馬
(
ぎうば
)
や
象
(
ざう
)
の
如
(
ごと
)
くに、
151
体躯
(
たいく
)
は
巨大
(
きよだい
)
なりと
雖
(
いへど
)
も、
152
極
(
きは
)
めて
温順
(
をんじゆん
)
なるは、
153
生物
(
いきもの
)
を
食
(
く
)
はず、
154
草食
(
さうしよく
)
または
穀食
(
こくしよく
)
の
影響
(
えいきやう
)
である。
155
故
(
ゆゑ
)
に
肉食
(
にくしよく
)
する
人間
(
にんげん
)
の
心情
(
しんじやう
)
は、
156
無慈悲
(
むじひ
)
にして、
157
世人
(
せじん
)
は
死
(
し
)
なうが、
158
倒
(
たふ
)
れやうが、
159
凍
(
こごえ
)
て
居
(
を
)
らうが、
160
そんな
事
(
こと
)
には
毫末
(
がうまつ
)
も
介意
(
かいい
)
せない。
161
只々
(
ただただ
)
自分
(
じぶん
)
のみの
都合
(
つがふ
)
をはかり、
162
食色
(
しよくしき
)
の
欲
(
よく
)
の
外
(
ほか
)
天理
(
てんり
)
も、
163
人道
(
じんだう
)
も、
164
忠孝
(
ちうかう
)
の
大義
(
たいぎ
)
も
弁知
(
べんち
)
せない
様
(
やう
)
に
成
(
な
)
つて
了
(
しま
)
ふのである。
165
斯
(
こ
)
う
云
(
い
)
ふ
人間
(
にんげん
)
が、
166
日
(
ひ
)
に
月
(
つき
)
に
殖
(
ふ
)
ゑれば
殖
(
ふ
)
ゑる
程
(
ほど
)
、
167
世界
(
せかい
)
は
一方
(
いつぱう
)
に、
168
不平
(
ふへい
)
不満
(
ふまん
)
を
抱
(
いだ
)
くものが
出来
(
でき
)
て、
169
終
(
つひ
)
には
種々
(
しゆじゆ
)
の
喧
(
やかま
)
しき
問題
(
もんだい
)
が
一度
(
いちど
)
に
湧
(
わ
)
いて
来
(
く
)
るのである。
170
為政者
(
ゐせいしや
)
たるものは、
171
宜
(
よろ
)
しく
下情
(
かじやう
)
に
通
(
つう
)
ずるを
以
(
もつ
)
て、
172
急務
(
きふむ
)
とし、
173
百般
(
ひやくぱん
)
の
施設
(
しせつ
)
は、
174
之
(
これ
)
を
骨子
(
こつし
)
として
具体化
(
ぐたいくわ
)
して
進
(
すす
)
まねばならぬのである。
175
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
は
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ずして、
176
天下
(
てんか
)
の
為
(
ため
)
に
大気津
(
おほげつ
)
姫
(
ひめの
)
命
(
みこと
)
を
殺
(
ころ
)
し
玉
(
たま
)
ひ、
177
食制
(
しよくせい
)
の
改良
(
かいりやう
)
を
以
(
もつ
)
て
第一義
(
だいいちぎ
)
と
為
(
な
)
し
玉
(
たま
)
うたのである。
178
西郷
(
さいがう
)
南洲
(
なんしう
)
翁
(
をう
)
は、
179
政
(
まつりごと
)
とは、
180
情
(
じやう
)
の
一字
(
いちじ
)
に
帰
(
き
)
すると
断
(
だん
)
じ
又
(
また
)
孟子
(
まうし
)
は、
181
人
(
ひと
)
に
忍
(
しの
)
びざる
心
(
こころ
)
あれば
茲
(
ここ
)
に
人
(
ひと
)
の
忍
(
しの
)
びざる
政
(
まつりごと
)
ありと
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
182
然
(
しか
)
るに
為政者
(
ゐせいしや
)
は、
183
果
(
はた
)
してこの
心
(
こころ
)
を
以
(
もつ
)
て、
184
之
(
これ
)
に
立脚
(
りつきやく
)
して
社会
(
しやくわい
)
改良
(
かいりやう
)
を
企画
(
きくわく
)
しつつあるであらう
乎
(
か
)
。
185
政治家
(
せいぢか
)
なるものを
見
(
み
)
れば、
186
徹頭
(
てつとう
)
徹尾
(
てつび
)
、
187
党閥
(
たうばつ
)
本位
(
ほんゐ
)
であり、
188
権力
(
けんりよく
)
の
闘争
(
とうさう
)
であり、
189
利権
(
りけん
)
の
争奪
(
そうだつ
)
である。
190
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
き
勢利
(
せいり
)
のみに
没頭
(
ぼつとう
)
せる
人間
(
にんげん
)
に
依
(
よ
)
つて
組織
(
そしき
)
され、
191
運用
(
うんよう
)
される
政治
(
せいぢ
)
なるものは、
192
因
(
もと
)
より
国利
(
こくり
)
民福
(
みんぷく
)
と
没交渉
(
ぼつかうせふ
)
なるべきは、
193
寧
(
むし
)
ろ
当然
(
たうぜん
)
であらうと
思
(
おも
)
ふ。
194
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
き
世界
(
せかい
)
の
政治
(
せいぢ
)
に
支配
(
しはい
)
されつつある
国民
(
こくみん
)
が、
195
不安
(
ふあん
)
の
終極
(
しうきよく
)
は、
196
改造
(
かいざう
)
の
叫
(
さけ
)
びと
成
(
な
)
つて
来
(
く
)
るのは
之
(
これ
)
も
当然
(
たうぜん
)
かも
知
(
し
)
れぬ。
197
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
き
肉食
(
にくしよく
)
尊重
(
そんちよう
)
、
198
利己
(
りこ
)
主義
(
しゆぎ
)
一遍
(
いつぺん
)
の
政治家
(
せいぢか
)
を
推選
(
すゐせん
)
したる
国民
(
こくみん
)
は
全
(
まつた
)
く
自業
(
じごう
)
自得
(
じとく
)
にして、
199
神界
(
しんかい
)
の
戒
(
いまし
)
めである。
200
自
(
みづか
)
ら
火
(
ひ
)
を
採
(
と
)
つてその
手
(
て
)
を
焼
(
や
)
いた
様
(
やう
)
なものである。
201
アヽ
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
皇祖
(
くわうそ
)
の
御
(
ご
)
遺訓
(
ゐくん
)
と
御
(
ご
)
事跡
(
じせき
)
に
鑑
(
かんが
)
み、
202
上下
(
しやうか
)
挙
(
こぞ
)
つて
日本
(
にほん
)
固有
(
こいう
)
の
美風
(
びふう
)
良俗
(
りやうぞく
)
に
還
(
かへ
)
らねば、
203
到底
(
たうてい
)
現代
(
げんだい
)
の
不安
(
ふあん
)
、
204
暗黒
(
あんこく
)
の
社会
(
しやくわい
)
を
改良
(
かいりやう
)
し、
205
以
(
もつ
)
て
神国
(
しんこく
)
の
一大
(
いちだい
)
使命
(
しめい
)
を
遂行
(
すゐかう
)
する
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないのである。
206
先
(
ま
)
づ
何
(
なに
)
よりも、
207
大本
(
おほもと
)
神諭
(
しんゆ
)
に
示
(
しめ
)
させ
玉
(
たま
)
へるが
如
(
ごと
)
く、
208
第一
(
だいいち
)
に
肉食
(
にくしよく
)
を
廃
(
はい
)
し
身魂
(
みたま
)
を
清
(
きよ
)
めて、
209
神
(
かみ
)
に
接
(
せつ
)
するの
道
(
みち
)
を
開
(
ひら
)
くを
以
(
もつ
)
て、
210
社会
(
しやくわい
)
改良
(
かいりやう
)
の
第一義
(
だいいちぎ
)
とせねばならぬのであります。
211
(
大正九・一・一六
講演筆録
松村仙造
)
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